27821 日本社会開発基金(JSDF) 2002年度 年次報告 世 界 銀 行 信託基金業務局 27821 C23 27821 日本社会開発基金(JSDF) 2002年度 年次報告 世 界 銀 行 信託基金業務局 i 27821 JSDF運営委員会  委員長からのメッセージ 27821 創設から2年目を迎えた2002年度においても、 日本社会 開発基金 (JSDF)は草の根の開発活動を支援する代表 的な基金として広く利用されました。JSDFは開発の現 場に革新的な手法をもたらし、NGO、 シビル・ソサエ テ ィ組織、および地域団体の直接参加とエンパワーメン トを促進しています。このことは本年次報告の作成時に 実施された広範なインタビューでも、複数の関係者に よって裏付けられました。世銀の幹部、職員、 そしてグ ラン トの受領機関と実施機関の言葉は、JSDFがその目 標を着実に達成しつつあることを示しています。JSDF は最も助けを必要としている人々に直接援助を提供す るメカニズムであり、JSDFグラン トは新しいパー トナー シップの形成を促すと共に、各国の意思決定機関と実 施 機 関 の エンパワーメントに 貢 献して います。また 、 JSDFグラン トはNGO、地域社会、およびシビル・ ソサエ テ ィ組織に権限と資金を提供し、開発に主体的に取り 組めるようにすることが、説明責任と正統性を確保する ための効果的かつ持続可能で、重要な方法であること を各国政府に証明するものとなっています。JSDFグラ ン トを管理しているある世銀タスクチーム・ リーダーは、 JSDFについてこう語っています。 「不利な立場に置かれ てきた人々が、その存在をはじめて当局に知らしめた だけではありません。改革の成功には自分たちの参加 が不可欠だと考えるようになったのです。自分たちのこ とを犠牲者ではなく、パートナーだと考えるようになっ たのです」 日本政府は2002年度に21件のグラント(総額2600万ドル) を承認しました。これらのグラントは6地域の18カ国に 便益をもたらしています。承認されたグラン トの件数は 2001年度よりも減少しました。これはグラン ト・プロポー ザルの審査が昨年よ りも厳密になったこと、 また2001年 度の経験をもとに効果的なグラントを識別できるように なったことなどによるものです。今後、世銀はJSDFとそ の利点を周知し、JSDFグラン トの申請を検討している 世銀タスクチームを支援するために、 さらなる努力を傾 けていく所存です。 iii 27821 2002年度、世銀はJSDFグラントの申請、実施、 および管 理をより簡便で、効率的なものとするために、 プロセス 全体の合理化に取り組みま した。また、 日本政府が拠出 した100万ドルをもとに、 グラント・プロポーザルの準備 段階を支援する小規模なサブグラント ・ファシリティ 「JSDFシード基金」を創設しま した。グラン トの実施期間 は2年から4年に延長され、基金の運営方針をまとめた 年次方針文書も導入されま した。JSDFは2003年度も引 き続き、 グラント実施手順の合理化に取り組む予定です。 最後に、JSDFグラン トの「参加型」 の特徴についても一 言申し上げておきたいと思います。2002年度に承認さ れたJSDFグラン トでは、NGO、 シビル・ ソサエテ ィ組織、 および地域団体がグラン トの設計はもちろん、多くの場 合は実施にも直接参加しました。初年度の経験から、 J S D F グ ラントの 中 でも、特 に 地 域 社 会 主 導 型 開 発 (CDD) 手法を取り入れたものは、具体的な成果を達成 する可能性が高いだけでなく、地域社会が開発に主体 的に取り組むことを可能にすることが分かっています。 これは持続可能な開発の基本であり、疎外と貧困の悪 循環を断ち切る鍵となるものです。本年次報告では CDD手法を採用したグラン トの例を数多く ご紹介してい ます。これらのグラントは地域社会に焦点を当てた開 発とパートナーシップの原則が、世界の貧困の撲滅に 貢献していることを証明しています。 アリフ・ズルフィカー 世界銀行信託基金業務局長 兼  JSDF運営委員会委員長 iv 27821 目次 JSDF運営委員会 委員長からのメッセージ ii 第1章:JSDFの概要 1 2001–2002年度の実績 3 2002年度の進展 4 第2章:2002年度の活動概要 5 地域別配分 6 セクター別配分 7 キャパシティ・ビルディングと持続可能性の支援 9 グラントの実施におけるNGOとの協力 9 JSDFシード基金 9 アフガニスタン特別支援 10 第3章:現場からの声 11 第4章:主なJSDFグラント 14 ベナン:児童保護基金 14 カンボジア:紛争後調停中の地域における基礎教育 17 サモア:保健改革時における貧しく、弱い立場に 置かれた人々の保護 20 第5章:個別ニーズへの対応:JSDF特別プログラム 24 JSDFシード基金 24 JSDFアフガニスタン 25 第6章:ガバナンスの仕組み 28 グラントの審査と承認 28 グラントの実施と報告 28 コミュニケーション 29 JSDFのウェブサイト 29 付録1:2002年度に承認されたJSDFグラント一覧 31 付録2:2003年度方針文書 34 v 27821 27821 JSDFの概要 第1章 日本社会開発基金 (JSDF)は2000年6月、日本政府と世 界銀行によって創設されました。JSDFは世銀グループ の融資適格国において、最も貧しく、最も弱い立場に 置かれた人々に直接グラントを提供し、その国の長期 的な社会開発を促進するメカニズムです。JSDFは途上 国の最貧困層に焦点を当てた数少ない世銀信託基金 の一つであり、大規模で、構造的な問題に取り組むこ との 多 い 世 銀 プ ロジェク トを 補 完 する重 要 な 存 在と なっています。JSDFはグラン トの設計、実施、 および管 理にNGO、地域団体、 およびシビル・ ソサエテ ィが直接 「JSDFは草の根の開発を支援する 参加できるようにすることで、開発プロセスにおけるこ だけでなく、NGOが世銀の活動に れらの組織と政府の隔たりを埋めることを目指していま 参加する絶好の機会を提供してい す。グラントのあらゆる側面を分権化し、現地組織に ます。これはほかの信託基金には 委ねることで、JSDFグラントは地域社会の貧困緩和に 直接的で迅速な効果を上げ、 キャパシテ ィ・ビルディ ン できないことです。JSDFは革新 グを進め、学習と持続可能性を促進するものとなって を奨励し、NGOコミュニティの います。 自由な発想を歓迎しています・・・ NGOは世銀にアイディアを提供し、 学習するのはグラン トの受領機関や受益者だけではあ 世銀はJSDF基金を通して、NGO りません。NGOと共にJSDFグラントに取り組むことで、 世銀も重要な知識と経験を手に入れることができたと、 を支援しています」 JSDFグラントに関わっている世銀タスクチーム・リー ダーらは述べています。こう した知識や経験は、新規プ ― 世銀タスクチーム・リーダー ロジェク トの誕生や既存プロジェク トの改善につながり (東アジア・大洋州地域担当) ました。また、 これまで開発から排除されてきた地域団 体の参加が促進された結果、 こうした団体が政府と世 銀の両方に対し、以前より も好意的な感情を抱く ように なりま した。 JSDFは日本政府が拠出した9300万ドルをもとに、2001 年に業務を開始しました。JSDFの主な目的は、最も貧 しく、最も弱い立場に置かれた人々のニーズに応える 革新的なプログラムにグラントを提供し、 シビル・ソサ エテ ィ、地域社会、およびNGOのキャパシテ ィ・ビルディ ング、参加、 およびエンパワーメン トを促進することです (囲み1参照)。 1 27821 Masaru Goto/World Bank 「通常、世銀の活動に草の根の組織が参加 する機会はありません。しかし、JSDF のおかげで世銀はこうした組織とも効果 的に連携できるようになりました。本物 のパートナーシップは、すべての関係者 に利益をもたらします」 ― 世銀タスクチーム・リーダー (アフリカ地域担当) カンボジアではJSDFの「基礎教育グラント」が子供たちに便益をもたらして います。本グラントの実施機関はセーブ・ザ・チルドレン・ノルウェーです。 本グラントに関する詳細は第3章「主なJSDFグラント」をご覧ください。 JSDFを効果的に管理するために、世銀はハイレベルの運営委員会を設置 しま した。 運営委員会の役割はJSDFグラン ト・プロポーザルを審査すること、 世銀タスクチーム ・リーダーにJSDFグラントに関する指針を提供すること、そ して日本政府に有望なグラン ト・プロポーザルを提出し、最終承認を得るこ とです。資金供与は会計年度ごとに4回行われます。運営委員会は明確に 定義された評価基準をもとに、世銀タスクチーム ・リーダーから提出された グラン ト・プロポーザルを検討します (囲み2参照)。その際、各プロポーザ ルがJSDFの目的である革新、迅速な対応、貧困層の救済、 およびキャパシ テ ィ・ビルデ ィングに貢献するものとなっているかどうかが吟味されます。 JSDFグラントには2つの種類があります。1つは貧困層に直接支援を提供す る「プロジェク ト向けグラン ト」で、このグラン トの対象となるのは1999年の 一 人 当 たり国 民 総 生 産(GNP) が 囲み1 1445ドル以下の世銀加盟国です。 もう1つは地域社会、NGO、および JSDFの目的 現地組織の強化を目的とする 「キャ パシティ ・ビルディング向けグラン 1. 社会で最も貧しく、最も弱い立場に置かれた人々のニー ト」 で、対象となるのは低所得国お ズに直接対応する革新的なプログラムを支援する。 よび 低 中 所 得 国(2001/2002年の 2. 最も貧しく、最も弱い立場に置かれた人々に測定可能で 「世界開発報告」 の定義による分類) 持続可能な利益を速やかに提供する。 3. シビル・ソサエティ(地域社会とNGO)のキャパシティ・ です。JSDFの創設時、特に東アジ ビルディング、参加、およびエンパワーメントを促進する。 ア、南アジア、および中央アジア・ 大洋州の各地域では、1990年代末 2 27821 の景気後退が各国の社会と経済に危機的な影響を及ぼしていました。こう した金融危機の影響を緩和するために、JSDF資金の約50%はこの地域の 国々に配分されています。 2001–2002年度の実績 「JSDFの目的は世銀にとっても援助受入 • 日本政府は2001–2002年度 (2000年7月–2002年6月)、合計8ラウンドで計57 国にとっても、きわめて重要な意味を 1 持っています。通常、地域社会レベルの 件、総額6200万ドル のグラン トを承認しま した。 組織が開発過程に直接参加することは • 創設以来、JSDFグラン トは6地域の合計32カ国に便益をもたらしています。 ありません。それを可能にするのが • JSDF資金の配分額が最も多いのは東アジア・大洋州地域で、全体の45% JSDFの資金であり、JSDFは持続可能な に相当する2800万ドルが供与されま した。 開発には欠かせない存在となっています」 • 次に配分額が多いのはヨーロッパ・中央アジア地域で、全体の21%に相当 する1320万ドルが供与されま した。南アジア地域には780万ドル、 ラテンア ― 世銀タスクチーム・リーダー メ リカ・カリブ海地域には830万ドル (いずれも全体の約13%に相当) が供 (ヨーロッパ・中央アジア地域担当) 与されま した。アフリカ地域には全体の5%に相当する320万ドル、 中東・ 北アフリカ地域には全体の3%に相当する160万ドルが供与されま した。 • JSDFグラントの配分先をセク ター別にみると、貧困層の直接救済と社会的 保護の2つのセク ターに資金が集中していることが分かります。配分額が最 も多かったのは社会的保護セク ターで、全体の21%に相当する1300万ドル が供与されま した。次いで、農村開発セク ターには全体の19%に相当する 1200万ドル、人的開発セク ターには全体の15%に相当する900万ドルが供 与されま した。JSDFの資金は都市開発、法律・司法、保健、教育、水と衛 生の各セク ター、 および複数のマルチセク ターにも配分されています。 囲み2 JSDFグラントの選択基準 1. 最も貧しく、最も弱い立場に置かれた人々に測定可能な利益を直接かつ速やか に提供するものであること。 2. 世銀の融資対象とならない活動に対して、直接援助を提供する革新的な仕組み が採用されていること。 (日本のNGOを含む) 3. 長期的で持続可能な開発を促すために、地域団体とNGO が直接参加していること。 4.  世銀の国別援助戦略に沿ったものであること。 5. 世銀が資金提供を行うプロジェクト を補完するものであ (準備中または実施中) ること。 6.  グラントの受領機関が主体性を持って積極的に参加していること。 7.  具体的な成果/影響の指標と、成果を測定し、進捗をモニタリングする仕組み があること。 1 この期間に計4件のJSDFグラントが取り消されました(インド、ホンジュラス、モンゴル、 および「ASEANスクールネット地域プログラム」に対するグラント)。 3 27821 • JSDFは合計16件のキャパシテ ィ・ビルディング・プロジェクトを支援してい ます (グラント総額1750万ドル)。これらのグラン トは地域社会、NGO、お よび現地組織を強化し、長期的な学習と持続可能な開発を促進するもの となっています。 • JSDFはグラント・プログラムを通して、NGOとの間に良好なパートナー シップを築いてきました。JSDFポー トフォリオの40%に相当する23件のグ ラン トはNGOによって実施されています。 2002年度の進展 2002年3月、日本政府はJSDFに6000万ドルを追加拠出しました。また、 日本 政府はアフガニスタンの復興活動を支援するために、 さらに1830万ドルの特 別資金を拠出しました。現在、 日本政府からJSDFへの累計拠出額は1億 7230万ドルに上っています。 JSDFは一部のタスクチーム・リーダーと実施機関の懸念に応え、グラントの 実施期間を2年から4年に延長しま した。 2002年度の活動と進展に関する詳細は第2章をご覧ください。 Julio Etchart/World Bank JSDFは多数の給水・灌漑グラントを通して、重要 な生活資源である水へのアクセスと農業生産性の 向上に貢献しています。 4 27821 2002年度の活動概要 第2章 初年度に引き続き、JSDFは貧困の基本要因である経済 機会、基本的社会サービスへのアクセス、教育機会、 ス キル、 および安全保障の欠如に対処するプログラムに多 額の援助を提供しました (合計2600万ドル)。2002年度 にJSDFグラントの対象となったのは、対象が明確で、 地域社会に焦点を当てつつ、 より大規模な活動に発展 する可能性も備えた活動でした。具体的には、地域社 会や危機にさらされている人々を対象としたアウ トリー チプログラム、小口金融ファシリテ ィ、地域投資、教員 トレーニング、地域組織の設立、公衆衛生意識の向上、 「保健改革を推進するにあたり、 小規模なインフラ ・プロジェクトなどです。グラン トの設 JSDFグラントには本当に助けら 計と実施に地域社会、NGO、およびシビル・ソサエテ ィ れました。当時、政府は保健改革 組織が参加するようになった結果、受益者のニーズにき を強力に推進しており、政府と民 めこまかく対応できるようになり、活動の達成可能性も 高まりま した。 間セクターは世銀プロジェクトの 予算でさまざまな活動を展開して 2002年度、日本政府は21件、総額2600万ドルのグラン ト いました。JSDFのおかげで、 を承認しました。これらのグラン トは 6地域の 18カ国に 政府はこのプロセスにNGOを 便益をもたらしています。 参加させることができるように なりました。JSDFは助言だけで 図1 2001年度と2002年度に承認されたグラントの件数、 なく、資金も提供してくれました。 金額、受領国 現在、NGOは保健改革の推進に 2001–2002年度  なくてはならない存在となって 2001–2002年度  累計 います。これは政府にとっても、 累計 62 NGOにとっても、また保健改革 57 そのものにとってもきわめて 2001–2002年度 望ましいことでした」 2001年度 2001年度 累計 36 36 34 2001年度 ― 世銀タスクチーム・リーダー 24 (東アジア・大洋州地域担当) 承認された  配分額  受領国 グラントの件数 (単位:100万ドル) 5 27821 地域別配分 2002年度のJSDF資金の配分先を地域別に見ると、配分額が最も多かった のはヨーロッパ・中央アジア地域で、全体の39%に上りました。次いで、東 アジア・大洋州地域 (26%)、ラテンアメリカ・カリブ海地域(15%)、南アジ ア地域 (12%)、アフリカ地域 (4%) と中東・北アフリカ地域 (4%)でした(図 JSDFグラントの例 2参照) 。 ニカラグア:地域社会レベルの 国別に見ると、 グラント配分額が最も多かったのはタジキスタンで、2件のグ 脆弱性削減プログラム ラン トの合計で420万ドルが供与されま した。1つ目のグラント(160万ドル)は (150万ドル) サレズ湖周辺の高山地域の貧困を削減するもの、2つ目のグラン ト「地域社会 グラントの目的: ベースの都市給水管理プロジェク ト」 (260万ドル)は、住宅用公共配水シス 首都マナグアの最貧地域の住民が、 テムの保守を地域社会に委ねることによ り、基本的な水サービスへのアクセ 地域の生活条件に悪影響を与えている スを改善し、腸チフス蔓延の危険性を軽減するものです。どちらの場合も、 社会・環境リスクに持続可能な方法で グラン トの設計には地域団体が参加しま した。サレズ湖グラン トは国際NGO 対処できるようにする。 「FOCUS人道援助」が実施を担当しています。 2002年度にタジキスタンに次いで多くのグラン トを受け取ったのはアルメニ アで、配分額は2件のグラン トの合計で300万ドルでした。1つ目のグラン ト 「育児制度改革パイロッ ト・プロジェクト」(96万1000ドル)は児童福祉の向 上を目的としたもので、主な優先分野は、1) 危機にさらされている児童を 対象と した社会支援の有効性向上、2) 施設に収容されている児童に対する 家族ベースのケアの提供、3) 危機にさらされている児童とその家族に対す る地域ぐるみの支援です。本グラントの実施機関はタジキスタンの財務省 です。2つ目のグラン ト「地域社会による都市給水管理プロジェク ト」(200万 ドル) も、都市住宅への水道メーターの導入と配水システムの保守を地域社 会ベースで行うパイロッ ト・プロジェクトです。本グラン トは世銀プロジェク トの一環として設置された都市開 発プロジェク ト管理ユニットが実施 図2 2002年度に承認されたJSDFグラントの しています。 地域別配分(総額に占める割合) 2002年度のグラント配分額が3番目 中東・北アフリカ 4% に多かったのはフ ィリピンで、2件の ラテンアメリカ・カリブ海  アフリカ 4% グラントの合計で270万ドルが供与 15% 東アジア・大洋州   されました。 「地域社会による農業 26% 改革・貧困削減管理プロジェク ト」 (200万ドル)は、土地の分配、支援 サービス、 および農場投資からなる フィ リピン政府の「地域社会による農 業改革管理プログラム」 のパイロッ ト・ プロジェクトで、農業改革局が実 南アジア 12% 施して います。もう1 件 のグラント ヨーロ ッパ・中央アジア   「貧困層に配慮した予算編成と地方 39% 政府の説明責任の強化を目的と した 地域社会のキャパシティ ・ビルディ 6 27821 ング」も、貧困水準のモニタリングと、予算編成・支出に対する地方政府の 説明責任の強化に貧困層と一般市民を巻き込むことを目指すパイロッ ト・プ ロジェクトです。 2002年度は新たに次の9カ国がJSDFグラントを受け取りました。パプア ニューギニア (1件、50万ドル) 、ギニアとマリ (合同で1件、総額100万ドル) 、 グルジア (2件、合計180万ドル) 、タジキスタン (2件、420万ドル)、エクアド JSDFグラントの例 ル(1件、180万ドル)、 アルメニア (2件、300万ドル)、ペルー (1件、75万8500 インド:女性自営業者協会(SEWA) ドル) 、およびロシア (1件、130万ドル) 。 キャパシティ・ビルディング・ プロジェクト(120万ドル) セクター別配分 グラントの目的: SEWAのトレーニング能力を強化し、 2002年度のJSDFグラントの配分先セク ターは多岐にわたり、 グラントの対象 新規・既存メンバーが生計を確保または がソーシャル・セーフテ ィネット・サービスの提供や、経済危機の直接的な影 改善できるようにする。 響の緩和を目的とする社会的保護プロジェク トから、より長期的な開発機会 の創出を目指す社会開発プロジェク トに広がったことを示しています (図3参 照) 。2002年度に承認された社会開発グラン トの1つは、ペルーの 「サービ 表1 2002年度に承認されたJSDFグラントの国別配分 (件数と金額) 地域 国名 グラント件数 金額(単位:ドル) 東アジア・大洋州 パプアニューギニア 1 468,300  カンボジア 1 796,900  フィリピン 2 2,718,269  地域プログラム 1 2,000,000  ラオス人民民主共和国 1 737,420  小計 6 6,720,889  南アジア パキスタン 1 950,000  インド 2 2,166,036  小計 3 3,116,036  ヨーロッパ・ グルジア 2 1,857,275  中央アジア タジキスタン 2 4,218,900  アルメニア 2 2,931,000  ロシア 1 1,252,700  小計 7 10,259,875  ラテンアメリカ・ エクアドル 1 1,780,000  カリブ海 ペルー 1 758,500  ニカラグア 1 1,489,300  小計 3 4,027,800  アフリカ 西アフリカ 1 973,949  小計 1 973,949  中東・北アフリカ ヨルダン 1 994,860  小計 1 994,860  合計 21 26,093,409 7 27821 表2 2002年度に承認されたJSDFグラントの地域別配分(第5–8次拠出) 地域 第5次拠出 第6次拠出 第7次拠出 第8次拠出 グラント 金額 グラント 金額 グラント 金額 グラント 金額 件数 (単位:ドル) 件数 (単位:ドル) 件数 (単位:ドル) 件数 (単位:ドル) 東アジア・大洋州 1 468,300  3 3,515,169  2* 2,737,420  1  956,400 南アジア 1 950,000  1 1,209,636  2 3,222,700  ヨーロッパ・ 3 5,598,775  2 1,438,400  1 1,489,300  中央アジア ラテンアメリカ・ 1 1,780,000  1 758,500  カリブ海 中東・北アフリカ 1 994,860  アフリカ 1 973,949  合計 1 468,300 10 13,812,753 6 6,143,956 4 5,668,400 * 東アジアASEANスクールネット地域プログラムを含む JSDFグラントの例 ス供給の内容、計画、 および評価に対する貧困層の発言権の拡大」 グラント です。これは貧困層がニーズに即した社会プログラムの設計と、効果的で ギニアおよびマリ:幼児教育に関する 透明かつ説明責任のある実施に参加できるようにするためのキャパシテ ィ・ 草の根のキャパシティ・ビルディングの ための戦略的提携(97万3949ドル) ビルディング向けグラントです。このほか、2002年度は社会開発の分野で次 のようなグラントが承認されました。 グラントの目的: 質の高い幼児教育プログラムに対する • ロシア:ロシア農村部の地方行政と市民参加のためのキャパシティ ・ ビル 国民の理解と親の参加を促す戦略を ディング・プロジェクト 策定・実行するために、ギニアとマリの • アルメニア:地域社会ベースの都市給水管理プロジェクト 地域社会指導者、現地NGO、および政府 • ラオス人民民主共和国:辺境高地分水界地域社会のエンパワーメン ト 高官の能力、知識、およびスキルを強化 する基盤を構築する。 • フィリピン:貧困層に配慮した予算編成と地方政府の説明責任の強化を目 的とした地域社会のキャパシティ・ビルディング • フィリピン:地域社会による農業改革・貧困削減管理プロジェクト 2002年度に承認されたJSDFグラン トのうち、社会開発セク ターに次いで多 くの資金配分を受けたのは農村開発セク ターでした。配分額は4件のグラン トの合計で440万ドルに上っています。4件の内訳は次の通りです。持続可 能で小規模な採掘を促進することにより、農村の所得向上と貧困削減を目 指すパプアニューギニアのキャパシテ ィ・ビルディング向けグラン (50万ド ト ル) 、水利用者組合のエンパワーメン トとサービス供給能力の向上を目指す カンボジアのグラン (80万ドル) ト 、タジキスタンの貧困削減グラン ト(160万 ドル) 、 およびイン ドのプネー地区の農村部を対象と したパイロットITプログ ラム (100万ドル)。 8 27821 キャパシティ・ビルディングと 図3 2002年度に承認されたグラントのセクター別配分 持続可能性の支援 (総額に占める割合) 2002年度は9件のキャパシティ・ビル マルチセクター 6% ディ ング向けグラントが承認されま 農村開発 16% した。承認総額はグラント全体の 社会開発  28% 39%に相当する1020万ドルでした。 水と衛生 これらのグラン トの受領国はパプア 13% ニューギニア、 カンボジア、ギニア とマリ、 ヨルダン、エクアドル、ペ インフラ 4% ル ー 、インド、および ロシア で す。 保健 2% グラン トの対象となった活動は、地 人的開発 教育 16% 域社会福祉と トレーニング、社会経 4% 済 調 査 、情 報・教 育 プ ログ ラム 、 法律・司法   社会的保護 4% 7% ワークショ ップと 「タウンホール」 ミー ティングの促進、小規模なインフラ 投資、PTAの集団研修、生活技能 の習得、 モニタリ ング・システムの設計、教員養成プログラムなどです。 グラントの実施におけるNGOとの協力 JSDFはグラン トの実施にあたり、国内外のNGOと良好な協力関係を築いて きま した。2002年度に承認されたJSDFグラントの62%はNGOが実施を担当 しています (2001年度は30%)。その他のグラントは中央官庁、地方政府機 関、 または世銀が資金を提供している既存プロジェク トの調整部門が実施し ています。 2002年度に承認されたJSDFグラントでは、 グラン トの活動と目的の設定に 必ずNGO、地域団体、 または地方政府が参加しま した。しかし、このプロセ スには相当の費用と時間がかかるため、 グラン トの準備に利用できる資金 がない場合、 これらの組織を本格的に参加させることは困難です。この問 題を解決するために、JSDFは2002年度にJSDFシード基金を創設しました。 JSDFシード基金 2002年3月、日本政府は世銀グループのタスクチームがJSDFプロポーザルの 準備過程で利用することのできるシー ド基金グラン トを創設することを承認 しま した。JSDFプロポーザルの作成時は、 プロポーザルの効果と持続可能 性を最大限高めるために、 シビル・ソサエティ組織との会合が頻繁に開かれ ます。JSDFシー ド基金はそのために必要な追加費用を支援することで、 こ うした協議が円滑に開催されるようにするものです。タスクチームはJSDFプ 9 27821 ロポーザルの作成準備費と して、最 図4 2002年度に承認されたキャパシティ・ビルディン 高5万ドルのシード資金 (グラント) グ向けグラントとプロジェクト向けグラント (総額) を申請することができます。シード $30.0 資金の対象となる支出は、 コンサル ティング・サービス(地域協議プログ $25.0 ラムの専門家など) 、現地コンサル キャパシティ・ ビルディング向けグラント  タントの費用、JSDFグラント・プロ $20.0 1020万ドル ポーザルの準備に直接関連のある $15.0 世銀職員出張費/生活費などです。 シー ド資金を受け取ったタスクチー $10.0 プロジェクト向けグラント 1580万ドル ムは、 シード資金の承認日から12カ $5.0 月以内に質の高いJSDFグラン ト・プ ロポーザルを提出することになって $0.0 います。 2002年度は2件のJSDFシード基金 グラン トが承認されま した。1件はバングラデシュの 「ヒ素汚染対策:地域社 会による水・非送電網型発電管理パイロッ ト・プロジェク ト」 (3万6500ドル) の準備を支援するもの、 もう1件はエチオピアの 「牧畜社会支援プロジェク ト」 (1万8500ドル)の準備を支援するものです。シー ド基金に関する詳細は第5 章をご覧ください。 アフガニスタン特別支援 2002年3月、日本政府と世銀はアフガニスタンの復興と政治、経済、および 社会的安定を支援する3年間の援助プログラムにJSDFの一部を提供するこ とで合意しま した。日本政府はこのプログラムに1830万ドルを拠出しました。 2002年度はアフガニスタンに対して3件、合計400万ドルのグラン トが承認さ れま した。内訳は「NGO支援プログラム」(200万ドル) 「国家連帯プログラ 、 ムのためのキャパシテ ィ・ビルディング」(150万ドル)、および「NGO/保健セ クター緊急復興開発プログラム」 (50万ドル) です(第5章参照)。 10 27821 2 現場からの声 第3章 「2002年5月にナカイヒア村で『貧困層のための村落投資 (VIP)』プログラムが始まったとき、住民は懐疑的でし た。過去の例と同じように、 これも口先ばかりのプロ ジェク トに違いないと思ったのです。一方、政府もこの 村については多少の疑念を抱いていました。地区の行 政担当者は、 この辺りの住民は怠け者で扱いにくく、協 力することなど不可能だと言っていま した。 プログラムの開始から10カ月がたった今、村では7つの 小規模な活動が進んでいます。このうち、 コメ銀行と村 落医薬品基金は村全体を対象と したもの (すべての住民 がターゲット・グループであり受益者)、豚飼育、鶏飼育、 野菜栽培、小規模商店、 およびコメの増産はそれぞれ、 特定の住民グループを対象と したものです。 具体的な活動が進んでいる様子を見て、住民はもちろ ん、地区の行政担当者もこのプログラムに対する考えを 改めるようになりました。今、村では住民と村・県の農 業担当者が、新しいスキルとチームワークを共に学んで います」 ― JSDFが支援したラオス人民民主共和国の農業開発 プロジェクト「貧困層のための村落投資 」 (VIP) より、 カムアン県ナカイヒア村の事例研究部分を抜粋。 2 JSDFチームは2002年度の年次報告を作成するにあたり、 クライアント と受益者の声を反映させる必要があると考えま した。チームは中立 な立場にあるコンサルタン トを通して多数の世銀タスクチーム ・リー ダーとグラン ト受領機関にインタビューを行い、JSDFグラン トに関する 経験と、 プログラムの強み、短所、 および改善すべき点について尋ね ま した。インタビューはあらかじめ作成された質問表に基づいて、対 面式と電話方式で行われま した。 11 27821 「このグラントは中国政府高官の認 「JSDFの中でも特に革新的なのが、 識を改めさせたと思います。中国 一部の地域で実施されている生活 ではこれまで、 この種のプロジェク 技能パイロッ ト・プログラムです。こ ト、つまりパイロッ ト事業が実施さ のプログラムは学校に通う子供た れたことはありませんでした。通常、 ちに鶏や豚を与え、その世話を任 プロジェクトはトップダウンで進めら せます。子供たちはプログラムの れるからです。このグラントは中国 助けを得ながら、動物を育ててい 当局の姿勢を変化させるものとなる きます。この経験は子供たちに地域 でしょう。このプロジェク トが成功 社会で生きていくための基本技能 すれば、失業率の高い別の地域で を教えると同時に、その家族に新 も実施される可能性があります」 たな生計手段を提供するものとなっ ています」 ― 世銀タスクチーム・リーダー (中国遼寧省の都市貧困層支援を担当) ― 世銀タスクチーム・リーダー 「基礎教育プロジェクト」 (カンボジアの 生活技能コンポーネント担当) 「我々が活動している地域には、人 口の50%以上を学齢期の児童が占 めているところもあります。しかし 「世銀のルールや規定は理解しにく 多くの場合、こうした児童の50%以 いときがあります。2件目のグラント 上は学校に通っていません」 では生活技能コンポーネン トを削除 しなければなりませんでした。そう ― セーブ・ザ・チルドレン・カンボジアの しなければ、JSDFがグラントを承 プロジェクト・アドバイザー 認してくれなかったからです。1件 (「紛争後調停中の地域における 目のグラントでこのプログラムが大 基礎教育プロジェクト」担当) きな成果を上げたことを考えると残 念でなりません」 ― 世銀タスクチーム・リーダー 「基礎教育プロジェクト」 (カンボジアの 担当) 12 27821 「世銀の融資対象とならない活動を 「グラントの承認後は、大量の事務 支援する場合は、JSDFがとても役 処理、調達計画の立案、法務関係 に立ちます。モンゴルである世銀 のチェックなどをこなさなければな プロジェク トを実施したとき、我々 りませんが、実施機関がこの手続 はストリートチルドレンの問題に気 きに慣れていない場合は、特に大 づきました。その後、 この問題に関 きな負担となります。こう した作業 する調査を進め、子供たちを支援 はタスクマネジャーの肩にかかって するためにJSDFグラントを申請する くることが多いものの、資金には限 ことにしました」 りがあり、必要な作業をこなす時間 もありません。つまり、我々が是非 ― 世銀タスクチーム・リーダー ともグラン トを申請しよう という気に (モンゴルの「ストリートチルドレンの なる環境はほとんど整っていませ 社会復帰グラント・プロジェクト」 ん。グラン トが承認されれば、大量 担当) の作業を孤軍奮闘でこなさなけれ ばならないことが分かっているから です。それでも我々がグラン トを申 「NGOに主導権を持たせたいなら、 請するのは、 この国を助けたいか NGOともっと直接対話するべきで らです」 す。そうすれば知識も増え、NGO が直面している問題をよりよく理解 ― 世銀タスクチーム・リーダー できるようになるでしょ う」 ― 世銀タスクチーム・リーダー 「我々はみな、JSDFのようなプログ (アフリカ地域担当) ラムの存在に感謝しています。こう したプログラムはどれも、 きわめて 有益な目的にかなう ものであり、グ 「JSDFのすばらしいところは革新を ラント資金の提供者はたたえられる 奨励している点です。 しかし、革新 べきです。我々は日本の国民と政府 には多少のリスクもつき ものです」 に感謝しなければなりません。世 銀が少額グラントの要件を緩和す ― 世銀タスクチーム・リーダー れば、グラン トの管理と運営にかか (ラテンアメリカ・カリブ海地域担当) る費用も、それほど高くならずに済 むでしょう」 ― 世銀タスクチーム・リーダー 13 27821 主なJSDFグラント 第4章 ベナン:児童保護基金 グラント額:75万8000ドル 状況:実施中 グラントの受領機関/実施機関:Agence de Finance‑ (AGeFIB) ment des Initiatives (現地NGO) グラントの目的:労働を目的とした児童の国内移動・国際 移住を防止し、搾取的な児童売買の犠牲となっている児童 の救済と社会復帰を促す施策を試みる。 「世銀のグラント資金は通常、 1990年代末の金融危機は世界の経済環境を一変させ 外国人コンサルタントによる分析 ました。繊維市場と綿花市場も例外ではありません。 や報告書という形で提供されます。 綿花が輸出額の80%近くを占めるベナンでは、繊維産 それに対して、JSDFのグラント 業が大きな打撃を受けました。中でも、 このセクターの 大多数を占める貧しい農民が受けた被害は甚大でし 資金は現地で具体的な成果を生み た。この苦境に対処するために、 ほとんどの農民は悲 出す資金そのものとして提供され 劇的な方法を選びました。それは幼い子供を家計から ます。これがグラント資金の本来 切り離し、労働力として移住させるという ものです。ほ あるべき姿で、世銀にとっても、 とんどの子供たちは隣接するガボンやコー トジボワール さらには受益者にとってもよい に送られました。子供を手放すことを親にたきつける 仲介業者も存在します。一般に 「児童売買」 と呼ばれる ことです」 この行為は違法であり、対象となった子供たちは何の ― 世銀タスクチーム・リーダー (アフリカ地域担当) Curt Carnemark/World Bank JSDFは弱い立場に置かれた児童を保護し、児童労働の発生を防ぐプロジェク トを支援しています。 14 27821 契約書も法的地位も与えられないまま、移住先の国で搾取されています。 現在、国際社会の注目はストリートチルドレンに集まっており、児童労働の 問題はほとんど注目されていません。しかし、ここでいう労働とは基本的に 強制労働であり、搾取されている子供の数はス トリートチルドレンを上回り ます。最も状況が深刻なゾウ地区では、農村の子供の実に15%が仕事を 探す目的で地域社会を離れています。6歳から16歳までの児童の半数が国 外に送られた村もあり、児童売買の影響は全体の半数以上の村々に及んで います。 JSDFグラン ト 世銀チームは世銀が資金を提供する 「ベナン社会基金」を準備・実施する過 程で、児童売買の問題をはっき り と認識するようになりま した。この基金はベ ナンの最も貧しく、最も弱い立場に置かれた人々に基本的な社会サービス を提供することを目的としたもので、すでに実施段階に入っています。現地 ではノルウェー政府の資金をもとに、国内の研究者が参加型アプローチに 基づいて大規模な調査を実施し、児童売買のリスクと原因を特定しま した。 グラン トの設計にはさまざまな利害関係者と主要な実施母体が参加し、実 施に参加する現地シビル・ソサエテ ィ組織とNGOが選定され、現地NGOの Agence de Financement des Initiativesが実施機関に選ばれました。 囲み4 ベナン:児童保護グラント コンポーネントと活動 1. AGeFIBとその他の実施機関(NGO)のキャパシティ・ビルディング 活動:NGOの組織能力を強化し、児童保護の分野でそれぞれが進めている活動 を拡大・改善すると共に、各NGOの財務管理能力を強化する。売買対象となっ た児童への対処方法を指導し、被害児童の地域社会への復帰を助け、家族が児 童に代わりの活動を見つけることができるよう支援する。 2. 村落統合コンポーネント (特に世帯主と村長の意識喚起が必要) 活動:児童と家族の意識を高める 。村で 児童の手配や仲介を行っている人物を教育する。危機にさらされている家族が、 子供に雇用機会やその他の所得獲得機会を与えたり、学校・徒弟制度に参加さ せたりすることができるよう支援する。少額のグラントまたは融資を提供し、売 買の対象となった児童が家庭に復帰できるよう経済活動の開始を支援する。 3. モニタリング・評価コンポーネント 活動:ミクロ介入を行うことができる細密なシステムを構築し、参加履歴と結果 を体系的に記録する。参加地域で2件の調査を実施し、労働目的で土地を離れ た子供を特定、その時期、および同行者を調査する。 15 27821 このグラン トは労働を目的と した児童の国内移動・国際移住を防止し、搾取 的な児童売買の犠牲となっている子供の救済と社会復帰を促進することを 目指すパイロッ ト・プロジェク トです。この目的を達成するために、次の3つ のコンポーネン トが進められています。 (1)キャパシティ・ビルディング・コン ポーネン ト:グラン トを実施するAGeFIBやその他のNGOのスキルを強化す る、(2)村落統合コンポーネン ト:意識啓発・支援プログラムを通して住民の 「JSDF基金を使ってパイロット・プログ 問題意識を高め、危機にさらされている家族が生計を持続的に確保できる ラムを実行できるようになったことは、 よう、雇用機会やその他の生計手段を創出する、 (3)包括的なモニタリン 世銀職員にとって大きな意味を持ってい グ・評価コンポーネン ト:グラントの実施過程から教訓を引き出し、パイロッ ます。その結果をもとに国別チームを ト・プロジェク トを最終目標である国家規模の活動に発展させる。 教育できるだけでなく、十分な情報に 基づいて、世銀プロジェクトを設計でき るようになるからです。現在、我々は 本グラントの主な受益者は、労働力として国内外に移住させられたベナン JSDFグラントの成果をもとにある の児童、新たな被害者となる可能性のある児童、およびこれらの児童の家 プロジェクトを設計しています。 族と地域社会です。 このプロジェクトには全国レベルの パイロット・プログラムの教訓が これまでの成果 反映される予定です」 開始から2年目を迎えた2002年度は、意識喚起、情報提供、 および労働を目 ― 世銀タスクチーム・リーダー 的とした児童の移住問題に取り組んでいるNGOのトレーニングの各分野で (ベナン担当) 大きな進展がありま した。NGOから具体的なグラン ト・プロポーザルが提出 されるまでにやや時間がかかったため、実際に支払われたグラン ト資金は 全体の約35%にとどまっています。 しかし、現在では相当数のプロポーザル がNGOから提出されたため、 残りの資金もまもなく全額活用される予定です。 これまでの主な成果は、児童売買問題に対する認識の向上と、関係者の キャパシティ・ビルディングです。NGOによる具体的な介入は始まったばか りです。 強みと問題点 本グラントを担当する世銀タスクチーム ・リーダーは、JSDFの最大の強みは 小規模な活動に資金を提供し、 その実施過程から教訓を学びとるユニーク な能力であり、国レベルの活動に発展させることが求められると答えていま す。世銀が小規模なパイロッ ト・プロジェクトを実施する機会は限られてい るため、JSDFは途上国が世銀から多額の資金を借り入れ、未知数の開発 プロジェクトに国レベルで取り組む前に、小規模なパイロッ ト・プロジェクト を実施し、 その経験から学ぶ機会を提供するものとなっています。 ベナン・プロジェク トの最大の問題の一つは、 プロジェクトが始まる前の設 計段階にありました。グラン トの準備に利用できる資金がなければ、 グラン トの設計に幅広い関係者を交えることはきわめて困難です。実施中の世銀 プロジェクトがなければ、JSDFプロポーザルを完成させることはできなかっ たと世銀タスクチーム ・リーダーは述べています。シー ド基金はこの問題の 解決に大き く貢献するものになると考えられています。 16 27821 また、世銀タスクチーム・ リーダーの多くは、JSDFが革新と学習を地域社会 レベルで支援するという本来の目的を達成するためには、現在のガイ ドライ ンを見直し、革新や新しい手法・活動を積極的に導入できるようにするべき だと考えています。新しい種類の介入は効果が疑問視されることが多く、 革新的な活動がグラン ト・プロポーザルから切り捨てられたり、大幅に変更 されたりすることがあるからです。 カンボジア:紛争後調停中の地域における基礎教育 「JSDFは世銀とNGOが信頼関係に 基づく本物のパートナーシップを グラント額:162万500ドル 構築する一助となっています」 状況:実施中 ― 世銀タスクチーム・リーダー (国際NGO) グラントの受領機関/実施機関:セーブ・ザ・チルドレン・ノルウェー (東アジア・大洋州地域担当) グラントの目的:対象地域で最も弱い立場に置かれている子供たちを対象に、教 育機会を拡大し、学習の質を改善し、生活の質を向上させる。 カンボジアはアジア太平洋地域で最も就学率の低い国です。中等学校を備 えた村は全体の5.4%、高等学校にいたってはわずか2%にすぎません3。7 歳未満の子供の就学率は65%ですが、北部ではその割合が大幅に低くなり ます。児童労働率は高く、特に女児の場合は深刻です。教員の数、 スキル、 および教材も極端に不足しています。 このグラントの対象となっている北部の紛争後調停中地域 (シエムリアップ 州、オッドー・ミアンチェイ州) は、1972年から1998年までクメール・ルージュ の支配下にありました。この地域は極度の貧困にあえいでおり、8万2900人 もの学齢児童 (6–15歳)のうち43%は教育を受けることができない状況にあ ります。4万7900人の小学生のうち、初等教育を修了できるのは約13%にす ぎません。 JSDFは「紛争後調停中の地域における基礎教育プロジェク ト」 に160万ドル のグラン トを供与しました。最終年にあたる2年目を迎えた現在、本グラン ト は域内で最も弱い立場に置かれている子供たちを対象に、教育機会の拡 大、学習の質の改善、および生活の質の向上に取り組んでいます。本グラ ン トの中心となっているのは次の3つのコンポーネン (1) トです。 基礎教育を 受ける機会の拡大、 (2)学力の向上と学習の質の改善と拡充、(3)生活の質 の向上 (囲み5参照)。 3 2002年のUNDPのデータ 17 27821 本グラントはセーブ・ザ・チルドレン・ノルウェーのカンボジア現地事務所に 供与され、同NGOがシエムリアップ州教育委員会と共に実施しています。 これまでの成果 カンボジア基礎教育プロジェクトは計画通りの成果を達成しています。国内 には本プロジェクトのための分野横断的な支援体制が構築され、生活技能 を習得するための革新的なアプローチも導入されました。本グラン トの成 果を示す主な指標は次の通りです。 • 36棟の校舎を建設 (コンクリート製校舎は計画通り25棟が完成。木造は、 11棟の「ミニ」校舎が完成し、16棟を建設中) • 4棟の地区教育委員会事務所を建設。このほか2棟を建設中。 • 対象地域において、6年制学校が23校から41校に増加。 • 236人の教員が 「子供にやさしい学習環境」 と呼ばれる教育手法 (CFLE) を習得。 • 統計と行動計画を備えた学校が21校から135校に増加。このうち47校は 教育の質を効果的に管理する手段と して学校開発計画を採用。残る88校 はよ り簡易な行動計画を採用。 • 24のパイロット校で470人の児童が生活技能を習得し、家庭で実践して いる。 囲み5 紛争後調停中の地域における基礎教育(カンボジア) コンポーネントと活動 コンポーネント1:児童が基礎教育を受ける機会の拡大 活動:「州・地区教育委員会(PEO)」のキャパシティ・ビルディング。学校支援委 員会を設置し、意志決定の委譲と地域社会の参加を促進する。23の小学校と 25の「ミニ」木造学校を建設する。7つの地区委員会事務所を改修し、190の教 室、23の図書館、7つの地区事務所に家具と備品を提供する。4000人の極貧児 童に教材と医薬品を提供する。 コンポーネント2:学力の向上と、質の高い教員・学校運営者研修による学習の 質の改善と拡充 活動:「州教員養成(PETT)」プログラムを利用し、教員トレーナーを養成する。 教員用の教材と指導方法を開発し、資源を整理し、現役教員にトレーニングを 提供する。州教育委員会のモニタリング、評価、および報告システムを構築/強 化する。 コンポーネント3:生活の質の向上 活動:生活技能と職業技能の習得を助けるトレーニングを開発・実施し、児童福 祉の向上に役立てる。このセクターで活動しているドナーとNGOの活動を調整 する。対象児童に生活技能トレーニングを提供する。 18 27821 本グラントが学習の質、就学率、および生活技能にプラスの影響を及ぼして いることは数字にも表れています。 • 進級率は2001年の71% (3万1988人)から2002年は83%(4万8743人)に上 昇。これは学習の質が向上していることを意味する (母数である生徒数が 増加しているので、進級者を数でみるとかなり大幅な増加になる) 。 • 2002年末時点で1–6学年のいずれかに就学している子供の数は、前年 (5 よ 万8693人) り12%(7776人)多い6万6569人(就学率88%) 。 JSDFはグラントの結果と影響を詳細に分析するために、総合評価の実施を 計画しています。その際、主に退学率、学習の質、対象校の生徒の声と経 験、およびプロジェク トを全国レベルに拡大する可能性が分析される予定 です。 セーブ・ザ・チルドレン・ノルウェーは先日、 カンボジアの別地域を対象と し たプロジェク トに対し、JSDFから2件目のグラントを獲得しました。これは本 プロジェク トが成功をおさめていることを示す大きな証拠です。JSDFが NGOに2件目のグラントを認めるのははじめてのことです。 強みと問題点 世銀タスクチーム・リーダーとセー ブ・ザ・チルドレンのカンボジア担 Masaru Goto/World Bank 当 プ ロジェクト・アドバ イザ ーは 、 JSDFの最大の強みは、地域のニー ズに密着し、的を絞ったプログラ ムを実行するための資金をNGOに 直接提供できる点にあると答えてい ます。また、両者はこれが両機関に とってはじめての共同事業であり、 J S D F を 機 に 質 の 高 い パ ートナ ー シップが構築され、双方で実施・学 習のプロセスが促進されたと述べ ています。 世銀タスクチーム ・リーダーは、その 他の多くのリーダーと同様に、JSDF がこれからも革新を促進していくた めには、運営管理面の要件を見直 グラントの対象と す必要があると述べています。たと なった地域では、 えば、最初のグラン トで大きな成果 実施からわずか2年で 1–6学年の生徒が を上げた生活技能コンポーネント 7776人増え、 は、 2件目のグラントでは疑問視され、 進級率は50% JSDF当局の要請によ り、最終的なプ 上昇しました。 ロジェク ト計画から外されました。 19 27821 世銀と実施機関のセーブ・ザ・チルドレンが指摘したも う一つの問題は、プ ロジェクトの準備段階に関するものでした。セーブ・ザ・チルドレンにとって、 最初のプロジェクトの準備は複雑で、厳密で、要求が多いと感じられるもの でした。これは主に、担当チームが世銀の方針や手続きに慣れていないこ とによるものでした。2度目のプロジェクトでは担当者がこのプロセスに慣れ ていたため、準備ははるかに容易に進みま した。 「JSDFのすばらしいところは革新を 奨励している点です。しかし、革新には 手続きの面では、延長の問題も指摘されま した。事務処理や、 グラントが発 多少のリスクもつきものです」 効し、資金を支払うまでの承認プロセスの問題などから、 セーブ・ザ・チル ドレンに実際に資金が払い込まれたのはグラン トの承認から半年も後のこ ― 世銀タスクチーム・リーダー (ラテンアメリカ・カリブ海地域担当) とでした。それにも関わらず、グラン トの終了日はほとんど延長されていま せん。セーブ・ザ・チルドレンはプロポーザルに盛り込まれた活動のすべて は無理でも、大半は予定通りに完了することができると見込んでいるものの、 グラントの実施期間をもっと容易に延長できるようにするべきだとしていま 「(JSDFの)手続きは厳格ですが、適切で す。この問題に対処するために、JSDFは2002年度、グラントの実施期間を4 す。勝手が分かっているので、2件目の 年に延長することに合意しました。 グラントは前回よりもはるかに容易に 設計することができました」 プロセスに関しては、世銀とセーブ・ザ・チルドレンは共に、手続きそのも ― セーブ・ザ・チルドレン・ノルウェー のに問題はないが、簡略化の余地があると指摘し、グラントに何を含めるか (カンボジア担当) の判断は、専門家に委ねるべきだと述べました。 サモア:保健改革時における貧しく、弱い立場に置かれた人々の保護 グラント額:33万8300ドル 状況:実施中 グラントの受領機関/実施機関:サモア政府、保健省 グラントの目的:サモア政府による保健セーフティネットの強化を支援し、サモ アの貧しく、弱い立場に置かれた人々が保健セクターの改革過程に適応できるよ うにする。 現在、サモア政府は保健資源の管理を強化し、すべての国民に質の高い保 健サービスを提供するための包括的な保健改革を進めています。改革はあ らゆるレベルの供給システムに及ぶため、主要な関係者、特に不利な立場 に置かれた人々(きわめて脆弱で、保健サービスを十分利用できない貧困 層)や女性で構成される委員会に悪影響の及ぶ可能性があります。 20 27821 このJSDFグラントの目的は、セーフテ ィネッ トを提供することと、保健セク ター改革の過程で起きる変化に、貧しく弱い立場に置かれた人々が適応で きるようにすることです。実施2年目の現在、本グラン トは次の4つのコンポー ネントに資金を提供しています。 (1)保健サービスの供給/提供に取り組む 地域社会とNGOを支援する革新基金、 (2) NGO、女性委員会、 およびその 他の地域団体が地域社会レベルで保健やそれに関する活動を遂行するた めのキャパシテ ィ・ビルディ ング・コンポーネン ト、 (3)地域社会ベースの保健 「グラント申請の受け付けを告示してから 活動の支援基盤となり うる主要リソース団体 (NGO、専門家組織、学術機関 (PCU) わずか2週間で、 事務所には NGOから100件もの申請が届きました。 など)のトレーニング、(4)2度の年次監査に対する資金援助 (囲み6参照)。 地域社会の反応は驚くほど 大きいものでした」 このグラントは世銀プロジェクトと連携したものとなっています。サモア政府 は当初、NGOの能力を高め、保健改革でNGOが果たす役割を拡大するコ ― 世銀タスクチーム・リーダー ンポーネントを世銀プロジェクトに含める予定でしたが、資金を借り入れる (サモア担当) ことに懸念があったため、計画の内容をJSDFグラント・プロポーザルに盛り 込み、グラントの供与を認められました。 これまでの成果 サモア・プロジェク トはきわめて革新的で分散的なアプローチを用いて、 キャパシテ ィ・ビルディングと草の根ベースの保健プログラムに取り組んでい ます。このグラン トは一元管理された資金から、保健サービスの供給と提供 に取り組む地域社会とNGOを支援しています。JSDFのもとにはNGO、地域 社会組織 (CBO)、およびさまざまな地域団体から合計122件のファンディ ン グ・プロポーザルが提出されま した。グラント運用委員会(GOC)はこのうち 約25%を処理し、 これまでに18件のサブグラント契約(総額7万3560ドル)が GOCの承認を受け、保健省との間で締結されま した。 小規模なグラン トの場合、グラントの受領機関に調達手続きとガイ ドラインを 遵守するだけの組織能力や説明責任がない場合があります。 しかし、世銀 チームが最近のグラン ト・モニタリングで18件の締結済みJSDFサブグラント 契約を分析したところ、すべての受領機関がグラン ト業務マニュアルに明記 された調達手法を遵守していることが分かりました。また、 プロジェクト管 理チームとGOCが作成した審査手順書はきわめて完成度が高く、 グラントが 透明で効率的な方法で選択されていることを示しています。 21 27821 囲み6 サモア:保健改革時における貧しく、弱い立場に置かれた人々の保護 グラントのコンポーネントと活動 コンポーネント1:革新基金 活動: • 農村部を対象に、糖尿病の予防と治療を目的とした包括的なパイロット・プロ グラムを実施する。このプログラムには女性の健康委員会、専門看護婦、糖 尿病予防プログラムのスタッフ、および地域の保健婦が参加。全体の統括は 地域社会委員会が担当。 • 遠隔地の住民が保健サービスを手軽に利用できるように、地域社会が運営す る交通サービスを試験的に導入する。 • 不利な状況にある人々が保健サービスを利用できるように、地域社会に密着 した金融制度を試験的に導入し、NGOに運営を委ねる。 • 地域社会の保健状態をモニタリングするために、地域団体と公衆衛生局の連 携を試みる。 • 農村部の保健施設を地域社会が改善・保守する仕組みを試験的に導入する。 コンポーネント2:キャパシティ・ビルディング 活動:地域団体にはプロジェクト管理と組織に関するトレーニング、女性委員会 には予防衛生の主要分野とコミュニケーション能力に関するトレーニング、地域 社会と女性委員会の指導者にはコミュニケーション能力に関するトレーニングを それぞれ提供する。 コンポーネント3:保健支援ネットワーク 活動:地域社会ベースの保健活動の支援基盤となりうる主要リソース団体 (NGO、技術機関、学術機関など)にトレーニングを提供する。 コンポーネント4:年次監査 活動:プロジェクト年度の最後に監査を実施する。 強みと問題点 世銀タスクチーム・リーダーは、JSDFグラントは政府が保健改革を推進する 上で大いに役立っただけでなく、普段はこう した改革に関与することのない NGOやその他の地域団体の参加を促す上でも有効だったと述べています。 この少額グラント・プログラムには、JSDFチームの想像をはるかに超える反 響がありました。これは地域社会が保健改革やサービスの供給に参加する 意志と関心を持っていることを示しています。JSDFの支援をも とに、政府は こうした団体を直接雇用し、保健改革にプラスの影響を与え、NGO・地域 団体とのパートナーシップを強化しま した。 22 27821 JSDFグラントに関する問題は、JSDFのプロセスと手続きの面に集中しまし た。大方の意見と同様に、本グラントを担当した世銀タスクチーム・ リー ダーも、 グラン トの準備費用の一部を世銀が資金を提供する別のプロジェク トでまかなう ことができなければ、 グラントを効果的に準備・実施することは できなかったと述べています。JSDFグラン トの実施機関は、この世銀プロ ジェク トと同様に、世銀の資金をもとに保健省に設置されたプロジェク ト実 施部門が務めています。この部門が世銀の規則や手続きに慣れていたこと が、JSDFグラン トにとってはきわめて有利に働きました。タスクチーム・リー ダーは、 世銀の方針や手続きに初めて接する団体が実施機関になった場合、 JSDFグラントを効果的に実施できるかどうかは分からないと述べています。 また、JSDFグラントは世銀の通常のプロジェク トに比べて規模が小さいにも かかわらず、JSDFはプロジェクトを効率よ く管理する仕組み(プロジェクト管 理のトレーニング、モニタリング・システム、実施機関のキャパシテ ィ・ビル デ ィングなど)に資金援助を行っていません。持続可能性を高めるためには、 JSDFは今後、 この分野のキャパシティ・ビルディングと支援システムの整備 を優先的に進める必要があります。 プロセスに関しては、世銀チームにとっても、 また将来のグラント実施機関 にとっても、シード基金がきわめて有効だと考えられています。この種の基 金がなければ、質の高いグラン ト・プロポーザルを作成することも、現地の 関係者を対話や参加型プロセスに巻き込むこともできないでしょ う。 23 27821 個別ニーズへの対応: 第5章 JSDF特別プログラム JSDFシード基金 JSDFは地域の参加とエンパワーメ ントを促進し、短期間 で成果を上げることのできる革新的で的を絞ったプロ グラムを支援するために設立されました。このようなプ ロセス指向の目的を実現するためには、 プロジェク トを 綿密に設計するだけでなく、徹底的で包括的なプロセ スに沿った準備が必要となります。この準備プロセスで は、 グラン トに関する協議やワークショ ップを開催し、少 なく とも受益者、主要な利害関係者、およびグラントの 「グラントの準備は本当に大変 実施に携わる可能性のある組織の参加を得なければな でした。現地NGOと地域団体の りません。対象地域のニーズを分析し、組織・制度能 参加を促し、ニーズを評価し、 力を検証し、 リスクと、 それを緩和する戦略を明確にす プロジェクトを設計し、詳細な ることも重要です。これは規模の大小を問わず、 どのプ ロジェク トを成功させるためにも必要なプロセスです 配分計画を練る・・・どれをとっても が、時間、資源、 そして資金を必要と します。世銀と日本 時間と資金が必要です。実施中の 政府は初年度の経験から、 グラントの準備・設計に取り 世銀プロジェクトがなければ、 組むタスクチームに支援を提供する必要があると考え、 JSDFグラントを準備することは 2002年3月、JSDFグラン ト・ファシリテ ィから配分された できず、この国は貴重な資金源を 100万ドルをも とに、JSDFシー ド基金を設置しま した。 失っていたでしょう」 JSDFシード基金の支援額は最高5万ドルです。支援を受 けた組織は、 シード資金の承認から12カ月以内に質の高 ― 世銀タスクチーム・リーダー いJSDFグラント・プロポーザルを提出しなければなりま せん。シード基金を申請する際は、参加型プロセスに 沿った準備を進めるために資金援助を得る必要がある ことを、説得力のある形で示す必要があります。シー ド 基金の対象となる支出は、 コンサルティング・サービス (地域社会協議プログラムの専門家など) 、現地コンサル タン ト費用、世銀職員の出張費/生活費などです。 シード基金は年度末に設置されたため、2002年度に承 認されたプロポーザルは2件でした。このうちの1件は バングラデシュの 「地域社会による水・非送電網型発電 管理パイロッ ト・プロジェク ト」の準備を支援するグラン ト (3万6500ドル) 、もう1件はエチオピアの「牧畜社会開 発プロジェク ト」の準備を支援するグラン ト(1万8500ド ル)でした(囲み7参照) 。 24 27821 囲み7 2002年に承認されたJSDFシード基金グラント バングラデシュ:ヒ素汚染対策:地域社会による水・非送電網型発電管理パイ ロット・プロジェクト(3万6500ドル) 予定JSDFグラントの目的:配水や(再生可能電力の)非送電網型発電システム 「シード基金が創設されたことは、 の管理を地域社会に委ねることが、技術的、経済的、および制度的に合理的な グラントを準備する上でとても大きな 選択肢であること、また中央浄水施設を設けることが、ヒ素に汚染されていない 助けとなっています。JSDFグラントを 安全な飲料水を農村部に供給するための効果的で信頼できる手段であることを 成功させるためには、包括的で徹底した 証明する。 プロセスに従ってグラントを設計しなけ 予定JSDFグラントのコンポーネント :地域社会を動員し、パイロッ (仮) ト地 この種の基金がなければ、 ればなりません。 域を特定し、実行可能なスキームを設計するための技術支援を提供する。機器 こうしたことは不可能です」 (運転費用と資本コス 関連の費用を提供する トの一部は地域社会が負担)。結果 をモニタリング、評価、報告、および周知する。 ― 世銀タスクチーム・リーダー シード基金の対象となる準備活動:制度オプションの検討、低所得農村部に清 (東アジア地域担当) 潔で安全な水道水と電力を供給するための他国の取り組みの評価。ワーク ショップやアンケートを利用した参加型の評価、地域社会との協議、地域住民の 動員と組織化、ドナーと利害関係者の調整と連携、諸外国の経験と国内の経験 の照合。 エチオピア:牧畜社会開発プロジェクト(1万8500ドル) 予定JSDFグラントの目的:IDAの「牧畜社会開発プロジェクト 」 (PCDP) に広範 なNGOと地域社会を参加させ、NGOがこの分野で推進してきた活動を活用・拡 大する。 予定JSDFグラントのコンポーネント :地域社会開発基金を創設し、 (仮) その 資金をもとにNGOを雇用し、地域社会参加型の評価と利害関係者との協議を行 う。NGOフォーラムを立ち上げ、連携と地域社会開発に関する経験の共有を進 める。プロジェクト・アウトリーチとコミュニケーション戦略を立案・実施し、関 係者に情報を提供する。 シード基金の対象となる準備活動:コンサルタントの雇用。このコンサルタント はPCDPプロジェクト・タスクチームと密接に連携し、現地の職員、政府、および NGOコミュニティとの協議、および世銀タスクチームとの会合を通して、グラン ト・プロポーザルを作成するためのアドバイスを提供する。 JSDFアフガニスタン 2002年3月、日本政府と世銀はJSDFに特別枠を設置することで合意し、アフ ガニスタンでの援助活動に1830万ドルを拠出しま した。この3カ年援助プロ グラムは、 アフガニスタンの復興と政治、経済、 および社会的安定に寄与す るグラン トを支援するものとなります。 JSDF本体と同じく、シード基金にも2種類のグラン ト、すなわち「プロジェク ト向けグラン ト」と「キャパシティ・ビルディング向けグラント」があります。プ ロジェク ト向けグラン トの対象となる主な活動は、サービスと施設の改善、 25 27821 インフラの再建、およびソーシャル・セーフテ ィネットの強化です。キャパシ ティ・ビルディング向けグラントの対象となる主な活動は、 キャパシティ・ビル ディングと改善施策(政府機関、地域社会、 およびNGOを強化するための実 地研修、社会基金型組織の能力向上/対象範囲の拡大など) 、そして政府、 NGO、利益団体、および地域社会の建設的な交流を促し、実質的な増分利 益を生み出す施策です。 「アフガニスタンが必要としているのは 未来へのビジョンです―未来のアフガニ JSDF本体と同様に、 アフガニスタン向けのグラントもシビル・ソサエティ、 スタンでは、人々の安全は守られ、 NGO、 および地域団体の直接参加を促すものとなっています。ほとんどのグ 民族は穏やかに共存しています。政府は ラン トはアフガニスタン政府が実施機関を務める予定ですが、財務の健全 国民の意思を代表し、それを推進してい ます。男女は思い思いの生活を楽しみ、 性、実績、 およびグラント資金の利用・会計能力が証明されれば、地域団体 自らの生活の向上に努めています。 やNGOが実施機関に選ばれる可能性もあります。 経済成長が続き、貧困は時と共に 減少しています。教育を受ける機会は、 2002年度はアフガニスタンの復興を支援するために3件のグラン (合計410 ト 女児を含む、すべての国民に提供されて 万ドル) が承認されました。内訳は 「保健セクター緊急復興開発プロジェク います。基本的医療サービスと清潔な ト」( 50万ドル)「NGO支援プログラム」 、 ( 204万6000ドル)、および「国家連 水は万人に提供され、グッド・ガバナンス と政府の非介入は当たり前のものと 帯プログラム (NSP) のためのキャパシティ ・ビルディング」 (151万100ドル) なっています」 です (囲み8参照) 。 ― ジェームズ・D・ウォルフェンソン (米国務省で開かれたアフガニスタン 復興会議にて) 26 27821 囲み8 2002年度に承認されたJSDFアフガニスタン・グラント 保健セクター緊急復興開発プロジェクト(50万ドル) グラントの開発目標:政府とNGOの協調体制を強化することにより、予防接種、 妊産婦の健康管理、家族計画などの基本的保健サービスがすべての地域に提供 されるようにする。 グラントのコンポーネント: コンポーネン (辺境州への情報提供の改善) ト1 :対象辺境州の保健事務所に音 声データ通信用のコンピュータと太陽電池パネルを利用した高周波ラジオを提 供する。 コンポーネン (NGOとの保健パー ト2 :農村部における保健 トナーシップの管理) サービスの提供状況を改善するために、技術援助とトレーニングを実施し、保健 担当マネジャーがNGOと「成果ベースのパートナーシップ契約 」 (PPA) を締結・ 管理できるようにする。 NGO支援プログラム(204万6000ドル) グラントの開発目標:アフガニスタン暫定政権 を支援し、 (AIA) 「NGO支援プロ (200万ドル) グラム」 を設置する。このプログラムは政府を通じて現地NGOにグ ラントを提供するもの。 NGO支援プログラムの目的 1. アフガニスタンの地域社会が現地で実施される復興活動の選択、計画、およ び実施に全面的に参加できるようにする 2. 地域社会にサービスとリソースを速やかに提供することにより、住民の生活条 件を改善し、生産能力を拡大する。 3. 政府と地域社会、および政府組織と非政府組織(NGO)の交流を促進する。 グラントのコンポーネント: NGOグラント・ファシリティの指針、手続き、および透明性を確立し、小口金融、 保健と教育、地域社会インフラ、女性の能力開発と権利の擁護、およびメディア に関する活動に資金を提供する。 国家連帯プログラム(NSP)のためのキャパシティ・ビルディング (151万100ドル) グラントの開発目標:教育プログラムとキャパシティ・ビルディング・プログラム を通して、アフガニスタンの地域社会が現地で実施される復興活動の決定、計 画、および実施に全面的に参加できるようにする。 グラントのコンポーネント: 本グラントは次の3つのコンポーネントで構成されている。1)技術マニュアルや 各種プロジェクト文書の作成、2)NSP職員を対象とした地域動員に関する地域 レベルの意識喚起・キャパシティ・ビルディング・プログラム、3)手続き、方法 論、および新しい能力を実地で試みるためのパイロット・プロジェクトやその他 の活動。 27 27821 ガバナンスの仕組み 第6章 日本政府と世銀はJSDFを創設した際に、基金運営の指 針となり、資金を透明かつ効率的に管理するための包括 的なガバナンス構造を設定しま した。 グラントの審査と承認 JSDFプロポーザルはまず、国別担当局長、 セクター・マ ネジャー、 および技術審査官によって吟味されます。グ ラン ト・プロポーザルを審査するのはJSDFの創設時に設 置された世銀運営委員会です。提出されたプロポーザ ルは最小限の手直しを加えた後に日本に送られるか、一 旦タスクチームに戻し、修正後に再提出を求めるか、 あ るいは却下されます。運営委員会はJSDFの基準を満た したプロポーザルを日本政府に提出し、最終承認を待ち ます。 日本政府(財務省) はグラントを承認/却下するか、 さらなる修正を求めます。 日本政府の承認が得られた場 合、世銀タスクチーム ・リーダーは合意書に署名し、受領 機関と世銀がグラン ト契約に署名する前に、調達計画を 提出します。 グラントの実施と報告 JSDFグラントを実施する際は、(通常の世銀融資と同様 に) 世銀の調達・財務管理ガイ ドラインに準拠しなければ なりません。グラン トの実施期間は最長4年です。グラン トを実施できるのは中央・地方政府、NGO・地域団体、 および世銀です。世銀が実施機関を務めるのは例外的 なケースのみで、 グラントの受領機関がグラントを実施す る場合の要件は免除されます。世銀タスクチームはグラ ン トの進捗報告書を提出しなければなりません。この報 告書の抄録は日本政府に提出されるほか、JSDFのウェブ サイ トを通して一般にも公開されます。 28 27821 コミュニケーション 世銀はJSDFが供与したグラントの進捗状況を検討し、JSDFとグラントの全体 的な目的が達成されていることを確認するために年次報告書を作成し、 日本 政府に提出します (年次報告書はJSDFのウェブサイトでも公開されます)。世 銀と日本政府は審査会議も開催します。この会議ではグラン ト・プロポーザル の検討と承認/処理について話し合われるほか、 プロセスに関する問題や 改善すべき点についても議論が行われます。 また、世銀、 日本政府、およびアジア開発銀行は定期的に会議を開き、JSDF の全体的なパフォーマンスや実施過程で浮上した主立った問題、 および今後 の優先順位について議論しています (アジア開発銀行には 「日本貧困削減基 金 」 (JFPR)と呼ばれるJSDFに類似したファシリティが設置されています)。 JSDFのウェブサイト JSDFはウェブサイト を開設し、JSDFの (http://www.worldbank.org/rmc/jsdf) 目的やグラン トの進捗状況を一般に公開しています。ウェブサイ トの管理は 世銀が担当し、徹底した情報公開を進めています。 関連ウェブサイト JSDFパンフレッ ト: http://www.worldbank.org/rmc/jsdf/JSDF5.pdf  2001年度JSDF年次報告: http://www.worldbank.org/rmc/jsdf/ JSDF%20‑‑ %20Annual%20Report%2001.pdf (英語版) (日本語版) http://www.worldbank.or.jp/10ngo/pdf/JSDF̲ARJ2001.pdf 2002年度JSDF年次報告: (英語版) http://www.worldbank.org/rmc/jsdf/JSDFAnnualReportFY02.pdf 29 27821 27821 付録1:2002年度に承認されたJSDFグラント一覧 金額 国/プログラム グラント名称 (単位:ドル) グラントの目的 第5次拠出 パプアニューギニア 職人による小規模鉱業の影響を受けている (ま 468,300 (1) (2) 職業上の健康・安全リスクの改善と、 政 たはこれに関与している)地域社会の持続可能 策の改善からなる包括的なアプローチを通し で包括的な開発の促進と、それによる農村の て、職人による小規模鉱業が地域の環境、社会、 所得向上と貧困削減 および文化に与えているマイナス影響を緩和ま たは排除する。 第6次拠出 カンボジア カンボジアの水利用者組合のキャパシティ・ビ 796,900 都市周辺部に暮らす最も貧しく、最も弱い立場 ルディングと基本的サービスの供給 に置かれた人々を水利用者組合として組織し、 住民自身が給水・衛生施設を計画・実施・運 用・保守・管理できるようにする参加型のパイ ロット・プロジェクト。 フィリピン 貧困層に配慮した予算編成と地方政府の説明 718,269 貧困水準のモニタリングと、地方政府の予算編 責任の強化を目的とした地域社会のキャパシ 成・支出の透明化と説明責任の強化に貧困層 ティ・ビルディング と一般市民が参加できるようにするパイロッ ト・プロジェクト。 フィリピン 地域社会による農業改革・貧困削減管理プロ 2,000,000 「 地 域 社 会 による 農 業 改 革 管 理 プ ログラム ジェクト (CMARP)」の パ イロット・プ ロ ジェクト 。 CMARPは土地の分配、支援サービス、および 農場投資からなる政府プログラム。 パキスタン 弱い立場に置かれた人々のためのシンド州 950,000 シンド州の中で最も貧しく、最も弱い立場に置 基金 かれた人々に地域社会ベースで介入するパイ ロット・プロジェクト。シビル・ソサエティと地方 政府の協力を得て、州民のニーズに最も適した 介入方法を用いる。 西アフリカ 幼児教育(ECD)に関する草の根のキャパシ 973,949 国民の理解と親の参加を促す戦略を策定・実 ティ・ビルディングのための戦略的提携 ギニアとマリの地域社会指導者、 行するために、 NGO、および政府高官の能力、知識、および スキルを強化する基盤を構築する。 31 27821 付録1:2002年度に承認されたJSDFグラント一覧 金額 国/プログラム グラント名称 (単位:ドル) グラントの目的 グルジア コルヘティ低地の生活の安全保障の向上 1,379,875 コルヘティ国立公園に隣接した緩衝地帯で生 活している貧しく、弱い立場に置かれた人々が、 代替的な所得創出機会を発見・利用し、伝統 的な漁業・農業方法を改善することにより、コ ルヘティ湿地帯の貴重な環境機能を保全する。 タジキスタン サレズ湖周辺の高山地域の貧困削減 1,586,400 村落レベルで経済・社会開発を推進することに より、脆弱な地域社会が地理的な孤立、改革に よる変化、生計手段の不足、および自然災害の 危険性に対処できるようにする。 タジキスタン 地域社会ベースの都市給水管理プロジェクト 2,632,500 首都の住宅用公共配水システムの保守を地域 社会に委ねることにより、家庭における大量の 水の損失や浪費を削減し、腸チフスが蔓延す る危険性を軽減することを目指すパイロット・プ ログラム。 ヨルダン 「危機にさらされている」児童を社会の本流に統 994,860 「危機 地域社会組織とNGOの能力を強化し、 合するためのキャパシティ・ビルディング にさらされている」児童を社会の本流に再統合 する。 エクアドル 貧困層のための法律と司法 1,780,000 紛争を平和的に解決する文化を創造し、シビ ル・ソサエティが主要都市、農村部、および先 住民社会で効果的な紛争解決手段を利用でき るようにする。 第7次拠出 ラオス人民民主 辺境高地分水界の地域社会のエンパワーメント 737,420 保健サービスと基本的な識字サービスの提供 共和国 を通して、辺境高地分水界で暮らす貧しい少数 民族が権利を行使することのできる環境を整備 するパイロット・プログラム。 アルメニア 育児制度改革パイロット・プログラム 961,000 危機にさらされている児童のための社会支援の 有効性を強化し、児童福祉を向上させる。その 施策として、施設に収容されている子供に家族 ベースのケアを提供し、危機にさらされている 児童とその家族を地域ぐるみで支援する。 グルジア 地域社会ベースの健康保険 477,400 東・西グルジアに地域社会ベースのリスクプー ル健康保険制度を導入するパイロット・プログ ラム。 32 27821 付録1:2002年度に承認されたJSDFグラント一覧 金額 国/プログラム グラント名称 (単位:ドル) グラントの目的 ペルー サービス供給の内容、計画、および評価に対す 758,500 貧困層をエンパワーメントし、ニーズに即した る貧困層の発言権の拡大 社会プログラムの設計と、効果的で、透明かつ 説明責任のある実施に参加できるようにする。 インド 自営女性協会(SEWA)のキャパシティ・ビル 1,209,636 SEWAのトレーニング能力を強化し、新規・既 ディング 存メンバーが生計を確保または改善できるよう にする。 東アジア ASEANスクールネット 2,000,000 世銀のWorLDプログラムの一環として、5カ国 でASEANスクールネットを試みるパイロット・ プログラム。WorLDは貧しい学校にハードウェ アやソフトウェアを提供し、教師に研修/支援 を提供することにより、生徒がインターネット上 の国際的な学習ネットワークにアクセスできる ようにするプログラム。 第8次拠出 インド 貧困層のエンパワーメント:プネー地区の農村 956,400 プネー地区の農民や不利な立場に置かれた 部を対象としたパイロットITプログラム 人々のITリテラシーを高め、こうした人々がIT を利用して、地域の商工業を振興し、基本的な 情報とサービスにアクセスできるようにする。 アルメニア 地域社会ベースの都市給水管理プロジェクト 1,970,000 都市住宅への水道メーターの導入と配水シス テムの保守を地域社会ベースで行うパイロッ ト・プログラム。 ロシア ロシア農村部の地方行政と市民参加 1,252,700 住民が予算編成に影響を与え、その過程を監 督できるようにすると共に、農村部へのサービ ス供給チャネルを増やす。 ニカラグア 地域社会レベルの脆弱性削減プログラム 1,489,300 マナグアの最貧地域をエンパワーメントし、住 民が地域の生活条件に悪影響を与えている社 会・環境リスクに持続可能な方法で対処できる ようにする。 33 27821 付録2:2003年度方針文書 2003年度のJSDFプログラム、方針ガイ ドライン、および業務手続きを合理化 するものと して、JSDFは「2003年度方針文書」を導入しました。この文書は日 本政府の同意を得たもので、2003年度のJSDFのすべての活動に適用され ます。詳細は下記をご覧ください。 目的:革新的な社会プログラムにグラントを提供し、世銀グループの適格国 の貧困緩和を支援する(適格性の基準は下記を参照)。 重点分野:JSDFグラントは世銀の国別援助戦略 (CAS) 、貧困削減戦略 (PRSP)、またはセク ター戦略の貧困削減エレメン トの開発目標と整合性が あり、 かつ世銀が資金を提供しているプロジェク トやプログラムを補完する ものである。JSDFグラン (i) トが重点を置く活動は、 革新的な新手法を用い て、最も貧しく、最も弱い対場に置かれた人々のニーズに直接対応する活 動、(ii)測定可能な成果を速やかに達成し、持続可能な活動に発展する可 能性を備えたイニシアテ ィブを支援する活動、および (iii)地域社会、非政 府組織 (NGO)、およびその他のシビル・ソサエテ ィ組織の主体性、能力向 上、エンパワーメン ト、および参加を促進し、世銀グループ機関が資金を提 供するプロジェク トへの参加を促進する活動である。JSDF資金の約50%は 東、南、 および中央アジアの適格国に配分される予定である。 グラントの種類と適格性:JSDFグラントには2つの種類がある。 (i) プロジェク ト向けグラン ト:このグラントが支援するのは、 (a)貧困層に 直接救済策を提供したり、貧困層向けのサービスや施設の改善を支援 したり、ソーシャル・セーフテ ィネットを強化/活性化したりする活動、 ま たは(b)革新的な活動と新しいアプローチの試行 (特に社会セク ターを 対象としたもの) とする。グラントの対象となるのは世銀グループ機関の 加盟国のうち、低所得国に分類される国々 (2001年度のGNPが1445ド ル以下の国) とする。 (ii)キャパシティ・ビルディング向けグラン ト:このグラントが支援するのは キャパシティ・ビルディングや能力改善を目的としたもので、 たとえば実 地訓練を通して現地の地域社会やNGOを強化したり、社会基金タ イプ の組織の能力または対象範囲を拡大したり、世銀が資金を提供するプ ロジェクトやプログラムに地域社会と共に取り組んでいる現地政府を 支援したりする活動である。2002年度の「世界開発報告」で低所得およ び低中所得国と定義された国々が対象となる。 34 27821 金額:JSDFグラントの額は5万ドルから300万ドルである。200万ドルを超え るプロポーザルは、JSDF運営委員会によって、特に厳密に審査される。運 営委員会はプロポーザルに記載された活動費が厳正なプロセスに沿って 見積もられたものかどうかを検証するために、専門家の協力を得る場合も ある。 ファンディ ング・プロポーザル:日本政府は既定のフォーマッ トに沿って作成 された 「ワンページ・ ファンディング・プロポーザル」 をもとに、グラント供与 の可否を決定する。この文書は世銀のウ ェブサイトで配布されており、ドナー との間での法的拘束力のある文書と して機能する。このプロポーザルには基 本情報、 グラントの全体的な開発目標、成果目標、支出分野などが記載され る。世銀の関連統括部門がその活動のスポンサーとなり、 チームリーダーを 任命する。プロポーザルの内容は、国別担当局長が承認した国別援助戦略 (CAS)の目標とセクター・マネジャーが承認したセク ター・アプローチに沿った ものでなければならない。提出されたプロポーザルは業務担当副総裁室の 協調融資調整官が検討した後、 JSDF運営委員会に提出される。 補足情報:グラン トを申請する際は、ワンページ・ファンディング・プロポー ザルに加えて、補足情報 (背景情報)を提出しなければならない。ここには チェックリスト、グラントの詳細(グラントのコンポーネント、成果目標など)、 および詳細な予算計画が含まれる。 チェックリスト:設定された質問項目にはすべて回答しなければならない。 (日本のNGOが望ましい) 国内NGO、国際NGO 、およびシビル・ソサエティ 組織との連携を促進するプロポーザルが優先される。 対象となる支出:物品、小規模な土木工事、 サービス、トレーニング、ワーク ショップなど。これらの物品、土木工事、 サービス、トレーニング等を調達す る際は、所轄の世銀グループ機関のガイ ドラインに準拠しなければならない。 年次監査の費用も対象となる。通常の管理予算で対応しきれない数の世銀 職員が必要となる複雑な案件の場合は、所轄の世銀グループ機関の増分費 用(人件費など)を、グラント総額の5%を超えない範囲で、活動の準備・実 施費用に含めることができる (地域社会の参加やNGOとの連携促進など) 。 対象とならない活動/支出:次のような活動/支出をJSDFの資金でまかな うことはできない。(i)世銀が支援するプロジェク トとまったく関係のないパイ ロット・プログラム、(ii)学術研究、(iii) (iv) 政府職員の給与、 海外研修また は視察旅行、(v) 自動車の購入 。 4 4 プロポーザルに記載された理由に正当性があると認められたときは、自動車の購入が例外的 に許可される場合がある。 35 27821 スケジュール:JSDF運営委員会は年4回、日本政府にプロポーザルを提出す る(下記参照)。日本政府はプロポーザルを受領してから4週間以内に可否 の決定を下す。 グラントの実施:グラン トを実施するのはグラントの受領機関とする。グラン トの受領機関となるのは政府 (中央政府、地方政府)、現地NGO、国際NGO、 または現地の地域団体で、 どの組織が受領機関となるかは、 タスクチーム・ リーダーが各組織の財務健全性、実績、 およびグラント資金の利用・管理能 力に基づいて決定する。国連機関がJSDFグラン トの受領機関となることは 5 できない 。グラン トの実施期間は最大4年とする。世銀はグラン トごとにタ スクチーム ・リーダーを任命し、その人物を通して、世銀が管理するグラン ト の適用基準に基づき、 グラントを監督する受託者責任を果たす。 進捗報告:タスクチーム・リーダーはグラントの成果をモニタリングし、半期 毎に「グラント状況報告」を提出する。この報告書にはグラン トの進捗状況 と、グラントの目的を達成するために合意に基づいて加えられた変更が記載 される。最終的な進捗報告書には、 グラント実施期間に投入された資源の 総量と成果が記載される。 資金の再配分 :グラン (支出分野) ト資金は次のような形で再配分される。 (i) グラント資金の 30%までを承認済みの支出分野に再配分する場合、 タ スクチーム・リーダーは法務局および融資局の助言を求めなければなら ない(受領機関が実施機関を務めるグラン トの場合) (譲許性資 。CFP 金・グローバルパー に申請書を提出する必要はない。 トナーシップ総局) (ii)グラン ト資金の 10%までを 新規の適格支出分野に再配分する場合は、 国別担当局長に承認申請書を提出しなければならない。この申請書は CFP、法務局、および融資局の承認を得なければならない。 (iii)グラント資金の30%を超える額を承認済みの支出分野に再配分する場 合、あるいはグラン ト資金の10%を超える額を新規の適格支出分野に 再配分する場合は、CFP経由で申請書を日本政府に提出しなければな らない。CFPから申請書を受け取った日本政府は、受領から4週間以 内に承認または却下の判断を下す。修正事項はCFP、法務局、および 融資局の承認 (受領機関が実施するグラン と、国別担当局長 トの場合) とセクター・マネジャーの承認を得なければならない。 5 世銀ガイドラインに従って選ばれた場合、国連機関もコンサルタントとしてJSDFグラントの活動 に参加することができる。 36 27821 グラントの範囲の変更:グラントのコンポーネントを変更する場合は、下記の ような修正/承認が必要かどうかを法務局に確認しなければならない。 (i) グラントの対象となる活動に小幅な変更 (背景情報の予算に計上され たコンポーネント額の 30%まで) を加える場合、タスクチーム・リーダー は法務局に契約書の修正が必要かどうかを問い合わせる。CFPに申請 書を提出する必要はない。 (ii)グラントのコンポーネン トに大幅な変更を加える場合は、国別担当局長 とセクター・マネジャーに申請書を提出し、 承認を得なければならない。 この申請書はCFPと法務局の承認を得なければならない。大幅な変更 とは、 (a) コンポーネン ト額の30%を超える変更、 あるいは(b)新しいコ ンポーネン トの追加を意味する。グラン トの開発目標(GDO)を大幅に 変更する場合は、CFPに申請書を提出し、CFPが日本政府の承認が必 要かどうかを確認する。 日本政府はCFPから申請書を受け取ってから4 週間以内に、 承認または却下の判断を下す。修正事項はCFP、 法務局、 および融資局の承認 (受領機関が実施するグラン トの場合) と、国別担 当局長の承認を得なければならない。 取消条項:下記の場合、 グラントは中途であっても取消の対象となる。 (i)グ ラントの正式な承認日から12カ月たってもグラント契約に署名が行われな かった場合、または(ii)グラント契約への署名から6カ月たってもグラン トが 実施されなかった場合 (支出が一切なかった場合を含む) (i) 。 と(ii)の例外 措置の適用を希望する場合は、CFPに申請書を提出しなければならない。 認知度向上:世銀グループはJSDFグラント契約の署名式典を、 日本大使館 職員の臨席のもとで、現地で開催することを奨励している。また、世銀グ ループは現地の世銀職員が国内外の報道関係者をこのような式典に招待す ることも奨励している。署名式典を開催する場合、職員は事前にCFPにそ の旨を連絡しなければならない。また、世銀もパンフレッ トやJSDF年次報 告の配布、関連する世銀文書へのJSDF情報の記載、 日本のNGOを対象と し たセミナーやワークショップの開催などを通して、JSDFの認知度向上に努め ていく。 文書の管理:業務担当の各部門は世銀の事務管理方針と手続きに従って、 2003年度のスケジュール JSDFグラントに関する文書(委任事項、コンサルタント契約書、コンサルタン トが作成した報告書類、状況報告書など) を管理する。 告示 日本への提出 2002年6月 2002年8月 2002年10月 2002年12月 2003年1月 2003年3月 2003年4月 2003年6月 37 27821 27821