World Development Report 2018 世界開発報告 LEARNING to Realize Education’s Promise 教育と学び  ―― 可能性を実現するために This work was originally published by the World Bank in English as World Development Report 2018: Learning to Realize Education’s Promise in 2018. This Japanese translation was arranged by Ittosha Incorporated. Ittosha Incorporated is responsible for the accuracy of the translation. In case of any discrepancies, the original language will govern. This volume is a product of the staff of the International Bank for Reconstruction and Development / The World Bank. The findings, interpretations, and conclusions expressed in this work do not necessarily reflect the views of The World Bank, its Board of Executive Directors, or the governments they represent. The World Bank does not guarantee the accuracy of the data included in this work. The boundaries, colors, denominations, and other information shown on any map in this work do not imply any judgment on the part of The World Bank concerning the legal status of any territory or the endorsement or acceptance of such boundaries. : 本報告書は 2018 年に世界銀行(The World Bank)から World Development Report 2018  Learning to Realize Education’s Promise として出版された.本書の翻訳は株式会社 一灯 舎によりまとめられたものであり,翻訳の正確性については株式会社 一灯舎が責任を 負う.翻訳と原文の間になんらかの矛盾がある場合は原文に従う. 本書は,世界銀行スタッフの制作による.本書で示されている調査結果,解釈,およ び結論は,必ずしも世界銀行,その理事会,あるいは彼らが代表する国の見解を反映 するものではない. 世界銀行は,本書に記載されているデータの正確性を保証しない.本書掲載の地図で 示されている境界線,色,名称,その他の情報は,いかなる領土の法的立場,あるい はそのような境界線の是認あるいは容認に関する世界銀行の判断を意味するものでは ない. World Development Report 2018: — Learning to Realize Education’s Promise Copyright © 2018 by International Bank for Reconstruction and Development/The World Bank 1818 H Street, N.W., Washington, D.C. 20433, U.S.A. 世界開発報告 2018 教育と学び  ――  可能性を実現するために Copyright © 株式会社 一灯舎 by International Bank for Reconstruction and Development/The World Bank 1818 H Street, N.W., Washington, D.C. 20433, U.S.A. iii 序文  教育や学習(学び)は憧れを育み,価値観を設定し,最終的には生活を豊かにする.私が生 まれた韓国は,教育がこのような役割をどうやって果たせるのかを示す適例であろう.朝鮮 戦争が終了した時点では,人々はほとんど識字能力がなく極度に貧しかった.世界銀行の判 断では,外国からの継続的な援助がなければ,韓国は国民向けに生活必需品以上のものを提 供することは困難であった.世界銀行としては,同国向けのローンは最低金利であってもリ スクが大き過ぎると考えていた.  教育が経済的困窮から脱出するための最善の方策であることを韓国は理解していたので, 学校制度の徹底的な見直しに焦点を当てて,すべての子供に教育を――しかも良質な教育を ――提供することを決断した.スマートで革新的な政府の政策と活気のある民間部門とが相 まって,教育の重視は成果を上げた.今日,韓国は普遍的な識字能力を達成しているだけで なく,生徒たちは国際的な学習評価においても最高水準の成績を収めている.韓国は高所得 国であり,経済開発の成功モデルとなっている.  韓国はとりわけ人目を引く事例であるが,教育の有益な効果は他の多くの諸国でもみるこ とができる.うまく実施されれば,教育――およびそれが生み出す人的資本――は経済や社 教育は雇用 会全体にとって多くの利益をもたらす.個々人にとって, ・所得・健康を促進する. 誇りを高め,新たな視野を切り開く.社会にとって,長期にわたり経済成長を牽引し,貧困 を削減し,革新に拍車をかけ,制度を強固にし,社会の一体感を育む.  要するに,教育は世界銀行の双子の戦略目標――極度の貧困を終わらせること,および共 今日の生徒が明日の市民 有されている繁栄をさらに押し上げること――を力強く推進する. ・ 指導者・労働者・親になることを考えると,良い教育というのは永続的な利益をもたらす投 資であるといえよう.  しかし,教育の提供だけでは十分とは言えない.重要なのは,また,投資について真の見 返りをもたらすのは,学習(学び)とスキル修得である.それが真に人的資本を築く.本年の 『世界開発報告』が詳しく裏付けているように,学習が生じていない国やコミュニティが多数 存在する.学びのない学校教育というのは貴重な資源や人間の潜在能力のひどい浪費である.  いっそう悪いことに,それは不正義である.学びがなければ,生徒は貧困と排除の生活に 閉じ込められてしまうだろう.社会が最も見捨てている子供たちこそ,人生において成功す るために良い教育を最も必要としている.学習環境はほとんど常に貧しい層にとって著しく 悪く,学習成果についても同じことがいえる.加えて,あまりに大勢の子供たちが就学さえ してない.これはただちに取り組む必要のある道徳的・経済的な危機である.  本年の報告書はこの経済的・道徳的な失敗に取り組むための方策を提示している.本書の 詳細な分析が示すところによると,このような問題は学校におけるサービス提供の失敗だけ でなく,より深い制度上の問題によっても牽引されている.このような欠陥のゆえに失われ ている人的資本は開発を脅かし,人々や社会の将来を危険にさらしている.そして同時に, 急速な技術変化が人的資本の潜在的利害をいっそう大きくしている:将来の経済において競 争するためには,労働者は適応性・創造性・生涯学習のために,強固な基礎的なスキルと基 盤を身に付けている必要がある.  教育が約束することを実現するためには,単に学校教育だけでなく学習の優先順位を付 ける必要がある.本報告書の主張では,すべての人を対象に学習を達成するためには次の 3 つの補完的な戦略が必要になるであろう. • 第 1 に,学習を評価した上で真剣に取り組む目標にする.情報そのものが改革に向けた iv 世界開発報告 2018 インセンティブを生み出すが,多くの国々では学習を測定するのに適切な指標が欠如して いる. • 第 2 に,学習のために学校を機能させるべく証拠に基づいて行動する.優良な学校の教 室では教員と生徒の間にしっかりとした関係が築かれている.脳科学が進歩し教育者が革 新するのに伴って,生徒が最も効果的に学習できる方法に関する知識が大幅に拡充してき ている.しかし,多くの国やコミュニティ,学校が採用している教育へのアプローチの仕 方は,最も有望かつ証拠に基づくものとはしばしば異なっている. • 第 3 に,関係者が協力して制度全体を学習のために機能させる.仮に制度レベルでの技 術的・政治的な障害が学校レベルでの学習重視を阻害しているのであれば,教室における 革新は大した影響力をもたないだろう.これが低レベル学習の罠にはまり込んでいる多く の国々の状況である.この状況から脱却するためには,より深層にある原因に関心を向け る必要がある.  世界銀行グループは,本報告書の重要な発見をわれわれの活動にすでに織り込みつつある. 教育に対するわれわれのコミットメントの規模を拡大し,潜在能力が未開拓のまま浪費され ている子供たちに資する形で,われわれの知識を適用できるように新たな方法を引き続き探 求していきたい.例えば,学習とその決定要因に関してより有益な指標を開発中である.早 期介入・教員研修・教育技術などの分野における学習を改善するために,その実践の指針が 確実に証拠に基づくものとなるようにしている.プロジェクト分析や戦略的な国別診断にお いては,制度レベルの機会と限界のすべて――政治的な制約を含む――が考慮されることを 確保している.さらに,より大きな革新や機敏性を可能にするようなオペレーション上のア プローチを,われわれとしては引き続き強調していくつもりである.  このような努力の背景にあるのは,世界中の生徒全員が学習する機会を手にすることを保 証するという世界銀行グループのコミットメントである.教育が約束することの実現は,明 日の経済のなかで競争するだけでなく,コミュニティを改善し,強固な国を作り,最終的に 貧困のない世界に近付くチャンスをも生徒たちに付与することを意味する. ジム・ヨン・キム 世界銀行グループ総裁 v 謝辞  本報告書は Deon Filmer と Halsey Rogers が率いるチームによって作成された.コ ア・ チ ー ム は Samer Al-Samarrai, Magdalena Bendini, Tara Béteille, David Evans, Märt Kivine, Shwetlena Sabarwal, and Alexandria Valerio, とともに,調査アナリス トである Malek Abu-Jawdeh, Bradley Larson, Unika Shrestha, and Fei Yuan で構成 された.Rafael de Hoyos と Sophie Naudeau はこの拡大チームのメンバーであった. Stephen Commins は相談に応じるという形でサポートしてくれた.Mary Breeding, Ji Liu, Christian Ponce de León, Carla Cristina Solis Uehara, Alies Van Geldermalsen, and Paula Villaseñor はコンサルタントとして関与してくれた.本レポートの制作および 後方業務チームは Brónagh Murphy と Jason Victor の 2 人で構成されていた .  本レポートは開発経済学副総裁室の後援を得ている.レポート作成にかかわる全体的な指 針は,上級副総裁兼主任エコノミストである Paul Romer と,副主任エコノミストである Ana Revenga によって提示された.レポート作成の初期段階における指針は , 前の上級副 総裁兼主任エコノミストである Kaushik Basu と,前の開発政策局長である Indermit Gill によって示された.本チームは,開発経済学局の上級局長である Shantayanan Devarajan からのコメントや指針にも感謝している.「教育グローバル・プラクティス」と「人間開発グ ローバル・プラクティス」のグループは, チー 一貫した支援を報告書チームに提供してくれた. ムとしては,教育グローバル・プラクティスの上級局長である Jaime Saavedra と同局長 の Luis Benveniste が提供してくれた支援と指導に特に感謝している. (主任エ  チームは次の方々で構成される助言パネルから指針を頂いた:Gordon Brown コノミストとともにパネルの共同議長を務めた),Michelle Bachelet, Rukmini Banerji, Julia Gillard, Eric Hanushek, Olli-Pekka Heinonen, Ju-Ho Lee, and Serigne Mbaye Thiam.チームとしては頂いた助言を高く評価し,極めて有益であると認めたものの,報 告書のなかで表明されている意見は必ずしもパネル・メンバーの意見を反映するものではな い. 「賢人会議」  早期の段階において新たに出現してきたテーマに関して,主任エコノミストの と協議できたことは有益であった.コメントを頂戴した同会議のメンバーは次の方々であ る.Montek Singh Ahluwalia, François Bourguignon, Heba Handoussa, Justin Yifu Lin, Ory Okolloh, Pepi Patrón, Amartya Sen, Joseph Stiglitz, Finn Tarp, and Maria Hermínia Tavares de Almeida.  Paul Holtz が 報 告 書 の 主 任 編 集 者 を 務 め た.Bruce Ross-Larson が 編 集 指 針 を 提 示 し,Sabra Ledent と Gwenda Larsen が報告書の原稿整理と校正を担当した.主任グラ フィック・デザイナーは Kurt Niedermeier, チームのために資源管理支援を提供したのは Alejandra Bustamante と Surekha Mohan である.Phillip Hay, Mikael Reventar, Anushka Thewarapperuma, Roula Yazigi は,Patricia da Camara お よ び Kavita Watsa と と も に,連絡や配布にかかわる指針と支援を提供した.Mary Fisk, Patricia Katayama, Sephen Pazdan, 世界銀行の Formal Publishing Program に対して特に感謝申し上げる.チームとし ては次の方々の調整役としての役割にお礼を申し上げたい:Maria Alyanak , Laverne Cook, Maria del Camino Hurtado, Chorching Goh, Vivian Hon, Elena Chi-Lin Lee, Nancy Tee Lim, David Rosenblatt, および Bintao Wang.  チームは本レポートの作成に関して,「変化のための知識プログラム」(略称 KCP という 多数国拠出型信託基金)や,特に KCP 拠出国――フィンランド,フランス,ノルウェー― vi 世界開発報告 2018 ―の政府・開発機関から,寛大な支援を頂いたことに感謝している.広報に加えて,背景お よび関連の調査について,次の機関から潤沢な支援を頂いた:ビル&メリンダ・ゲイツ財団, 早期学習パートナーシップ信託基金,レゴ財団,ノルディック信託基金.  以下のような諸国で,政府高官・研究者・市民社会組織などの出席者を得て,協議イベン トが開催された.開催国以外の諸国からも相当数の人が参加した:ボリビア,ブラジル,カ ナダ,中国,コートジボワール,フィンランド,フランス,ドイツ,インド,インドネシア, 日本,ケニア,マレーシア,メキシコ,セネガル,南アフリカ,タンザニア,タイ,トル コ,イギリス,そしてアメリカ.チームとしては,このようなイベントに参加して有用なコ メントや提案をしてくれた方々にお礼を申し上げたい.このようなイベントに関する詳報は http://www.worldbank.org/wdr2018 で入手可能となっている. (ADEA)  次のような機関とも協議を実施した:アフリカ教育開発連合 ,グローバル開発 ネットワーク(GDN),教育のためのグローバル・パートナーシップ ,グローバルな (GPE) 教育機会の資金調達に関する国際委員会(教育委員会),国際通貨基金(IMF),経済協力開発 機構(OECD),国連児童基金 ,国連教育科学文化機関 (UNICEF) .二国間開発 (UNESCO) (政府代表者) パートナーとの協議に参加したのは次のような諸国 ないし諸機関である:カナ ダ,フィンランド,日本,韓国,ノルウェー,スウェーデン,オーストラリア外務通産省 (DFAT),フランス開発庁(AFD),ドイツ国際協力公社 ,ドイツ連邦経済協 (GIZ GmbH) 力開発省(BMZ),日本国際協力機構(JICA),イギリス国際開発省 ,アメリカ国際 (DFID) (USAID). チームは KCP の諮問会議とも協議を行った.チームとしてはこのような 開発庁 イベントに参加してくれた方々にお礼を申し上げたい.  協議に参加して頂いた市民社会組織(CSO)に は 以 下 が 含 ま れ る:ActionAid, Bill & Melinda Gates Foundation, Education International, Global Campaign for Education, LEGO Foundation, MasterCard Foundation, ONE Campaign, Oxfam, Save the Children, Teach for All, World Vision. 加えて,CSO の多様なグループが世界 銀行 /IMF 合同の 2017 年春季会合の時期に開催された CSO フォーラムや,同じく 2017 年 3 月に開催された e- フォーラムに参加している.本チームはこれら CSO の意見や有益 な関与に対して感謝している.  研究者や学者は下記の WDR 関連の会合において有用な意見を提示してくれた:オック スフォード大学で開催された 2016 Research on Improving Systems of Education (RISE) 会議,Allied Social Science Associations (ASSA) の 2017 年会議,Society for Research on Education Effectiveness (SREE) の 2017 年 会 議,Mexico Conference on Political Economy of Education の 2017 年 会 議,the Systems Approach for Better Education Results (SABER) Advisory Panel の 2017 年会議,さらに,WDR に特化したイベントが 次の団体によって,および都市で開催された:Aga Khan Foundation and Global Affairs (オタワ) Canada (ワシントン CD) ; Brookings Center for Universal Education ; Columbia (ニューヨーク) School of International and Public Affairs and Cornell University ; (ベルリン) Development Policy Forum of GIZ GmbH, on behalf of BMZ (東京) ; JICA ; (ワシントン CD) Université Félix Houphouët-Boigny in Abidjan; USAID .  本報告書は次の方々が執筆された背景論文に依拠している:Violeta Arancibia, Felipe Barrera-Osorio, Tessa Bold, Pierre de Galbert, Louise Fox, Dileni Gunewardena, James Habyarimana, Michael Handel, Anuradha Joshi, Kanishka Kacker, Michelle Kaffenberger, Upaasna Kaul, Elizabeth M. King, Gayle Martin, Eema Masood, Ezequiel Molina, Sebastián Monroy-Taborda, Kate Moriarty, Anna Popova, Lant Pritchett, Christophe Rockmore, Andrew Rosser, María Laura Sánchez Puerta, Priyam Saraf, M. Najeeb Shafiq, Brian Stacy, Jakob Svensson, Namrata Tognatta, Robert Toutkoushian, Michael Trucano, Waly Wane, Tim Williams, and Attiya Zaidi. 謝辞 vii  チームは世界中の研究者や専門家による分析・研究・文献レビューに依拠している.加 えて,チームとしては意見や提案に関して次の方々にお礼を申し上げたい:Christine Adick, Ben Ansell, Manos Antoninis, Caridad Araujo, David Archer, Belinda Archibong, Monazza Aslam, Girindre Beeharry, Penelope Bender, Peter Bergman, Raquel Bernal, Robert Birch, Tarsald Brautaset, Barbara Bruns, Annika Calov, Michael Clemens, Luis Crouch, Rohen d’Aiglepierre, Rossieli Soares da Silva, Momar Dieng, Rob Doble, Amy Jo Dowd, Margaret Dubeck, Sandra Dworack, Alex Eble, Marcel Fafchamps, John Floreta, Eli Friedman, Akihiro Fushimi, Paul Gertler, Rachel Glennerster, Paul Glewwe, Amber Gove, Oliver Haas, James Habyarimana, Jeffrey Hammer, Michael Handel, Christoph Hansert, Blanca Heredia, Sam Hickey, Veronika Hilber, Arja-Sisko Holappa, Naomi Hossain, Huang Xiaoting, Ali Inam, Dhir Jhingran, Emmanuel Jimenez, Maciej Jubowski, Ravi Kanbur, Cheikh Kane, Jouni Kangasniemi, Devesh Kapur, Vishnu Karki, Nina Kataja, Venita Kaul, Kim Kerr, Elizabeth M. King, Kenneth King, Geeta Kingdon, Eiji Kozuka, Michael Kremer, K. P. Krishnan, Kazuo Kuroda, Elina Lehtomäki, Henry Levin, Brian Levy, Krystelle Lochard, Karen Macours, Lu Mai, Akshay Mangla, M. A. Mannan, Santhosh Mathew, Imran Matin, Jordan Matsudaira, Karthik Muralidharan, Essa Chanie Mussa, Charles Nelson III, Aromie Noe, Munaz Ahmed Noor, Mario Novelli, Mead Over, Jan Pakulski, Benjamin Piper, Lant Pritchett, Ritva Reinikka, Risto Rinne, Jo Ritzen, Francisco Rivera Batiz, John Rogers, Caine Rolleston, Andrew Rosser, David Sahn, Justin Sandefur, Yasuyuki Sawada, Andreas Schleicher, Ben Ross Schneider, Dorothea Schonfeld, Olaf Seim, Abhijeet Singh, David Skinner, William Smith, Prachi Srivastava, Liesbet Steer, R. Subrahmanyam, Sudarno Sumarto, Jan Svejnar, Jakob Svensson, Soubhy Tawil, Valerie Tessio, Auli Toom, Miguel Urqiola, Jouni Välijärvi, Olli Vesterinen, Joseph Wales, Libing Wang, Michael Ward, Kevin Watkins, Mark Wenz, Yang Po, Khair Mohamad Yusof, そして Andrew Zeitlin. また, チーム・メンバーはメンバー自身の経験や,大勢の献身的な教育者,行政官,および政策立 案者との相互交流に大きく依拠している.彼らは,生徒に可能な限り最良の教育機会を提供 するために,しばしば困難な環境下で働いている.  さらに,以下のような世界銀行の同僚が洞察に溢れたコメント・意見・協力を提供して くれた:Junaid Ahmad, Omar Arias, Nina Arnhold, Ana Belver, Hana Brixi, James Brumby, Pedro Cerdan Infantes, Marie-Hélène Cloutier, Aline Coudouel, Amit Dar, Jishnu Das, Amanda Epstein Devercelli, Gregory Elacqua, Emanuela Galasso, Diana Hincapie, Alaka Holla, Peter Holland, Sachiko Kataoka, Stuti Khemani, Igor Kheyfets, Kenneth King, Eva Kloeve, Steve Knack, Xiaoyan Liang, Toby Linden, molejo, Yasuhiko Matsuda, Julie McLaughlin, Muna Oni Lusk-Stover, Francisco Mar­ Meky, Ezequiel Molina, Caitlin Moss, Matiullah Noori, Anna Olefir, Owen Ozier, Andrew Ragatz, Vijayendra Rao, Dan Rogger, Audrey Sacks, María Laura Sánchez Puerta, Indhira Santos, William Seitz, Shabnam Sinha, Lars Sondergaard, Dewi Susanti, Christopher Thomas, Michael Trucano, Adam Wagstaff, お よ び Melanie Walker.  また,チームとしては,協議イベントの組織化・円滑化を手助けし,翻訳・通訳に関し て助言してくれた世界銀行の次のような同僚にお礼を申し上げたい:Gabriela Geraldes Bastos, Paolo Belli, Moussa Blimpo, Andreas Blom, Leandro Costa, Oumou Coulibaly, Meaza Zerihun Demissie, Safaa El-Kogali, Tazeen Fasih, Ning Fu, Elena Glinskaya, Marek Hanusch, Pimon Iamsripong, Susiana Iskandar, Nalin Jena, Hamoud Abdel Wedoud Kamil, Adriane Landwehr, Dilaka Lathapipat, Khady Fall viii 世界開発報告 2018 Lo, Norman Loayza, André Loureiro, Hope Nanshemeza, Mademba Ndiaye, Koichi Omori, Azedine Ouerghi, Tigran Shmis, Taleb Ould Sid’ahmed, Lars Sondergaard, Dewi Susanti, Yasusuke Tsukagoshi, および Michael Woolcock.  加えて,チームは正式な銀行全体のレビュー手続きのなかで,書面でコメントをよせ て く れ た 世 界 銀 行 の 次 の よ う な 多 く の 同 僚 に 対 し て 感 謝 す る:Christian Aedo, Inga Afanasieva, Ahmad Ahsan, Edouard Al Dahdah, Umbreen Arif, Nina Arnhold, Anna Autio, Arup Banerji, Elena Bardasi, Sajitha Bashir, Ana Belver, Raja Bentaouet Kattan, Luis Benveniste, Moussa Blimpo, Erik Bloom, Vica Bogaerts, Susan Caceres, César Calderón, Ted Haoquan Chu, Punam Chuhan-Pole, Fernando Ramirez Cortes, Michael Crawford, Laisa Daza, Bénédicte de la Brière, Gabriel Demombynes, Shanta Devarajan, Sangeeta Dey, Ousmane Diagana, Ousmane Dione, Safaa El Tayeb El-Kogali, Marianne Fay, María Marta Ferreyra, Carina Fonseca, Marie Gaarder, Roberta Gatti, Ejaz Syed Ghani, Elena Glinskaya, Markus Goldstein, Melinda Good, David Gould, Sangeeta Goyal, Caren Grown, Keith Hansen, Amer Hasan, Caroline Heider, Katia Herrera, Niels Holm-Nielsen, Dingyong Hou, Elena Ianchovichina, Keiko Inoue, Sandeep Jain, Omer Karasapan, Michel Kerf, Asmeen Khan, Igor Kheyfets, Youssouf Kiendrebeogo, Daniel John Kirkwood, Eva Kloeve, Markus Kostner, Daniel Lederman, Hans Lofgren, molejo, Kris Gladys López-Acevedo, Javier Luque, Michael Mahrt, Francisco Mar­ McDonall, Mahmoud Mohieldin, Lili Mottaghi, Mary Mulusa, Yoko Nakashima, Shiro Nakata, Muthoni Ngatia, Shinsaku Nomura, Dorota Agata Nowak, Michael O’Sullivan, Arunma Oteh, Aris Panou, Georgi Panterov, Suhas Parandekar, Harry Patrinos, Dhushyanth Raju, Martín Rama, Sheila Redzepi, Lea Marie Rouanet, Jaime Saavedra, Hafida Sahraoui, Sajjad Shah, Sudhir Shetty, Mari Shojo, Lars Sondergaard, Nikola Spatafora, Venkatesh Sundararaman, Janssen Teixeira, Jeff Thindwe, Hans Timmer, Yvonne Tsikata, Laura Tuck, Anuja Utz, Julia Valliant, Axel van Trotsenburg, Carlos Vegh, Binh Thanh Vu, Jan Walliser, Jason Weaver, Michel Welmond, Deborah Wetzel, Christina Wood, および Hanspeter Wyss.  本レポートの作成に貢献してくれた個人や団体で,以上のリストから不注意にも記載しそ こなっている方々があればお詫びするとともに,その方々も含めて貢献者全員に対して謝意 を表明したい.  チーム・メンバーは,本報告書作成期間を通じて支援をしてくれた各自の家族に対しても お礼を申し上げる.そして最後に,チーム・メンバーは世界中の教室における長年の相互交 流を通じて,メンバーにインスピレーションを与えてくれた大勢の子供たちや若者たちに― ―大きな潜在能力が本報告書執筆の動機となったその他の大勢の方々にも――感謝したい. 本報告を彼らに捧げる. ix 略号 A4L 学習評価 PPP 購買力平価 ASER 教育年次報告書 SACMEQ 教育の質測定のための東南部アフリカ諸国 BRN 今こそ大きな成果を (教育における) [タンザ 連合 ニア] SAR 特別行政区 [バングラデシュ] CAMPE 民衆教育キャンペーン SAT 大学進学適性試験 CCT 条件付き現金給付 SDG 持続可能な開発目標 CSEF 市民社会教育基金 SIMCE [チリ] 教育の質測定システム DISE [インド] 県教育情報システム SNED [チリ] 全国成績評価システム EGRA 低学年読解力評価 SNTE [メキシコ] 全国教育労働者組合 GDP 国内総生産 TERCE 第 3 回地域比較分析調査 GNECC ガーナ国家教育運動連合 TIMSS 国際数学理科教育動向調査 I-BEST 基礎教育とスキル訓練の統合 TVET 技術・職業の教育・訓練 ICT 情報通信技術 UNESCO 国連教育科学文化機関 IDEB [ブラジル] 基礎教育開発指数 UNRWA 国連パレスチナ難民救済事業機関 LLECE ラテンアメリカ教育の質評価研究所 USAID アメリカ国際開発庁 MDG ミレニアム開発目標 WHO 世界保健機関 MENA 中東・北アフリカ WIDE 教育に関する世界不平等データベース NAFTA 北アメリカ自由貿易協定 NGO 非政府組織 OECD 経済協力開発機構 PASEC 教育制度分析プログラム PIAAC 国際成人力調査 PIRLS 国際読解力調査 PISA 国際的な生徒学習到達度調査 x 目次 序文 iii 謝辞 v 略号 ix 概観 教育と学び ――可能性を実現するために… ……………………………………………… 1 学習危機の 3 つの側面 4 教育が約束することを実現する方法:3 つの政策対応 15 教育が約束することを実現するために学ぶ 27 PART Ⅰ 教育が約束すること 35 1 学校における教育,学び,そして教育が約束すること… ……………………………… 36 自由としての教育 36 教育は個人の自由を改善する 36 教育は社会の全員のためになる 39 学習,そして教育が約束すること 41 PART Ⅱ 学習危機 53 2 学校教育の急拡大――そして取り残された人々… ……………………………………… 54 ほとんどの子供たちは基礎教育へのアクセスを有している 54 残存している学校教育格差のほとんどは,貧困・ジェンダー・民族性・ 身体障害・場所によって説明できる 55 貧しい親に対して,学校教育は二律背反の選択を要求する 58 スポットライト 1 学習の生物学 63 3 学習危機の諸側面… ………………………………………………………………………… 67 あまりにも大勢に対して学習が行われていない 67 貧しい子供たちの学習は最少,このことで最大の痛手をこうむるのは彼ら自身である 72 何が学習危機をもたらしているのか? 73 スポットライト 2 貧困は生物学的な発達を阻害して学習の土台を崩す 83 4 学習を真剣に考えるためにその測定から始める… ……………………………………… 87 学習危機はしばしば隠されている――しかし測定することで目に見えるようになる 87 学習のための指標が行動の指針となる 88 学習に関する指標は行動に拍車をかける 89 国が必要としていることに基づいて学習指標を選択する 91 学習指標は教育の視野を狭めるだろうか? 91 効果的な学習測定のための 6 つのヒント 92 スポットライト 3 スキルの多次元性 97 PART Ⅲ 革新,そして学習についての証拠 101 スポットライト 4 学習について学ぶ 102 5 学ぶ側に準備と意欲がなければ学習はない… ……………………………………………105 幼少期に投資して,子供たちを就学に向けて準備させる 106 需要サイドの支援を提供すれば子供たちを就学させられるが, 必ずしも学習させられるとは限らない 110 目次 xi 補習教育は学習者を継続的な教育や訓練に向けて準備させることができる 113 6 教員のスキルと意欲はともに重要(ただし,そうではないかの如く 運営されている教育制度が多い) … ………………………………………………………123 ほとんどの教員研修は有効ではないが,機能するアプローチもある 123 生徒のレベルに合わせた授業をするよう教員を支援することが有効である 125 教員の意欲とインセンティブはたとえ投入がほとんどない場合でも効果をもたらす 128 7 他のすべてのことは教員と学習者の相互作用の強化に向けられるべき… ……………135 技術的な介入策は学習を向上させる――ただし,それが教員と学習者の関係を 改善することが条件となる 135 他の投入は学習者を学校に来させるが,学習を促進するのは それが授業や学習を目的としている場合だけ 137 学校の運営・統治は極めて重要であり,コミュニティを関与させることは インセンティブ問題や情報の失敗を克服するのに役立つ ――ただし,コミュニティにその能力がある場合に限られる 138 8 スキル訓練を仕事と結び付けることによって基盤を構築… ……………………………145 職場訓練は若者がスキルを開発するのを助けることができるが, その恩恵を受けている人はほとんどいない 145 短期の職業訓練は機会を提供しているが, ほとんどのプログラムは効果を発揮できていない 147 TVET は若者を仕事に向けて準備させることはできるが, 早期の TVET への振り分けはキャリアの向上を限定することがある 147 成功している職業訓練プログラムが共有している特徴 148 スポットライト 5 技術は仕事の世界を変えつつある: それは学習にとって何を意味するのか? 155 PART Ⅳ 学習のために制度を大規模に機能させる 159 9 教育制度は学習との整合性を欠いている… ………………………………………………160 不整合性と非一貫性は学習を妨害する 161 技術的な複雑さが,教育制度を学習に整合的にするのを困難にしている 164 スポットライト 6 支出のさらなる増加,それとも支出のよりいっそうの適正化 ――ないしはその両方? 172 10 不健全な政治が不整合性の原因… …………………………………………………………179 不健全な政治は教育制度における不整合性を悪化させ得る 179 多数の主体と利害:政治サイクルの各ステップで制度を整合性から引き離す 181 低説明責任と低学習の均衡に陥っている 184 11 低学習の罠から脱却する方法… ……………………………………………………………189 情報の改善 190 連合を構築しインセンティブを強化する 192 革新と機敏性を促進する 196 海外主体は学習改善に向けたイニシアティブをどのように支援できるか? 200 xii 世界開発報告 2018 ボックス 1.1 人的資本形成あるいは信号装置としての 6.5 教員の給与を引き上げれば意欲は 学校教育?……………………………………………… 38 高まるだろうか?… ………………………………… 128 1.2 教育だけではできない………………………………… 42 6.6 教職の足を引っ張っている 1 つの要因: 1.3 達成度の各国比較――学習調整済みの …………………………………… 130 劣悪な労働条件… 学校教育年数… ………………………………………… 46 7.1 ジャマイカにおける学校長を改善する研修… …… 139 2.1 アクセスは拒絶されている: 9.1 (教育)制度のすべて … …………………………… 162 脆弱性・紛争・暴力の影響…………………………… 57 9.2 上海で行われた,効果的な授業に向けた 3.1 2 学年末までに読むことができない人は すべての要因の整合化……………………………… 164 追い付く のに苦労する… ……………………………… 70 9.3 私立学校教育は万人のための学習と 3.2 ジェンダーに基づく学習格差は科目次第… ………… 71 整合性があるか?… ………………………………… 165 3.3 教員は自分たちの努力不足は正当化されると 10.1 教員組合は学習にどのように影響するか?………… 182 考えているのかもしれない… ………………………… 77 10.2 紛争影響国では政治が学習を 4.1 良い学習指標は教育制度のすべての部分を 脱線させることがある… …………………………… 183 明らかにする …………………………………………… 88 11.1 ブラジルでは情報を使ってインセンティブを 4.2 グローバルな学習指標?… …………………………… 94 学習と整合的にしている… ………………………… 190 5.1 早期児童教育は幼い子供を就学に向けて 11.2 南アジアやサハラ以南アフリカでは 準備させる…………………………………………… 110 市民主導の評価が学習危機の認識を高めている … 192 5.2 コミュニティは学習を向上させるために, 11.3 変化を迫るのに法制度を使う… …………………… 194 教室外で費やされる多く の時間を 11.4 を使って学習のための連合を構築する… 194 「実験室」 テコにするこ …………………………… 111 とができる… 11.5 チリの改革派は変化を漸進的に交渉した… ……… 195 5.3 子供たちの学業に関する情報を提供することは, 11.6 ヨルダン川西岸・ガザ地区にある好成績の学校は, 親が子供たちの意欲を駆り立てるのに役立つ… … 113 学習について教訓を提供してくれている… ……… 197 6.1 ……………………………… 124 現職教員研修の実情… 11.7 ブルンジは反復と適応によって教育サービスを 6.2 教員養成研修で有効なものは何か………………… 124 改善した……………………………………………… 198 6.3 学習者の母国語で届ける…………………………… 126 6.4 ラテンアメリカでは診断データを使って 学習の改善を実現…………………………………… 128 図 O.1 学習不足は初期の段階で始まる… …………………… 5 1.3 教育程度が高い人ほど民主主義の重要性に関する O.2 数カ国では,PISA 受験者の 75 番目の 1%層の …………………………………………… 41 信念が強固… 成績は OECD 平均の 25 番目の 1%層の成績を 1.4 学習は国ごとに大きく 異なる: 下回っている… ………………………………………… 6 評価対象 10 カ国中 6 カ国で,小学校修了者のうち O.3 アフリカの貧困家計出身の子供たちは 読解力があるのはわずか半分ないし 典型的には学習水準がずっと低い… ………………… 7 それ以下にと どまっている… ………………………… 43 O.4 生徒は多くの場合に毎年ほとんど学んでおらず, 1.5 成長にとって大切なのは学びである… ……………… 44 早期の学習不足は時とともに拡大していく…………… 7 1.6 学習が増えれば重要な経済的恩恵が生まれる… …… 45 O.5 最低限の習熟水準を超えている小学生の割合は B1.3.1 学校教育年数に関しては,学習調整済みベースと しばしば低い…………………………………………… 8 学習未調整ベースの間では大きな格差が生じ得る… 46 O.6 学校修了率は富裕層・都市部で高いが, 2.1 途上国における就学率の上昇………………………… 55 ジェンダー別格差はより状況に依存している………… 9 2.2 世界人口の中で初等教育未満の人のほとんどは O.7 なぜ学習成果が上がらないのか: 南アジアにいるが,この比率はサハラ以南アフリカと 崩壊した 4 つの直接的な要因………………………… 10 ほぼ同じ………………………………………………… 55 O.8 認知能力の社会経済的な格差は,就学前でさえ, 2.3 国民所得は,小学校修了率と中学校修了率の格差と 年齢とともに拡大する… ……………………………… 10 関連がある……………………………………………… 56 O.9 アフリカでは,教員は学校を欠勤しているか, 2.4 低所得国では大勢の人々が または出勤していても教室にいないことが多い……… 11 小学校をまだ修了していないのに, O.10 低所得国や下位中所得国の学校は 中等教育が急拡大しつつある… ……………………… 56 運営能力が低い… ……………………………………… 12 2.5 学校修了率は富裕層・都市部で高いが, O.11 技術的・政治的な要因によって,学校・教員・ ジェンダー別格差はより状況に依存している………… 57 家庭の関心の中心は学習から逸らされている… …… 13 2.6 複合排除:貧困家計出身の女子の教育達成率は O.12 多くの国では学習成果に関する情報が しばしば最低…………………………………………… 58 欠如している… ………………………………………… 17 S1.1 人生の最初の 20 年間にわたるシナプスの発達… … 64 O.13 低パフォーマンス国は学習と他の教育成果の間での 3.1 西部・中央アフリカのほとんどの 6 年生は 厳しいトレードオフに直面していない………………… 19 読み書きと数学の能力が不十分である… …………… 68 O.14 見た目よりも複雑である:制度全体を通じて 3.2 南・東アフリカのほとんどの 6 年生は 人々は他人の選択に反応して行動する… …………… 21 数学の能力が不十分で,数カ国では O.15 学習に向けた一貫性と整合性… ……………………… 26 読み書きの点数も低い………………………………… 68 1.1 学校教育年数の増加と賃金の増加との間には 3.3 ラテンアメリカでは,貧しい子供たちの学習成果は 系統的な相関関係がある……………………………… 37 著しく低い… …………………………………………… 69 1.2 アメリカの成人死亡率は教育程度が高いほど低い… 38 B3.2.1 すべての諸国で女子は読解力で男子を上回る好成績を 目次 xiii 収めているが,数学・科学では典型的には ないものの,最も生産的でないものさえ …………………………………… 71 男子の方が好成績… 一部の学習者には何らかの学習を実現している… 112 3.4 学習の成果は国ごとおよび経済状態ごとに大差がある 5.6 若者は教育についてさまざまな道をたどっている… 114 ――数カ国では,PISA 受験国の下から 75 番目の 5.7 識字能力が高い労働者はホワイ トカラー職に 1% 層の成績が OECD 平均の 25 番目の 1% 層を 就く可能性が高い…………………………………… 114 下回っている… ………………………………………… 72 6.1 カリキュラムについてこられる学習者は 3.5 中所得国では識字能力が高所得国よりも ほんの一部にすぎない……………………………… 127 低い傾向にある………………………………………… 73 6.2 エンジニア希望者は教員希望者と比べて 3.6 開発途上世界の多くの地域では読解力の習熟度が PISA テストで典型的には得点が高い……………… 129 …………………………………………………… 74 低い… 7.1 ICT の学習に対するインパクトはこもごも… ……… 136 3.7 家庭の社会経済的な地位は生徒の PISA 平均点に 7.2 学校運営の質は著しく異なる… …………………… 139 大きく影響する… ……………………………………… 74 8.1 職場訓練の恩恵に浴するのは少数であり, 3.8 学習の直接的な決定要因……………………………… 75 識字能力や教育水準のすでに高い人が中心……… 146 3.9 認知能力の社会経済的な格差は,就学前でさえ, 8.2 職業訓練生のほとんどは後期中等教育期間中に 年齢とともに拡大する… ……………………………… 75 就学している… ……………………………………… 148 3.10 多くの正式な授業時間が失われている… …………… 76 S2.1 過去 10 年間に技術の利用は激増した B3.3.1 自分たちの努力とその効果に関する教員の考え… … 77 ――しかし多くの諸国では依然として低調………… 156 3.11 教職員報酬は公教育向けに利用可能な財源のなかで 9.1 技術的・政治的な障壁が教育制度を 最大のシェアを占めている… ………………………… 78 学習という目標から引き離す… …………………… 161 3.12 低所得国や下位中所得国の学校の運営能力は低い… 78 9.2 教育支出と学習の間の単純相関は弱い…………… 163 S2.1 厳しい困窮は人生の早期から脳の構造と機能に B9.3.1 バングラデシュでは中等前教育について 影響する………………………………………………… 84 11 種類の非国家提供者がいる… ………………… 167 S2.2 リスクと保護因子は発達軌道に影響する… ………… 84 S6.1 政府は予算の大きな割合を教育にあてている… … 173 4.1 高所得国以外のほとんどの子供たちについては, S6.2 公共教育支出の変化と生徒の学習の間の 学習に関して国際的に比較可能なデータは 結びつきは弱い……………………………………… 174 …………………………………………… 91 入手不可能… 10.1 矛盾する利害で注意は学習目的から逸れる… …… 180 4.2 低パフォーマンス国は学習と他の教育成果の間での B10.1 教員の組合組織率は国ごとに異なる… …………… 182 厳しいトレードオフに直面していない………………… 92 10.2 教員と政治家の間の関係は相互依存性が特徴…… 185 S3.1 認知的・社会情緒的・技術的なスキルは 相互に作用し合う… …………………………………… 98 11.1 イギリスでは小学校の数的思考力が劇的に 増加してきている… ………………………………… 189 S4.1 学習を改善するための介入策に関する実験的・ 疑似実験的研究の件数は近年劇的に増加………… 102 B11.5.1 チリでは読解力の得点が改善している… ………… 195 S4.2 見た目よりも複雑である:制度全体を通じて 11.2 問題主導型の反復的な適応が改革の成功を 人々は他人の選択に反応して行動する… ………… 103 牽引する……………………………………………… 197 5.1 子供の幼児期における高質のプログラムに対する 11.3 フィリピンにおける教育への公的支出の動向は 投資は利益をもたらす… …………………………… 107 広範な政治的・経済的な状況の変化を 反映している… ……………………………………… 199 5.2 激しい困窮は脳の発達を損傷し得る… …………… 109 11.4 教育向けのファイナンスの源泉はほとんどが 5.3 適切な児童発達のためには幼児期向けの 国内であるが,低所得国にとっては 統合プログラムが必要… …………………………… 111 国際的なファイナンスも重要である………………… 201 5.4 授業料の廃止で何が起こるか? 8 カ国からの証拠…………………………………… 112 5.5 すべての教育制度が等しく生産的なわけでは 地図 B6.3.1 世界における言語の多様性………………………… 126 表 O.1 整合性と一貫性はともに重要… ……………………… 14 B9.3.1 私立学校は就学のなかで大きなシェアを O.2 多数の利害が教育関係者の行動を統治している… … 14 占めている…………………………………………… 166 1.1 教育の恩恵にかかわる実例…………………………… 37 S6.1 公共教育支出における不平等は多くの地域で 共通している… ……………………………………… 174 1.2 学校教育が長い人ほど投票に出かける… …………… 40 11.1 情報を最大限に活用するための原則と 3.1 知識評価の成績が最低基準に達している教員は 関係者が果たせる役割……………………………… 192 ほとんどいない… ……………………………………… 76 11.2 有効な連合を構築するための原則と 5.1 人間行動のモデルは学習者の準備を改善するための 関係者が果たせる役割……………………………… 193 行動の手引きになり得る:若干の例… …………… 107 11.3 大規模な革新を奨励するための原則と 6.1 人間行動のモデルは授業を改善するための行動の 関係者が果たせる役割……………………………… 199 手引きになり得る:若干の実例… ………………… 124 7.1 人間行動のモデルは学校の投入や統治の有効性を 改善するための行動の手引きになり得る: ………………………………………… 136 若干の実例… 概観 教育と学び ―― 可能性を実現するために 教育と学び――可能性を実現するために 学習を評価する 証拠に基づいて行動する 関係者間で整合性を取る 学びを真剣に取り組む 学校を全学習者のために 制度全体を学習のために 目標にする 機能させる 機能させる 3 概観 教育と学び ―― 可能性を実現するために 「教育というのは世界を変えるために,われわれが使える最も強力な武器である」. ネルソン・マンデラ(2003 年) 「1 年間の計画なら稲を植えなさい.10 年間の計画なら木を植えなさい.それが 100 年なら子供たちを教育しなさい」. 管仲(紀元前 7 世紀)  学校教育は学習と同じではない.最近,ケニア,タ 制度を強固にし,社会的一体感を育む.しかし,この ンザニア,およびウガンダで,3 年生が「犬の名前は ような恩恵は,その多くは学習に依存している.学習 パピーです」という文章を読んでみなさいと言われた のない学校教育は機会の浪費である.それ以上に,そ 時,4 分の 3 の生徒が書かれていることを理解してい れは大きな不正義である.社会が最も処遇に失敗して なかった 1.インドの農村部では,3 年生の 4 分の 3 いるのは,人生で成功するのに良い教育を最も必要と 弱が 17」 「46 -  のような 2 桁の引き算ができず,5 年 している子供たちである. 生になってもまだ半数の生徒ができなかった 2.ブラ  学習が本当に重要なものであるとして行動すれば, ジルの 15 歳児のスキルは改善してきているが,この どの国ももっとうまくやれる.これは自明のように聞 ような改善ペースでは,今後 75 年経っても富裕国に こえる――結局のところ,教育に何か他の目的がある おける算数の平均点数には到達できないだろう.読 だろうか? 学習の目標は修辞上は大きな支持を集め 解力に関しては,それは 260 年以上かかるだろう 3. つつあるものの,実際には教育制度が有している多く 各国において,学習成果はほとんど常に不遇層が大幅 の特徴は重なり合って学習の足を引っ張っている.本 に劣っている.ウルグアイにおける 6 年生のうち貧 報告書の主張によると,各国は次の 3 つの前線で進 しい生徒の算数の評価をみると,「不可」の割合が裕福 展することによって改善を図ることができる: な生徒の 5 倍に達している 4.さらに,このようなデー タは幸運にも就学している児童や若者に関するもので • 学習を評価する――学習を真剣に取り組むべき目標に ある.小学校や中学校に就学さえしていない子供たち するために.これは適切に考案された生徒評価方式 はおよそ 2 億 6,000 万人にも達している 5. を使って教育制度の健全性を計測する(主に賞罰を  このような国々が特有の挑戦課題に直面していると 管理するための手段としてではなく),という意味 いうことではない.(生徒の学習を測定して,その結 である.また,結果としての学習にかかわる指標を ) 果を公表しているという点で実際には賞賛に値する. 使って,表面に現れていない取り残されている人た 世界中で何億人という子供たちが,最も基本的な生活 ちに光を当て,選択を行い,進歩を評価する,とい スキルさえも習得せずに若い成人に到達している.た うことも意味する. とえ就学しても,多くは充実したキャリアを築いたり, • 証拠に基づいて行動する――学校を全学習者に役立つ 自分の子供に教育を授与したりすることはおろか,取 ようにするために.学習方法に関する証拠が教育革新 引に伴う正確なお釣りを計算する,医師の指示書を読 の増加と並んで,近年,激増してきている.各国は む,キャンペーンが請け合っている約束事を理解する, このような証拠をもっとうまく活用すれば,独自の などいった基本的なスキルさえ身に付けずに退学して 慣行や革新のために優先順位を設定することができ いる. る.  このような学習危機は道徳的な危機である.提供が • 関係者間の整合性を取る――制度全体を学習に役立 適切であれば,教育は多くの社会悪を治すことができ つようにするために.各国は次のことを認識しなけれ る.個人においては,学習は雇用・所得・健康・貧困 ばならない.すなわち,もし制度全体が技術的・政 削減などを促進する.社会にとっては,革新を促進し, 治的な障壁のゆえに学習を支援しないのであれば, 4 世界開発報告 2018 世界中の教室におけるあらゆる革新は,大した影響 票まで,また,銀行取引明細書から偉大な文学に至る 力をもたらすことはないだろう.このような現実世 までなど――の解釈の仕方を学ばなければならない. 界の障壁を考慮に入れ,学習に関心を寄せているす 市場で売買し, 数の機能を理解して, 家庭で予算を立て, べての人々を動員することによって,各国は前線に 融資契約を解釈し,エンジニアリング・ソフトウェア いる革新的な教育者を支援することができる. を書くために数の機能を理解する必要がある.生徒は このような基盤となるスキルの上に成り立っているよ  学習の改善が優先課題になれば,大きな進展が可能 り高次の論理性や創造性を必要とする.さらに生徒は, となる.1950 年代初めの韓国は戦争で荒廃した社会 忍耐やチームで働く能力などのような社会情緒的スキ であり,識字率が非常に低いため経済成長が阻害され ルを必要としている.このスキルは,土台となるスキ ていた.ところが,1995 年までには中学校までの良 ルやその他のスキルを習得し応用するのに役立つ. 質な教育提供の義務化が達成された.現在,同国の  多くの諸国はこのような目標を達成できていない. 若者は国際的な学習評価において最高水準の成績を まず,学校で起こっていると期待されている学習は― 収めている.ベトナムは 2012 年に世界を驚かせた. ―その期待の根拠が正式なカリキュラム,雇用者の PISA 調査において,同国――下位中所得国であるに ニーズ,ないしは単なる常識のいずれに基づいている もかかわらず――の 15 歳児がドイツと同じ成績を示 かは問わない――,起こっていないことがしばしばで –  したのである.ペルーは 2009  15 年に総合的な学習 ある.より大きな懸念は,万人向けに学習を提供する 成果について最速の改善を達成した.これは,協調的 ことに失敗している国が多いということだ.貧困・場 な政策措置のおかげである.リベリア,パプアニュー 所・民族性・ジェンダー・身体障害などさまざまな理 ギニア,そしてトンガでは,証拠に基づき焦点を絞っ 由によって社会の中ですでに貧しい状態にある個人 た取り組みを遂行したおかげで,極めて短期間内で低 は,最少の学習しか享受していない.つまり,教育制 学年の読解力が著しく改善した.さらに最近,マレー 度は社会的格差を縮小するどころか拡大し得るのであ シアとタンザニアは学習を系統的に改善するために, る.学習不足をもたらしているものがより明らかにな 社会全体にわたり有望な協調的アプローチを打ち出し りつつある.これは直接的な原因――貧困の影響を増 た. 幅しているサービス提供の不備――と,低質な学校教  このような進展には明敏な診断とそれに基づく協調 育の持続を許しているより深刻な制度レベルの技術 行動が必要とされる.教育の約束を成就するためにで 的・政治的な問題の両方に光を当てた新しい分析のお きることを示す前に,この概観では最初に学習危機に かげである. 光を当てておきたい:すなわち,多くの諸国がどのよ うにして,また,なぜ,「万人のための学習」を依然と 学習成果は不十分:水準が低い,不平等が著しい, して達成していないのか? これは落胆させる読み物 進展が遅い になるかもしれないが,すべてが失われたと言ってい  最近の教育拡大は歴史的な基準か るわけではない――必要な教育を,あまりに多くの若 らみて印象的である.多くの途上 者が享受していないと言っているだけである.この概 –  国でみられたここ 20  30 年間にお 観の残りの部分では,真の進展をみせている家庭・教 ける純就学率上昇は,現在の先進国 育者・コミュニティ・制度などの実例に依拠しながら, の歴史的な実績を大幅に凌駕して もし教育制度が「すべては学習のために」ということに いる.例えば,アメリカでは女子 問題の側面 1: コミットするならば,どのようにして変化が可能にな の就学率が 57%から 88%にまで上 効果 るのかを示したい. 昇するのに,1870 年から 1910 年 までの 40 年間を要した.それとは対照的に,モロッ コは同じような上昇をわずか 11 年間で達成した 6. 学習危機の 3 つの側面 途上国の平均的な成人が修了した学校教育の年数は,  教育は生徒が健康な生産的で有意義な生活を送れる –  1950  2010 年の間に 2.0 年から 7.2 年へと 3 倍に増 ように,必要なスキルを身に付けさせるべきである. 加した 7.2010 年までには,バングラデシュの平均 スキルの定義は国ごとに異なるが,各国では核心にな 的な労働者は 1975 年におけるフランスの典型的な労 る抱負がいくつか共有されており,それはカリキュラ 働者よりも長い学校教育年数を修了していた 8.この ムに体現されている.どこにおいても生徒はさまざま 進展が意味するのは,基礎教育について高所得国と低 な種類のひとかたまりの文章――投薬ラベルから求人 所得国の間でみられた就学率格差のほとんどがなくな 概観 教育と学び ―― 可能性を実現するために 5 図 O.1 学習不足は初期の段階で始まる 簡単な読み書きや計算の問題ができない 2 年生の割合(主要国) a. 短文中の簡単な単語が b. 2 桁の引き算ができなかった 読めなかった 2 年生 2 年生 100 100 80 80 60 60 % % 40 40 20 20 0 0 ク イ ア マ ア ニ ーナ モ ク ウ ド ダ イ イ ア タ リア ヨ ア ウ ナ ド ネ ン リ コ ン ザ ダ ル ラ ン ラ ウ ン ッ グ ニ ン ウ メ ビ ニ ー ン ダ ー イ イ イ ラ イ ベ ラ ロ ラ ガ ケ エ ガ ガ ン ル ガ ザ パ カ マ ン 出所:以下からのデータに基づく WDR 2018 チーム―ケニアとウガンダの識字・数学データは Uwezo, Annual Assessment Reports, 2015 (http://www.uwezo.net/); インド農村部の識字・数学データは ASER Centre (2017); その 他諸国の識字データは USAID, Early Grade Reading Barometer, 2017(2017 年 5 月 30 日アクセス) (http://www. earlygradereadingbarometer.org/); その他諸国の数学データは USAID/RTI Early Grade Mathematics Assessment Intervention reports, 2012-15 (http://shared.tri.org/sub-topic/early-grade-math-assessment-egma). データは http:// bit.do/WDR2018-Fig_0-1. 注:このようなデータは典型的には各国の主要地域に関するもので,必ずしも国全体を代表するとは限らない.イ ンドのデータは農村部のもの. りつつあるということである.2008 年には,低所得 カの西部・中央部の 6 年生については 2014 年時点 国の小学校における平均就学率は,高所得国のそれと で,読解力や数学の勉強を続けるための「十分な」能 ほぼ同水準になった. 力水準に達しているのは 45%未満にとどまっていた  しかし,学校教育は学習と同じではない 9.世界中 ――例えば,残りの生徒は 130 ÷ 26 という計算を の教育制度において学習をほとんどしていない子供た 要する問題を解けなかった 15.2016 年のインド農村 ちが大勢いる:数年間就学しても基本的な識字や計算 部では,2 年生向けカリキュラム水準の文章を流暢に のスキルを修得していない生徒が数百万人もいる.ガー 読めた 5 年生はわずか半数にとどまった.ちなみに, ナとマラウイにおける最近の評価では,2 学年を終え その文章 には, (現地語による) (It was 「雨期だった」 た生徒で the ないし cat といった馴染み深い単語を読 the month of rains)や「空には黒い雲が浮かんでい めなかった割合が 5 分の 4 以上に達した 10. (図 O.1) (There were black clouds in the sky) た」 といった 中所得国のペルーでは,同割合は最近の改革以前には 文が含まれていた 16.このようなひどい学習不足が 半分であった 11.ニカラグアの 3 年生を 2011 年に 学習危機を構成している. テストしてみたところ,5 + 6 の計算を正答できたの  すべての途上国がそのような学習の極端な不足で苦 は半数にとどまった 12.2015 年のパキンスタン都市 悩しているわけではないものの,多くの国はみずから 部で 54 - 25 の引き算を正しくできた 3 年生は 5 分 が熱望している水準にはほど遠い状況にある.識字・ の 3,農村部となるとそれはわずか 5 分の 2 強にと 数的能力に関する主導的な国際評価――国際読解力調 どまった 13. (PIRLS) 査 と国際数学理科教育動向調査(TIMSS)―  学習のペースがこのように遅いということが意味す ―によると,低所得国の平均的生徒は高所得国の生徒 るのは,小学校を修了した生徒でさえ基礎的な能力を の 95%よりも成績が悪い.これは,高所得国のクラ 身に付けていないということである.最も新しいデー スなら補習教育の対象者として選出されるだろうとい タが入手可能な 2007 年でみると,アフリカの南東部 うことを意味する 17.中所得国の多くの成績優秀者 の 6 年生で,単語を単純に判読するという能力の水 ――仲間たちのなかで上位 4 分の 1 層に上りつめた 準を上回ったのは 50%未満,基礎的な計算の能力を 男女――も,富裕国なら最低位 4 分の 1 層に位置す 上回ったのは 40%未満にとどまっていた 14.アフリ るだろう.アルジェリア,ドミニカ共和国,およびコ 6 世界開発報告 2018 図 O.2 数カ国では,PISA 受験者の 75 番目の 1%層の成績は OECD 平均の 25 番目の 1%層の成績を下回って いる 2015 年 PISA 数学テストの評価(主要国):25 番目・50 番目・75 番目のパーセンタイルの成績 パーセンタイル 75 番目 600 50 番目 550 500 25 番目 数学の点数 450 400 350 300 ア ケ ア ブ ア ヨ ア コ ビア ベ ア ル ア ン ラ カ EC ム ド ド ロ ー ツ ジ 国 ュ ボ ド ル 均 国 ガ 本 ル リ ン ン リ シ ア ロシ マ ジ ビ ニ イ ダ ナ チ ソ ン 日 コ ル ン ジ ー ア 共和 平 韓 ェ タ ラ ラ ト ト ネ ニ ル ン ド コ ド ラ ペ ポ D ス ン カ ィ ル イ ニ O フ イ シ ミ ド OECD における 4 分位数の間の領域 出所:PISA 2015 (OECD, 2016) に基づく WDR 2018 チーム.データは http://bit.do/WDR2018-Fig_0-2. ソボでは,上位 4 分の 1 層の仕切り水準(PISA 受験 相互間の格差は,コスタリカが 92 点であるのに対し 者の分布でいえば 75 番目のパーセンタイルの水準) てカタールは 138 点である.アメリカの同格差はア は,OECD 諸国の下位 4 分の 1 層の仕切り水準(25 ルジェリアとアメリカのそれぞれの中位数の格差より 番目のパーセンタイルの水準)をはるかに下回ってい も大きい. る(図 O.2).教育では好成績を収めているコスタリカ  生徒が毎年学ぶことは多くの場合に大した量ではな でさえ,最上位 4 分の 1 層の仕切り水準の成績はド いが,早期における学習不足は時とともに拡大してい イツの最低位 4 分の 1 層の仕切り水準の成績に等し く.学校にとどまる生徒は,当初においてどのような い. 不利を負っていようとも,学習の着実な進展で報わ  学習危機は不平等を増幅する:学習危機は,良質な れるべきである.にもかかわらず,2010 年のインド 教育が提供できる後押しを最も必要としている不遇な のアンドラ・プラデシュ州では,低成績だった 5 年 若者の歩みを著しく阻害する.多くのアフリカ諸国の 生が,1 年生の問題を 2 年生よりも正確に答えられる 生徒にとって,所得水準による学習格差には厳然たる 可能性は高くはなかった.5 年生の平均的な生徒でさ ものがある(図 O.3).初等教育の最終学年について実 え 1 年生の問題を正答できる確率は約 50%であった 施された最近の評価では(PASEC, 2014),カメルー が,2 年生のそれは約 40%であった 19.2000 年代 ンの女子の場合,最貧 20%層家計の出身者で,学校 後半の南アフリカでは,4 年生の大多数は 1 年生の算 を続けるのに十分に学習している者の割合はわずか 数しか修得していなかった:9 年生のほとんどは 5 年 5%にとどまっていた.これに対して,最富裕 20% 生の数学しかマスターしていなかった 20.2015 年に 層の同比率は 76%に達していた 18.他の数カ国―― インドのニュー・デリー市では,平均的な 6 年生は ベニン,コンゴ共和国,そしてセネガル――でも,学 数学で 3 年生レベルの成績を収めた.9 年生になって 習格差はほとんど同じくらい大きかった.学習者間の も平均的な生徒は 5 年生レベルに達していたにすぎ 大きな格差という問題は多くの高所得国や中所得国を ず,成績が良い生徒と悪い生徒の格差は時とともに拡 悩ませており,低成績者には不遇層の生徒が過度に集 大した(図 O.4).ペルーとベトナムでは――15 歳児 中している.コスタリカとカタールは,ある 1 つの の PISA 評価でそれぞれ最高成績と最低成績の国の 1 (TIMSS 2015) 国際的基準による評価 では平均点が つ――,5 歳児は同じような数的スキルで出発してい 同じではあるが,トップとボトムの 4 分の 1 の生徒 るが,ベトナムの生徒は初等および前期中等のレベル 概観 教育と学び ―― 可能性を実現するために 7 図 O.3 アフリカの貧困家計出身の子供たちは典型的には学習水準がずっと低い 2014 年 PASEC を受験した 6 年生で,読解力達成度について十分な水準を上回る(ブルー)/ 下回る(オレンジ)点数をとった生徒の割合: ジェンダー別の最貧 20%層対最富裕 20%層 (主要国) 100 75 50 25 0 % 25 50 75 100 F M F M F M F M F M F M F M F M F M F M F M F M F M F M F M F M F M F M 貧困層 富裕層 貧困層 富裕層 貧困層 富裕層 貧困層 富裕層 貧困層 富裕層 貧困層 富裕層 貧困層 富裕層 貧困層 富裕層 貧困層 富裕層 ニジェール トーゴ カメルーン コンゴ ベニン コートジ ブルキナ セネガル ブルンジ ボワール ファソ 能力なし 低度の能力 高度の能力 出所:World Bank (2016b) からのデータに基づく WDR 2018 チーム.データは http://bit.do/WDR2018-Fig_0-3. 注:社会経済的な 5 分位層は各国が定義.「能力なし」 は元の記号で 0 – 2 の水準を指し,就学継続にとって十分な水準未満と考えられる; 「低度の能力」は 3 の水準,「高度の能力」は 4 の水準を指す.F =女子,M =男子. では,学校教育の期間中により多くを学んでいる 21. 図 O.4 生徒は多くの場合に毎年ほとんど学んでおらず, 早期の学習不足は時とともに拡大していく  なかには学習について進展を示している国もある 就学学年との対比で評価された生徒の成績は何学年に相当するか:イン が,そのペースは典型的には遅い.トップの成績国 ドのニュー・デリー市(2015 年) に追い付きつつある中所得国でさえ,そのスピード a. 数学 b. 言語 –  が非常に遅い.インドネシアは過去 10  15 年間に 9 9 PISA で急上昇を記録してきている.にもかかわらず, –  2003  15 年のペースを維持できたとしても,インド 8 8 ネシアが OECD の平均点に到達するには,数学につ いてはさらに 48 年,読解力については 73 年かかる 7 7 成績の学年水準 成績の学年水準 だろう.他の国々については,待ち時間はもっと長い だろう.現在のトレンドでは,チュニジアが数学につ 6 6 いて OECD 平均に到達するのに 180 年以上,ブラ 5 5 ジルは,読解力に関して 260 年以上を要するだろう. 加えて,このような計算は学習が改善している国々 4 4 についてのものである.2003 年以降の数回にわたる PISA に参加したすべての諸国について,調査時点ご 3 3 とに各国平均点が改善した度合いは中位数でみてゼロ 6 7 8 9 6 7 8 9 就学年 就学年 であった. 期待される成績 75 番目のパーセンタイル  進歩がこのように遅いため,あるベンチマークによ 評価された成績平均 25 番目のパーセンタイル ると,途上国の小学生の 60%以上が学習について最 出所:Muralidharan, Singh, and Ganimian (2016) からのデータに基づ 低限の成績さえ達成できていない.すべての国で共通 く WDR 2018 チーム.データは http://bit.do/WDR2018-Fig_0-4. に実施された学習評価は1つもないが,95 カ国にお ける学習評価に基づくデータを組み合わせると,数学 についてグローバルに比較可能な「最低限の習熟」水準 を設定することができる 22.この水準以下だと,生 徒は基本的な数学スキルさえマスターしていないこと 8 世界開発報告 2018 図 O.5 最低限の習熟水準を超えている小学生の割合はしばしば低い 学習評価について最低限の習熟水準を超える得点をとった小学校高学年生の中位割合(所得グループ別/地域別) 100 80 60 % 40 20 0 低所得国 下位 上位 高所得国 サハラ以南ア 中東・ ラテンアメ 東アジア・ ヨーロッパ・ 中所得国 中所得国 フリカ 北アフリカ リカ・カリブ 太平洋 中央アジア 数学 読解 出所:WDR 2018 チーム.Nadir Altinok, Noam Angrist, and Harry Anthony Patrinos によって WDR2018 チームが利用可能になった “A Global Data Set on Education Quality” (2017) を用いている.データは http://bit.do/WDR2018-Fig_0-5. 注:グラフは国グループ内における各国非加重中位数を示す.地域の平均は高所得国を除く.インドと中国はデータ欠如のため除 外されている国々のなかに入っている.最低限の習熟度は数学については TIMSS(Trends in International Mathematics and Science Study),読解力は PIRLS(Progress in International Reading Literacy Study)それぞれの評価を基準にしている.前者は整数の加減,馴 染みのある図形の認知,単純な図表の読み取りなど基本的な数学知識を身に付けていることを意味する (Mullis 他 2016).後者は文章 を読んで明示的に述べられている詳細を突き止めて取り出すことができ,また,何らかの情報を伝える文章の最初から明示的に述べ られている情報を突き止めて再生することができることを意味する (Mullis 他 2012). になる.これには整数の単純な計算,分数ないし測定 就学の子供たちの集団がある.貧困が学校教育の修了 値の利用,単純な棒グラフの解釈などが含まれてい を阻害する最大の一貫した理由であるが,ジェンダー る.高所得国では生徒のほぼ全員――日本 99%,ノ や身体障害,カースト,民族性などもしばしば未就学 ルウェー 98%,オーストラリア 91%――が,この水 の原因となっている(図 O.6). 準を小学校で達成している 23.しかし,世界のその  子供たちが未就学なのは単に貧困や紛争が理由では 他の地域ではその割合はずっと低い:マリでは 7%, ない.学習危機も理由である.貧しい親たちは教育の ニカラグアでは 30%,フィリピンでは 34%,メキシ 質が低いと感じれば,子供たちを就学させるために進 コでは 76%などとなっている.低所得国では小学校 んで犠牲になろうとはしないだろう――親たちが直 修了時点の頃までにこの水準に到達する生徒の割合が 面している制約を考えれば合理的な反応といえる 26. 14%,下位中所得国では 37%となっている(図 O.5). 学校の質に関する親たちの理解は,学校の物理的な条 上位中所得国でさえこの最低限の習熟水準に達してい 件から教員の時間厳守に至るまでの多種多様な要因に るのはわずか 61%にとどまっている. 依存するものの,親たちは重要な要因として生徒の学  学習にとっての究極の障壁は学校教育がまったくな 習成果を一貫して引き合いに出している 27.このよ いことである――にもかかわらず,数億人もの若者 うな成果は行動に影響し得る:生徒の能力を一定とし が未就学のままである.2016 年現在,初等教育学齢 て,エジプトでは成績の悪い学校の生徒は退学する確 期にある 6,100 万人の児童――低所得国および下位 率が高かった 28. 中所得国の全児童の 10%――が就学していなかった.  学校時代の学習不足は最終的に労働力のなかでスキ また,中等教育学齢期の未就学児童は 2 億 200 万人 ル不足として顕在化する.つまり,仕事上のスキルに に達していた 24.脆弱国や紛争影響国の子供たちは 関する論議は学習危機を反映しているのである.仕事 このうちの 3 分の 1 強を占め,不当に大きな割合と 上のスキルは学習に関する論議とは分離している形で なっている.2000 年に初等教育の義務化を達成した 議論されていることが多いが,この 2 つは同一問題 シリアでは,内戦によって 2013 年までに 180 万人 の裏表である.教育制度のせいで労働者の準備が十分 の児童が退学を余儀なくされた 25.ほとんどすべて でないがために,多くはスキルが不十分なまま労働力 の途上国には,社会的に排除されたグループ出身で未 に加わる.職場における成人のスキルを測定するのは 概観 教育と学び ―― 可能性を実現するために 9 図 O.6 学校修了率は富裕層・都市部で高いが,ジェンダー別格差はより状況に依存している 15 –19 歳児の 6 学年修了率(%)における格差(富・場所・ジェンダーの別) a. 最富裕層 – 最貧層 b. 都市部 – 農村部 c. 男子 – 女子 80 80 80 60 60 60 格差 格差 格差 (%ポイント) (%ポイント) (%ポイント) 40 40 40 20 20 20 0 0 0 ‒20 ‒20 ‒20 20 40 60 80 100 20 40 60 80 100 20 40 60 80 100 6 学年修了率全体(%) 6 学年修了率全体(%) 6 学年修了率全体(%) 出所:Filmer (2016) からのデータに基づく WDR 2018 チーム.データは http://bit.do/WDR2018-Fig_O-6. Source: WDR 2018 team, using data from Filmer (2016). データは http://bit.do/WDR2018-Fig_O-6. 注:示されているデータは 2005 – 14 年において国毎に得られる最新のもの.縦の線は,一国における格差の方向と大きさを示している. むずかしいが,最近の新たな取り組みによって多数の 体のなかでうまくいっていないことについての情報が 国々で成人のスキルが広範に測定されている.その発 欠如している.そのような情報は,行動を起こすこと 見によれば,識字や数的な能力など基盤的なスキルで を可能にするものである.したがって,学習を改善す さえしばしば低く,より高度なスキルとなれば言うま るために状況に即した対応策を工夫することができな でもない.問題は単に訓練された労働者の不足という いでいる.有効な行動をするためには,学校がどのよ ことにとどまらない.それは容易に訓練可能な労働者 うにして学習者の処遇に失敗し,制度がどのようにし の不足という問題でもある.したがって,多くの労働 て学校を役立たないものにしているかについて,まず 者は最低限の読解力ないし数学力しか必要としない仕 は理解することが必要である. 事に就き,そこにとどまっている 29.スキル不足は 仕事の質,所得,そして労働の移動性を削減する. 学校は学習者の処遇に失敗している  労働市場で必要とされるスキルは多次元にわたるの  苦闘している教育制度には,学校 で,教育制度は生徒に単に「読み書き算盤」以上の多く レベルの学習のための鍵となる次の のものを身に付けさせる必要がある.しかし,生徒は 4 つの構成要素が欠如している.す このような基礎的なスキルを急激に引き上げることは なわち,準備ができている生徒,有 できない.労働者ないし社会の成員として,人々は問 効な授業法,学習を重視した投入, 題解決など高度な認知スキルも必要とする.加えて, これらすべてを統合する熟練した管 問題の側面 2: 誠実性などいった社会情緒的なスキル――時としてソ 理・統治である(図 O.7).次節では 直接的な原因 フトな,ないし非認知スキルと呼ばれる――も必要で このような結び付きが崩壊した理由 ある.最後に,特定の仕事を遂行するためには技術的 を検討するが,ここではどのようにして崩壊したかに スキルが必要である.とはいえ,基礎的な認知スキル 焦点を当てる. は必要不可欠であり,制度としてはより高度なスキル  第 1 に,子供たちはしばしば学習する準備ができ をターゲットにするなかで,それを開発するという挑 ていない状態で就学する――仮に就学するにせよ…. 戦課題を迂回することはできない. 栄養不良・病気・親の過少投資・貧困に関連した厳し  学習危機やスキル格差に取り組むためには,その原 い環境などが,幼児教育の土台を崩している 30.厳 因――学校レベルでの直接的な原因とそのより深い制 しい困窮――栄養・不健康な環境・世話人の愛情不足 度的な動因の両方――を診断することが必要になる. などの点で――は,幼児の脳の発達を阻害することか 各国が教育につぎ込んだすべての投資を考えると,学 ら,永続的な影響を及ぼす 31.途上国の 5 歳未満児 習の不足は意気を阻喪させる.しかし,その一因は学 の 30%は身体的に発育が阻害されている――典型的 習は常にしかるべき関心を享受してこなかったという には慢性的な栄養不良のために,年齢の割に体重が軽 ところにある.その結果,関係者には,学校や社会全 いという意味である 32.発達の基盤が不十分で,困 10 世界開発報告 2018 図 O.7 なぜ学習成果が上がらないのか:崩壊した 4 つの直接的な る.さらに,大勢の不遇な若者はそもそも就学してい 要因 ない.授業料や機会費用は依然として学校教育にとっ て重大な金銭的障壁であり,排除の社会的側面――例 準備 えば,ジェンダーや身体障害に関連したもの――が問 い の な で の き 題をいっそう悪化させている.このような就学に関連 気 生 員 る する不平等が学習成果における格差をも拡大させてい て や い 徒 教 で な る. 練 い 未熟  第 2 に,教員は往々にして有効なスキルやモチベー ションを欠いている.学校における学習に影響する最 も重要な要因は教員である.アメリカでは,良い先生 学習 に巡り合った生徒は単年度で 1.5 学年相当以上の進歩 を示すのに対して,悪い先生が担当した生徒はそれが わずか 0.5 学年相当にとどまる 34.途上国では,教 授業 ない 員の質は富裕国よりもさらに重要である 35.しかし, 法・ ば 学 に影 学 響 入 ほとんどの教育制度は,優れた経歴をもつ人々が魅力 及 校 営 習 投 の が 運 響 へ 影 が 校 学 習に を感じる対象ではない.例えば,教員志望の 15 歳児 及 ば 学 ない はほぼすべての国において,PISA テストで各国の平 法・ 授業 均を下回る得点にとどまっている 36.その上,悪い 先生から教育を受けると,科目知識や授業スキルが不 出所:WDR 2018 チーム. 足している教員が誕生する.サハラ以南のアフリカ 14 カ国では,6 年担当の平均的な教員は読解力テス 窮の結果として就学前スキルが低水準であることは, トで,同学年の最優秀生徒と同程度の成績にとどまっ 学校からの恩恵をフルに享受する準備が不十分なまま ている 37.インドネシアでは,典型的な数学の授業 就学していることを意味する(図 O.8)33.したがって, 時間の 60%は講義に費やされて,実習,つまり問題 良い学校においてさえ,困窮している児童は学びが少 を解くことに残されている時間は限定的である 38. ない.加えて,低学習の軌道からの脱却は,このよう 一方,多くの途上国では大量の学習時間が失われてい な子供たちが年を重ねるのにしたがってますますむず る.これは授業時間が他の活動に使われている,ある かしくなる.というのは,脳が柔軟性を失うからだ. いは教員が不在だからだ.エチオピア,ガーナ,そし つまり,教育制度は当初の格差を増幅する傾向にあ てグアテマラでは,授業時間全体の 3 分の 1 しか学 図 O.8 認知能力の社会経済的な格差は,就学前でさえ,年齢とともに拡大する アルファベット 10 文字を認識できる 3 – 5 歳児の割合(富の 5 分位層別,主要国) a. 中央アフリカ共和国 b. カザフスタン c. チュニジア 100 100 100 80 80 80 60 60 60 % % % 40 40 40 20 20 20 0 0 0 3 3.5 4 4.5 5 3 3.5 4 4.5 5 3 3.5 4 4.5 5 年齢 年齢 年齢 最富裕 20%層 最貧 20%層 95%信頼区間 95%信頼区間 出所:Multiple Indicator Cluster Surveys (http://mics.unicef.org/) に基づく WDR 2018 チーム.データは中央アフリカ共和国について 2010 年,カザフスタン 2010 – 11 年,チュニジア 2012 年.データは http://bit.do/WDR2018-Fig_0-8 にまとめられている. 概観 教育と学び ―― 可能性を実現するために 11 図 O.9 アフリカでは,教員は学校を欠勤しているか,また 戸棚にしまい込まれていた 43.同様に,多くの技術 は出勤していても教室にいないことが多い 的介入は教室に到着する前に役立たなくなっている 予告せずに訪問した日に学校ないし教室に不在であった教員の 割合(調査対象国) し,たとえ教室に達しても授業ないし学習は高まって いない.ブラジルでは,数州における「子供 1 人にラッ 60 プトップ 1 台を」という新しい構想は数年の遅延に直 面している.さらに,ラップトップがようやく教室に 40 届いてから 1 年後でさえ,40%強の教員がパソコン を教室の活動にまったく使っていない,ないし稀にし % 20 か使っていないと回答した 44.  第 4 に,運営・統治のまずさがしばしば学校教育 0 の質を損なっている.学校のリーダーシップが有効 だからといって,そのことが生徒の学習を直接向上 13 14 10 12 14 13 11 13 20 20 20 20 20 20 20 20 , , , , , , , , させるわけではないが,授業の質を改善し,資源の ク ア ア ア ア ダ ゴ ル リ ー ニ ニ ニ ン ー ガ ェ 有効利用を保証することによって,間接的には学習 ビ ト ガ ケ ザ ザ ネ ジ ン ウ ン ン セ イ ザ タ タ を向上させるだろう 45.調査対象になった 8 カ国を ナ モ 教室 教員が不在 学校 通じて,運営能力指数――20 個の運営慣行の採用に 出所:Bold 他 (2017).データは http://bit.do/WDR2018-Fig_0-9. 基づく――の標準偏差が 1.00 増加すると,生徒の成 注:「教室に不在」 は「学校に不在」 と学校にいる教員の間で 「授 果の標準偏差が 0.23 – 0.43 相当増加するという関係 業に不在」 を組み合わせたもの.データは世界銀行の次の資料 がある.しかし,学校運営能力は所得水準が低いほ に基づく―Service Delivery Indicators (SDI)surveys (http://www. worldbank.org/sdi). ど低い傾向にあり,学校の運営能力は製造業よりも 著しく低い(図 O.10)46.無能な学校リーダーシップ というのは,校長が教員の問題解決を積極的に支援 習に使われていなかった 39.アフリカの 7 カ国にわ していない,教育上の助言を提供しない,学習を最 たって,調査チームが予告をせずに訪問した日には, 優先するという目標を設定していない,といったこ 5 人に 1 人の教員が欠勤,さらに別途 5 人に 1 人の教 とを意味する.学校の統治――保護者やコミュニティ 員が出勤してはいるが教室にはいなかった 40. (図 O.9) が提供する監視と並んで,特に学校の意思決定の自 遠隔のコミュニティでは問題はもっと深刻であり,農 律性――は,現場での解決を追求し,それについて 村部の生徒がそうでなくても直面している不利が増幅 説明責任を負うための枠組みとして機能する.多く されている.このような診断は教員の非難を意図した の環境下で,学校は意味のある自律性を欠いている ものではない.そうではなく,教員を支援しないこと し,コミュニティの関与は教室で起こっていること によって,いかに学習の機会を失わせているかに注意 に影響を及ぼすには至っていない 47. を引くためである.  このような質の問題は不遇層の子供たちに集中して  第 3 に,投入は教室に届いていない,ないし届い いるがゆえに,社会的不平等をいっそう増幅している. ているのに学習に影響を与えないことが多い.公開対 低所得国では平均すると,5 歳未満児の間における発 話ではしばしば教育の質の問題と投入格差が同じよう 育不全率は,最貧 20%層は最富裕 20%層の 3 倍に に扱われている.十分な資源の配分は極めて重要であ 達している 48.学校における教員の無断欠勤,投入 るが,資源が就学者の急増に追い付いていない国もな の不足,運営のまずさといった問題は典型的には,最 かにはある.しかし,いくつかの理由から,投入不足 貧層の生徒を就学させているコミュニティにおいて最 が学習危機を説明できるのはほんのわずかな部分にと も厳しい.支出パターンが典型的には不遇なコミュニ どまる.第 1 に,制度や学校を横並びにしてみると, ティを不利に取り扱うというだけでなく,そこでは資 資源の水準が同様であっても,学習成果においては膨 源の利用も有効ではないため,問題がいっそう悪化し 大な格差がみられるのが普通である 41.第 2 に,あ ている.つまり公的政策はすべての子供たちに学ぶ機 る環境下で投入を増やしても学習成果に対する効果は 会を提供せずに,社会的格差を拡大させる効果をもっ 小さいことが多い 42.その一因は投入がしばしば前 ている. 線にまで届かないことにある.例えば,シエラレオネ で 10 年前に,教科書が学校宛てに配布されたが,追 跡検査の発見によれば,そのほとんどが未使用のまま 12 世界開発報告 2018 図 O.10 低所得国や下位中所得国の学校は運営能力が低い な部分は学習重視に向けて調整される必要がある.し 運営能力得点の分布(部門別,対象国) かし,制度内の利害関係者は他の目標も抱いている― ―明言されているものとそうでないものとがある.学 タンザニア 習の促進は目標の 1 つにとどまり,必ずしも最重要 とは限らない.時として,このような他の目標は有害 インド であり得る.例えばこれは,建設会社と官僚がみずか らの金銭的な利益のために,共謀して標準以下の校舎 ハイチ を建てる場合である.別の事例では,このような目標 は賞賛に値するかもしれない.例えば,共通の国家的 イタリア 価値観を育むといったことである.しかし,仮に教育 制度の要素がこのような他の目標に向けて整合的に なっているとすれば,このような制度は学習と矛盾す ブラジル ることもあるだろう.  ある国が学習を最優先にしたいと思っても,往々に メキシコ してそうするための指標が欠如している.どんな制度 でも何らかの形で生徒の評価を行っているが,革新に ドイツ ついて意見を言うのに必要とされる信頼できる時宜を 得た評価を欠いている制度が多い.例えば,新しい教 カナダ 員研修プログラムは教員を実際により有効にしている だろうか? 仮に制度に小学生の授業と学習の質に関 アメリカ して信頼できる――時期やクラス相互間で比較可能な ――情報が欠如しているとすれば,この質問に答える スウェーデン 方法はまったくない.  本当に整合化するためには,教育制度の各部分も相 イギリス 互に整合的になっていなければならない.ある国が生 1 2 3 4 5 徒の学習を最優先課題に設定し,妥当な学習指標を導 運営能力得点 入したとしよう.しかし,それでも重大な技術的ハー 教育 製造業 ドルを飛び越える必要がある.それは,制度内の多種 多様な要素の協業を確保することである.仮にある国 出所:Bloom 他 (2014, 2015); Lemos and Scur (2016), 最新の更新 された情報を含む.データは http://bit.do/WDR2018-Fig_0-10. が能動的な学習と創造的な思考を強調する新たなカリ 注:教育データの基本的分布は棒グラフで示されている.両部 キュラムを採択したとしても,それだけでは大きな変 門について滑らかな分布は曲線で示されている.指数は両部門 で比較可能な 9 項目で構成されている.ハイチについては製造 化は生じないだろう.教員は研修を受けて,より能動 業に関するデータが入手不能. 的な学習手法を使えるようにならなければならない. また,変更に際しては十分な注意が必要である.とい 制度が学校を機能しないものにしている うのは,新カリキュラムの授業は古い機械的な学習よ  制度の観点からみると,学習やス りも,ずっと大きな労力を要する公算があるからだ. キルが低水準でもまったく驚くに当 たとえ教員がカリキュラム改革について賛成していて たらない.技術的な複雑さや政治の も,改革されていない試験制度が整合性を欠くインセ 力のせいで,教育制度の焦点はい ンティブを生み出すようであれば,生徒がその効果を つも学習から逸れているからだ(図 弱めるということがありうる.韓国では大学入学のた O.11) . 問題の側面 3: めの一発方式のテストは,中等学校学習の方向転換を より深層にある原因 図ることに向けた努力の足を引っ張っている.カリ 技術的な挑戦課題: キュラムが生徒の創造性や社会情緒スキルを育むべく 学習重視への方向転換はむずかしい 変更されたのを受けて,多くの親は相変わらず子供た  制度が複雑で運営能力が限定的であることが,教育 「学習塾」 ちを受験準備のために,民間の に通わせてい 制度のすべての部分を学習重視に方向転換することの る 49. 障害になっている.第 1 に,制度のなかの多種多様  首尾一貫性が必要であることを考えると,諸外国か 概観 教育と学び ―― 可能性を実現するために 13 ら制度の諸要素を借用するのは危険であろう.教育に 図 O.11 技術的・政治的な要因によって,学校・教員・家庭の関心 の中心は学習から逸らされている 関する政策立案者や他の専門家はしばしば,より良い 学習成果を収めている制度を吟味して,借用可能なも のを特定しようとする.実際に 2000 年代に,フィン ランドの公平性を伴う学習という立派な記録の背後に 学 員 習 ある秘密を探し求めて,フィンランドが「PISA ツー 教 者 リズム」というあだ名を付けた視察派遣団の群れが フィンランドに押し寄せた.フィンランドの制度では, 教育程度の高い教員に大きな自律性が付与され,自分 の授業を担当生徒のニーズに合わせて調整することが 学習 できる.しかし,実績の悪い制度は,フィンランドで 実施された教員の自律性をその制度に輸入しても,失 望する公算が大きいであろう:もし教員が良い教育を 受けておらず,モチベーションに欠け,適切に管理さ 入 れていなければ,自律性を高めることは事態をさらに 学 投 運 営 校 へ の 悪化させる可能性が高いといえる.南アフリカはこの 校 学 ことを 1990 年代から 2000 年代にかけて発見した. 南アフリカは,目標は設定するものの,実施方法は教 員に委ねるというカリキュラムのアプローチを採用 出所:WDR 2018 チーム. したのであった 50.このアプローチが失敗したのは, そのような手法が教員の能力と自由に使える資源に合 わなかったからだ 51.国内製で状況に固有の解決策 ない政策選択を唱道ものもいるかもしれない.教員を が重要な所以である. 初めとする教育の専門家も,使命感に動機付けられて  成功している制度は整合性と一貫性を組み合わせて いる時でさえ,安全な雇用を維持し,所得を保護する いる.整合性が意味するのは,制度内のさまざまな構 ために争うかもしれない.これらのどれ 1 つとして, 成部品にとっての目標が学習であるということだ.一 教育関係者が学習に関心をもっていない,ということ 貫性は,制度が設定した目標を達成するのに当たって, を意味するものではない.そうではなく,とりわけ運 その部品が相互に補強し合うということを意味する. 営が不適切な制度においては,学習重視の利害よりも 制度がこの両方を達成すれば,そのような制度が生徒 それと競合する利害が大きくみえる可能性があるとい の学習を促進する可能性はずっと高まる.整合性や一 (表 O.2) うことだ . 貫性の欠如があまりに甚だしいと,制度としては他の  不整合性は無作為なものではない.このように利害 目標は達成できても,学習の達成には失敗することに が競合している状況下では,特定の政策が学習を改善 なりかねない(表 O.1). するか否かによって選択されることは稀である.選択 はより多くの場合に,政策アリーナにおいてもっと強 政治的な挑戦課題:鍵を握る関係者は生徒の学習を最優先 力な関係者によって行われている.代理人は単に学習 課題にすることを常に望んでいるわけではない だけでなく,さまざまな理由に対して相互に説明責任  政治的な挑戦課題は技術的なそれを複雑にしてい を負っている.このような利害を考えると,学習の成 る.多くの教育関係者は,学習以外のことにもやはり 果がほとんどないのも驚くべきことではなかろう. さまざまな関心を抱いている.政治家は権力のなかで  問題の 1 つとして,学習を促進するための活動は 自分の地位を保持しようと行動している.そのため利 管理がむずかしいということがある.教室における授 益を求めて特定のグループ(場所や民族,経済などに 業と学習には生徒と教員の間の規則的で反復的な相互 基づく)をターゲットにする公算があろう.官僚は生 作用に加えて,教員による著しい裁量が含まれる 52. 徒の学習を促進するよりも,政治家や教員を喜ばせる このような特徴が,学習に関する信頼できる情報の欠 ことに重点を置いている,あるいは単に自分の地位を 乏と相まって,学習の管理を他の目標の追求よりもむ 守ろうとしているのであろう.民間の教育サービス― ずかしくしている 53.例えば,教育へのアクセスの ―教科書,建設,あるいは学校教育など――の提供者 改善は単純で,収集が容易な就学データを検討すれば のなかには,自己利益を追求して,生徒の利益になら モニターできるだろう.同様に,学校建設,現金給付 14 世界開発報告 2018 表 O.1 整合性と一貫性はともに重要 首尾一貫しているか? 制度要素は… イエス ノー 高成績:制度は学習促進に向けて適切に組織化 一貫性に欠ける努力:制度の学習促進指向に一貫性 がない イエス 例:各レベルで高成績 (上海,フィンランド,ベトナム) 例:学習指向型の「最善慣行」な要素を借用したのに, さまざまな要素の相互一貫性を確保していない国 学習重視に 向けて整合化 一貫している非学習者(学徒以外の教育関係者):制度 制度の破綻:一貫した手法によって学習ないし他の何 されているか? はさまざまな目標を促進すべく組織化 らかの達成を目指そうとしていない制度 例:国家ないし建国に対する忠誠の促進を重視する 例:破綻国家の制度 ノー 全体主義ないし独裁主義の制度 (スターリン時代の USSR,スハルト時代のインドネシア);学習よりも学校 の達成度に焦点を置く制度 (多数の制度) 出所:WDR 2018 チーム. 表 O.2 多数の利害が教育関係者の行動を統治している 例 関係者 学習重視の利害 競合する利害 教員 生徒の学習,職業倫理 雇用,雇用保証,給与,個人教授 校長 生徒の学習,教員のパフォーマンス 雇用,給与,職員との良好な関係,えこひいき 官僚 うまく機能している学校 雇用,給与,レント・シーキング 政治家 うまく機能している学校 選挙の利益 , レント・シーキング,愛顧 親と生徒 生徒の学習,卒業生の雇用 家族の雇用・所得,他人に対する優位 司法 教育にかかわる有意義な権利 えこひいき,レント・シーキング 雇用者 優秀な卒業生 低課税,狭義の私利 非政府学校 革新的で応答的な学校教育 利益,宗教的使命,資金手当 (宗教,非政府,営利) 教育投入のサプライヤー 良質で適切な投入 利益,影響 (教科書,情報技術,建物) 国際的なドナー 生徒の学習 国内の戦略的利害,納税者支援,雇用 出所:WDR 2018 チーム. プログラム,教員採用,アクセス拡充を意図した学校 というのが例外――,親と同じく求職を開始するまで 補助金プログラムなどは,すべて非常に目に付きやす は,自分が学習したことがいかにわずかであるかに気 く,監視が容易な投資である. 付いていない.最後に,産業界は採用すべき優秀な卒  基盤的な学習の改善の潜在的な受益者――生徒や 業生の不足で困っているにせよ,良質な教育の要請を 親,雇用者など――は,変化を迫るための組織や情報, しないで,かわりに減税と歳出増加を陳情している. 短期的なインセンティブをしばしば欠いている.親は このような改革に伴う潜在的な受益者とは対照的に, 通常は制度レベルでの討論に参加すべく組織化されて 損失を被る可能性のある者は自分たちにとって何が問 はおらず,学習を改善するためのさまざまな政策に伴 題であるかを強く意識している傾向があり,多くの場 う潜在的な利益に関する知識を欠いている公算があろ 集団的に行動するためにうまく組織化されている. 合, う 54.また親たちは,教員や官僚,政治家などの利  その結果,多くの制度は低学習の罠に陥って,説明 害に反対することに伴って,子供たちや親たち自身に 責任が果たされておらず,不平等が大きいという特徴 跳ね返ってくる潜在的な波及効果を懸念しているのか をもっている.このような罠は非公式な契約を通じて もしれない.生徒はさらに力が弱く――時として高等 主要な関係者を結び付けている.この非公式な契約で 教育ではデモ行進の実行で脅しをかけることができる は公務員の雇用,企業収益,再選などといった他の目 概観 教育と学び ―― 可能性を実現するために 15 標が優先されており,説明責任が十分に果たされてい つことができる理由が少なくとも 2 つある.第 1 に, ない状態を伴う均衡状態が永続化している.うまく運 国が学習を改善すべく革新する際に,ミクロ・レベル 営されている制度においては,官僚や教員などといっ ――学習者・教室・学校のレベル――で機能し得るこ た主体は生徒の成績改善に多くの時間を割くことがで とに関しては,かつて利用可能であった量よりも多く きる.しかし,低学習の罠に陥っている時には,その の体系的な知識に依拠することができる.多くの介入 同じ主体は学習に焦点を当てるのに必要な動機,ある 策や革新,アプローチが学習の大幅な向上をもたらし いは支援を欠いている.代わりに,より強い力を持つ てきている.このような有望なアプローチ――新教授 活動家のために他のサービスを提供するよう,常に圧 法,生徒と教師のやる気を確保する方法,学校運営の 力をかけられている.関係者が,不確実性がある・社 アプローチ,学習方法の教え方を高める技術など―― 会的な信頼が低い・リスク回避的といった環境下で, は様々な特色を帯びており,さらにすべての状況下で お互いを頼りにしながら,複数の目的を同時に扱って 成果が出るとは限らないものの,学習の成果を改善で いると,しばしば現状維持が互いの利益に適うという きるという事実は希望を抱かせる.このような介入策 ことになってしまう.たとえ,もしより質の良い均衡 は学習に著しい改善をもたらすことができる:一部の にシフトできるならば,社会やこのような関係者の多 –  生徒にとってはほとんど 1  2 学年相当分の改善とな くがもっと裕福になれるとしてもである. る 55.成功した介入策はそのまま新しい状況に移植  この診断は基盤となる学習における不足に焦点を することはできないものの,国はそれを独自の革新の 絞ったものである.次節で議論する行動の優先課題に ための出発点として利用することができる. ついても同様である.しかし,このような注目の仕方  第 2 に,改革を実施して,それが学習について制 は他の分野が重要ではない,という所信として解釈さ 度全体にわたる持続的な改善につながっている国もな れるべきではない.教育制度とそれを可能にする環境 かにはある.フィンランドの 1970 年代における主要 は本レポートが含めることができる範囲よりも広範囲 な教育改革は,有名なことであるが,質の向上を伴 にわたるし,より複雑でもある.そこで,われわれの いながら成果の公平性も改善した.2000 年に初めて ここでの優先課題は,成功しているすべての制度が基 PISA を受験するまでには,フィンランドは評価にお 盤にしている学習の土台を強化するために,最も直接 いて最上位となった.より最近では,チリ,ペルー, 的にできるものに光を当てることにある.しかし,行 ポーランド,そしてイギリスは教育制度の質を改善す 動のための診断と優先課題の両方ともが,高等教育や る,という真剣かつ持続的に取り組むコミットメント 生涯学習など制度内の他の部分と関連をもつ.そのよ を行っている.このような諸国すべてにおいて,常に うな分野についても,多くの諸国が成果に対する関心 着実とは限らないが,学習は時とともに改善してきて 不足,機会の幅広い格差,このような問題解決にかか おり,それは,制度レベルの改革は成果を上げている, わる制度的な障壁で苦悩している. ということを示すのに十分である.上海やベトナムの 現在の――および数十年前の韓国の――教育制度が示 それでも希望がもてる理由がある すところによると,公平性を伴う学習を持続的に重視  低学習の罠にはまっているようにみえる国において することで,所得水準から予想されるよりもずっと良 も,なかには学習を何とか強化した教員がおり,また 好な実績を示すことが可能である.ブラジルとインド そのような学校がある.このような事例は持続可能で ネシアは広範な分権型制度の改革が課題であったもの はないかもしれず,制度を学習強化に方向転換する努 の,相当な進展を達成してきている. 力なしには制度全体に広がる可能性は低い.しかし, 学ぶことに積極的な制度ならこのような外れ値的な例 教育が約束することを実現する方法:3 つの政策対応 からでも恩恵を享受できる.広い範囲で見れば,各国 内においては,学習の促進に大規模に成功している地  教育制度が学習を真剣にとらえ,学習を指針や指標 域もあるということである.それは国ベースでみて, 学習の結末は変わらないだろう. として使わない限り, どんな所得水準であろうと,なかには成功している国 この発想は「すべては学習のため」と要約できる 56. があるのと同じである. 本節で説明するように,「すべては学習のために」―  このような事例が明らかにしているのは,より高水 「万人のための学習」――というコミッ ―したがって 準の制度を伴う均衡状態が存在するということであ 次の3つの補完的な戦略を示唆している. トメントは, る.しかし,制度全体が低学習の罠を脱して,より良 い均衡に移動することは可能だろうか? 楽観論を持 • 学習を評価して――それを真剣に取り組むべき目標にす 16 世界開発報告 2018 る.学習の測定・追跡を改善する.そして,その結 動からあまりに隔たった測定ではどこにも到達できな 果を行動の指針に使う. い.挑戦課題はバランスをとることにある――目的に • 証拠に基づいて行動して――学校を全学習者のために 適した測定値を見出して,それを適切な説明責任の枠 機能させる.証拠を用いて,それを革新や実践の指 組み内で実施することである. 針とする. • 主体を整合的にして――学習のために制度全体を機能 測定値を用いて学習に光を当てる させる.大きな規模で学習にかかわる技術的・政治  制度全体として学習を改善するための第 1 歩は,プ 的な障壁に取り組む. ログラムや政策が学習を実現しているか否かをモニ ターするのに適した指標を整備することである.信用  このような 3 つの戦略は相互に依存している.学 できる確かな情報は政治家に向けたインセンティブを 習目標を達成するための信頼できる方法を持たずに学 形成することができる.特に,生徒の学習や学校の成 習の指標を採用しても,それは単に欲求不満につなが 績に関する情報は――目立つ形で,しかも受け入れら るだけであろう.学習指標の無いままに学校レベルの れる形で提示されれば――,より健全な政治的関与と 革新を実施しても学校は軌道から外れるだけであろ より良いサービス提供をもたらす.情報は複雑な制度 う.また,制度レベルの支援がなければ,それは短命 の運営を担当している政策当局にとっても助けになる. に終わるだろう.学校レベルの革新がなく,改革を導  学習の測定は,隠れている排除を明らかにすること く学習指標がない制度レベルの学習にかかわるコミッ によって公平性を改善することができる. トメントは,抱負に溢れた修辞以上のものになる公算  この概観の冒頭で強調したように,学習危機は単に は低いだろう.しかし,3 つの戦略は一緒になれば良 社会や経済全体にとっての問題であるばかりではな い方向に向かう変化をもたらすことができる. 機会の不公平や格差拡大の根本的な原因でもある. く,  潜在的な成果は膨大である.子供たちが努力によっ しかし,多くの教育制度,特に小中学校では,学習に て成長できるという心構えをもてば――学習に関して 関して信頼できる情報は非常にまばらであるため,不 自分には大きな潜在力があることを理解すれば――, 利な状況にある子供たちに制度が対処していない.制 固定的な知性に制約されていると信じている時と比べ 度のそのような過程は,隠された排除である 58.学 て,ずっと多くのことを学ぶことができる 57.社会 校からの排除とは違って,学習の欠如は往々にして目 にも同じチャンスがある.社会は成長に向けた心構え に見えないため,家庭やコミュニティが良質な教育を を採択することによって――学習に対する障壁は確か 享受する権利を行使することが不可能になっている. に存在するものの,それを打破できる本当の好機があ  学習に関するこのような指標は教育の進展にとって ると考えれば――,社会は学習に関して進展を遂げる 決して唯一の指針にはならないであろうし,そうある ことができる.1つの最重要な優先課題として,学習 べきでもない.教育制度には,制度自身や生徒――単 が十分に行われていないことで,隠されているが,取 に学習だけでなく――に関して,設定した目標に向け り残された子供たちがいるという状況を終わらせるべ て,進展を追跡する複数の方法があってしかるべきで きである.これは単に正しいだけではなく,学習の平 ある.また,制度は学習を牽引する重要な要因も追跡 均水準を改善し,教育が社会全体に対してもたらすす すべきである.その要因には学習者の準備状況,教員 べての報酬を受ける最も確実な方法でもある. のスキル,学校運営の質,資金調達の水準・公平性な どがある.しかし学習の指標が,後れを取っている制 学習を評価して 度を改善するための必須の出発点である. ――それを真剣に取り組む目標にする  「測定できれば実行できる」,「体 学習の指標は多すぎるどころか少なすぎる 重を計るだけで豚が太るわけではな  学習に関するより多くのより良い指標を用いて学習 い」.このような格言には若干の真 危機への取り組みを始めることを求める勧告は耳障り 実が含まれている.測定がなければ, かもしれない.多くの教育論議では過剰なテストがも 物事がどうなっているのか,どうな たらすリスク,ないし過度なテスト重視に光が当てら ろうとしているのか,どのような措 政策対応 1: れている.アメリカでは,20 年間にわたる一発主義 置が変化をもたらしたのかを知るの 学習を評価する のテストは,そのような懸念の妥当性を裏付ける行動 はむずかしい.このようなことがわ パターンを顕在化させている 59.一部の教員はテス かれば焦点が定まり,行動が刺激される.しかし,行 ト対象外の科目ではなく,テスト固有のスキルを集中 概観 教育と学び ―― 可能性を実現するために 17 図 O.12 多くの国では学習成果に関する情報が欠如している 小中学校修了までの学習にかかわる持続可能な開発目標(SDG)に向けた進展をモニターするためのデータがある国の割合 100 80 60 % 40 20 0 小学校 中学校 小学校 中学校 小学校 中学校 小学校 中学校 小学校 中学校 ラテンアメリカ・ アラブ諸国 サハラ以南 アジア・太平洋 世界全体 カリブ アフリカ 数学 読解 出所:UIS (2016).データは http://bit.do/WDR2018-Fig_0-12. 注:地域グループは UNESCO の定義に従う. 的に教え,さらに,一部の学校は好成績の生徒だけが 1 つの究極の目標を念頭に幅広い指標を使う 受験するという戦略的な行動を画策した.後者におい  学習に関する多種多様な指標にはさまざまな目的が ては,そのために一部の生徒を受験が免除されている それぞれが万人のための学習に寄与している. あるが, 特殊教育に割り振った 60.極端な事例では,問題は 教員は教室で生徒を毎日評価している――公式ないし 学校区レベルでの制度全体にわたるカンニングに対す 非公式に.それはたとえ財源が乏しく,運営がまずい る有罪判決にまで拡大した 61.同時に,多くの低・ 学校制度においても当てはまる.しかし,制度全体を 中所得国(および一部の高所得国)のメディアによる教 改善するために指標を適切に利用するためには,多種 育に関する報道は,高等教育を志望する応募者をふる 多様な一連の評価が必要とされる.そうすることで教 いにかける一発主義の全国一斉テストにしばしば焦点 育者や政策当局者は,教授法・プログラム・政策に関 を当てており,それがテストを強調しすぎていること して適切な組み合わせを使うことが可能となる. についての懸念を高めている. [訳註:formative evaluation:  教員による形成的評価  多くの教育制度においては,学習を重視することが さまざまな教育活動の途上で,その活動が所期の目的 あまりにも少ない――あまりに多いのではなく――と を達成しつつあるかどうか,どのような点で活動計画 ころに問題がある.多くの国では基本的な読解や算数 の修正が必要であるかを知るために行われる評価活動 の能力についての情報さえ欠いている.国連の持続可 (出典:ブリタニカ国際大百科事典)]は生徒のニーズ 能な開発目標に向けた進展をモニターする能力に関す に合わせて授業を指揮・調整するのに役立つ.準備万 る評価が発見したところでは,調査対象 121 カ国の 端でモチベーションの高い教員なら手探りで行動する うち 3 分の 1 の国が,小学校修了時点における児童 必要はない:生徒の学習を定期的に,公式あるいは非 たちの読解と数学の能力水準について回答するのに必 公式に評価する方法はわかっているからだ.次節で検 要なデータを欠いていた 62.さらに , 前期中等教育 討するように,この種の定期的なチェックは重要であ 終了時に関するデータも欠けていた(図 O.12).デー る.というのは,多くの生徒はあまりにも後れを取っ タがあったとしても,一回限りの評価に基づくことが ているがために,実質的に学習を止めてしまっている 多く,時の経過に伴う体系的な追跡を行うことは不可 からである.生徒が学習に関してどこにいるかがわか 能である.良い指標がないということは,教育制度が れば,教員は授業をしかるべく調整して,生徒が対処 行き先についてさえ合意がないまましばしば盲目飛行 できる学習機会を付与することが可能になる.シンガ している,ということを意味する. ポールはこのアプローチの採用で成功を収めている― ―選別テストを使って 1 年生で遅れている生徒を特 定して,該当する学年レベルに押し上げるべく,集中 18 世界開発報告 2018 的な支援を付与してきている 63. なっている.両タイプの評価は学校ではなく,人々の  国家的あるいは地域的な学習評価によって,教員によ 自宅で実施されている.その結果として,この調査に る教室レベルの評価ではわからない制度レベルの洞察 は学校ベースの評価がもつ重大な弱点がない:限界的 が得られる.教育制度を運営するには,政策当局者は次 な生徒が退学すると学校評価の平均点が上がるので, のような点を理解しておく必要がある:生徒が全国的な このことは学校の指導者層に逆方向のインセンティブ カリキュラムを修得しつつあるか否か,生徒がどの分野 をもたらす.しかし,家計ベースの評価では,アクセ に強いかないし弱いか,特定の人口グループが遅れて スと質の両方を改善する制度に報いる学習指標が生み いるか否か,そしてどの程度遅れているか,より良い 出される.これは切り捨てられる子供は 1 人もいない 成績の生徒にはどのような要因が関連しているかなど. ということを保証する点で極めて重要である.就学し 教員による教室レベルでの発達評価の結果を,この種の ている生徒についてさえ,家計ベースの評価は代替的 信頼できる制度レベルの情報に集計するのに有効な方 な出所からの学習データを提供しており,それは公式 法はない.このことが,国や州ないし県などの,より 評価の質が疑わしい状況下では重要であり得る. 広範な管轄区にわたる生徒にかかわる代表的な事例を 制度が必要としている理由である.そのような評価は 測定がむずかしいこともある 制度全体の進展を追跡するのにとりわけ重要であろう.  学習に関してより多くのより良質な指標がないのは というのは,評価は制度そのものに対する期待と強く結 どのような理由によるのだろうか? 学習にかかわる びついているからだ.また,国家的な評価は,生徒の習 制度的な障壁と同じく,より良い指標にかかわる障壁 熟度のトレンドないし水準が地域間で乖離している事 は技術的および政治的なものの両方である.技術的な 例を示すことによって,地域別評価の質に対するチェッ 観点からすると,適切な評価を実施するのは容易では ク機能を果たすことができる.アメリカでは,全米学力 ない.教室レベルでは,教員は学習を有効に評価する 調査 がこの役割を果たしている 64. (NAEP) 訓練を欠いている.評価によって――丸暗記の学習で  国際的評価も制度改善に役立つ情報を提供してい はなく,例えばプロジェクト・ベースの評価を通じて る.西部・中央アフリカの PASEC やラテンアメリ ――,高次のスキルを把握しようとする場合,とりわ カにおける LLECE など地域ベースの生徒評価に加え けそういえる.また制度レベルでは,教育を担当する て,PISA,TIMSS,PIRLS などグローバルな基盤を 省は妥当な評価を考案して,それをサンプル校で実施 持つ生徒評価は,生徒がどの程度順調に学習している する能力を有していない.政治的要因も入り込んでく かに関して追加的な視野を提供している.このような る.過去に言われたことを繰り返すためには,政策当 評価によって,国のパフォーマンスを各国横並びで比 局者は,生徒にテストを課してすべての疑念を晴らす 較可能な形で評価することができ,各国独自の評価に よりも,テストを避けたほうがよく,そして効果は無 よって浮上してくる状況に関する確認手段が提供され いと決めてかかる方がよいと考えるかもしれない.さ る.さらに,国際評価は政治的に強力なツールになり らに,彼らが評価に参加した場合でさえ,政府は時と 得る.各国の指導者は国の生産性や競争力に関心があ して学習結果を一般向けに公表することを拒否してい るため,国際的なベンチマークによって,人的資本の る.そのようなことが,1995 年にメキシコで実施さ 形成に関して自国が他国にどのようにして後れを取っ れた TIMSS で起きた 65.最後に,もし評価が,設 ているかについて意識を高めることができる. 計が不十分,あるいは不適切にも一発方式のテストに  学校が関与しないという環境下で計測された他の 2 適用されるとすれば,管理者ないし教育者はごまかそ つの学習指標は,評価制度の質と公平性に対する注目 うと思うかもしれず,評価結果は政策向けの指針とし を高めることができる.草の根の説明責任運動――イ ては無価値になるだろう. ンドの ASER センターや東アフリカの Uwezo などの 市民社会組織が牽引――は,市民主導の評価を活用し 測定によって幅広い教育目的が減ぜられる必要はない ている.この評価は,ボランティアを採用して,自ら ――後押しすることさえ可能である が属するコミュニティの若い子供たちの基礎的な学習  測定可能な学習をよりいっそう強調することは,そ を測定している.これらの団体はこのような学習デー の他の教育成果が重要でないということを意味しては タを使って,教育改革を唱道している.一部の多目的 いない.正式な教育やその他の学習機会には多くの目 な家計調査も学習データを収集しており,研究者は学 標があるが,読解力・数的能力・論理など通常の評価 習成果が所得やコミュニティにかかわる変数とどのよ によって把握されているのはそのほんの一部にすぎな うな相関関係を有しているかを分析することが可能と い.教育者は学習者がより高次の認知スキルを発達さ 概観 教育と学び ―― 可能性を実現するために 19 せるのを熱心に助けようともしている.それには評価 図 O.13 低パフォーマンス国は学習と他の教育成果の間での 厳しいトレードオフに直面していない を通じて把握するのが困難なもの(創造性など)も部分 的に含まれている.人生における成功は社会情緒的・ 非認知的なスキル――忍耐・強靭性・チームワークな ど――にも依存しており,教育は,個々人がそれを発 (例えば、創造性や市民など) 達させるのを支援する.教育制度には他の目標もある. 高パフォーマンス 生徒に市民としてのスキルを付与する,公共心を奨励 国B する,社会的連帯を促進する,なども教育制度の望み 他の成果 である.これらは広く共有されている教育の目標であ り,人々が次のように尋ねるのも理解できる.すなわ 高パフォー マンス国 A ち,特にすでに多くの重荷を抱えている教育制度にお いて,測定可能な学習を強調することは,そのような 他の目標をクラウド・アウトするのではないか? 低パフォー マンス国 C  実際には,学習――およびそれを牽引する教育の質 ――に焦点を当てることは,より一層このような他の 測定した学習 好ましい成果を「クラウド・イン」するようになる.子 –  供が単語 1 つさえ読めないまま 2  3 年間学校に通う, 出所:WDR 2018 チーム. ないしは 2 桁の引き算を学ばずに小学校を卒業する, といったことを許容するという状況は,教育の高い目 と呼ばれている)を重視しすぎている一方,創造性や 標に到達することに役立たない.若者に適切な仕事の ( チームワークのような社会情緒的スキル「その他の投 スキルを身に付けさせられない学校が,新しい会社を ) 入」はあまり重視していない.このような韓国での論 創設したり,あるいは偉大な文学作品を分析したりで 議は暗黙裡に,フロンティア上で上方左方向に――つ きるように若者を準備させることはないだろう.もし まり A から B に向けて――動くことを試みるか否か 生徒が困窮のせいで集中できないのであれば,もし教 ということに関するものとなっている.しかし,低学 員に生徒の関心を引き付ける授業法やモチベーション 習の罠に陥っていると――図中では「低パフォーマン が欠如しているならば,もし管理の不十分さによって ス C 国」で示されている――,あまりにやる気がなく, 教室向けの教材が届いていないならば,もし制度全体 成果をあまりに軽視しているので,この OECD 主導 が社会のニーズから遊離しているのであれば,私たち の論議は適切でない.C 国には,測定される学習と は,生徒が問題解決や創造性などのようなより高次の それ以外の教育成果の両方を同時に改善する機会があ 思考スキルを学校で発展させていると信じることは本 る.インドのアンドラ・プラデシュ州での実験――数 当に可能であろうか? このような状況がより高い目 学と国語において測定された学習に改善がみられた教 標の追求を阻害するということは十分にありうるだろ 員は報奨される――は,単にその科目だけでなく,理 う.それ故に,逆に,学びを重視する姿勢を発展させ 科や社会科の学習向上にもつながった.ただし,後者 ることは,そのような目標に向けた進展を,やはり同 の科目に対しては報奨はなかった 66.このような結 様に加速するだろう. 末は道理に適っている――結局のところ,識字能力と  逆説的になるが,教育のフロンティアにおいて,低 数的能力はより一般的な教育への出入り口だからだ. パフォーマンスの諸国は,高パフォーマンスの諸国が 遭遇するのと同じ厳しいトレードオフにはおそらく直 証拠に基づいて行動して 面しないであろう.経済学者は生産可能性フロンティ ――学校を全学習者のために機能させる アという概念を使って,どのようにして生産者――こ  学習不足の測定はその是正方法に関 の場合は国――は多種多様な財生産相互間のトレード して明瞭な指針を提供してはくれな オフを行うかを理解している.この考えは OECD 諸 い.幸いなことに,生徒・教室・学校 国の学習フロンティアにおける教育政策に関する論議 の各レベルで学習成果を改善する方法 を要約している(図 O.13).例えば近年において,韓 に関しては,今では豊富な経験がある. 国では大勢の利害関係者が次のように主張している. 認知神経科学は過去 20 年間で劇的な 政策対応 2: すなわち,自分たちの高パフォーマンスの教育制度は 進化を遂げて,子供たちがどのように 証拠に基づいて 行動する (図 O.13 のなかでは テストの点数 「測定された学習」 学ぶかについて洞察を提供してくれて 20 世界開発報告 2018 いる 67.この研究で明らかになったのは,生後数年 までの間,まずはこのような証拠を最も有効に使う方 間が子供の脳の発達にとって極めて重要だということ 法に取り組みたい.考慮すべきことが 4 つある. である 68.同時に,世界中の学校や教育制度は,授  第 1 に,個々の研究による個々の結果よりも重要 業に新奇なアプローチを採用,教室における授業・学 なのは,プログラムがどのように,なぜ機能するのか 習を高めるために新技術を利用,制度内の多種多様な 「原理」 に関する原理である. は経済用語では行動モデ 関係者の説明責任や時として自律性を強化するなど, ルに相当する.それが今度は問題への取り組みに対す 多くの方法で革新してきている.このような介入策が る幅広い一連のアプローチに対して指針を示す.3 種 学習を改善したか否かについての体系的な評価の件数 類のモデルが特に洞察に溢れていることがわかるだろ は,2000 年のわずか 19 件から 16 年の 299 件へと う.①単純モデル:主体は直面している制約下で福祉 10 倍に増加している 69. を最大化する,②本人 – 代理人モデル:さまざまな目  多くの介入策が学習成果の改善に成功してきてい 標とおそらくさまざまな情報をもつ複数の主体を含 る.有効な介入策による学習の成果は就学年数の増加, む,③行動モデル:要因としてメンタル・モデルや社 所得の増加,貧困の減少などとして顕在化している. 会的規範を考慮する. –  ジャマイカの発育が妨げられた生後 9  24 カ月児童の  第 2 に,証拠が示唆している格差は有効かもしれず, グループは,認知的・社会情緒的な発達を改善するプ 実際に行われていることは行動に向けた潜在力のある ログラムのおかげで,20 年後にはずっと良好な成果 参入点を指し示している.格差が生じる理由を理解す につながった.犯罪率の低下,精神衛生の改善,非参 ることは,それに取り組む方法を考案する指針になる. 加者と比べて所得が 25%高いなどの成果があった 70. 例えば,多種多様な主体が多種多様な情報をもってい 授業法を改善するプログラムは通常通りの学校教育の る,ないしは一部の主体が情報をもっていない場合, 半年分に相当する以上の改善,あるいは生涯所得の現 これは,情報がどのようにして普及し,うまく利用さ 在割引価値の 8%増加という大きなインパクトをもた れうるかを示すアプローチから教訓を得られることを らしている 71.したがって,学習危機への取り組み 示唆している.格差は,どの種類の原理によって状況 はむずかしいものの,学習を改善する介入策があると 固有の革新が牽引されるべきかを指し示している. いう事実は前進する道の存在を示唆している.  第 3 に,証拠は,行動がもっと大きな違いをもたら  このような証拠をもってしても,あらゆる状況下で すところではなく,それを生み出すのが最も容易なと 機能するものを特定することは不可能である.という ころに蓄積する傾向にある.したがって,その証拠だ のは,教育についてはグローバルな解決策というもの けに焦点を絞った政策は間違っている公算があろう 74. はないからだ.特定の状況下にある学習を改善するの 教育に関して蓄積されている証拠の範囲は幅広いもの は,ある国ないし地域で成功したプログラムを取り出 の,あるアプローチが評価を受けていないからといっ して他の場所でも実施すれば良い,というように単純 て,そのことは潜在性の欠如を意味してはいない.状 であることは決してないだろう.インパクトを評価す 況固有の革新というのは,他の状況ではまだ試されて るための無作為化比較対照試験やその他のアプローチ いない物事を試行しているという意味である公算があ は,ある介入策の因果効果を注意深く隔離することに ろう. 特別に配慮している.しかしそのようなアプローチは,  第 4 に,基本的な原理を重視することで明らかに 「介入が違いをもたらすか否かに影響する」根本的な要 なったのは,1 人の意思決定者が単純に 1 つ以上の投 素との重要な相互作用を無視しているかもしれない― 入にかかわる量ないし質の増加を処方することでは, ―ある要素は,その介入策を新たな状況下で模倣する 問題は解決できないということだ.学習にかかわる投 場合には作用しないかもしれない.例えば,教室の規 入の多くは多種多様な主体が行った選択の結果――他 模を生徒 10 人分だけ拡大すると,イスラエルではケ の主体による現実の,および期待された選択に対応し ニアの 4 倍もテストの点数が下がったが,他の状況 てなされた選択――である.例えば,教員は学校に出 下では何のインパクトもなかった 72.この文献に関 勤する,生徒の成績を改善するなどといったことにか する評論家 2 人のコメントは次の通りである:「対象 かわる動機に反応している.ただし,反応の性格は状 群に対する処置効果という意味で『機能するもの』がわ 況ごとに異なるであろう 75.同様に,生徒や親も他 かるということには,それが置かれている政治的・制 の決定に反応して選択を行っている.インドとザンビ 度的な環境を理解することなしには,限定的な価値し アでは,政府の学校向け補助金を受けて,親たちは子 かない」73. 供たちの学校教育への投資を削減した 76.すべてを  次節ではその幅広い環境の問題を検討するが,それ 考慮すれば,学習の枠組みのより完璧な性格付けとし 概観 教育と学び ―― 可能性を実現するために 21 ては,図 O.14 で例示されているものに近い 図 O.14 見た目よりも複雑である:制度全体を通じて人々は他人の選択に反 応して行動する であろう:生徒・教室・学校などのレベルで                                           市民 家      社会 介入することによって成績を改善する方法を 政治 組織       学ぶためには,多種多様な矢印を解明するこ             とが必要である.                これを全部まとめると,3 つの一連の有望                            な参入点に光が当たる.それは,準備ができ     仲      学 門  員 間  ている学習者,有効な授業,そして授業や学 間部 / コ 習 教 者 習のプロセスに実際に影響する学校レベルの                                   民 ミュ ニティ 介入策である.このような優先分野は,学習 のために本当に違いをもたらし得ることを示   す複数の文脈からの証拠に基づいている. 学習                     子供や若者を学習に向けて準備させる 入  官         学校に向けた準備を学習者にさせ,学ぶこ 投 校 の      へ 学 運 法 僚  とへの動機付けをすることが,学習改善の第       営 校 学   司                        1 歩である.それなしでは,他の政策やプロ                                グラムは最低限の効果しかないであろう.学                                習者の準備に取り組むには 3 つの重要な参                          国      入点がある. 際的 体       主体 他主    の                    そ • 幼児の栄養・刺激・世話を通じて,子供たち 出所:WDR 2018 チーム. を高レベルの開発の軌道に乗せる.成功した 経験から,特に 3 つのアプローチが得られている. た.また,子供たちの自宅における食料へのアクセ 第 1 に,栄養不足を削減し,生理的な発達を促進 スが限定的な地域では,学習そのものにも良い影響 するために,生後 1,000 日間においては,母親と があった 80.対象を絞った現金給付は,それがパ 赤子を対象にした健康と栄養の介入策を実施する. フォーマンスそのもののインセンティブになった時 第 2 に,早期に認知・社会情緒スキルを育成する には 81,あるいはカンボジアにおけるようにいっ だけでなく,言語と運動発達を改善するために,自 そうの努力を誘発する形で宣伝された場合には,学 宅学習に向けた刺激と機会の頻度や質を高める.第 習の増大につながってきている 82.情報に関する 3 に,短期的には認知・社会情緒スキルを,後の人 介入策のなかには努力自体の強化につながったもの 生においては教育や労働市場の成果を改善するため もあった 83. に,非常に幼い子供たち向けにはデイケア・センター • これほど大勢の若者が基礎教育を卒業する際にスキル –  を,3  6 歳児向けには就学前プログラムを――子 を身に付けていないという事実を埋め合わせるために, 供たちの養育と保護を高める保護者プログラムと並 進学や職業訓練の前に是正策を提供する 84.学校で んで――促進する 77.プログラムの質は大いに重 の是正策が第 1 の最良のアプローチである.卒業 要である.プロセスの質が悪い中央管理に基づくプ 後に成功しているプログラムは 2 つの主要な特徴 ログラムは(インフラ・保護者訓練・保護者対子供 を共有している.第 1 に,それは実生活の環境下 の比率などが相対的に良好でも),実際に発達の結 (つなぎ) で橋渡し 的なコースを提供しており,それ 末を悪化させることがある 78. 故,基盤的スキルが非常に低い若者でも職場でそれ • 学校教育のコストを下げて子供たちを就学させる. ただし, を形成することができる 85.第 2 に,加速度的で モチベーションや努力を高めるためには他の手段を使う. 柔軟な軌道――複数学期にわたる連続的なコースで というのは,コスト削減の介入策は通常はそれ自体では はなく――は,就学継続者と最終的には卒業資格修 学習にはつながらないからだ 79.学習を改善するため 得者の増大と関連がある 86. には,需要サイドのプログラムで学習に関して生徒 の努力ないし能力を増やす必要がある.例えば,学 校が提供する食事は就学に対してプラス効果を与え 22 世界開発報告 2018 授業をより有効にする 義務付けられているためである 94.授業を生徒の  有効な授業は教員のスキルとモチベーション次第で レベルに合わせるのに有効な戦略には,パフォーマ あるが,多くの教育制度ではそれが真剣に考えられて ンスが最低の生徒向けにコミュニティの教員を使っ いない.教員の給与は教育制度のなかで最大の予算項 て補習教育を提供する,クラスを能力別に再編成す 目であり,途上国の初等レベル予算の 4 分の 3 を占 る,技術を利用して授業を個別生徒のニーズに合わ めている.にもかかわらず,授業向けに強力な候補者 せて修正する,などがある 95. を引き付けて,授業を担当する前に担当科目について • 教員のモチベーションを改善するために金銭的および非 しっかりした基礎や教え方に関する知識を提供するこ 金銭的なインセンティブを使う.ただし,奨励される行動 とに多くの制度は四苦八苦している.その結果,新任 は教員の能力の範囲内であることを確保する.教育制 教員は往々にして教えるべき内容にほとんど習熟しな 度は典型的にはパフォーマンスの良い教員を報奨し いまま,教壇に立っている自分を発見するありさまと たり,それが悪い教員を罰したりはしない.教員が なっている 87.着任後に教員が享受する専門職開発 学習を改善するためにとることができる直接的な行 研修はしばしば一貫性を欠き,過度に理論的である. 動――欠席が多いので出席を増やすなど――がある この研修コストは一部の国では膨大であり,アメリカ 場合,インセンティブは成果改善においてもっと有 の場合は年間 25 億ドルにも達している 88.さらに, 効であろう.しかし,行動に影響を与えるためにイ 教育制度には教員を助言・支援・動機付けする仕組み (ないし金銭的) ンセンティブが一発主義 である必要 がほとんど整備されていない.あったとしても,教員 はない.メキシコやパキスタンのパンジャブ州では, 自身がそれを教室で適用しようとしない限り,教員 単に学校の相対的なパフォーマンスに関する診断的 のスキルは学習のためにはまったく役に立たない 89. な情報を親や学校に提供したことで,学習成果が改 幸いなことに,教員のスキルやモチベーションを強化 善した 96. して,さらなる努力と学びにつなげることは可能であ る.その過程で有望な主要原則が 3 つ浮上してくる: 他のすべてにおいて,授業と学習を重視する  学校への投入や学校の運営・統治は,もしそれらが • 有効な教員研修のためには,個々人を対象に,反復でき, 学習を改善させるとするならば,学習者対教員の関係 追跡指導――具体的な授業法に関することが多い―― に対して利益をもたらさなければならない.しかし, が可能なように研修制度を設計する.このようなアプ 多くはそうなってはいない.教育の成果の改善に関す ローチは,多種多様な諸国における現在の教員開発 る議論はしばしば,教科書・技術・学校インフラなど 研修の多くと非常に対照的である.アメリカでは, の投入を増加することを巡るものになっている.しか 教員研修を担当しているある専門家チームは同国 し,このような投入が実際に学習を改善するのかとい のこれまでの教員開発を,「エピソード風の,近視 う疑問は,あまりにもしばしば看過されている.投入 眼的で,往々にして無意味である」と特徴付けてい の利用や運営の成功に関する証拠によると,重要な原 る 90.サハラ以南アフリカでは,多くの場合に教 則を 3 つ指摘することができる: 員研修は有効であるためにはあまりに短すぎ,効果 を発揮するにはあまりにも質が悪い 91.対照的に, • 教員を代替するのではなく補完する形で,新技術を含め 長期にわたる指導を提供しているアフリカや南アジ 追加的な投入を提供する 97.インドのグジャラート アのプログラムは,学習の著しい向上につながって 州におけるコンピュータ利用の学習プログラムは, いる 92. そのプログラムが授業や学習の時間に追加された時 • 学習者が追い付けない位置まで後れを取るのを防ぐた に学習を改善した.成績が最も低い生徒に特に有効 めには,授業の目標を生徒のレベルに合わせる.数年 であった 98.授業を支援するために公立学校教員 間にわたって学年レベルに相応しい進展をしている にタブレットを供給するというケニアのプログラム 生徒はほんの一部である.ほとんどは後れを取って は,生徒の読解力を向させた 99.しかしコロンビ いるし,一部はほとんど何も学んでいない.この一 アでは,教室にデスクトップ・コンピュータを単に 因はオーストラリアからスウェーデンやアメリカま 提供しただけでは――カリキュラムとうまく統合さ での諸国で詳しく裏付けられているように,教員が れていなかったため――,学習にはまったくインパ 教室のなかで最も進んでいる生徒に向かって授業を クトがなかった 100.もっと伝統的な投入――本な していることにある 93.ないしは,カリキュラム ど――でさえ,それが教室で実際に活用されていな があまりに野心的なのに,教員はそれを教えるよう い,ないし仮に内容が生徒にとってあまりに高等だ 概観 教育と学び ―― 可能性を実現するために 23 とすれば,多くの場合に授業と学習に影響を与える 育機関から一部の最優秀卒業生を教育界に引き付け ことはないだろう 101. て,有効な専門職開発機会と持続的支援を提供してい • 現行制度において新しい情報通信技術を実際に実装 る. 可能であることを確保する.情報通信技術を組み込ん だ介入策は学習に対して最大のインパクトをもたら 主体を調整して す 102.非常に有効なプログラムもある.例えば, ――学習のために制度全体を機能させる デリー市における中学校向けの動的なコンピュータ  大規模に機能するというのは,単 利用の学習プログラムでは,数学と国語の得点が, 「規模拡大」 なる とは違う.教育にお インドを初めとする各国で試された他の学習介入策 ける規模拡大の概念は,実験規模で の大多数を凌駕した 103.しかし,評価が示唆する 有効であることが判明している介入 ところでは,読解力や数学能力に何のインパクトも 策を採用して,何百何千という学 ないプログラムもある.ペルーやウルグアイにおけ 校においてそれを模倣するという 政策対応 3: る「子供 1 人に 1 台のラップトップを」といったプ 意味である.しかし,このアプロー 主体間で整合を図る ログラムがその例である 104.環境に適合していな チは多くの場合に失敗する.なぜな い技術は教室にまで届かない,ないしたとえ届いて らば,重要な主体は人間であり,政治的に緊迫したア も使われていないことが多い 105. リーナで人間的な抱負と限界をもって活動しているか • 学校の運営や統治の改革においては,教員対生徒の らだ.実世界の複雑性は,特に新しい制度全体にかか 相互作用を改善することを重視する.相互作用を改善 わる勢力が活動し始めると,設計の良いプログラムを する方法――授業プランについて(校長が)教員に意 阻害する.カンボジア政府が早期児童開発センターや 見を述べる,生徒の成績や教室における言動を改善 幼稚園――NGO が実施した際には国内の一部地域で するための行動計画を策定するなどを通じる――に は機能したプログラム――の規模拡大を図ろうとした 関する校長を対象とした研修は,生徒の学習に対し 際,親からの需要が低かったことやサービスの質が低 て大きな影響を及ぼすことにつながっている 106. かったことが原因で,児童の発育には何のインパクト ブラジルやインドからスウェーデン,イギリス,ア もなかった.それどころか,なかには,発育が遅れた メリカなどに至るまでの国々において,学校長の運 子供さえいた 110.ケニア政府は,契約教員の採用― 営能力は生徒の成績と著しく強固に関連している― ―ある NGO が実施して生徒の成績が改善した介入 ―生徒や学校に関するさまざまな特徴をたとえ制御 策――によって生徒対教師の比率を引き下げようとし してもそう言える 107.コミュニティや親,学校関 たが,結果は無視できるほどの効果しかなかった.こ 係者をサービス提供にかかわる地方の監視や説明責 れは実施にかかわる制約と政治経済的な要因の両方の 任を促進する形で巻き込むと,成果を改善すること せいであった 111.また,インドネシア政府が有資格 ができる 108.しかし,コミュニティによるモニタ 教員の給与をほぼ倍増することによって教員の能力を リングは,親が容易に観察できること(教員の欠勤 増強しようとした際,政治的圧力が資格取得プロセス など)を対象にする場合や,一連の利害関係者(単に を手緩いものにし,給与引き上げだけが残った.その 親だけでなく)が行動につながる形で団結する場合 結果,給与支出の予算は巨大化したのに,教員のスキ に,より大きなインパクトをもたらす傾向がある. ルと生徒の学習には改善がみられなかった 112. インドネシアでは,学校補助金のおかげで学習が改  したがって,教訓は次の通りである.すなわち, 善したが,それは学校と村議会――地方権力の中心 学校や生徒のレベルでのより良い介入策が学習を持 地――の結び付きが強化されたからであった 109. 続可能な形で改善するのは,当該国が制度レベルに おける変化にかかわる強固な技術的・政治的な障壁  最も効果的な制度は,――学習という点で――証拠 に取り組む場合だけである.技術的な障壁には,制 と実際の差異を縮小させてきているものである.例え 度の複雑さ,関係者数の多さ,改革の相互依存性, ば,学習者の準備に関しては,韓国やシンガポールな 教育制度の変化ペースの遅さなどが含まれる.政治 どの東アジア諸国は学習に対する子供たちの準備のレ 的な障壁には,さまざまな関係者の利害競合と低質 ベルという点で高水準を達成している.学齢前の子供 の均衡から脱却することの難しさ――特に信頼性に たちの間における発育不全率は低く,子供たちは家族 欠ける環境でリスクが支配的な場合――が含まれる. によって動機付けられ支援されている.有効な授業を このような障壁は,そのすべてが,すでに検討した 促進するべく,フィンランドとシンガポールは高等教 ように関係者を学習から遠ざける.このような障壁 24 世界開発報告 2018 を乗り越えて,関係者を学習に向けて整合的にする 価の結果や,学校におけるサービス提供の悪さを示し ような制度は,素晴らしい学習成果を達成すること ている調査結果と並んで――,政策当局は野心的な改 ができる.上海は 2012 年の PISA ランキングでトッ 革を打ち出すことを決意した.ドイツでは,2000 年 プになってそれを証明したが,その一因はどの教室 の第 1 次 PISA における平凡な結果でショックを受け にも準備万端で,支援され,動機付けられた教員が たことを契機に改革が実施され,学習と公平性の両方 いることを確保した政策にある 113. が改善することとなった.  学習に向けて制度を技術的および政治的に転換させ  この分野における努力は単なる学習の測定のさらに るに際し,改革者は次の 3 組のツールを使うことが 上を行くものでなければならない.決定要因も追跡す できる: べきである.もし制度全体として学習改善にコミット しているのなら,そのような決定要因を理解すること • 情報と指標.より良い情報と指標は学習を 2 つの方 は,その改革がより深い原因に対処するのを可能にす 法で促進することができる.改革の触媒になること るだろう.学習者の準備という問題を取り上げてみよ によって,また,改革が公平性を伴った学習の改善 う.貧しい子供たちが小学校入学までにすでに大幅に のために機能しているかを示す指標の役割を果たす 後れを取っていることを指標が明らかにしている場 ことによってである.つまり,それらは制度の政治 合,このよう発見は低所得地域における就学前教育を 的・技術的両方の整合関係を改善することができる. 拡充することに向けた政治的意思を構築するだけでな • 連合とインセンティブ.学習を最優先することについ く,発育不全に対処し,子供に対する早期刺激に関し て十分な支持があって初めて,良い情報は成果をも て親を教育するということにもつながり得る.生徒が たらす.多くの場合に,政治が問題であることから, 学ぶべきことに多くの教員があまり堪能でないことを 政治は解決策の一部でなければならない.このこと 指標が示している場合,この発見は教員教育の質を改 は,広範囲にわたって学習やスキルを唱道し,政治 善する努力を始動することができる 114. 的なインセンティブのバランスを取り戻すための連  もちろん,情報や指標はミスリーディング,筋違 合を形成することを必要としている. い,政治的には持続不可能ということもあり得ること • 革新と機敏性.学校や社会はさまざまな方法で高水 から,思慮深く設計・使用される必要がある.教育 準の公平な学習を達成してきている.所与の状況下 制度が促進しようとしている成果の重要な側面につい でどのアプローチが機能するかを見出すためには, て,指標は把握できていないかもしれない.例えば, 革新と適応が必要とされる.これは,どこからス 2015 年までに普遍的な初等教育を導入するというミ タートするかを特定するために証拠を活用し,そし レニアム開発目標は,公平なアクセスという極めて重 てフィードバック・ループを反復するために指標を 要な目標を具体化したが,多くの人々が意味するもの 用いるということを意味する. と想定したこと――他の生活スキルはおろか,基盤と なる読解力や数的能力の普遍的な修得――を実は盛  このようなツールはすべて,政府内の強力な実施能 り込んでいなかったのである.もう 1 つのリスクは, 力によって支持される場合に最も有効になるであろ ある良い指標 1 つだけを重視しすぎると,潜在的な う. 受益者がその指標を細工して歪曲してしまうことであ る.したがって,制度には目的に応じて多種多様な指 情報と指標 標が必要である 115.技術的には堅固であっても,も  より良い情報と測定――学習の指標を手始めとして しあまりに多くを強調して,希望がもてる理由を提供 ――は,革新のための政治空間を作り,そしてその空 しない場合には,指標は政治的に維持不可能になって 間を使って継続的な改善を達成するのに極めて重要で しまう公算があろう.この問題に取り組む 1 つの方 ある.強調したように,学習に関する良い情報が欠如 法は,非常に低いかもしれない学習の水準自体ではな していると,利害関係者が制度のパフォーマンスを判 く,長期にわたる進展度に注目することである. 断し,適切な政策を設計し,政治家や官僚に説明責任 を負わせることが妨げられる.したがって,学習指標 連合とインセンティブ の改善は問題に注意を引き付け,行動に向けた意思  学習に利害のある関係者全員を動員することが,学 を形成するのに非常に重要である.タンザニアでは 習を改善する努力においては重要な戦略となってきて 2010 年代の初めに,卒業試験の結果が悪かったこと いる.多くの諸国が広範な協議を活用してきている. を受けて――市民主導による適格に公表された学習評 そして協議では,教育政策において提唱された変更に 概観 教育と学び ―― 可能性を実現するために 25 への支持を構築するためにすべての利益集団を参加さ むけた努力を補完することができる 121. せることに努めている.マレーシアは「実験室 」 (ラボ) モデルを使って,利害関係者の連合を参加させ,それ 革新と機敏性 らを改革について設計から実施に至るまでのすべて  みずからの状況に合致した有効な学習のアプローチ の段階に関与させている 116.通常の情報伝達キャン を開発するためには,教育制度は革新と適応を奨励す ペーンを通じる市民の動員も重要な戦略になり得る. る必要がある.多くの教育制度では,学校やその他の ペルーでは政府内の改革者は , 学習成果や教育制度の 教育機関は状況の変化に規則的に適応している.この パフォーマンスの低さに関する情報を使って,教員の ような適応を通じて教育の挑戦課題に対する斬新な解 説明責任を強化する改革に向けて公衆の支持を動員し 決策が浮上してくることが多い.あらゆる教育制度に た.この情報は産業界による行動の触媒にもなり,経済 おいてもうまく機能している部分を探求することで, 成長のためには良質な教育が重要であることを強調する 学習の改善において制度が直面している問題に対す キャンペーンに,産業界が資金供与をすることとなった. る,技術的・政治的に実施可能なアプローチを発見で ペルーの一部では,親たちがこの参入点を使って学校教 きることがある.例えば,アルゼンチンのミシオネス 育を妨害してきた教員ストライキに抗議した 117.連合 州では,生徒の退学率が高い状態が広範囲にわたって を構築するためのもう 1 つのツールは改革を束ねる いたが,なかにはそのトレンドに逆行しているように ことである.そうすれば各主体は最優先課題の 1 つ 思える学校もあった.このような「前向きな異常者」を を達成できる.例えば,職業訓練を近代化するという 子細に眺めてみると,教員対親の関係が非常に異なっ コミットメント――雇用者にとってただちに助けにな ていることが明らかになった.成功している学校が用 る改革――は,より広範な教育改革について彼らの支 いている親と教員のより建設的なアプローチを他の学 持を得ることができるだろう. 校が採用したところ,退学率は大幅に低下した 122.  実施可能なら,交渉による改革に向けた漸進的なア 内戦からの回復期,ブルンジは教科書を学校に届ける プローチは,直接的な対決に対してより有望な代替策 のに適切な方法を発見するために適応性のあるアプ を提供することができる.共有している目標を巡って ローチを使った.配送時間を 1 年強から 60 日に削減 協働して信頼を築くことに教育制度の関係者が同意し し,その後,同様のアプローチを他の地域でも模倣し た場合,改革が成功する確率は高くなるだろう.チリ たのである 123. では,政府と教員組合の間の連続交渉によって一連の  制度が革新を行い,そして新たに出現してくる解 改革について幅広い支持が築かれた.その改革は教員 決策を大規模に採用するか否かを見定めることにお の労働条件を調整して福祉全体を改善する一方,給与 いて,インセンティブは重要である.閉鎖的な制度 とキャリア開発をパフォーマンスにもっと密接に連動 ――教員や学校の自律性を制限し,資源利用に関す させるというものであった 118.数カ国で使われてい るルールの順守状況でパフォーマンスを判断する制 る 1 つのアプローチは,改革に伴って損する主体を 度など――は,往々にして革新に向けた余地をほと 補償するというものである.他の事例では,二重軌道 んど残していない.それとは対照的に,より開放的 改革が導入されて,既存の関係者を保護する形で変更 な制度――成果全体に注意を払い,成果を引き上げ は段階的に実施されてきている.例えば,ペルーやア ることにおける進展を報奨する制度――では,より メリカのコロンビアでは,業績給の制度は最初は任意 大きな革新や新アプローチが教育制度全体に行き渡 であった 119. る公算が大きい 124.  学校とコミュニティの間で強いパートナーシップを  制度レベルで効果を出すためには,そういった革新 構築することも,改革を維持するには重要である.改 は適切な指標や学習のための制度レベルの連合とひと 革に向けた政治家や官僚のインセンティブが弱い場 まとめになっている必要がある.その両方がなければ, 合,地方レベルの行動は代替策として機能し得る.南 革新に伴ういかなる改善も短命に終わるか,ないしは アフリカでは,政治的・経済的な状況のため,教育パ 一部の地域に限定されるだろう.しかし,そういった フォーマンスを改善するための努力が制約を受けてい 支援があれば,制度が以下のような手順に従うので好 る.にもかかわらず,保護者と学校の強力なパートナー 循環が可能になる: シップを通じて,地方レベルでは成果の改善には進展 があった 120.学習改善のための幅広いインセンティ • 学習を明示された目標として設定し,それを測定す ブが存在している場合でさえ,地方レベルでのコミュ る. ニティ関与は重要であり,国ないし州レベルの変更に • 革新と実験のための政治的な空間を与えてくれる, 26 世界開発報告 2018 図 O.15 学習に向けた一貫性と整合性 入 投 の へ 校 学 出所:WDR 2018 チーム. 学習のための連合を築く. の理由を見て取るのは容易でああろう.というのは, • 革新を実施し,所与の状況で最も有望とみられるア 資金調達はいろいろな形で漏出し得るからだ.そもそ プローチをテストする.その際には,証拠ベースか も資金が学校に届くことは決してない,授業対学習の ら優れた着想を引き出し,現在の実践と比べて最大 関係に影響しない投入向けに使われる,制度は不利な の改善が約束される分野に注目する. 境遇にある子供や若者向けの学習を優先していない, • 採用したアプローチが機能しているか否かの尺度と などの理由があり得る.つまり,「通常通りの業務」向 して,実施の他の指標とともに,学習に関する指標 けに資金手当てを増やしても,それは通常の成果につ を使用する. ながるにすぎない.しかし,万人のための学習に対す • 機能するものに依拠し,そうでないものは規模を縮 る障壁に真剣に取り組んでいる諸国では――とりわけ 小して,学習に向けた連携という長期的な決意を強 支出全体が現状では低水準の諸国では――,教育に関 化するような短期的な結果を実現する. する最近のグローバルな研究が強調しているように, • 繰り返す. 教育向け支出は開発にとって決定的な投資となってい る 126.学習のために就学期間が延びる子供が増えて  為されるべきことを為すことによる成果は,すべて いる一方で,教育のための公的資金供与の増加が必要 の要素が相互に一貫し,すべてが学習と整合するよう なことは疑いのないところである.資金注入――資金 な制度である(図 O.15). 源は国内か海外かのいずれか――は各国が低学習の罠  もしも,さまざまな重要な主体が学習は自らにとっ を脱するのに役立ちうる.ただし,それにはここで示 て重要であることを示す仕方で行動するならば,資金 した必要とされる手順を踏むことに積極的であること 調達の増加は万人のための学習という均衡を支えるこ が条件となるだろう. とができる.これは大きな「もしも」である.というの は,統治が十分ではない国においては,高水準の公共 外部主体にとっての含意 支出は,高い水準の修了率ないし就学率と統計的に関  外部の関係者は学習のための政治的・技術的な空間 連性がないからだ 125.生徒が学習するのを確保する を作ることに向けたこのような戦略を強化すること ことはさらに挑戦的であり,支出と学習の間には,国 ができる.例えば,情報や指標の領域では,国際的 民所得を考慮に入れてもほとんど相関関係がない.こ 主体は挑戦課題に光を当て,改革に向けた国内の努 概観 教育と学び ―― 可能性を実現するために 27 力の触媒になるべく,地域的な学習評価(西アフリカ を活用するのに伴って,学習成果はおのずと改善する の PASEC やラテンアメリカの LLECE),あるいはグ はずである. ローバルな学習評価(PISA や TIMSS)への参加に資  しかし,学習危機が過ぎ去るのをただ待っているの 金を供与することができる.外部主体はフィードバッ は必勝法ではない.開発が低水準であれば,国民所得 ク・ループを援助すべく,学習の直接的な決定要因を と学習の間には若干の相関関係があるものの,所得が 追跡するためのツールを開発することもできる.教育 高いからといって必ずしもより良い学習成果につなが ファイナンスでは国内資金がその大半を占めており, るとは限らない.また,開発は学習やスキルを確かに 国際的主体にとってレバレッジ比率の高い参入点は, 改善させるものの,それは開発には学習を阻害してい 国内支出を効果的にする情報の改善に資金を提供す る政治的な手詰まりや統治の挑戦課題に取り組むとい る,ということになろう.革新や実験の分野では,世 う意欲が伴っているからである.したがって,究極の 界銀行など外部の資金提供者は結果に基づいてファイ ところ,このような挑戦課題は回避可能なものではな ナンスを提供することができる.その方が各国は革新 い.さらに,学習のためには待っている必要はない. し,より良い成果を達成するために独自のやり方を反 あらゆる所得水準において,国際評価で他国よりも得 復する余地をもつことができる. 点が高いだけでなく,より重要なことに,教育制度や 政策立案の質に関して学習にコミットしていることを 示している諸国がある. 教育が約束することを実現するために学ぶ  将来の仕事では学習にプレミアムが付けられるだろ  学習が自国にとって本当に重要であるということを う.急速な技術変化は仕事の性格に重大な変化をもた 示すことによって,各国は教育が約束していることす らしてきており,これを新時代――第 2 次機械時代 べてを実現することができる.教育は基本的人権であ ないし第 4 次産業革命――であると宣言する人もな るばかりか――正しくなされれば――,生活のさまざ かにはいる.このようなビジョンのうち極端なバー まな分野における社会的成果を改善する.個人や家庭 ジョンでは,一部の仕事を除いてすべてが消滅し,ほ にとって,教育は人的資本を増やし,経済的機会を改 とんどの人々にとってスキルの価値が低下する.予測 善し,健康を促進し,有効な選択をする能力を拡充す されている地殻変動的な変化は高所得国ではまだ浸透 る.社会にとっては,教育は経済的機会を拡張し,社 しておらず,低中所得国については言うまでもない. 会的流動性を促進し,制度をより有効に機能させる. より重要なのは,将来的にスキルに対する需要がどの このような恩恵の測定において,学校教育と学習の区 ように変化しようとも,人々は基礎的なスキルや知識 別に研究が注目したのはごく最近のことである.しか の確固たる基盤を必要とするということだ.どちらか し,証拠は次のような直観を確認している:このよう と言えば,急速な変化は学び方を学ぶことの収益率を な恩恵は多くの場合に単に生徒が教室にいる年数では 押し上げるだろう.そのためには個々人が新しい状況 なく,生徒が修得するスキルに依存している.高度な を判断し,自分の思考を適応させ,情報を探すために スキルを擁する経済は,学校教育はあっても平凡なス どこに行けばいいか,ないし情報からどのようにして キルしか擁していない経済よりも速く成長する.識字 意味を見出すかを知ることのできる基盤的なスキルが 能力が高ければ学校教育の効果を超えて,より優れた 必要とされる. 金融知識やより良い健康を期待できる.貧しい子供た ちは,より良い学習成果を達成したコミュニティで成 * * * 長すると,所得分布のなかで上方に向かうだろう.  学習を真剣に受け止めるのは容易ではなかろう.ど  各国は大勢の子供たちや若者たちを就学させること のような状況下でも,生徒や学校のレベルで学習を促 によって,すでに素晴らしいスタートを切っている. 進するものを見出す,という技術的な挑戦を完遂する 真の教育――学習を促進する教育――は,繁栄の共有 のは容易ではない.大規模に機能させるという政治的・ と貧困の削減の両方を促進するためのツールである. 技術的な挑戦となればなおのことである.学習危機に 多くに恩恵をもたらすのはこの種の教育である.すな 苦闘している多くの諸国は,何もせず従来通りで行く わち,前向きな学校教育の経験を経た子供やその家族 という誘惑に駆られるかもしれない.結局のところ, 政府や社会に対する信頼を蝕むのではなく回復し, は, それは理に適っているのかもしれず,開発は,学習成 雇用者が探し求めているスキルを若者は習得し,教員 果を最終的には改善するだろう:家計が貧困を脱し, は政治上の要請ではなく職業上の要請に反応すること 学校が設備の改善・教材の増加・よく訓練された教員 ができ,学び方を学んでいる成人労働者は予測不可能 28 世界開発報告 2018 な経済的・社会的な変化に備えることができ,そして, 26. B a n e r j e e , J a c o b , a n d K r e m e r ( 2 0 0 0 ) ; 価値観と理性を有する市民は市民生活や社会的一体感 Hanushek and Woessmann (2008); Rivkin, に貢献できる. Hanushek, and Kain (2005). 27. Alderman, Orazem, and Paterno (2001); Andrabi, Das, and Khwaja (2008); Farah 注 1996); Kingdon (1996); Orazem (2000); 1. Uwezo (2014).すべての国でテストは英語で実 Tooley and Dixon (2007). 施された.ケニアとタンザニアではスワヒリ語で 28. Hanushek, Lavy, and Hitomi (2008). (英語ないしスワヒリ語に関して) も実施され, 流 29. STEP surveys (World Bank 2014). 暢さの評価においては最高の得点が使われた.ケ 30. Lupien 他 (2000); McCoy 他 (2016); Walker ニアとウガンダでは授業の言語は英語である. 他 (2007). 2. ASER Centre (2017). 31. Coe and Lubach (2007); Garner 他 (2012); 3. PISA, 2015 (OECD 2016) からのデータに基づ Nelson (2016). く WDR 2018 チーム. 32. Black 他 (2017).発育不全は WHO によって年 4. TERC, 2012 (UNESCO 2013) からのデータに 齢別身長の z- スコアが,健康な参照人口の中位 基づく WDR 2018 チーム. 数を標準偏差 2 個分下回る水準として定義され 5. UNESCO (2016). ている. 6. World Bank (2011). 33. Paxon and Schady (2007); Schady 他 (2015). 7. Barro and Lee (2013). 34. Hanushek (1992); Rockoff (2004). 8. Pritchett (2013). 35. Bau and Das (2017). 9. Pritchett (2013). 36. Bruns and Luque (2015). 10. Gove and Cvelich (2011). 37. UIS (2006). 11. Crouch (2006). 38. Chang 他 (2013). 12. Castillo 他(2011). 39. Abadzi (2009); EQUIP2 (2010). 13. ASER Pakistan (2015a, 2015b). 40. Bold 他 (2017). 14. 2007 年の 15 カ国における 6 年生の SACMEQ 41. Hanushek (1995); Mingat and Tan (1998); の結果(Hungi 他 2010). Tan and Mingat (1992); Wolf (2004). 15. 2014 年のフランス語圏 10 カ国における 6 年生 42. Glewwe 他 (2011); Hanushek (1986); Kremer の PASEC の結果(PASEC 2015). (1995). 16. ASER Centre (2017). 43. Sabarwal, Evans, and Marshak (2014). 17. RTI International (2009). 44. Lavians and Veiga (2013). 18. World Bank (2016b). 45. Robinson, Lloyd, and Rowe (2008); Waters, 19. Muralidharan and Zieleniak (2013). Marzano, and McNulty (2003). 20. Spaull and Kotze (2015). 46. Bloom 他 (2015).管理分野にはオペレーション・ 21. Singh (2015). モニタリング・目標設定・人材管理などが含まれ 22. 最低限の流暢さは統一化された評価点の中位数を る. 標準偏差 1 個分だけ下回る水準として定義され 47. Bruns, Filmer, and Patrinos (2011); Orazem, ている. Glewwe, and Patrinos (2007); World Bank 23. こ の よ う な 数 字 は“A Global Data Set on (2003). Education Quality”(2017) におけるデータの分析 48. USAID の 人 口 保 健 調 査(DHS)StatCompiler, に基づく.これは Nadir Altinok, Noam Angrist, http://www.statcompiler.com/en/ から抽出さ and Harry Anthony Patrinos のおかげで,WDR れたデータ. 2018 チームにとって利用可能になったデータ・セッ 49. Park (2016). トである.このような平均にはデータが欠如してい 50. Todd and Mason (2005). るため,中国とインドは含まれていない. 51. Chisholm and Leyendecker (2008). 24. UNESCO (2016). 52. World Bank (2003). 25. UIS and EFA (2015). 53. Andrews, Pritchett, and Woolcock (2017). 概観 教育と学び ―― 可能性を実現するために 29 54. Grindle (2004). 85. Bragg (2014). 55. Evans and Yuan (2017). 86. Calcagno and Long (2008); Martorell and 56. チームとしてはこのような体系化をしてくれたこ McFarlin Jr. (2011); Scott-Clayton and とについて,Kai-Ming Cheng に感謝したい. Rodriguez (2014). 57. Dweck (2008). 87. Tandon and Fukao (2015); World Bank 58. Save the Children (2013). (2013, 2016a). 59. Guilfoyle (2006). 88. Layton (2015). 60. Jacob (2005). 89. Burns and Luque (2015); Mulkeen (2010). 61. Fausset (2014). 90. Darling-Hammond 他 (2009). 62. UIS (2016). 91. Lauwerier and Akkari (2015). 63. OECD (2011). 92. Banerjee 他 (2007); Conn (2017). 64. Jacob (2007). 93. Abadzi and Llambiri (2011); Ciaccio (2004); 65. Solano-Flores, Contrera-Niño, and Backhoff Leder (1987). Escudero (2005). 94. Banerjee 他 (2016); Pritchett and Beatty 66. Muralidharan and Sundararaman (2011). (2015). 67. De Smedt (2014); Insel and Landis (2013); 95. Banerjee 他 (2007); Duflo, Dupas, and Kuhl (2010). Kremer (2011); Kiessel and Duflo (2014); 68. Dua 他 (2016). Muralidharan, Singh, and Ganimian (2016). 69. Evans and Popova (2016). 96. Andrabi, Das, Khwaya (2015); de Hoyos, 70. Gertler 他 (2014). Garcia-Moreno, and Patrinos (2017). 71. WDR 2018 の た め に 実 施 さ れ た 計 算.Evans 97. Snilsveit 他 (2016). and Yuan (2017) を参照. 98. Linden (2008). 72. Pritchett and Sandefur (2013). 99. Piper 他 (2015). 73. Deaton and Cartwright (2016). Barrera-Osorio and Linden (2009). 100. 74. Romer (2015). Glewwe, Kremer, and Moulin (2009); 101. 75. D u f l o , H a n n a , a n d R y a n ( 2 0 1 2 ) ; Sabarwal, Evans, and Marshak (2014). Muralidharan and Sundararaman (2011). McEvan (2015). 102. 76. Das 他 (2013). Muralidharan, Singh, and Ganimian (2016). 103. 77. 証拠はなかでもアメリカからアルゼンチン,バ Cristia 他 (2012); De Melo, Machado, and 104. ングラデシュ,中国,ウガンダなどにまで至る Miranda (2014).ウルグアイについては,評価 国々からのものである(Berlinski, Galiani, and はプログラム初期には数学と読解力のインパクト Gertler 2008; Engle 他 2011). も対象に含まれている.その時期の主な目的は 78. Berlinski and Schady (2015); Bernal 他 学校向けに機器と接続性を提供することであっ (2016); Grantham-McGregor 他 (2014). た.それ以降,プログラムは変移して教員向けの 79. Baird 他 (2014); Fiszbein and Schady (2009); ICT 研修や適応教育技術が追加され,新しい評 Morgan, Petrosino and Fronius (2012). 価は 2017 年後半に発表が予定されている. 80. Snilstveit 他 (2016). Lavinas and Veiga (2013). 105. 81. B l i m p o ( 2 0 1 4 ) ; K r e m e r , M i g u e l , a n d Fryer (2017). 106. Thornton (2009).直接的な金融インセンティ Bloom 他 (2015). 107. ブは高所得国ではあまり成功していない(Fryer Bruns, Filmer, and Patrinos (2011). 108. 2011).ただし,テスト直後にインセンティブを Pradhan 他 (2014). 109. 供与するという代わりの設計ではうまく機能して Bouguen 他 (2013). 110. いる(Levitt 他 2016). Bold 他 (2013). 111. 82. Barrera-Osorio and Filmer (2013). Chang 他 (2013); de Ree 他 (2015). 112. 83. Avitabile and de Hoyos (2015); Nguyen Liang, Kidwai, and Zhang (2016). 113. (2008). 例えばモザンビークでは,世界銀行のサービス提 114. 84. ILO (2015). 供指標が明らかにしているところによると,教員 30 世界開発報告 2018 の知識が非常に低水準である一方,無断欠勤が非 ASER Pakistan. 2015b. “Annual Status of Education Report: ASER Pakistan 2015 National (Urban).” Lahore, Pakistan: 常に高水準であり,この結果は現地メディアに South Asian Forum for Education Development. よって取り上げられた.それを受けて政府は問題 Avitabile, Ciro, and Rafael E. de Hoyos. 2015. “The Heteroge- neous Effect of Information on Student Performance: に取り組むためのプログラムを打ち出した(最終 Evidence from a Randomized Control Trial in Mexico.” Policy 的には世界銀行からのローンを通じて支援され Research Working Paper 7422, World Bank, Washington, DC. 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PART Ⅰ 教育が約束すること 1.学校における教育,学び,   そして教育が約束すること 36 1 学校における教育,学び, そして教育が約束すること 「子供の魂に潜んでいる同情・親切・寛容といった富をまだだれも実現していない.あらゆる真の教育に対する取り組み はその宝の錠を開けることに向けられるべきだ」. エマ・ゴールドマン 「長期的に,労働力の平均生産性や経済成長率全体を引き上げるだけでなく,労働に関する不平等を削減する最善の方法は, 確かに教育に投資することだ」. トーマス・ピケティ『21 世紀の資本』  教育は基本的人権であり,人間の能力を開放するこ 界中の家庭は子供たちを良い学校に入れるために大き とにおいて中心的な役割を果たす.また,それには素 な犠牲を払っているし,政治家やオピニオン・リーダー 晴らしい道具としての価値がある.教育は人的資本・ は一貫して教育を開発の最優先課題に位置付けてきて 生産性・所得・雇用適性・経済成長率を引き上げる. いる.それゆえ本章では,教育の恩恵に関するすべて しかし,その恩恵はこのような金銭的な利益をはるか の証拠をレビューすることは回避したい.しかし,本 に超越している:教育は人々をより健康にして,自分 報告書の主題――学習危機とそれに関してどうすべき の生活をより的確に統制できるようにする.また,信 か――に着手する前に,教育が進歩に対して寄与でき 頼を生み,社会資本を増やし,包摂性と繁栄の共有を るさまざまな方法について簡潔にサーベイしておくこ 促進する制度を作り出す. とは価値のあることだろう.その際には,このような 恩恵はより多くの場合に単に学校教育だけでなく,学 習にも依然として依存していることを強調しておきた 自由としての教育 い 4.  1948 年以降,教育は基本的人権の1つとして認識 されており,人間の尊厳の保護措置と自由・正義・平 教育は個人の自由を改善する 和の基盤としての役割が強調されている 1.アマル ティア・センの潜在能力アプローチの言葉を使えば, 教育は経済的機会を改善する 教育は,個人の資産,およびそれを福祉に転換する能  教育は所得を引き上げる強力なツールである.教育 力の両方――あるいは,個人の「ある状態でいること は産出を増加させるスキルを付与することによって, と何かをすること」と「潜在能力」と言われてきている 労働者をより生産的にする 5.学校教育が 1 年延びる もの――を高める 2.教育はコミュニティや社会に対 –  ごとに,個人の所得は典型的には 8  10%増加し,こ して対応する有益な効果をもち得る. の比率は女性の場合はもっと大幅である 6. (図 1.1)  教育は多くのルートを通じて抱負を大きくすると同 教育のシグナリング・モデルが言うように,高い能力 時に,それを達成するための潜在力を高めながら自由 あるいは良好な(他人との)繋がりを有する人(学校教 を拡大する.このような恩恵は個人・家庭・コミュニ 育いかんによらず高給を得ているであろう人たち)は, ティ・社会全体にとって,金銭的なものと非金銭的な より多くの教育を受けている.多種多様な国々――ホ ものの両方でもたらされ得る(表 1.1). ンジュラスやインドネシア,フィリピン,イギリス,  ほとんどの人々――政策当局者か親かは問わない― 「自然実験」 アメリカなど――における が証明するとこ ―は,教育の大きな価値をすでに認識している 3.世 ろによると,学校教育は確かに所得増加の牽引力に 1 学校における教育,学び,そして教育が約束すること 37 表 1.1 教育の恩恵にかかわる実例 個人 / 家庭 コミュニティ / 社会 金銭的 雇用確率の上昇 生産性の上昇 生産性の向上 より速い経済成長 所得の増加 貧困の削減 貧困の削減 長期的な発展 非金銭的 健康の改善 社会的流動性の増大 子供 / 家族の教育・健康の改善 制度 / サービス提供機能の改善 強靭性・適応性の増大 市政関与水準の上昇 市民関与水準の上昇 社会的一体感の増大 選択の改善 負の外部性削減 生活満足度の上昇 出所:WDR 2018 チーム. なっている(ボックス 1.1)7. 教育は長寿につながり,より良い生活の選択を可能にする  うまく機能している労働市場では,教育は失業の見  教育は長くて健康な生活を促進する.世界中を見渡 込みを低下させる.そのような経済では,高校卒業者 すと,教育・健康・長寿の間には強い結び付きがみら はそれより低学歴の労働者と比べて失職の懸念は小さ れる 11.人種・ジェンダー・所得などにかかわらず, く,仮に失職したとしても別の仕事に就ける公算が大 欧米では教育程度の高い人ほど,慢性的な疾患を抱え きい.教育を受けた労働者は,自らが働いている企業 ている確率が低い 12.アメリカでは,学校教育―― により強く結びついている.また求人情報そのものの 特に高校以上――の年数が長いほど死亡の確率が低く 入手・処理についても,手際が良いだろう 8.フィン (図 1.2) なっている .この一因は教育のおかげで,人々 ランドやアメリカでの調査から,失業者は学校教育年 の喫煙・暴飲・肥満・違法ドラッグ使用が少なくなっ 数が長いほど再雇用が容易であることがわかった 9. ていることにある 13.アメリカでは教育が喫煙率を 非公式部門と不完全雇用の規模が大きい途上国では, 低下させている.ウガンダでは,教育程度が高い人は 教育は公式部門のフルタイム職へのアクセスの容易さ HIV/ エイズの情報キャンペーンに対する感応度も高 と関連がある 10. い 14.  教育のある人々は自分が追求したいと思っている人 生について,よりきちんとしたコントロール力――し 図 1.1 学校教育年数の増加と賃金の増加との間には系統的な相関関係がある 賃金の中位数上昇率と学校教育年数の増加との間には相関関係がある(国グループ / ジェンダー別) 16 12 8 % 4 0 サハラ以南 ラテン 東アジア・ 中東・ 南アジア ヨーロッパ・ 高所得国 世界全体 アフリカ アメリカ・ 太平洋 北アフリカ 中央アジア カリブ 女性 男性 出所:Montenegro and Patrinos (2017) からのデータに基づく WDR 2018 チーム.データは http://bit.do/WDR2018- Fig_1-1. 注:上図は 1992 – 2012 年の間で入手可能な最新年のデータ.各地域は高所得国を含まない. 38 世界開発報告 2018 ボックス 1.1 人的資本形成あるいは信号装置としての学校教育?  なぜ教育は高所得と関係があるのか? 教育は労働者の生産 年齢とともに拡大するが,シグナリング・モデルの理論が示唆 性を高めると想定している人的資本モデルとは違って,教育に するところではそれは縮小する.というのは,合図する部分の有 関するシグナリング・モデルは次のように想定している:個人は 用性がおそらく年齢とともに減少するからである.最後に,教育 教育という資格証明書を修得して,潜在的な雇用主に対して高 というのは高価なふるい分けの戦略である. い能力を有していることを合図する.大学卒業の資格をもってい  仮に教育がふるい分けの装置としてのみ機能しているとすれ るということは,忍耐・根性・能力――労働市場向けにはすべ ば,同じ年数の学校教育を受けた個人は,修得したスキルにか てが価値あるスキルである――をもっているという確かなシグナ かわらず同じような成果を達成しているはずである.しかし,そ ルである. うなってはいない a.多くの諸国で,測定されたスキルが高い  しかし,さまざまな証拠が示しているように,修得された人的 個人は同じ量の学校教育を受けたのにスキルの低い仲間と比べ 資本は典型的には学校教育から所得への連動を牽引している. ると,一貫して稼ぎが高いということが示されている b.メキシ 第 1 に,高校ないし大学の卒業証書を修得することなく退学し (大学に進学 コでは,テストの点数が高かった高卒者については た人々にとって,追加的な 1 年の学校教育の収益率は卒業証書 ,卒業後の 3 年間に失業する可能性が しなかったものの間で) 修得者と同じように大きい.第 2 に,教育水準別の賃金格差は 点数の低かった仲間と比べて著しく低かった c. 出所:WDR 2018 チーム. a. Layard and Psacharopoulos (1974). b. 例えば , Hanushek 他 (2015) や Valerio 他 (2016) における OECD 諸国の結果を参照.個別国に関しては,例えばガーナについては Glewwe (1991),南アフリカについては Moll (1998) を参照. c. de Hoyos, Estrada, and Vargas (2017). 図 1.2 アメリカの成人死亡率は教育程度が高いほど低い 者は,わずか 10 人に 1 人の割合にすぎなかった 15. 年齢別,性別,人種別にみた教育年数と相対的死亡率(log-odds イギリスやアメリカが義務教育を延長した際,教育年 係数)の関係 数が長くなった人々は後の人生において,不幸だと申 1.2 し立てる公算は低かった 16.  教育とエイジェンシーの間の正の相関関係の一部は, 0.8 教育が所得に及ぼすプラス効果によって媒介されてい るが,独立的な効果もある模様だ.例えば,犯罪や妊 死亡率の差異 0.4 娠に対する効果は所得だけに依存しているわけではな 0 い.学校教育は青年後期における犯罪だけでなく,成 人が犯すほぼすべての種類の罪を削減している 17, 18. ‒0.4 イギリスの 16 歳および 17 歳の若者の間では,退学 ‒0.8 者は就学者と比べて罪を犯す確率が 3 倍以上になっ 0 5 10 15 20 ており,この格差は 20 歳代前半になっても残ったま 教育年数 まである.スウェーデン,イギリス,およびアメリカ 黒人女性(25-64 歳) 白人女性(25-64 歳) では,高校を修了した若者は犯罪に走る確率が低く, 黒人女性(65 歳以上) 白人女性(65 歳以上) 黒人男性(25-64 歳) 白人男性(25-64 歳) 他の諸国でも犯罪率の低さと結び付いている.例えば 黒人男性(65 歳以上) 白人男性(65 歳以上) メキシコでは,麻薬に関連する争いに巻き込まれてい 出 所:Montez, Hummer, and Hayward (2012) か ら の デ ー タ に る若者には高校退学者が多い 19. 基 づ く WDR 2018 チ ー ム. デ ー タ は http://bit.do/WDR2018- Fig_1-2.  生殖に関しては,教育は妊娠を減らす一方,自分の 注:各グループはヒスパニック系人口を除く. 家族の規模にかかわる女性の制御力を高める.学校教 育は少女の抱負・自由裁量権・エイジェンシーを高め ばしば「エイジェンシー」と呼ばれている――を有して ることを通じて,十代の妊娠を間接的に削減する.ト いる.エイジェンシーの増大はリスキーな行動の削減, ルコでは,義務教育法の変更による小学校修了時期の 生活満足度の上昇,幸福度の増大などとして現れてく 遅延化は――因果効果を隔離する研究が可能――,十 –  る.2010  14 年の所得水準がさまざまな 52 カ国に 代の出生率を女性 1 人当たり子供 0.37 人だけ低下さ おいて,自分の人生に関してコントロール力をほとん せた 20.ブラジル,コロンビア,ケニア,マラウイ, どないしまったく有していないと感じている大学卒業 そしてペルーでは,学校補助金が十代の妊娠(加えて 1 学校における教育,学び,そして教育が約束すること 39 場合によっては学校退学者)の削減につながった 21. 「緑の革命」 学校教育の収益率は の時期に上昇して教育 より一般的には,学校教育年数が長い女性は出生率が のある農民が増え,彼らが新技術を採用・普及させた 低い.ブラジルでは,学校教育を受ける若い女性の増 のである 33.より一般的には,グローバル化と技術進 加によって,1960 年代後半に始まった出生率低下の 歩は教育やスキル――認知的および社会情緒的の両方 –  40  80%を説明することができる 22.ナイジェリア (スポットライト 5 参 ――にプレミアムを付けつつある で学校の有効な範囲が拡大された際,女性の学校教育 .新しいスキルは技術の採用を円滑化し,革新を促 照) において追加された年毎について,女性 1 人当たり 進する一方 34,一般的スキルは個人が生涯にわたって の出生率が少なくとも 0.26 人分低下した 23.このこ 生じる経済的変化へ適応するのを可能にしてくれる 35. との一因は,教育のある女性は稼ぎが多くなるので, 北アメリカ自由貿易圏(NAFTA)がメキシコの労働生 労働市場からの退出はコスト高になってしまうことか 産性を向上させた時,その恩恵は裕福な北部諸州にい もしれない 24.また,教育によって女性は避妊手段 る熟練労働者の間に集中した 36.一般的に教育の収 の利用を増やし,出産に関する家庭の決断において自 益率は,経済的に自由で,ショックや市場諸力に対し 分の役割を強化し,子供をもつことに伴うトレードオ て個人が調整するのを許容する制度を有する国々でよ フを意識するようになっている 25. り高くなっている 37. 教育の恩恵は長期にわたる 教育は社会の全員のためになる  教育は家庭における貧困を無くする.親と子供の所 得の間には強い相関関係がある:所得不平等は執拗に  教育は人的資本を構築し,それが経済成長に転換さ 持続し,貧困は現世代から次世代へと伝わる 26.し れる.もし改善が不遇層の間でより速ければ,その追 かし,教育の改善は貧しい子供たちを後押しする:ア 加的な成長は貧困を削減し,不平等を削減して,社会 (標準偏差 1 個分だけ) メリカでは, 良い近隣居住区 的移動性を促進するだろう.教育は市民的主体性―― に引っ越した家計の子供たちは,大人になってからの 高水準の政治的関与・信頼・寛容という意味での―― 所得が 10%以上も多くなっていた.転居で学習が改 に対する影響を通じて,より包摂的な制度に向けた基 善したことが一因である 27. 礎的要素を作り出すことができる 38.市民的主体性  教育程度の高い母親は,より健康でより教育程度の のレベルが高ければ,包摂的な制度に向けて政治的支 高い子供たちを育て上げる.女性の教育水準は健康面 持層を結集して,国家と市民の間で社会契約を強化す で子供たち向けの多くの利益と連動している.このよ ることができる.積極的に関与している市民は,教育 うな利益として,予防接種率が高い,栄養が良い,死 が約束することを実現するために必要とされる改革に 亡率が低いなどがある 28.ブラジルやネパール,パ 対して政治的な支持を提供することもできる. キスタン,セネガルなどの多数の諸国において,女性 教育の改善は子供たちの健康改善と連動している 29. 教育は経済成長を促進する 親が学校教育を受けていると,子供たちがより高い教  国レベルで教育は成長を下支えしている.人的資本 育を達成するということは強固に予測可能である.こ は 2 つの方法で成長を押し上げる:第 1 は,新技術 れは他の要因を制御しても妥当である.また,子供が を吸収・適応する能力を改善することによってであり, 教育から恩恵を享受できる能力は親の教育によって形 これは,短期 – 中期の成長に影響する.第 2 は,持続 成されている.アメリカでは,母親の学校教育年数が 的な長期にわたる成長を牽引する技術進歩の触媒にな 1 年延びるごとに,子供の数学テストの点数は標準偏 ることによってである 39.世界の技術フロンティア 差値で 0.1 個分だけ上昇し,問題行動の著しい減少 から遠い諸国――ほとんどの低中所得国を含むグルー をもたらしている 30.パキスタンでは,母親の学校 プ――にとっては,基礎教育の普及が大きな後押しに 教育の年数が 1 年多いと,その子供たちの自宅での 1 なる公算があろう 40.このような国々は革新を通じ 日当たりの勉強時間も 1 時間長くなっている 31. てフロンティアを押し広げる必要はないが,すでに世  教育の恩恵は環境が変化するなかでとりわけ明らか 界的に利用可能になっている技術を吸収・適用するた である.強固なスキルをもっている個人は新技術をよ めに,基礎教育の普及を確かに必要としている.主に りうまく活用して,変化する仕事に適応することがで 高所得国を中心とした技術フロンティアの近くにいる きる.実際に,技術変化に関する専門家が昔から主張 国々では,より高いレベルの教育は革新を通じて成長 しているところによれば,技術の状況が乱高下するほ を押し上げることができる 41.データの制約からこ ど,教育はより生産的になる 32.インドにおける小 のような関係の実証分析は挑戦的なものとなっている 40 世界開発報告 2018 が,多くの影響力のある研究が,教育水準が高いほど 教育は包摂的な制度に向けて基礎的要素を構築する 高成長が実現していると結論付けている 42.成長会  教育は人々の市政関与を促進することによって,国 計分析も,教育は成長の大きな割合を説明することが の政治的発展を強化する 50.教育水準の高い人々は できることを示唆している――経済のなかで熟練労働 それが低い人々と比べて,一貫して政治活動に積極的 者が増えた時に,未熟練労働者がもっと生産的であれ に参加している:教育は,政治問題の意識と理解を高 ば,その割合はより大きくなる公算があろう 43. め,そして有効な政治活動のために必要な社会化を  しかし,このような統計上の証拠が,教育が成長に 促進し,そして市民としてのスキルを向上させる 51. 与えるインパクトに関して唯一の――最も注目すべき さまざま状況から得られている証拠は,この関係性 ――証拠というわけではない.数十年にわたって高成 は因果的であることを示している 52.アメリカでは, 長を維持している諸国は典型的には,インフラや保健 より多くの教育を受けると――例えば,就学前プログ に加えて教育の拡充について確固としたコミットメン ラム,高校奨学金,クラスの少人数化などの結果とし トを示してきている 44.その関係性は逆方向でもあ て――,人々はより頻繁に投票に参加する 53. (表 1.2) りうるものの――急速な成長はそれら3つの分野すべ 義務教育法の改訂を利用して,教育の因果効果を特定 てに対してより多くを投資することを可能にする― したところ,アメリカとイギリスにおいてこのような ―, 特に東アジアの奇跡的な国々に関する研究は,教 発見が確認された.一方で,コミュニティ・カレッジ 育と人的資本をそれらの国の急速な成長の要因である へのアクセスないし児童労働法改正の利用も,アメリ としている 45.韓国のような国々は教育に対する独 カについては同様の結果となっている 54.ベニンで 自の「漸進的普遍主義」アプローチから成果を得た.こ は,教育年数が多い人は生涯にわたって政治的に積極 のアプローチにおいて,同国は早い時期にすべての子 的であった.ナイジェリアでも,教育の拡充は,何十 供たち向けに良質な基礎教育を提供する――それに続 年かの後,その受益者の市民的・政治的な関与を大幅 けて良質な中等および高等の教育機会を拡大する―― に増加させた 55. ことを保証した 46.このような事例は次のような考  教育の他の効果と同様に,教育が政治的な意見や関 えを補強している.すなわち,強固な基盤的スキルは 与にどう影響するかについては状況が重要である.政 発展の初期段階の成長を牽引するが,各国が世界的な 治的参加の 1 つの共通メカニズムに関する意識を示 技術フロンティアに接近するにつれて,高等教育や研 す指標として,開発途上 30 カ国における調査が示す 究開発に対する投資を増やす必要がある 47. ところによると,教育のある市民ほど民主主義のなか  教育が適用される範囲が拡大するのに伴って,貧困 で暮らすことが重要であると信じている公算が大きい 層は典型的には限界的に最も恩恵を享受するので,所 (図 1.3).しかしケニアでは,若い女性は教育がある 得不平等は縮小するはずであろう 48.60 件以上の研 ほど政治的知識は多いものの,同時に,教育の増加は 究のレビューから,教育のカバレッジの拡大と所得分 より大きな失望感,さらに政治的な暴力に寛容になる 布全体にわたる家計相互間の所得格差の大幅な縮小と という状況に彼女らを至らせている.これは多分,調 の間には相関関係がある.具体的には,小学校の就学 査時点で民主制度がとりわけ脆弱だからであろう 56. 率が 50%から 100%に上昇すると,最貧 10%層の家  教育は信頼・寛容・市民的主体性を高める.途上国 計所得のシェアは 8%ポイント上昇するという関係が に加えて OECD 加盟国からの証拠は,教育程度の高 みられる 49. い人ほど知人はもちろん知人でない人に対しても信頼 表 1.2 学校教育が長い人ほど投票に出かける 高校卒業 投票 プログラム 対照群 実験群 対照群 実験群 ペリー幼稚園プログラム 44 65 13 18 「私には夢がある」奨学金 62 79 32 42 STAR 実験 85 90 42 47 出所:Sondheimer and Green (2010). 注:「ペリー幼稚園」 プログラムはミシガン州イプシランティ市の幼稚園に低所得世帯の子供たちを就園 させる集中的取り組み. 「私には夢がある」 奨学金はコロラド州ラファイエット市で昼食が無料ないし割 引価格の有資格者(貧困世帯出身者) である 5 年生を対象にした高校進学奨学金.STAR 実験ではテネシー 州の幼稚園から 3 年生までの一部の児童を少人数クラスに割当.投票の指標は研究ごとに異なるが,参 加者がすでに高校を卒業済みであった 2000 – 04 年の時期に対応. 1 学校における教育,学び,そして教育が約束すること 41 図 1.3 教育程度が高い人ほど民主主義の重要性に関する信念が強固 「民主主義のなかで暮らすことが絶対に重要」と信じている人口の割合(国・教育水準別) a. 低中所得国 b. 高所得国 100 100 80 80 60 60 % % 40 40 20 20 0 0 高等教育修了者 初等教育修了者 出所: 「世界価値観調査」 (World Values Survey Association 2015)からのデータに基づく WDR 2018 チーム.データ は http://bit.do/WDR2018-Fig_1-3. を寄せ,そして寛容であることを示している 57.こ  他の源泉 ではなく人的資本に基づく (天然資源など) のような横断的な証拠では因果関係を証明できないも 成長は,次の 3 つの主因から紛争の動機を低下させ のの,歴史的な分析では次のようなメカニズムが指摘 る可能性がある 64.第 1 に,人的資本は専有が困難 されている:識字能力の普及が中世以降の暴力の一般 なため,教育程度の高い人々を征服することは天然 的な減少に寄与している可能性があり,それは,他人 資源や物的資本の押収よりも見返りが少ない 65.第 の意見を読むことができる能力というのは共感を助長 2 に,教育は競争の機会費用を引き上げる:就職の見 するからである 58.いくつかの教育環境は,信頼をと 込みが薄い人を採用する方が容易である 66.第 3 に, りわけうまく助長するようである.28 カ国からのデー 前述の通り,教育は寛容や協力を助長して,紛争解決 タは,教室の開放的な雰囲気,ないし 「生徒が教室で政 のために暴力に訴える傾向を削減する 67. は,信頼や寛容と 治・社会の問題を議論できる度合い」 正の相関関係にあることを明らかにしている 59.同様 学習,そして教育が約束すること に,上意下達式よりもチームワークを奨励する授業方式 の方が社会資本を増進するようである:生徒は市民生活  教育は個人や社会の権力強化にとって強力なツール の重要性や協力の価値を信じる可能性が高くなる 60. になり得るが,その恩恵は自動的にもたらされるもの  教育は制度をうまく機能させ,公共サービスを改善 ではない.それは,要するに教育が単独でなし得るこ する.教育のある親は学校レベルでの意思決定権にう とではなく,経済や社会の他の分野でも多くのことが まく影響を及ぼすことができる.ガンビアでは,学校 (ボックス 1.2) うまく行く必要がある .もう 1 つの問 ベースの運営プログラムによって生徒の学習が改善し 題は,仮に教育制度の運営がまずいと,教育制度は, た.しかし,それは村の識字能力が高水準に達してか 「善」 社会 「悪」 の代わりに社会 を助長することがあり得 らのことであった 61.教育程度が高いほど,一般的 ることだ.第 1 に,教育は厚遇層と不遇層の裂け目 に人々は公的資金使途の透明化,サービス提供の改善, を深くし得る.貧しい,農村部の,あるいは不利な家 政府の説明責任などを要求する.最近の各国横断的な 計の出身の若者は学校教育修了年数が短いだけでな 研究が発見したところでは,市民の苦情が改善要求の く,就学中の学習も少ない(本レポートのパートⅡ参 主要な仕組みである:教育のある市民が苦情を言うと, 照).そのような場合,教育は社会的移動性を高める 官吏は行動を改めるようになる 62.また,教育は統 ことはほとんどできない.第 2 に,指導者は時とし 治の諸側面を改善するようである:1870 年までに大 て政治的目的のために,専制政治ないし特定グループ 衆教育を達成した諸国では,2010 年現在でみて腐敗 の社会的排除を強化する形で,教育制度を乱用するこ が減少していた 63. とがある. 42 世界開発報告 2018 ボックス 1.2 教育だけではできない  経済・政治・社会が教育の収益率を決定する.教育制度は ,教育が成長に及ぼすインパク 人々にとって) トは小さいだろう. 真空の中で機能しているわけではない.それは広範な経済・政 というのは,改善された認知スキルが生産性を最大限に引き上 治・社会の制度の一部である.例えば,社会は財産権を支持し げる形で使われていないからだ i. ているか? もしそうでなければ,企業家がリスクを伴う新規事  差別的な規範は教育の恩恵を歪める.民族ないしジェンダー 業に投資する可能性は低いだろう.そうなると,仕事の創出が の差別に関する支配的な規範は,当該集団の教育収益率に強く 阻害され,労働市場では教育の収益率が削減する.詐欺を阻止 影響し得る.多くの社会では,女性の経済的機会へのアクセス する規則はあるか? もしなければ,教育のある人は社会的に は社会規範によって厳しく制限されている j.2 つの研究が発見 非生産的でも,財務的には有利な活動に従事する方が儲かると (ウッタル・プラデシュ州) したところでは,北インド と北ナイジェ 考えるだろう.女性は自宅外で働くことが禁止されているか?  (ハウサ族) リア では約 90%の女性は,仕事に出るためには夫 もしそうなら,教育からの経済的な見返りは入手不可能というこ の許可が必要であると感じていた.しかし,このような規範は場 とになるだろう.これらすべては公式 / 非公式な制度が教育の 所により著しく異なる:エチオピアの首都ではこの割合はわずか 収益率にどう影響するかの実例である.一般的には,法の支配 28%にとどまっていた k. を実施し,腐敗を削減し,財産権を保護する信頼できる制度は,  こういった規範は公然の差別という形で機能しているとは限ら 人的資本にかかわる高収益率と相関関係を持つ a. ない.職種や社会の区別に沿った労働市場の分離は目につか  経済ないし社会におけるまた別の問題が教育の収益率をどの いないことがしばしばである.職業上のジェンダー分離は,世 ように削減するかについて,以下でいくつかの事例を示す. 界中の多くの労働市場で見られる顕著な特徴である l.OECD 諸  教育を受けた労働に対する需要が少ないとスキルの収益率は 国では,女性はサービス部門で多勢を占め,工業部門には男性 低下する.教育の収益率は労働市場における需要と供給の相互 が過剰に集中している m.水平的な分離に加えて,女性は 「ガラ 作用に依存している.教育を受けた労働の需要が供給に比べて ないし スの天井」 に直面している.これは女性は 「垂直的な分離」 相対的に低ければ,教育の収益率は低水準にとどまるか低下傾 キャリアの面で男性と同じ速さで,ないし上まで昇進していない 向をたどるだろう b.中国の都市部では,教育の収益率が学校 2013 年現在でマネージャー という意味である.OECD 諸国では, 教育 1 年当たりでみて,1988 年の年 4%から 2001 年の 10%へ をみると,国ごとに若干の差異はあるが,女性はわずか 3 分の と上昇した.この上昇分のほとんどは熟練労働需要を増やす制 1 にとどまっていた n.労働市場の分離は社会経済的な区別に 度改革おかげであった c.より一般的には,計画経済から市場 沿っても存在している可能性がある o.1960 年代から 70 年代 経済へのシフトに伴って,人的資本の収益率が高まったのであ にかけて,チリでは高度成長の時期に,教育は中流階級の職業 る d.投資環境が悪いと e,民間企業の投資と労働需要はとも 上の達成度にとって顕著な決定要因であった.上流階級と貧困 により一層低下して,教育の収益率を削減するだろう f. 層にとっては教育はさほど重要ではなく,世代間におけるステー  各国は間違っていることでも奨励する可能性がある.開発途上 タス相続の方がずっと重要であった p.厳格な階級構造がある の一部地域では教育を受けた大勢の若者が,すでに大規模な ジャマイカでは,中等レベルの教育機会が大規模に拡大された 公共部門への就職を目指して列を成している.ある数カ国では にもかかわらず,社会構造の透過性を増やすことへの効果はほ 政治家は, 支持者に恩顧ないし公務員職を提供できる能力によっ とんどなかった q. て選挙を戦っている g.例えば,北アフリカ数カ国では,過去に  社会規範に束縛されている人たち自身がその永続化に向け おいては大学卒業者全員に政府が公職を保証することも珍しく て共謀している公算がある.アメリカのエリート経営学修士号 なかったし,大きなシェアの賃金労働者にとって公共部門が相 (MBA) プログラムに新規に入学が許可された学生に関する研 変わらず大きな雇用主にとどまっている h.そのような状況下で (調査に対す 究が発見したところでは,独身女性は級友が自分の (公職を手にした は,個人の教育収益率は高いかもしれないが る)回答を覗くのではないかと思って,望ましい報酬として低い 「教育  最後に,学校教育は学習と同じではない. らかの恩恵を享受している.学校が暴力に溢れた地域 (education)」は不正確な言葉であるため,明確に定 あるいは, で安全のオアシスとして機能している場合, 「学校教育 義されなければならない. (schooling)」は 学校教育に参加することによって思春期の少女が妊娠 生徒が教室で過ごす時間のことである一方,「学習, するのを防いでいる場合,それは真に社会的な便益で (learning) あるいは学び 」は成果――生徒が学校教育 ある.卒業生はその資格を利用して雇用への扉を開く から持ち去るもの――である.この区別は極めて重 ことができ,その機会は当人の資格があるべき水準を 要である:世界中で,大勢の生徒が学んでいない(図 下回る学習を表している場合でも,彼らの人生を変化 .大勢の生徒は大きな挑戦課題に直面している環 1.4) させるだろう. 境下でさえ,何かを確かに学んでいるだろう.また,  直観的には,教育の恩恵の多くは生徒が就学中に身 生徒は学習しているか否かにかかわらず,教育から何 に付けるスキルに依存する.労働者として生産的・革 1 学校における教育,学び,そして教育が約束すること 43 ボッ (続き) クス 1.2 教育だけではできない 数字を申告した.男性や独身でない女性の場合,そのような相 (旧カルカッタ市) インドのコルカタ市 では,被雇用者の 45%は 違は観察されなかった.これは次のことを示唆している.すな 友人ないし親戚が現在の雇用主のところに就職するのを助けた わち,独身女性は野心などのような性格特性を結婚市場では望 と報告している u.サハラ以南アフリカ 14 カ国で調査した企業 ましくないものと捉えており,表に出すのを躊躇している r.社 「親族 / 友人」 のほぼ 60%は,直近の地位は とのコンタクトを通 会規範はほとんど同じように作用して,男性が機会にアクセスす じて埋められたと報告した v.この発見は労働市場が血縁関係 るのを阻害し得る.オーストラリアとジャマイカにおける事例研 や社会経済的階級によって区分けされている場所でも当てはま 究は,男子の成績不良は,教育というものは 「男性的な」行動の る w.非公式ネットワークは特定の人口グループにとってはとり 「女性化した」 期待と衝突する 領域のものであるとの観念と連動 わけ重要であり得る.例えば,アメリカにいるメキシコ移民がそ していることを指摘している s. れに該当する x. 教育は有用性が劣る t.  就職が非公式制度に依存している場合, 出所:WDR 2017 チーム. j. 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Munshi (2003). 新的であるためには,広範なスキル――認知的・ 図 1.4 学習は国ごとに大きく異なる:評価対象 10 カ国中 6 カ国で,小 学校修了者のうち読解力があるのはわずか半分ないしそれ以下にとど 社会情緒的・技術的なもの――が必要とされる. まっている 親としては,人々は子供たちに読み聞かせたり, 継続的な教育水準での識字率(主要国) 薬瓶のラベルを解釈したりするには識字能力を必 100 要とし,子供たちの未来のために予算を組むには 数的能力も必要としている.市民として政治家の 75 公約を評価するには,高次の論理能力に加えて識 字能力と数的能力が必要となる.コミュニティの 50 % 成員としては,習熟に伴う主体感が必要である. これら能力のどれ 1 つとして,単に通学してい 25 るだけでは生じてはこない.すべては在学中の学 0 習にかかっている. 正式教育 若干の 初等教育 若干の 中等教育 修了ないし  教育の恩恵に関する研究は,学校教育と学習の なし 初等教育 修了 中等教育 修了 若干の 高等教育 間のこのような区別を反映し始めている.過去に 修了した最も高い学習レベル おいては,ほとんどの実証研究は教育を学校教育 バングラデシュ インドネシア ルワンダ ――就学者数・就学年数・修得した学位のいずれ ガーナ ケニア タンザニア で測定しようとも――と同等に考えていた.それ インド ナイジェリア ウガンダ パキスタン は教育について他に適切な指標がないことが一因 である.しかし,学習に対する重視の度合いが高 出所:Kaffenberger and Pritchett (2017).データは http://bit.do/WDR2018- Fig_1-4. まるのに伴って,一部の研究では生徒が修得した 注:識字能力は 3 つの文章から成る一節を,「助けなしに流暢に」読める,ま スキルの効果が探求されるようになってきてい たは「若干の助けを得ながら」 読めるのいずれかとして定義されている. 44 世界開発報告 2018 図 1.5 成長にとって大切なのは学びである (1970 – 2015 年) 1 人当たり GDP の年平均成長率 :テストの得点・学校教育年数・当初の 1 人当たり GDP を条件として a. テストの得点と成長率 b. 学校教育年数と成長率 (当初の 1 人当たり GDP と学校教育年数を (当初の 1 人当たり GDP と 条件として) テストの得点を条件として) 3 3 1人当たりGDPの年成長率 1人当たりGDPの年成長率 2 2 1 1 0 0 1 1 (%) (%) y = 0.00 + 1.59x y = 0.00 + 0.07x 2 t = 7.39 2 t = 0.82 R2 = 0.55 R2 = 0.02 1.5 1 .5 0 .5 1 2 1 0 1 2 3 テストの得点 学校教育年数 出 所:Hanushek and Woessman (2012) か ら の テ ス ト の 得 点 に 関 す る デ ー タ, お よ び 世 界 銀 行 の World Development Indicators (database), 2017 からの学校教育年数と GDP に関するデータを使った WDR 2018 チーム. データは http://bit.do/WDR2018-Fig_1-5. る.その結果として,「スキルは重要である」という直 育が所得に及ぼす影響において重要である.OECD 観が確認されている. 加盟 23 カ国だけでなく他の多くの諸国において,数  学校教育が経済成長を加速化させる経路は,学習や 的能力や読解力の習熟度といった基礎的スキルの指 スキルの押し上げを経ているようである 68.大規模 標は,修了した学校教育年数別の効果による時間給 な生徒評価の入手可能性が増大しているおかげで,学 を説明することができる 72.このような効果は労働 校教育から経済成長へ向かう方向の関係を学習がどの 市場以外にも及んでいる.低・中所得 10 カ国にわたっ ように仲介しているかを探求することが今や可能であ て,学校教育が金融に関する行動の指標を改善した る 69.テストの得点と成長の関係は,修了した学校 のは,読解力の向上を伴っている場合に限定されて 教育年数を制御しても強固であるが,一たびテストの いた 73.学校教育が増えても読解力の向上を伴って 点数を考慮に入れると(図 1.5),学校教育の年数では いなかった場合には――これら諸国では一般的――, 成長を予測することはできない,あるいはわずかに有 金融に関する行動に変化はなかった.社会情緒的ス 意であるにすぎない 70.言い換えれば,重要なのは キルも重要である:さまざまな指標が示すところで 修了した教育年数ではなく,生徒が在学中に修得する は,学校教育や認知スキルの効果以外でも所得をほ 知識である.シミュレーションの示すところでは,す ぼ予測することができる 74. べての生徒に基本的な認知スキルを提供することは,  学習は健康にとっても重要である.女子の学校教育 特に途上国では,経済的な成果の大規模な押し上げに が妊娠率低下や乳児生存率上昇などといった成果に及 つながる (図 1.6)71.この発見は,学校教育修了に要 ぼす恩恵に関しては,多数の研究が詳しく裏付けてい した年数の各国横断的な比較は――特に経済現象の説 るものの,このような研究は典型的には学習と学校教 明に使われる場合――,見当違いの公算が大きいこと 育の区別をしていない.しかし,例外もある.モロッ を示唆している.考慮されている在学年数の期間に修 コでは,研究が示すところでは,母性教育は健康に関 得したスキルの相違を考慮に入れないのであれば,そ する知識を修得する母親の能力への影響を通じて,子 れは誤りであろう(ボックス 1.3). 供の健康を改善した 75.グローバルには,開発途上  ミクロ・レベルでも,個人が学校教育からどの程 48 カ国からのデータは,このような恩恵の多くが学 度の恩恵を享受できるかはスキル修得度によって決 習のおかげであることを示している.女子の初等学校 定される,ということを示す証拠が増えている.例 教育が 1 年延びると,生産児 1,000 人当たりの死亡 えば,学習――単なる学校教育ではなく――は,教 者数が 6 人少なくなるという関係があるものの,学 1 学校における教育,学び,そして教育が約束すること 45 図 1.6 学習が増えれば重要な経済的恩恵が生まれる (2015 – 90 年,シナリオ別) 主要国の学習増加に伴う現行 GDP に対する追加的 GDP 増加額のシミュレーション 2,500 2,000 現行GDP比 1,500 1,000 (%) 500 0 ス ルク ア ド ク ル ャ ン ア ア ス ア ー ア ト コ ギ コ ア ン ー カ ル ド ア ラ ド ス ルラ ス オ ー ド ス ン ベ イス オ イ ェコ ュ ト ス カ ド ド ロ ー ン ー ス ツ ー ル イ ガル ン CD オ ダ ダ 本 ン 国 ポ リシ セ リ リ ジ リ ノ ラン ー ン ウ ン ン ン ニ ース ギリ ポ メリ イ デ ガリ ス ウェ キ シ イ イ イ ン ナ ー デ ン ル 日 ギ ィ 韓 ハ OE ト ク タ ー ラ ラ ラ ラ チ マ ラ ブ ペ キ ト バ ル フ ェ メ フ PISA の受験者全員を最低 400 点にまで引き上げる PISA の受験で各国の平均をフィンランドの平均 546 点にまで引き上げる 出所:OECD (2010).データは http://bit.do/WDR2018-Fig_1-6. 注:PISA : Program for International Student Assessment. 校教育が最大の学習を実現している国では(それが最 済み)は,後の人生における社会的移動性に関して最 小の国との比較で),その効果は約 1.6 倍大きくなっ 強の予測変数になっている 77. ている 76.  学習がもたらす恩恵に関する文献はまだ増え続けて  スキルに関する限定的な指標でさえ多くを説明して いるものの,さらにより多くの研究が必要とされてい くれる.上述の研究で使われた指標は,しばしば範囲 る.しかし,常識,および出現してきている文献の両 が狭く,単純な数的能力や読解力をとらえているにす 方が明らかにしているところでは,仮に研究者が教育 ぎない.指標は時に粗雑である.例えば,学校教育と の恩恵を気にしているのであれば,学校の設備がどの 健康の関係に関する 48 カ国の研究では,読解力の指 程度整っているかや,生徒がどの程度長く就学してい 標として,ある女子が「親は自分の子供たちを愛して るかなどだけでなく,生徒が学習しているかどうかに いる」,あるいは「農業は苦労を伴う仕事である」といっ も焦点を当てるべきである.本レポートのパートⅡで た単文を読めるか否かが使われている.にもかかわら はその問題を取り上げる. ず,このようなスキルの非常に不完全な指標でさえ, かなりの予測・説明力をもっている.仮にスキルに関 注 してより良い指標が利用可能だとすれば,スキルは教 育がもたらす影響についてより多くを説明できるだろ 1. United Nations (1948).Universal Declaration う.一方,学校教育という単純な指標(このような分 of Human Rights (1948) の第 26 条は次のよう 析においては典型的には予測力を保持している)に残 「すべての人は教育を受ける権利 に述べている: されている役割はいっそう小さくなるだろう. を有する.…教育は人格の完全な発展並びに人権  最後に,学習は社会的流動性を促進する.アメリカ 及び基本的自由の尊重の強化を目的としなければ の世代間の社会的流動性に関して先に引用した研究で ならない.教育はすべての国又は人種的もしくは は,どの教育の仕組みが動因なのかということも探求 宗教的集団の相互間の理解,寛容及び友好関係を されている.1 つの候補は,学校向け支出やクラス規 増進し,かつ平和の維持のための活動を促進する 模などのような投入に基づく学校の質であり,このよ . ものでなければならない」 うな指標には確かにある程度の予測力があった.しか 2. Sen (1985, 1999, 2004). し,学習成果が特に重要であることが明らかになって 3. 例 え ば, 国 連 の 持 続 可 能 な 開 発 目 標 に お け る いる:子供が住んでいるコミュニティのテストの得点 教育の役割に関する包括的な議論については, (対象となっているコミュニティの所得に応じて調整 UNESCO (2016) を参照. 46 世界開発報告 2018 ボックス 1.3 達成度の各国比較――学習調整済みの学校教育年数  所定の就学年数でも,学習には国によって大差がある.標準 れている:第 1 に,国横断的な 4 年生の TIMSS 得点の比は 8 的な学校教育達成度はこのような相違を考慮に入れていないた 年生のものとほぼ同じである.第 2 に,PISA 得点はテストが実 め,ミスリーディングかもしれない.しかし,有意義な比較のた 施された学年ごとに線形的に上昇する傾向にある. めには,どのように調整されるべきだろうか?  そのような事実は何を意味しているのか? 2015 年における  1 つのアプローチは各国間の質を調整して標準化した生徒の TIMSS 数学の点数を使った実例は,学校教育年数は学習調整済 学習に関する指標に依拠することである.TIMSS や PISA などの み年数とは確かに非常に異なり,加えてこの相違自体も国ごと 国際評価はそのような指標を提供している.仮に各国の平均的 に大きく違うということを確認している.年齢が 25 – 29 歳の香 な学習の軌道が線形である――学習者が入学した時の学習ゼロ 港やアメリカの人々は,学校教育の平均年数がほぼ同じである から出発して 8 学年に達するまで一定のペースで成長する―― (それぞれ 14 年と 13.5 年) にもかかわらず ,アメリカの学習調 という前提を置くならば,二国間の点数の比率は 1 年当たりの (図 B1.3.1) 整済みの学校教育年数はほぼ 2 年も少ない .また, 相対的な学習を反映することになる.例えば,8 年生の得点に シンガポールの若者はヨルダンの若者よりも学校教育期間がわ 関して,もし A 国の得点が B 国の得点の 2 倍であれば,平均的 ずか 30%多いだけなのに,学習調整済みの指標は,有効な学 にみて,A 国における 1 年当たりの学校教育は 2 倍有効である 校教育年数ということではシンガポールはヨルダンを 109%凌駕 といえよう. していることを示している.  このような分析の信頼性は 2 つの重要な事実によって支持さ 図 B1.3.1 学校教育年数に関しては,学習調整済みベースと学習未調整ベースの間では大きな格差が生じ得る 若者(25 – 29 歳)の学校教育年数格差:実際対学習調整済みベース(TIMSS データを使った例示) 15 12 9 年数 6 3 0 エ チリ ト ト ト ー ロ タ 首 トルイ ー ア ア レ ア マ ア シ アラ ア ガ ア ス アフ ア カ ナ ボ ーン ル ン ス ド フ ン ン ー コ ル ド ェ カ ン 長 コ ア リス カ ア イ ー カ ェー ダ ン 港 イ ル カ ヨル 本 ウ 国 ウ ロ ル ロ ル イ 連邦 リ ェー プ バ ラリ リ イ ラン ノ ラン ジ ッ ウ リ リ イ ラ タ タ リ ワ シ ュ モ ル ジ シ ン ビ ナ マ アニ 南 ベニ ザ ダ デ 日 エ ー ス ポー ハ 香 ク 韓 タ ジ メ ウ ギ ガ ス ツ ー ー レ ラ タ 国 ト ス ー ブ オ サ ラ ニ ア 実際の年数 学習調整済年数 出所:Barro and Lee (2013); TIMSS 2015 (Mullis 他 2016) からのデータに基づく WDR 2018 チーム.データは http://bit.do//WDR2018- Fig_B1-3-1. 注:シンガポールの学校教育年数は学習調整ベース年数と同一.というのは,シンガポールは 2015 年の TIMSS 数学で最高点をとって, この例示のなかでは比較の基準という役目を演じているからだ.この例示目的のために,イギリスの教育年数のデータはイングランドの TIMSS 得点を使って調整されている.すべての国ついて調整の規模はそのために使われた指標の目盛を反映することに注意. 4. Heckman 他 (2014). 9. Kettunen (1997); Riddell and Song (2011). 5. Becker (1964). 10. Filmer and Fox (2014). 6. Montenegro and Patrinos (2017). 11. 先進国と途上国それぞれにおける証拠のレビュー 7. Angrist and Krueger (1992); Bedi and Gaston に関しては,Cutler, Lleras-Muney, and Vogl (1999); Card (1993); Duflo (2000); Harmon (2008); Vogl (2012) を参照. and Walker (1995); Maluccio (1998). 12. C u t l e r a n d L l e r a s - M u n e y ( 2 0 0 7 ) ; 8. Mincer (1991). Mackenbach (2006). 1 学校における教育,学び,そして教育が約束すること 47 13. 逆因果関係――健康の改善は教育の増加につなが 33. Foster and Rosenzweig (1996). るなど――はあるものの,最低限の学校教育法導 34. Aghion 他 (2009). 入や徴兵回避などの自然実験は,教育が健康に及 35. Hanushek 他 (2017). ぼす因果効果は大幅なプラスであることを見出し 36. Hanson (2007). ている. 37. King, Montenegro, and Orazem (2012). 14. de Walque (2007a, 2007b). 38. Chong and Gradstein (2015); Dahl (1998); 15. World Values Survey 2010-14 (Wave 6) は Dewey (1916). 先進および開発途上合わせて 57 カ国をカバー 39. Romer (1990); Solow (1956). している(World Values Survey Association 40. Aghion (2009); Madsen (2014). 2015).同調査では,各国を代表する標本から選 41. Acemoglu, Aghion, and Zilibotti (2006); 定された回答者 9 万人の信条・価値観・モチベー Aghion (2009); Aghion 他 (2009). ションなどが測定されている.同時に社会情緒的 42. Barro (2001); Cohen and Soto (2007); データも収集されている.推定値には平均体重や Glewwe, Maiga, and Zheng (2014); Krueger 統合された分析カテゴリー(教育水準や目盛化さ and Lindahl (2001); Mankiw, Romer, and れた回答)が含まれている. Weil (1992). 16. Oreopoulos (2007). 43. Bosworth and Collins (2003); Jones (2014). 17. Lochner (2004); Lochner and Moretti (2004). 44. Commission on Growth and Development 18. Belfield 他 (2006); Cullen, Jacob, and Levitt (2008). (2006). 45. World Bank (1993). 19. Anderson (2014); de Hoyos, Gutiérez 46. Education Commission (2016). Fierros, and Vargas M. (2016); Hjalmarsson, 47. Aghion and Howitt (2006). Holmlund, and Lindquist (2015); Machin, 48. Lanjouw and Ravallion (1999); Younger Marie, and Vujić(2011).教育が犯罪を削減す (2003). る理由を説明できるメカニズムが少なくとも 2 49. Abdullah, Doucouliagos, and Mannig (2015). つある.第 1 に,教育は潜在的な所得を増やす 50. Dewey (1916); Lipset (1959, 1960). ため,犯罪の機会費用を押し上げる.第 2 に, 51. Campante and Chor (2012). 学校教育が長いことが犯罪を削減するのは,若者 52. Chzhen (2013). にとって犯行に及ぶのに利用可能な時間を単に削 53. Sondheimer and Green (2010). 減することを通じてである.アメリカのデータの 54. Dee (2004); Milligan, Moretti, and Oreopolous なかには,この「無力化効果」を支持しているもの (2004). もある(Anderson 2014). 55. Larreguy and Marshall (2017); Wantchekon, 20. Güneş (2016). Klasnja, and Novta (2015). 21. Azevedo 他 (2012); Baird 他 (2010); Duflo, 56. Friedman 他 (2011). Dupas, and Kremer (2014). 57. Borgonovi and Burns (2015); Chzhen (2013). 22. Lam, Sedlacek, and Duryea (2016). 58. Pinker (2011). 23. Osili and Long (2008). 59. Campbell (2006). 24. Becker, Cinnirella, and Woessmann (2013). 60. Algan, Cahuc, and Shleifer (2013). 25. Lavy and Zablotsky (2011). 61. Blimpo, Evans, and Lahire (2015). 26. Solon (1999). 62. Botero, Ponce, and Shleifer (2013). 27. Chetty, Hendren, and Katz (2016). 63. Chong 他 (2014). 28. Schultz (1975); Thomas, Strauss, and 64. de la Brière 他 (2017). Henriques (1990); Welch (1970); World 65. Acemoglu and Wolitzky (2011). Bank (2011). 66. Collier, Hoeffler, and Rohner (2009). 29. World Bank (2011). 67. Davies (2004). 30. Carneiro, Meghir, and Parey (2013). 68. G l e w w e , M a i g a , a n d Z h e n g ( 2 0 1 4 ) ; 31. Andrabi, Das, and Khwaja (2012). Hanushek and Woessmann (2008, 2012). 32. Nelson and Phelps (1966). 69. Barro (2001, 2013). 48 世界開発報告 2018 70. Barro (2013). Baird, Sarah Jane, Ephraim Chirwa, Craig McIntosh, and Berk Özler. 2010. “The Short-Term Impacts of a Schooling 71. Hanushek and Woessmann (2015); OECD Conditional Cash Transfer Program on the Sexual Behavior of (2010). Young Women.” Health Economics 19 (S1): 55–68. Barro, Robert J. 2001. “Human Capital and Growth.” American 72. Hanushek 他 (2015); Valerio 他 (2016). Economic Review 91 (2): 12–17. 73. Kaffenbergur and Pritchett (2017). ———— . 2013. “Education and Economic Growth.” Annals of Economics and Finance 14 (2): 301–28. 74. OECD 諸 国 に 関 し て は 次 を 参 照 ―Heckman, Barro, Robert J., and Jong Wha Lee. 2013. “A New Data Set of Stixurd, and Urzua (2006); Heineck and Educational Attainment in the World, 1950–2010.” Journal of Development Economics 104: 184–98. Anger (2010); Mueller and Plug (2006). Barsoum, Ghada F. 2004. “The Employment Crisis of Female OECD 以外の諸国については次を参照―Díaz, Graduates in Egypt: An Ethnographic Account.” Cairo Papers 25 (3). Cairo: American University in Cairo Press. Arias, and Tudela (2012); Valerio 他 (2016). Beaman, Lori, and Jeremy Magruder. 2012. “Who Gets the Job 75. Glewwe (1999). Referral? Evidence from a Social Networks Experiment.” American Economic Review 102 (7): 3574–93. 76. Oye, Pritchett, and Sandefur (2016). Becker, Gary. 1964. Human Capital. New York: Columbia 77. Chetty 他 (2014). University Press. Becker, Sashca O., Francesco Cinnirella, and Ludger Woessmann. 2013. “Does Women’s Education Affect Fertility? 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PART Ⅱ 学習危機 2. 学校教育の急拡大――そして取り残された人々 3. 学習危機の諸側面 4. 学習を真剣に考えるためにその測定から始める 54 2 学校教育の急拡大 ――そして取り残された人々 1945 年にインドネシアが独立を宣言した時,読み書きができるのは人口のわずか 5%にすぎなかった.2015 年現在,そ れは 95%に達している(UIS 2016). 1981 年のネパールでは,成人の 5 人に 1 人しか読み書きができなかったが,2015 年現在ではほぼ 3 分の 2 が読み書き をできるようになっている(UIS 2016).  過去 50 年間に学校教育は,ほとんどの低および中 3 倍以上になった 4.このペースは歴史的に前例がな 所得国で劇的に拡大してきている.この拡大が歴史的 –  い.ザンビアでは,中学校就学率が 2000  10 年の間 に前例のないペースになっている諸国もなかにはあ に 75%ポイントも上昇した.これは中等教育拡大期 る.もう 1 つのパターンは初等後教育の急速な拡大 にどの高所得国が経験したペースよりも速い 5.アメ である.ただし,多くの若者は初等教育からでさえ排 リカでは,女子の就学率が 57%から 88%に上昇す 除されたままである.つまり,学校教育の拡大が堅調 るのに,1870 年から 1910 年までの 40 年を擁した. であった国々においてさえ,貧困・ジェンダー・民族性・ モロッコは同じような上昇をわずか 11 年間で達成し 身体障害・場所などに基づく排除が執拗に持続してい た 6.したがって,低所得国と高所得国の間の就学率 る.脆弱な紛争後諸国もグローバルな学校教育ブーム 格差は縮小しつつある.2008 年までに,平均的な小 に対する明らかな例外にとどまっている. 学校就学率は低所得国と高所得国とでほぼ等しくなっ ている(図 2.1).このような上昇にもかかわらず,教 育を受けていない成人の大きな蓄積集団が存在する― ほとんどの子供たちは基礎教育へのアクセスを ―それは南アジアだけでも 3 億 2,200 万人に達する 有している (図 2.2).  学校教育はほとんど至るところで拡大してきてい  従来無視されていたグループ,特に女子も,今で る.初等教育の総計での就学率は 1970 年に,サハラ は小学校に就学する可能性がずっと高くなっている. 以南アフリカで 68%,南アジアで 47%にとどまって –  2000  14 年の間に,未就学児童の数は約 1 億 1,200 いた.2010 年現在,その率は両地域とも 100%に達 万人減少した 7.同時に,基礎教育に就学した女子の している 1.このような数字は体制の種類,経済成長 割合は歴史的な高水準に達している 8.開発途上諸国 率,そして統治の質などによらず,ほぼすべての国々 –  の小中学校では,女子対男子の比率は 1991  2007 で実現された進展を反映している 2.その結果,ほと 年の間に 0.84 から 0.96 へと急騰した 9.それどころ んどの子供たちが小学校に就学しており,若者のどの か,開発途上 38 カ国(データが入手可能な 121 カ国 新たな集団も従来の同集団よりも長い時間を学校で過 中)の中学校では女子は男子よりも多い 10.しかし, ごすようになっている 3. –  男女平等はまだ達成されていない:年齢 6  15 歳の  低所得国における最近の学校教育拡大には,その 女子 6,200 万人が未就学にとどまっており 11,これ 範囲とスピードの点でとりわけ目覚ましいものがあ が最も集中しているのは西および南アジアとサハラ以 る.開発途上諸国の平均的な成人が修了した学校教育 南アフリカである 12.多くの女子が小学校に通い始 –  年数は,1950  2010 年の間に 2.0 年から 7.2 年へと めてはいるものの,修了できる見込みが低いままの国 2 学校教育の急拡大――そして取り残された人々 55 図 2.1 途上国における就学率の上昇 純就学率(国グループ別:1820 – 2010 年) a. 小学校 b. 中学校 100 100 80 80 純就学率 純就学率 60 60 (%) (%) 40 40 20 20 0 0 25 50 75 50 75 20 0 10 25 50 75 50 75 20 0 10 00 25 00 25 0 0 18 18 18 19 19 20 18 18 18 19 19 20 19 19 19 19 東アジア・太平洋 ラテンアメリカ・カリブ 南アジア ヨーロッパ・中央アジア 中東・北アフリカ サハラ以南アフリカ 高所得国 出所:Lee and Lee (2016) からのデータに基づく WDR 2018 チーム.データは http://bit.do/WDR2018-Fig_2-1. もなかにはある.2014 年現在,低所得国における女 中学校就学率はサハラ以南アフリカの一部を除くすべ 子の小学校就学率は 78% であったが,修了率はわず ての地域で,50%を上回る水準にまで上昇してきてい か 63%にとどまっている 13. る.しかし,中等教育のレベルにおいて,特に修了率に  学校教育の拡大が最も急激だったのは小学校レベル 関して,低所得国と高所得国の間には大きな格差が残っ それは中等教育の需要急増にもつながっている. であり, たままである.2016 年現在,高所得の OECD 加盟国 では中学校修了率は 96%であったが,低所得国 ではわずか 35%であった 14. (図 2.3) 図 2.2 世界人口の中で初等教育未満の人のほとんどは南アジアに いるが,この比率はサハラ以南アフリカとほぼ同じ  途上国は学校教育の拡大に関しては,先進国 教育達成度のストック(15 – 64 歳:国グループ別,2010 年) とは非常に異なった道をたどりつつある.低所 得国は高所得国が経験した進展を飛び越えつつ 対世界人口比(%) 0 20 40 60 80 100 ある――初等教育が依然として多くの若者に 100 とってアクセス不可能なままであるにもかかわ 対国グループ人口比 らず,初等後教育が力強い拡大を示しているの 75 である . (図 2.4) 50 残存している学校教育格差の 25 (%) ほとんどは,貧困・ジェンダー・民族性・ 0 身体障害・場所によって説明できる 東アジア・太平洋 南アジア 高所得国 南スーダン出身の難民のマウトは,長い期間を ヨーロッパ・ 中東・北 サハラ以南 中央アジア アフリカ アフリカ ケニアの難民キャンプで暮らしていたので,小 ラテンアメ 学校を終えることができた.「2010 年に姉が リカ・カリブ スーダンに戻る決意をした際,僕はついて行か 教育達成度の最高水準 中等後 中等 初等 初等未満 ないという決断を下した.というのは,そうす 出所:Lee and Lee (2016) からのデータに基づく WDR 2018 チーム.デー れば,学校で受けている教育が終わりになって タは http://bit.do/WDR2018-Fig_2-2. しまうことがわかっていたからだ.兄と一緒に 56 世界開発報告 2018 図 2.3 国民所得は,小学校修了率と中学校修了率の格差と  紛争後諸国は世界的な学校教育の拡大にとって明 関連がある らかな例外のままである(ボックス 2.1).紛争後の南 学校修了率の分布(国グループ別・学校教育水準別) スーダンの正味の小学校就学率は 2011 年で 41%, % 隣国のエチオピアは 78%であった 15.未就学児童の 0 20 40 60 80 100 3 分の 1 以上が,紛争後諸国の子供たちである 16. 高所得国(OECD) これら諸国の子供たちが学校を修了する可能性は低 高所得国(非 OECD) い――修了する確率は小学校は 30%,中学校は 50% とそれぞれ低い 17.要するに,彼らは退学率が高く, 上位中所得国 修了率が低く,ジェンダー格差が大きく,識字率が低 下位中所得国 く,そして未就学率が不当に高いのである 18.紛争 低所得国 が過去の進展を帳消しにすることも起こり得る.シリ アは 2000 年に初等教育に関して普遍的な就学を達成 した.しかし,2013 年には紛争のせいで 180 万人の ヨーロッパ・中央アジア 未就学児童が発生した 19. 東アジア・太平洋  貧困や居住地,ジェンダー,民族性に基づく排除 南アジア も執拗に持続している(図 2.5).2014 年現在,推定 ラテンアメリカ・カリブ で 6,100 万人の小学生,2 億 2,000 万人の中学生相 当の年齢の児童――貧困家計の出身者の割合が不当に 中東・北アフリカ 高い――が未就学であった 20.小学校修了率をみる サハラ以南アフリカ と,低所得国では最貧層出身の子供たちの間ではわず か 25%程度――富裕層では約 75%――にとどまって 世界全体 いる 21.このような格差はジェンダー別に分解する 25 50 75 とさらに大きくなる.ジェンダーと貧困による二重の パーセンタイル 排除のせいで,低所得国の最貧層女子の小学校修了率 小学校 中学校 出所:UIS (2016) からのデータに基づく WDR 2018 チーム.デー 図 2.4 低所得国では大勢の人々が小学校をまだ修了してい タは http://bit.do/WDR2018-Fig_2-3. ないのに,中等教育が急拡大しつつある 注:地理的な地域は高所得国を除く.示されている国別データ 教育達成度のストック の推移 (15 – 64 歳) (現在の所得グループ別: は 2010 – 16 年の間で入手可能な最近年のもの.修了率は年齢が 1890 – 2010 年) 特定の教育水準にかかわる正式な年齢グループを超過する生徒 を含むため,100%を超えることがある. 100 0 1890 1890 1890 カクマ難民キャンプに転居して,そこで初等コースの 1920 1950 80 20 最後の 2 年間を修了した.さまざまな問題を経験し 1950 たにもかかわらず,僕は好成績を収めた」. 初等 1980 初等(%) 未満(%) 60 40 (Kelland 2016). 1980 1950 1890 ナダヤはアフガニスタン南東部のマシュカイルという 40 2010 60 遠隔地の出身である.「私はこの人口の多い地区では 読み書きができる唯一の女性です.家の外に働きに出 2010 20 1920 80 ています.そして,より重要なこととして,この伝統 1980 的な地区のなかで唯一の女性教師です.…地区の長老 2010 1950 0 2010 1980 100 たちは,私が読み書きできるということを発見した際, 100 80 60 40 20 0 私の夫に,私が長老の娘たちにボランティアで教育を 中等以上(%) 行うことを依頼しました.彼女ら年齢の高い女性のほ 低所得国 上位中所得国 とんどは,男性教師から授業を受けることを許可され 下位中所得国 高所得国 ていなかったのです」. 出所:Lee and Lee (2016) からのデータに基づく WDR 2018 チー (IRIN 2003). ム.データは http://bit.do/WDR2018-Fig_2-4. 2 学校教育の急拡大――そして取り残された人々 57 ボックス 2.1 アクセスは拒絶されている:脆弱性・紛争・暴力の影響  最も脆弱な状況下に暮らしている子供たちが,世界の小学生 正常感と教育体制をもたらし得る.そして,それには高価な見 人口の約 20%を占めている.しかし,彼らが未就学人口の約 返りが伴っている c.しかし,必要なスキルや知識をこのような 50%を占めている.これは 2008 年の 42%に比べると上昇であ 子どもたちに身に付けさせるという課題は,往々にして受入国政 る a.脆弱国の子供たちは非紛争状況下に暮らす子供たちと比 府に降りかかるため,自国民に良質な教育を提供することにお べて,未就学の可能性が 3 倍も高く,小学校を修了する前に退 いてすでに悪戦苦闘している国もある.例えば,レバノンは公 学する公算もずっと大きい.脆弱性・紛争・暴力がアクセスを 立教育制度の規模を 2011 年以降ほぼ 50%も拡大している.こ 直接的には阻害しない時でさえ,それらは教員や資源の不足, れはシリアの内戦が原因である.レバノンでは就学者総数のほ ないし暴力に伴うトラウマなどを通じて,授業経験を変化させる ぼ 3 分の 1 が難民である d. ことによって学習に影響し得る.紛争は民族性・宗教・ジェンダー  社会レベルでの紛争や暴力に加えて,学校レベルの暴力が学 に基づく排除を悪化させる傾向にある. 「しつけ」 習を阻害している.身体的・心理的な暴力がいわゆる  教育制度は,例えば,教科書における民族・宗教・ジェンダー の一般的な形であり,世界の多くの地域で生徒は日常的に体罰 などにかかわるステレオタイプ化を通じて,紛争を悪化させ得 にさらされている.例えば,ある大国の 3 つの大都市では,学 「国家建設」 る.他の示威行為には,非包容的な の一環として非 校の全生徒の半数以上が何らかの形の暴力的な懲罰を受けたこ 原住民言語の使用に限定,限界的な集団に対する教育の拒否, とがあった e.体罰を受けた生徒の 4 分の 1 はその結果として 政治目的向けの歴史歪曲,特定のイデオロギーを推進するため 負傷したと発言している.身体障害・貧困・カースト・階級・民族・ に地理の授業を活用,などがある. 性的嗜好などに基づいて差別を受けている子供たちは,仲間と  難民児童は学習に関して大きな障害に直面する.難民児童で 比べてよりいっそう体罰をこうむりやすい.状況によっては,学 初等教育にアクセスできているのは,わずかに 2 人に 1 人の割 校における性的暴力も問題になっている――例えば,権威者は 合にすぎない.難民の子供は平均的な子供と比べて,未就学 権力を悪用して,成績を上げることや授業料免除の見返りに性 率が 5 倍も高い b.このような脆弱な子供たちに対する教育は, 行為を要求することがある. 出所:Commins (2017). c. Burde 他 (2015). a. UNESCO (2013). d. World Bank (2016a). b. UNHCR (2016). e. NCCM and UNICEF (2015). 図 2.5 学校修了率は富裕層・都市部で高いが,ジェンダー別格差はより状況に依存している 15 –19 歳児の 6 学年修了率(%)における格差(富・場所・ジェンダーの別) a. 最富裕層 – 最貧層 b. 都市部 – 農村部 c. 男子 – 女子 80 80 80 60 60 60 格差 格差 格差 (%ポイント) (%ポイント) (%ポイント) 40 40 40 20 20 20 0 0 0 ‒20 ‒20 ‒20 20 40 60 80 100 20 40 60 80 100 20 40 60 80 100 6 学年修了率全体(%) 6 学年修了率全体(%) 6 学年修了率全体(%) 出所:Filmer (2016) からのデータに基づく WDR 2018 チーム.データは http://bit.do/WDR2018-Fig_2-5. 注:提示されている国別データは 2005 – 14 年の間で入手可能な最近年のもの.各垂直線は当該国の格差の規模と方向性を示す. はわずか 25%にとどまっている 22.状況によっては, 供たちが働いている確率は,他の子供たちの 2 倍以 民族性は教育へのアクセスに関する重要な前兆になり 上となっている 24. 得る.2011 年現在でみて,ルーマニアにいるロマ族  最貧家庭の子供たちはそもそも就学する確率が低 の成人の中等教育修了率はわずか 10%にとどまって い.就学した子供たちでも国ごとに程度は異なるもの いるが,近隣に居住する非ロマ族の間ではその値は の,早期に退学する可能性が高い.マリやパキスタン 58%に達している 23.ラテンアメリカの原住民の子 など一部の諸国では,貧困が教育水準に及ぼす影響は 58 世界開発報告 2018 図 2.6 複合排除:貧困家計出身の女子の教育達成率はしばしば最低 各学年を修了した若者(15 – 19 歳)の比率%(富による 20%層・ジェンダー別,主要国,2012 年) a. パキンスタン b. マリ c. ペルー d. インドネシア 100 100 100 100 80 80 80 80 60 60 60 60 % % % % 40 40 40 40 20 20 20 20 0 0 0 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 2 3 4 5 6 7 8 9 学年 学年 学年 学年 最富裕 20%層 中間 20%層 最貧 20%層 最貧 20%層の女子 出所:USID の Demographic and Health Surveys for 2012 (http://www.dhsproguramu.com) からのデータに基づく WDR 2018 チーム. データは http://bit.do/WDR2018-Fig_2-6. 小学校入学時点ですでに目に見える形で明らかであ の層では,少年が 5 学年を修了する確率は少女に比 る.インドネシアとペルーでは,格差が出現するのは べて約 75%も高い.これとは対照的に,人口の上位 (図 2.6) それより後のことである .ほとんどすべての 半分のより裕福な層では男女格差は 20%未満にとど 国において,親の富および親の教育達成度が,その親 まっている 33.2006 年現在でみて,小学校に就学し の子供たちの教育にとって主要な決定要因となってい なかった全女子児童の約 70%は社会的に排除されて る 25.開発途上国では平均すると,最貧 20%層と最 いる集団の出身であった 34. 富裕 20%層の子供たちが小学校を修了する確率の間  身体障害のある子供たちは教育について大きな障壁 には 32%ポイントの格差がある――このような富関 に直面しており,就学率が大幅に低くなっている 35. 連の不平等はデータが入手可能な 25 カ国中の 10 カ ブルキナファソでは,身体障害をもっていると,その 国で拡大しつつある 26.教育向け公共支出が限界的 子が就学しない可能性が約 2 倍に上昇する 36.小学校 に少しでも増加あるいは減少すると,最も影響を受け の就学率が全体として高い国でさえ,身体障害のある るのはこの最貧層である 27.したがって,驚くこと 子供たちは就学する公算が著しく低い.モルドバでは, ではないが,就学をもっと負担可能なものにすれば― –  身体障害のない 7  15 歳の子供たちの 97%が小学校に ―直接費の負担と機会費用の補償という両面で――, 通っているのに対して,身体障害者の就学率はわずか 貧困世帯出身の子供たちの就学率を押し上げることが 58%にとどまっている 37.同時に,身体障害児向け できよう 28. の良質な教育には経済的・社会的に大きな利益がある.  グローバルにみると,まったく就学しない女子の確 開発途上 12 カ国では,身体障害児向けの学校教育が 率は男子の 2 倍であり,その結果として女子の学校 1 年追加されると,彼らが最貧の 2 つの 20%層に属し 修了率も低くなっている 29.サハラ以南アフリカで –  ている確率が 2  5%ポイント低下する 38. は,貧しい農村部の女子が学校を修了できない公算は 貧しくない都市部男子の 7 倍にも達している:中学 貧しい親に対して学校教育は 校修了に向かう軌道に乗っている女子は,このような 二律背反の選択を要求する 20 人中 1 人にも満たない 30.初等レベルでは男女平 等が達成されている北アフリカや西アジアなどの地域  何百万人という貧しい親は,自分の子供たちを教育 でも,前期中等教育レベルでは就学率にジェンダー格 すべきか否かについて,むずかしい選択を行っている. 差が残存しており,それは後期中等レベルではより顕 このような費用便益評価――費用には学校の直接費用 著になっている 31. と子供の学校外における時間の機会費用の両方が含ま  ジェンダーは他の不利を補強する.それは多くの れる――が子供たちの就学・修了・学習成果を決定す 場合に社会経済的な地位・民族性・宗教・性的嗜好・ る 39.この計算には一部の――全員ではなく――子供 身体障害・年齢・人種などに関連した不利を,倍加 を就学させる,という状況が含まれることがある.例 する 32.44 カ国において,人口のより貧しい半分 えば,ブルキナファソでは農村家計の 4 分の 1 しか子 2 学校教育の急拡大――そして取り残された人々 59 供たちを学校に通わせていない 40.したがって,学校 要因――に依存しているが,そのなかで生徒の学習成 教育のコストを削減すれば,貧困家庭の子供たちの就 果が決定的な側面になっている 55.生徒の能力と達 学は大幅に増加するだろう 41.ウガンダでは初等教育 成度を一定として,エジプトの家庭は学校を教育の質 の義務化を通じて学校教育にかかわる直接費を撤廃し によって区別するのかもしれない――質の低い学校に たおかげで,就学率が 60%ポイント以上上昇する一方, 通っている生徒は退学する公算が大きい 56.確かに, 費用関連の退学率が 33%ポイント強低下した 42.マ 親は低質の公立校を避けて,高質で遠隔の公立校ない ラウイでは,初等教育の無償化を受けて,特に女子と し授業料の高い高質の私立校に通学させることに積極 貧困層を中心に就学率が 50%も上昇した 43. 的なようである 57.  一部の貧困家計にとっては,最寄りの学校までの距 離が就学するか否かを決定する要因になる.特に社会 * * * 規範ないし安全上の懸念から,子供――なかでも女子 ――を自宅から遠くまで通学させるのが困難な場合に  世界中で,親も生徒も教育の力に信じがたい信頼を はそういえる 44.インドネシアでは,児童 1,000 人 置いている.あらゆる地域の人々が,教育は自分の子 ごとに学校を建設したおかげで,教育年数が平均 0.12 供たちのものも含め,人生を転換することができると 年増加した 45.しかし,通学可能性が最も重要とな いうことを理解している.世界中の貧しい農村地域に るのは,通学可能性の低さという視点から始める場合 おける学校教育の急拡大は,この要求を示している 58. である.その際には学校建設それ自体が大きな貢献を ほぼすべての親が,自分の子供が学校を修了してくれ する 46. ることを願っていると述べている――自分自身は就学  労働市場についてであろうが,あるいは結婚市場と したことのない親でさえそう願っている 59.過去 50 いう領域であろうが,主観的な収益率が,多くの場合, 年間には,教育の堅調な収益率に関して大きな期待が 貧しい親が進んで子供たちを学校に行かせるかどうか 生まれ,それが普遍的な就学に向かう力強い牽引力と を決定する 47.したがって,もし親が教育の収益率 なすべきことがたくさん残っている. なった.しかし, を過小評価するならば,教育に対する需要は低くなる この約束を成就するということは,就学率の格差に取 公算があろう 48.また,親は教育の収益率がレベル り組み,教育が学習につながるのを確実にするという によって異なるということを誤解している可能性があ ことを意味する.第 3 章で示す通り,学校教育の拡 る.仮に中等教育の収益率が初等教育のそれを大幅に 大はそれに見合う学習の向上につながっていない.今 上回ると信じているのであれば,子供全員を小学校に や万人のために学習を保証することに注意を振り向け 通わせるよりも,最も優秀な子供だけを中学校に行か なければならない. せることに集中するのは道理に適っているかもしれな い 49.極度の貧困に直面したり,あるいは学校の収 注 益率は低いと認識した場合には,貧困層はそもそも教 育に対する抱負を制限する可能性があろう 50. 1. UIS (2016). グロスの就学者には年齢が特定の教  自分の子供が学習しているかどうかに関する親の受 育水準にかかわる正式な年齢グループを超過する け止め方が,学校教育を続けさせるか否かの決定に影 生徒が含まれるため,同比率は 100%を上回る 響する.ほとんどの低所得国では,留年生,ないし級 ことがある. 友たちの年齢を数年上回っている生徒は,小学校修 2. Pritchett (2013). 了以前に退学する可能性が高い 51.フィリピンでは, 3. United Nations (2015). 子供の学習能力に関して親が抱く主観が,その子の就 4. Barro and Lee (2013). 学を継続させるか,それも働きに出すかを選ぶ際の重 5. Lee and Lee (2016) か ら の デ ー タ に 基 づ く 要な決定要因になっている 52.同様に,ブルキナファ WDR 2018 チームの試算 . ソの若者は知能テストで高い点数を取ると就学の可能 6. World Bank (2011b). 性が大幅に高まるが,もし兄弟がさらに高得点なら当 7. UNESCO (2016). 人が就学する可能性は著しく低下する 53. 8. UNESCO (2015).  入手可能な教育の質が低いと親が感じれば,そのこ 9. World Bank (2011a). とは学校教育に関する彼らの選択に影響する 54.学 10. World Bank (2017).使われたデータは 2010- 校の質に関する親の感じ方は多種多様な要因――学 15 年の間で入手可能な直近のもの. 校の物理的な状況から教員の時間厳守度に至るまでの 11. World Bank (2016a). 60 世界開発報告 2018 12. UNESCO (2015). UNICEF (2015). 13. UIS (2016). 52. Bacolod and Ranjan (2008). 14. UIS (2016). 53. Akresh 他 (2012). 15. World Bank (2016c). 54. Banerjee, Jacob, and Kremer (2000); Rivkin, 16. UNESCO (2016). Hanushek, and Kain (2005). 17. Education Commission (2016). 55. Alderman, Orazem, Paterno (2001); Andrabi, 18. UNESCO (2011). Das, and Khwaja (2008); Tooley and Dixon 19. UIS and UNESCO (2015). (2007). 20. UNESCO (2016). 56. Hanushek, Lavy, and Hitomi (2006). 21. UIS (2016). 57. Andrabi, Das, and Khwaja (2008); He and 22. UIS (2016). Giuliano (2017). 23. World Bank (2014). 58. Tooley and Dixon (2006). 24. López-Calva and Patrinos (2015). 59. Mukerji and Walton (2013). 25. Alderman, Orazem, Paterno (2001); Bailey and Dynarski (2011); Lincove (2015). 参考文献 26. Education Commission (2016). 27. Lanjouw and Ravallion (1999). Akresh, Richard, Emilie Bagby, Damien de Walque, and Harounan Kazianga. 2012. “Child Ability and Household 28. Kremer and Holla (2009); Orazem and King Human Capital Investment Decisions in Burkina Faso.” (2008). Economic Development and Cultural Change 61 (1): 157–86. Alderman, Harold, Peter F. Orazem, and Elizabeth M. Paterno. 29. 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L. Conel に基づく. 注:上図はライフコースにわたる主要な脳機能にかかわるシナプス発達を表示したもの.縮尺非適用. 生物学的に貧弱な発達が起こるリスクが高まり,こ ら職業への移行を改善することを目的とした介入策 のことはライフサイクルにわたって悪影響をもたら は,社会情緒的スキルを強調する場合に最も有効であ しかねない(第 5 章参照).しかしながら,より高次 ることが判明する公算があろう 11. の認知的および社会情緒的なスキルを育成するのに  授業戦略は生徒が学校内外の挑戦課題にどうアプ 最適な時期は,幼少期・思春期・成人期早期すべて ローチするかに深く影響し得る.脳は珍事にさらされ を通じて起こる 9.さらに,環境に適応し,学習し, た時に成長するので,探求と並んで,豊かな機会を学 新しいスキルを修得する脳の能力は生涯を通じて持 習に組み込めばより良い学習成果につながる公算が大 続する(つまり,図 S1.1 の経験依存型シナプス形成). きいであろう.最後に,激しいストレスや否定的な感 したがって,スキル開発と一緒に学習を持続するた 情の持続――危機や深刻な困窮などに関連したもの めには,環境的インプットへの投資は幼少期をはる で,さまざまなストレス要因が共存している場合など かに超えて長期にわたって必要とされる. ――は,情報を学習し,保持し,利用するという脳の  学習やスキルを改善するための介入策は,人生行路 能力を阻害する.ストレス要因に長時間にわたりさら の上で最も柔軟な脳の部分を重視すべきである.子供 されることは,生物系,とりわけ脳の発達にとっては の脳は,探求・遊び・面倒を見てくれている大人ない 有害であり,不利な状況にある子供たちが教室で才能 し仲間との相互作用を通じて新規の情報が入り込む際 を開花させるのを阻害するかもしれない(貧困の効果 に最も効率的である.この受容力のゆえに,就学前プ に関するスポットライト 2 を参照).したがって,子 ログラムは,遊びと相互作用を強調する発達向けの適 供たちをストレスから守る保護的要素(子供に対処法 切なプログラム構造を通じて基盤的なスキルを構築す を教える少なくとも 1 人の重要な親族からの子育て ることに集中すべきである 10.基盤的な認知スキル ケア)の入手可能性を高めるプログラムは,学校教育 は 10 歳を過ぎると柔軟性が低下するものの,社会情 だけでなく人生の成果全体も改善することができる . 緒的な発達に関連した領域には早期成人期に至るまで 高い柔軟性を維持するものもある.したがって,基盤 的スキルが弱い若者の社会的包摂だけでなく,学校か 学習の生物学 65 Shonkoff, Jack P., and Deborah A. 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Parker, Lawson. 2015. “Neural Network.” Graphic in Yudhijit Bhattacharjee, “Baby Brains: The First Year,” National Geographic, January. http://ngm.nationalgeographic.com/2015 /01/baby-brains/bhattacharjee-text. 67 学習危機の諸側面 3 ラビア・ヌラという北ナイジェリア・カノ州出身の 16 歳の少女は,ボコ・ハラムからの絶え間ない脅威にもかかわらず 学校に通っている.彼女は医師になることを決意している(Smith 2014).しかし,3700 万人のアフリカの子供たちは学 校でほとんど学習していないので,学校に通った子供たちは,就学したことのない子供たちと比べて大して裕福にはなら ないだろう(van Fleet 2012)  学校教育の世界的な拡大はもう 1 つの統計を隠し ができたのは 2016 年時点で 28%未満にとどまって ている:数百万人にとって,学校教育は十分な学習を いた 4.生徒の達成度に関して得られたデータが示す 生み出していない.基礎教育における学習成果は非常 ところでは,何百万人という子供たちにとって,極め に多くの状況下で,あまりに低く,開発途上諸国は学 て重要な低学年において学校教育はほとんど学習成果 習危機に直面しつつある.多くの低所得国では学習水 をもたらしていない 5. 準は絶対的な意味で低く,多くの中所得国では平均的  数百万の人々がさらなる学習のために必要な基礎的 な学習水準は高所得国のそれに大幅な後れを取ったま 能力を修得することなく,初等教育を終了している. まである.学習危機は特に貧困家計出身の子供たちに 2014 年の地域評価によると,西部・中央アフリカの 6 悪影響を及ぼしている:識字や数的思考といった基礎 年生のうちほぼ 58%は,学校教育を続けるのに十分な 的スキルを修得することなく,退学する可能性が極め 読解力と数的思考力を身に付けていない 6.同 (図 3.1) て高い.究極的には,学習危機は労働力におけるひど 様に,南・ (2007 年) 東アフリカの 6 年生に関する最新 いスキル不足につながるであろう. の入手可能な地域評価が示すところでは,読み書きの 能力が不十分な生徒は 37%,数学の能力が不十分な 生徒は 60%以上となっている(図 3.2)7.基礎的能力 あまりにも大勢に対して学習が行われていない のこのような欠如は,生徒の家計が貧しいほど系統的 南アフリカでは,12 歳児の 27%が 6 学年に就学し にひどくなっている.ホンジュラスでは最貧 20%層 ているものの,機能的には読み書きができなかった. 出身の 6 年生のうち半数は,ラテンアメリカ地域の ザンビアでは,その割合は 44%であった. 2013 年評価において,最低の読解力水準を示した. (Hungi 他 2010) 最富裕 20%層出身者の場合,それはわずか 7%であっ た . (図 3.3)  グローバルにみて,1 億 2,500 万人の子供たちは  パフォーマンスの悪い教育制度はみずからのカリ 最低でも4年間は就学しているのに,識字や数的思考 キュラム基準さえ達成していない(ボックス 3.1).国 の機能を修得していない 1.2012 年現在のマラウイ 際的評価におけるテストの得点は悩ましいほど低いだ とザンビアでは,89%以上の生徒が 2 学年の終わり けでなく,国内基準で生徒を評価しても類似のパター になっても単語 1 つさえ読むことができなかった 2. 「54 ンがみられる.2015 年のパキスタン都市部では, (最新のデータが収集された年) 2008 年 のガイアナで - 25」のような引き算ができたのは 3 年生の 5 分の 3, は,その割合は 3 学年開始時点で 20%にとどまって 農村部ではわずか 5 分の 2 にとどまった 8.51 カ国 いた 3.数的理解力に関しても同じような状況が現れ を横断的にみると,6 学年を修了した(しかし,それ てくる.インドの農村部では,3 年生で 2 桁の引き算 以上は進学していない)女子で 1 つの文章を読み切る 68 世界開発報告 2018 図 3.1 西部・中央アフリカのほとんどの 6 年生は読み書きと数学の能力が不十分である PASEC (2014) に基づく能力水準(科目・参加国別) a. 読解 b. 数学 ニジェール ニジェール チャド チャド トーゴ コートジボワール コンゴ コンゴ PACEC 参加国全体 カメルーン コートジボワール PASEC 参加国全体 カメルーン ベニン ベニン トーゴ ブルンジ セネガル ブルキナファソ ブルキナファソ セネガル ブルンジ 100 50 0 50 100 100 50 0 50 100 % % 能力無し 低度の能力 高度の能力 出所:PASEC (2015) と世界銀行 World Development Indicators (World Bank 2016c) からのデータに基づく WDR 2018 チーム.データ は http://bit.do/WDR2018-Fig_3-1. 注: 「能力無し」 PASEC の読解力テストに関して, は元の記号でレベル 0 – 2,「低度の能力」はレベル 3,「高度の能力」はレベル 4 を指す. PASEC の数学テストに関して, 「能力無し」は元の記号でレベル 0 – 1,「低度の能力」はレベル 2,「高度の能力」はレベル 3 を指す. 図 3.2 南・東アフリカのほとんどの 6 年生は数学の能力が不十分で,数カ国では読み書きの点数も低い SACMEQ (2007) に基づく能力水準(科目・参加国別) a. 読解 b. 数学 マラウイ ザンビア ザンビア マラウイ レソト ナミビア 南アフリカ レソト ウガンダ ウガンダ モザンビーク モザンビーク ナミビア 南アフリカ ジンバブエ SACMEQ 参加国全体 SACMEQ 参加国全体 ジンバブエ ボツワナ ボツワナ セイシェル スワジランド モーリシャス タンザニア ケニア セイシェル タンザニア ケニア スワジランド モーリシャス 100 50 0 50 100 100 50 0 50 100 % % 能力無し 低度の能力 高度の能力 出所:SACMEQ (2007) と世界銀行 World Development Indicators (World Bank 2016c) からのデータに基づく WDR 2018 チーム.デー タは http://bit.do/WDR2018-Fig_3-2. 注:「能力無し」は元の SACMEQ 記号でレベル 1 – 3,「低度の能力」はレベル 4,「高度の能力」はレベル 5 – 8 を指す. ことができたのは,わずかおよそ半数にすぎない 9. 育を同じように重視する体制に移行し,優秀な学習成 このような女子たちが,学校教育を受けた年月から経 果を上げた.この戦略の成功が示しているのは,学 済的・社会的に十分な見返りを享受していると想像す 校教育を急拡大させる一方で,良質な教育を確保する るのは困難である. ことは可能であるということだ.重要な構成要素は貧  このような学習水準の低さは急拡大した教育の不可 困層や不遇層のニーズを継続して強調し続けることで 避的な副産物というわけではない.韓国は 1950 年代 ある 10.ベトナムのより最近の経験はその教訓を補 に大多数に良質な初等教育を保証することに焦点を当 強している:ベトナムも,不利な境遇にある生徒が良 てた.その後で,中等教育,さらに最終的には高等教 質な教育を相対的に公平に受けるのを保証することに 3 学習危機の諸側面 69 図 3.3 ラテンアメリカでは,貧しい子供たちの学習成果は著しく低い TERCE (2013) に基づく 6 年生の能力水準(能力別:最貧対最富裕 20%層の生徒別) a. 読解 b. 数学 貧困層 貧困層 パラグアイ ドミニカ共和国 富裕層 富裕層 貧困層 貧困層 ドミニカ共和国 富裕層 パラグアイ 富裕層 貧困層 貧困層 ホンジュラス 富裕層 ニカラグア 富裕層 貧困層 貧困層 パナマ 富裕層 パナマ 富裕層 貧困層 貧困層 ニカラグア 富裕層 ホンジュラス 富裕層 貧困層 貧困層 ペルー 富裕層 グアテマラ 富裕層 貧困層 貧困層 エクアドル 富裕層 エクアドル 富裕層 貧困層 貧困層 グアテマラ 富裕層 ペルー 富裕層 貧困層 貧困層 アルゼンチン 富裕層 コロンビア 富裕層 貧困層 貧困層 ブラジル 富裕層 アルゼンチン 富裕層 貧困層 貧困層 メキシコ 富裕層 ブラジル 富裕層 貧困層 貧困層 ウルグアイ 富裕層 コスタリカ 富裕層 貧困層 貧困層 コロンビア 富裕層 ウルグアイ 富裕層 貧困層 貧困層 コスタリカ 富裕層 メキシコ 富裕層 貧困層 貧困層 チリ 富裕層 チリ 富裕層 100 50 0 50 100 100 50 0 50 100 % % 能力無し 低度の能力 高度の能力 出所:TERCE 2013 (UNESCO 2013) からのデータに基づく WDR 2018 チーム.データは http://bit.do/WDR2018-Fig_3-3. 注:社会経済的な 20%層の定義は各国ベース.「能力無し」は元の記号でレベル 1,「低度の能力」はレベル 2 – 3,「高度の能力」はレベ ル 4 を指す. よって,急拡大の時期にも教育の質を維持してきてい ビアは東ヨーロッパ数カ国を凌駕している.ベトナム る 11. は東南アジアでは特異的に優れた実績をあげている.  中所得国においてさえ,何百万人もの生徒が後れを 生徒の学習について改善をもたらす制度全体にわたる 取りつつある.ブラジルでは,国際的に比較可能な 要因を明確に取り出すことは常に可能というわけでは 評価が明らかにしたところでは,15 歳に達しつつあ ないものの,政策的に教育の質を重視することが重要 る若者の 4 分の 3 以上が,PISA テストで最低水準の なようである.例えば,ベトナムの好成績にとって重 能力さえ示せていない 12.同様にパラグアイでも,3 要な要因になってきているのは,国内における学校の 分の 1 の生徒は 6 学年までに基礎的な読解力(意味を 質の収斂である.質にかかわる国の基準を満たす学校 読み取ること)しか修得していない 13.したがって, の割合は過去 25 年間にわたって着実に上昇してきて このような生徒は経済や社会に参加する準備ができて いる 16. いないといえる 14.このような数字はジェンダーに  一部の中所得国における生徒の達成度の低さ――他 基づいた興味深い差異も示している(ボックス 3.2). の経済的な競争相手国との比較でみて――は,それら  しかし,うまくやっている国もなかにはある.アル の国が自らの期待に応えることに失敗しているという バニア,ペルー,およびポルトガルは同じような所得 ことを示唆する.読解力と数的思考力に関する主導的な 水準の諸国との比較で,平均的な生徒の達成度の改善 国際評価によると,低所得国の平均的な生徒の成績は において素晴らしい進展をみせてきている 15.ラト OECD 諸国の 95%の生徒よりも悪い――これが意味す 70 世界開発報告 2018 ボックス 3.1 2 学年末までに読むことができない人は追い付くのに苦労する  2 学年末における識字能力は 2 つの理由から長期にわたって  第 2 に,学校は,苦闘している生徒に追い付くための機会を 影響力をもつ.第 1 に,学習は累積的なものだからだ.世界中 提供していないからである.多種多様な状況下で,授業のペー の教育制度では,生徒が読解力など基盤的なスキルを 1 学年な スは生徒の学習スピードではなく,過度に野心的なカリキュラ いし 2 学年までに修得することが期待されている.生徒は 3 学 ムに授業で対応することの必要性によって決定されている c.こ 年までに,自身のカリキュラムに到達するためには,読むことが れは教員には取り残されている生徒を無視するしか選択肢がな できるようになっている必要がある.このような基盤的スキルを い,ということを意味する.例えば,インドとケニアでは,カリ 早くに修得した生徒は有利な立場にある:低学年で修得したス キュラムはエリート層向けに設計されている d.教員や教科書は, (ス キルと後の学校の成績との間には強い正の相関関係がある 苦労している生徒を助けるのにほとんど役立たない高等な話題 ポットライト 1 参照)a.3 学年までに読むことができない児童は に焦点を当てている e.このような生徒はさらに後れを取り―― 後れを取り,追い付くのに苦労するだろう.あるいは,おそらく 最終的には後れがあまりに大きくて,まったく何の学習も行われ 追い付けないだろう b. ないという事態になってしまう f. 出所:WDR 2018 チーム. a. Glick and Sahn (2010). b. Muralidharan and Zieleniak (2013). c. Pritchett and Beatty (2012). d. Banerjee and Duflo (2012); Glewwe, Kremer, and Moulin (2009). e. Pritchett and Beatty (2012). f. Pritchett and Beatty (2012). るのは,その生徒は富裕国ならクラスのなかで補習教 識字力は基本的な文章の理解に限定されていて,多種 育の対象者として選定されるということである 17.コ 多様な文章素材からの情報を統合・評価・解釈するこ ロンビア,インドネシア,およびペルーでは,PISA とはできない 19.これは高所得国の平均とは (図 3.5) の数学テストで下から 75 番目の 1%層(パーセンタ 対照的である:そのような国ではレベル 1 あるいは イル)に入る生徒の成績は,OECD 平均では 25 番目 それ未満は生産年齢人口のわずか 15%である.識字 の 1% 層の成績を辛うじて上回る程度にとどまる.ア 能力が低い人たちは,労働市場・追加的な教育・実地 ルジェリア,ドミニカ共和国,コソボおよびチュニジ 訓練に向けた準備が不十分である.急速な近代化が進 アでは,それは OECD 平均の 25 番目の 1%層を下 展している労働市場では,ほとんどの高質な仕事は― (図 3.4) 回っている .ラテンアメリカ諸国と OECD ―職業訓練でさえ――最低限の習熟度を超える読解力 諸国の間における PISA 平均点の乖離は,完全な 2 年 を必要としている 20. –  間相当分の数学教育に等しい.2003  15 年における  学校を卒業して以降も長期にわたって,スキルが低 PISA 平均点の改善ペースに基づけば,チュニジアが いということはキャリア機会――および所得――を阻 数学で OECD 平均値に届くには 180 年以上を要する 害し続ける.基盤的スキルの不足は労働市場に新規参 だろう.グローバルな経済活動領域のなかで,みずか 入しつつある労働者の出発点だけでなく,その成長軌 らを重要なプレーヤーとして位置付けようとしている 道にも悪影響を及ぼす.さらなるスキル蓄積のために 中所得国にとって,これは特に問題である. はしっかりした基盤的スキルが必須である.世界全体  学校教育と労働力スキルとの対応関係は国ごとに劇 で,多くの生徒が高次の認知的・技術的・専門的スキ 的に異なる.例えば,コロンビアの生産年齢人口が基 ルの開発を下支えする重要な認知スキルを修得するこ 礎的な読解力に習熟するのは前期中等レベルにいる時 となく,学校を卒業している.このようなスキル不足 であるが,ボリビアの住人はそれと同じ習熟度に近い があると,さらなる教育ないし訓練のための機会が制 水準を達成するにはさらに 6 年間を必要とする.同 限されてしまう.なぜならば,失われたスキルを補填 –  様に,ナイジェリアでは 18  37 歳の小学校卒業者の する能力は時とともに減衰するからだ:セカンド・チャ なかで識字者はわずか 19%,タンザニアでは 80%と ンスのための成人教育プログラムの成功は限定的であ なっている 18. り,実地訓練は通常は教育やスキルの水準が高い労働  「教育のある」成人労働者の大部分が実質的には低ス 者を優遇する 21.その結果は次の通りであろう.す キル者だという国もある.ガーナでは生産年齢人口の なわち,基盤的スキルが不十分なまま学校を卒業して 約 80%,ケニアでは同 60%強がわずかレベル 1 な しまった生徒は,生涯にわたる所得の増加が比較的平 いしそれ未満の識字力しかもっていない――すなわち 坦な将来性のない仕事に就くしかない.この状況は, 3 学習危機の諸側面 71 ボックス 3.2 ジェンダーに基づく学習格差は科目次第  国際基準となっているテストの結果によると,男子は平均点で TERCE,アメリカの SAT,あるいは一連の各国の評価でみても, 女子に後れを取っている.PISA に参加した 72 カ国中 6 カ国を ほとんどの諸国におけるテストの総合平均で女子は男子を凌駕 除くすべての国で,15 歳の男子はテストを受けた 3 科目の総合 する成績を収めている b. 平均で同じ年齢の女子を下回る確率が高かった a.UNESCO の 図 B3.2.1 すべての諸国で女子は読解力で男子を上回る好成績を収めているが,数学・科学では典型的には男子の方が好成績 各国における中位数の男女格差の分布 数学と科学の成 績は,男子が女 すべての国および経済レ 子をわずかに上 ベ ル にお いて, 女 子 の ジェンダー格差の密度 回っている 読解力は男子をかなり上 回っている ‒30 ‒20 ‒10 0 10 20 30 40 50 60 70 ジェンダー格差(女子-男子) 数学 科学 読解 出所:2015 年に収集された PISA データ(OECD 2016a)に基づく WDR 2018 チーム.データは http://bit.do/WDR 2018-Fig_B3-2-1. 注:分布は PISA 2015 に参加した 72 カ国のデータに基づく.  女子の平均的な成績が高いというこのような事実は,科目別 子と比べて数学でやや良い,読解力でやや悪い成績を示し始め (図 B3.2.1) にみた時に存在する重要な相違を覆い隠している . ている.このような科目固有のジェンダー格差は中学校を通じて 女子は読み書きでは一貫して高得点を獲得している.数学・科 拡大し続ける d. 学ではほとんどの諸国で男子の方が好成績を収める傾向にある.  しかし,数学・科学における男子優位の格差は縮小傾向にあ これは実施された PASEC,SACNEQ,その他のテストの結果で るかもしれない.2015 年の TIMSS 評価によると結果は従来より みたものである c. も混合的になっている:テストを実施した国々の約半数では,ジェ  男女とも数学と読解力の両方で,幼稚園から 2 学年までは等 ンダー別の成績には統計的に有意な相違がみられなかった e. しい水準の成績を示しているが,3 学年以降になると男子は女 出所:WDR 2018 チーム. a. OECD (2015). b. TERCE: UNESCO (2016); SAT: Fryer and Levitt (2010); 各国評価 : Bharadwaji 他 (2015); Cornwell, Mustard, and Van Parys (2013); Uwezo (2014, 2015). c. Dickerson, McIntosh, and Valente (2015). d. Fryer and Levitt (2010); Singh (2016); UNESCO (2016). e. Mullis, Martin and Loveless (2016). 72 世界開発報告 2018 図 3.4 学習の成果は国ごとおよび経済状態ごとに大差がある――数カ国では,PISA 受験国の下から 75 番目の 1% 層の成績が OECD 平均の 25 番目の 1% 層を下回っている 2015 年の PISA 評価で下から 25 番目・50 番目・75 番目の 1% 層(パーセンタイル)の成績(参加した非 OECD 諸国と主要 OECD 諸国) a. 読解 b. 数学 パーセンタイル パーセンタイル 25番目 50番目 75番目 25番目 50 番目 75番目 OECD 平均 OECD 平均 シンガポール シンガポール フィンランド 香港 香港 台湾 韓国 マカオ マカオ 中国 ポーランド 韓国 台湾 フィンランド 中国 ポーランド ロシア ロシア ラトビア ベトナム クロアチア マルタ ベトナム ラトビア リトアニア リトアニア チリ クロアチア マルタ カザフスタン キプロス マレーシア ブルガリア ルーマニア ウルグアイ ブルガリア マレーシア キプロス ルーマニア アラブ首長国連邦 アラブ首長国連邦 チリ トルコ モルドバ トリニダード・トバゴ トルコ アルゼンチン モンテネグロ モンテネグロ ウルグアイ コスタリカ トリニダード/トバゴ コロンビア アルバニア カザフスタン タイ メキシコ メキシコ モルドバ アルゼンチン ヨルダン ジョージア タイ コスタリカ アルバニア カタール ブラジル レバノン ジョージア コロンビア カタール ペルー ペルー ヨルダン インドネシア インドネシア チュニジア ブラジル ドミニカ共和国 マケドニア マケドニア チュニジア コソボ コソボ アルジェリア アルジェリア レバノン ドミニカ共和国 300 400 500 600 300 400 500 600 得点 得点 非 OECD OECD OECD 四分位数範囲 出所:2015 年に収集された PISA からのデータに基づく WDR 2018 チーム.データは http://bit.do/WDR2018-Fig_3-4. 注:PISA 2015 は習熟度の基準水準を読解について 407 点,数学について 420 点と規定している.China (B-S-J-G) =中国(北京・上海・ 江蘇・広東) . 技術がスキル需要に影響するようになるなかで,ます ている.その含意はすでに甚大ではあるが,仕事が肉 ます悪くなる一方の状況といえよう(スポットライト 体的なものから,より認知的ないし社会情緒的なもの 5 参照). にシフトし続けている状況下で,より鋭く感じられる  スキルの指標が入手可能な 41 カ国に基づく推定値 ようになるだろう.世界開発目標達成に向けた進展は, は,世界全体で生産年齢人口 –  (15  64 歳)46 億人のう この問題の諸側面・由来・含意が認識されないままで ち 21 億人は極めて重要な基盤的スキルを欠いている は,限定的なものにとどまるだろう. ことを示唆している 22.若い成人層 –  (15  24 歳)に限 定すれば,その数は 4 億 1,800 万人である.このよ 貧しい子供たちの学習は最少, うなスキル不足はすべての国々に存在するものの,そ このことで最大の痛手をこうむるのは彼ら自身である の規模は途上国の方が大きく(図 3.6),東アジア・太 平洋では 9,200 万人,南アジアでは 1 億 2,000 万人,  学習不足は貧困層において最大である.ほぼすべて ラテンアメリカ・カリブでは 4,700 万人と推定され の諸国で,生徒の家庭環境――親の教育,社会経済 3 学習危機の諸側面 73 図 3.5 中所得国では識字能力が高所得国よりも低い傾向に かになったことによれば,格差は 2 年生以降毎年拡 ある 大している 28. 基礎的識字能力の最低水準との対比でみた生産年齢人口の割合 (2011-14 年)  裕福な生徒と貧しい生徒の間にある学習ギャップ は,単に家計特性の問題であろうか? 最近の証拠は 中所得国 ガーナ そうではないことを示唆している.パキスタンでは, ケニヤ ボリビア 学習における貧富間格差は学校の善悪間格差よりも小 トルコ コロンビア さい.英語のテストについて,高成績対低成績公立校 ベトナム 間の学習格差は,家庭環境の貧富間格差の 24 倍にも ジョージア セルビア 達している――これは観察される児童個々人のレベル アルメニア ウクライナ 相違を制御した基準における差異である 29.2009 年 ロシア連邦 の PISA の結果にかかわる分析は,「パフォーマンス 高所得国 チリ が最善の学校制度においては[カナダ・フィンランド・ イスラエル イタリア 香港・日本・韓国・上海など],特権的なグループ出 スペイン ギリシャ 身の生徒だけでなく,すべての生徒に良質な教育をう シンガポール まく提供している」ことを示している 30. スロベニア フランス ポーランド アメリカ ドイツ 何が学習危機をもたらしているのか? アイルランド イギリス カナダ  学習危機の近似的 な決定要因を系統 (ないし直接的) 立てるために,簡単な枠組みを使うことができる 31. デンマーク 高所得国中央値 75 50 25 0 25 50 75 100 近似的な決定要因は学習成果に最も直接的に結び付い % ているもので,それ自体がより深い決定要因の結果で 識字能力習熟度 低 中–高 ある.枠組みでは 4 つの近似的な決定要因が特定さ 出所:2011 – 14 年に収集された PIAAC (OECD 2016b, 2016c) と れている:学習者の準備,教員のスキルと意欲,関連 STEP Skills Measurement Program, 2011-14 (http://microdata. worldbank.org/index.php/catalog/step/about) か ら の デ ー タ する投入の有効性,これらを統合する学校の運営・統 に基づく WDR 2018 チーム.データは http://bit.do/WDR2018- 治(図 3.8).このアプローチは学習プロセスを決定す Fig_3-5. る広範な利害関係者と要因を体系的に統合するための 注:データは国別に入手可能な最新年のもの.PIAAC は国レベ ルで成人を代表する.STEP は 15 – 64 歳の都市人口を代表する. 簡単なツールを提供する . (図 3.8) 習熟度に関して「低」は評価でレベル 1 以下と定義され,基礎的 な文章理解に限定されていることを指す. 「中 – 高」はレベル 2 子供たちは学ぶ準備をして就学してはいない 以上と定義され,多種多様な文章素材からの情報を統合・評価・ 解釈する能力を指す.  貧しい環境出身の子供たちは,就学するはるか以前 から学習不足を抱えている.このような不足は,子供 的な地位,家庭の状況(本の利用可能性など)などを たちを正式な教育の要求に十分応える準備ができてい 含む――が,学習成果にかかわる最大の決定要因とな ないままにする.子供時代の早期に基礎的スキルを修 り続けている 23.フランスでは,2015 年の (図 3.7) 得することが学習にとっては必須であり,しっかりし PISA テストで科学の成績をみると,最富裕層と最貧 た早期児童発達は子供たちをより高いレベルの学習軌 層の生徒の格差はちょうど 115 点であった 24.ハン 道に乗せることができる(スポットライト 1).しかし, ガリーではその差は 202 点であった 25.PISA にお 貧しい環境出身の子供たちにとって,逆境は生まれる ける 100 点の差というのはほぼ 3 年相当分の学校教 前から累積し始めている.慢性的な栄養失調,物質的 育に等しい 26. 困窮の累積的影響,親の支援不足,予測不可能で混沌  貧しい生徒と裕福な生徒の学習格差は,生徒が高 とした,ないし暴力的な環境(貧困と関連している)な 学年になるにつれて拡大する.南アフリカでは,最 ど,これらすべてが,早期児童発達期の学習を阻害し 貧家計出身の 3 年生の学習は最富裕家計出身の同学 ている(スポットライト 2 参照)32. 年生に,3 年間相当分だけ後れを取っている.この  認知・言語・早期における識字の発達における社会 格差は 9 年生までに 4 年間相当の学習にまで拡大す 経済的な格差は,学校での成果を決定する一因になっ る 27.インドのアンドラ・プラデシュ州は,同一の ている.言語と認知の格差は子供が 1 歳になる前に 生徒集団に対して毎年テストを実施し,それで明ら はっきりしてくる 33.コンゴ民主共和国からアメリ 74 世界開発報告 2018 図 3.6 開発途上世界の多くの地域では読解力の習熟度が低い といった学校の成績にとって極めて重要な他 推定人口(15 – 24 歳)(国グループ・読解力の習熟度別) の決定要因において明らかである.社会情緒 世界人口に占める比率 (%) 的スキルにはチームワークや意欲,自信など 0 20 40 60 80 100 が含まれる一方,実行機能(社会情緒的スキ 100 ルと認知スキルの両方に依存する)には,と りわけ,立案・体系化・実施・複数の仕事を 各々の国グループ人口 75 に占める比率 同時に行う能力などが含まれる 36.このよ 50 うな発達にかかわる諸側面に関する証拠は測 定が困難なことから,より限定的である.と (%) 25 はいえ,貧しい子供たちについては作業記憶 (実行する機能) と持続的注意 にかかわる格差 0 は明らかで,それは生後 6 カ月に発生して就 東アジア・太平洋 南アジア 高所得国 学前の時期までを通じて継続する 37.非常 ヨーロッパ・ 中東・ サハラ以南 中央アジア 北アフリカ アフリカ に貧しいマダガスカルでさえ,母親の教育程 ラテンアメリカ・ 度や家計の関与を考慮に入れても,富の影響 カリブ が明らかで,格差は年齢とともに拡大してい 読解力の習熟度 中–高 低 る 38.社会情緒的な発達にも富の影響がみ 出所:Larson and Valerio (2017) からのデータに基づく WDR 2018 チーム. –  られる.幅広い国々における 3  4 歳児の 3 データは http://bit.do/WDR2018-Fig_3-6. 人に 1 人は,社会情緒的な発達――攻撃的な 注:モデルは 41 カ国に基づき PIAAC-STEP の尺度で得点がレベル 1 以下の 生産年齢人口の比率を予測した上で,それを世界人口に投影. 行動をコントロールする,注意散漫を回避す る,仲間と協調するなどといった能力――の カに至るまで広範囲にわたる国々で 34,貧困家計の 基本的で重要な段階を満たしていない 39. 子供たちは 3 歳までに富裕家計の仲間に後れを取る  学習は累積的で, (スポッ スキルがスキルを生むため ようになり,その格差は年齢が上がるにつれて拡大し トライト 1 参照),幼い時に出現してくる認知スキル ている(図 3.9).早期における言語や認知にかかわる や社会情緒スキルの発達格差は,時とともに悪化する. 能力の格差は非常に大きな不安を抱かせる.というの 学習格差も同じである.発達の基盤が脆弱で,就学前 は,それは学校時代を通じて早期成人期に至るまでの スキルが低いということは,不遇な子供たちは就学時 成果を決定付ける重要な要因だからだ 35. に遅れを取っており,学習機会から十分な恩恵を享受  基礎が不十分なことは,社会情緒や実行の機能など する準備ができていないということを意味する.この 図 3.7 家庭の社会経済的な地位は生徒の PISA 平均点に大きく影響する 69 カ国における PISA 2015 の点数の分布(社会経済的地位でみて最低位 20% 層と最上位 20% 層の生徒,科目別) a. 読解 b. 数学 c. 科学 137 点= 120 点= 143 点= ~3.6 年 ~4.3 年 ~4.1 年 点数の密度 点数の密度 点数の密度 200 300 400 500 600 700 200 300 400 500 600 700 200 300 400 500 600 700 点数 点数 点数 社会経済的地位が低い 社会経済的な地位が高い 出所:2015 年にまとめられた PISA からのデータに基づく WDR 2018 チーム.データは http://bit.do/WDR2018- Fig_3-7. 注:この分析では 1 年間の教育は PISA テストで約 33 点に等しいと想定されており,格差は各科目についてトップ 20%層とボトム 20%層の最頻値の間の相違として試算されている. 3 学習危機の諸側面 75 ような子供たちは大きくなるのに伴って,低い学習軌 図 3.8 学習の直接的な決定要因 道から脱却するのがますますむずかしくなる. 教員は往々にして必要とされるスキルと意欲を欠いている  教員は生徒の学習にとって最も重要な決定要因であ 学 習 員 る.推定によると,アメリカでは生徒は良い先生に恵 教 者 まれると,1 年間で 1.5 学年相当以上の進歩を示すが, 悪い先生だと 0.5 学年相当しか進歩しない 40.エク アドルの幼稚園を調べたところ,言葉・算数・実行機 能にかかわる学習成果の相違は,教員の行動や指導と 学習 の間に強い相関関係を有している 41.学校レベルの 要因で,生徒の達成度にこれほど大きなインパクトを もつものは他にはなかった 42.  しかし,低所得国では良質の教員は供給不足にあ 学 入 運 る 43.サハラ以南アフリカでは中等教育を修了して 校 営 投 校 学 いるのは人口の 25% 以下である 44.したがって要す るに,拡大する教員需要を満たすのに十分な数の有資 格候補者がいないのである.一部の諸国では,教員養 成大学は十分な教員供給を確保するために,入学要件 出所:WDR 2018 チーム. を引き下げなければならなくなっている.このような 大学は小学校教員の需要を満たすために,訓練生を 2 に,前者の得点はほぼすべての諸国で各国の平均より 年間ないしそれより短期間のプログラムで修了させて も低かった 46.教員は必ずしも必要とされる授業ス いる 45.ラテンアメリカでは,教師という職業に就 キルを有していない公算がある.サハラ以南アフリカ こうとしている候補者は,高等教育の学生グループと 6 カ国における教室の観察から,公立小学校で生徒の 比べて学問的に劣っていることを示す証拠もある.教 能力を評価したり,進歩を評価したりできる教員はほ 員という職業に関心があると自己申告した 15 歳児の とんどいないことがわかった.また,良いとされてい PISA 数学の点数は,当該地域のすべての国で工学に る授業において典型的に連想される慣行を取り入れて 関心があるとした生徒よりもずっと低かった.さら いる教員はわずかであった 47. 図 3.9 認知能力の社会経済的な格差は,就学前でさえ,年齢とともに拡大する アルファベット 10 文字を認識できる 3 – 5 歳児の割合(富の 5 分位層別,主要国) a. 中央アフリカ共和国 b. カザフスタン c. チュニジア 100 100 100 80 80 80 60 60 60 % % % 40 40 40 20 20 20 0 0 0 3 3.5 4 4.5 5 3 3.5 4 4.5 5 3 3.5 4 4.5 5 年齢(年) 年齢(年) 年齢(年) 最富裕 20%層 最貧 20%層 95%信頼区間 95%信頼区間 出所:Multiple Indicator Cluster Surveys (http://mics.unicef.org) からのデータに基づく WDR 2018 チーム.中央アフリカ共和国は 2010 年, カザフスタンは 2010 – 11 年,チュニジアは 2012 年のデータ.データは http://bit.do/WDR2018-Fig_3-9. 76 世界開発報告 2018 表 3.1 知識評価の成績が最低基準に達している教員はほとんどいない 4 年生の内容に関するテストで 80%以上できた教員の割合(%) ケニア モザンビーク ナイジェ リア タンザニア トーゴ ウガンダ 科目 平均 (2012) (2014) (2013)a (2014) (2013) (2013) 生徒の国語相当 61 66 77 24 41 54 90 生徒の算数相当 56 82 26 31 62 24 55 出所:Bold 他 (2017). a. ナイジェリアの 4 州に基づくデータ.  その結果,教員は自分が教えることになっている概 以下である 52.教員の無断欠勤と授業時間の少なさ 念に十分には習熟していないことがしばしばである. ――加えて,非公式な休校や生徒の無断欠席といった サハラ以南アフリカ数カ国では,平均的な教員の読 他の要因も一緒になって――は,エチオピア,ガーナ, 解力テストの成績は最優秀 6 年生とさほど変わらな そしてグアテマラでは,総割当時間数のうち授業がな い 48.同地域の 6 カ国を通じて,小学校教師の 40% されているのはわずかおよそ 3 分の 1 でしかないこ は生徒よりも知識不足である 49.インドのビ (表 3.1) とを意味している 53.ラテンアメリカの中所得国で ハール州では,3 桁の数を 1 桁の数で割り算する問題 も,授業割当時間数の約 20%が失われており,これ を正しい手順で解くことができた公立学校教員はわず は 1 週間当たり 1 日分の授業時間に相当する 54.こ か 10.5%にとどまっていた 50. のような授業時間の損失には多くの理由があり,それ  多くの開発途上国は,授業時間が相当に失われてい には訓練が不十分なことや他の雑務が多いことが含ま (図 3.10) ることに悩まされている .6 カ国で小学校 仕方がないと正当化する教員もなかにはいる れ, (ボッ を不意に訪問してみたところ,典型的な授業日に教員 クス 3.3).しかし,理由がどうであれ,授業時間の のほぼ 5 人中 1 人が欠勤していた 51.出勤していて 損失は生徒の学習を削減する. も,授業をしていない教員もいた.サハラ以南アフリ  この問題は特に心配である.というのは,国家の教 カ 7 カ国では,生徒は 1 日当たり約 2.5 時間しか授 育予算の大半が教員給与にあてられているからだ.ラ 業を受けておらず,これは予定されている時間の半分 テンアメリカ・カリブでは,教員給与は当該地域の 図 3.10 多くの正式な授業時間が失われている 学校教育において教員が授業に関して実施予定として正式に割り当てられている総時間数を基準に,教室にいる, あるいは実際に授業を実施している時間数の比率(%) 100 80 60 % 40 20 0 ク ト ア ア ア ア ア ア ナ コ ン ン ス ル コ ル ゴ ル ダ ト ) プ リ ー ッ ノ メ オ ジ ジ ビ ニ ニ ン ー ー カ ブ ジ ガ 州 ェ ジ ロ バ ビ エ ラ ニ ボ ン ガ ケ ン ラ ザ ガ ス ネ ジ ー エ モ イ ン ュ ウ レ ザ ン ナ ブ ガ ン セ イ チ ザ カ タ ダ ナ モ マ ル ペ ( 教員が次のことをする時間の比率 授業実施予定 教室にいる 実際に授業を実施 出所:以下に基づく WDR 2018 チーム:Abadzi (2009)―ブラジル (Pernambucco 州) ,ガーナ,モロッコ,チュ ニジア ; Benveniste, Marshall, and Araujo (2008)―カンボジア ; Benveniste, Marshall, and Santibañez (2007)―ラ オス ; Millot and Lane (2002)―エジプト,レバノン,イエメン ; World Bank (2016a)―マダガスカル ; World Bank (2016b)―ザンビア ; 世界銀行の Service Delivery Indicators, 2012-13 (http://www.worldbank.org/sdi)―ケニア, モザンビーク,ナイジェリア,セネガル,タンザニア,トーゴ,ウガンダ.データは,http://bit.do/WDR 2018- Fig_3-10. 注:ブラジル,カンボジア,ガーナ,ラオス,セネガル,タンザニア,チュニジアは公立学校のデータ.それ以 外の諸国は公立・私立両方の学校のデータ. 3 学習危機の諸側面 77 ボックス 3.3 教員は自分たちの努力不足は正当化されると考えているのかもしれない  多種多様な諸国の教員は特定種類のサービス提供について つの基本的な側面について,教員自身の考え方を検討してみよ は,その格差を正当化している.教員パフォーマンスに関する 2 (図 B3.3.1) う.これは 2017 年に実施された教員調査に基づく . 図 B3.3.1 自分たちの努力とその効果に関する教員の考え a. 教員は多くの場合に欠勤は許容されると b. 教員はしばしば貧しい子供の学習にほとんど 考えている インパクトを与えていないと考えている 100 100 賛成している教員の比率 賛成している教員の比率 80 80 図の下にある所説に 図の下にある所説に 60 60 40 40 20 20 (%) (%) 0 0 ア ア ン ン ン ン ン ン ー ー ル ル ダ ル ル ダ タ タ タ タ シ シ チ チ ン ン マ マ ガ バ ガ バ ス ス ス ス ネ ネ ガ ガ ン ン ン ン ネ ネ ジ ジ キ キ キ キ ウ ウ ゼ ド ャ ゼ ャ ド ン ン セ セ ミ ミ ン ン ジ ジ パ パ ル ル ザ ザ イ イ タ タ ア ア もし以下に該当するなら教員の欠勤は許容される もし親が以下に該当するなら教員ができることはほとんどない 担当カリキュラムを修了している 必要な教育を受けていない 生徒にするべき課題を与えている 多くの個人的・金銭的な問題を抱えている コミュニティのために何か有益なことをしている 注:回答は相互に排他的ではない.データは公立校のもの.ただし,セネガルは公私立校の両方,ウガンダは私立校のみ. 出所:Sabarwal and Abu-Jawdeh (2017).データは http://bit.do/WDR 2018-Fig_B3-3-1. GDP の約 4%に相当している 55.教職員報酬が教育 提供を行うのを阻害している 59.たとえ必要な自立 に対する公共支出の 80%を占めている国もなかには 性が存在していても,それだけでは十分ではない.学 (図 3.11) ある .もし公立小学校で教員の 5 人に 1 人 校は提供されている自立性を実行しないという選択を が欠勤しているなら,途上国は膨大な財源を浪費して するかもしれず,あるいは自立性を活用する意志や能 いることになる. 力がないかもしれない 60.たとえば,ウガンダで行  インドの 1,300 もの村落に関する最近のデータに われた調査では,学校運営委員会構成員のなかで委 よると,不意の訪問の際にはほぼ 24%の教員が不在 員会の手引書を読んだと報告したのはわずか 57% で であった.このことに関連する費用は年間ベースで あったことが明らかになった 61.インドのウッタル・ 15 億ドルと推定される 56.生徒と教員の接触時間を プラデーシュ州では,街の教育委員会構成員の四分 増やすには,学校におけるこのような無断欠勤を削減 の一は,自らが構成員であることを認識していなかっ する方が,追加的な教員を採用するよりも 10 倍以上 た 62. も費用効果的であろう. 学校への投入は後れを取っている 学校運営スキルが低い  多くの途上国では,投入の拡大は就学者の爆発的な  学校の有効な運営は学校レベルにおける意思決定の 増加に追い付いていない.政府は未曽有のペースで教 能力と自律性に依存しているが,それは往々にして欠 室を建設し,教員を採用してきている.しかし,この 如している.運営の質の向上 57 と学校のリーダーシッ ような努力は就学者の増加に追い付いていないようで プの改善は,教育成果の改善と関連がある 58.にも あり,1 人当たりでみると投入財の有効性の低下につ かかわらず,多くの途上国では有効な学校運営が行わ ながっている.マラウイでは 2008 年から 15 年にか れていない(図 3.12).さらに,自主性を有していな けて,小学校の総計の就学率が 131%から 146%に いことは,校長あるいは学校運営委員会がサービスの 上昇して,1 クラス当たりの生徒数は 85 人から 126 78 世界開発報告 2018 図 3.11 教職員報酬は公教育向けに利用可能な財源のなかで最大のシェアを占めている 教職員報酬が公教育向け総支出に占める比率(国・所得グループ別) 100 80 出 所:UNESCO Institute 60 for Statistics (UIS 2017) に基づく WDR 2018 チー % 40 ム.データは http://bit. do/WDR 2018-Fig_3-11. 注:上図は小中学校レ 20 ベルについて支出デー タが入手可能な人口 50 0 万人以上のすべての国 低所得国 下位中所得国 上位中所得国 高所得国 を含む. 図 3.12 低所得国や下位中所得国の学校の運営能力は低い 人に増加し 63.ウガンダは 1997 年に初等教育を義 運営能力得点の分布(部門別,対象国) 務化したのを受けて就学者が 68%増加して,生徒数 対教員の比率が 1996 年の 38 対 1 から 97 年には 80 タンザニア 対 1 に,生徒対教室の比率は同じ期間に 68 対 1 から 105 対 1 に上昇した 64. インド * * * ハイチ  学習危機は現実であるにもかかわらず,教育制度は イタリア しばしばあたかもそうではないかのように運営されて いる.多くの政策当局者は学習水準がいかに低いかを 認識していない.なかには,それを認めようとしない, ブラジル または学習レベルが低いことを単に低財源と同一視す る人々もいる.それでも楽観視できる理由がある.第 メキシコ 1 に,学習がますます脚光を浴びるようになってきて いる.第 2 に,学習指標が学習危機について反駁で ドイツ きない証拠を生み出しており,それが行動に向けた圧 力を生み出している 65.第 3 に,危機 (第 4 章参照) カナダ に対処する方策に関して有望で新たな洞察が利用可能 になりつつある . (本報告書のパートⅢとⅣを参照) アメリカ スウェーデン 注 1. UNESCO (2014). イギリス 2. RTI International (2015). 1 2 3 4 5 3. Gove and Cvelich (2011). 運営能力得点 4. ASER Centre (2017). 教育 製造業 5. Muralidharan and Zieleniak (2013); Pritchett (2013). 出所:Bloom 他 (2014, 2015); Lemos and Scur (2016), 最新の更新 された情報を含む.データは http://bit.do/WDR2018-Fig_0-10. 6. フランス語圏 10 カ国の 2015 年における 6 年生 注:教育データの基本的分布は棒グラフで示されている.両部 の成績評価(PASEC 2015). 門について滑らかな分布は曲線で示されている.指数は両部門 で比較可能な 9 項目で構成されている.ハイチについては製造 7. 南・東アフリカ 15 カ国の 2007 年における 6 年 業に関するデータが入手不能. (SACMEQ, Hungi 2010) 生の成績評価 . 3 学習危機の諸側面 79 8. ASER Pakistan ( 2015a, 2015b). リカ,ベトナム. 9. Pritchett and Sandefur (2017). 35. Fernald, Marchman, and Weisleder (2013). 10. Lee and Hong (2016). 36. Galasso, Weber, and Fernald (2017); McCoy 11. Dang and Glewwe (2017). 他 (2016). 12. Filmer, Hasan, and Pritchett (2006). 37. Fernald 他 (2012); Lipina 他 (2005); Noble, 13. UNESCO (2015). Norman, and Farah (2005). 14. Filmer, Hasan, and Pritchett (2006). 38. Galasso, Weber, and Fernald (2005). 15. OECD (2016a). 39. McCoy 他 (2016). 16. Dang and Glewwe (2017). 40. Hanushek (1992); Rockoff (2004). 17. Grouch and Gove (2011).これ自体は PIRLS 41. Araujo 他 (2016). と TIMSS に基づく. 42. Bruns and Luque (2015). 18. Kaffenberger and Pritchett (2017). 43. UIS (2006). 19. 識字スキル習熟度の構成としては,書かれている 44. UNESCO Institute for Statistics, 2016 (UIS 単語や文章の解読から複雑な文章の理解・解釈・ 2017). 評価に至るまで一連のスキルを含んでいる.識字 45. Mulkeen (2010). スキル習熟度の構成は,職場・人格・社会・コミュ 46. Bruns and Luque (2015). ニティなどの状況に配慮している.個人の得点の 47. Bold 他 (2017). 解釈を円滑化するために,習熟度合いの説明書が 48. UIS (2006). 入手可能である.これは特定の課題を遂行する 49. Bold 他 (2017). のに必要とされるスキルを 500 点満点で明確に 50. Sinha, Banerji, and Wadhwa (2016). 規定したものである.課題は複雑さの点でレベル 51. Chaudhury 他 (2006). 0 から 5 まで増加する.ETS (2014) と OECD 52. Bold 他 (2017). (2016c) を参照. 53. 非公式な休校の原因としてはストライキ・険悪な 20. Desjardins and Rubenson (2011); OECD 天候・臨時祝日などがあり得る.エチオピアとグ (2016c). アテマラに関しては EQUIP2 (2010), ガーナに 21. di Gropello (2011); Fouarge, Schils, and de 関しては Abadzi (2009) を参照. Grip (2013); Heckman (2000); O’Connell 54. Bruns and Luque (2015). and Jugblut (2008); Windisch (2015). 55. Bruns and Luque (2015). 22. 識字習熟度を基盤的スキルの代理変数として使っ 56. Muralidharan 他 (2017). た WDR 2018 チームの推定値. 57. Bloom 他 (2015); Eryer (2017). 23. Bruns and Luque (2015); Filmer and Pritchett 58. Robinson, Lloyd, and Rowe (2008). (1999). 59. Bruns, Filmer, and Patrinos (2011); Orazem, 24. OECD (2016a). Glewwe, and Patrinos (2007). 25. OECD (2016a). 60. King, Özler, and Rawlings (1999). 26. OECD (2016a). 61. Najjumba, Habyarimana, and Bunjo (2013). 27. Spaull and Kotze (2015). 62. Banerjee 他 (2010). 28. Muralidharan and Zieleniak (2013). 63. MoEST (2008, 2015); World Bank (2016c). 29. Das, Pandey, and Zajonc (2006). グロスの就学者には年齢が特定の教育水準につい 30. OECD (2010). て設定されている公式年齢グループを超過してい 31. Hanushek (1979). る生徒を含み,したがって比率は 100%を超過 32. Lupien 他 (2000); McCoy 他 (2016); Walker する公算がある. 他 (2007). 64. Bentaouet-Kattan (2006). 33. Rubio-Codina 他 (2015). 65. 世界銀行の 2020 年の部門別戦略とイギリス国際 34. このような成果が評価されている諸国には以下が 「万人のための学習」 開発省の 2010 年の戦略は ; 含まれる:カンボジア,チリ,コンゴ民主共和国, アメリカ国際開発庁の戦略は「学習を通じた機 エチオピア,インド,マダガスカル,モザンビー 会」;オーストラリア国際開発庁も学習目標を採 ク,ナイジェリア,シエラレオネ,トーゴ,アメ 用しようとしている. 80 世界開発報告 2018 Developing Countries.” Journal of Economic Perspectives 20 参考文献 (1): 91–116. Cornwell, Christopher, David B. Mustard, and Jessica Van Parys. Abadzi, Helen. 2009. “Instructional Time Loss in Developing 2013. “Noncognitive Skills and the Gender Disparities in Countries: Concepts, Measurement, and Implications.” World Test Scores and Teacher Assessments: Evidence from Bank Research Observer 24 (2): 267–90. Primary School.” Journal of Human Resources 48 (1): 236–64. Araujo, María Caridad, Pedro Carneiro, Yyannú Cruz-Aguayo, Crouch, Luis, and Amber K. Gove. 2011. “Leaps or One Step at and Norbert R. Schady. 2016. “Teacher Quality and Learning a Time: Skirting or Helping Engage the Debate? 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Knudsen (2004). 脊髄を怪我や感染から保護し脳の健康にかかわる諸側面に全般 2. Mullainathan and Shafir (2013). 的に関与している脳髄液の容積. 3. UNICEF, WHO, and World Bank (2016).発 育不全は年齢別身長の z 値が健全な参照人口の中 位数を下回る幅が 2 標準偏差以内と定義される. 4. Black 他 (2013); Christian 他 (2014). 5. Center on the Developing Child (2016). 図 S2.2 リスクと保護因子は発達軌道に影響する 行動能力の リスク要因の削減,保護因子の増加,あるい 軌道 は介入が,感受期において実行される 保護因子 > リスク要因 リスク要因 > 保護因子 脳機能 出生前期 乳幼児期 早期児童期 思春期 成人期 最適 回復 潜在力以下 出所:Walker 他 (2011). 貧困は生物学的な発達を阻害して学習の土台を崩す 85 6. McEwen (2007). Intervention Affects Brain Electrical Activity in Children Exposed to Severe Psychosocial Neglect.” PLoS One 5 (7): 7. Evans and Kim (2013); McCoy and Raver e11415. (2014). Walker, Susan P., Susan M. Chang, Marcos Vera-Hernández, and Sally M. Grantham-McGregor. 2011. “Early Childhood 8. Center on the Developing Child (2016). Stimulation Benefits Adult Competence and Reduces 9. 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Fox. 2010. “Timing of 87 学習を真剣に考えるために その測定から始める 4 「2015 年の TIMSS 結果が発表されて,教育の質が低下しているという事実が明らかになった.…教育に起こっているこ とは無視できないし,改革しないことがもたらす悪影響を受け入れる余裕はない」 . ヨルダンのラーニア王妃,フェイスブックへの投稿(2016 年 12 月)  なぜ学習危機は執拗に持続しているのか? 子供た 教員数・教員給与・学校補助金など――の面だけから ちは何年も通学しているのに,読み書きができない. しばしば話をしていて,実際の学習に関して語ること どのようにして,そうなるのか? なぜ教育制度の関 は稀であることからも明らかである.学習に関する 係者はこれを直さないのか? 1 つの大きな理由は, データの欠如は,政府が特に不利な立場にある人たち 多くの人々にとって学習危機が目に見えないことにあ の教育の質の悪さを無視,ないし曖昧化できるという る.教育制度には,だれが学習していて,だれが学習 ことを意味する. していないか,に関する系統的な情報がほとんどない.  学習について客観的な情報がなければ,親たちは教 その結果,計画はもちろん,行動に向けた弾みを生み 育の質の悪さに気付かないかもしれない.このこと 出すことが不可能なのである. は,彼らが学校や政府に対してより良い教育サービス  危機に取り組むためには,それで十分というわけで を要求することを阻害する.ケニアでは,ある 1 つ はないものの,学習を測定することが必要である.し の研究が発見したところでは,読解力や数的思考力の かし,学習指標は行動を促し,各国のニーズに適応し, 基本的な習熟度のテストで合格した 4 年生は全体の 制度のニーズ――教室レベルのものも含む――を満た 半分以下であったが,保護者の 4 分の 3 以上が教育 す一連のツールで構成されていなければならない. にかかわる政府の実績に総じて満足していた 1.学習 成果が不十分であるという現実は,子供たちが労働市 場で就職の困難性に直面する時に初めて明らかになる 学習危機はしばしば隠されている のかもしれないが,それでは手遅れだ.仮に子供たち ――しかし測定することで目に見えるようになる がどの程度学習している(あるいはしていない)かに関 「ほとんどの低所得国には,学習を追跡して,教育に して,保護者が現実が反映された情報をもっていなけ かかわる国としての政策やプログラムにフィードバッ れば,そもそもどうやって学校や政府の説明責任を問 クを提供するための,標準的な(長期的に不変の)評価 えるだろうか? 制度がない」  生徒が身に付けていない知識に関する明確な情報 (Birdsall, Bruns, and Madan 2016, 2). がなければ,学校はどのようにして授業を改善する ことができようか? 教員は,教えたことに関して  教育制度に関して,就学については規則的に報告さ 生徒がどの程度理解しているのかを判断するのは困 れているが,学習状況についてはそれがない.という 難であることを知るだろう.これは特に低所得国に のは,学習は教育運営に関する公式データには含まれ 当てはまる.というのは,能力がさまざまな生徒が ておらず,政治家や官僚のアジェンダにも含まれてい 入り混じった生徒数の多いクラスを受け持っている ないからだ.これは政治家が教育を投入――学校数・ からだ.例えば,インドのデリー市におけるある研 88 世界開発報告 2018 究の発見によると,同一学年には習熟度が 5 学年か 学習のための指標が行動の指針となる ら 6 学年相当までの幅広い生徒が含まれているよう だ 2.そのような状況下では,学習指標があれば,教 ブラジルのリオデジャネイロ市におけるテストは 2 員はどの生徒が追加的な支援を必要としているかに つのレベルで行われている.第 1 に,2 年ごとに 5 関して時宜を得たフィードバックを得られる.より 年と 9 年の全生徒が公教育を評価することを目的と 一般的には,このような指標は,学校運営者に対して, (Prova Brasil) した,全国統一学力テスト を受ける. 授業を改善するために注意を必要とする分野に関す 第 2 に,生徒は 2 カ月にわたるカリキュラム区分が る情報を提供してくれる.もし情報が親や生徒と共 終わるごとにテストを受ける.市教育局が実施するこ 有されれば,そのような情報は,彼らの取り組みを のテストは教員や校長に速やかなフィードバックを提 学習改善に向けるのに役立つ. 供して,苦戦している生徒に対してより多くの支援を  にもかかわらず,協調行動は,学習指標に含まれて 提供することを目的としている. いる潜在的な落とし穴に関する懸念によって,しばし (Elwick and McAleavy 2015) ば脱線を余儀なくされている.このような指標は例え ば次のようなことに関して大きな議論を巻き起こして  教室における学習格差を特定することが,問題解決 いる.それは,国際的評価が現地の政策に及ぼす過度 に向けた第 1 歩になる.学習レベルが低いという環 に大きなインパクト,教室における実践を改善するた 境においては,生徒の水準とクラスで教えられている めの各国の独自評価の利用が限定的,あるいは一発方 水準との間にはしばしば格差がある 5.これは教師が などである 3. 式のテストが有している潜在的な賭博性, 生徒の水準に気付いていないためであろう.教室ベー しかし,「学習の測定」というのは,PISA あるいはア スで評価するという文化を促進すれば,この問題に メリカの「どの子も置き去りにされない」政策を通じて 対処することができる.シンガポールでは,生徒は 1 実施された一発方式の説明責任アプローチのような国 学年のスタート時点でふるい分けの試験を受ける.こ 際的なテストの簡潔な表現ではない.そういうことで れは読み方を習うのに追加的な授業を必要とする生徒 はなく,この用語は形成的な教室評価を含め,広範囲 を教師が選定するのに役立つ 6. の評価を対象に含んでいる(ボックス 4.1).このよう  学習指標は支援が最も必要な場所に光を当てること な形でも学習指標は,生徒が発達途上で修得するスキ に役立つ.学校区や学校はそれによって,資源を教育 ルのほんの一部しか提示してくれない(スキルの多次 サービスの提供を改善するためにより適切に振り向け 元性に関するスポットライト 3 を参照).つまり,指 ることができる.ブラジルでは,国家的な評価が学校 標というのは,学習改善方法を決定するための注意深 の成績を強化するために州や都市によって広く採用さ い,状況固有の分析に取って代わるものではなく,そ れてきている 7.学習指標は大規模な教育改革の指針 れを補完するものであるといえよう 4. にもなっている.チリでは,PISA の読解力の枠組み が国家的なカリキュラム改革の指針となっている 8. 同様に,SACMEQ Ⅰ –  (1995  99 年)による発見が, ボックス 4.1 良い学習指標は教育制度のすべての部分を明らかにする  教室の形成的評価は授業の円滑化に資する.授業や学習を後 向けて生徒をわかりやすく選抜することが重視されている.この 押しするリアルタイムのフィードバックを提供してくれるからだ. ような試験は労働市場成果を決定する役割を担っているがゆえ このようなフィードバックによって,教員は苦労している生徒を に,生徒にとっては極めて重要である.このような試験は,教え 特定して,さまざまな生徒の学習ニーズを満たせるよう授業を ることや教え方に著しく影響し,制度を通じた生徒の流れを管理 調整することが可能になる.また,教室評価は生徒や保護者に するのに決定的に重要である. 対しても貴重なフィードバックをもたらす.  国際的な評価は生徒の成績を基準に基づいて評価する.国際  国家的な評価は教育制度全体に関する情報を提供する.これ 評価は,子供たちを代表する標本を用いて,教育制度を各国横 は不平等などといった挑戦課題とともに達成度に光を当てること 断的に,かつ,時の流れに従って評価するからである.市民主 によってなされる.これは教育の運営・政策・改革にとって有 導型評価の活用も着実に増加してきている.これは何が可能で 用である. あるかを示し,変化を唱道し,さらなる研究を要請することによっ  国家的な試験は生徒の達成度を証明する.このような試験で て,世論の関心を高めるのに重要であろう. は,教育制度ないし労働市場のなかで,より高度な位置付けに 出所:WDR 2018 チーム. 4 学習を真剣に考えるためにその測定から始める 89 モーリシャスにおける教育基本計画の見直しを下支え を考慮に入れていない時には,教員は量的な形式の評 している 9.ある状況においては,学習指標は教育改 価に抵抗する可能性が高いであろう 17.これは学習 革をデータ主導型にすることにおいて効力を発揮して 指標がランキングとして流布されて,状況を離れて受 きている.ドイツでは,2000 年 PISA で結果が期待 け取られやすい場合は特にそうである.一部の教育制 を下回ったこと――特に貧困家計出身の生徒について 度では,そのような不和が技術の利用によっていっそ ――は,移民世帯を中心に不利な境遇にある生徒たち う強まる.このことは,秘匿性や透明性に関する問題 向けの支援を増強することにつながった 10. を提起する.技術を用いるアプローチでは社会的相互  学習指標が行動にとって有効な指針となるためには, 作用も限定化されるため,インパクトも小さくなるだ 教室における慣行から制度全体の運営に至るまでの多 ろう 18. 種多様なニーズに資するべく,広範囲にわたるツール  測定が行動の指針となるためには,それはすぐに として使用される必要がある.学習の指標はさまざま 実行に移せるものでなければならない.利害関係者 な形で作成されており,多種多様な指標が多種多様な が入手可能である必要もある.設計段階で利害関係 主体向けに多種多様な目的に資している.これは,教 者は学習データがどのように使われるかについて自 員が提起した単純な口頭の質問から,政策当局者が行 問しなければならない.チリでは,4 年生と 8 年生の 動に優先順位を付けるのに役立つ国家的な評価までと 全員が SIMCE(Sistema de Medición de la Calidad (ボックス 4.1) 広範囲にわたる .うまく機能している制 de la Educación)を毎年受験している.テストの点 度においては,このようなさまざまなツールは互いに 数が最低の 10%層に入った 900 校がある州で特定さ 補完し合いながら整合性のある全体を築き上げる 11. れ,このような学校は特別な資源を享受できることと  政策当局は,どれか 1 つの指標ではなく,広範な なった.つまり,データは明らかに行動に結び付けら 情報を頼りにすべきである.単一の指標が大きな政策 れている.多くの評価制度は,成果の測定があまりに を実行に移す唯一の論拠になってしまうと,それに伴 稀だったり,またはあまりに一般的にすぎるために う賭けが危険なほど高くなる.顕著な実例は 2001 年 実用的な使用には役立たない.SACMEQ(Southern 「どの子供も置き去りにさ に立法化されたアメリカの and Eastern Africa Consortium for Monitoring れない」政策である.この政策は,州全体で毎年実施 Educational Quality)から入手可能な最も最近のデー される標準テストで成績の悪い学校には,大きな否定 タは 2007 年のものである.もう 1 つの制約はデー 的な影響をもたらした.なかには政策のおかげで成績 また, タ収集時点と発表時点の間の隔たりである. デー が改善した学校もあったものの,教員や学校管理者に タ公表の方式も同様に問題である.多くの省庁は概要 よるさまざまな望ましくない反応も生み出された 12. レポートのハード・コピーを作成するだけであり,こ そのようなものとして,特殊教育が必要とされている のことはレポートの利用を困難なものにしている. として生徒を分類し直す,特定の生徒についてテスト を免除する,ぎりぎりで合格した生徒向けの資源配分 学習に関する指標は行動に拍車をかける を見直す,テスト日が近くになると得点の低い生徒を 休学させる,といったことが行われた 13.PISA の場 「衝撃的な結果.タンザニアの生徒の 60%が国家試 合でさえ,一部の研究が指摘しているところでは,ア . 験で不合格」 ルゼンチンやマレーシア,ベトナム,中国(上海)など (East African, 2013) といった一部の地域における成績は,成績の悪い学校 ないし生徒を排除した「選択的サンプル」によってもた 「アメリカでは 2001 年以降,標準テストにおける各 らされた可能性がある 14. 学校の成績に関する情報を受けて,地方の教員委員会  教育制度は学習指標によって生み出される情報をあ . 選挙の投票が顕著な増加を示している」 まり利用しておらず,多くの測定が行動にほとんどつ (Holbein 2016) ながっていない 15.多くの場合に,発見されたこと が,要するに関係のある聴衆に向けて適切な時期に伝  学習の指標は次の 3 つの経路を通じて行動を引き 達されていない 16.信頼性の問題もあるのかもしれ 起こす 19. ない.仮に教員ないし学校が国家的な評価プロセスに おいて,自分たちの意見が反映されていない,ないし • 参加.学習の成果は利害関係者が気付いているより 認められていないと感じているとすれば,国家評価を もずっと悪いことが多い.ウガンダでは,保護者の 拒否する公算が大きいであろう.例えば,指標が状況 およそ 4 分の 3 が教育の質について十分であると 90 世界開発報告 2018 感じている.しかし,2 年生向けの問題を基準にし には,情報を受け取った人たちがそれを理解し,実行 た数学テストで,合格点がとれたのは 4 年生のわ できると考え,その話題を懸念し,自分たちの行動に ずか 4 分の 1 にとどまっていた 20.教育サービス よって成果を改善できると信じなければならない 25. の提供における欠陥を詳細に裏付けることによっ  政治的圧力は,学習指標が前向きな行動に拍車をか て,学習指標は保護者を学習に関して学校の説明責 ける程度を制限する可能性があるだろう.教育の質が 任を問うように動機付けることができる.そのよう 低い地域では,政治家には学習成果を隠したり,曖昧 な状況下では,学習指標は情報の活用における失敗 にしたりするインセンティブがある 26.基準を低く を是正することができ,これは特に貧しい人たちに 設定する,年次比較の制限を試みる,成績情報へのアク とって有益である.この是正は,次には教育サービ セスを制限するなどといった方法で,成績が悪いことに スの利用者と提供者の関係のバランスを取り戻すこ 対する非難を免れようとする公算もあるだろう 27.例 とにつながる.この伝達経路は親から学校に通じて えば,アルゼンチンは生徒の成績の悪さを曖昧にすべ いる説明責任の直接的な,あるいは短いルートを経 く,標準テストを改訂して年次比較を不可能にし,テ 由して作用する. スト実施の頻度を削減した 28.教員も非難される機 • 選択.代替的な学校における学習成果に関する確か 会を最小化すべく,学習評価に抵抗する可能性があろ な証拠を保護者に提供することは,競争圧力を強め う 29.チリでは,教員研修機関が国家的な評価に抵 ることによって,学校を学習の改善に仕向けること 抗を示している 30.評価自体が政治的でもある.と ができる.保護者が学習成果に関して客観的な情報 「どの子も置き去りにされない」 いうのは, 政策を採用 をもっていると,「自分たちの意思を明示する」こと していたアメリカにおけるように,評価は財源の流れ によって,成績の悪い学校を罰することができる. あるいは教育制度の威信に影響し得るからだ 31.底 公立学校はそのような結末を心配している.という 流にある政治のせいで,生徒評価制度はとりわけ改革 のは,財源はしばしば就学者数に連動しているから がむずかしくなることがある(本報告書のパートⅣを だ 21.しかし,この経路も貧しい子供たちを受け . 参照) 入れている学校を不当に罰する公算があろう.  測定はいつになったら学習にかかわる説明責任の要 • 発言権.学習指標は,改善が必要なことに関する情 求に向けて市民を動員するだろうか? 関心が薄いた 報を提供することによって,改革に向けたロビー活 め,情報はしばしば無視されている.特にそれが複雑 動を促進し得る.これとは対照的に,信頼できる情 だったり,受け入れたくないニュースをもたらしたり 報の欠如は,説明責任の土台を崩すことになる 22. する時にはそうである 32.したがって,測定が行動 この経路は説明責任の長いルートを経由して作用す を誘発するためには,情報が容易に消化できる形で入 るため,学習指標は,市民が政治的プロセスを利用 手可能になっていなければならない.しかし,それだ して学習に関して政治家の説明責任を問う際に役に けでは十分ではないだろう.学習指標が学習に関して 立つかもしれない. 学校の説明責任を問うべくコミュニティを活気付ける ことができるためには,集団行動問題が解決されなけ  とはいえ,測定から行動へのつながりは自動的でも ればならない 33.参加型アプローチ――学校もコミュ 簡単でもない.インドの市民主導型の「教育年次報告 ニティもどのような種類の を学校レベルで 「学習指標」 書」(ASER)は 2004 年に導入されて以来,習熟度が 作成するかに関して発言権を有する――の方がここで 低いことを詳しく裏付けてきている.しかし,国全体 はうまく機能するだろう 34.加えて,市民が情報に としては,明確な,あるいは持続的な改善はいまだに 基づいて行動できるためには,報復の恐れが小さくな 目に見えるものとなっていない 23.同時に,インド ければならない.最後に,市民が変化に向けて行動で 諸州のなかには 2010 年と 2016 年に行われた ASER きるためには,自分たち個々の行動が違いをもたらす の比較において,3 年生の読解力レベルに関して著し ことができると信じていなければならない 35. い改善を示した州もあった 24.これが示しているの  国際的ないし地域的な評価基準を通じて,自国の は,単に情報だけではなく行動することが重要だとい 成績を評価するという努力のおかげで,行動が引き うことである.学習が改善するためには,学習評価が 起こされたという事例がいくつかある.これは国際 利用可能なことに加えて,それに基づいてだれかが行 比較によって,学習問題が政治的に際立つからであ 動する必要がある.事実,ケニアにおける市民主導型 る.TIMSS や PISA のランキング発表はしばしばメ 評価のインパクトにかかわる検証が発見したところに ディアが強い関心を示すきっかけとなり,学習を政 よれば,学習に関する情報が行動に拍車をかけるため 治・経済論議のなかに入れ込む 36.このような関心 4 学習を真剣に考えるためにその測定から始める 91 の高まりはしばしば政府行動に向けた弾み――「PISA ことができる.それでもこのような評価のためには有 ショック」として知られている効果――を生み出し, 能な管理者が必要であるが,全数ベースの評価よりも それで目的となる改革が推進される.OECD 後援に ずっと安価である.また,これはより頻繁な実施が可 よる PISA 評価に参加している国々のおよそ半分は, 能である.このような評価に参加する学校は身元を明 この結果を受けて改革を打ち出している 37.学習評 らかにする必要はない.このことは,評価の利害関係 価は学習を具体的な目標に掲げることによって,行動 を弱めるのに役立ち,評価が教員や学校からの強情な に拍車をかけることにもなる.国連のミレニアム開発 反抗から受ける影響を減らすことになる. (MDG)――政府やドナーによる努力を鼓舞し 目標  評価制度では効果的な補習措置がまだ可能な年齢 た――は就学に焦点を当てていたが,現行の持続可能 の生徒をテストすべきである.世界の 4 つの地域の な開発目標 (SDG)は学習により重点を置いている 38. 121 カ国のうち 3 分の 1 は,小学校卒業時点におい SDG の成功は学習を追跡することによって,各国が て子供たちの読解力と算数の習熟度を測定した報告で 弁論を行動に転換できる能力にかかっている. きるデータを有していない 39.前期中等学校卒業時 点における数学を評価するためのデータを作成してい る,あるいは地域的ないし国際的なテストに参加して 国が必要としていることに基づいて いるのは,調査対象国のわずか半数にとどまっている. 学習指標を選択する 読解力評価については半数弱である.これは,高所得  どの学習指標に投資するかを選択する場合,政策当 国以外のほとんどの子供や若者については,学習に関 局は状況を考慮しなければならない.もし評価制度が する比較可能な情報が欠如している,ということを意 発生初期にあるなら,教室評価の促進を優先すべきで 味している(図 4.1)40. ある.それができれば,比較的素早く,標本ベースで 低コストの全国的評価を開発することができる.教室 学習指標は教育の視野を狭めるだろうか? や全国の評価が確立できたら,成績を基準値と比較す ることが可能になる地域的ないし国際的な評価に参加  測定可能な学習に重きを置くことは,身体・道徳・ することからは多くを得ることができる.究極の目標 市民・芸術の面における発育などといった教育の他の は,多種多様な部分が整合性をとりながらもそれぞれ 成果を無視するわけではない.それどころか,学習― 相異なるニーズに資するような評価制度を構築するこ ―およびそれを牽引する教育の質――に焦点を当てる とにある. ということは,このような他の望ましい成果を盛り込  全国評価においては生徒全員をテストする必要はな –  む可能性が高いということである.子供たちが 2  3 い.標本ベースの評価で制度の能力を正確に測定する 年間も就学しているのに単語 1 つを読むことを学ん 図 4.1 高所得国以外のほとんどの子供たちについては,学習に関して国際的に比較可能なデータは入手不可能 数学や読解の得点を報告している諸国の子供たちの比率 (2000 年以降,所得グループ別,テストの種類:ASER, EGRA, LLECE, PASEC, PIRLS, PISA, SACMEQ, TIMSS) a. 2 – 3 学年 b. 4 – 5 学年 c. 8 – 10 学年 100 100 100 80 80 80 60 60 60 % % % 40 40 40 20 20 20 0 0 0 低所 中所 高所 世界 低所 中所 高所 世界 低所 中所 高所 世界 得国 得国 得国 全体 得国 得国 得国 全体 得国 得国 得国 全体 試験の種類: 地域的標準テスト 地域的非標準テスト 国際的テスト 無し (LLECE,PASEC,SACMEQ) (ASER,EGRA) (PIRLS,PISA,TIMSS) 出所:Sandefur (2017) からのデータに基づく WDR 2018 チーム.データは http://bit.do/WDR2018-Fig_4-1. 注:ASER = Annual Status of Education Report; EGRA = Early Grade Reading Assessment; LLECE = Latin American Laboratory for Assessment of the Quality of Education; PASEC = Programme d’Analyse des Systèmes Éducatifs de la Confemen; PIRLS = Progress in International Reading Literacy Study; PISA = Programme for International Student Assessment; SACMEQ = Southern and Eastern Africa Consortium for Monitoring Educational Quality; TIMSS = Trends in International Mathematics and Science Study. 92 世界開発報告 2018 でいない,あるいは 2 桁の引き算を学ぶことなく小 図 4.2 低パフォーマンス国は学習と他の教育成果の間での 厳しいトレードオフに直面していない 学校を卒業する年令に達している,という状況は,教 育のより高い目標の達成に資するものではない.イン ドのアンドラ・プラデシュ州である実験が行われた. 数学と国語について測定された学習が改善していれ (例えば、創造性や市民など) ば,教員は報奨金を享受できるというものであった. 高パフォーマンス 結果として,その 2 科目だけでなく,理科と社会も 国B 成績が改善した.ただし,後者の 2 科目の改善に対 他の成果 して報奨金はなかった 41.アメリカにおける 9 年生 に関する研究は,行動因子とテストの得点との間には 高パフォー マンス国 A 正の相関関係があることを見出している 42.別のア メリカの研究は,テストの点数を引き上げた教師は生 徒の成人期に向けた広範な成果をも改善していること 低パフォー マンス国 C を明らかにしている 43.国語や数学などの重要な基 礎的科目の学習評価は,教育制度が広範な約束を果た 測定した学習 しつつあるか否かについての適切な代理変数になる公 算が大きい. 出所:WDR 2018 チーム.  とは言え,認知スキルが唯一の重要なスキルという わけではない.根性や自己抑制,自己管理,実効的コ て,創造性やチームワークのような特定の社会情緒的 ミュニケーション,「向」社会的行動,などの社会情緒 スキル( ) 「他の成果」の重視が十分ではない.このよう 的スキル(非認知スキルと呼ばれることもある)は,単 な韓国における論議は暗黙裡に,フロンティア上で上 に経済的な成果だけでなく,より幅広く人生の成果 方に,そして左方に――点 A から点 B に――移動す にとって重要であり得る 44.高所得国からの証拠は, るかどうかに関するものとなっている.しかし,図中 そのようなスキルは雇用形態・仕事の経験・職業選択・ の低パフォーマンス国 C で示されている低パフォー 賃金に大きく影響することを示唆している 45.この マンスの罠には統制できていない部分がありにも多く ようなスキルは犯罪・暴力・薬物利用などといった危 あり,この OECD 主導の論議は当てはまらない.C 険な行動の削減ももたらす 46.例えば,イギリスの 国には測定可能な学習と他の教育成果の両方につい 研究が発見したところでは,認知スキルを制御した後 て,同時に改善を図る機会があるだろう. でさえ,社会情緒的スキルは当人が就学を継続する, 学位を修得する,就職する,喫煙する,犯罪に関与す 効果的な学習測定のための 6 つのヒント るか否かを予測するのに重要であった 47.このよう なスキルの測定方法に関する理解は,それに影響を与  ヒント 1:格差を測定する.学習危機は,学習格差の える方法とともに急増しつつある 48.認知スキルと ために不当に苦しむことになりそうな脆弱な人々が全 同じように,社会情緒的スキルは人生の早期に発達す 国的な評価制度の適用範囲に十分に含まれるように るが,柔軟性は高い 49.実際には,社会情緒的スキ なって初めて,政治的に真に目立つようになるだろう. ルは認知スキルを構築するのを後押しするし,その逆 そうなることを確実にするためには,評価はすべての も真である.現行のスキル水準は人生の早期になされ 子供たちに光を当てる形で実施されるべきである.測 た投資に左右される 50. 定は社会経済的な状態・ジェンダー・場所・障害の状  成績の悪い諸国は,成績の良い諸国が教育のフロン 態など,重要な側面を軸にデータの分解が可能でなけ ティアで直面するのと同じ厳しいトレードオフには, ればならない.特に社会的ないし経済的な排除のリス おそらく直面しないだろう.経済学者は生産者――こ クがある集団は,適切な意見表明を確保すべく追加的 の場合は各国――がさまざまな財生産の間のトレード に標本を収集する必要があるだろう 51. オフをどのように行うかを理解するために,生産可能  ヒント 2:進展を追跡する.テストを通して長期的な フロンティアという概念を用いる(図 4.2).例えば, 学習のトレンドや学習格差の変化を教育制度が認識す 近年,韓国では多くの利害関係者の主張によると,自 るためには,時期をまたいで一律の方法論・アプロー 国の教育制度ではテストの得点(図のなかでは「測定さ チ・心理測定法を使うことが極めて重要である.脆弱 れた学習」と表示されている)の重視が行き過ぎてい な集団のためには学習進展の年次比較も確保されてい 4 学習を真剣に考えるためにその測定から始める 93 るべきである. * * *  ヒント 3:効果的な措置がまだ可能な時に生徒をテスト する.生徒評価の見返りが最大になるのは,生徒が学  教育制度は,学習危機がはっきりと目に見えるよう 校教育の早期に基礎スキル――読解力・数的思考力・ にならなければ,それに対処する可能性は低いであろ 批判的思考力など――を確実に修得することに評価が う.それが可能になるのは設計の良い学習指標を通じ 焦点を当てる場合である.教育制度としては在宅テス てのみである.効果的であるためには,「学習指標」 トも検討すべきである.そうすれば現状では就学して は次の 2 つの重要な挑戦を克服しなければならない: いない生徒も対象に含む評価が可能になり,測定結果 情報が行動につながるのを確保すること,そして測定 は普遍的な学習目標にとってより有用なものになるだ の潜在的な逆効果を最小化すること,である.「テス ろう.在宅テストの実施は子供の学校へのアクセスや ト実施」の文化の増加に対する警鐘が最近の論議を支 学習成果に対するさまざまな影響すべてに関する,よ 配している.しかし,低学習の状況のほとんどにおい り微妙な理解を可能にするだろう.そのような目標に て,評価があまりに少なく,その結果として,制度の 向かうにあたっては,標準的な学習モジュールを,ほ なかでは学習についての説明責任があまりにも低い. とんど追加コストをかけずに,国内外の両方で実施さ れている調査(所得消費調査,生活水準測定研究,な 注 いし人口保健調査など)に含めることができよう.  ヒント 4:競合のバランスをとる.どの 1 つの指標も誤 1. Pritchett, Banerji, and Kenny (2013). 用されたり,過剰利用されたりすべきではない.その 2. Muralidharan, Singh, and Ganimian (2016). ような結末を避ける 1 つの方法は,政策の指針とな 3. Eggen and Stobart (2014); Sellar and Lingard るように,制裁や報酬を決定する 1 つの要約統計量 (2013). ではなく,利害関係の弱い診断ツールとして学習指標 4. Carnoy 他 (2016). の枠組みを構築することである.繰り返しになるが, 5. Pritchett (2013). 「学習指標」はツールの体系と考えるべきであり,その 6. OECD (2011). 1 つ 1 つには独自の場所と目的がある 52. 7. Guimarães de Castro (2012).  ヒント 5:設計が良いだけでは不十分――行動を促す. 8. Breakspear (2012). 学習指標は進展の追跡だけでなく,政策立案のために 9. Kulpoo (1998). も明示的に活用されるべきである 53.そうなること 10. Ertl (2006). を確保するための 1 つの方法は,分かりやすい結果 11. Greaney and Kellaghan (2008). を主要な利害関係者向けにタイムリーに配布すること 12. Dee and Jacob (2011). に,資源(努力を含む)を充当することであろう.もう 13. Booher-Jennings (2005); Cullen and Reback 1 つの要素は,指標のデザインに関するオープンで協 (2006); Figlio and Getzler (2006); Jacob 調的なプロセスである.さまざまな利害関係者の協働 (2005); Jennings and Beveridge (2009); Neal で開発された生徒の評価は,地方レベルでは正当で直 and Schanzenback (2010); Reback (2008). 接関係しているとみなされる可能性が高いであろう. 14. Carnoy 他 (2016); Glewwe 他 (2017); OECD  ヒント 6:学習に関するグローバルな公共財を活用する. (2016); Xu and Dronkers (2016). 国際的評価をテコとして用いると高い見返りが得られ 15. Székely (2011). る.例えば,国際的評価と地域的評価の間で連携を形 16. Greaney and Kellaghn (2008). 成することには相当な利点がある.それらを同じス 17. Baker 他 (2010); Dixon 他 (2013). ケールに置くことができるからだ.PISA や TIMSS 18. Bellamy and Raab (2005); Meijer (2009). などの国際的評価との調和が増すだけでなく,国や市 19. Bruns, Filmer, and Patrinos (2011). 民主導型の評価との結び付きができて,有意義でグ 20. Afrobarometer (2015); Uwezo (2014). ローバルな追跡が可能になる(ボックス 4.2).研究者 21. World Bank (2003). は各種評価を事後的に結び付けることを試みてきてい 22. Pritchett, Banerji, and Kenny (2013). るが,このような試みは技術的に厳しい挑戦課題に直 23. R4D (2015). 面している 54.共通項目を通じた事前における測定 24. ASER Centre (2016). の連携化の方が,技術的にずっと堅実で費用効果的で 25. Lieberman, Posner, and Tsai (2014). あることが判明する公算が大きいであろう. 26. Michener and Ritter (2016); Tanaka (2001). 94 世界開発報告 2018 ボックス 4.2 グローバルな学習指標?  グローバルな学習指標は学習を中心舞台に持ち出すのに役立 ニティへのフィードバック提供の仕組みが欠如している.これら ち,それをもっと目立つようにすることができる.そのような指 すべてが指標を行動に転換するのに必要な要素といえる. 標は進展を一貫して追跡し,様々な状況間のギャップを特定す  しかし,このような問題のほとんどは克服可能である.国際的 るために国際的に比較可能な尺度を使うことになるだろう.そ な支持のおかげで,グローバル指標の在り方に関しては堅実な れは,子供・家計・学校・場所などについて横断的な比較を可 技術的勧告が生み出されつつある.習熟度に関して合意されて 能にするだろう. いる基準はなく,各国の学習指標が相互にかつ長期的に比較可  その技術的な利点以外では,グローバルな指標は行動を促し 能であることを確保するために合意されているテストも存在しな て,学習についての説明責任を問うことになるだろう. 可能な い.しかしながら,いくつかのグローバルなイニシアティブが弾 ことの提示は,何が国に求められているかを指し示すことができ, みを生み出しつつある.例えば,「学習をモニターするためのグ その切望を成就するよう圧力を生み出すことができよう.不利な ,A4L, ローバル連合」 「グローバルな教育機会の資金調達に関 状況にある人たちの間における学習格差のベンチマークとの比 する国際委員会」などである.他の挑戦課題は,明確な目標と 較によって,グローバルな指標は国内における社会的流動性に 質にかかわる最低限度の設定を通じて克服可能であろう.グロー 向けて圧力をかけることもできる.さらに,比較可能な学習デー バルな指標は,それが国の評価制度の補完策として――その代 タは,グローバルな研究,国際的なパートナーシップ,学習向 替策としてではなく――明示的に位置付けられて初めて成功し けのグローバルな援助の有効性を高めることもできるだろう.そ 得る.事実,グローバルな指標からの情報は国の制度の能力を のようなデータは,政策を牽引すべく,各国が結果を分析する 強化するために利用することができよう. 能力を開発するのを支援することができよう.  グローバル指標のために必要な政治的意思は,途上国のニー  確かに,グローバルな指標の採用に伴って技術的・政治的な ズに優先順位が付けられ,指標の利点が明確に伝達されれば, 挑戦課題が出てくるだろう.第 1 に,指標の範囲に関してグロー 動員が容易かもしれない.推定によると,教育向けの政府開発 バルなコンセンサスをどのようにして形成するかという問題があ 援助のうちデータや研究などグローバルな公共財に支出されて る.グローバル指標は,アプローチ・対象にする標本・解釈に いるのはわずか 3%にすぎない.保健の場合,この比率は 20% ついて選択を必要とするが,それは議論の的となるものであるこ である a.教育データに対する投資を増加すれば,その見返り とが明らかになるかもしれない.さらに,資金・実施能力・政 には膨大なものがあろう.ただし,そのためには生徒が早期に 治的意思などといった挑戦課題が出現するだろう.多くの途上国 基礎スキルを修得することに焦点を絞る必要がある. では,データにかかわる収集,組織化,分析,教育者・親・コミュ 出所:WDR 2018 チーム. a. Schӓferhoff and Burnett (2016). 27. Nicolai 他 (2014). 所得の大国数カ国には学習指標がないという事実 28. Ganimian (2015). は,多くの子供たちや若者については比較可能な 29. Fox (2007); Hood (2010); Worthy (2015). 情報が高所得国以外では欠如しているということ 30. Meckes and Carrasco (2006). を意味する. 31. B e n v e n i s t e ( 2 0 0 2 ) ; P e t e r s o n a n d 41. Muralidharan and Sundaraman (2011). West(2003). 42. Jackson (2016). 32. Loewenstein, Sunstein, and Golman (2014). 43. Chetty 他 (2010). 33. Bjӧrkman and Svensson (2010). 44. Durlak 他 (2011); Heckman, Pinto, and 34. Barr 他 (2012); Bj ӧ rkman and Svensson Savelyev (2013); Murnane 他 (2001). (2010). 45. Heckman, Stixurd, and Urzua (2006). 35. Barr 他 (2012); Lieberman, Posner, and Tsai 46. Durlak, Weissberg, and Pachan (2010). (2014). 47. Carneiro, Crawford, and Goodman (2007). 36. Beakspear (2012). 48. Carneiro, Crawford, and Goodman (2007); 37. Figazzolo (2009). Heckman, Pinto, and Savelyev (2013). 38. Tawil 他 (2016). 49. Heckman, Stixurd, and Urzua (2006). 39. UIS (2016). 50. Cunha and Heckman (2007, 2008); OECD 40. 各種評価における諸項目を結び付ける――そして (2015). 各国評価を含める――ことによって,対象に含ま 51. Sandefur (2016). れる範囲は広がるかもしれない.しかし,低・中 52. Neal (2013). 4 学習を真剣に考えるためにその測定から始める 95 53. Guimarães de Castro (2012). Chetty, Raj, John N. Friedman, Nathaniel Hilger, Emmanuel Saez, Diane Whitmore Schanzenbach, and Danny Yagan. 2010. 54. Altinok, Diebolt, and Demeulemeester “How Does Your Kindergarten Classroom Affect Your (2014); Altinok and Murseli (2007); Sandefur Earnings? Evidence from Project Star.” NBER Working Paper 16381, National Bureau of Economic Research, Cambridge, (2017). MA. Cullen, Julie Berry, and Randall Reback. 2006. “Tinkering toward Accolades: School Gaming under a Performance Accountabil- ity System.” In Improving School Accountability, edited by 参考文献 Timothy J. Gronberg and Dennis W. Jansen, 1–34. Advances in Applied Microeconomics Series 14. 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Directions in Development: Human Development Series. Washington, DC: World Bank. れる 13.この段階には神経生物学的・心理社会的な Duckworth, Angela L., and David Scott Yeager. 2015. “Measure- 基盤は十分発達しているが,社会情緒的スキルは早期 ment Matters: Assessing Personal Qualities Other Than Cognitive Ability for Educational Purposes.” Educational 成人期でも新しい経験を通じて学ばれ得る 14. Researcher 44 (4): 237–51.  技術的スキルは当人が選ぶ研究や仕事の分野に対 Durlak, Joseph A., Roger P. Weissberg, Allison B. Dymnicki, Rebecca D. Taylor, and Kriston B. Schellinger. 2011. “The 応する,年齢と環境の下で学ぶことができる.つまり, Impact of Enhancing Students’ Social and Emotional Learning: このようなスキルは生涯を通じて,特別な訓練や教 A Meta-Analysis of School-Based Universal Interventions.” Child Development 82 (1): 405–32. 育を通じるだけでなく,学校や職場でも修得可能で Green, Francis. 2011. “What Is Skill? An Inter-Disciplinary ある 15. Synthesis.” LLAKES Research Paper 20, Centre for Learning and Life Chances in Knowledge Economies and Societies, Institute of Education, University of London. Guerra, Nancy, Kathryn Modecki, and Wendy V. 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Minds and Behaviors at Work: Boosting Socioemotional Skills for PART Ⅲ 革新,そして学習についての証拠 5. 学ぶ側に準備と意欲がなければ学習はない 6. 教員のスキルと意欲はともに重要 (ただし,そうではないかの如く運営されている 教育制度が多い) 7. 他のすべてのことは教員と学習者の 相互作用の強化に向けられるべき 8.スキル訓練を仕事と結び付けることによって 基盤を構築 102 スポットライト 4 学習について学ぶ 証拠と実践の間にある差異を突き止めることは,行動に向けて優先順位を設定するのに役立つ.  学習危機に関する証拠が増大するにつれて,何が学 なってきている.このような評価は,多数の介入策を 習を生み出すかについての理解も深まってきている. 相互比較し,総合的な介入策を広い範囲にわたって研 認知神経科学は劇的進歩を遂げ,脳の画像化は子供が 究し,さらに大規模に行われる介入策を研究するよう どのようにして学習するかに関する新たな洞察を提示 になってきている.評価が示すところによれば,この している 1.過去 20 年間に,神経科学は早期におけ ような介入策の多くは大きなインパクトをもたらして る児童の脳の発達や幼児期の決定的な重要性を理解す いる.例えば,いくつかの教授法への介入策は,平常 るのに役立ってきている 2.世界の多くの場所で学校 通りの学校教育において生徒が 1 年間で学ぶことに は,授業・専門的知識開発・新技術の利用などに関す 相当するものを凌駕する学習成果を達成している 6. るアプローチにおいて革新を行いつつある 3.政府や 非営利法人は教室現場における教員のスキルを格上げ 証拠をもっとうまく利用する すべく,革新的なプログラムを試行している 4.  同時に,どのプログラムが学習を効果的に押し上  すべての証拠が平等に作られているわけでないが, げるかに関する証拠は急増しつつある.増加の 1 例 多種多様な証拠の多くは信頼できるものであろう.科 をあげてみよう:途上国における学習成果を改善す 学的な証拠は脳の発達や機能する際の経路を証明して ることを企図した介入策に関するインパクト評価は, いる.社会科学的な証拠はある改革ないし介入策がな 2000 年の 19 件から 16 年までには 299 件にまで著 ければ どうなったであろ (しばしば反事実と称される) 増した(図 S4.1)5.この証拠は生徒・教室・学校のレ うかという疑問に対して有効な答えを示すことができ ベルで学習をどのようにして改善するかについて,よ る.ランダム化比較実験ないし「自然実験」の分析は, り明確な洞察に転換されている.このようなインパク そのような反事実を決定するのに有用なツールであ ト評価は件数の増加だけでなく,時とともにより精緻 る.実践科学や事例研究は,ある介入策ないし現象が 化されてきており,政策立案にとって有益なものに どのように機能しているかに関して,詳細な姿を提示 することができる.何が学習を改善するのか 図 S4.1 学習を改善するための介入策に関する実験的・疑似実験的研究 に関する最良の証拠は,広範な方法のなかか の件数は近年劇的に増加 ら引き出すことができる.  ある 1 つの教育制度におけるある介入策 299 300 がプラスの効果をもったとしても,それはど こでも機能するわけではなかろう.1 つの場 研究の累積的件数 200 所から別の場所に移植すると,あるいは試験 的研究から大規模プログラムに転換すると, 効果は異なる可能性があろう.ペルーでうま 100 く行くこともブルンジではうまく行かないか 19 もしれない.というのは,教育制度も社会も 0 異なるからだ.さまざまな環境下で試行され 1980 1986 1992 1998 2004 2010 2016 てきている共通の介入策として,学級規模の 縮小がある.学級規模を 10 人増やした場合 出所:3ie (2016); Evans an Popova (2016b) からのデータに基づく WDR 2018 チーム.データは http://bit.do/WDR2018-Fig_4-1. にテストの得点がどれだけ低下するかをみる 注:白色棒の上で青色部分は前年比増加分を示す. と,イスラエルではケニアの 4 倍にもなっ 学習について学ぶ 103 た 7.試験的な介入策であれば大規模な介入策よりも にある 10. 制御した状況下での試行が可能かもしれない.ケニア  人間行動のモデルを通して証拠をみることも,原則 では契約教員を採用する介入策は小規模な段階では効 に焦点を当てる 1 つの方法である.これは結果のパ 果的であったが,政府制度を通じて大規模に実施した ターンを検証し,結果が状況ごとになぜ異なるのかを 際には,給与の支払いが遅れ,最終的には契約教員は モデルを使って推論するということを意味する.第 1 公務員に転換された 8.規模が拡大されたプログラム ステップは微妙な演繹的推論であり,広範な研究の結 は成功していた予備的プログラムとは似ても似つか 果を総合し,そして実証的パターンを検討する.第 2 ず,学習の向上も実現しなかった. ステップは理論――人間行動のモデル――を使って,  証拠の意味を理解するためには,政策当局としては 解決策にはうまく機能するものとそうでないものがあ 個々の研究からの結果に執着する(ないし「点推定す る,さらには,同じ解決策でも場所や時期によってう る」)のではなく,効果的なプログラムの背後にありそ まく機能する場合とそうでない場合がある,という理 うな原則を検討すべきである 9.例えば,教員向けに 由を説明する. 金銭的なインセンティブを供与するプログラムは,さ まざまな結果をもたらしている.効果についての単純 学習を生み出すものは複雑であるが, 平均を用いるのではなく,むしろ微妙な点までを含む 教室で起こっていることを変える投資は有望である 評価を行ったところ,次のことが明らかになった.こ の種のプログラムは質の改善が比較的簡単で,プログ  大勢の主体が学習プロセスに寄与しており,それぞ ラムに教員のコントロールが伴っている場合――例え れには独自のインセンティブがある.学習プロセスに ばプログラムが教員の出勤率や出勤している時の授業 対する直接的な投入には,学習者自身に加えて,その 時間を増加させる場合――には,うまく機能する傾向 親・教員・他の学校指導者などによって行われる選択 図 S4.2 思ったよりも複雑:人々は制度内のいたるところで,他人の選択に反応して行動する                                                 市        民社 治家 会組  政 織                                                               仲      学 部門 員 間  / コ 習 教 民間 者 ミュ                                ニティ   学習                     入         官 投 校 の      へ 学 運 法 僚  校        営 学   司                                                                                                              国      際的          主体 主体    の他                    そ 出所:WDR 2018 チーム. 104 世界開発報告 2018 が含まれ,その選択は,インフラや素原材料と相互作 府はこのような投資を優先していない.証拠が示すと 用しながら行われる.それほど直接的ではないものの, ころでは,特定種類の教員専門研修は他のものよりも やはり重要な官僚・政治家・非国家プレーヤーは,教 ずっと大幅な学習の向上をもたらしているが,時代遅 育の質に影響を及ぼす決定を行う.このような関係の れの研修方法が維持されている 13.証拠と実際の間 理解が証拠の解釈にとっては極めて重要である. のギャップは現在の実践がどうなのかというだけでな  学習プロセスにおける各主体は他人に反応するの く,証拠が言っていること関する良質な情報を必要と で,プロセスの 1 要素を変更しても学習の向上が保 しているため,改善に向けた多くの機会がもっと発見 証されるわけではない.学習プロセスに対する投入の されなければならないだろう. 多くは主体が行う選択である――他の主体による現実  直観と常識だけでは十分ではない.増加しつつある の選択や期待される選択に対する反応として行った 証拠となる土台からの根本的な教訓は,直観は必ずし 選択である .教員は学校の指導層の変更に, (図 S4.2) も信頼に値する指針ではないということである.教員 校長はコミュニティの要求に,保護者は政府政策の変 向けの金銭的なインセンティブが努力の増加ではなく 更に反応する.インドやザンビアでは,学校への補助 不正行為を誘発する時のように,現実世界の動機付け 金交付を受けて,保護者は子供たちの学校教育に対す や反応の複雑さを見過ごす懸念があろう 14.直観は る自分たち自身の投資を削減した 11.資源がほとん 相反する潮流の正味の効果を把握できていないかもし どない家計では,もし政府が教科書の無償配布を開始 れない.生徒を能力別に分けることによって,教員は するならば,親は健康など他のニーズに教育資源を再 特に生徒のレベルに合わせて授業を行えるようになる 配分するだろう. という事例を考えてみよう.それは生徒の学習を向上  このような複雑で動態的な関係のすべてをどのよう させるはずだが,同時に好成績の仲間から距離を置か に理解したらいいのだろうか? 人間行動のモデルは せることにもつながり,結局は学習を低下させる可能 選択や行動の動機に光を当てており,回答を導くのに役 性があろう. 立ち得る.単純な最適化行動モデル――限定的な予算や  学習改善に関する知識は,学習介入策の費用と便益 その他の制約の下で主体は自分の福利を最大化する― の両方を考慮に入れなければならない.インドにおけ ―は,学校が貢献度を増やす時に,なぜ保護者自身が るコンピュータ支援学習の介入策は,ケニアにおける 自らの貢献度を削減するのかを説明することができる. 契約教員の雇用よりも大幅な学習向上をもたらした. さまざまな目的を抱いている複数の主体を組み込んだ しかし,契約教員の採用は著しく安価であったことか プリンシパル = エージェント・モデルでは,動機付け ら,著しく高い投資収益率が達成された 15.コストに やモニターが十分でない時,なぜ教員は教育義務を果た 基づく証拠は便益に関するものよりも大幅に少なく, さないのかを説明できる.行動モデルも一定の役割を果 両方を検討した研究のほんの一部にみられるにすぎな たす.生徒の学習と教育に関する抱負は,固定観念が有 い 16.有効性と費用効果性の両方が評価されているプ する強い影響力に左右され得る.情報・市場・調整の失 ログラムが若干ある 17.コスト――現地の状況に適合 敗などの経済現象がこれらのモデルでは一定の役割を 化されている――に関するこの証拠は,政策勧告に適 果たしている.このようなモデルでは,学習を改善する しているだろう 18. 方法に関する証拠と実践の間には,なぜしばしばギャッ  証拠と実際とのギャップは,学習をどうやって改善す プがあるのかに光を当てることができる. るかに関する探究を終わりにするのではなく,始めるの に有望な場所を指し示している.介入策はある国から 確かに, 他の国に単に輸出するというわけにはいかない. 証拠と実践のギャップが最大のところに 時として見たところでは同じような介入策の有効性は, 焦点を当てる プログラムの実施方法によって,一国内でさえさまざま  証拠と実際のギャップが教育を改善するための努力 である 19.実施費用も状況に応じて著しく異なる 20. の参入点になる.このようなギャップが明らかになる しかし,これは他の状況下からの証拠には価値がないと のは,証拠の示すところでは,特定のアプローチない いう意味ではない.それどころか,他の環境下における し介入策によって成果を改善することができるのに, 成功――なぜプログラムが機能しているのかに関する 実際に使われているアプローチがそれとは異なってい 慎重な分析と合わせて――は出発点を提供してくれる. る場合である 12.例えば,蓄積されてきている研究 政策当局はみずからの政策環境の下では,このような証 上の証拠は,子供に対する早期投資が高収益率をもた 拠や実験に依拠することができる. らすことを証明しているものの,低所得国の家族や政 学習について学ぶ 105 Pupil-Teacher Ratios: Experimental Evidence from Kenyan 注 Primary Schools.” Journal of Public Economics 123 (March): 92–110. 1. 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Darmstadt. 2016. 161–98. “Global Research Priorities to Accelerate Early Child Schweisfurth, Michele. 2011. “Learner-Centred Education in Development in the Sustainable Development Era.” Lancet Developing Country Contexts: From Solution to Problem?” Global Health 4 (12): e887–e889. International Journal of Educational Development Duflo, Esther, Pascaline Dupas, and Michael R. Kremer. 31 (5): 425–32. 2015. “School Governance, Teacher Incentives, and 106 5 学ぶ側に準備と意欲がなければ 学習はない 強固な基盤がすべての学習やスキル開発を下支えしている.学習は準備をし,出席し,意欲のある生徒次第である――し かし,生徒をそこまでもっていくためには,教育制度の内外における政策変更がしばしば必要とされる.  学ぶ側に準備と意欲がなければ,学校としては学習 幼少期に投資して,子供たちを就学に向けて準備さ を生み出すことはできない.世界中で多くの子供たち せる は,幼児期に,栄養や刺激に関する投資のごく一部し  子供たちの幼少期というのは,子供たちへの投資が か受け取っていない.また,多くは第 1 学年に向け その社会に極めて高い収益をもたらす稀な窓口を提示 た準備を可能にする良質な早期学習機会へのアクセス (図 5.1) している .子供たちの生活を改善する努力は, を欠いている.世界中の発育不全の子供たちは 4 人 不平等を削減すると同時に,個人および社会の生産性 に 1 人が,もっている潜在力を学校で発揮させるこ を著しく高めることができる 3.身体と脳が発育不全 とができていない 1.まったく就学したことのない 2 な子供たちは,繁栄することができない.早期におけ 億 6,300 万人の若者も同様である.就学者の間では, る学習やスキルの格差は,彼らを発育に関しては低い 教育の質が低い場合には学習意欲が殺がれることがし 軌道に閉じ込め,そこから抜け出すことは次第に難し ばしばである.基礎教育の質が低いということは,高 くなる(スポットライト 2).子供たちの身体は強靭で, 等教育や技術的訓練で高次スキルを修得すべき学習者 投入が改善すれば,早期幼児期が過ぎても追い付くこ がその準備ができていないことも意味する 2.つまり, とは可能かもしれない.しかし,子供の時期の最初の 初等教育に必要とされる基本的な投資が子供が就学す –  2  3 年間にリスク要因から受けた影響を帳消しにす る以前になされなければならないように,スキル訓練 るのは極めて困難である.そうしようとすれば,コス についても同じことが当てはまる.多くの場合,効果 ト高で高質の介入が必要となり,それが有効であるた 的な投資の失敗は人間行動に関するモデルを通じて理 めには典型的には十分若い年齢の時になされる必要が 解することができ,それはまた解決策への道も指し示 ある. している(表 5.1).この分野の証拠を総合すると,学 習改善のための鍵となる 3 つの原則が明らかになる: 貧困が子供たちの発達や学習にリスクをもらす危険性を 認識する • 子供たちを高い発達軌道に乗せて,早期に栄養・世  健康で,タイムリーな形で成長するためには,子 話・刺激・学習機会を付与することを通じて,認知 供たちは環境面で良質な投入を必要とする.身体面 的・社会情緒的な発達を促進する. で必須の投入には,産前と産後における良質な栄養・ • 子供たちを就学させる――学習に向かう必須の第 1 医療・物理的に安全な環境などが含まれる 4.等し 歩――ために,学校費用を引き下げ,学習に向けた く非常に重要なのは社会的投入であり,それは養育・ 意欲を押し上げるために他のツールを使う. 保護・刺激などである 5.子供たちと世話人――必ず • 大勢の若者がスキルを身に付けないまま基礎教育を というわけではないが,しばしば親――との相互作 去っているという事実に取り組むためには,補習教 用は著しい影響を残し,文字通り脳の発達の道筋を 育がしばしばさらなる教育や訓練に向けた第 1 歩 つけることになる 6.しかし,貧しい子供たちのこの として必要であると認識すべきである. ような投入の利用は,――そのことの重要性に関す 5 学ぶ側に準備と意欲がなければ学習はない 107 表 5.1 人間行動のモデルは学習者の準備を改善するための行動の手引きになり得る:若干の例 このような失敗の背後にあるメカニズムを モデル化されたメカニズムに取り組む 総合的な原則 それが失敗しているところ 特定しているモデル アプローチ 早期に子供に栄養・世話・ 低所得国で就学児童は 5 情報に関する失敗:利害関係者は早期投 ジャマイカでは,世話人に心理社会的な 刺激・学習機会を提供す 人中わずか 1 人.世界中 資の相対的な収益率,ないしは早期発達 刺激を供与するよう教示したプログラムの る. で子供の 4 人に 1 人が発 を支援する方法を認識していない可能性 おかげで,発育不全児童の発達スコアと 育不全. がある. 後の人生の成果が改善した. 流動性・信用の制約を伴う単純な最適化: メキシコでは,条件付き現金給付プログ 保護者は認識しているが,投資資源を欠 ラムのおかげで認知と運動能力の発達が いている. 改善した. 行動(精神的帯域幅): 貧困のストレスが アルゼンチン,バングラデシュ,中国,お 保護者の育児能力を低めている. よびウガンダでは,中央管理に基づくプロ グラムのおかげで子供の成果が改善した. 学 校 費 用を引き下 げる; 2 億 6,300 万人の子供が未 流動性・信用の制約を伴う単純な最適化: カンボジアでは,女子に奨学金を供与し 意欲と努力を押し上げる. 就学.多くの国では前期中 保護者は認識しているが,子供のうちのだ たおかげで就学者が激増した. 等学校や初等学校が有料. れか,あるいは全員に投資する資源を欠 ドミニカ共和国とマダガスカルでは,教育 通常は無償でも多くの状況 いている. の収益率に関する情報を提供したおかげ 下で現金支出が必要にな 情報に関する失敗:若者と保護者は教育の で就学と学習が改善した. る. 収益率を過小評価している可能性がある. パキスタンでは,子供のテスト点数を保護 行動(双曲割引):教育の価値は認識して 者に報告したおかげで就学と学習成果が いながら投資を後回しにする 「後」 改善した. (しかし は決してやって来ない). 必 要 な 場 所 に お い ては, 多くのスキル訓練プログラ 情報に関する失敗:訓練プログラムは参加 アメリカのコミュニティ・カレッジでは, 補習教育がさらなる教育や ムは若者が身に付けてい してくる学習者の質に関して,不完全なシ コース選定の正確性や支援サービスを改 訓練に向けた第 1 歩であ ない必須スキルを前提にし グナルを受領する. 善したことが,学生の長期的な成績向上 ることを保証する. ている. 単純な最適化(訓練所の側):補習教育を に役立った. 必要とする生徒は退所する可能性が高い. アメリカでは,ブリッジ・プログラムのお かげで学習者は補習教育を速やかに修了 することができるようになっている. 出所:WDR 2018 チーム. る世話人の認識とともに――往々にして限定的 図 5.1 子供の幼児期における高質のプログラムに対する投資は利益を もたらす である.子供たちの早期発達に投資するプログラ ムやそれを導く政策もやはり限定的である.  貧しい子供たちは健康関連のショックにさら 幼児期における 投資 される懸念がより大きい一方,刺激や世話,ス 脳の発達 トレスからの保護を享受する公算がより小さい. 栄養不足・感染症・化学的に有害ないし物理的 に危険な環境などは,大勢の貧しい子供たちに 生後だけでなく,子宮内にいる時にも影響する. 学校教育 感受性の高い時期にこのような要因のどれかに 職業訓練 さらされると,正常な生物学的発達が阻害され得 る(スポットライト 1).そして,貧しい子供たち 人的資本への投資 はこのような要因にしばしば時とともに相次い の収益率 で遭遇する 7.同時に,貧困に関連したストレス 就学前 学校 卒業後 は,親の意思決定を阻害し,余裕・感受性・応答 年齢 性を限定的にもする 8.その結果,貧しい子供た ちがもっている本や玩具などの資源がわずかで 出所:Carneiro, Cunha, and Heckman (2003); Martin (2012) に基づく WDR 2018 チーム. あるだけでなく,享受する刺激・監督・支援も少 ない 9.貧しい子供は無視や厳しい躾を経験する可能 性も高く,このことは早期の感情――社会情緒的な 能力の鍵を握っている――を混乱させ,学校成績の 108 世界開発報告 2018 悪化とも関連がある 10. 莫大なものがある:途上国の 5 歳未満児のほぼ半分  早期児童開発プログラムは特に開発途上世界では, が発育不全,あるいは極度の貧困状態での暮らしをし 貧しい子供たちの不利を補償するには数と質の両面で ており,このことは教育が提供できる機会から恩恵を 不十分である.貧しいコミュニティでは,家庭外で早 享受できるという展望にとって脅威となっている 18. 期発達を刺激する資源――良質な育児法・図書館・余 暇施設・就学前プログラムなどを含む――が限定的 設計の良い介入策で子供たちの学習能力を強化する で,質が低い傾向にある 11.就学前教育へのアクセ  有効な早期児童介入策は貧しい子供たちの学習能力 –  スがあるのは 3  6 歳児の半分にすぎない.就学前教 を著しく改善することができる.アメリカでは,設計 育の適用範囲と所得との間には強い相関関係があり, の良い介入策――ペリー幼稚園,アベセダリアン・プ 低所得国の 19%から高所得国の 86%までと範囲が広 ロジェクト,看護師・家族パートナーシップなど―― いが,どこの国でも貧しい子供たちの幼稚園入園率は に参加したリスクにさらされていた子供たちは,彼ら 最低である 12.3 歳未満の子供となるとこの種のサー 自身の幼児期をはるかに超えて恩恵を受けた:学校の ビスは普及範囲が狭いだけでなく,とりわけ不平等か 成績・雇用・所得・福利全体・社会的融合などすべて つ未調整のままである 13.さらに,報酬の低い育児 が改善した.開発途上国においては,そのような介入 労働者――訓練・指導・モニタリングをほとんど受け 策には著しい潜在力がある.というのは,そもそも ていない――に対する依存は,持続可能性・雇用維持・ ベースラインが低いからだ.ジャマイカでは,早期に 質などの足を引っ張っている 14. 児童向けに刺激を付与する とい 「期待をもって学ぼう」  政府は幼い子供たちに十分な投資をしていない.早 うプログラムのおかげで,20 年後には犯罪率が低下 期介入がもたらす良好な成果に関する理解不足,予算 し,精神的な健康が改善し,所得が 25%も増加した. 制約,そして広範囲にわたる早期児童介入策――健康・ 子供たちが必要としているものに関してはコンセンサ 栄養・早期学習など――を実施する際の困難な課題が, スがある:栄養・世話・刺激・養育・保護である.プ ほとんどの地域で幼い子供への公共投資が低水準にと ログラムを実施すべき時期に関する証拠は生物学的な どまるという結果をもたらしている.サハラ以南アフ 証拠と一致している:発達の特定時点における予防や リカでは,平均すると,初等以前教育に割り振られて 早期是正は最も費用効果的である.というのは,感受 いる教育予算はわずか 2% にすぎない 15.ラテンア 期以降の調整はむずかしく,高価で,通常は不完全で メリカでは,5 歳未満児に対する 1 人当たり政府支出 あるからだ.しかし,貧しい子供たちの発達成果を改 –  は,平均すると 6  11 歳児向けの同支出の 3 分の 1 善するために,最も有効なアプローチを特定するのは にとどまっている 16.途上国では幼児期に対する投 というのは, 挑戦的な課題であることが判明している. 資は増加してきているものの,戦略として幼稚園の建 状況だけでなく,介入策そのものに膨大な異質性があ 設に焦点が当てられており,幼稚園の年齢に未達の子 るからだ.にもかかわらず,有望なアプローチがいく 供たちは無視されている.幼稚園は助けにはなるもの つかある. の,発達の諸次元にわたる基盤は 3 歳以前に築かれる.  出生後の 1,000 日間(懐妊時点から数える)におけ にもかかわらず,この年齢グループは典型的には健康・ る健康・栄養の介入策は,子供の発育を改善する.妊 栄養にかかわる検診を除くと,政府の支援をほとんど 産婦保健サービスへのアクセスを増やすプログラム 享受しておらず,これは健全で全体的な発達にとって は,食餌法・サプリメント・栄養強化を通じて妊産 十分とはいえない. 婦の栄養を改善すると同時に,幼児死亡率や早期に  貧困に関連したリスクに早期にさらされることは, おける健康問題を削減する 19.子供向けの栄養介入 教育が約束することを子供たちが実現するのを阻害す 策は単独では,身長ないし発育不全に対してはわずか る懸念があろう.激しい困窮はみすぼらしい発達成果 な効果をもつにすぎない 20.しかし,改善された衛生 ――発育不全や脳発達障害など――に帰結することが 設備と組み合わせて,小児保健サービスへのアクセス あり,それへの取り組みは困難である(図 5.2;スポッ も増えると,栄養介入策は顕著な恩恵をもたらすこと トライト 2) .身体的・認知的・言語的・社会情緒的 ができる 21.母乳養育と微量栄養素のサプリメント な発達において後れを取っている子供たちは,1 学年 は,途上国では健康の増進や認知能力の向上と関連が に就学するのが遅れ,学校の成績は悪く,留年し,小 あり,教育成果の改善につながっている 22.駆虫剤・ 学校修了以前に退学し,生涯を通じて不健康を経験し, ヨウ素サプリメント・予防接種なども子供たちの学習 リスクの高い行動に携わり(特に思春期に),生産性が 能力の大きな改善につながってきている 23.    低く,所得も低い可能性が高い 17.問題の規模には  健全な発達を支援する世話人の能力を構築するプロ 5 学ぶ側に準備と意欲がなければ学習はない 109 グラムは,子供たちの成果を大幅に改善することがで 図 5.2 激しい困窮は脳の発達を損傷し得る きる.介入策には養育・保護・刺激的な活動(読み聞 発育不全の有無別にみた脳構造と神経経路 かせ・歌・家財道具での遊びなど)を通じた良質な介 a. 発育不全のない成長を示している幼児 入策の頻度増加を推進するだけでなく,肯定的な規律 に関する世話人の在宅コーチングも含まれる.そのよ うな介入策は多種多様な形で提供されてきており,そ れには自宅訪問・コミュニティ会議・健康診断など がある 24.最も有効なプログラムは,世話人が実践 する機会およびフィードバックを受け取る機会に加 えて,体系的な訓練やカリキュラムを含んでいる 25. 新たに出現してきている世代のプログラムは前向き な補強策を通じて,親にインセンティブを供与して おり,情報提供が不十分な時や信念ないし規範が有 害な時には,間接的な「ナッジ」(軽い注意喚起)が発 せられる 26.  世話人に現金ないし心理社会的支援を提供するプロ b. 発育不全の成長を示している幼児 グラムは,育児を改善するための介入策を補完する. 現金給付プログラムは特に産前ケアや育児サービスと 一緒に――あるいはそれを条件に――提供される場合 には,家計における深刻な物質的困窮に対処し,発達 の成果を改善することを可能にする.例えば,エクア ドル,メキシコ,およびニカラグアにおける条件付 き現金給付(CCT)プログラムは,発育不全を削減し, 認知発達を改善し,より良い子育ての実践を推進して きている 27.メキシコでは,CTT プログラムと統合 された育児支援プログラムは,給付の単なる直接的な 効果を超越して子供の成果を大幅に改善した 28.ま た,重要なのは,給付プログラムは親の時間や心理的 出所 :Nelson 他 (2017).©Nadine Gaab and Charles A. Nelson. Charles A. Nelson の許可を得て使用.再使用のためには再度許可が必要. な制約を緩和できるという点である.加えて,監督さ 注:画像は生後 2 – 3 カ月の 2 人の幼児を示す.1 人の幼児は発育不全 れているスペシャリストではない保健や地域福祉の従 (パネル b).もう 1 人の幼児は発育不全ではない (パネル a).画像はバ 事者が,激しい妊産婦のストレス・憂鬱・心配に取り ングラデシュのダッカ市で,核磁気共鳴画像法 (MRI)を使って入手.各 パネルの左側は頭の左側を示す.各金色の線は繊維路――脳の中の長く 組むために実施する介入策は,子供たちの認知発達の 細い繊維(軸索) で,情報をさまざまな神経単位・筋肉・腺に伝達する― 改善・身体成長の改善・下痢の減少・予防接種率の向 ―を示す.発育不全ではないの幼児の場合,接合が非常に密で複雑なこ 上などにつながってきている 29. とが明らかである.各パネルの右側の色付き画像は異なる方向――前か ら後ろへという脳の横断面――からの同じ原理 (神経結合) を示したもの  センター・ベースのケアは基盤的なスキルの発達を である. 促進することができる.エチオピアからアメリカに至 るまでの国々において,質の高いセンター・ベースの いなかったものの,訓練の行き届いた保育士との相互 プログラムは,発達途上の子供たちの言語・認知・運 園児たちの認知能力は改善した 作用のおかげで, (ボッ 動・社会情緒に関するスキルに多大な恩恵をもたらし 32.3 歳未満児向けに良質なセンター・ベー クス 5.1) てきている 30.それとは対照的に,劣悪なセンター・ スの介入策を実施するのはより困難である.なぜなら ベースのプログラムに参加すると,プログラムに参加 ば,より高価な構造的投資が必要とされるからだ(保 しない場合よりも悪くなることがある 31.子供と世 育士 1 人当たりの園児数の引き下げなど).その結果, 話人の相互作用の質がそのようなプログラムの影響力 資源の制約がある環境下や限界的な人口グループを対 の重要な決定要因である.インドネシアやモザンビー 象にする場合には,育児能力を構築するプログラムが –  クでは,3  6 歳児を対象にした効果的なセンター・ 最も費用効果的であろう 33. ベースの幼稚園プログラムがそれを証明している.こ のプログラムには最低限のインフラ投資しか含まれて 110 世界開発報告 2018 ボックス 5.1 早期児童教育は幼い子供を就学に向けて準備させる  3 – 6 歳児を対象とする就学前プログラムは,基盤的スキルを 学習意欲そのものに害を及ぼしかねない.というのは,幼い子 育成し,子供たちの学習能力を増大させることができる.幼稚 供たちにとっては,探求・遊び・他人との相互作用を通じて学 園に通っていた子供たちは小学校でも出席率が高く,成績も良 ぶことが最善だからである c.良好な成果をもたらした就学前プ い.さらに,それらの子供たちは留年や退学の可能性が低く, ログラムの重要な要素としては,遊びを通じて極めて重要な学 補習教育ないし特殊教育を必要とする公算も小さい.このよう (安心感・好奇心・言葉・自制など) 問以前の能力 を育むカリキュ なことすべては生徒だけでなく,教育制度にとっても利益がある. ラム,教員が関連するカリキュラムを効果的に実施できるように というのは効率性が高まるからだ a.あらゆる所得水準の国々 専門的な研修と指導を行う,子供たちの生来の学習意欲を鼓舞 を横断的にみて,良質な早期児童教育プログラムから最も恩恵 する前向きで魅力あるクラス作りなどが含まれている d.早期児 を受けるのは最も不利な環境に置かれている子供たちである b. 童教育による恩恵を持続させるためには,就学前プログラム提 しかし,早期児童教育プログラムはすべてが等しく有効なわけ 供者の内容・予算・能力を学校教育制度と統合化すべきである. ではない.5 歳未満児向けの過度に学問的・体系的なプログラ 加えて,それ以降の小学校における学習環境の質が,就学前プ ムでは,彼らの認知や社会情緒にかかわるスキルだけでなく, ログラムの長期的な効果の重要な決定要因になるだろう e. 出所:WDR 2018 チーム. a. Klees (2017). b. Britto 他 (2016). c. Whitebread, Kuvalja, and O’Connor (2015). d. Phillips 他 (2017). e. Johnson and Jackson (2017). すべてを一まとめにする たちが学習する唯一の場所ではないものの(ボックス  プログラムを統合すればより良い発達成果につなが ,ほとんどの親は自分の子供が就学してくれるこ 5.2) り得る.貧しい子供たちは複数のリスク要因にさらさ とを望んでいる.さらに,ほとんどの子供たちも学校 れており,どんな単一の介入策でもそれだけでは十分 に行きたいと思っている.教育年数が平均 3 年未満 に取り組むことはできない.多要素プログラムは早期 のインドの母親を調査したところ,そのうちの 94% 児童発達の複雑で補完的な性質をとらえて,その補完 は自分たちの子供が最低でも 10 学年を修了すること (図 5  的な部分に対処する –  34.有効であるために 3) を願っていた 38.ケニアでは,まったく教育を受け は,介入策は発達の特定段階で実施されなければなら たことのない親たちの間で,その半分以上は自分の子 ない 35.逐次的な,ないし関係する発達目標に取り 供たちが大学教育を受けることを望んでいた 39. 組むために介入策をパッケージ化することは,特にも  著しい費用――正式な授業料と広範囲にわたるその し介入策のパッケージが世話人に対する恩恵も組み込 他の諸経費の両方――が,特に最も脆弱な子供たちの んでいるならば,有効性を高めることができる.統合 学習を阻害している.世界の低所得国の約 90%が初 化された介入策パッケージは,コミュニティ・ベー 等教育の無償化を宣言している.しかし,前期中等教 スの戦略や社会的セーフティネットなどといった既存 育になると,40%以上の国々が,中所得国の間では のプラットフォームを土台として構築することができ 10%が,授業料を課している 40.アフリカでは,子 る.ただし,あらゆる具体的な戦略の有効性も状況と 供たちを学校に行かせるために家計が負担する支出― 関連のある要因次第となろう 36.早期の投資を増や ―学用品,学習教材,交通費など――のほぼ半分は, す努力のなかで質を落とすべきではない――例えば, 公式な授業料に追加される 41.このような学校教育 サービス提供においてよく行われているが,ボラン のコストが,貧しい子供たちと裕福な仲間の就学率格 ティアないし無資格労働者に依存すべきではない 37. 差を拡大させる一因となっている.  子供と親の間における学校教育に対する熱望は,家 計にとっての学校教育の制約を緩和するイニシアティ 需要サイドの支援を提供すれば ブ――いわゆる需要サイドの介入策――が子供たちを 子供たちを就学させられるが, 就学させるのになぜ非常に有効となっているのかを説 必ずしも学習させられるとは限らない 明してくれている.多くの諸国で,授業料の廃止は就  学校は大規模学習にとっては重要な投入である.ア 学率を押し上げてきており,これは親には要するに授 クセスには大きな増加があったにもかかわらず,大勢 業料を支払う資源がなかったということを示唆してい の子供たちが依然として就学していない.学校は子供 る 42.学校に関連のあるその他の経費の削減 (図 5.4) 5 学ぶ側に準備と意欲がなければ学習はない 111 図 5.3 適切な児童発達のためには幼児期向けの統合プログラムが必要 幼い子供とその家族向けの重要な介入策 妊娠 出生 1 年後 2 年後 3 年後 4 年後 5 年後 6 年後 1 家族支援パッケージ 脆弱家庭向けの親支援:家族の規模・間隔の計画,母性教育,早期の刺激・成長・発達に関する教育,育児休暇・十分な 育児,親の鬱病の予防・処置,社会的扶助移転プログラム,児童保護規制の枠組み 家族向けの健康・栄養・衛生:医療へのアクセス,安全な水へのアクセス,適切な衛生,清潔 / 手洗い,微量栄養素の補 助と強化 2 4 児童健康・発達パッケージ 妊娠 予防接種,駆虫,急性栄養不良の予防・処置,補完食と十分な栄養のある パッケージ 3 安全な食餌法,下痢補完食と十分な栄養のある安全な食餌法,下痢向けの 治療的亜鉛補助 産前ケア,鉄・ 出産 葉酸,適切な パッケージ 食餌法に関する 立会分娩 , 完全 カウンセリング 母乳育児 , 出生 5 就学前パッケージ AB 登録 C   (早期幼児期と初等教育 就学前教育プログラム ,良質な初等学校への連続的移行 前) 出所:Denboba 他 (2014). ボックス 5.2 コミュニティは学習を向上させるために,教室外で費やされる多くの時間をテコにすることができる  多くの学習が個人指導や在宅プログラムを含め,教室の外で (子供たちが一定時間内に読み上げたすべての本が録 実施する 生じている.アフリカとアジアにわたって, ,小規模図書館を寄贈するなどが含まれている.この 「識字能力押し上げ」 音される) プログラムは学習者が学外で費やしている多くの時間を活用し ような活動に参加した子供たちは読みの力が改善している.ル て,コミュニティで読書活動を展開してきている.これには読み ワンダのコミ 「識字能力押し上げ」 ュニティでは 運動を推進したお が弱い人と強い人がペア (「読み友達」 )を組む,読書マラソンを かげで,読解スキルと学校の人気が改善した a. 出所:WDR 2018 チーム. a. Dowd 他 (2017); Friedlander and Goldenberg (2016). を狙っている介入策は,出席率だけでなく就学率とい うのは,ほとんどコストがかからないからだ 46.教 う形でアクセスを一貫して改善してきている 43.成 育需要が低調なのは,生徒もその家族も教育投資の収 績に基づかない奨学金――このことによる授業料の減 益率を過小評価していることが原因になっている場合 額は小規模――は,ケニアでは初等レベル,ガーナで もある.ドミニカ共和国やマダガスカルでは,教育の は中等レベルの就学率を押し上げてきている 44.授 収益率に関する情報を提供しただけで,教育面での成 業料の削減の反対側の面は家計所得の増加であり,現 果改善につながった.ただし,中国の農村部では類 金給付プログラムがこれを行っている.このプログラ 似の介入策は何のインパクトももたらさなかった 47. ムは,初等および中等教育の就学率ともに上昇させて インドでは,20 代の女性向けに求人情報サービスを きている 45. 提供したところ,ティーンエイジの女子の就学率が上  情報提供による介入策はとりわけ有望である.とい 昇した.インドの村落における女性指導者の割当枠導 112 世界開発報告 2018 図 5.4 授業料の廃止で何が起こるか? 8 カ国からの証拠 図 5.5 すべての教育制度が等しく生産的なわけではないも 授業料廃止前後の時期におけるグロス就学率(主要国) のの,最も生産的でないものさえ一部の学習者には何らかの 学習を実現している 160 25 – 34 歳の女性(修了した最高学年別)のうち,自分で選んだ言 語による短文すべてを読解できる比率 (主要国) 100 140 80 120 グロス就学率 60 % 40 100 (%) 20 80 0 0 2 4 6 修了した最高学年 60 ルワンダ エチオピア バングラデシュ −10 −5 0 5 10 ペルー 平均 ナイジェリア 授業料廃止前後の時期(年数) 出 所:Oye, Pritchett, and Sandefur (2016). デ ー タ は http://bit. do/WDR2018-Fig_5-5. マラウイ レソト 注:平均は 51 カ国のもの. カンボジア ザンビア ウガンダ カメルーン ケニア タンザニア を示唆している. 出 所:World Bank (2017) か ら の デ ー タ;Bentaouet Kattan  需要サイドの介入策は,そのプログラムが,学習能 (2006) からの政策変更の年に基づく WDR 2018 チーム.データ 力ないし生徒の努力のいずれかの増加をもたらす場合 は http://bit.do/WDR2018-Fig_5-4. に学習を改善し得る.対象を絞った現金給付は,一部 注:縦の線は授業が存在した最終年を示す.グロス就学率には 特定の教育水準向けに設定された公式年齢グループを超過する の情報面での介入策と同様に,努力の増加を誘導する 年齢の生徒が含まれる.したがって,率は 100%を超過するこ という枠組みで提示された時に,学習の向上につな とがある. がっている 51.低質の教育制度においてさえ,生徒 入を受けて,教育達成度においてはジェンダー格差が は学校にいる時の方がいない時よりも多くを学ぶ.学 消滅したのである 48. 習危機はあるものの,学校教育と識字力の間の正の相  学校教育のコストを削減する介入策は,ほとんどの 関関係は持続している(図 5.5).識字力と数的思考力 子供たち,特に低年齢の子供たちの就学率引き上げに がほぼ同水準の個人を比較してみると,学校教育年数 非常に有効ではあるものの,就学のために追加的なイ が長い人の方が所得は高い.自制心のような社会情緒 ンセンティブを必要としている生徒もいる.一部の諸 的スキルを含む学校教育に伴う他の恩恵が主因となっ 国では,最も高い認知能力を有する,あるいは学校教 ている公算が大きいであろう 52.学習者を就学させ 育の収益率が極めて高いと想定される――必ずしも実 るのはそれ自体が有益なのである. 現した率ではない――自分の子供を学校に行かせるこ  学校に行くことに加えて学習者が学習意欲を持っ とを最優先にしている親がいる 49.ブルキナファソ ていなければならない.意欲を高める 1 つの方法は, では 2008 年以降,無条件で現金給付を受ける家庭と, 学習者のスキルは報いられること――労働市場が高収 子供の就学を条件として現金給付を受ける家庭が出現 益率を提供する,あるいは高等教育機関がコネではな している.両制度の下で,男子とテストで好成績だっ く能力に基づいて学生の入学を許可するなど――を確 た子供は就学できる可能性が同程度に高いが,条件付 実にすることである.生徒にやる気を出させるのに最 き給付の恩恵がより著しく大きかったのは女子と初期 も直接的な方法は,現行の学習水準に到達できるよう 時点で学習水準が低かった子供であった 50.この発 な適切で良質な教育を提供することであろう.ケニア 見は,最も脆弱な子供たちの就学を保証するためには, では,学校を中退した生徒は,中退の原因はコストや 単純なコスト削減以上のものが必要かもしれないこと 親からの圧力ではなく,うまくやっていく能力がない 5 学ぶ側に準備と意欲がなければ学習はない 113 ボックス 5.3 子供たちの学業に関する情報を提供することは,親が子供たちの意欲を駆り立てるのに役立つ  ほとんどの親は自分の子供が学校で成功することを願ってい セージを受領した親たちは,このサービスに対して進んでコス る.数カ国における有望な介入策は,親への子供たちの学業に ト負担を申し出た.これは親たちが真の価値を認めたということ 関する情報の提供は,より良い教育成果につながり得ることを示 を示唆している d.しかし,単に親に情報提供するだけでは成 している.アメリカでは,中学校の生徒が宿題を忘れた時に親 功の保証にならない.ケニアのあるプログラム――子供の識字 に送信される文章メッセージは,宿題の遂行率だけでなくテス 能力水準に関する情報を親に提供するとともに,それを改善す トの点数の上昇にもつながった a.生徒の欠席に関して親に手 るための戦略を提案する――は,変化にはつながらなかった e. 紙を出したことも欠席の減少をもたらした b.マラウイでは,親 効果的であったのは,単に学習水準を提供するよりは,むしろ に子供の勉強能力に関する情報を提供したところ,子供のため 投入対学習――出席率と個々の課題に関する成績――にかかわ に適切な本を買い与えることにつながった c.チリでは,低所 る定期的に更新されるデータを親向けに提供するプログラムで 得家庭は子供の出席記録に関する文章メッセージを毎週受領す あった.このような情報の介入策は自動化できるため,極めて る.それに加えて,月次ベースでは生徒の行動やテスト結果も 費用効果的であろう.というのは,それは家族の本来的な意欲 知らされる.このような情報を受領した親の子供たちは学校で をテコとして活用しているからだ. の素行が悪くなく,成績が改善し,進級する公算が大きい.メッ 出所:WDR 2018 チーム. c. Dizon-Ross (2016). a. Bergman (2015). d. Berlinski 他 (2016). b. Rogers and Feller (2016). e. Lieberman, Posner, and Tsai (2014). からだ述べている 53.成績ベースの奨学金ないし賞 い.この値は,チリでは 23%,ボリビア都市部では 品によって,生徒の意欲をさらに掻き立てようとして 29%,ガーナ都市部では 34%となっている 57.基盤 いる教育制度もなかにはある.そのようなインセン 的スキルを早期に改善すれば,その人の労働市場の軌 ティブ――ベニンやメキシコにおける直接的な賞金, –  道を変えることができる.15  64 歳の成人被雇用者 ないしケニアにおける女子向けの奨学金など――は, で識字能力がレベル 2 以上の人は 58,高スキルで高 生徒が適格になろうと精励するので努力を倍加させる 給のホワイトカラー職に就いている可能性が著しく高 ことができる 54.直接的な金銭インセンティブは高 い 59. (図 5.7) 所得国ではあまり成功していない.ただし,テスト実  若者はスキルや成熟度が大きく異なり,人生の軌道 施直後にインセンティブを供与するという代替的な設 も広範囲にわたっている.一部の若い学校中退者は義 計のものは,テストの点数を押し上げてきている 55. 務教育修了相当認定資格を得て,継続的な教育ないし 世話人に学習者の成績に関する情報を提供することも 訓練を受けられるようセカンドチャンス・プログラム 大きなインパクトをもち,世話人が意欲を行動に転換 に登録している 60.それ以外では,中等後の教育や するのを後押しすることができる(ボックス 5.3).し 訓練機関の入学要件を満たすべく補習コース学習を実 かし,一般的には,前向きで総合的な教育上の経験が 践している者もいる 61.もう 1 つ別のグループ―― 生徒の意欲にとって重要な土台になるようである. スキル格差が通常なら最も深刻な人たち――は,不安 定・低賃金・低生産性の職に就いている.なかには学 校にも労働力にも加わっていない若者もいる 62.こ 補習教育は学習者を継続的な教育や訓練に向けて のような若者たち全員に手を差し伸べるのは困難であ 準備させることができる る.彼らがセカンドチャンスないし補習のプログラム  多くの若者は基盤的スキルが弱いまま学校教育を に参加するよう動機付けることも,特に教育制度から 去っている.したがって,彼らには継続的な教育や訓 離れて長期間が経過している場合には容易ではない. 練に向けた準備ができていない.グローバルにみると, その多くは補習コースの恩恵について確信を持ってお 初等教育に就く生徒 100 人当たりでみて,前期中等 らず,学校環境に戻ることは否定的な感情を喚起しか 教育を修了するのは 61 人であり,後期中等教育を修 ねない.ウガンダでは,早期の中退者は,学校教育に 了するのはわずか 35 人にとどまっている 56. (図 5.6) 早期に別れを告げたことに関連して,自尊心の低下や 若者のおよそ 3 分の 1 は前期中等教育と後期中等教 人生の機会の限定化,社会的排除などを経験し,こう 育の間で中退している.この問題は開発途上数カ国に いったことに苦しんだと話している 63. –  おいて特に顕著であり,15  20 歳の若者のうち識字  補習教育という介入策は,正しいアプローチを使っ 能力が最低水準に満たない得点をとる生徒の割外が高 て,しかるべき人々に届くならばうまく機能し得る 64. 114 世界開発報告 2018 図 5.6 若者は教育についてさまざまな道をたどっている 地域およびコホート別の修了率と減少率(%), a. 小学校に入学した 100 人の生徒のうち, b. 減少率は地域ごとにさまざまなことから, 世界全体では… 後期中等教育の達成度には大きな格差がある 90 人は 初等教育 修了 61 人は 前期中等 教育修了 75 35 人は 後期中等 50 教育修了 25 0 % 10 人は 25 中退 29 人は 50 中退 26 人は 75 中退 ヨーロッパ・ 東アジア・ 中東・ ラテン 南アジア サハラ以南 中央アジア 太平洋 北アフリカ アメリカ・ アフリカ カリブ 修了 修了前に中退 以前に中退 出所:UIS (2017); UNESCO (2015); WIDE (2017) に基づく WDR 2018 チーム.データは http://bit.do/WDR2018-Fig_5-6. 注:推定値は 2010 年頃のもの. 図 5.7 識字能力が高い労働者はホワイトカラー職に就く 有効な補習教育という介入策は若者の実情に取り組み 可能性が高い ながら,就職への橋渡しを後押しするものである.補 参加国の都市部にいる全労働者で識字能力がレベル 2 以上の人 は,ブルーカラー職よりもホワイトカラー職に就く周辺確率が 習プログラムは,短期間で終わる,生徒の生活に直接 高い(2011 – 14 年) 関連している,経験豊富な教員が実施する,キャリア 向上に向けた長期的なプランの一環を成しているなど セルビア ウクライナ の条件がそろえば,生徒の利害を支援する可能性が高 くなるだろう 65.今日までの証拠のほとんどは高所 ボリビア 得国のプログラムから得られているが,3 種類の主要 ジョージア な介入策が有望なものとして際立っている: コロンビア ベトナム • 補習による予防プログラムは学習が苦手な生徒をサ アルメニア ポートする.そのために基礎的スキルを強化して, ケニア 学校教育を修了するよう励ます. ガーナ • セカンドチャンス・プログラムは早期退学者――多 −10 0 10 20 30 くが低スキル――に対して,教育や訓練に再び携わ 周辺確率(%) る機会を提供する. 推定および 95%の信頼区間: 有意 有意でない • 中等後の教育や訓練の開始時点における補習コース 学習は,学業プログラムを修了する若者の機会を増 出 所: 世 界 銀 行 の STEP Skills Measurement Program (http:// microdata.worldbank.org/inde.php/catalog/step/about) に やす. 基 づ く WDR 2018 チ ー ム. デ ー タ は http://bit.do/WDR2018- Fig_5-7. 補習による予防プログラムは成績の悪い生徒を助け,彼ら を学校に居させることができる  補習による予防プログラムは学校教育制度のなかで 落ちこぼれリスクにさらされている若者が,継続的な 教育ないし訓練のなかで厳しい勉強に向けて準備する のを手助けすることができる 66.3 つの補習による予 5 学ぶ側に準備と意欲がなければ学習はない 115 防アプローチが有望さを示している 67.第 1 は,学校 チャンス・プログラムは,教育機会への重要な経路を にとどまって基礎的スキルを修得する意欲のある小中 提供している 76. フィリピン, インドやインドネシア, 学生に支援を提供する.インドやメキシコ・シティの タイでは,中途退学者向けの相当資格プログラムは, プログラムは不遇な生徒向けに追加的な授業を提供す 特にそれが学校教育制度と整合的な場合には,生徒の るものであり,基礎的スキルに関してプラス効果を示 自己開発を改善している 77. ラテンアメリカ 同様に, ・ している 68.第 2 のアプローチは生徒に (特にインド) 若人の多次元的なニーズを考慮に入れて, カリブでは, 対して勉強の現状に関する早期評価を示し,評価に沿っ 生徒を継続的な教育や訓練の機会への経路につなげ, て成績を改善するために追加的な授業を提供する.勉 参加者が生産的な成人期に復帰するのを支援するべく 強の面で落ちこぼれリスクのある生徒を支援するカリ 支援を提供する場合に,セカンドチャンス・プログラ フォルニア州全体の早期評価プログラムは,教育や訓 ムはより良い成果を生んでいる 78. 練が後の段階に向かうのに伴って補習の必要性が減少 したことを示している 69.第 3 のアプローチでは,中 中等後補習教育プログラムは若者の勉強プログラムにおけ 学生に同時並行的に中等後コースに登録する選択肢を る成功を手助けすることができる 付与する.アメリカでは,そのようなプログラムの参  中等後の教育や訓練に就学してくる多くの生徒は, 加者は補習を必要とする公算が低い一方,高等教育を 勉強プログラムの厳しさに対して準備ができていな 受け続けて勉強の成果を改善する可能性が高い 70. い.チリやメキシコでは,数カ所の中等後教育機関が 学業面で準備不足の生徒に対して補習支援を提供して セカンドチャンス・プログラムは教育への復帰や訓練への いるが,そのような介入策のインパクト評価は稀であ 参加の道を提供する る 79.アメリカでは,中等後補習教育への参加は一  セカンドチャンス・プログラムは中途退学した若者 般的であるが,当該者と当該機関には大きなコストが に,非伝統的な学習環境に再従事し,中等教育修了 かかっている 80.2 年制教育機関に入学してくる生 相当資格を修得し,職業訓練に参加する道を提供す 徒の約 42%,4 年制教育機関なら約 20%が補習コー る 71.このようなプログラムは学習経験を提供する スに参加している.この年間コストは推定試算の方法 ことになり,それは参加者や家族,雇用者に対して達 –  にもよるが 10  70 億ドルにも達している.このよう 成水準を知らせるシグナルになる.オーストラリアや な高コストが理由で,アメリカの機関は新たなアプ アメリカでは,早期学校中退者は後期中等教育修了相 ローチを実験してきている.有望さを示している補習 当資格証書を交付するプログラムに加入することを奨 モデルには主に,加速的補習,状況化授業,集中的生 励されている 72.相当資格プログラムは雇用・賃金・ 徒支援,という 3 つのタイプがある 81. その他の教育指標を改善することができるが(同資格  加速的補習モデルは生徒が補習コース学習に費やす をもたない人の成果との相対比で),このようなこと 時間を削減する.通常の補習教育プログラムは修了ま の影響力は伝統的な教育資格証明書をもっている人と でに複数学期を要する連続的なシリーズとして設計さ の比較ではしばしば小さい 73.セカンドチャンス介 れており,生徒の退学につながることも多い 82.こ 入策において生徒が成功するためには,社会情緒的ス の問題に取り組んでいる新しい加速度補習モデルに キルが重要な役割を果たす.長期的な目標に向けて努 は,急行コース,自分のペースでできるモジュール化 力するといった能力が重要であり,時として相当資格 されたコース,そして,生徒が中等後のコースに直接 証明書そのものよりも重要になることもある. 入れるように(主流化するように)務めるコース(ただ  セカンドチャンス・プログラムの需要は堅調で証拠 し追加的な授業支援を提供)がある.アメリカのイン も有望である.しかし,若者を継続的な教育や訓練に ディアナ州における,2 つの急行プログラムに関する 繋ぎとめておくためには統合的な政策アプローチが必 研究は,より長期にわたる補習プログラム参加者と比 要である.サハラ以南アフリカ,特に低所得者や紛争 べて,このプログラムの参加者はコース合格率が高 地域では,中途退学者を勉強に連れ戻すプログラムに くコース中退者は少なかったことを見出している 83. 対する要望がある 74.しかし実際には,プログラム 同様に,自分のペースでモジュール化されたコースを は小規模であり,正式な教育・訓練制度という政策枠 たどるプログラムと主流化を目指すプログラムから 組み内に統合化されて運営されているものはほとんど は,参加者は非参加者と比べて中等後の数学の合格率 ない 75.低所得国の生徒にとって――通常は世界中 がより高く,より厳しいコース要件を修了し,高等教 の中途退学者の不釣合いに多くを占めている――,イ 育への進学希望者の割合が高いことを示す証拠が得ら ンドの「オープン基礎プログラム」のようなセカンド れている 84. 116 世界開発報告 2018  状況化授業は補習教育という介入策の有効性を改善 自発的技術モデルにおける最近の進展は,若者が独立 する.というのは,学習者は自分たちの状況に直接関連 的に勉強して,自分の学習ニーズを充足し,自分のス した授業内容に関心を持ち,それを理解し,そこから意 キルを格上げする新たな機会を切り開きつつある.し 味を見出す時に,最も恩恵を受けるからである 85.こ かし,これは補習教育の研究においては始まったばか のようなモデルは基礎的スキルを補強すると同時に, りであり,そのインパクトに関する証拠は依然として 学習者のキャリア面での抱負も強調することを企図し 疎らである 93. ている 86.新しいアプローチには状況化された職業 学習も含まれている.基盤的スキルの格上げと職業訓 注 練を組み合わせた一例としては,アメリカのワシント ン州における I-BEST(基礎教育とスキル訓練の統合) 1. UNICEF, WHO, and World Bank (2016). プログラムがある.このプログラムの評価は,プログ 2. Hungi (2010). ラムへの参加は生徒の学習に対してプラス効果をもっ 3. Cunha 他 (2006). ていることを見出している.それには,コース取得単 4. Black 他 (2008); Horton, Alderman, and 位の累積,高等教育の継続,職業資格の取得などが含 Rivera (2008); Thompson and Nelson まれている 87.ラーニング・コミュニティのアプロー (2001). チ――複数主題授業,プロジェクト・ベースの仕事, 5. Coe and Lubach (2007); Garner 他 (2012). 学習者の社会的相互作用などを強調している――も有 6. Center on the Developing Child (2016). 望な結果を示している.アメリカでは,このようなプ 7. Walker 他 (2007). ログラムへの参加は,生徒の成功と関連する多くの要 8. Bendini (2015). 因――コース参加の度合い,生徒と教員の相互作用, 9. Black 他 (2017). 上級コースへの進学など――と著しいプラスの関係を 10. Bradley and Corwyn (2005); McCoy and 有している 88. Raver (2014); Shonkoff 他 (2010).  集中的な生徒支援は脱落のリスクがある生徒に,制 11. Farah 他 (2006); McLoyd (1998). 度的なセーフティネットを提供することができる.有 12. このような数字はグローバルにみた幼稚園の有効 望な結果を示している新アプローチには,補完的な授 範囲を過大推計している可能性がある.というの 業を伴う集中的な個人授業,集中的なアドバイス供 は,多くの低所得国はアクセス・データを報告し 与,スチューデント・サクセス・コースなどが含まれ ていないからだ(Save the Children 2017). る.集中的な個人授業プログラムは,一般的な勉強の 13. Black 他 (2017). カウンセリングや個別指導の提供から,特殊スキル訓 14. Devercelli, Sayre, and Denboba (2016). 練の提供に至るまでの広範囲にわたっている 89.集 15. ACPF (2011). 中的な個人助言サービスは生徒がコース選定を検討し 16. Berlinski and Schady (2015). たり,キャリア・プランを作成したりするのを後押し 17. Naudeau 他 (2011). することができる.持続的な個人授業を提供している 18. Black 他 (2017).これは発達面の潜在能力に達 プログラムの評価は,コース修了率と勉強面の評価で しないリスクのある幼い子供たちの真の人数を過 改善が見られることを示している 90.集中的な個人 小推定している公算がある.というのは,貧困に 助言サービスは生徒がコース選定を検討し,キャリア・ は複数のリスク要因が関連しているからだ. プランを作成するのを手助けする.このようなサービ 19. Bhutta 他 (2013); Britto 他 (2016). スは生徒が他の形の支援を活用するのを後押しする. 20. Galasso and Wagstaff (2016). これらのサービスは,生徒が他の形式のサービスより 21. Galasso and Wagstaff (2016); Skoufias も優位になるのに役立つ.例えば,受益者は補習コー (2016). ス学習を修了し,プログラム終了後でも学校にとどま 22. Eilander 他 (2010); Horta, Loret de Mola, る公算が大きいであろう 91.スチューデント・サク and Victora (2015). セス・コースは通常では新入生向けの単独で単位が付 23. Galasso and Wagstaff (2016). 与されるコースであり,勉強のスキルを発展させるこ 24. A l m o n d a n d C u r r i e ( 2 0 1 1 ) ; B a k e r - と強調している.アメリカにおける実験で得られた証 Henningham and López Bóo (2010). 拠によると,参加者の取得単位数,合格した級,席次 25. Aboud and Yousafzai (2015); Britto 他 などについて有望な結果が示されている 92.最後に, (2016). 5 学ぶ側に準備と意欲がなければ学習はない 117 26. レビューに関しては World Bank (2015) を参照. Berman 他 (2015). 27. Britto 他 (2016); World Bank (2015). 55. Fryer (2011); Levitt 他 (2016). 28. Denboba 他 (2014). 56. 初等教育修了コーホートは初等教育最終学年の純 29. Rahman 他 (2013). 入学率の推定値で近似化し,前期中等教育修了率 30. Berlinski, Galiani, and Gertler (2008); Engle は次の 3 つの変数から成る関数でモデル算定し 他 (2011); Favara 他 (2017); García 他 (2016); た:初等教育修了率,初等教育から前期中等教育 Rao 他 (2014). への実質進学率,前期中等教育最終学年の純入 31. Bouguen 他 (2013); Rosero and Oosterbeek 学率.地域別の後期中等教育修了率の推定値は (2011). UNESCO の World Inequality Database on 32. Martinez, Maudeau, and Pereira (2012); Education (WIDE 2017), 世 界 全 体 の 後 期 中 Nakajima 他 (2016). 等教育修了率の推定値は UNESCO による 2015 33. しかし,センター・ベースで行われる支援は,親 (UNESCO 2015) 年予測値 にそれぞれ基づく. たち,特に母親の間における労働力参加の押し上 57. OECD (2016); Roseth, Valerio, and Guitérres げやさらなるスキルの取得といった,重要な追加 (2016). 的な利益をもたらし得る. 58. 低 習 熟 度 は OECD の PIAAC と 世 界 銀 行 の 34. Attanasio 他 (2014); Denboba 他 (2014). STEP の識字能力評価においてレベル 1 未満とし 35. Britto 他 (2016). て定義され,基本的な文章の理解が限定的である 36. Richter 他 (2016). ことを示唆している.習熟度が中ないし高水準と 37. Devercelli, Sayre, and Denoboba (2016). いうのはレベル 2 以上として定義され,多様で 38. Serneels and Dercon (2014). 複雑な文章問題から情報を統合・評価・解釈する 39. Oketch, Mutisya, and Sagwe (2012). 能力を有していることを示唆している. (各年) 40. World Policy Analysis Center . 59. 推定はレベル 2 以上の識字スキルが,高スキル 41. Foko, Tiyab, and Husson (2012). のホワイトカラー職とその他ブルーカラー職への 42. Al-Samarrai and Zaman (2007); Bold, 就職につながる という予測確 (ベースとなる結末) Kimenyi, and Sandefur (2013); Deininger 率に及ぼす限界的な効果に基づく.完全な仕様に (2003);Grogan (2009); Lucas and Mbiti は性別・年齢・教育水準・家族財産の代理変数な (2012); Nishimura, Yamano, and Sasaoka どの経歴にかかわる制御変数が含まれている. (2008). 60. Zachry and Schneider (2010). 43. Morgan, Petrosino, and Fronius (2012); 61. Almeida, Johnson, and Steinberg (2006); Zuilkowski, Jukes, and Dubeck (2016). NCES (2004). 44. Duflo, Dupas, and Kremer (2017); Kremer, 62. de Hoyos, Rogers, and Székely (2016). Miguel, and Thornton (2009). 63. B l a c k , P o l i d a n o , a n d T s e n g ( 2 0 1 2 ) ; 45. Filmer and Schady (2008); Fiszben and Tukundane 他 (2014); Windisch (2015). Schady (2009). 「 補習教育 64. 」 (Remedial Education) と「開発教育 46. J-PAL (2013). 」 (Developmental Education) と い う 用 語 は, 47. Avitabile and de Hoyos (2015); Jensen 成績の悪い生徒が中等後の教育や訓練に参加・修 (2010); Loyalka 他 (2013); Nguyen (2008). 了するのを支援するプログラムを指すのにしば 48. Beaman 他 (2012); Jensen (2012). しば同じように使われている.本報告書では「補 49. Akresh 他 (2012); Garg and Morduch (1998); 習教育」を使うが,それはその方が低中所得国で Parish and Willis (1993). はより広く認められている概念だからである(以 50. Akresh, de Walque, and Kazianga (2013). 下を参照―Baily 他 2010; Baily, Bashford, 他 51. Avitabile and de Hoyos (2015); Barrera- . 2016; Long and Boatman 2013) Osorio and Filmer (2013); Nguyen (2008). 65. Post (2016). 52. Valerio 他 (2016). 「リスクのある」 66. 生徒というのは,中途退学する, 53. Zuilkowski, Jukes, and Dubeck (2016). ないし基礎的な教育や訓練のプログラムを修了し 54. ベ ニ ン ―Blimpo (2014); ケ ニ ア ―Kremer, ない確率が高い生徒として定義されている. Miguel, and Thornton (2009); メ キ シ コ ― 67. 使った類型は補習(開発)教育に関する体系的な 118 世界開発報告 2018 レビューをしている下記に基づく―Rutschow 参照文献 and Crary-Ross (2014); Tukundane 他 (2015); Wilson and Tanner-Smith (2013); Zachry Aboud, Frances, and Aisha Yousafzai. 2015. “Global Health and Development in Early Childhood.” Annual Review of Psychology Rutschow and Schneider (2011). 66: 433–57. 68. Guitérrez and Rodrigo (2014); Lakshminarayana ACPF (African Child Policy Forum). 2011. The African Report on Child Wellbeing: Budgeting for Children. Addis Ababa: ACPF. 他 (2013). http://resourcecentre.savethechildren.se/sites/default 69. Howell, Kurlaender, and Grodsky (2010). /files/documents/3764.pdf. Akresh, Richard, Emilie Bagby, Damien de Walque, and Harounan 70. Karp 他 (2008). Kazianga. 2012. “Child Ability and Household Human Capital 71. Jepsen, Mueser, and Troske (2012). Investment Decisions in Burkina Faso.” Economic Development and Cultural Change 61 (1): 157–86. 72. De Witte 他 (2013). 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Popova, Evans, and Arancibia (2016). b. Popova, Breeding, and Evans (2017). ボックス 6.2 教員養成研修で有効なものは何か  ニューヨーク市で実際的な教室業務や 1 年目のカリキュラム 発見は,養成研修の価値を疑問視することになるかもしれない. に焦点を当てた教員教育プログラムに参加した教員は,1 年目 しかし, (Teach 代替的ルートは養成教育をより注意深い教員選抜 の教員に対して,そうではないプログラムに参加した人と比べ , for America の場合) (コ またはよりパフォーマンス指向型の契約 て,著しく良い成果を上げた a.同時に,教職への代替的ルー で置き換えている.つまり,養成 ミュニティの契約教員の場合) ト――通常の教員養成教育を行わないで先に進む Teach for 教育はほとんどの教育制度にとって依然として重要であり,より America やコミュニティ教員プログラムなど――を導入している 実際的な研修によってより良い結果を生む可能性が高いであろ 制度は,生徒向けの学習を削減しているわけではない b.この う. 出所:WDR 2018 チーム. a.Boyd 他 (2009). b.Duflo, Dupas, and Kremer (2015); Glazerman, Mayer, and Decker (2006). 6 教員のスキルと意欲はともに重要(ただし,そうではないかの如く運営されている教育制度が多い) 125 績を収めるだろう)に良い教員を戦略的に配置するな かもっていない状況下では,このような手引きには, ど,他の要因に牽引されているのかもしれない 9.教 教員向けに具体的な手順の概要を高度に脚本化した授 員を訓練することは極めて重要ではあるが,それの実 業プランの提供が含まれる 19.現職教員向けの良質 施にかかわる政治経済学的な挑戦課題は現職教員に対 な専門能力開発――反復的で,しばしば具体的なテク する研修よりも大きいだろう.しかし,その証拠はさ ニックに関して,追跡的な学校訪問を含む――を大規 らに限られている.有効な現職員の研修につながる原 予算を超過する.多くの国において, 模に実施すれば, 則と同じ原則が,事前研修改善のための有益な出発点 このことに対しては抗議が起こるだろう.しかし,教 になるだろう. 員はみずからが良質な授業を受けなければ学ぶことは  現職研修ないし専門能力開発に関しては希望がも できない.この難題に直面している国は,効果のない てるだろうか ? きっぱりとイエスと言うことができ 研修を短期間のうちに全員向けに行うのではなく,良 る.高所得国から得られた経験が示すところでは,実 質な研修を段階的に実施する方が良いだろう. 用性・具体性・継続性が効果的な教員専門能力開発の 鍵である 10.実用性が意味するのは,教員は理論的 生徒のレベルに合わせた授業をするよう教員を な概念ではなく具体的な方法を用いるように訓練され 支援することが有効である ており,また,研修は教室ベースでなければならない ということである 11.具体性が意味するのは,教員  学習危機に直面している多数の諸国では,最高の学 研修プログラムは主題となっている分野(例えば数学 習水準で始めた生徒だけが学習を継続することができ のクラスで数学を効果的に教える方法)に固有な教授 る.これは教員がクラスのなかで最も進んでいる生徒 法を研修する場合に,最も有効になるということであ を相手に授業を行う傾向にあることが一因である 20. る.継続性が意味するのは,教員は一回限りの研究集 このような生徒は教えるのが最も容易であり,教員が 会ではなく,有意義で継続的な支援を享受するという 生徒に質問すれば,積極的に答えてくれるのは彼らで ことである 12. ある.これで取り残されるのは少ない知識のまま入学  教員研修プログラムに学校への追跡的な訪問を含め してきた生徒たちである.実際に,ケニアの中途退 ると,学習の大幅な改善につながる.研修で新しい方 学者は退学の主因としてその問題を指摘していた 21. 法を学習するのと現場で実践してみることの間の溝を 多くの生徒が後れを取るもう 1 つの理由は,多くの 橋渡しするために,途上国は調査のための訪問を活用 諸国ではカリキュラムが要するに野心的にすぎるとい すべきである.その調査において,トレーナーは教室 う点にあるのかもしれない 22.教員としては,生徒 における教員の観察と支援を行う 13.アフリカでは, がついてくるのに困難があっても,カリキュラムに 長期にわたる助言やコーチングを伴う一連のプログラ 従って教えざるを得ないと感じている 23. ムが大きな学習効果をもたらしてきている 14.イン  1 人の学習者も置き去りにしないための鍵となる原 ドでは,教員向けの初期研修をほとんど行わないが, 則は,教員が生徒のレベルに合わせて教えるのをサ 1 年を通じて支援を提供するプログラムのおかげで, ポートすることにある.このテクニックは広範なシナ 数学と国語の能力が大幅に上昇した.なかでも,当初 リオの下で多種多様な形で成功してきている.例え 成績の悪かった生徒が最大の改善をみせた 15.上海 ば,成績最低者向けの補習授業にコミュニティ出身の ――世界の基準からすると成績が良い地域――の教員 教員を使う,クラスを能力別に再編する,技術を使っ は,継続的な「授業研究グループ」に参加しており,こ て授業を調整する,などである 24.多くの場合,教 のグループは教室における観察に基づく,啓発・指導・ 員による著しく大きな努力を要するわけでなく,むし 仲間評価を提供している 16. ろクラスの再編や成績最低者に対する補習授業の提供  同様に,具体的な授業テクニックに関連した研修は を頼りにしている.これに関連のある有効な授業の原 より効果的になってきている.アメリカにおける教育 則は,生徒に彼らの母国語で教えることである(ボッ の介入策を横断的に見ると,具体的な授業方法を教え . クス 6.3) るプログラムは一般的な授業方法に焦点を置いたプロ  生徒を能力別にグループ分けすれば,教員は授業を グラムと比べて,インパクトが 2 倍も大きかった 17. 担当クラスの生徒向けにより有効に調整できるだろ グローバルには,低スキルの教員向けには具体的な手 う.このようなグループ分けの理論的な効果はさまざ 引きが極めて重要である.というのは,そういった教 まである.対象が絞られた授業のプラス効果には潜在 員には意欲があっても効果的に行う能力がない公算が 的には下振れ効果が伴っている:成績の悪い生徒は成 あるからだ 18.時として,教員が限定的なスキルし 績の良い学友からもはや学ぶことができないという悪 126 世界開発報告 2018 ボックス 6.3 学習者の母国語で届ける  子供たちは自宅で話している言葉――母国語――で最も効果 は時に母国語による授業に反対する.母国語は労働市場では実 的に読むことを学ぶ.ケニアでは,低学年の生徒は先生が生徒 際的な言語ではないというのがその論拠である.しかし,南ア の母国語で研修を受け,その教材をもっていた時に,より高い フリカでは,低学年の時に母国語で授業を受けた生徒は,実際 読解力を示した a.フィリピンの農村部――授業は自分たちの現 には高学年において英語の流暢さがずっと秀でていた e.同様 地語で授業を受けていた――で,実験的実施に参加していた生 に,マラウイやフィリピンの実験的な介入策では,母国語で授 徒は,英語とフィリピン語を使っている伝統的な学校の生徒と比 業を受けた生徒は後の英語の読解力でも成績が良かった f.他 読解力と数学の得点が大幅に高かった b. べて, エチオピアでは, 方,ケニアにおける第 1 言語プログラムの結果は,第 2 言語に 母国語による授業の実施という改革から影響を受けた学校の生 (同プログラムはまだわずか 1 年間の運用) なると ,第 2 言語だ 徒は,その後は年齢に相応しい学年に進む公算が大きかった c. けの識字プログラムよりも良くはなかった g. 自分たちの母国語で授業を受けている生徒は,学習に対する直  しかし,多数の言語が共存している国では,母国語による授業 接的なインパクトを上回って,26 カ国からのデータが証明して 「ミスマッチ」 の実施には抗しがたいものがあり,言語の は学習者 いるように,通学・就学においても頑張る可能性が高いようで が後れを取るという結果をもたらすことがある.フィリピン人が話 ある d. す言語は 180 以上,ケニア人の場合は 70 以上,ペルー人は約  母国語で読みを学んだことに伴うスキルの増大は,第 2 の言 100 にもなる.世界中の 98 カ国で,無作為に抽出された 2 人が 葉によるより大きなスキルに転換可能である.親や政策当局者 (地図 B6.3.1)h.支配 同じ母国語を話す確率は 50%未満である 地図 B6.3.1 世界における言語の多様性 無作為抽出された 2 人が 異なる言語を話す確率 低い 高い 出所:Ethnologue (2015) からのデータに基づく IBRD 43166|SEPTEMBER 2017 IBRD 43166|SEPTEMBER 2017 WDR 2018 チーム . データは http://bit.do/WDR2018-Map_B6-3-1. 影響をこうむる.さらに,特に低学年では,生徒の能 ラス効果をもたらしてきている.ケニアでは,生徒を 力は必ずしも測定が容易ではないため,能力別に分け 能力別にグループ分けしたところ一律に成績の改善に ることは,生徒を間違った軌道に乗せかねない.また, つながり,意欲の強い教員が担当したグループで最大 教員は成績の悪いグループに教える時には努力を削減 のインパクトがあった 25.インドでは,学校は 1 日 するかもしれない.良質な教員は成績の良いグループ 当たりわずか 1 時間だけクラスが能力別に再編され を担当させられるかもしれない.この生徒たちは教え ていたが,そのおかげで学習の著しい改善が観察され るのが容易であるため,この担当は報奨のように感じ た 26.これ以外の証拠のほとんどはアメリカから得 られる. られている.信頼できる反事実的な仮説に依拠した研  学習水準が非常に低い学校制度では,能力別グルー 究の発見では,能力別の生徒グループ分けは,一部の プ分けは成績の悪い生徒と良い生徒の両方に対してプ 生徒を助けるか,または少なくとも悪影響を与えるこ 6 教員のスキルと意欲はともに重要(ただし,そうではないかの如く運営されている教育制度が多い) 127 ボッ (続き) クス 6.3 学習者の母国語で届ける 的な言語のグループがあるコミュニティでは,その言語を母国 い恩恵かもしれないが,新しい構想には依然として教材や教員 語授業に選択すれば,少数派の子供たちは無視されるかもしれ 研修への主要な投資が含まれている.もっと多様な地方では, ない.言語が数少ない国においてさえ,教員は母国語授業につ 政府としては母国語授業に関連した費用と便益を,教育全体の いては,一般的にほとんど訓練を受けていないし,母国語授業 質改善のための競合する投資のそれと比較考量する必要があろ (共通語) 向けに利用可能な教材は,リングワ・フランカ での教 う.場合によっては,政府は選び抜かれて,訓練の行き届いた 材よりも限定的で低質かもしれない i.母国語が複数あるコミュ 教員を選択するかもしれない.そういう人なら言語にかかわら ニティでは,学校はクラスを母国語別に分けることもできようが, ず,生徒に合ったレベルで教えることに関してもっと支持を受け この区分けは差別として機能するかもしれない j.母国語授業は られるだろう. ブルンジやハイチなど母国語の数が限定的な諸国では紛れもな 出所:WDR 2018 チーム. e. Taylor and von Fintel (2016). a. Piper, Zuilkowski, and Ong’ele (2016). f. Shin 他 (2015); Walter and Dekker (2011). b. Walter and Dekker (2011). g. Piper, Zuilkowski, and Ong’ele (2016). c. Seid (2016). h. Ethnologue (2015). d. Smits, Huisman, and Kruijff (2008) i. Ong’uti, Aloka, and Raburu (2016); RTI International (2016). j. Metila, Pradilla, and Williams (2016). とはなかったかのいずれかであった 27.成績の悪い 図 6.1 カリキュラムについてこられる学習者はほんの一部 にすぎない 教育制度においては,成績が最低の生徒はほとんどま 数学テストにおける正答確率(学年別,カリキュラム標準との相 たはまったく何も学んでいないので(図 6.1),教員が 対比,インドのアンドラ・プラデシュ州) 授業の対象者を自由に設定しても結果としてはプラス 100 効果をもたらすのであろう. 5 学年の標準  教員が生徒のレベルに合わせて教えるのを手助けす 80 パーセンタイルの 90 番目 るもう 1 つの方法は,より良い診断を下すのを指導 60 することである.リベリアでは,生徒をよりうまく評 平均 1 学年の標準 % 価するよう教員を指導した介入策が,特に研修や追加 40 的な資料と組み合わされた場合には有効であった.マ ラウイにおける類似のプログラムも同様であった 28. 20 シンガポールでは,生徒は 1 学年の初めに選別試験 パーセンタイルの 10 番目 0 を受け,読解力が遅れている生徒は毎日追加的な支援 1 2 3 4 5 を受ける 29.対照的に,単に形成的評価を提供する 学年 インドの介入策は効果がなかった.診断報告書と授業 出所:Muralidharan and Zieleniak (2013) からのデータに基づく WDR 2018 チーム.データは http://bit.do/WDR2018-Fig_6-1. を強化するための報告書の使い方に関する記述式の提 案を提供するというインドのもう 1 つのプログラム もやはり効果がなかった 30.明らかに,教員が生徒 整することが可能となる 31.より高度なソフトウェ の能力水準をより良く理解するのを手助けするのは有 アでは,生徒を初期に選抜するだけでなく,継続的な 意義ではあるが,もし教員に有効に対応するツールな 成績に基づいて質問を動的に調整する.コンピュータ いしそうするためのインセンティブが欠けているとす を支援に用いる授業に関する総合的な証拠は著しく入 れば――複数のレベルで生徒に教えることが挑戦的で り混じってはいるものの,インドのデリー市の中学生 あることを考えると――,それだけでは十分ではない 向けのプログラムのダイナミックな学習プログラムは かもしれない.診断が機能するのは,教員の意欲が拘 数学と国語の両方における際立った好成績につながっ 束力のある制約ではないことに加えて,追跡的な制度 た 32.生徒のレベルに合わせて教えるというのは新 が整備されている場合であろう(ボックス 6.4). 規の発想ではないが,一連の新たな証拠は途上国にお  新技術は生徒のレベルに合わせた授業を手助けする いて実施可能な 方法を指し示して (大規模であっても) のに有望な方法を提示している.コンピュータ支援の いる. 学習プログラムでは,生徒は自分のペースで進む,な いし授業のレベルを初期の選抜試験に基づく水準に調 128 世界開発報告 2018 ボックス 6.4 ラテンアメリカでは診断データを使って学習の改善を実現  メキシコのコリマ州は全国試験における生徒の成績に基づい 数学の両方について改善したが,それはプログラム開始から数 て,成績の悪かった公立学校で学習改善プログラムを実施した. カ月経過してからのことであった a.アルゼンチンにおける類似 各学校は月 3 回指名された技術アドバイザーの訪問を受ける. のプログラム――生徒の学習成果に関する報告書を公立小学校 成績不振の理由を理解するだけでなく,試験の情報を分析する に配布して,教員に生徒の長所と短所を知らせた――も,学習 ために教員を訓練することが目的である.アドバイザーはこの分 を向上させた.そのような学校の生徒は次のように報告してい 析に基づいて――学校運営責任者や教員と協働して――,確認 る:先生たちは教室で生徒たちとの相互交流により積極的にな された問題に取り組むために学校固有の計画を策定し,その実 り,早い時間に帰ることが少なくなった b. 施期間を通じて追跡的な支援を提供した.生徒の成績は国語と 出所:WDR 2018 チーム. a. de Hoyos, Garcia-Moreno, and Patrinos (2017). b. de Hoyos, Ganimian, and Holland (2016). 大な尊敬を受ける,よく訓練されている,給与は悪く 教員の意欲とインセンティブは ない,授業標準の実施に関しては自律性が与えられて たとえ投入がほとんどない場合でも いる,といったことにある 33.多くの国では,教員 効果をもたらす の平均給与は他の専門職給与との相対比で低下してき  いかなる量の研修や投入といえども教員の意欲に ている.このことと同時に,教職における賃金の分散 取って代わることはできない.多くの国々では教員の は縮小してきている.高能力の候補者は給与格差が狭 無断欠勤率が高いため,取り組みの推進は深刻な挑戦 いことであまり魅力を感じない公算があろう.という 課題となっている.さらに,教員はたとえ出勤してい のは,好成績を収めても,専門家としての報奨を享受 ても,多くの場合にクラスで教えてはいない.にもか できる機会がほとんどないからだ 34.教員給与を再 かわらず,多くの諸国の教育制度は成績の良い教員を 編して,競争的な報酬にするとともに,好成績には見 報奨することも,成績の悪い教員を罰することもして 返りを提供すれば――給与を通じて直接的に,ないし いない.教員は専門家として扱われる必要がある.優 は昇進や雇用継続を通じて間接的に――,教職に参入 れた専門家は支援と尊敬を享受するとともに,大きな してくる候補者の質が改善するかもしれない.しかし, 期待が寄せられてもいる.教員がしていることに注意 これは長期的な解決策であって,応急措置ではない. を払わない教育制度は,受けるに値する尊敬を教員に それ故,最優秀の候補者でさえ,自分のスキルと努力 授与していない(ボックス 6.5). を長期にわたって維持するためには支援制度を必要と  長期的には,教員の能力と意欲を強化する最善の方 している. 法は,有能で,生来的に意欲に溢れた人たちをこの専  人材の選抜や確保に関する方針を改善すれば,より 門職に引き付けることにあるのかもしれない.多くの 良い教員がもたらされるだろう.能力主義の採用―― 国々で,教職に就こうとしている若者は学問的には最 恩顧に代えてテストに基づくということ――は,生徒 優秀ではなかろう(図 6.2).フィンランドでは,教職 の学習を改善することができるだろう 35.1 つの提 は憧れの専門職である.その大きな理由は,教員は多 –  案は,3  5 年程度の教職徒弟制度の導入であり,こ ボックス 6.5 教員の給与を引き上げれば意欲は高まるだろうか?  多くの諸国で,教員は他の同程度の教育がある専門職よりも 員の努力や生徒の成績に目立った効果はなかった b.長期的に 給与が低い a.給与を引き上げれば,意欲やパフォーマンスが は高給で有能な候補者を教職に引き付けることができるかもし 高まるだろうか? インドネシアはインパクトを評価するための れないが,給与の引き上げは意欲ないし努力の不足に対する即 制御されたランダム化比較試験として,有資格教員の給与を倍 効薬では決してない. 増してみた.教員の満足感は確かに増大したものの,既存の教 出所:WDR 2018 チーム. a. Mizala and Ñopo (2016); OECD (2016a). b. de Ree 他 (近刊) . 6 教員のスキルと意欲はともに重要(ただし,そうではないかの如く運営されている教育制度が多い) 129 図 6.2 エンジニア希望者は教員希望者と比べて PISA テストで典型的には得点が高い PISA 2015 に参加した国および経済の得点(科目別・自分が希望している職種別) a. 数学 b. 読解 600 600 500 500 点数 点数 400 400 300 300 エンジニア希望者 教員希望者 出所:OECD (2016b) からのデータに基づく WDR 2018 チーム.データは http://bit.do/WDR2018-Fig_6-2. 注:PISA = Programme for International Student Assessment. のことは,制度がおのずと有効な教員を発見するのを 単に 2 つの重要な部分にすぎない.同時に,多種多 可能にする 36.最も有効でない教員は教員部隊から 様な環境下にある教員は授業を上回る多くの要求だけ 押し出される.アメリカでは,最も有効性を欠いてい でなく,給与の遅配や身の危険といったリスクにさえ る教員を段階的に押し出すという提案は,学習者に 直面している(ボックス 6.6).教員は無断欠勤率が高 とって長期的な恩恵は相当に大きいことが示唆されて い一方でスキルが低いというデータを鑑みると,教育 いる. –  最も有効性のない 7  12%の教員を代替すれば, 制度の欠陥の多くについて教員を非難したい誘惑に駆 アメリカとフィンランドの生徒の成績格差を埋めるこ られるだろう.しかし,このような制度は往々にして とがきるかもしれないとの指摘さえある 37.他の諸 教えること以外のずっと多くのことを教員に要求して 国において教員に加えられる付加価値に関する推定値 いる――しかも時として支給される見返りは比較的僅 は比較可能であり,教員選抜を改善すれば世界中で同 少にとどまっている 42. 様に大きな利益があることが示唆されている 38.  金銭的・非金銭的なインセンティブは教員の意欲  教育制度は教員とその他の主体との間でインセン に作用し得るメカニズムの 1 つである.インドでは, ティブの整合性をとるべく,説明責任を負う必要があ 読解力と数学の得点が高いクラスの教員に金銭的なイ る.教員は生徒・親・管理者とははっきり異なるイン ンセンティブを供与している小学校では,生徒の成績 センティブや情報をもっている.また,メンタル・モ が良かった 43.他の地域では金銭的なインセンティ デルや社会からの期待もすべての主体の決定に影響す ブが支給されていないにもかかわらず,生徒は理科と る.教員は意欲の提供に説明責任がなければ,生徒や 社会でも高得点をとっていた.他の金銭的なインセン 親が強く望んでいるにもかかわらず,努力を最小化し ティブはケニアの 2 つの地区とインドの別の場所にお ようとするかもしれない.アルゼンチンやウガンダで いて成功していた 44.それとは対照的に,アメリカ は,調査対象になった教員の 3 分の 1 以上が生徒の では,教員に対する金銭的インセンティブはいくつか 学習に責任を負っているとは考えていない.セネガル の州ではテストの得点改善にはつながらなかった 45. ではこのシェアは半分以上となっている 39. ただし,教員向けの金銭的インセンティブを大きくし  教員の意欲はさまざまな行動メカニズムを通じて作 たところ,コロンビア特別区では生徒の学習成績が確 用し,多くの形で表現される 40.他人が行動を観察 かに向上した 46.メキシコやタンザニアでは,金銭 しているという事実が,一種の専門家として教員の意 的インセンティブはもう 1 つの介入策と組み合わさっ 欲を高める.評価も同様である.教員は自分の行動が て初めて有効であった 47.このような疎らな証拠の 評価され,それが関連した成果をもたらすということ 解釈方法の 1 つとしては,金銭的インセンティブは を予想している 41.好成績の教員に対する金銭的な 教員が学習改善のために直接的な措置をとっている場 インセンティブや怠慢な教員の解雇というのは,説明 合に,有効になる可能性が非常に高いということであ 責任にかかわる幅広いスペクトルの介入策における, ろう.教員の無断欠勤あるいは学校にいても教室にい 130 世界開発報告 2018 ボックス 6.6 教職の足を引っ張っている 1 つの要因:劣悪な労働条件  低中所得国における学習不足の直接的な原因に関する分析で などを挙げることができる e. は,しばしば教員が標的になっている.証拠が示唆するところで  途上国の教員は過酷な労働・生活条件にも直面している.学 は,多くの国々で教員は驚くほど多くの授業日数を欠勤しており, 校設備や機器の欠如はしばしば教員の努力を妨害する f.多くの 担当科目についてほとんど何も知らない.この理由から,生徒 教員は自分と自分の家族を扶養するために,副業に就いている g. もその他の利害関係者も教員からより多くのことを望んでおり, 遠隔の農村部の教員にとっては状況はさらに悪く,勤務や給与 それも当然であろう.しかし,教員自身も雇用主である教育制度 受け取りのために長距離を往復しなければならない h. からもっと大事にされるに値する a.過去 20 – 30 年間に,教職  また,さらにカリキュラム改革が広く実施されている.教員は の地位は給与・尊敬・労働条件の点において世界中で低下して 生徒に新しいスキルを身に付けさせ,より良い教授法を活用す きている b.教育へのアクセスの急拡大を受けて,途上国の教 ることを要求されている.ところが,教員には十分な研修や支 員は往々にして複数学年を擁する大規模クラスを担当している c. 援的な教材が供与されていないことが多い i.このような場合, 教員不足は仕事量を増やし,長時間労働を要求し,時には二交 教員は専門家として振舞うことが期待されているのに,教育制度 代制を必要としている d.加えて,教員には教室以外の義務もあ の側が教員に対して専門的能力開発の機会を提供したり,専門 る.PTA 業務の調整,課外活動の運営,事務管理業務の遂行 的な文化を創造したりすることに失敗しているのである j. 出所:WDR 2018 team. (2017); Osei (2006); Urwick and Kisa (2014). a. Evans and Yuan (2017). e. Guajardo (2011); Liu and Onwuegbuzie (2012); Luschei and b. Dolton and Marcenaro-Gutierez (2011); Hammett (2008); Chudgar (2017). Harris-Van Keuren and Silova (2015). f. Alcázar 他 (2006); Gamero Burón and Lassibille (2016); Urwick c. Gamero Burón and Lassibille (2016); Guajardo (2011); and Kisa (2014). Ramachandran, Bhattacharjea, and Sheshagiri (2008). g. Urwick and Kisa (2014). d. Avalos and Valenzuela (2016); Gamero Burón and Lassibille h. Gamero Burón and Lassibille (2016). (2016); Liu and Onwuegbuzie (2012); Luschei and Chudgar i. Peng 他 (2014); Urwick and Kisa (2014). j. Mooji (2008). ないことが多い環境下では,教員にとっては,要する もの,あるいは生徒の学習など産出に基づくものにす に学校に来て,授業時間を増やしさえすれば,学習を ることができる.絶対水準の達成,それとも変動幅に 改善することができることは明らかである.そうでは 基づくのか? 目標を達成した全員に授与されるの なく,教員の無断欠勤が最小のアメリカでみられる環 か,ないし学校間の競争なのか? 規模は教員給与と 境下では,学習改善のために教師がとるべき具体的な の相対比でさまざまであろう.このような設計要素に 行動は自明でもなく,実施も容易ではない公算があろ 関する証拠は依然として限定的ではあるが,現地の制 う.非金銭的なインセンティブには,高い実績を上げ 慎重に検討するに値するだろう. 度を考慮に入れつつ, た教員に対して特別功労賞を授与することも含まれよ  同様に,教育制度全体のインセンティブ体系の正確 う.教育分野におけるこのようなインセンティブの有 な形は状況次第で変化するであろう.金銭的インセン 効性に関する証拠は限定的である.ただし,他の分野 ティブが実験的実施に値するところもあれば,コミュ では示唆に富む証拠がある.例えば,ザンビアの医療 ニティの説明責任強化が有効なところもあるだろう. 従事者の間では特別功労賞の授与を受けて,パフォー このような介入策に関する証拠がさまざまであるとい マンスが著しく改善した 48. うことは,状況を慎重に検討して,現地でプログラム  金銭的インセンティブは挑戦課題も生み出す.ケニ を試行してみる必要があるということの示唆であろ 教員はインセンティブ アでは, ・プログラムに反応して, う.しかし,細部は変化するであろうが,教員の努力 もっと全般的な学習をややないがしろにしながら,テ に対してインセンティブ――陰に陽に――を付与せず スト向けに特化して授業を行った.メキシコの中学校 に成功できる教育制度はあり得ないであろう. の教員インセンティブ・プログラムでは,生徒の学習 で確認された大幅な改善のうち相当大きな部分はカン * * * ニングによるものであった 49.アメリカでは,インセ ンティブが増額された際,教員によるごまかしが著し  長期的にみると,教育制度は教員が尊敬され,準備 く増加した 50.また,教員インセンティブ制度を廃止 ができていて,能力に基づいて選抜され,仕事のなか すれば,このことの結末も悪影響をもたらし得る 51. で支援を享受している時に,最善のパフォーマンスを  金銭的インセンティブに関しては細部が重要であ 示している.各国はこのような目的に向けて務めるべ る.インセンティブは,出勤など教員の投入に基づく きである.しかし, 各国は教員のパフォー 短期的には, 6 教員のスキルと意欲はともに重要(ただし,そうではないかの如く運営されている教育制度が多い) 131 マンスを強化するための措置をとることができる.各 Muralidharan, Singh, and Ganimian (2016). 国は,専門的能力開発プログラムの質を改善すること 25. Cummins (2016); Duflo, Dupas, and Kremer ができる.そのためには,教員の教室でのパフォーマ (2011). ンスを変更させるような種類の能力開発に資源をシフ 26. Banerjee 他 (2016). トする必要がある.国は,教員が生徒のレベルに合わ 27. Figlio and Page (2002); Lefgren (2004); せて教えるのを手助けできる.教員を専門家の集団に Zimmer (2003). して,自分が知っていることすべてを適用しようとい 28. Bolyard (2003); Piper and Korda (2010). う意欲を抱かせることができよう.学習者の教育に 29. OECD (2011). とっては教員が鍵を握っている.短期と長期の両方に 30. Aaronson, Barrow, and Sander (2007); Duflo おいて,教員をより有効にすることは素晴らしい投資 他 (2014);Muralidharan and Sundararaman である. (2010). 31. Banerjee 他 (2007); Carrillo, Onofa, and Ponce (2010). 注 32. Muralidharan, Singh, and Ganimian (2016). 1. UIS (2017). 33. Sahlberg (2011). 2. Bold 他(近刊); Tandon and Fukao (2015); 34. Jackson (2012). World Bank (2016). 35. Estrada (2016). 3. Bruns and Luque (2015); Mulkeen (2010). 36. Muralidharan (2016). 4. Strizek 他 (2014). 37. Hanushek (2011). 5. Calderón (2014); World Bank (2014, 2016). 38. Buhl-Wiggers 他 (2017). 6. Darling-Hammond 他 (2009). 39. Sabarwal, Abu-Jawdeh, and Masood (2017). 7. 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McCaffrey, 135 他のすべてのことは 教員と学習者の相互作用の強化に 向けられるべき 7 学校への投入,学校の運営,および学校の統治への投資は,多くの場合,それが教員と学習者の関係をどの程度改善する のか,という指針に導かれていない.有効であるためには,指針があってしかるべきである.  学習の教材やその他の投入で支援されている時に や統治の改革は,教員と学習者の相互作用に影響し は,学習者と教員の間には,より生産的な学習関係が て初めて学習の向上を達成できるということを認識 ある.所得が最低の国から最高の国に至るまでのほ しておく. とんどの諸国は,教室や教育制度に技術を組み込もう としている.しかし技術は,学習者が手にしている 技術的な介入策は学習を向上させる 鉛筆や教科書から学校の壁や屋上にいたるまで,教員 ――ただし,それが教員と学習者の関係を と生徒の関係を改善することを意図した投入の範囲を 改善することが条件となる 議論しているに過ぎない.適切に運営されている学校 は,教員から学んでいる生徒の支援にも焦点を当てて  技術は学習を強化することができる 1.ソフトウェ いる.にもかかわらず,技術は――その他の物理的な アは,生徒が自分のペースで学べるなら,さらに,最 投入と一緒になって――,教員と生徒がしている学習 良の場合には生徒の知識にダイナミックに適合する の支援にしばしば失敗している.そして,学校の指導 ならば,非常に効果的でありうる 2.中国の青海省に 層やコミュニティのメンバーが有している潜在力は, おけるゲーム形式のコンピュータ補助学習プログラム 往々にして実現されないままとなっている. は,国語の点数改善を企図したものであったが,それ  本章では証拠と実際のギャップが最大の場所におけ に加えて数学の点数も押し上げた 3. る,このような補完的な投入の最も有効な利用にかか  技術というのは,生徒にコンピュータを供与する以 わる証拠を並べてみたい.多くの場合,観察される失 上のことを意味する.ICT 介入策には,個々の生徒 敗には,人間行動のモデルを通じて光を当てることが から教育制度まで,あらゆるレベルの教育システム, でき,それが解決の道を指し示してくれる(表 7.1). 広範な技術的モニタリングや情報システムが含まれ このような分野における証拠を総合すると,学校への る. Google Classroom,Blackboard,ブラジルの 投入を通じて学習を達成することに成功するのに鍵と Education Connection などのオンライン・プラッ なる 3 つの原則が明らかになる: トフォームだけでなく,コンピュータやコンピュータ 補助学習ソフトによって,生徒や保護者は宿題や教材 • 他の投入――新技術を含め――が教員を補完し,こ に関して教員と意思疎通をとることができる.また, のことによって授業がより有効になることを確保す そのようなコンピュータ関連の技術は,年齢に相応し る.このアプローチの採用は,能力のない教員を探 い発育活動を設計する際に活用できる,無料の資料を し出すことよりも,むしろ学習を増やすことになる. 教員や保護者に提供している 4.このようなプラット • 現行制度の下で,確実に情報通信技術(ICT)が実装 フォームには双方向的な白板,教員を支援するための され得るようにする.さもなければ,それは有効で 文章メッセージ,訓練された教員へのアクセスが限定 はないだろう. 的な地域における授業の質を改善するためのテレビ・ • コミュニティによるモニタリングを伴う学校の運営 プログラムなどが含まれる 5. 136 世界開発報告 2018 表 7.1 人間行動のモデルは学校の投入や統治の有効性を改善するための行動の手引きになり得る:若干の実例 それが実施されていない このような失敗の背後にあるメカニズムを モデル化されたメカニズムに取り組む 総合的な原則 ところ 特定しているモデル アプローチ 追加的な投入は教員を代 ラップトップのような投入 情報に関する失敗:政策当局は学習に関 新しい本や教材は多くの場所で効果がな 替するのではなく補完すべ は時として,教員と学習者 する代替モデルに関する証拠もなしに,う かったが,リベリアでは教員研修と組み合 きである. の関係を迂回するために まく機能していない教員と学習者の関係を わされた場合には生徒の成績が上がった. 使われており,学習成果の 迂回しようとしている. 達成には失敗している. 技術は学習向上を達成す 教育の技術投資は決まって 行動の失敗(楽観バイアス): 政策当局は インドでは,コンピュータ補助による学習 るために,現行教育制度 失敗している.それを保守 非現実的な技術進歩を予測している. のおかげで,専用技術センターでは学習 の下で実施可能でなけれ する能力が限定的か,あ 成果が劇的に改善した. ばならない. るいは有効に機能するの に必要なインフラが存在し ないからだ. 学校統治の改革やコミュニ 学校統治の改革やコミュニ 情報に関する失敗: コミュニティのメン メキシコでは,長期にわたるコミュニティ ティによるモニタリングは ティによるモニタリングは バーは多くの場合に,学習プロセスの最 の関与と実質的な意思決定の分権化の組 学習を改善するが,それ 往々にして,コミュニティ 重要な部分――教室で起こっていること― み合わせが有効であった. は教員と学習者の相互作 の能力を顧慮に入れてい ―を観察していない. 用に影響を与えることが条 ない 件となる. 出所:WDR 2018 チーム.   ICT には教育にとって著しい利益をもたらす潜在 は当初計画比でみて実施までに 24%も長い時間を要 力があるものの,試みられた介入策の効果は非常にさ している 11.現行制度の下に真に実施可能な技術に まざまである.なかには極めて素晴らしいプログラム 焦点を絞ることが極めて重要である.農村部では,教 もある.例えば,インドにおける中学生向けのダイナ 育制度が脆弱であるため技術はより魅力的かもしれな ミックなコンピュータ補助学習プログラムは,そこや い.しかし,同時に,その脆弱な制度には――電気や その他の場所で試行された他のほとんどの学習介入策 インターネットへのアクセスが限定的であるがゆえに よりも,数学と国語の点数の上昇幅が大きかった 6. ――,教育面で技術的な介入を支えるのに最小の能力 しかし,ペルーやウルグアイにおける「子供 1 人にラッ しかない. プトップ 1 台を」といった他のプログラムなどは,生  実施に伴う見返りがさまざまで挑戦課題が多いにも 徒の国語や数学の能力に何のインパクトも与えてい かかわらず,教育技術に対する投資がなぜこうも盛ん ない 7.実際に,ICT 介入策の大部分は生徒の学習に まったく影響がなかったか,ないしはマイナスの影響 図 7.1 ICT の学習に対するインパクトはこもごも があった(図 7.1)8. 教育技術が生徒の学習に及ぼす効果の分布(種類別)  加えて,現在の証拠は教育に対する ICT 介入策の 100 プラス効果 有効性を過大評価している可能性がある.というの は,多くは実施前に失敗している――ないしはひどく 80 つまずいている――からである.ハイチでは,教員の 出勤をモニターするためにスマートフォンを利用する というプログラムは,教員の出勤にも生徒の成績にも 60 効果なし 効果がなかった.というのも,実施が継続不可能だと % いうことが判明したからだ 9.ブラジルの「子供 1 人 40 にラップトップ 1 台を」というイニシアティブは,数 州では数年の遅延に直面した.ラップトップが教室に 20 持ち込まれてから 1 年後,40%以上の教員が申告し 負の効果 たところでは,教室の活動では使ったことがない,な 0 いしめったに使っていない 10.富裕国も同じ挑戦課 ソフトウェア ハードウェア 題に直面している:イギリスでは,教育以外でも公共 出 所:Muralidraran, Singh, and Ganimian (2016, annex 2) か ら 部門の ICT プロジェクトのほぼ 5 分の 1 は,25%以 の デ ー タ に 基 づ く WDR 2018 チ ー ム. デ ー タ は http://bit.do/ 上のコスト超過に陥っており,典型的なプロジェクト WDR2018-Fig_7-1. 7 他のすべてのことは教員と学習者の相互作用の強化に向けられるべき 137 なのだろうか? プリンシパル = エージェント関係 ―がある. と行動バイアスの両方が一定の役割を果たしている公  戦争や流行病などの災厄に見舞われたような脆弱な 算がある.プリンシパル = エージェント・モデルに 環境下では,技術は,公式な学校教育とのつながりを は実際的な意味がある.というのは,公務員は学習改 維持することにおいてある程度の希望を抱かせる.シ 善のための有益性には頼らずに,派手な技術的介入策 –  エラレオネでは 2014  15 年にエボラ出血熱が流行し から政治的な見返りを引き出せるかもしれないから た際,学校が 8 カ月間にわたり閉鎖されたが,政府 だ.つまり,公務員の個人的なインセンティブ(非常 は週当たり 5 日間の授業を行うという緊急教育プロ に目立つ投資をすることに向けた)は,生徒の(学習す グラムを打ち出した.ラジオでの 30 分間の授業では る)目標からは逸脱している公算が大きい.認知バイ 学習に関して大きな影響を与えそうもないが,この種 アスも要因かもしれない.個々人は非現実的に楽観的 のプログラムは子供たちを学習に繋ぎとめておくのに になりすぎている.事実,学校における技術の変革的 役立つだろう 17.スーダンの とい 「学習が待ち遠しい」 な性質を過大評価するということに関しては長い歴史 うプログラムは,就学していない子どもたちに学習ゲー があり,トーマス・エジソンが 1913 年に次のように ムが満載されたタブレットを提供するもので,数学に 主張したことにまで遡る:「学校では教科書がすぐに ついてプラスの学習効果があり,今やシリア難民を受 陳腐化するだろう.…われわれの学校制度は今後 10 け入れている地域で大規模な導入が試行中である 18. 年間で完全に変わるだろう」.エジソンは教科書は完 教師がいない地域では,そのようなアプローチは最善 全にサイレント・フィルムに取って代わられると予測 の選択肢かもしれない. した 12.それから半世紀が経ち,コンピュータが影  識字能力と数的能力に対するインパクトが,成功に 響力を増すなかで,ある時点でコンピューターが教員 関する唯一の指標というわけではない.技術はデジタ に取って代わるかもしれないと考えている学者もなか ル・スキルも促進することができる.より多くの仕事 にはいる 13.もちろん,技術に溢れた環境下にある がデジタル・リテラシーを必要とするようになってい 学校は他の学校とは確かに違って見えるだろう:生徒 るなかで,このスキルを修得する機会はそれ自体が目 は紙ではなく双方向的なディスプレイの上で作業をす 的となっている.自宅でコンピュータを利用する機会 るだろう.しかし技術は,その大部分に関して,教育 が多い生徒の方が,コンピュータ・スキルに優れてい を特に大きく変えることはしていない.校舎・授業日 る 19. ペルーの また, 「子供 1 人にラップトップ 1 台を」 の流れ・教員と生徒との相互作用などは,1 世紀前と というプログラムは学業の達成度や認知スキルに何の 非常によく似たままである 14. 効果もなかったものの,ラップトップの使い方に関す  教員を補完する技術は教員に代替する技術よりもう る生徒たちの知識は確かに著しく改善した 20.この まく機能する.多くの生徒からみると,教員は準備不 ような場合,目的の明確化が鍵となる.明らかに,若 足であり,研修と意欲も限定的である.他方で教育制 者はコンピュータの使い方を学ぶためにはそれが必要 度は,このような教員を迂回するために技術を利用す しかし, である. 読解力や数的能力を教えるためのツー る誘惑に駆られてきている.そのような試みのほとん ルとしては,その有用性に関する証拠は成否が入り混 どは失敗してきている.対照的に,教員を補完するた じっている. めの技術利用はもっと有望である 15.インドのグジャ ラート州で 2 つの形で実施されたコンピュータ補助 他の投入は学習者を学校に来させるが, 学習プログラムを検討してみよう.1 つのアプローチ 学習を促進するのはそれが授業や学習を では,コンピュータ・ベースの数学プログラムを使う 目的としている場合だけ ために普段の授業から生徒が選抜された.換言すれば, このプログラムが通常の授業時間に代替したというこ  学校を建設すれば,学校がほとんどない地域では就 とである.このプログラムに属する生徒は通常の教員 学,特に女子の就学を増やすことができる.アフガニ の下に残された生徒との比較で,著しい成績不振を示 十数カ所のコミュニティでコミュニティ スタンでは, ・ した.もう 1 つのアプローチでは,生徒は放課後に ベースの学校施設を建設したところ,就学者が著増 このプログラムを利用し,大きな改善がみられた.特 して,就学のジェンダー格差は実質的に消滅した 21. に成績が最低だったグループにおいて大きな改善がみ ブルキナファソでは,近代的な快適性を有する学校建 られた 16.教員を補完する技術にかかわるもう 1 つ 設の計画によって就学が大幅に増加し,女子に最大の の実例としては,教室で活用可能なビデオ化された良 インパクトがあった.インドでは,校舎全体の建設の 質な授業シリーズ――ブラジルの Telecurso など― 次の段階として,トイレ――特に男女別のもの――を 138 世界開発報告 2018 建設したことが思春期の女子の就学の大幅な増加につ 入を提供している多くの介入策は失敗している.それ ながった 22.しかし,学習者の学校へのアクセスが はまさに資源の使い方について十分な考慮がなされて 比較的容易な場所では,学校施設を追加することはア いないからだ.インフラやその他の投入は必要不可欠 クセスを増やす,あるいは学習を改善するのに最も費 ではあるが,それが機能するのは授業と学習の間の関 用効果的とはいえないだろう. 係に資する時だけである 27.  インフラが欠如している場所でさえ,その提供は必 ずしも学習の向上にはつながらない.アフガニスタン 学校の運営・統治は極めて重要であり, やブルキナファソのプログラムが学習を向上させた一 コミュニティを関与させることはインセンティブ問題や 方で,インドのプログラムにはそういう効果はなかっ 情報の失敗を克服するのに役立つ――ただし, た.なぜなのか? かつてはアクセスがなかった場所 コミュニティにその能力がある場合に限られる に学校を建設することは,以前には存在しなかった学 習場所を作り出すことによって,子供たちの学習プロ  運営が優れている学校はテストの点数も高い 28.運 セスは直接的に変更される.トイレの建設は学校を安 (図 7.2) 営の質は学校によって大幅に異なり ,学校の 全な空間にし,したがって子供たち(特に女子)をもっ 指導層が学校の実績に極めて重要な役割を果たしてい と学校に居させることができるようになる.ただし, る.効果的な管理とは,教員が問題を解決するのを積 教室で起こることに影響するわけではないため,学習 極的に支援する――授業に関する助言の提供を含む― には影響しないかもしれない. ―学校長がいるということである 29.また,その校  学校給食によって子供たちは学校に行くが,必ずし 長が教員と一丸となって,高水準の学習を優先的に達 も学習を改善させるとは限らない.学校ベースの食事 成する目標を設定するという意味でもある.このよう プログラムによる最も首尾一貫したインパクトは,ブ な要素は最高水準の生徒の学習と関連があり,学校指 ルキナファソやケニア,ペルーなどにおけるように, 導層が有効であれば教員と学習者の相互作用の質は改 就学者の増加にある 23.就学する年齢になると,食 善するということを確かなものにしている.アメリカ 事の提供はもっと幼い時期との比較で脳の発達に対す のある主要な学校区では,次の 3 組のスキルに関して る貢献度が小さくなるが,注意力や栄養状態の改善を 学校長に研修を受けさせることによって生徒の学習を 通じて依然として学習を向上させることができる.し 改善した:学習計画において教員にフィードバックを かし,もし食事が通常の授業時間中に提供されるなら, どのように与えるか;通常の学習者評価において教員 それは勉強時間を削減する.ケニアとペルーでは,食 を支援する方法に加えて生徒のパフォーマンスを改善 事が授業時間の相当な部分を奪っていたので,差し引 するための行動計画に関するコメントの仕方;教室で きでの効果は曖昧であった.測定された学習へのイン の観察を通じた教員のパフォーマンスに関するコメン パクトはこもごもだが,ブルキナファソとペルーでは トの仕方 30.マダガスカルでは,地区行政官・学校 正味の効果としてプラスである. 長・教員の管理上の役割を明確にし,さらにコーチン  同様に,学校で利用可能な教材を単に増やしても, グと監督を提供したことによって,少なくともトップ もしそれが教員と生徒の間の相互作用を改善しないの 層の実績がよいことに対するインセンティブを有して であれば,学習は改善しない.シエラレオネでは 2008 いる学校では生徒の成績が向上した 31.同様に,ジャ 年に教科書の配布を増加したが,それが教室で使われ マイカでは,校長に研修や助言・指導を付与したおか るという結果にならなかった.というのは,管理者が (ボックス 7.1) げで,学校の運営管理が改善した . ほとんどの本を倉庫に入れてしまったからだ――将来  多くの諸国は教育制度のなかで,しばしば,いわゆ の本不足に備えて予防策を講じた公算がある 24.ケニ る学校ベースの管理という考えの下で,何らかの要素 アにおけるまた別の教科書プログラムは学習に何のイ を分権化してきている.学校やコミュニティに意思決 ンパクトもなかった.その最大の理由は,ほとんど 定の権限と財源を供与することで,次の 2 つの問題 の生徒は本が書かれてる言語を十分には理解してい を解決することができる.第 1 に,教員やその他の なかったことのようだ 25.コロンビアでは,同様に, 学校代表者に対するより直接的な影響力を地元の学校 単に教室にデスクトップ・コンピュータを提供しても 指導層や親に付与することによって,教員が生徒の 学習には何の効果もなかった 26.配布されたパソコ ニーズにただちに反応するようになる.これを教育大 ンはカリキュラムとうまく整合されてはいなかった. 臣による監督と対比させてみよう.遠くにいる教育省 次のことが明らかであろう.すなわち,資源はインパ の担当者はサボっている教員の説明責任を問う力はほ クトをもたらすように使われなければならないが,投 とんどもっていないだろう.第 2 に,学校やコミュ 7 他のすべてのことは教員と学習者の相互作用の強化に向けられるべき 139 図 7.2 学校運営の質は著しく異なる 果がみられた 35.このようなプログラムのいくつか 学校運営の質にかかわる国別平均点(トップ国対比) –  は 1  2 年しか続かなかった.というのは,プログラ ムがある場合には試験的実施にすぎなかったからであ イギリス り,他の場合には教育政策自体が不安定だったからで スウェーデン ある.学校運営に効果的に関与する方法をコミュニ カナダ ティが学ぶ時間がなければ,学習へのインパクトもあ アメリカ り得ないだろう.コミュニティにとっては学習よりも ドイツ 就学の状況をモニターする方が容易であるため,学校 メキシコ ベースの管理はブルキナファソでみられたように,能 ブラジル 力の低いコミュニティでも就学は増える可能性があろ イタリア う 36. ハイチ  コミュニティによるモニタリングは,もしそれが教 インド 室で起こっていることに影響しないのであれば,学習 タンザニア を支援することはないだろう.幅広い介入策が,学校 0 20 40 60 80 100 の情報を保護者と共有することによって,コミュニ % ティによる学校のモニタリングを増やそうとしてい 出所:Bloom 他 (2015).データは http://bit.do/WDR2018-Fig_7-2. る.このようなプログラムの構造はさまざまであり, 注:学校運営の得点は 14 の基本的な運営慣行――それぞれが 保護者自身が教員の出勤や学校のパフォーマンスに関 1 – 5 の尺度の間で評価――の組み合わせに基づく.得点が高い するデータを収集する,教育制度が準備したデータを 学校ほどしっかりした運営慣行をもっている. 保護者に配布する,情報を集会(保護者や教員は苦情 ニティは地元の学校のニーズに関してより良い情報を を議論し,一連の行動を取り決める)を開催して補完 もっているかもしれず,裁量的な財源へのアクセスと する,といったことが行われている 37.しかし,保 相まって,そのようなニーズに素早く応えることがで 護者が教室にいることはめったになく,いる時でも教 きる. 室における有益な実践を特定できるとは限らない.こ  より優れた意思決定を下し,それを実施する能力を れが,このようなプログラムに関して増大している コミュニティが有する場合には,学校ベースの管理プ 証拠がまちまちな結果を示している理由であろう 38. ログラムは,学習を改善する 32.世界 42 カ国の 100 例えば,インドのアンドラ・プラデシュ州では,学校 万人の生徒に関するデータが示すところでは,学校の のパフォーマンスに関する通信簿をコミュニティ・メ 自律性は生徒の学習にとって,高所得国では有益であ ンバーに配布したが,親の関与や生徒の学習を増やす るが,途上国では有害である 33.ミクロ・レベルでは, ことはなかった 39. ガンビアでは学校ベースの管理の介入策によってテス  成功しているコミュニティ・モリタリングは,多数 トの点数が改善したのは,親の識字率が高いコミュニ の利害関係者間のフィードバック・ループを通じて説 ティに限定されていた 34.ニジェールにおける学校 明責任を増大している.利害関係の弱い説明責任プロ 補助金プログラムのインパクトについても,類似の結 グラムは,メキシコやパキスタン,ウガンダにおいて ボックス 7.1 ジャマイカにおける学校長を改善する研修  研修によって学校運営の質を改善することができる.ジャマイ 校のベテラン指導層から助言・指導・コーチングを受けること カでは,政府が学校長研修プログラム――運営の改善につなが ができた.研修モジュールは参加者から実際的であるとして高 りそうな特徴をもっていた――に投資した.このプログラムは校 評価を得た.このプログラムは比較グループとの対比でまだ評 長の弱点に関する分析に基づいていた.校長は教員のパフォー 価されていないものの,学校長自身と教員の両方が運営の質が マンスに関してコメントを提供するだけでなく,生徒の学習ニー 大きく改善されたと申告している.教員は次のように言っている: ズを評価するためにデータを利用するよう研修を受けた.この 教員が教室での言動に関して観察されていたり,短期目標の設 プログラムは実際的な経験も提供した:校長は初期研修を終え 定に関して校長が教員と協働したりする可能性が倍増した a. ると,3 カ月間にわたりプログラムを実践に移した.その間,学 出所:WDR 2018 チーム. a. Nannyonjo (2017). 140 世界開発報告 2018 生徒の学習を改善してきている 40.モニタリング・ コミュニティの学校評議会が学校運営に関与するのを プログラムはさまざまな理由から成功したり失敗した 奨励するために,補助金がより大きなプログラムに組 りする.メキシコやウガンダで実践されたような成功 み込まれている場合,その組み合わせは学習を改善す したプログラムは,1 つのグループだけを相手にする ることができる 47. のではなく,学校指導層や教員,コミュニティ,保護 者の間で情報を明示的に共有している(パキスタンの * * * 実験は例外で,保護者だけに焦点を当てている).保 護者だけでは説明責任を問えないが,学校職員が手に  教育面の投入がタブレットや教科書などの物理的な しているより良い情報は有用であろう.学習を改善す 品目,あるいは学校の運営やリーダーシップなどのプ るためには,保護者とコミュニティは教員や学校の説 ロセスである場合,それが学習を改善するのは,教員 明責任を厳しく問うべく,増加した情報を活用するこ と学習者の相互作用の質を直接的に改善する場合だけ とができなければならない. である.それなしでは,増えた投入は有効でないプロ  学校補助金プログラム――学校は通常の財源配分と セスの上に積み上がり,期待されるインパクトをもた その割り振りに関して自律性を付与される――は,学 らすことはないだろう.しかし,戦略的に使えば,投 校ベースの管理プログラムの一種である.ハイチでは, 入は準備のできた学習者と知識豊かな意欲に溢れた教 就学者数に基づいて学校に補助金を交付するプログラ 員と協働して,高水準の学習を生み出すことができる. ムのおかげで,就学が著しい増加を示した 41.この 観点からすると,学校補助金は学校向けに資金を有効 注 に届けることができ,そして学校としては機能するた めに資金を必要としている.しかし,ほとんどのプロ 1. McEvan (2015). グラムは学校に補助金を交付するだけであり,学習を 2. Banerjee 他 (2007); Carrillo, Onofa, and 向上させていない.補助金を学校に配分するだけでは Ponce (2010); Muralidharan, Singh, Ganimian ――ガンビアやインドネシア,タンザニアなどにおけ (2016). るように――,生徒の学習に何の効果もない 42.セ 3. Lai 他 (2012). ネガルでは,学習に対して観察されるインパクトは一 4. Esteves Pereira and Cabral (2016);“Planning 部の子供グループに限定されていたようで,しかも翌 Educational Activities for Children (PEACH),” 年までには消滅していた 43.学校補助金プログラム Georgia Department of Early Care and のなかには,補助金が予期されていない時にだけ,学 Learning, Atlanta, http://www.peach.decal. 習成果を向上させるものもあった.保護者は補助金が ga.gov/app/. 交付される予定がわかっている時には,自分の教育投 5. Jukes 他 (2017); Wolff 他 (2002). 資を削減していた.それ故,長期的に影響を及ぼす方 6. Muralidharan, Singh, Ganimian (2016). 策としては適切ではない 44.補助金はそれ自体では 7. Cristia 他 (2017); de Melo, Machado, and 単に学校の財源を増やす他の介入策と大体同じように Miranda (2014).ウルグアイに関して,評価は 機能する.それが学習を改善するという保証はない. プログラム初期における数学と読解力に対するイ  しかし,補助金は学校の成果を改善するための,よ ンパクトを含んでいる.その時期における主な目 り広範な学校ベースの運営プログラムという状況下で 的は学校向けに機器と接続性を提供することに は成果を上げる手段として利用できる.タンザニアで あった.それ以降,プログラムは進展して,教員 は,補助金だけでは生徒の学習に何のインパクトもな 向けの ICT 研修と適応教育技術を追加している. かったが,教員のインセンティブと組み合わされた補 新たな評価が 2017 年後半に公表される予定と 助金は学習を確かに改善した.ニジェールでは,補助 なっている. 金だけではほとんどインパクトがなかったが,研修を 8. Bulman and Fairlie (2016); Muralidharan, 組み合わせた補助金は生徒の学習と保護者の学校支援 Singh, Ganimian (2016). の両方を改善させた 45.同じく,補助金だけではイン 9. Adelman 他 (2015). ドネシアでも学習に何のインパクトもなかったが,こ 10. Lavinas and Veiga (2013). のプログラムが学校の運営委員会を村会に結び付ける 11. Budzier and Flyvbjerg (2013). ことも行うときは――プリンシャパル = エージェント 12. Smith (1913, 24). 問題を解決するため――,学習は確かに改善した 46. 13. Bellissant (1970); Goodlad (1969). 7 他のすべてのことは教員と学習者の相互作用の強化に向けられるべき 141 14. Pritchett (2013). 参考文献 15. Snilstveit 他 (2016). 16. Linden (2008). Adelman, Melissa, Moussa P. Blimpo, David K. 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Washington, DC: Academy for Educational Development; Paris: United Nations Educational, Scientific, and Cultural Organization. 145 スキル訓練を仕事と結び付けることによって 基盤を構築 8 学校を去った後――退学者としてか卒業者としてかは問わない――,多くの若者は将来性の余地が限られている仕事に就 いている.しかし,職業訓練はそこからの脱出を提示できる.成功している仕事スキル訓練プログラムを模倣するにはど のようにすればよいのか? 学校から仕事に移ろうとしている大勢の若い求職者にとって,どのようにすればそれを利用 可能,負担可能,そして効果的なものにすることができるだろうか?  世界中の若者は学校から仕事への移行において,相 結果の改善に資するだろう. 当な挑戦に直面する.その多く,とりわけ不遇な環境 (TVET : Technical and • 技 術 職 業 教 育・ 訓 練 出身の若者は時期尚早に正規教育を後にしているた Vocational Education and Teaching)は有効な め,仕事で成功するために必要とされる基盤的スキル 道を提供しているが,それはプログラムが雇用者と を欠いている.換言すれば,学習危機が労働市場に表 の協働の中で設計・実施されている場合に限られる. 出しているのである.その結果,多くは失業したり, 低賃金で不安定な非公式部門にはまり込んだりしてい 職場訓練は若者がスキルを開発するのを る.そのような職場にはスキルを強化する機会がほと 助けることができるが, んどない.しかし,労働市場のニーズを満たすことが その恩恵を受けている人はほとんどいない できなければ,同じことが中等教育終了者にさえ起こ り得る.  職場訓練は労働者のスキルを深化させ,企業の生産  若者は正規教育を離れる場合,雇用への 3 つの道 性を引き上げる 2.それは労働者の産出を 10%以上 から 1 つを選ぶ.ある者は,さらなる教育ないし訓 増やすことができ,これは規模的に実物資本投資に 練を受けずに労働市場に加わる.そのような者にとっ 伴う収益率に似通っている 3.ラテンアメリカ・カリ ては,職場における訓練がスキル構築の重要な方法に ブでは,大企業において訓練を受けた労働者の割合が なる.正式な技術ないし職業の訓練プログラムに参加 1%増えると生産性は 0.7%上昇する 4.メキシコでは, する者もいる.このプログラムの参加者は,関心のあ 訓練への投資は,製造業労働者について生産性と企業 る特定の分野ないし職業向けに必要とされるスキルを –  レベルの賃金を 4  7% 押し上げた 5.同様に,中等 構築する 1.このようなプログラムの参加者は,通常 教育以上の修了資格を有する労働者については,収益 は,結果として公式な技術資格,あるいは企業が承 率はマレーシアでは 7.7%,タイでは 4.5%となって 認した修了証を得る.3 番目の道として,少数ではあ いる 6.ケニアとザンビアでは,職場訓練は製造業労 るが,求職を先送りする,あるいは更なる教育や訓練 働者の賃金 20%増加と関連があった 7. に進む.以下の通り 3 種類の職業訓練プログラムが,  潜在的な恩恵にもかかわらず,若い労働者は職場訓 若者がそのような道をたどるのを支援することができ 練をほとんど受けていない.途上国では仕事関連の訓 る. 練に参加している生産年齢成人の比率は,ボリビアや コロンビアの都市部における 20%からラオスやベトナ • 職場訓練は労働者と企業の双方にとって利益がある ムの 10%未満という範囲にとどまっている 8.訓練へ が,若い成人向けには広く利用可能になっていない. の参加率は,正規教育を修了していない,スキルが限 • 短期職業訓練プログラムはしばしば効果が限定的で 定的,就業期間が短い若者についてはさらに低い 9. ペ あるが,プログラム設計が注意深くなされていれば ルーでは,初めて就いた仕事の最初の 1 年間に訓練 146 世界開発報告 2018 図 8.1 職場訓練の恩恵に浴するのは少数であり,識字能力や教育水準のすでに高い人が中心 過去 12 カ月間における職場訓練への参加(調査対象国,2011 – 14 年) a. 年齢別 b. 識字能力別 c. 教育水準別 アルメニア アルメニア アルメニア ボリビア ボリビア ボリビア コロンビア コロンビア コロンビア ジョージア ジョージア ジョージア ガーナ ガーナ ガーナ ケニア ケニア ケニア ラオス ラオス ラオス マケドニア マケドニア マケドニア スリランカ スリランカ スリランカ ウクライナ ウクライナ ウクライナ ベトナム ベトナム ベトナム 雲南(中国) 雲南(中国) 雲南(中国) 0 5 10 15 20 25 0 5 10 15 20 25 0 5 10 15 20 25 % % % 25 – 44 歳 レベル 2 以上 後期中等教育以上 15 – 24 歳 レベル 1 以下 前期中等教育以下 出所:世界銀行の STEP Skills Measurement Program(http://microdata.worldban.org/index.php/catalog/step/about)からのデータ に基づく WDR 2018 チーム.データは http://bit.do/WDR218Fig_8-1. 注:回答者は次の質問を受ける―「過去 12 か月間に, (正規の教育制度の一環ではない) 仕事関連の訓練ないし私的なスキル訓練 など何らかの訓練コース (最低 5 日間あるいは 30 時間続く)に参加しましたか?」 識字能力が低いというのは識字能力の評価でレ ベル 1 以下と定義され,文章の理解力が限定的であることを示唆する.識字能力が中程度から高いというのは識字能力の評価でレ ベル 2 以上と定義され,多種多様な複雑な文章資料からの情報を統合・評価・解釈する能力があることを示唆する. a. ラオス,マケドニア,スリランカ,および中国雲南省に関しては識字能力のデータ入手不可能. を受ける若い労働者は 5 人中 1 人以下である 10.訓 ボワール,そしてセネガルなどでは,非公式な徒弟制 練投資に関する雇用主の決定は,潜在的な生産改善, (大工・ 度が労働者を技能職だけでなく,一部の職業 労働者の離職率,および企業の総合的な経営慣行など 溶接・理容・配管・洋服の仕立て・石工・機織りなど) に影響される 11.訓練参加率が低いのは若者に限っ における雇用に向けて労働者を準備させる訓練のほぼ たことではないが(図 8.1 のパネル a),識字能力や教 90%を占めている 14.非公式な徒弟は,正規教育が 育程度が限定的な若者の参加率は特に低い(図 8.1 の 限定的で,社会経済的に貧しい環境の出身である可能 パネル b と c) .にもかかわらず,職場訓練は若い成 性が高い 15.このような徒弟制度は制度的な成り立 人にとってはとりわけ有益であり得る.38 件の職場 ち・訓練の内容・労働条件・金銭的な取り決めなどの 訓練に関する各国横断的な分析の発見によると,平均 点で,幅広くさまざまである.しかしほとんどは,コ 賃金の上昇率は 35 歳未満の労働者では 7.2%,35 歳 ミュニティの習慣や規範,伝統のなかに取り込まれて 以上では 4.9%となっている 12. いる.その有効性に関する実験的な証拠は少ない.セ  非公式な職場の訓練生制度として考えられる非公式 ネガルから得られた評価では労働市場の成果に関して な徒弟制度は,若い人々に,職場という環境下で自分 はプラス効果があったものの,一般的な認知スキルに のスキルを格上げする方法を提供する.資格を授与し 対する効果は限定的であった 16.コートジボワール ないこのような取り決めの下で,学習は一定期間にわ のある徒弟制度プログラムは手続きの一部を公式化し たり経験豊かな職人と一緒に働くことによって遂行さ たもので,それの早期における証拠は,不遇な若年層 れる 13.非公式な徒弟制度は世界中の多くの地域で に関して労働市場成果や心理的な安寧の面で改善が 利用可能であるが,最も一般的なのはサハラ以南アフ あったことを示している 17. リカである.例えば,ベニンやカメルーン,コートジ  非公式徒弟制度の潜在力を発揮させるためには,最 8 スキル訓練を仕事と結び付けることによって基盤を構築 147 新の技能を有するマスター・トレーナーと徒弟の訓練 雇用プログラム」が雇用と所得の両方を増加させた. 期間やパフォーマンスに関する認識が必要である.新 これは中等未満の教育水準しかない,低所得・低スキ しい職場の慣行に適応するための情報や能力,インセ ル・未就学の若者を対象にしたスキル訓練プログラム ンティブをマスター・トレーナーが有していないこと である 27.コロンビア,ドミニカ共和国,リベリア, があまりにも多い.これでは徒弟が陳腐化した職場慣 ネパール,そしてペルーなどにおける介入策による有 行を学ぶことにつながってしまう 18.また,非公式 望な結果は,若い女性の抱負・社会情緒的スキル・労 な徒弟制度が公式な訓練制度に認知されることは稀で 働市場成果を改善するための有効なアプローチを特定 あるため,非公式な徒弟制が提供する労働市場移動性 することにつながりつつある 28. は限定的である 19.この問題を緩和する 1 つの方法  成功している短期職業訓練プログラムはスキル訓練 は,非公式な徒弟制度を公式の訓練制度に統合して, 以上のものを提供している.複数スキルの開発に焦点 スキル再開発をさらなる教育や訓練と一体化すること を置いているプログラムや,キャリア指導・助言・求 である.例えば,マラウイやタンザニアでは,能力に 職支援など包括的なサービスで訓練を補完するプログ 基づいたスキル認証が,かつてスキルを認識してもら ラムは,成功する可能性がより一層高い 29.例えば, うために徒弟制度に参加していた若年労働者に自分の 技術的スキルや生活に関するスキル,研修に重点を置 スキルが認められる道を提供している 20. いた包括的なトレーニング制度は,ケニヤ,ブラジ ル,そしてネパールにおいて有益な効果があったこと が示されている 30.ケニアでは,ICT・生活スキル・ 短期の職業訓練は機会を提供しているが, インターンシップ研修・就職斡旋を包括した「若者エ ほとんどのプログラムは効果を発揮できていない ンパワメント」プログラムが,労働市場成果に対して  多くの職業訓練プログラム――通常は 2 週間から 6 プラスのインパクトを示している 31.同様に,ブラ カ月間続く――は,労働市場のニーズに合っていない. ジルでは,ガルパウ・アプラウズ(Galpão Aplauso) 世界中のプログラムにかかわるメタ分析は,雇用や所 プログラムは,職業・学問・生活のスキルを組み合わ 得に著しいプラスのインパクトがあったのは全体の 3 せたプログラムを通すことで結果を改善している 32. 分の 1 以下にすぎないことを見出している 21.途上 ネパールでは,雇用基金が,不完全雇用ないし失業に 国では短期プログラムの推定される効果は若干大きい 陥っている若者向けに包括的な訓練プログラムを優先 ものの,依然として小さいままである.参加者が労働 的に実施している 33. 市場に移行するのに必要とされる人的資本を蓄積する のを支援することに焦点を置いたスキル訓練は,プラ TVET は若者を仕事に向けて準備させることは スの収益率をもたらし得る.しかし,実施期間が短く, できるが,早期の TVET への振り分けは 質が多種多様であることを考慮すると,正規教育の修 キャリアの向上を限定するこ とがある 了に伴う収益率と同等の大きさのインパクトをもたら すことは稀である 22.多くのプログラムは,設計と  TVET は正規教育水準と等しい賃金をもたらすこ 実施が悪い,あるいは手が届きにくいがスキルの格上 とができる.通常は 6 カ月間から 3 年間続く TVET は, げを最も必要としている若者の関心を引かないものと 前期中等学校・後期中等学校・高等学校において,専 なっている 23.訓練への投資の経済的な論拠は往々 用課程として提供されることが可能である 34.ブラ にして不明瞭である:例えば,リベリアでは,それは ジルでは,後期中等 TVET を修了した労働者は,一 結果としての月給増加の 50 倍ものコストがかかるが, 般的な中等教育修了者と比べて賃金が約 10%高い 35. それは投資を回収するのに 12 年間かかるということ インドネシアでは,公立 TVET の収益率は全員にとっ を意味する 24. てプラスであり,特に女性にとってはプラス幅が広  しかし,短期の訓練介入策は低スキルの女性など貧 い 36.しかし,有望な結果にもかかわらず,多くの しいグループを対象にしている時には,確かに若干の 途上国の TVET プログラムは若者にとって魅力のな プラス効果を示している.ウガンダでは,若い女性を い代替策にとどまっている.その理由として,プログ 対象にした「青年のエンパワメントおよび生計」プログ ラムの質が悪い,ないし労働市場との関連性が希薄と ラムが,卒業生の雇用展望に有望な効果をもたらして いったことがしばしばあげられている. いる 25.同様に,ネパールの「青年女子雇用イニシア  生徒を技術的な軌道にあまりに早期に乗せてしまう ティブ」 –  は,参加者については非農業雇用を 13  19% ことは,生徒の生涯にわたるキャリア機会を限定しか ポイント押し上げた 26.ドミニカ共和国では,「若者 ねない.若者は TVET に有意義に参加するためには, 148 世界開発報告 2018 図 8.2 職業訓練生のほとんどは後期中等教育期間中に就学している 一般教育,および技術職業教育訓練(TVET)のグロス参加率(cira 2010) 100 80 60 % 40 20 0 前期 後期 前期 後期 前期 後期 前期 後期 前期 後期 前期 後期 前期 後期 東アジア・ ヨーロッパ・ ラテンアメリカ・ 中東・ 南アジア サハラ以南・ 世界全体 太平洋 中央アジア カリブ 北アフリカ アフリカ 学校制度を去る 一般教育に就学 職業教育に就学 出所:UIS (2016) のデータに基づく WDR 2018 チーム.データは http://bit.do/WDR-Fig_8-2. 基盤的スキル――読解力・作文力・数的思考力・批判 化する可能性のある狭い範囲の職業に参加者を閉じ込 的思考力・問題解決力など――を修得しておく必要が めるべきではない. ある.長期にわたって影響するキャリア選好を意思 表示できるくらいに成熟している必要もある.TVET 成功している職業訓練プログラムが への振り分けを遅らせてきている諸国は,このような 共有している特徴 変更が改善につながり得ることを示している.ポー ランドでは,職業教育を 1 年遅らせたところ生徒の  職場訓練や職業訓練介入策に関して入手可能な証拠 学業成績が改善した 37.早期振り分けに伴う問題は, は,長期あるいは短期のものを含めて限られているも 生徒が一般教育と職業教育の間を行き来することを認 のの,成功しているプログラムに共通している特徴が めていない制度ではいっそう悪化し,技術系の卒業生 いくつかある.本節で議論する原則は可能な範囲で, はさらなる教育や訓練に再び従事する機会が制限され 実験的な証拠から精選したものである.しかし,途上 た状態に置かれてしまう 38.そのような懸念にもか 国における介入策に関しては厳格な研究が不足してい かわらず,TVET への登録は後期中等学校が開始す るため,本節は違った種類の(非実験的,系統的,定 る時点で行われている(図 8.2).同じく懸念されるの 性的な)研究からの関連した発見も統合している. は,ほとんどの地域では,一般教育にしろ TVET に しろ,それを継続せずに正規教育から離れる若者が増 訓練の設計に先立ってパートナーシップを確立する 加していることである.この事実は,実地学習や生涯  部門別訓練プログラム 40 は早期に学習者を雇用者 学習のベースとして早期にしっかりした基盤的スキル と組ませて,雇用者の公約を維持させている 41.こ を修得しておくことの重要性を強調している. のようなプログラムは仲介機関――通常はネットワー  狭い範囲の職業スキルを開発することは,労働者の ク・アグリゲーターないし産業固有の専門知識をもっ 労働力への移行を促進するかもしれないが,幅広い一 ている非営利機関――と,ある産業の雇用者の間で 般的スキルの方が技術変化への容易な適応を後押しす パートナーシップを設立している.就職口を予想し, るのに役立つ.先進国から得られた証拠は,範囲の狭 プログラムの中身を設計し,斡旋の可能性を最大化す い技術教育は労働市場において早期に優位性をもたら ることが目的である.部門別プログラムでは個人が特 すが,その優位性は時とともに消散することを示して 定の仕事に就くことではなく,ある業界に参入するの いる.一部の労働者は自分の職業固有のスキルで時代 を支援することに焦点を当てている.そうするために, 遅れになってしまい,このことは,失職の公算を高め プログラムはキャリア経路に関する情報を融合して, かねない 39.適切なバランスというのは各国固有に 参加者がある職業に必要とされ,初歩レベルの仕事か ならざるを得ないものの,TVET は予期せぬ形で変 らより長期的なキャリアに移行するために追求すべき 8 スキル訓練を仕事と結び付けることによって基盤を構築 149 資格を特定するのを手助けする 42.成功要因に含ま バージニア州とワシントン州における中等 TVET, れるのは,包括的な人材採用サービスを擁する良質な 中等後 TVET, 徒弟制度プログラムの恩恵を検討した 仲介機関を使うこと,参加希望者・研究プログラム・ アメリカにおけるある研究の発見では,3 種類の訓練 対象にしている職業などのなかで適切なマッチを生み はいずれも――特に徒弟制度では――プラス効果が 出すことなどである 43. あった 53.カナダ,ドイツ,スイス,およびアメリ  部門別訓練プログラムは労働市場成果を改善し,生 カの研究では,雇用者は初期の徒弟のコストを短中期 産性を引き上げ,従業員の離職を削減することができ 的に回収していることが発見されている 54.ブラジ る.アメリカの 3 つの部門別訓練プログラム――ウィ ルでは,大規模で正式な徒弟制度プログラムの修了生 スコンシン地域訓練パートナーシップ(ミルウォー は,教育程度が低いほど恩恵が大きく,正規の高給職 キー市),ユダヤ職業サービス(ボストン市),パー・ に就ける公算が大きくなる 55.マラウイでは,若い スコラス(ニューヨーク市)――においては,参加者 女性向けの斬新で正式な徒弟制度プログラムは,若い は 2 年間で平均所得の 18%の上昇を経験した 44.同 女性が学校教師の補佐として勤める機会が広がった. 様に,Year Up というアメリカの数州で脆弱な若者 修了者はより高度なスキルとコミュニティでの地位を を対象にしたプログラムでは,高水準の修了率・イン 手に入れたのである 56. ターンシップ参加・雇用・所得が達成された 45.最 後に,Generation というプログラム――インド,ケ 有能な教員を発見する ニア,メキシコ,スペイン,およびアメリカで低スキ  訓練へのアプローチが成功するか否かは,訓練を ルの若者に焦点を当てている――は,多数の就職斡旋 仕事の要請に合わせて調整できる産業の専門知識を と高い雇用者満足度を成就してきている 46.雇用者 有する有能な教師次第である 57, 58.生徒には基盤 を訓練に関与させる他の潜在力を有するアプローチと 的スキルの点で格差があり,意欲が欠如しているた しては,多国籍企業との官民パートナーシップ締結, め,このことは教員の役割や責任の複雑さを倍加す 有効な全国的労働力開発イニシアティブの確立,訓練 る 59.訓練・評価・認証に関しては「能力に基づく基 基金や租税インセンティブなどの仕組みを通じた職場 準」へのグローバルな変化があり,それが有能で意欲 訓練提供の促進などがある 47. のある教員の重要性を増幅している 60.ガーナにお ける技術系専門学校 10 校を調べたある研究では,生 教室と職場学習を組み合わせる 徒が能力別のモジュールを通じて勉強している時に,  正式な徒弟制度というのは,教室と職場学習を組み 建設的なアドバイスを提供できる教員がいることの 合わせる一般的な方法である.そのようなプログラム 重要さが強調されている 61.しかし,往々にして教 はしばしば「働きながら学ぶ」と称されている.正式な 員は産業の資格,ないし授業に関する最新の専門知 –  徒弟制度は 1  3 年続き,中等ないし中等後の水準に 識を欠いている.とりわけ,「能力に基づくスキル」 おいて,あるいは後期中等教育の代替策として実施さ のアプローチを使って教える段階になると,そうい れ,生徒に業界監督下の職場慣行に携わる機会を提供 える.マレーシアの技術系職業大学における授業慣 している 48.中等レベルの生徒を対象にするプログ 行に関する研究が強調しているのは,教員が生徒の ラムに関しては,過度に狭い専門化を回避するために, 知識の評価から職業や課題に固有な能力の評価へ移 徒弟が職業固有のスキルだけでなく,基盤的スキルに 行した時に直面する困難である 62. も磨きをかけることを確保するよう特別な注意が必要  にもかかわらず,多くの国々では TVET 教員がカ とされる 49.正式な徒弟制の参加者は典型的には賃 リキュラムや産業の変化に関して,最新の情報を把握 金は市場水準よりも低い 50.優れた徒弟制度では体 していることを確保するための系統的・専門的な支援 系的な訓練が行われ,専門的なトレーナーが徒弟を監 は入手可能になっていない 63.しかし,それは可能 視している.また,契約文書があって,訓練取り決め (MENA) である.中東・北アフリカ の 10 カ国におけ と修得したスキルを証明するための評価が規定されて る職業教育制度のレビューは,TVET 授業を専門化 いる 51.企業の資源を統合し,リスク負担を分担し, するための共通の規範・価値観・基準を反映するキャ 業界全体のスキル基準を開発し,徒弟制度による大規 リア体系を構築するための革新的なモデルを伴う積極 模な訓練を実施するためには,教育制度と産業界の強 的な実験を見出している.10 カ国中 6 カ国は技術系 固なパートナーシップが決定的に重要である. 教員がキャリアの進展を認識するための職業基準を開  研究によると,企業と個人(正式な徒弟制度を修了 発している.ただし,新たな基準が生徒の成績に影響 した人)の両方にとって,プラス効果がみられる 52. しているのかどうか,また,どのように影響している 150 世界開発報告 2018 のかについて述べるのは時期尚早である 64.エチオ 用者と産業経験や授業にかかわる最新の専門知識の両 ピアやラオスなど他の諸国は,技術系訓練講師向けの 方を有する教員が教えるカリキュラムとの強固な結び 基準の導入を実験したり,その資格要件の拡大を図っ 付きの上に築かれてる.またこのようなプログラムは, たりしている.しかし,プログラムの有効性に関する 基盤的スキルを補強し,教室での授業を職場での学習 頑健な情報を入手することはむずかしい.というのは, に統合し,さらに築き上げていくことが可能であると ほとんどの介入策はインパクトについて評価されてい いう認証を提供する傾向も有する.このような特徴の ないからだ 65. ゆえに修了者のキャリア・パスは開かれたままとなっ ている.職業訓練プログラムはプラス効果をもたらす 生徒支援サービスと包括的情報を意思決定のために入手可 ことができるものの,鍵となる教訓においては,研修 能にする 生には専門的な流れに乗る前に,依然としてしっかり  キャリア情報は訓練プログラムの重要な部分であ した基盤的スキル――認知的および社会情緒的なスキ り,生徒が機会を見出し,正しい道にとどまり,キャ ル――が必要とされているということである. リアに移行していくのを支援する 66.キャリア情報 「キャ 介入策は,通常は リア教育プログラム」として一ま 注 とめにされている.それにはコース学習の選定に関 する方向性の提供や,通常は個人ベースで提供される 1. 雇用前職業訓練プログラムは次の 2 つのうちの キャリア計画も含まれる 67.キャリア情報は有意義な いずれか 1 つにグループ分けできる――(1) 職業 方向性を示してくれる家族や社会的ネットワークを 科目に焦点を当てた 6 カ月未満の短期プログラ もっていない生徒にとってはとりわけ有用であろう. ム,あるいは (2) 正規教育制度の水準に沿った 6 2000 年代初め以降,ヨーロッパ連合はキャリア・ガ カ月以上の TVET プログラム. イダンスを各国の生涯学習戦略に統合する仕組みを実 2. 正規の職場訓練とは,職場で得た知識を企業の 験中である.これは「リスボン戦略」や教育・訓練に関 ニーズに結び付けるよう監督されているスキル開 するヨーロッパ協力に向けた戦略的枠組みと整合性を (ILO 2010 参照) 発活動を指す .職場モデルの横 図るためである. 断的な比較は困難である.というのは,訓練制度  依然として,キャリア情報イニシアティブが生徒の の設計・実施・有効性が大きく異なるからだ.以 選択,訓練の軌道,成果にどう影響するかに関する証 下 を 参 照 ――Acemoglu and Pischke (1996); 拠は限られている 68.キャリア・ガイダンス政策はヨー Almeida, Behrman, and Rohalino (2012); ロッパ 28 カ国を通じて優先課題となっている.しかし, Almeida and Carneiro (2009); Bassanini 他 プログラムの範囲や徹底さは著しく異なる.これは明 (2005); Blundell 他 (1999); Dearden, Reed, 確なビジョンや一貫した戦略,資金調達に連動した頑 and Van Reenen (2006); Haelermans and 健な品質保証メカニズムなどの必要性を強調するもの Borghans (2012). である 69.OECD 加盟国のなかで,サービス,特に 3. Dearden, Reed, and Van Reenen (2006); De 民間提供者によって実施されているプログラムの質を Grip and Sauermann (2012); Konings and モニターするためのプログラム基準を導入している国 Vanormelingen (2015); Saraf (2017). は少数である.その結果として,質の指標として教員 4. González-Velosa, Rosas, and Flores (2016). の資格に過度に依存する状況がもたらされている 70. 5. Tan and López-Acevedo (2003).  成功しているキャリア・ガイダンス・プログラムに 6. Almeida and de Faria (2014). は明確な目的と,プログラムのパフォーマンスを追跡 7. Rosholm, Nielsen, and Dahalen (2007). するための成果測定値がある.また,多様な環境から 8. Roseth, Valerio, and Gutiérrez (2016). 出身してきた参加者に対して,多種多様な経路を用意 9. Almeida and Aterido (2010); Cabrales, している.したがって,ベテランのキャリア・ガイダ Dolado, and Mora (2014); Sousounis and ンス担当者はスキル開発軌道をニーズに合わせて調整 Bladen-Hovell (2010). することができる 71. 10. Cavero and Ruiz (2016). 11. Saraf (2017). * * * 12. Haelermans and Borghans (2012). 13. ILO (2012).  成功している職業訓練プログラムは典型的には,雇 14. ILO (2012). 8 スキル訓練を仕事と結び付けることによって基盤を構築 151 15. Adams 他 (2009); Darvas, Farvara, and 48. Fazio, Fernández-Coto, and Ripani (2016); Arnold (2017); ILO (2012). Mieschbuehler and Hooley (2016); Neumark 16. Aubery, Giles, and Sahn (2017). and Rothstein (2006). 17. World Bank (2016). 49. OECD (2010). 18. ILO (2012). 50. Biavaschi 他 (2012); Smith and Kemmis 19. ILO (2012). (2013). 20. Aggarwal, Hofmann, and Phiri (2010); 51. Cumsille (2016); Fazio, Fernández-Coto, and Nübler, Hofmann, and Greiner (2009). Ripani (2016); Smith and Kemmis (2013). 21. Kluv 他 (2016); McKenzie (2017). 52. Dietrich, Pfeifer, and Wenzelmann (2016); 22. McKenzie (2017). Hollenbeck (2008); Lerman (2014); Smith 23. Blattman and Ralston (2015); Kluve 他 and Kemmis (2013). (2016); LaLonde (2003); McKenzie (2017). 53. Hollenbeck (2008). 24. Adoho 他 (2014); Blattman and Ralston 54. Lerman (2013, 2014). (2015); McKenzie (2017). 55. Corseuil, Foguel, and Gonzaga (2014). 25. Bandiera 他 (2014). 56. Safford 他 (2013). 26. Chakravarty 他 (2016). (中等教育) 57. ここで教員は広く教員 ,講師(中等 27. Card 他 (2011). 後教育),トレーナー(職場訓練)などを含むも 28. Fox and Kaul (2017). のとして定義されている.次を参照―Axmann, 29. Eichhorst 他 (2012); Fares and Puerto (2009); Rhoades, and Nordstrum (2015); Stanley, Kluve 他 (2016). Adubra, and Chakroun (2014). 30. Fox and Kaul (2017). 58. Axmann, Rhoades, and Nordstrum (2015); 31. IYF (2013). Biavaschi 他 (2012); Grollmann (2008); 32. Calero 他 (2014). Maclean and Lai (2011). 33. Chakravarty 他 (2016). 59. Hodge (2016). 34. OECD (2014); Tan and Nam (2012). 60. Guthrie 他 (2009); ILO (2010).職業教員の訓 35. Almeida 他 (2015). 練や専門性育成の支援にかかわる,さまざまなア 36. Newhouse and Suryadama (2011). プローチのインパクトを評価している実験的な研 37. Jakubowski 他 (2012). 究は極めて稀である. 38. Biavaschi 他 (2012). 61. Boahin and Hofman (2014). 39. Hampf and Woessmann (2016); Hanushek 62. Azmanirah 他 (2014). 他 (2017). 63. Axmann, Rhoades, and Nordstrum (2015). 40. 部門別訓練プログラムは失業者ないし不完全被雇 64. OECD (2010, 2014); UNESCO (2014). 用者を訓練するために,政府・雇用者・非営利組 65. Gerds (2009); Kingombe (2012); Soysouvanh 織の間のパートナーシップ取り決めとして定義さ (2013). れる.通常は後期中等教育ないし高等教育の修了 66. OECD and EC (2004); Watts and Sultana 資格をもっておらず,スキルが相対的に低い若い (2004). 成人や,労働力に再参加する,ないし高質な仕事 67. OECD (2010). に移ることを目論む不遇な若い労働者を対象にし 68. Hooley (2014); Hooley and Dodd (2015); ている. Kluve 他 (2016); OECD (2010); Sultana and 41. CED (2015); Conway and Giloth (2014); Watts (2008). King (2014); Martinson (2010); NGA (2013). 69. Watts, Sultana, and McCarthy (2010). 42. Bragg, Dresser, and Smith (2012). 70. OECD and EC (2004). 43. King (2014); Maguire 他 (2010). 71. OECD and EC (2004). 44. Maguire 他 (2010). 45. Roder and Elliott (2011). 46. Mourshed, Farrell, and Barton (2013). 47. Dunbar (2013); Tan 他 (2016). 152 世界開発報告 2018 Labor Market and Entrepreneurship Programs.” Working 参照文献 paper, Columbia University, New York. Blundell, Richard, Lorraine Dearden, Costas Meghir, and Acemoglu, Daron, and Jorn-Steffen Pischke. 1996. “Why Do Barbara Sianesi. 1999. “Human Capital Investment: The Firms Train? 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Krueger. 1998. “Computing Inequality: Have Computers Changed the Labor Market?” Quarterly Journal of Economics 113 (4): 1169–1213. 159 PART Ⅳ 学習のために制度を大規模に機能させる 9 教育制度は学習との整合性を欠いている 10 不健全な政治が不整合性の原因 11 低学習の罠から脱却する方法 160 9 教育制度は 学習との整合性を欠いている 教育制度は学ぶことの目標と整合性がうまくとれていないことが多い.このような整合性の欠如は技術的な複雑さが一因 である:教育制度は同時に多くの(しばしば矛盾する)目標を追求しており,制度に関わる大勢の主体が複雑に相互作用し 合っている.このような技術的な挑戦をさらに複雑にしているのは,学習に関して責任を負っている多くの政府機関の限 定的な政策実施能力である.  ケニア政府は,まさに小規模な介入策の成功を学習 た.特にパフォーマンスと契約更新の機会との結び付 にかかわる制度全体の改善につなげることがいかにむ き――実験プログラムで生徒の学習が改善したのはま ずかしいかを見出した.2000 年代後半,初等学校教 さにそのルートを通じてであった――が弱まったので 育へのアクセスを有する人の割合は高かったものの, ある.そして同時に,教育省自体もプログラム実施に 多くの子供たちは基礎的スキルさえ修得できていな 苦労して取り組んだ.政府に雇用された契約教員は平 かった.政府の主張によれば,教員の負担が重すぎる 均して 3 カ月の給与遅配に遭遇し,それも生徒の学 ことと相まって,クラスが大きいことがこのような残 習を妨げた. 念な結果の背後にある.しかし,教育予算が制約され 「機能  この事例は大規模に機能させるということは ているため,この問題に取り組むために公務員たる教 を高める」ということと同じではない,というより一 員の採用増加は選択肢になり得なかった.その代わり 般的な発見を例証している 3.公立学校では試験的実 に,政府は 2009 年に臨時の契約教員 1 万 8,000 人 施のプログラムが学習を改善する潜在性を示している を採用した.この新プログラムは,公立学校に契約教 証拠があるにもかかわらず,教員の雇用条件の変更に 員を供給する,という非政府組織によるかつての試験 伴う類似の困難が他の多くの諸国でも発生している 4. 的な実験と共通する多くの特徴を共有していた 1.実 このような実例が示しているのは,介入策を大規模に 験ではクラスの規模が削減されて,新しい契約教員か 実施すると,教育制度の他の主体や他の部分からの反 ら授業を受けた生徒については学習成果の改善につな 応が誘発され,それが学習に対する潜在的なインパク がった.加えて,このような成果は公務員たる教員の トを変えてしまうことがありうるということだ. 採用増加という代替策を大幅に下回るコストで達成さ  多くの諸国で,教育制度は次の 2 つの相互に関係 れた. する弱点で苦しんでいる.第 1 に,制度は学習の全  ところが,試験的な介入策とは異なり,政府プログ 体的な目標とあまりうまく整合していない.他の目標 ラムは学習の改善をもたらすことにはまったく失敗し が学習成果の改善に向けた努力を逸らす,ないし,場 た 2.労働組合が抵抗したことと,教育省に契約教員 合によっては競合する,ということになりうる.第 2 を管理する能力がなかったことが相まって,プログラ に,教育制度の諸要素が往々にして相いれないものに ムには影響力がないことが実証された.ケニアの教員 なっており,矛盾している.例えば,政府の資金配分 組合はプログラムの提訴に成功し,契約ベースによる が時として学習改善に必要な資源として学校に供与さ 教員の採用は同一労働同一賃金という憲法上の権利を れていないことがある.学校向けに資金配分されてい 侵害していると主張した.この裁定を受けて政府は次 る時でさえ,使途を規定しているルールのせいで,生 のような保証を与えた:契約教員全員を漸次公務員と 徒の具体的なニーズに合うような仕方で学校が使える して吸収し,同じ雇用保護を提供することとする.こ ような柔軟性がほとんど残されていない. のような動きは,契約教員の雇用展望を著しく変え  このような制度の弱点の背後には技術的・政治的な 9 教育制度は学習との整合性を欠いている 161 要因がある.教育制度のあらゆる部分を協働させるの 図 9.1 技術的・政治的な障壁が教育制度を学習という目標から引き 離す は困難で,教育政策の設計・実施・評価を担当する諸 機関には,そのような役割を引き受ける能力が欠如し ている.例えば,生徒の学習成果に関するタイムリー な情報は多くの低所得国では入手不可能で,このこと は適切な介入策を設計し,その有効性をモニターする 学 員 習 のをよりいっそう困難にしている.制度関係者の利害 教 者 も整合性欠如の一因になり得る.例えば,資源のコン トロールを学校に移譲することを求める要請は時に抵 抗に遭遇する.というのは,民間の教科書販売業者は 儲かる中央集権的な契約の喪失を懸念するからだ 5. 学習  このような技術的および政治的な制約への取り組み の失敗は,各国を学習レベルが低い,説明責任が不十 分,そして大きな不平等という均衡に陥らせてしまい 入 かねない.制度のさまざまな部分が協働しない場合に 学 運 投 営 校 へ の は,教育成果が達成可能な水準を大幅に下回るかもし 校 学 れない.制度内の各主体が多くの目標をそれぞれ追求 して相互作用する場合,学習の説明責任を問うメカニ ズムは弱体化する.また,強力なグループが自らの利 出所:WDR 2018 チーム. 害と整合的に資源を流用できるならば,教育制度は不 平等を悪化させ得る.全体として,このような要因は, 学習の目標と責任 教育制度を学習という全体の目標と整合している状態  ほとんどの教育制度は学習を中心的な目標として認 から引き離しかねない(図 9.1). 識しているものの,それが享受している注目度は他の 目標に比べて低い.ハイレベルの政策文書をみると, 教育関連機関の日常業務のなかで最も重要な目的が明 不整合性と非一貫性は学習を妨害する らかになる.バングラデシュは,教育部門の目的を政  システムズ・アプローチの採用は,相互に一貫して 府予算に明示的に連動させることにおいて進歩をみせ いない,ないし学習と整合していない要素を特定する ている――例えば,予算資料では教育成果の改善を目 のに役立つ(ボックス 9.1).どのような教育制度も独 的とした具体的な活動への配分が指摘されている.し 自の挑戦課題に直面しているが,非一貫性や不整合性 かし,政府が重視しているパフォーマンス指標はほ は次の 4 つの要素を巡って生じる傾向がある: とんどが就学と課程修了に関するものとなっている. 12 個の指標のうち学習を対象にしているのはわずか • 学習の目的と責任.学習の目的について明確に表明 1 つだけだ.さらに,その指標は 15 歳以上人口の識 されたものがない.しかし,たとえそれが存在して 字率を追跡したものにすぎず,学校の中期的な実績の いる場合でも,多種多様な制度主体がそれを達成す 変化に鈍感な指標である 6. るのに担う役割や責任が不明確で,結果として説明  学習が明確な目標になっている場合でさえ,教育制 責任が限定的になっている. 度の組織化のされ方が時としてパフォーマンスを阻害 • 情報と指標.学習に関する正確で信頼できる情報は, する.業務は教育省のさまざまな部局や政府諸機関に 多くの場合に入手不可能である.これが注意を学習 わたってしばしば細分化されていて,成果についてだ から逸らし,成果の改善を目指した介入策のモニタ れが責任を負っているのかを特定するのは困難であ リングや評価を阻害している. る.ルーマニアでは,教科書配布の責任は 4 つの相 • ファイナンス.教育の資金調達は時に不十分であり, 異なる機関の間で分割されていて,学校が正しい教 有効な学習のための公平な機会を提供するという目 科書を受領するのを保証することについて,どれか 1 標に合致しない形で配分されていることが多い. つの機関が単独で責任を負うことはない 7.早期児童 • インセンティブ.多くの場合,制度主体の意欲やイン 開発サービスの提供は,典型的に,保健省や教育省を センティブと,生徒の学習との間の結び付きは弱す 含むいくつかの政府機関の間における調整を必要とす ぎる. る.このような多くの諸機関を管理するのは容易では 162 世界開発報告 2018 ボッ (教育) クス 9.1  制度のすべて 教育制度とは何か?  成果を実現することができる d.この発見が示唆しているのは, 「短期的・長期的に市民の  教育制度とは 『学歴』に影響する制 パフォーマンスの悪さの一部は教員の個人的な能力ではなく, 度・行動・ a の集大成である. プロセス」 (教 教育制度は大勢の主体 政府の指導者が対応すべき組織上の状況設定――インセンティ で構成されている. ブ・説明責任の仕組み・勢力関係など――が原因である.シス 員や親,政治家,官僚,市民社会組織など) (学校や教育省の部局など) それらがさまざまな機関 と,さまざま テムズ・アプローチはこのような基本的な要因を特定して,そう (カリキュラム開発,学校パフォーマンスのモニタリング, することで政策設計はこのような冴えない実績の真因に取り組む な理由 教員の管理など)から,相互に作用し合っている.このような相 ことが可能になる. 互作用のすべては,制度の変化に主体がどう反応し適応するか  システムズ・アプローチでは制度の要素がどこで一貫性を欠い に影響するルール・信念・行動規範によって支配されている b. ているかを解明するこ カリキュラムの改善は, ともできる.例えば, (評価や教員育成など) もし制度内の他の部分 が適応できていな システムズ・アプローチをとる方がなぜ有用なのか? ければ,生徒の学習の改善にはほとんどつながらないかもしれ  システムズ・アプローチは教育制度内の各部分間の相互作用 ない.システムの見方は,制度内のある部分の変更が他の下位 を考慮に入れている.そうしながら,それは,個別の要素に単 制度にどう影響し,整合性の改善をどう支援し,最終的に成果の 独で焦点を当てるのではなく,制度内の要素が制度の成果を牽 改善にどうつながるかを明らかにするのを可能にする e. 引するためにどのように協働するかを理解しようとする c.また,  システムズ・アプローチは教育制度の複雑さと協働するのに さまざまな主体や下位制度が教育目標と整合的かを評価し,制 より適してもいる.教育制度が同時に追求する傾向にある多くの 度のパフォーマンスの根元的な牽引力に光を当てるのに役立ち 目標が,そのような目標の追求に関与している多くの多種多様 うる.例えば,教員の能力が限定的なことがパフォーマンスの な主体と相まって,さまざまな介入策が学習にどう影響するかを 悪さの主因としてしばしば強調されている.しかし,学校に契約 予測することを困難にしている.システムズ・アプローチは個別 教員を導入するという試行が示したように,契約教員は教育・ 問題に取り組むべく設計された介入策から,学習を継続的に改 訓練・給与の水準が低いにもかかわらず,同じかより良い学習 善するために必要な幅広い変化へ注目点を移す. 出所:WDR 2018 チーム. a. Moore (2015, 1). b. World Bank (2003). c. Bowman 他 (2015). d. Bruns, Filmer, and Patrinos (2011). e. Newman, King, and Abdul-Hamid (2016). ない.1990 年代初め,ガーナでは早期児童開発の担 出と学習の関係は経済開発が同じような段階にある諸 当がいつも変更されていたので,このようなサービス 大幅に異なっている.2015 年にペルー 国の間でさえ, の管理は結果として不十分な状態に陥っていた 8. の生徒 1 人当たり支出はドミニカ共和国を 28%下 回ったが,PISA 数学の得点では標準偏差の半分以上 情報と指標 を上回った 10.より一般的には,公共支出と学習水  制度には改革の設計・実施を下支えするのに必要な 準との相関関係は各国とも弱く,1 人当たり所得を制 情報が欠けていることが多い.教育運営情報システム さらに, 御した場合には統計的な有意さはみられない. はサービス提供に関する広範な指標をカバーしている ある与えられた支出水準について,学習成果は広範囲 が,多くの諸国では学習に関するデータを日常の業務 にわたる.教育向け公共支出の長期にわたる変化でさ には含まれていない.インドの県教育情報システム え,時に予想外の結果をもたらしている.例えば,ブ (DISE)は通信簿を県に提供するよう設計されている ルガリアでは生徒 1 人当たりの支出が削減されたに が,報告された 980 のデータのうち,どれ 1 つとし –  もかかわらず,PISA 数学の得点は 2009  15 年の間 て生徒の学習を含めていない 9.そのため,制度が学 に上昇した(図 9.2).公共支出の評価やその他の研究 習を改善するための介入策を追跡すること,保護者が でも,地方政府間で,さらには学校の間でさえ類似の 政治家ないし学校に対して直接的にサービスの改善を パターンが明らかになっている(スポットライト 6). 要求すること,そして政府機関が学習改善のために有  支出と学習の結び付きが弱いことは,様々な環境で 効な政策を設計することがむずかしくなっている. 教育制度が運営されていることの特徴である.腐敗が ひどい,ないし官僚の能力が低い制度が学習向上のた ファイナンス めに資源を有効に使う公算は低いだろう 11.  公共支出と学習との間には強い相関関係はない.支  このような単純な相関関係は次のことも示唆してい 9 教育制度は学習との整合性を欠いている 163 図 9.2 教育支出と学習の間の単純相関は弱い a. 支出と学習成果 b. 支出と・学習の変化 100 4 PISA2015数学の得点年平均変化率 1人当たりGNIを指標 PER PISA2015数学の得点、 50 2 IDN (%、2009 – BGR POL COL LTU 0 0 GBR CZE BRA (対数、PPP) 15 HUN 年) ‒50 ‒2 SVK KOR AUS y = 2.37 + 0.001x y = ‒0.02 + 0.05x t = 0.44 t = 1.35 ‒100 R 2 = 0.004 ‒4 R 2 = 0.05 ‒4,000 ‒2,000 0 2,000 4,000 6,000 ‒10 ‒5 0 5 10 初等・中等教育向けの生徒 1 人当たり 中等学校生 1 人当たり支出の年平均 年間政府支出 , (PPP) 変化率(%,2009 – 15 年) 1 人当たり GNI を指標(対数,PPP) 出所:OECD (2017); UIS (2017); World Bank (2017a) からのデータに基づく WDR 2018 チーム.データは http://bit.do/ WDR2018-Fig_9-2. 注:AUS = オーストラリア ; BGR = ブルガリア ; BRA = ブラジル ; COL = コロンビア ; CZE = チェコ ; GBR = イギリス ; HUN = ハンガリー ; IDN = インドネシア ; KOR = 韓国 ; LTU = リトアニア ; PER = ペルー ; POL = ポーランド ; SVK = ス ロバキア . GNI = 総国民所得 ; PPP = US ドルによる購買力平価 . る.すなわち,多くの教育制度は現行の資金調達規模 金銭的な報奨や説明責任のメカニズム――親や管理者 の下で可能な水準を大きく下回る学習成果しか達成し からの意見など――も,制度の主体がどう立ち回るか ていない.インドでは,公共部門における教員の過度 に影響し得る.制度主体を動機付けるこのような要因 な無断欠勤は,年 15 億ドルのコストに相当すると推 のなかには学習と整合的なものもあるが,そうでない 定されている.もし教員の説明責任制度がもっと強固 ものもある.例えば,給与やキャリア・アップはしば に学習と整合的になっていれば,教員の出勤は改善し しば資格と経験の組み合わせによって大体は決定され て,同じコストでより高い学習水準を達成することが ているが,このような特性と学習との関係は弱い 15. できるだろう 12. 教員のパフォーマンスを評価する仕組みに投資した諸  追加的な資源が過去の資源と同じように配分された 国でさえ,そのような仕組みは専門的能力開発に関す としても,学習が改善する可能性は低い.多くの諸国 る決定とは切り離されていることが多い.ナイジェリ における教育支出の構成は最適とはいえない.低所得 アのエド州は年次の実績評価を実施しているが,この 国では教員給与が教育予算のしばしば 80% 以上を占 ような評価は教員の昇進に関する決定には影響しな めており,他の分野に支出する余地はほとんど残って い.また,教員のパフォーマンスに基づく賞罰につな いない.追加的な財源を使って教員が必要な補完的な がることもない 16. 投入――教科書や現職研修など――を確実に享受でき るように支出パターンを変えれば,整合性が改善して, 一貫性は重要:制度のすべての部分を協働させる 学習をかなり後押しできるだろう 13.  教育制度の各部分が一緒になって機能するのを確保 することが,学習に向けた整合性の確保と同じくらい インセンティブ 重要である.たとえ,国が生徒の学習を優先し,妥  教育制度の主体は多くのインセンティブに取り巻か 当な学習指標を確立し,そして資金調達をインセン れているが,学習そのものと整合性があるのはその一 ティブと整合的にしていても,依然として制度の各要 部だけである.制度の主体は義務の遂行方法に影響す 素が一貫していることを確保する必要がある(ボック る一連の要因によって動機付けられている 14.専門 ス 9.2).仮に国が積極的な学習や創造的思考により 家としての報奨――当該主体の職業に授与される社会 大きな重点を置く新しいカリキュラムを採用したとし 的地位,新たな才能を開発できる能力,生来の意欲な ても,カリキュラムだけでは大した変化は生じないだ ど――は,すべてが行動を牽引する重要な要因である. ろう.教員はより積極的な学習方法を使うには研修を 164 世界開発報告 2018 ボックス 9.2 上海で行われた,効果的な授業に向けたすべての要因の整合化  上海の 15 歳の生徒が 2012 年 PISA テストで,他のあらゆる ナンスのおかげで,教員の授業負担は比較的軽く,授業プラ 教育制度の仲間たちの得点を凌駕した際,上海がどのようにし ンを工夫・準備をする時間が確保されている. てそれを達成したのかを解明しようとすることに対する世界的な 4. インセンティブ. 教員にとってこのような魅力的な報酬パッ 関心に火が点いた.1 つの教訓は,重要な制度的要因がすべて ケージと社会的な配慮の高さが相まって,上海は高スキルの 一貫して,学習のために整合性を保っていたおかげで,教員と 有能な教員候補を引き付けることができる.インセンティブ いう労働力がとりわけ効果的になっていたということである: ――金銭的なものと非金銭的なものの両方――によって,教 員は高い基準を維持し,授業スキルを継続的に改善すること 1. 学習の目的と責任.学習基準では生徒が各学年で修得すべ 「模範 に前向きである.例えば,高パフォーマンスの教員は き能力が明確に規定されている.教員はこのような基準を詳 という称号を通じて認知されており,教員の給与総額 教員」 細な授業計画のなかに盛り込んで,生徒がカリキュラムを効 (小さいが) のうち一部分 はパフォーマンスに基づいている. 果的に学べるようにする. 教員はこのようなインセンティブに依拠して行動する機会を 2. 情報と指標.学習基準に基づいて学校としては日常的に生徒 有している.それは教員のニーズと整合的で,古くから確立 の進捗度を評価する.このような評価の結果は直接教室に されている専門能力開発制度のおかげである.例えば,学 持ち込まれ,教員はそれを使って授業計画を調整し,生徒が 校の指導層は教員の注意深いモニタリングに基づいて,個々 弱い分野については追加的な時間を割り当てる.生徒の評 の教員向けに対象を絞った研修プランを開発することができ 価は教員をモニター・評価・支援するための包括的なシス る. テムへの重要な入力情報になる. 3. ファイナンス.上海の教員に対する給与・付加給付のパッケー  どの 2 つの教育制度も決して同じではなく,他の国が教員管 ジは,中国内の他の場所に比べて気前が良い.事実,それ 理に関する上海の制度を正確に模倣しようとしても,機能しない は他の専門職の水準に匹敵している.さらに,パフォーマン 可能性が高いであろう.それでもコアな原則はどこでも適用可 スが良く長年勤務している教員が新しい教員よりも大幅に高 能であろう.教育制度の多種多様な部分を一貫して学習に向け い給与を得ることができる体系になっている.十分なファイ て整合的にすれば成果が出るだろう. 出所:Liang, Kidwai, and Zhang (2016) に基づく WDR 2017 チーム. 受ける必要があり,変化を引き起こすには十分に関心 せて調整することができる.しかし,フィンランドの を持って対処する必要がある.新しいカリキュラムに 教員の自律性を自国の状況のなかに単に輸入するだけ したがって教える方が,丸暗記を好む古い方法よりも のパフォーマンスの悪い制度は――一貫性を強調して ずっと要求されることが多いからだ.仮に教員がカリ いるフィンランドの教育者の助言に反して――,失望 キュラム改革に賛成であっても,もし未改革の試験制 する可能性が高いであろう.仮に教員が準備不足で, 度が不整合なインセンティブを生み出せば,生徒やそ 意欲がなく,きちんと管理されていないとすれば,教 の家族は改革の効果を弱めるかもしれない.韓国では, 員に大きな自律性を与えることは,問題を確実に複雑 より生徒中心的なカリキュラム――創造性を奨励する 化するだろう.目的は中央で設定するが,実施を教員 もの――を導入する取り組みは,時として極めて重要 に委ねるというカリキュラムのアプローチを採用した な大学入学試験で成功することについて生徒が受けて 南アフリカは,1990 年代から 2000 年代にかけてこ いる圧力と競合した 17. の事実に気付いた.このアプローチは多くの学校で失  教育制度内のさまざまな部分間の一貫性の必要を考 敗した.教員の能力と教員が自由に使える資源にうま えると,諸外国からの借り入れにはリスクが伴う.教 く適合していなかったことがその一因である 18.こ 育政策策定者はしばしばパフォーマンスの良い制度を の事例が証明しているのは,さまざまな制度要素間の 精査して,自国の制度内での学習成果を改善するため 一貫性と自国で育てる解決策の開発が非常に重要だと に借りられるものを特定しようとしている.実際に, いうことである. フィンランドの記録的な学習成果の背後にある秘密の 要素を探求をしようと,2000 年代になると訪問代表 技術的な複雑さが,教育制度を 団の群れがヘルシンキを訪れた.それは「PISA ツー 学習に整合的にするのを困難にしている リズム」というあだ名を頂戴した.フィンランドの制 度では,教育水準の高い教員に相当な自律性を付与し  フィリピンでは,2,300 万人の子供たち――人口の ているので,教員は自身の授業を生徒のニーズに合わ 5 分の 1――が,全国に 47,000 もある公立の小学校 9 教育制度は学習との整合性を欠いている 165 や高校に毎日通学している 19.彼らの親を含めると, 建設プログラムで有権者に印象付けるための手段とみ フィリピン人の 3 分の 2 は定期的という基準で学校 なすことがある.このような目標は学習と整合性を欠 制度と相互作用している.マニラの中央政府は教育制 き,学校に使えない校舎と有能でない教員を残すだけ 度を 200 以上の教育関連部局と 2,500 の学校区事務 ということになり得る 21.このような目標が他の目 所から成るネットワークを通じて運営している.これ 標と競合する場合,その結果として生じるのは,教育 らの部署が公立学校の教員 60 万人強,すなわち公務 制度全体とその主体が学習に向けて整合的になってい 員の 40%以上を監督している.日常業務でさえ制度 ないという状況である. 内の多くの部門間の調整を必要とする.例えば,公立  制度を学習改善に向けて運営するというのは困難で 学校運営基金の管理は中央部局からのデータに基づい ある.教室における学習の促進には教員の著しい熟 ている.各学校はひとたび割当を受領すると,約 50 慮が必要とされ,専門的な評価を用いて,みずから 万枚の小切手を切って,それと同数の支出報告書を提 の授業を生徒のニーズに合わせて調整しなければなら 出する.その報告書は個々の支出項目の詳述である. ない.また,授業には,比較的長期間にわたる生徒 このような金銭的な流れのモニタリングだけでも,教 と教員の間における規則的で反復的な相互作用が含ま 育制度にとって著しい重荷になっている.ただし,そ れる.このような特性は――学校レベルでの生徒の成 れが政府教育支出に占めるシェアは 5%未満にすぎな 果に関する情報や指標の欠如と相まって――,学習 い 20. を管理およびモニターするのを困難なものにしてい  複雑な教育制度の 3 つの特性が,その運営の技術 る.このような挑戦課題は,もし私立学校が主要なプ 的な挑戦課題を増幅している.第 1 に,制度は不透 レーヤーであれば,さらに悪化することであろう.と 明である.利害関係者が追求している多くの目標は いうのは,私立校は典型的には,公的制度の直接的な 観察するのがむずかしい.それらの相互作用につい コントロールの外で運営されているからだ(ボックス ても同様で,それが教室で起こっているのか,それ 9.3). とも官僚機構のなかで起こっているのかは不明瞭で  モニターが容易なものもなかにはある 22.校舎や ある.第 2 に,制度には「粘着性」がある.学習を改 現金給付プログラムなど就学の拡大を目指した投資 善するための改革は打ち出すのが困難で,成果を生 は,非常に目に付きやすく,モニターも容易である. むには時間がかかる.第 3 に,改革を成功裡に実施 それとは対照的に,教員の能力の向上,あるいはカリ するためには,多くの官僚には欠如しているような キュラムの改善を目的とした投資はあまり目立たず, 能力が必要とされる. その投資の生徒の学習に対する影響をモニターするの はむずかしい.このような挑戦は,時には,教育制度 多くの目標や主体が教育制度を不透明にしている を質の改善よりも就学の改善を強調する方向に促進し  教育制度は典型的には広範な目標を掲げている.そ 得る 23.生徒の学習をモニターするシステムが有効 れに含まれるのは,生徒たちに労働市場で必要とされ な場合においてさえ,それは,時に成績の良い生徒, るスキルを身に付けさせること,社会的公平性を促進 短期的なテストの準備,あるいは範囲を狭めて明確に すること,子供たちに規範・信念・コミュニティの歴 テストできる科目だけを重視するなどといったバイア 史などを教えることなどである.しかし,教育制度は スを持つことにつながりかねない. 学習を改善する努力を阻害する他の目標をもつことが  教育制度における利害関係者や担当機関の多様性 あり得る.例えば,政治家は時として教育システムを, は,学習を改善するための努力の成果を予測不可能な 公務員職の提供で支持者に見返りを付与するための手 ものにしている 24.学習というのは複雑なプロセス 段,あるいは戦略的な計画ではないものの目立つ学校 であって,原因から結果という単純な直線的な関係に ボックス 9.3 私立学校教育は万人のための学習と整合性があるか?  私立学校は教育において,貧困層に対してさえ重要な役割 私立校に通っている生徒の割合がこのようなグローバルな数字 を果たしている.グローバルにみると,小学生のうち 8 人に 1 を大幅に上回っている場所がなかにはある.ナイジェリアのある 人が私立校に就学している.中等レベルではその比率は高くな 1 つの州では,基礎教育学習者の 57%が私立校に通っている c. り,中所得国では 4 人に 1 人となっている (表 B9.3.1)a.低所得 このような就学は高所得家計に限定されているわけではない. 国でも比率は同程度であるが,非公式な学校が実際よりも少な ケニアのナイロビ市のスラム街では,最貧 20%層に属する家計 く数えられているとすれば,同比率は過少推定かもしれない b. の 43% は子供を私立学校に通わせている.これは非スラム街 166 世界開発報告 2018 ボックス 9.3 私立学校教育は万人のための学習と整合性があるか?(続き) の最富裕 20%層の家計で,子供を私立学校に通わせている比 需要がある場合,新しい私立学校は間隔を埋めることができる k. 率 よりも高い d.ジャマイカでは,最貧層出身の生徒の (35%) コストに関して,中国,ガーナ,そしてケニアでは,私立校の 10%は私立校に就学している e. なかにはコスト的に公立校に比肩し得るところもある l.私立校 というのは, は公立校ではできない形で革新することもできる.というのは,  低所得家計はこのような犠牲を進んで払っている. 私立校は同じようなコストでより良い教育を実施している,と考 私立学校はより少ない制約下で運営されているからだ.加えて, えられているからだ.多くの諸国で,親は教員の無断欠勤は私 私立校は政府とは異なる選好を有する――例えば,保護者が男 立校では少なく,学習成果はより良いと述べている f.ジャマイ 女別学ないし宗教教育を高く評価する――家庭向けに隙間を埋 カや南アフリカでは,親たちは,私立学校は公立学校よりも安 めることができる.私立校ではサハラ以南アフリカ 4 カ国におけ 全であると指摘している g.さらに,公立の初等教育は大多数 るように,教員の無断欠勤率が低い可能性もあろう m.そのよ の諸国では正式には無償とされているものの,多くの非公式な うな学校では,成績不良の教員は公立校におけるよりも容易に 料金が残存しており,このことが公立校と私立校の間のコストの 退職させることができるので,このことは教員の説明責任を強化 差異を縮小させている. することになろう.最後に,私立校からの競争は近くの公立校  しかし,私立校が公立校よりも良い学習成果をあげている, のパフォーマンスを改善するだろう n. ないしその逆であるということを示す一貫した証拠はない.コロ  しかし,このような恩恵は多くのリスクを伴っている.私立校 ンビアやインド,アメリカでは,私立校ないし公立校への就学 は教えるのが容易で最も儲かる高所得生徒をかすめとって,より がもたらす結末について実験的な評価がなされているが,入り 不利な状況にある生徒たちだけを公立システムに置き去りにす 混じった結果が示されている h.ある状況においては,私立学 るかもしれない o.私立学校教育は,仮に言語・民族性・宗教 校は公立システムよりも低いコストで同等の学習水準を実現し などが生徒を区分する要因になるならば,所得以外の側面に沿っ ている.それは多くの場合,教員給与を低く抑えることによって た社会的亀裂を深化させる懸念がある.家族は必ずしも教授法 なされている i.そうではあっても,教員給与が低いことは,長 に関して知識が豊富なわけではないため,私立学校は生徒の学 期的に有資格教員の供給を削減する懸念があろう. 習を遅くするような選択――例えば,母国語による授業を止め  このような議論で引用されている証拠の多くは実験で得られ させる――をするよう家族を導くこともできよう.また,家族は たものではないことから,私立校そのものの影響と私立校に就 質や学習を完璧に評価できるわけではないので,私立学校は彼 学する生徒の種類がもたらす影響を融合している可能性があろ らを利用して増益を図ったり,その他の目標を達成したりするこ う.生徒の特性にかかわる相違の調整に配慮した 40 カ国の比 とができる.最後に,私立学校教育の拡大が短期的な恩恵をも 較は,大多数の諸国において私立校の優位性は発見されなかっ たらしたとしても,長期的には有効な公立学校教育に対する政 たことを示している j.さらに,私立学校教育が生徒の価値観に 治的な支持層の土台を崩すことになり得る.利益とリスクのいず 与える影響や,公立学校制度の長期的な健全性への影響を評価 れが支配的なのか,といったグローバルな所信を表明すること した厳格な研究はほとんどない. は不可能である.  公的政策の観点からは,政府としては私立学校教育の拡大を  官民パートナーシップの経験が増大しつつある.学習危機へ どう考えるべきか? 政府はその拡大を奨励すべきか? 新学校 の対処におけるみずからの能力の制約に直面していることから, に対する規制を廃止するか,あるいはより多くの生徒が私立校 私立校に資源を供与するような形での官民パートナーシップに に就学できるように公的補助金の供与さえするか,のいずれに 向かう政府も出てきている.ブラジルのペルナンブコ州では, よってすべきか? 私立校の短期的な成長と教育制度の長期的 州政府は州内の生徒の半数を政府が資金提供をしている私立校 な健全性の間にはトレードオフがあるか? に就学させようとしている p.ウガンダでは,さらに政府は数百  私立学校はさまざまな利益をもたらす可能性を提供している. の私立学校に対して,中等教育に対する需要増大を満たすのに 直接的なものの 1 つとして,近接性がある:最寄りの公立学校 必要な資源を供与した q.一部の事例では,これは私立学校が, が遠い場合,あるいは公立インフラの整備の速さを上回る拡大 「援助した」 インドにおける政府が 学校のように,教育政策という 表 B9.3.1 私立学校は就学のなかで大きなシェアを占めている (%,2014 年,国所得グループ別) 私立教育就学者の比率 国所得グループ 初等前 初等 中等 低所得国 57 14 20 中所得国 42 13 25 高所得国 42 12 20 出所:World Bank (2017a). 9 教育制度は学習との整合性を欠いている 167 ボックス 9.3 私立学校教育は万人のための学習と整合性があるか?(続き) 点で本質的に公立学校を模倣するということを意味する r.しか 家的提供は多くのさまざまな哲学や教育へのアプローチを反映 し,それ以外の事例では,アメリカの学校割引券やリベリアの している. サービスをモニター インセンティブを有効に整合化し, パートナーシップ学校という試験的実施などのように,公的資金 する教育担当省庁の能力は往々にして限定的であり,教育がさ を供与された私立学校は学校運営について大幅な自由度を有し まざまな形で提供されている状況の質を評価するためには追加 ており,生徒の学習成果が質の指標にされている s.ウガンダ 的なスキルが必要であろう.どちらも容易ではないが,政府は, では,公的財源のおかげで私立学校の質が改善しており,官民 同じ目的を有しているわけではない多種多様な提供者のグルー パートナーシップは仮に国が短期間で就学を激増させたいので プを規制するよりも,良質な教育を提供する方がより単刀直入 あれば,有用な戦略になる可能性が高いであろう t. だと考えている公算があろう.  しかし,私立学校の監督というのは良質な学校教育の提供よ  結論として,各国は,私立学校教育が万人のため学習を阻害 りも容易だということではないだろう.政策当局にとっての挑戦 するという事態が起こらないことを保証する必要がある.各国は は,すべての子供たちにアクセスを保証する,家庭を搾取から さまざまな動機に基づいて,私立学校教育に関して多種多様な 保護する,教育革新を奨励する環境を整備するなどの政策や規 選択を行うだろう.しかし,もし私立学校教育を許容,あるいは 制の枠組みを開発することである.これが達成できるよう規制 むしろ奨励するのであれば,前述したすべてのリスクに対して注 の枠組みを運営するのはむずかしい.教育制度がより一般的に 意を払い続けなければならない.単に提供の仕組みが変化した 直面するのと同じ技術的・政治的な障壁が作用し始めるからだ. からといって,本報告書で概要を示した問題が消えるわけでは 技術的な視点からは,非国家的提供の多様な性格を取り入れた ない.政府はサービス提供の一部について外部委託を選択する 枠組みを開発するのは複雑である.例えば,バングラデシュで かもしれないが,すべての子供や若者が学ぶ機会をもつのを保 は,中等前教育の非国家的提供には 11 の別個のカテゴリーが 証する責任については決して外部委託すべきではない. (図 B9.3.1) ある .比較的に同質的な公立学校とは違って,非国 図 B9.3.1 バングラデシュでは中等前教育について 11 種類の非国家提供者がいる 中等前教育の各非国家提供機関の数(2016 年) 幼稚園 BRAC 学習センター 高校付属マドラシャ校 NGO の学校 マドラシャ校 非政府 その他 NGO 学習センター モスク・ベースの学習センター 寺院ベースの学習センター Quami Tea Garden 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 教育機関数 出所:Directorate of Primary Education, Bangladesh (2016) のデータに基づく WDR 2018 チーム.データは http:// bi.do/WDR2018-Fig_9-3-1. 出所:WDR2018 チーム a. World Bank (2017a). l. Heyneman and Stern (2014). b. D. Capital Partners (2016). m. Bold 他 (2017). c. Hӓmӓ(2013). n. de la Croix and Doepke (2009); Kosec (2014); Sandstrӧm and d. Oketch 他 (2010). Bergstrӧm (2005). e. Heyneman and Stern (2014). o. Akaguri (2014); Hama (2011). f. Day Ashley 他 (2014); Heyneman and Stern (2014). p. “Educacao Integral,” Secretaria de Educacao, State of g. Heyneman and Stern (2014). Pernambuco, Varzea, Recife, Brazil, http://www.educacao. h. Kingdon (2017); Urquiola (2016). pe.gove.br/portal/?pag=1&men=70. i. Andrabi, Das, and Khwaja (2008); Day Ashley 他 (2014); q. 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Barrera-Osorio 他 (2016). 168 世界開発報告 2018 分解するのは困難である.授業と学習を特徴付ける多 的に直面する多くの認知上の落とし穴に光を当ててい 数の相互作用や,それがもたらすほとんど連続的な る.これには以下が含まれている:選択肢があまりに フィードバックが,教員・保護者・生徒が予測不可能 多すぎると政策の有効性評価が困難になること;成功 な形でそれぞれの行動を調整するという結果をもたら よりも失敗を感情的に受け止め,その結果として政策 している.例えば,インドのアンドラ・プラデシュ州 当局者が実験に警戒的になる傾向があること;既存の やザンビアにおける学校補助金の導入は,長期的に生 見方を補強すべく情報を選別的に利用するようになる 徒の学習改善に失敗した.これは保護者が政府資金の バイアスが生じること;関係バイアスが生じること(エ 増加を当てにして,彼ら自身の金銭的な支援を削減し リート教育の経歴を有する官吏にとっては,大衆教育 たためである 25.保護者の金銭的負担の軽減はこの など 28. の挑戦課題を把握するのがむずかしい) ような補助金の望ましい効果かもしれないが,それが  教育機関には,このような複雑な諸問題に対処する 主要な意図ではなかった.より一般的に,教室や学校 のに必要な能力がしばしば欠如している 29.最近の 制度の外にある多くの要因――健康や経済のショック 評価は,教育機関内における複数業務の並行的な処理 も含む――は,学習の改善を目指す介入策のインパク や細分化によって,学習にかかわる説明責任の範囲が トを変えることがある.そのような変化への反応にお いかにして曖昧になるかを示している.キプロスでは, いて,政策を学びそして調整することに失敗している 人材部と総務部がないため,教育部がこのような責任 場合,それはしばしば介入策が計画通り機能していな を管理しなければならず,各種のプログラムや政策を いことを意味する. 開発することから時間が奪われている 30.公共支出 や財務的説明責任に関する評価も,多くの途上国にお 教育制度には「粘着力がある」 ける重要な分野での能力不足に光を当てている.例え  教育制度は変化が遅い.チリやフィンランドなどの 2010 年以降評価を受けた低中所得 72 カ国のうち, ば, 制度変革についてよく知られている成功事例は,開始 学校・保健所・その他のサービス提供部署向けの資源 から実現までに数十年かかっている.ミクロ・レベル が前線に到着することを確保するために,何らかの制 でさえ,包括的な学校改革を実施したアメリカの学校 度を備えているのはわずか半数にとどまっている 31. などは,全効果を感じることができるようになるまで –  には 8  14 年を要した 26.このような長い時間枠を考 * * * えると,教育制度と学習の整合性を改善するにはさら   に 2 つの挑戦課題に直面する.第 1 に,学習を改善す  技術的な挑戦課題と実施能力の欠如が相まって,整 るためには,政策は通常は相対的に一貫性を維持して 合性を欠いた教育制度ができあがっている.各国がこ いなければならない.それは通常の環境下では困難で のようなチャレンジを克服できなければ,その教育制 ある.政権の変更,資金調達の乱高下,全体的な経済 度は達成可能なことを大幅に下回る水準の学習しかも 状況の変化などすべてが,政策の持続性を脅かす 27. たらさない.しかし,学習改善に向けた技術的な障壁 しかし,改革が短期的には何の恩恵も示さない時,最 への取り組みは戦いのほんの一部にすぎない.低学習 後までやり遂げることはより一層困難な課題となる. の均衡を打破するためには,各国はこのような技術的 第 2 に,長い時間差のゆえにプログラム評価はより な不整合性の中心にしばしばある政治的な制約にも取 困難になる.というのは,個別の介入策のインパクト り組まなければならない. は長期的にしか顕現しないため,改善を個別の介入策 に帰するのはとりわけ困難だからだ. 注 大規模な学習の改善を実施する能力がしばしば欠如している 1. Duflo, Dupas, and Kemer (2015).  不透明性と粘着性は,技術的な整合性の達成を極め 2. Bold 他 (2013). てむずかしくしている.実施力の弱さを考えると課題 3. Acemoglu (2010). はさらに歯が立たないように思える.実施の成功は有 4. Béteille and Ramachndran (2016); Bruns, 効な指導力,教育関連諸機関の間の調整,実施チーム Filmer, and Patrinos (2011); Duthilleul (意欲に溢れ,資源を効率的に利用し,リアル・タイ (2005). ムで問題解決ができる人々)に依存している.これら 5. Hallak and Poisson (2007); Transparency のすべてが多くの制度において不足している.さらに International (2009). 行動経済学が,政策当局者が複雑な運営環境下で一般 6. Ministry of Finance, Bangladesh (2017). 9 教育制度は学習との整合性を欠いている 169 7. World Bank (2010). Andrabi, Tahir, Jishnu Das, and Asim Ijaz Khwaja. 2008. “A Dime a Day: The Possibilities and Limits of Private 8. World Bank (2015b). Schooling in Pakistan.” Comparative Education Review 9. DISE のウェブサイト http://udise.in/ を参照. 52 (3): 329–55. Barrera-Osorio, Felipe, Pierre Gaspard de Galbert, James P. 10. OECD (2016); UIS (2017). Habyarimana, and Shwetlena Sabarwal. 2016. “Impact of 11. 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(図 S6.1) 期の便益も比較検討しなければならない.将来の大気 2012 年現在で支出に関する情報を報告した諸国の約 汚染を削減するために都市部のインフラ改善への支出 3 分の 2 が,国民所得の 4%以上を教育への公共支出 を増やすべきか,それとも呼吸器系統の感染症を治療 に振り向けている.また,教育は政府予算のなかで単 するために一次医療ケア・サービス改善に今投資すべ 一項目としては典型的には最大のシェアを占めてい きだろうか? る.平均すると,低中所得国では約 15%に達している.  教育支出もこれと同じ計算にしたがう.教育が個人 教育支出が依然として低い国もなかにはあり,それは と社会の両方にとっての多くの潜在的な利益を有する 優先度の引き上げ余地があることを示唆している.し (第 1 章参照)ことは,教育を公的支援の有力な候補 かし,全体的なトレンドは,各国政府が教育の重要性 にする.実際,公平な教育の提供は法律的に明記され を認識しているということを示唆している. ていることが多い.教育の収益率が高いため多くの生 徒は進んで自分でコスト負担しているものの,教育制 支出増加は学習成果を改善するか? 度の少なくとも一部を公的にファイナンスすべきであ るとする強力な論理的根拠がある.第 1 に,公平性  教育に対する公共投資に関しては根強い論拠がある に対する懸念から,各国は最貧家計出身の子供や若 ものの,支出と学習成果の関係はしばしば弱い.例え 者向けの教育に補助金を供与している.というのは, ば,グローバルな学習評価において,世界の所得の尺 その家計は子供の教育に必要な資金を賄うことが不 度で低い方の諸国においては,生徒 1 人当たりの支 可能,ないしは消極的かもしれないからだ.第 2 に, 出が多い方がより多くの学習がもたらされることにつ 教育には他人にとってもプラスの波及効果があるのに ながっているようにはみえるものの,各国の 1 人当 ――罪を犯す傾向を低下させるなど――,個々人はみ たり所得を制御すると,そのような相関関係はほとん ずからの教育に社会の観点からすると過少投資に陥る どなくなってしまう.この発見は,相関関係の動因は 恐れがある.第 3 に,政府は教育を利用して共通の 公共支出の水準よりも経済開発段階にあることを示唆 価値観を生み出したいと考えている.教育を直接実施 している 1. したり,少なくとも資金提供したりすれば,そのこと 地域的な学習評価――低所得国や下位中所得国の方 は,そうできる手段を政府にもたらすことができる. がより多く含まれている――も,支出と学習の相関関 支出のさらなる増加,それとも支出のよりいっそうの適正化――ないしはその両方? 173 図 S6.1 政府は予算の大きな割合を教育にあてている a. GNP に対する割合でみた b. 政府総支出に対する 政府の教育への支出 (1999 年,2012 年) 教育への支出の割合 (1999 年,2012 年) 15 15 10 10 % % 5 5 0 0 低所得国 下位 上位 高所得国 低所得国 下位 上位 高所得国 中所得国 中所得国 中所得国 中所得国 1999 2012 出所:UNESCO (2015). データは http://bit.do/WDR2018-Fig_S6-1. 注:示されているのは中央値. 係がいかに首尾一貫していないものになりうるかを示 支出・学習の連鎖における結び付きの弱さ している.例えば,小学生 1 人当たりの公共支出は, 2000 年代にケニアとレソトの両国で増加した.しか  支出が生徒のより良いより公平な学習成果に必ずし し,生徒の学習成果はレソトでは改善したが,ケニ もつながっていない主な理由には,以下の 5 つがあ アでは悪化した (図 S6.2 のパネル a と b).グアテマ る 5. –  ラでは,生徒の学習が 2006  13 年に大幅に改善した が,生徒 1 人当たりの支出は同期間中には低下して • 支出が公平に配分されていない. (図 S6.2 のパネル c と d) いた .一国内の各地域を比 • 資金が学校に届いていない,あるいは意図された目 較しても類似のパターンが明らかになることが少なく 的に使われていない. ない.インドネシアでは 2000 年代に,県の教育支出 • 公共支出が民間支出の代替になっている. の変化と中学校の試験結果の結び付きは非常に弱かっ • 公的資金利用に関する決定を一貫性をもって学習と た 2.このような発見が示唆しているのは,教育制度 整合させることができていない. の増加した支出を学習成果の改善につなげられる能力 公的資金を有効に利用する能力がない. • 政府機関に, は,制度によって,さらには同じ制度内の学校の間で さえ,さまざまだということである.  公共支出はしばしば貧しい疎外された子供たちを除外す  より多くの資源を学校向けに直接供与することが学 る形で配分されている.このことは学習に対する全体的 習にもたらす影響は,さまざまな環境の下でこもごも なインパクトをそれだけ削減している.全体として, である.20 年間にわたる研究のレビューが明らかに 教育への公的支出は裕福で影響力を有する層を優遇す しているところによれば,多くの学校レベルの資源 (表 S6.1) る傾向にある .貧困家計は初等教育向け公共 (教科書など)と生徒の成績との相関関係は一定してい 支出のなかでは確かに大きなシェアを占める傾向にあ ない 3.多くの諸国では,学校改善を支援するのに必 る.というのは,子供の人数が富裕家計よりも多い傾 要な資源を学校宛てに供与するのに,学校補助金が一 向にあるからだ.しかし,中等・高等教育向けの公共 般的に使われる仕組みになってきている.補助金はし 支出は圧倒的に富裕層をひいきにしている.というの ばしば生徒の就学と繋ぎ止めを増やしてきているもの は,生徒がその水準に達する頃までには,多くの貧困 の,学習に対する効果は比較的限定的である.例えば, 層はすでに学校から離れているからだ.ザンビアでは, インドネシアとタンザニアにおける最近の評価は,学 中等教育支出の 39%は全家計のうち最富裕 20%層に 校補助金だけでは生徒の学習向上は生じないことを見 配分されていた.これに対して同最貧層向けのシェア 出している 4. はわずか 8%にとどまっていた.この格差は高等レベ ルではもっと大きく,高等教育に対する公共総支出を みると,その 86%は最富裕層向けとなっている.この ような推定値は社会経済的グループ相互間の格差を過 174 世界開発報告 2018 図 S6.2 公共教育支出の変化と生徒の学習の間の結びつきは弱い 公共教育支出の変化と6年生の数学学習の成績(主要国) b. 6 年生の数学の a. 公共教育支出の変化 学習成果 500 550 400 SACMEQ の平均点 生徒1人あたり 支出 300 500 (PPP) 200 450 100 0 400 2000 2005 2010 2000 2005 2010 ケニア レソト マラウイ d. 6 年生の数学の c. 公共教育支出の変化 学習成果 出所:生徒の学習に関する World Bank (2017) 1,400 540 お よ び UIS (2016) の デ ー タ を 用 い た WDR 2018 チ ー ム. デ ー タ は 次 を 参 照 http://bit. 1,200 520 生徒1人あたり LLECE の平均点 支出 do/WDR2018-Fig_S6-2. (PPP) 500 注: 生 徒 1 人 あ た り の 支 出 は US ド ル の 購 1,000 買力平価 (PPP) で 報 告 さ れ て い る. 生 徒 の 800 480 学 習 に 関 す る デ ー タ は SACMEQ(Southern and Eastern Africa Consortium for Monitoring 600 460 および LLECE Educational Quality) (Latin American Laboratory for Assessment of the Quality of 2006 2010 2014 2006 2010 2014 Education)によって収集されたデータによる. グアテマラ パラグアイ ペルー 各々の国について,2つのデータ点は,デー タが入手可能な年を示している. 表 S6.1 公共教育支出における不平等は多くの地域で共通している 家計所得五分位による公共教育支出の負担(%) 初等教育 中等教育 高等(第三期)教育 合計 5 分位 5 分位 5 分位 5 分位 5 分位 5 分位 5 分位 5 分位 国 年 最貧困層 最富裕層 最貧困層 最富裕層 最貧困層 最富裕層 最貧困層 最富裕層 バングラデシュ 2010 27 13 13 23 2 55 20 20 ブルンジ 2006 23 13 12 27 4 59 15 29 コンゴ 2011 21 16 18 18 1 62 — — ガーナ 2007 19 13 13 20 4 65 12 34 ホンジュラス 2004 31  6  5 20 1 67 — — インドネシア 2007 26 11 15 19 4 57 20 23 パキスタン 2007–08 25 11 16 23 9 55 17 28 タイ 2011 25 14 — — 1 73 20 26 ウガンダ 2009–10 19 15  6 38 1 68 — — ザンビア 2010 22 14  8 39 0 86 15 31 出所:バングラデシュ : World Bank (2013a); ブルンジ : Tsimpo and Wodon (2014); コンゴ : World Bank (2014); ガーナ : Wodon (2012); ホンジュラス : Gillingham, Newhouse, and Yackovlev (2008); インドネシア : Wika and Widodo (2012); パキスタン : Asghar and Zahra (2012); タイ : Buracom (2016); ウガンダ : Guloba (2011); ザンビア : World Bank (2016b). 注:最貧困層(最富裕層) (最富裕層) は,家計の最貧困層 の 20% をさしている.ガーナとコンゴにおける中等教育に関する推定値は, 中等教育前期に関するもの.タイに関する初等教育の推定は中等も含んでいる.— = データ入手不可. 支出のさらなる増加,それとも支出のよりいっそうの適正化――ないしはその両方? 175 小評価している公算がある.というのも,貧困層出身 一貫性の改善というのは単に複数の投入の構成という の生徒は富裕層出身者よりも質の低い学校教育を受け ことだけではなく,その投入を管理している制度にか ている傾向にあるという事実が,推定値では考慮され かわることでもある.タンザニアでは,学校に供与さ ていないからだ.したがって,資源をもっと公平に配 れた補助金はそれ自体では無効であったものの,教員 分すれば平均的な学習水準は向上するだろう. のインセンティブと組み合わさった補助金は,補助金  公的資金は時として学校に届かない,ないしは意図され が生徒の学習改善のために有効に使われるということ た通りに使われていない. –  2013  14 年において,ザン の保証になった 12.インドネシアでは,学校補助金 ビアの 3 分の 1 の小学校では,学校人頭補助金が届 が学習の改善につながったのは,それが教務委員会を かなかった 6.2013 年にフィリピンでは,同じよう 村当局に結び付ける措置と組み合わされた場合だけで な資金の約 4 分の 1 が初等および前期中等学校に届 あった 13. かなった 7.ザンビアでは,資金は他の使途(県レベ  教育の管理を担当する政府機関はしばしば資源を有効 ルの運営費を含む)に流用されていた.フィリピンの に使う能力を欠いている.フィリピンは最近,公共投資 場合,県の教育局は学校の経費を賄うために資金の一 の著増を後ろ盾にして野心的な教育改革に乗り出し 部を使ったと申告していたものの,この使用が記帳さ た.プログラムの中心的な要素は中等教育を 2 年間 れていなかったため,学校としては支出をモニタリン 延長するところにある.このことは,続いて,後期中 グする手立てはまったくなかった.フィリピンの貧困 等学校のために必要になる場所を確保するために,学 層向けの学校も期待していた額との対比で,富裕層向 –  校インフラの修復・拡張を要求する.2005  15 年に けの学校よりも受領額の割合が低かった 8.資源が学 インフラ予算が 19 倍に増額されたものの,そのよう 校に届けられた時でさえ,使われないことが時々ある. な膨大な学校校舎建設プログラムを管理する能力が政 シエラレオネでは,2008 年のプログラムのおかげで 府にはなかったことから,資源の大きな割合が使用 学校宛ての教科書配布が成功裡に増加した.ところが, されないままとなった.2014 年現在,インフラ予算 教科書は学習に何のインパクトも与えなかった.なぜ のうちわずか 64%がコミットされているにすぎない. ならば,教科書は生徒に配布されないで,将来的な不 しかも,教室ができあがった場所では,学校長はその 足に備えて保管されてしまったからだ 9. 質に大いに不満であった 14.  家計支出も公共支出と成果の結び付きに影響を与える ことがあり得る.教育向けの家計支出を考慮に入れると, 学習を改善するための支出 各国の総支出パターンは違ってくる.ネパールでは 政府の教育支出は対 GDP 比でみて,ベトナムよりも   国 と し て, あ る い は 世 界 全 体 と し て, 教 育 目 標 ずっと低い.しかし,官民合わせた教育支出ではネパー を 達 成 す る た め に は, 今 後 数 十 年 間 に 支 出 の 増 加 ルの方がずっと高い 10.家計としては,自らの支出 が 必 要 に な る こ と は 確 実 で あ ろ う.「教育委員会」 を削減することによって,公共教育への支出を増加さ (International Commission on Financing Global せるという反応を示すことも可能である.例えば,イ Education Opportunity)の 推 定 に よ る と, 低 中 所 ンドやザンビアにおける学校補助金の導入は学習に何 得国はほとんどの子供たちが最低限の学習を身に付 の効果もなかったが,それは保護者が政府資金供与の けて,初等・中等教育を修了できるようにするため 増加を期待して,みずからの財政支援を削減したため には――持続可能な開発目標の呼びかけ通り――, であった 11. –  2015  30 年に教育支出を 117%増額しなければなら  公的資源の使途に関する決定はしばしば学習と一貫性 ないだろう 15.そのようなグローバルなコストを信 のある整合性を欠いている.学習の改善方法に関する証 頼できる形で推定するのは困難である.というのは, 拠は増勢にあり,このことは公的資金をもっと有効に そうするためには各国の教育制度の多くの側面に関す 利用できる方法が存在することを示唆している.また, る正確な情報が必要であるが,それは往々にして入手 資金手当てがされている投入や介入策の組み合わせが 不可能であるからだ.さまざまな前提を置く必要もあ うまく協働するのを確保することも重要である.多く るが――例えば,最適なクラスの規模など――,それ の教育制度にとってこれが困難であることがわかって が妥当な国とそうでない国がある.このような困難に いる.例えば,より多くの教室を建設することは可能 もかかわらず,この種の作業は妥当な質の学校拡張に かもしれないが,それを活用する教員を採用するには 必要なコストに関して有益な情報を教えてくれる.そ 資金が不足している.教室に教員がいても,効果的に の情報が示唆するところによると,教育投資を増やさ 教えるのに必要な教材が欠如しているかもしれない. ずに何億人もの生徒に対して学校教育を広げることは 176 世界開発報告 2018 不可能であろう. 8.World Bank (2016a) に お け る figure 8 の  鍵は,そのような追加的な資源を学習を改善する形 Policy Note 5 を参照. で,特に貧しい子供たちのために使うところにある. 9. Sabarwal, Evans, and Marshak (2014). 原価計算は,支出を増加すれば事足りる,ということ 10. UIS (2016). を示唆していると時々誤解されることがある.しかし, 11. Das 他 (2013).保護者の金銭的負担を削減する 支出がより良い成果につながるとの保証はないため, なら有益であろうが,このことはこのような補助 「教育委員会」が強調しているように,適切に支出する 金の主要な目的ではなかった. ことも必要不可欠である.教育が,保健やインフラな 12. Mbiti, Muralidharan, and Schipper (2016). ど他の切迫した公共ニーズから転用された資源を使っ 13. Pradhan 他 (2014). てファイナンスされている,あるいは次世代が返済す 14. World Bank (2016a). べき債務を通じてファイナンスされている場合,支出 15. これには初等・中等教育の予測コストだけが含ま が万人のための学習改善に向けられていることが決定 れる.Education Commission (2016, table 3) 的に重要である.それをどのように達成するかが本報 を参照. 告書の焦点である. 16. Bruns and Schneider (2016).  より多くの支出はより良い支出の重要な第一歩にな 17. de Hoyos, Holland, and Troiano (2015). り得るが,重ねて言うと,支出の増加だけでは学習の 改善には十分ではない.教育改革の政治学は時に損失 参考文献 をこうむる利害関係者を補償する,ないし将来的な改 革の礎石を築くために支出を増やすことを必要とす Altinok, Nadir. 2010. “Do School Resources Increase School Quality?” Brussels Economic Review 51 (4): 435–58. る.例えば,ペルーでは教員の低給与に取り組むこと Asghar, Zahid, and Mudassar Zahra. 2012. “A Benefit が,学習成果の改善を下支えする改革(教員キャリア・ Incidence Analysis of Public Spending on Education in Pakistan Using PSLM Data.” Lahore Journal of Economics 17 アップとパフォーマンスを連動させるなど)を導入す (2): 111–36. るための重要な大前提であった 16.しかし,他の事 Bruns, Barbara, and Ben Ross Schneider. 2016. “Managing the Politics of Quality Reforms in Education: Policy Lessons 例では,この種の戦略はあまりうまく作用しなかった. from Global Experience.” Background Paper: The Learning アルゼンチンでは,質の低下を逆転させることを目指 Generation, International Commission on Financing Global Education Opportunity, New York. した 2006 年の教育ファイナンス法を受けて,教育支 Buracom, Ponlapat. 2016. “The Distributional Effects of Social –  出は対 GDP 比でみて,2005  13 年に 3.5%から 6% Spending in Thailand: Evidence from a New Database.” Asian Politics and Policy 8 (2): 263–79. へとほぼ倍増した.新しい財源は教員採用の増加・教 Das, Jishnu, Stefan Dercon, James Habyarimana, Pramila 員給与の引き上げ・学校インフラの改善に使われた. Krishnan, Karthik Muralidharan, and Venkatesh Sundar- araman. 2013. “School Inputs, Household Substitution, and しかし,このような投入の改善にもかかわらず,学習 Test Scores.” American Economic Journal: Applied Economics 5 (2): 29–57. 成果は最近わずかな改善をみせたにとどまり,依然と de Hoyos, Rafael E., Peter A. Holland, and Sara Troiano. 2015. して 2003 年水準を下回っている 17.このような経 “Understanding the Trends in Learning Outcomes in Argentina, 2000 to 2012.” Policy Research Working Paper 験が強調しているのは,支出増加を学習成果の改善に 7518, World Bank, Washington, DC. つなげるためには,支出 - 学習の連鎖における結び付 Education Commission. 2016. The Learning Generation: Investing in Education for a Changing World. New York: きを強化する必要があるということであろう. Inter­national Commission on Financing Global Education Opportunity. Filmer, Deon, Jeffrey S. Hammer, and Lant H. Pritchett. 2000. 注 “Weak Links in the Chain: A Diagnosis of Health Policy in Poor Countries.” World Bank Research Observer 15 (2): 199–224. 1. 第 9 章と Altinok (2010) を参照. Gillingham, Robert, David Newhouse, and Irene Yackovlev. 2. 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Washington, DC. datatopics.worldbank.org/education/. 179 不健全な政治が不整合性の原因 10 利害関係者の既得権益が教育制度を学習から逸らす時には,政治は制度内の不整合性を増幅する可能性がある.こうした ことは政策目標の設定から,改革の設計・実施・評価・継続までのさまざまな段階で起こり得る.多数の個別主体が学習 をコミットしている場合でさえ,制度は低学習の罠にはまったままでいることがあり得る.  教育制度は複雑である.教育制度の目標,ファイナ てコンセンサスがある場合でさえ,生徒は恩恵を享 ンス,そしてインセンティブを生徒の学習と整合的に –  受できないかもしれない.例えば , 1996  97 年に するのは,技術的な理由から困難である.しかし,制 ニューヨーク市の第 29 地区の教育長は 600 万ドル 度が生徒の学習を優先事項にしない政治的な理由もあ の契約を仕組んで,政治的なコネのある不動産開発 る.不整合性を直すことに向けた政治的な動きは,重 業者と提携しているコンピュータ関連会社に授与し 要な教育目的の達成を後押しすることができるが―― た.見返りに同社は教育長に高価な贈り物をする一 チリやイギリス,インドにおけるように(第 11 章参照) 生徒向けには古い, 方で, ないし動かないコンピュー ――,不健全な政治は事態を悪化させかねない.あま タを配布した.教員は数学の授業で生徒を助けるた りにもしばしば,教育の介入策――大規模な改革ある めのまともなコンピュータを当てにしていた.コン いは日々の実施手順のいずれであろうと――は窮地に ピュータは使われず,生徒たちは後れを取ることに 陥っている.というのは,有力な個人ないし集団は集 なった 2. 団的利益よりも私利に奉仕する形で他人を動かすこと • 2009 年にメキシコの連邦政府は競争的教員採用プ ができるからだ 1.有力な主体はしばしば制度の現状 ランを導入した.全応募者が教科内容・授業方法・ 維持から利益を享受していて,それを保持するための 倫理を範囲に含むテストを受けることを要請され 仕組みを,制度のパフォーマンスへの効果にかかわら た.テストの設計は技術的にむずかしかった.しか ずうまく利用しようとする.このようなメカニズムに し,技術的な挑戦は全国教育労働者組合(SNTE)の よって,教育の利害関係者は結果として低学習という 地方支部が提起した政治的障害と比べれば霞んで見 均衡にはまり込む. えた.SNTE には 140 万人の会員がいる.政策変 更は恩顧主導型の採用機会が減少することを意味し た.SNTE の強硬な反対を受けて改革は薄められ, 不健全な政治は教育制度における不整合性を 少数の空席だけに適用されることになった.推定値 悪化させ得る は,2010 年の採用の 85%は競争的ではなく裁量  多くの教育制度は政治的な障害やレント・シーキン 的なものであったことを示唆している.最近の証拠 グに遭遇しており,このことは学習の目標を達成する が示すところでは,裁量的方法を通じて採用された ための整合化を難しくしている.次のような事例を検 教員は生徒の学習向上という点で,競争的に採用さ 討してみよう. れた教員と比べて有効性が劣っていた 3. (http://www.vyapam.nic.in) • バイヤパム はインド • 生徒を教育するためにコンピュータを使うことは, のマディア・プラデシュ州の専門職試験委員会であ その教育プログラム設計に関するむずかしい技術的 る.医学課程への入学や,警察など州政府職員と な決定を必要とする.しかし,技術的な設計に関し しての就職のための大規模な試験を実施している. 180 世界開発報告 2018 図 10.1 矛盾する利害で注意は学習目的から逸れる 入 投 の へ 校 学 出所:WDR 2018 チーム. 10 万人以上の応募者がいるため,入学試験の設計 うことを気にする.官僚は能力主義による入学を支持 や順位付けは技術的に挑戦的である.しかし,政治 してはいるかもしれないものの,知人の子息が望まし 経済学的な要因も侵入してくる.最近,公平で透明 い学校に入学するのを確保してあげて,「感謝のしる な入学という目標を,レント・シーキングが阻害し し」を受け取っている.親は教員について苦情を言い たとされる事件が発生した.2013 年に独立的な調 たいが,子供が報復で苦しむことを危惧している. 査によって,数十億ドル規模に達するスキャンダル  既得権益は何も私利やレント・シーキングに限定さ が発覚した.上級の政治家や政府官吏が,賄賂を(多 れてはいない.教育制度の関係主体は,特に教育政策 くは仲介者に)支払えば,無資格の応募者が入学試 の結末が容易に明らかでない場合には,みずからの価 験において高順位が享受できるという仕組みを設置 値観やイデオロギーによって動かされていることが多 していたのである 4.2015 年にインドの最高裁判 い.その例としては,公立校ないし私立校にかかわる 所はこの事案を州政府から国の筆頭捜査機関である 公約,世俗教育か宗教教育か,テストの得点にかかわ (CBI) 中央捜査局 に移し,現在はそこで捜査が実施 る説明責任または教員資格の重要視などがあろう.加 されている. えて,特に多言語ないし多宗教の社会においては,教 育制度は支配的な民族グループによって,少数派を抑  教育制度には多くの,しばしば互いに矛盾する理解 圧しながらみずからの立場を推進するために利用され をもった大勢の利害関係者がかかわっている 5.この ることがある. ような制度は単に生徒・教員・校長に関するものでは  利害が複数あると学習の目標は危険にさらされる. ない.それには政治家・官僚・司法・民間プレイヤー 複数の利害の間でバランスをとるのがむずかしいため などもかかわっている.このような制度に関与してい である.教育の介入策が自己の利害――個人の金銭・ る参加者は制度の機能の仕方――構造や資金調達を含 イデオロギー・地位などに関連したもの――にとって む――に既得権を有している.教科書出版社は良質な 脅威になると,制度内の違う部分から抵抗が出てくる 製品を供給したいと思いつつ,利益も気にかけている. だろう.その最終的な効果は,制度は学習重視の姿勢 政治家は生徒の学習について教員の説明責任を問いた (図 10.1) から引き離されるということである . いとは思うが,教員が反対すれば選挙面でリスクを負  教育制度は政治的な干渉に弱い.というのは,それ 10 不健全な政治が不整合性の原因 181 は不透明であり,教員は政府被雇用者の大きな基盤を どあまり見立たないもの――有効性の高いプロセス指 構成しているからである.教育制度の不透明性は個別 向型の早期児童イニシアティブなど――ではなく,幼 の教育政策が学習にどう影響するかの不確実性と相 稚園の建設に投資してきている.バングラデシュでは まって,各種の改革が競合する格好の土壌となってい 最近まで,学校の教育水準引き上げよりも,大衆教育 る.教員――学習にとって最も重要な要素――という の必要性の旗印の下に,エリート層を結集する方が のは,伝統的には最も重要な草の根の政治的主体であ ずっと容易であった 8. る.というのは,地理的な広がりがあって,保護者と  ほとんどの品質向上を謳う教育政策に当てはまるよ 規則的な相互作用があるからだ.この 2 つの特性が うに,教職に脅威を与える,ないし仕事の内容を変更 教員をとりわけ魅力的な恩顧対象者にしている.第 1 するような政策目標を採用するのも困難である.例え に,教員になるコストは通常は低い.第 2 に,無能 ば,クラス規模を削減するという政治的に人気のある な恩顧対象者の学習への影響はただちに人目に付くわ 政策に取って代わる政策は,厳粛な教員パフォーマン けではないので,特に短期なことを考えているなら, ス評価の導入――ただし教員の改善を後押しするツー 政治家にとっては評判上の悪影響はほとんどない 6. ルの採用を伴う――であろう.しかし,そのような改  教職に就いている人の規模を考えると,教員組合は 革では実績の悪い教員が露呈することを考えると,そ 政治的に重要になり得る.組合の政治力はその指導層 のような改革案が政策アリーナに到達することは稀で が教員をどの程度有効に動員できるかに依存してお ある.教職を脅かす他の政策には学校の統廃合が含ま り,国によって,また国内でも地域によって著しく異 れる.そのような政策は実施が困難であった.という なる.多くの国々で,教員全員が組合員とは限らず, のは,地元の学校に対する保護者の支持を背景に,小 組合活動に従事しているわけでもない 7.組合活動が さい高コストの農村部の学校を閉鎖するのは政治的に 教育改革を支援するのか,それとも阻害するかは,結 困難だからだ 9.ブルガリアでは,学齢人口の減少に 局のところ,いくつかの要因に依存している(ボック もかかわらず,学校長が教員の退職に消極的であった. . ス 10.1) 数カ国では,強力な教員組合が教員の大規模解雇を阻 止してきている 10. 多数の主体と利害:政治サイクルの各ステップで 政策を設計する 制度を整合性から引き離す  政策の目標が生徒の学習改善にある時でさえ,その  個人的な利害がステップごとに改革に影響する.既 最終設計には強力な利害関係者が望んでいることがし 得権益層――教員・校長・官僚・政治家・保護者・生 ばしば反映されていて,それが目標の土台を崩すこと 徒・司法・市民社会組織・民間部門など――は,教育 があり得る.分権化政策は政策の応答性や説明責任を 政策サイクルの各ステップで影響力をもつ.広く言え 高めることを目指したものであるが,多くの場合,そ ば,このようなステップは次のような構成になってい れは達成するための権限ないし資源もなしに,結果に る:政策目標の設定,政策の設計,政策の実施,政策 かかわる説明責任を移譲している.インドネシア,パ の評価,政策改革の維持.整合性からの逸脱をもたら キスタン,そしてラテンアメリカの数カ国では,主要 す力は,紛争という環境下では増幅されるようである (少なくとも当初は) な分権化に向けた取り組みは, 資 (ボックス 10.2). 金調達に関して中央対地方,ないし権限に関して中央 対地方の適正なバランスを発見することに苦労してき 政策目標を設定する ている 11.中央当局は,しばしば政府の下位単位の  多くの場合,政策は学習改善にかかわる有効性で選 権限を制限することを試みる.というのは,地方政府 ばれているわけではない.多くの場合に,政策はむし は人々に近いため遠隔の政府の政治力にとっては脅威 ろ強力な活動家の既得権益によって導かれている.教 になるからだ.このことと同時に,地方政府はより大 員を採用するという政策は,政治家・教員・保護者の きな責任を引き受けたり,国の規範を採用したりする 間では人気があるようである.というのは,視覚的に ――例えば弱者層を包含する――ことには消極的かも 明らかであり,そして,即時に効果があらわれるから しれない. だ.同様に,大規模な学校建設プログラムは相当な支 持を引き付ける傾向にある.多様な範囲の国々(カン 政策を実施する ボジア,コロンビア,そしてモザンビーク)において,  政策当局はある政策を支持して署名する際にはほと 政策当局は親子間の相互作用を改善するプログラムな んど抵抗に遭遇しないかもしれないが,もしこの政策 182 世界開発報告 2018 ボックス 10.1 教員組合は学習にどのように影響するか?  教員組合は教員の権利を保護するためには重要な制度である の人数や個数はさまざまである.図 B10.1 は教員組合が国ごと が,生徒の学習にとっては重要だろうか? 定量的な文献では, に大きく異なっていることを示している.フィンランドやメキシコ 組合が高質な授業や学習を阻害した可能性のある状況が特定さ など一部の諸国には支配的な組合が 1 つあるのに対して,イン れている.給与引き上げのために戦う一方で現職教員を外部と ドや南アフリカなど他の諸国には複数の組合が存在している. の競争から保護することによって,組合は時として有効な教員集  教員組合には内部組織・安定性・政党所属などの点で制度的 団の形成を抑制させることがある a.インドに関する研究の発見 な違いもある.アメリカでは次のような議論がある.すなわち, によると,組合員数と生徒の成績との間にはマイナスの相関関 教員組合は教育改革に抵抗する.これは組合指導者は平均的な 係がある b.しかし,大規模な相関関係の背後には,教育改革 教員を代表しており,もし指導者がこのような改革を支持すれば に向けた努力にとって有益な組合行動に関する証拠が隠れてい 退陣に追い込まれるだろう c.他方,アルゼンチンやメキシコか る.そのようなものとして,ザンビア国家教育連合,ウガンダ教 (および改革に抵抗できる能力) らの証拠は,組合の行動 は党派 員組合,ボリビア農村部教員組合といったような組合による取り 性・組織の細分化・指導者になるための競争などに依存するこ 組みがある. とを示している d.要約すれば,組合行動の結末は改革案が組  組合が生徒の学習を常に助ける,ないし傷付けると言うことは 合の目標・定量的な強さ・戦略的提携などとどれだけ整合的で 不可能である.それは組合が活動している状況に加えて,特性 あるか次第である. や行動に左右される.すべての国に組合があるものの,組合員 図 B10.1 教員の組合組織率は国ごとに異なる 組合員が教員総数に占める比率(主要国,2012 –15 年) 100 80 60 % 40 20 0 メキシコ フィンランド パキスタン 南アフリカ ウガンダ ケニア 韓国 出所:Shrestha (2017).データは http://bit.do/WDR2018-Fig_B10-1-1. 注:棒は組合員が教員に占める比率を示す.メキシコについては,組合には相当数の退職者と非教職スタッフが 含まれているため比率が 100%を超えている. 出 所: 以 下 に 基 づ く WDR 2018 チ ー ム ―Carnoy (2007); Eberts and Stone (1987); Hoxby (1996); Kingdon and Teal (2010); Moe (2001, 2011); Murillo (1999, 2012); Shrestra (2017). a. Hoxby (1996). b. Kingdon and Teal (2010). c. Moe (2011). d. Murillo (1999). が強力な利害にとって脅威になれば,実施は妥協を余 対した.この組織の地方支部が自己の管轄下にある学 儀なくされるだろう.教員のパフォーマンス測定を企 校でこの政策を採択することを阻止した.同様の事態 図した政策は実施がとりわけ困難である.南アフリカ は 2012 年にメキシコでも発生している 13. では 2000 年に,教育省が「多角的学校評価に関する  意図が適切な改革であっても個人の法的な権利が脅 国家政策」を導入して,学校の実績をモニタリングし, かされるとなれば,そして,理解できることではある 学校のニーズを支援するための標準的な手続きを確立 が,そのような人々が法廷に是正を求めると,改革は した 12.この政策は協調と指導の関係を構築するこ 立ち往生するおそれがある.ペルーでは,組合は教員 とを前提に,支援することを意図したものであったが, 評価に関する新法に抵抗して,その合憲性に異議を唱 南アフリカ民主教職員連合という同国最大の労組が反 えた 14.それに引き続く法廷手続きによって,第 1 10 不健全な政治が不整合性の原因 183 ボックス 10.2 紛争影響国では政治が学習を脱線させることがある  紛争の影響を受けた地域は,教育制度の発展について重要な らだ.学校における授業の手段に関する決定だけでなく,国内 政治経済的制約に直面している.武力紛争は学校・生徒・教員 的な配慮も挑戦的な課題をもたらす.例えば,すべての子供た 「自分自身の」 が標的になっていると,直接的な意味で学習を阻害する.また, ちに 言語で教育を受ける権利を保証するアプロー 安全に関する問題が関心と資源を学校から遠ざける場合には, チは,1990 年代にボスニア・ヘルツェゴビナで起こったように, 長期的にも悪影響がある.「安全第一」のアプローチは往々にし 既得権益層によって特定コミュニティを隔離するために利用され て保安部門――強力な軍事・政治関係者に加えて海外の政治的 得る.政治経済学の挑戦課題は紛争地域を抱える健全な民主主 利害者――の既得権をしばしば覆い隠している.そのような保 義のなかでも発生することがある.インドのチャッティースガル 安部門は,開発を見劣りさせるようなアジェンダを抱いている. 州にある暴動に影響された地区では,教員の説明責任と生徒の  政治的に弱い,ないし脆弱な紛争影響国の政策は,国内外両 学習の改善を目指した改革の実施は困難であることが判明した. 方における力関係から影響を受ける.海外の援助機関は,暴力 鍵となる懸念は全体的な資金不足,支払い遅延,教員給与の中 的ないし不安定な状況下においては,援助の供与が困難なこと 断などであった.資金の削減を受けて,制度として恩顧ベース によってしばしば不利な立場に置かれる.この困難は通常は状 の教員採用に向かう公算がある.そうなると資格が劣る,ある 況固有の枠組みではなく,一般化された教育枠組みを強調する いは無資格の新任教員が訓練を受けているベテラン教員に取っ ことにつながる.というのは,武力抗争の期間中に各地の相違 て代わることとなる. を検証し,それに対処するという保安上の困難な課題があるか 出所 : 以下に基づく WDR 2018 チーム―Bensalah (2002); De Herdt, Titeca, and Wagemakers (2010); Mosselson, Wheaton, and Fical (2009); Novell 他 (2014); Rose and Greeley (2006); Shields and Rappleye (2008). 回目の評価実施は遅延を来した.法廷は最終的に法律 「教育に関する子供の権利法」 念碑的な (2009 年法律 の合憲性を支持したものの,組合側は政治的な理由か 第 35 号)には,当初は教員の有効性や生徒の学習に ら重大な譲歩を獲得した:すなわち,新法の適用は新 関しては何の指標も盛り込まれていなかった(それ以 規に採用される教員だけに限定されることとなった. 降のルールや修正は質の側面を盛り込もうとしていた 同様に,2002 年にインドのアンドラ・プラデシュ州 が).同様に,高等教育における認可制度では,学生 の教員は,提訴することによって,教員の転勤に関す が学んだことや就職したか否かではなく,投入――教 る政策の実施を遅らせたことがある 15. 室の数・機材の量・教員数対学生数など――に焦点が  親たちも学習に焦点を当てた政策の実施をむずかし 当てられる傾向にある 17.そのようなアプローチで くすることがあり得る.共通する事例としては,保護 は責任は限定されるが,学習目標の実現は危ぶまれる. 者が試験でカンニングしようとしているわが子の手助  データは操作され得る.指標が有意義な変数を追跡 けをするというものであり,このことは,生徒の学習 している場合でさえ,データの質は傷付けられている を評価するのを困難にしている.2015 年に世界のメ 公算がある.結果に関するデータは計略的なものにな ディアはインドのビハール州の家族が,建物のなかで り得る.だれがデータをどれくらいの頻度で収集する 受験するわが子にカンニング・ペーパーを手渡す映像 かに関する決定は,主観的な基準を使ってなされるの を配信した 16.おそらく,保護者は子供たちが学校 が普通である.操作は,受験者が代理人を雇う,保護 であまり学んでおらず,もっと用意周到ないし裕福な 者がカンニングを手助けする,教員が生徒の試験の点 他の子供たちとの競争では歯が立たない,ということ 数を誤報する,政府官吏が教員に試験の点数を修正す がわかっていたのであろう. るよう勧奨する,などといった多種多様な形で起こり 得る 18.数カ国における事例では,就学率と家計調 政策を評価する 査の比較において,前者が時に改善を誇張しているこ  政策の有効性に関する指標は,有力なグループの責 とを示す系統的な差異が発見された 19. 任を問わない形で選定されることが多い.政策が失敗  有効なモニタリングや評価にとってのもっと微妙な した時,前線にいる官僚や学校長は,その失敗が自分 障害としては,政府が山のようなデータを収集してお たちでコントロールできるものか否かにかかわらず悪 きながら,それが意思決定の円滑化に資する形式では 影響に直面する.その結果として,何を測定・追跡す ないということがある.一部の諸国では,指標に関す るかに関する決定は,教育制度が評価しているもので るデータを収集するという多大な努力が,政策当局が はなく,だれが何の説明責任を喜んで引き受けるかと 学校の質を改善するためにデータ主導型の意思決定に いうことを反映したものとなる.例えば,インドの記 積極的に従事している,との幻想を作り出している. 184 世界開発報告 2018 しかし,データ入力が完了する時までには,次のデー は恐るべきことであると保護者は考えているのかもし タ収集作業が始まる,真剣な分析が行われていない, れない.それとは対照的に,改革で損失をこうむる人 学校に対してフィードバックもない,あるいはデータ たちはその損失についてより多くを把握している傾向 はあまりにも一般的にすぎて有益ではない 20.この にあり,多くの場合,集団行動に向けてうまく組織化 ような事例では意思決定においてデータの価値が低め されている 25. られている.  第 2 に,より一般的に,なぜこのような低学習の 均衡が執拗に持続するのか? 学習を危険にさらして 政策改革を継続する いる教員・官僚・政治家・判事・実業家などについて,  困難な改革が実施された時でも,それは元に戻され 生徒の学習に大きな説明責任を負っていると感じ,教 得る.特定のグループをなだめるために,政策作成者 育制度を強化するために行動しようとする人が何人か が一定の要素を緩和するという状況を伴いながら,逆 いる.にもかかわらず,個人主体はこのような罠を免 転は徐々に進展し得る.1990 年代後半,インドのマ れるのは困難であると思っている.なぜか? 「教育 ディヤ・プラデシュ州政府は新たに創出された 従事者」というグループから教員を採用し始めた.そ 低説明責任と低学習の均衡に陥っている の制度の下で,すべての新人教員は地元で採用され て,10 カ月の契約を受諾させられた.これに反応して,  ゲームの正式なルール――つまり,教育制度にかか 教員候補者は次のように主張して提訴した:この政策 わる法律や政策――は,すでに力の不均衡を反映して は憲法上の権利を侵害している.というのは,憲法が いる 26.具体的な政策目標が選定された時や,特定 強調しているところによると,いかなる市民も出生地 の課題に財源が配分された時,教員組合が譲歩を求め などの基準に基づいて公職に就く資格がないと裁定さ て交渉している時,既存の力の不均衡や闘争が政策を れてはならない.訴訟や圧力を受けて,政府は政策 通じて表明される. を修正し,地元採用や資格に関して譲歩を行った 21.  しかしそのような決断は,どの正式なルールを選定 同様に,ブラジルのサンパウロ市では,2009 年に導 ないし順守するか,を決定する非公式な契約をも暴露 入された教員経歴追跡の改革は,新しい教育大臣の下 する.不文律は社会的環境下における価値観・期待・ で 2011 年までに徐々に元に戻された 22. 文化的規範から派生しており,そのような環境下にお  逆転は突然に起こることもある.ガーナでは,高水 ける政策の範囲・性格・強さを決定するのに重要であ 準の支援を得て,早期児童介助開発機構が大統領府の る 27.インドネシアでは,年配の同僚は非常に丁重 傘下に創設された.しかし,政権交代によって,同機 に遇され,学校の統合は失職する学校長が退職する 構はジェンダー・児童・社会的保護を担当する大臣の まで,非公式に遅らされることがしばしばである 28. 下に置かれ,早期児童問題に付与されていた優先度と インドのラージャスターン州農村部では,現地調査に 可視性が引き下げられた 23.ベネズエラでは,強力 よって,多くの場合に,教員は転勤など必要なサービ な高等教育制度を創設してきていた数十年に及ぶ改革 スを受けるためには賄賂を払わなければならないこと は,新しい人民主義政府が高等教育の普遍化という目 興味深いことに, がわかった. 規範はジェンダーによっ 標を設定した時に元に戻された.その取り組みは,準 て異なる:男性教員は直接支払うが,女性教員は典型 備のできた学生・十分な教授陣・適切なインフラ,が 的には男性親族を経由する 29. 伴っていなかったため,同国の教育制度を弱体化する  非公式ネットワークの広範囲にわたるオペレーショ こととなった 24. ンは,システム内における一般的な信頼の欠如を露呈  このような事例は 2 つの重要な問題を提起してい している.個人の間の不文律が繁栄するのは,相互に る.第 1 に,保護者や生徒は,質を改善する改革を 十分な信頼がある場合だけである.各人は先方が期待 窮地に陥れる既得権益に影響を与えるという点で,な 通り行動するだろうと信頼しなければならない.にも ぜそれほど限定的な発言権しかもっていないのか?  かかわらず,個人が個人的な信頼ベースの関係を深め 改革で最も利益を享受しそうな人たち――特に保護者 るにしたがって――そのプロセスでしばしば学習ない と生徒――は往々にしてほとんど組織化されていな し公平性の目標の土台を崩しながら――,制度内の全 い.加えて,どのような政策提案であろうと即時的な 体的な信頼は傷付く 30. 利益は不確実な傾向にあり,改革に向けた支持を動員  教育制度が複雑になり,利害関係者と相互作用の数 するのはより困難である.教員ないし政治家に反対す が増加するのに伴って,不確実性が著増する.他人を ることに伴う潜在的な波及効果は,子供たちにとって 信頼することはますますむずかしくなる.相互義務を 10 不健全な政治が不整合性の原因 185 作ることは不確実性の管理に役立つ 31.このような 図 10.2 教員と政治家の間の関係は相互依存性が特徴 義務は詳述する必要はない.社会環境がそのような義 選挙で支持するとの約束 務が理解されることを保証している.インドネシアの スハルト時代に,教員は国家に対する「一元的忠誠」を 表明し,国家イデオロギーである「パンチャシラ」に関 仕事ないし望ましい転勤 教員 政治家 する必修コースを教えることが義務化されていた 32. 仮に従わなければ,降格ないし望ましくない地域の学 出所:Béteille (2009) に基づく WDR 2018 チーム. 校への転勤の恐れがあることをだれもが知っていた. メキシコの SNTE(全国教育者労働組合)が支配的な は変化があったように見える選択を行う――例えば, 地域では,もし SNTE を支持しなければ,不利な転 政治家は教員の無断欠勤には取り組まないのに学校の 勤ないし授業からの排除を受けるリスクがあることを 空席の管理は行う,あるいは判事は事件の尋問を無際 教員は理解していた. 限に遅らせる.あるいは,保護者は休眠状態の教務委  相互義務は説明責任を複雑にする.団体や集団の間 員会に居座っている.このような関係者はリスクをと の力関係は状況次第である.ある状況では,ある集団 ること,または革新を嫌うであろう.このような行動 は他の集団への依存度が高く,したがって力が強くな は非道理的な形態の情報管理と共存している.違法な い.しかし,別の状況下では,依存のパターンは逆転 行動に間違って巻き込まれることを恐れて,官吏は山 し得る.2007 年にラージャスターン州の教員たちが のような紙やファイル,データを作り出して,適切な 選挙をボイコットすると与党を脅迫した際,力を振 情報を提供する代わりに,制度を麻痺させることがあ るったのは教員たちであった.与党は選挙戦での勝利 る 36.教育制度の不透明性・粘着性・低能力は,実 について彼らに依存していた.しかし,同時に別の状 績を誇張し,パフォーマンス問題を隠蔽するのを容易 況下では,与党は恩顧ベースの指名や転勤を通じて, にしている. 個々の教員を支配していた(図 10.2).このような対  責任を放棄し非難を回避していると,教育制度の機 立関係は同時に発生したため,だれがより依存的で, 能する能力が蝕まれ,したがって,低説明責任と低学 だれがだれに説明責任を負うのかは曖昧になった 33. 官僚, 習の均衡が永続化する.現状と協調しない教員, このような相互依存関係が教育制度の多種多様な関係 判事,あるいは政治家は,みずからを専門家としての 者間の関係――保護者と教員,あるいは官僚と仲介者 相当なリスクにさらす公算が大きい.教育制度は慣習 の相互作用など――を支配している. に従う以外の選択肢を彼らにほとんど残していない.  相互依存性は強圧的で根深いものになり得る.そう 問題は特定の個人に限定されているわけではなく,教 なるのは主体が非公式な契約から脱却できない場合で 育制度における関係者の多種多様な利害と基礎をなす ある.インドのアディア・プラデシュ州の専門試験 インセンティブから発生してきている.説明責任が必 (バイアパム)事件では,数人の官僚がキャリアに悪い 要としていたのは,確実に生徒の学習を二義的なもの 影響が及ぶことを懸念して詐欺に加わったといわれて にすることであった. いる.そのため通常では考えられないほどの大事件に なった.他の人々も関与した:仲介者は噂によれば, * * * 多様なプレイヤー相互間にできていたコネを活用して 利益をあげた.小規模なオペレーションとして始まっ  これは不健全な政治の物語である 37.健全な政治 たことが,人々がもし現状を疑問視すれば損すると考 ならば,改革に向かう弾みを作り出し,第 11 章でみ えるようになるのに伴って,制度化されるところと るように,教育成果に向けた結果を実現することがで なった(ただし非公式に)34.同様に,ニューヨーク きるだろう. 市では成文化されていない教育委員会委員の力が,教 育長や学校長に定期的に浪費的慣行をさせている 35. 注 このパターンは事例・国・時期を超えて繰り返されて いる. 1. World Bank (2017).  関係者は不健全な相互依存の罠にはまると,不当な 2. Segal (2005). 非難や罰則からみずからを保護するために,制度の仕 3. Bruns and Luque (2015); Estrada (2016). 組みをうまく利用する.そして,リスク負担を回避し 4. Hindustan Times (2015); Sethi (2015). ている.非協力的な行動に対する影響を恐れて,主体 5. Grindle (2004); Moe and Wiborg (2017). 186 世界開発報告 2018 6. Bruns and Schneider (2017). Bensalah, Kacem, ed. 2002. “Guidelines for Education in Situations of Emergency and Crisis: EFA Strategic 7. Moe and Wiborg (2017); Murillo (1999). Planning.” Division of Policies and Strategies of Education, 8. Hossain 他 (2017). United Nations Educational, Scientific, and Cultural Organization, Paris. 9. Forgy (2009). Béteille, Tara. 2009. “Absenteeism, Transfers and Patronage: The 10. Fogy (2009); Pepinsky, Pierskalla, and Sacks Political Economy of Teacher Labor Markets in India.” PhD dissertation, Stanford Graduate School of Education, (2017). 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North, Douglass C. 1991. “Institutions.” Journal of Economic Perspectives 5 (1): 97–112. 189 低学習の罠から脱却する方法 11 教育制度に不整合性をもたらしている技術的・政治的な制約に対処するためには,次の 3 つの前線における行動が必要と される.それは,学習に関するより良い情報への投資,学習に向けた連合の動員,そして変化に向けたより反復的かつ適 応的なアプローチの採用である.  1995 年以降,イギリスでは優れた政治戦略と健 戦略では,生徒の成績に関する規則的かつ公に入手可 全な技術的解決法を使って,小学生の識字と数的思 能なデータに基づいて,国全体に加えて,個々の学校 考のスキルを大幅に改善してきている 1.その結果, ごとに明確な目標が設定された.この目標は地方の教 TIMSS 数学の評価において,中間水準に到達した 4 育当局・教員・学校長向けにインセンティブを付与し 年生の割合が 1995 年の 54%から 2015 年には 80% た.政府は新カリキュラムを反映させるために,学校 にまで急上昇した(図 11.1).同じような改善を示し 検査を調整し,また,教員パフォーマンスと給与の連 た国は他にはほとんどない 2.1997 年の国政選挙で 動を強化した.刷新された専門職開発プログラムは地 は情けない教育成果が重要な問題となって,新政府は 元の識字コンサルタントの支援を得て,教員が新戦略 1998 年に任期が始まった際に国家的な戦略を打ち出 を実施する助けになった.地方政府は実施のために多 して対応した 3. 額の新規資金を受領した.新戦略の一環として導入さ  改革の中心には教員の教え方の見直しがあった.新 「時間」 れた識字と数的思考の のおかげで,早期学習の 図 11.1 イギリスでは小学校の数的思考力が劇的に増加してきている 4 年生の TIMSS 数学の得点と中間水準に到達した生徒の割合 a. 4 年生の平均点 b. 中間水準を上回る / 下回る生徒の比率 540 50 40 520 30 点数 500 % 20 480 10 460 0 1995 2000 2005 2010 2015 1995 2000 2005 2010 2015 イギリス 中間水準を上回る 参加 OECD 諸国 中間水準を下回る 全参加国 出所:TIMSS, 1995-2015 からのデータ (https://timssandpirls.bc.edu/)に基づく WDR 2018 チーム.データは http://bit.do/WDR2018-Fig_11-1. 注:中間水準の生徒は基本的な数学の知識を単純な状況に適用し,整数の理解や分数にかかわる若干の理解を 示し,2 次元表示から 3 次元形状を視覚化し,棒グラフ・絵グラフ・表を解釈して単純な問題を解くことができる. 190 世界開発報告 2018 ボックス 11.1 ブラジルでは情報を使ってインセンティブを学習と整合的にしている  2000 – 12 年にブラジルの学習成果は PISA でみて着実な改善 地方行政官の説明責任を問うために用いられた. を示したが,その改善が成績の悪い生徒に集中している科目も  情報の改善はパフォーマンスの改善に対する政治家のインセ なかにはあった.このような進展の背後には改革があった.す ンティブも引き上げた.指数に関する世論の意識は高く,IDEB なわち,制度のパフォーマンスにかかわる説明責任が強化され, の点数の年 2 回の発表はメディアで広く取り上げられ,活発な ファイナンスにかかわる地域間の不平等が削減され,最貧世帯 議論が沸き起こっている.これを受けて,教育の質は政治的な 向けには現金給付が実施された.このような改革を下支えした アジェンダとして上位に置かれただけでなく,市民が議員を選 のは情報の改善であった. 挙する際の重要な要素にもなっている.  情報の改善を受けて,学習に関して教育担当諸機関の説明責  重要なのは,政府も追加的な支援の対象となる学校を定める 任を問うことが容易になった.1995 年に導入された国レベルの のにこの指標を用い,教育制度関係者のやる気を高めるプログ 学習評価は,10 年後には 4 年生と 8 年生の全員に拡大された. ラムを導入していることである.例えば,学校は IDEB 得点の年 中央政府は評価結果と生徒の進級率を組み合わせて,基礎教育 次改善に基づいてボーナスを受領しており,証拠が示唆するとこ (基礎教育開発指数 IDEB) の質に関する指数 をすべての学校・ ろでは,この措置は学習向上に寄与している模様である. 都市・州・地域について作成した.この指数に基づく目標が, 親だけでなく,すべてのレベルの制度運営者によって,学校や 出所:以下に基づく WDR 2018 チーム―Bruns, Evans, and Luque (2011); Ferraz and Bruns (2012); OECD (2016); Toral (2016). 成果が大幅に改善した 4.このプログラムは進化を続 る.対象を絞ったプログラムないし直接的な票の買収 けており,今は貧しい状態にある学習者向けの支援に が時として政治的な支持と交換されており,結果と 重点が置かれている. して貧弱なサービス提供に陥っている 5.良質な情報  学習を改善する改革というのは優れた戦略――政治 は,結果をもたらす政治家を選ぶよう有権者を促す と技術の両面で――次第である.本章では,多種多様 だろう 6.例えば,ブラジルの連邦政府は生徒の合格 な経験から教訓を学んで,改革の機会がどのように出 率とテストの得点を組み合わせた指標を使って,幅広 現してくるかや,政治家・官僚・親・生徒がどうした く精査されている信頼できる教育目標を設定している らそれをつかむことができるかを見出したい.制度に (ボックス 11.1).このような目標を達成すると,現 かかわる政治的・技術的な挑戦課題に取り組むために, 職の政治家は再選の可能性が,官僚なら職を維持でき 次の 3 つの参入点に焦点を絞る.情報の改善,連合 る公算が高まる 7.この事例は政治的な管轄区に対応 の構築とインセンティブの強化,そして革新と機敏性 する地域の学習情報を提供することの価値を強調して の奨励である.ほとんどの国はこの 3 つすべてを必 もいる.区域が重複しているおかげで,市民は教育目 要としている. 標にかかわる進捗度に関して政治家に説明責任を持た せることができる.しかし,情報が学習をよりいっそ う重視するようにインセンティブを変えられるか否か 情報の改善 は,もっと幅広い状況に依存するだろう.例えば,恩  学習に関する正確で利用可能な情報が欠如している 顧主義が政治制度全般にわたって根深い諸国では,単 場合には,教育制度の弱点に取り組むのは困難である. に 1 つの部門におけるより良い情報が恩顧のネット それがなければ利害関係者は,政治家や官僚に説明責 ワークを崩壊させる公算はないであろう. 任を持たせる,制度のパフォーマンスを評価する,な いしは学習を改善するために有効な政策を設計するこ 情報は学校におけるインセンティブも改善できる とはできない.それ自体では十分ではないかもしれな  学校のパフォーマンスに関する情報は地方教育制度 いが,学習に関するより良い情報はより良い政治的な の機能を改善することができる . 多くの途上国では, 戦略のために必要な内実や,有効な政策に必要な証拠 親たちは地元の学校の質に関しては限定的な情報しか ベースを提供することができる. もっていない.パキスタンでは,保護者に学習成果に 学校間の競争が増した. 関する情報を提供したところ, 情報は学習を改善するための政治的なインセンティブを増 その結果,公立と私立の両方の学校で学習成果が改善 やすことができる し,私立校の授業料が引き下げられた 8.保護者は情  学習に関する情報の欠如は,良い公共サービスの提 報を使って,学校に水準を引き上げるよう圧力をかけ 供に対する政治的なインセンティブを弱めることがあ ることもできる 9.例えば,通信簿の提供が説明責任 11 低学習の罠から脱却する方法 191 の強化につながった国もあった 10.この種の介入策 わらず 1997 年以降もちこたえてきている.プログラ は,教育制度内にいる主体間の力関係がひどく不平等 ムがどうやって子供たちの生活を改善してきているか ではなく,恩顧主義を支持するほど組織化されていな に関して確固たる証拠を提供してきているため,新政 い場合に最も最適に機能する.また,前線のサービス 権が 2000 年に選出されてからも,インパクト評価が 提供者にコミュニティの要求に応える自律性がある場 プログラム継続を決定するための鍵となった 16. 合にも最適に機能する 11.保護者の発言が傾聴され るのをこのような要素が妨げている場合には,特に中 しかし,多くの情報や知識のシステムはこのような目的に 流階級の保護者を中心に公立教育制度からの脱出が促 役立っていない されるだろう.このことは,制度全体にわたって学習  学習を改善するのに必要な情報は多くの諸国で欠如 を改善せよという政府に対する圧力を弱めることにな している.持続可能な開発目標(SDG)に向けた進捗 る 12. をモニターする能力にかかわる評価によって,121 カ  情報は資源が意図したところに届くのを確保する助 国中の 3 分の 1 では小学校修了時点における学習成 けにもなる.1990 年代半ば,ウガンダの学校は 1 人 果に関するデータが欠如していることが明らかになっ 当たりの補助金配分予定額の約 4 分の 1 しか受領しな た.前期中等学校修了時点での学習に関する情報に関 かった.政府は各地区に対してなされる移転の時期と しては,半数の国で不十分であった 17.このような 金額に関する情報を公表し始めた.これは人頭学校補 学習成果を長期にわたって追跡できるデータをもって 助金に相当するもので,学校は地方行政府をモニター いる国となるとさらに少ない.教育部門の情報システ することができるようになった.この措置は,地区当 ムはしばしば貧弱で,意思決定・計画・実施のために 局による横取りを削減することによって,学校に届く 利用されることは稀である. 補助金の割合を増大させた.次節で説明するフィード  学習改善のために情報を活用することに関しては多 バック・ループと整合する形で,新聞へのアクセスが くの障壁がある.タンザニアでは,市民主導の学習評 より良い地区の学校が最大の恩恵を享受した 13. 価に基づいて広く公表されている結果が,教育に関す る大衆の認識に影響し,政府の重視点を学習に向けて 良い情報は制度のモニタリング・評価・手引きとしても極 (ボックス 11.2) シフトさせた .にもかかわらず,多 めて重要である くの場合に,証拠と政策立案の間の直接的な結び付き  制度の管理者は制度のパフォーマンスをモニター・ は見当たらない 18.意思決定に役立つもののなかに 分析するのに情報を必要としている.学校監督官とし は評価に時間がかかりすぎるものもあれば,制度の ては,成績の悪い学校を特定して対処するためには, パフォーマンスを低下させる重要な要因になってい 生徒の学習成果に関する情報が必要である.学習改善 るものの追跡に失敗しているものもある.利用可能 を目指したプログラムや政策に関する優れた研究や評 な情報が存在する場合でさえ,政府機関にはそれを 価は,フィードバック・ループを機能させることによっ うまく使うインセンティブないし能力がないかもし て,より良い実施を支援することができる.2000 年 れない 19.相互依存性も重要である.信頼できる目 代初め,カンボジアの奨学金プログラムは貧しい層に 立つ情報は,より良いパフォーマンスに向けたインセ 属する生徒向けに,学習成果の改善を追求した.プロ ンティブを付与することができる.しかし,偏ったメ グラムの早期評価の発見では,達成度が改善し,就学 ディアが,より良い公共サービスを犠牲にして,特定 にかかわるジェンダー格差が縮小したものの,プログ グループの利害を保護するかもしれない.アルゼンチ ラムは最貧の子供たちには届かず,学習の改善にも失 –  ンでは 1998  2007 年に,政府資金を受領した新聞 敗した 14.2006 年になると,このような発見の結果 が発表した汚職報道は,受領しなかった新聞と比べて を受けて,政府は貧しい子供たちの絞り込みを改善し 少なくなった 20. た.それから奨学金を活用して学習を奨励する実験を  学習を促進する情報システムの特性はどのようなも 行った.生徒の選抜に能力ベースの基準を導入したお (表 11.1) のであろうか ? 第 1 に,情報は信頼でき, かげで,就学が増え,学習が改善し,数学試験の得点 政治的に目立ち,公に入手可能である必要がある.第 が標準偏差の約 0.17 倍分だけ上昇した 15. 2 に,学習に関する進歩に向けた明確な目標は,制度   研 究 や 評 価 も 政 治 的 サ イ ク ル を 超 え て, 有 効 な のパフォーマンスに関する指標を提供することによっ プログラムに対する支持を構築することができ インセンティブを強化することができる.第 3 に, て, る.メキシコの条件付き現金給付プログラムである 学習に関する有意義な情報は,政治的ないし意思決定 Oportunidades は,政治的・経済的な変化にもかか の力と整合性がとられていなければならない.そうで 192 世界開発報告 2018 ボックス 11.2 南アジアやサハラ以南アフリカでは市民主導の評価が学習危機の認識を高めている  市民主導の学習評価は基礎的な読解力と数的思考力に関し • この新たな取り組みによって結果の広報と,学習危機の認識 て,現地で設計された測定である.このような評価は,典型的 向上が成功裡に実施された.また,これらは,政府の計画に には市民社会組織のネットワークによって実施され,子供たちが 関する書類において学習に対する重視度を増加させた. 就学しているか,それとも退学しているかをテストする――これ (Pratham:教育の質改 • インドでは,一部の州政府とプラタム は伝統的なテストではなし得ないことである.学習成果に関す 善を追求している NGO)のパートナーシップが,教育状況年 る意識を高め,利害関係者に学習改善のための措置をとるよう (ASER) 次報告書 の評価で指摘された問題に取り組むべく,介 奨励することが目標である.市民主導の評価が実施されている 入策を策定してきている.さらに,インド政府は今では全国 のは主に南アジアとサハラ以南アフリカである.例えば,「大衆 (3 年ごとではなく 学力調査を毎年 )実施して,学習をより頻繁 (CAMPE) 教育キャンペーン」 ――バングラデシュにおける 1,000 に追跡している. (NGO) 以上の非政府組織 ・研究者・教育者のネットワーク―― は,この種の評価を 1999 年に開始している.  評価結果が行動につながった事例もなかにはあったものの,  このような新構想の評価は下記のように結論付けている: 学習改善へのつながりは自動的なものではない.インドの ASER やタンザニアの Uwezoa が運営されてきている短期間にわたり, • 世論の発見では,このような評価の方が大規模でより複雑な それらの評価結果は学習の向上という明確な総合的パターンは 国の評価よりも目立っている.というのは,市民主導の評価 まったく示していない.ただし,2010 – 16 年にインドでは著し はもっと狭い一連の基礎的な能力――文字や数字の認識とい い改善を示した州がいくつかあった. うレベルから始めている――に焦点を絞っているからだ. 出所:以下に基づく WDR 2018 チーム―Chowdhury, Chowdhury, and Nath (1999); Rath 他 (2015); R4D (2015). a. Uwezo はスワヒリ語で「能力」を意味する. あれば,大衆は教育の意思決定者に説明責任を持たせ ジェンダ設定に積極的に関与していない,あるいは他 ることができる.最後に,情報は政策当局・管理者・ 人と交わらない集団からの支持動員を必要とすること その他の制度関係者によって利用可能でなければなら がしばしばである.第 2 に,官僚や他の制度関係者 ない.すなわち,タイムリーで,正確で,政策に関連 のインセンティブは学習ともっと密接に適合している していなければならず,政治的なサイクルにも敏感で (表 11.2) 必要がある . ある必要があろう. 学習を改善するために支持を動員し連合を構築する  教育制度関係者は,集団的に行動する際には改革実 連合を構築しインセンティブを強化する 現について大きな可能性を有する.政策を学習に向け  教育制度は大勢の主体で構成されており,このよう てシフトさせるのに,大きな力を有する関係者がなか な主体は,常に学習と整合するとは限らない利害を追 にはいる.その一因は組織化されている点にある 21. 求している.このことに取り組むためには 2 つの面 例えば,多くの諸国で教員組合は改革に関する討論で で行動する必要がある.第 1 に,学習改善にかかわ 強力な発言権を有している.一方,保護者や生徒の集 る説明責任を強化する行動を巡るコンセンサスを形成 団的な発言は往々にして届いていない. するには,利益集団の連合が必要である.これは,ア  教育制度全体にわたる関係者の支持を動員した連合 表 11.1 情報を最大限に活用するための原則と関係者が果たせる役割 情報を最大限に利用するための原則 さまざまな主体が果たせる役割 • 学習に関して規則的で信頼でき,政治的に目立ち,公に入手可 • 政府機関:国としての評価結果を作成・広報する;内部評価を 能な情報を提供する. 実施する;外部研究機関における教育の研究や評価を支援する. • 学習に関して明確な目標ないし期待を設定して,パフォーマンス • 市民社会・民間部門:市民主導の学習評価を作成・広報する; を判断するための基準があるようにする. 学習を改善する介入策を支援するために評価や研究を活用す • 行動を起こす権限を有する政治的・行政的な管轄区に情報を適 る. 合させる. • 政治的サイクルに応答的な情報システムを構築して意思決定を 円滑化する. 出所:WDR 2018 チーム. 11 低学習の罠から脱却する方法 193 表 11.2 有効な連合を構築するための原則と関係者が果たせる役割 有効な連合を構築するための原則 さまざまな関係者が果たせる役割 • 低学習という問題にかかわる明瞭な説明を通じて改革に向けた • 政府機関:改革を議論し,技術的・政治的に実行可能な解決策 支持を動員する. を発見するために開かれた包容的なスペースを開発する;適切 • 学習のために支持を動員し長期的な連合を構築すべく政治的な な制度的能力を構築する. 戦略を築く. • 市民社会・企業団体:より良い教育制度を唱道する;成果を改 善するためにあらゆるレベルでコミュニティや保護者の行動を支 • 交渉や報酬を支持するなかで直接的な対決はできるだけ回避する. 持する. • 学校とコミュニティの間での強力なパートナーシップを奨励する. • 教員・組合:制度の改善を唱道する;改革に関する討論に参加 • 教育サービスに対して責任を有する団体の能力を強化する. するためにシステムの知識を活用する. 出所:WDR 2018 チーム. の構築は,学習改善に寄与してきている.多くの諸国 –  時点で実験室に 6  9 週間にわたり一堂に会し,優先 は,広範な協議を通じて,提案されている政策変革に パフォーマンス指標に関して合意し, 事項を議論して, 対する支援を構築してきている.その協議において 実施計画を作成する.実施期間中,利害関係者がミ は,重要な利益集団の意見を集約することに努めてい ニ実験室に集合して計画を調整する.マレーシアで 3 る 22.ペルーの 「教育のための企業協会」は情報キャ 年生の識字率が 2009 年の 89%から 12 年の 100% ンペーンを組織化し,このキャンペーンは 2006 年に 近くにまで上昇したのは,このプロセスの下で導入さ 始まった改革を支持する方向に世論をシフトさせるの れたプログラムの功績であるとされている.このアプ に役立った.政府の改革派は教育制度の低調な学習成 ローチは,インドや南アフリカ,タンザニアを含む他 果に関する情報を利用して,教員の説明責任を強化す の国にも移行されている . (ボックス 11.4) る努力に対する大衆の支持を動員し,それが学習の持  学習のための連合を構築する努力がなければ,改革 続的な改善につながった 23.教育の利害関係者間で がもちこたえられる可能性は低くなるだろう.改革の 形成された連帯のなかには,法的制度を通じて教育の おかげで学習が改善しつつあることを示す証拠があっ 権利を実現したところもある(ボックス 11.3). ても,誤解されたり,制度関係者の間で人気がなかっ  動員に向けた努力は利害間のバランスを再調整する たりすれば,その持続可能性はリスクにさらされるだ には有効かもしれないが,改革反対派の利害を変える ろう.ポーランドでは,より広範な分権化された改革 ことはそれほどうまくはいかないかもしれない.教育 の一環として,教育制度の構造に大規模な変更が導入 改革は長いプロセスであり,うまく組織化された反対 された.生徒の学習成果が著しく改善したのは,この によって特に実施段階においては脱線させられること ような改革の功績であるとされてきている 26.当初, があり得る.ペルーでは,政府は改革の承認について 支援的な連合を構築する努力はいい加減で,学習が増 は大衆の支持を動員することに成功したものの,教員 加したにもかかわらず,改革は不人気なままであった. の支持取り込みにはあまり成功せず,実施段階におい 2015 年における新政府の選出は,当初の改革案の重 て教員組合の抵抗が継続した.改革の一般的な方向は 要な要素を排除するか否かについての白熱した議論に 不変にとどまり学習も改善したが,この経験は,改革 つながった 27.連合を構築するためには,より優れ の政綱の管理と実施を適切に行うことの間には潜在的 た情報伝達戦略が必要であろう.あるいは改革デザイ なトレードオフがあることを強調している.改革派が ンを,技術的には次善のものではあるが,実施や利害 反対派の管理に努力を払わなければならない時には, 関係者に売り込むのが容易なものへ変更することが必 その努力は改革の適切な実施から関心を逸らしかねな 要かもしれない. い.重要なグループを取り込まないと,彼らが政策設  改革に対しては漸進的で協議しながらのアプローチ 計や実施に貢献することが阻害されて,改革の持続可 の方が,対決よりもうまく機能する公算があろう.制 能性が傷付くことになろう 24. 度主体の連合が共通の目標を巡って協働を形成すれ  利害関係者の幅広い基盤の連合を構築することが, ば,改革が成功する公算はもっと大きくなるだろう. 政治サイクルのすべての段階で重要になる.マレーシ チリにおける授業を改善するための改革の歴史は,漸 アは,教育を含む多くの部門において,包括的な改革 進的で協議しながらの改革がどのようにして,変化 の先頭に立つパフォーマンス実施部を創設した.この に向けて強固な連合を構築できるのかを例証してい 部署は利害関係者の連合を構築し,利害関係者が改革 る(ボックス 11.5).チリが民主主義に復帰して以来, の設計から実施に至るまでの全段階に関与する「実験 相次ぐ政府が教員の福祉を改善するために労働条件を 室」を活用した 25.利害関係者は典型的には改革開始 調整してきており,また,給与とキャリア開発をより 194 世界開発報告 2018 ボックス 11.3 変化を迫るのに法制度を使う  国の憲法の 80%以上が教育の権利を認めている状況下で, ・ 政策変更を迫るために法制度が使われている度合いは,法廷 法廷が教育の政策や慣行に関して,政府の説明責任を問うのに 制度の性格,法的動員に対する支援体制の存在,法廷が抱 ますます重要なアリーナになってきている. いているイデオロギーなどに大きく依存している.  近年,インドやインドネシアでは教育の権利にかかわる訴訟 ・ 教育の権利にかかわる訴訟を有効に活用できるか否かは次の が著増してきている.インドでは,このトレンドは 2009 年に制 ような条件次第である:そのような事案に偏見を有していな 「無償義務教育を受ける子供の権利法」 定された記念碑的な に牽 い判事の存在;市民の主張を後押しできる市民社会組織の存 引されている.事案には,教育への平等なアクセスを保証する 在;より広範な政治的な動員の可能性. ことを求める要求,最低サービス基準の成就,支出義務を完遂 ・ 政策指向型の訴訟は主に貧困層ないし不遇層の利害を後押し するという政府保証などが含まれている.このような事案の多く してきている.ただし,訴訟の多くには中流階級の一部分が は勝訴に至っている.インドの最高裁判所は私立学校に貧しい 重要な関与を示してきている.恩恵は教育へのアクセスの改 子供たち向けに割当枠を設定することに関して,一貫して支持 善という形で生じてきており,勝訴には往々にして中流階級向 する裁定を下してきている.ウッタラーカンド州の高等裁判所は, けの良質な教育の犠牲が伴っている. 州政府に対して,教員向けに最低資格基準を採用することを要 ・ 学習成果を改善するための戦略としての訴訟にはおのずと限 求した.また,インドネシアでは,政府に予算の 20%を教育向 界がある.往々にして,判決はそもそもの訴訟の標的であっ けに支出することを義務化した憲法の条項を執行させることに たのと同じ官吏によって執行される必要がある.判決が実施 保護者は成功を収めた. されても,それは学習の改善ではなくアクセスの確保に関す  このような事案はしばしば個人ないし小集団によって提訴さ ることが多い.特に学習成果に関する情報が稀少な場合,裁 れ,NGO の活動家や教員組合が技術的・財政的な支援を提供 判所には典型的には学習に関して必要な専門知識が欠如して するという形になってきている.インドとインドネシアにおけるこ いる. の種の訴訟のインパクトに関する評価では以下がわかっている: 出所:Rosser and Joshi (2017) に基づく WDR 2018 チーム. ボッ 「実験室」 クス 11.4  を使って学習のための連合を構築する  卒業試験結果の急速な悪化と,教育制度の悲惨なパフォー パッケージとして導入することが可能になった.例えば,政府は マンスに関して新たに入手可能になった情報が相まって,タン 改善幅が最大の学校を報奨する金銭的および非金銭的両方のイ ザニアの政策当局は 2013 年に,「教育で今こそ大きな成果を」 ンセンティブを付与するとともに,学校をランク付けするために という野心的なプログラムを打ち出した.BRN は (BRN) 「サー 公的試験の結果を用いた説明責任にかかわる措置も導入した. ビス提供」のアプローチを採用している.これは最初に 1990 年 BRN は低学年の識字力と数的思考力を測定するために,初めて 代初めにイギリスで導入され,2009 年にマレーシアで成功裡に 全国的な標本ベースの評価も導入した.情報キャンペーンのお 適用されたものである. かげで,BRN の目的に関しては,一般大衆の間に非常に高水準 「実験室」  このアプローチの中心は 6 週間に及ぶ である.そこ の認識をもたらすことに成功した. で優先的な改革分野を特定して,相互に合意された提供プラン  本プログラムの運用はまだ 4 年間しか経っていないものの, が開発された.実験室には制度の重要な関係者全員――政府 学習成果が改善し始めているとの兆候がすでにみられる.しか 官吏・学者・教員組合・開発パートナー・市民社会組織など― このプログラムは困難を伴わなかったわけではない. し, 例えば, ―が一堂に会した.これは最後まで確実にやり遂げるのに十分 最近のレビューは,教育を担当する政府諸機関相互間の調整が なレベルの人たちであった.実験室の参加者は共同で 9 つの重 むずかしいことが強調されている.しかし,ここ 2 – 3 年間,試 要なイニシアティブを起草し,段階的な実施計画を策定し,そ 験結果が緩やかに改善し,小学校の低学年生は読解力で改善を の各段階について責任を割り当てた. 示している.  実験室プロセスのおかげで,政治的に微妙な改革を複雑な 出所:以下に基づく WDR 2018 チーム―Sabarwal, Joshi, and Blackmon (2017); Todd and Attfield (2017); World Bank (2017b). 11 低学習の罠から脱却する方法 195 ボックス 11.5 チリの改革派は変化を漸進的に交渉した (2000 – 9 年)  2000 年代 初め,チリの教育制度は学習水準につ 図 B11.5.1 チリでは読解力の得点が改善している いて著しい持続的な改善を示した.PISA の読解力試験で熟達と PISA 読解力の得点 いうレベル以上の得点を達成した 15 歳児の割合が,2000 – 15 500 (図 B11.5.1) 年の間に 52%から 69%に上昇した .  改善の多くは 1996 年に実施に移された 「全国学校業績評価シ 480 (SNED) ステム」 プログラムのおかげであった.このプログラム 460 は学校レベルのパフォーマンス指標に基づいて,教員にボーナ 得点 スを支給することで開始された.2004 年には公立校の教員につ 440 いては義務的な業績評価に基づく,教員個人向けのインセンティ 420 ブが導入された.2000 年代末時点で,このようなインセンティ ブは平均的な教員給与の 15 – 25%を占めていた.グループ・ベー 400 スのプログラムの厳格な評価で明らかになったところでは,生 2000 2005 2010 2015 徒の学習が著しく改善したのはインセンティブのおかげである. OECD 平均 チリ  インセンティブの支給対象が徐々に学校から教員個人にシフト 出 所:PISA か ら の デ ー タ(www.oecd.org/pisa)に 基 づ く WDR したのは,業績給に対して教員組合が反対する可能性に対処す 2018 チーム.データは http://bit.do/WDR2018-Fig_B11-5-1. るための実際的な試みであった.全教員について義務的なプロ グラムを実施する前に,政府は自発的な個人的評価とインセン 資源を増やし,教員の給与を引き上げる一連の幅広い改革が盛 ティブ制度を導入し,それが教員評価について先例を作ることと り込まれたことが指摘できる.Full School Day と称されている なった.このような段階を経たことで,新制度に合わせて調整し, 改革パッケージのなかで,SNED は教員の専門性を示唆する柱 それに対する支持を得る時間をもつことができた.それが成功 となっている.改革の対象となる教員が増え,インセンティブ につながる鍵となった の金額も増えた.プログラム開始前に給与を引き上げたことも,  教員組合との信頼関係を早期に確立したことも,もう 1 つの 義務的な個人給与という奨励金に対する反対を和らげるのに役 重要な戦略であった.1991 年に制定された教員法によって,教 立った公算があろう. 員には公務員の地位と,それに関連した給与・保護・賃金交渉 「業績給」  その結果,チリのプログラムは長期にわたる という を中央集権化する機会が付与された.この動きは教員に対して タイプの改革――国レベルへと成功裡に規模が拡大された―― 前向きなシグナルを送った.組合と政府の間の信頼関係は改革 の 1 つとして存続している.他の状況下では,そのような改革 の実施に関する規則的な議論を通じていっそう高まった.このよ は不評なことがしばしばであったが,チリでは改革が継続してい うな努力の一環として,組合員はインセンティブ・プログラムに る:2016 年には新しい法律が成立して,インセンティブ・プロ 使われる業績評価を共同設計した. グラムの対象が拡大される一方で,教員の専門性開発が強化さ  このような改革が成功した最後の要因としては,教育向けの れることとなった. 出所 :以下に基づく WDR 2018 チーム―Avalos and Assael (2006); Contreras and Rau (2012); Delannoy (2000); Mizala and Schneider (2014); OECD (2016). 密接に実績に連動させてきている.このような変更が  不利を被ると思われている人々を補償することは改 国際的な学習評価におけるチリの着実な改善に寄与し 革を承認してもらうのに役立ち得るが,そのアプロー てきている. チにはリスクが伴う.インドネシア政府は 2005 年に  協議には改革によって不利をこうむる関係者を補償 教員の能力向上を目指した包括的な改革プログラムを するという戦略を含めることもできる.そういった戦 導入した.教員認証が改革の目玉であって,教員は教 略の 1 つは,制度の効率性を改善する改革によって 職にとどまるために能力試験に合格することが義務 傷付く生徒に対象を絞って,援助を供与するというも 付けられた 29.このような新たな義務と引き換えに, のである.例えば,閉校から影響を受ける子供たちに 交渉された合意では認証済みの教員には,基本給と同 追加的なサービスを提供することは,学校の統廃合を じくらい多額の追加的な月次手当が供与されることと 容易にするだろう 28.もう 1 つの戦略は「複線的」な なった.ただし,実施の初期段階では,認証の要件が 改革を使って,一部の現職者を改革に伴う負のインパ 政治的な圧力を受けて薄められ,教員には能力試験に クトから保護するというものである.例えば,ペルー 合格しなければならないという要件は適用されなかっ やアメリカのコロンビア特別区における業績給は当初 た.結局,改革は教員の能力にも生徒の学習にもほと は自発的に導入されていた. んどインパクトをもたらさなかったが,公共支出には 196 世界開発報告 2018 重大な影響が及んだ 30.2011 年現在,認証教員は全 革新と機敏性を促進する 体の 3 分の 1 以下にとどまる一方,教育予算の 9% がすでに認証手当に使われていた 31.  政治的・技術的な複雑性のゆえに,学習を改善する ための政策の設計・実施は挑戦的なものになっている. 学校とコミュニティの間でパートナーシップを構築する 低学習に対する解決策の一部は比較的単純である.イ  持続的な改革には学校とコミュニティの間の強固な ンフラや教材の不十分さは物流管理的に困難な課題で パートナーシップが必要である.制度全体の改革に向 はあるものの,直接的に取り組むことができる.必要 けたインセンティブが弱い場合,地方での行動が代替 とされる技術は知られており,ほとんどの教育制度に となり得るだろう.南アフリカでは,政治的・経済的 はこのような問題の解決に関して十分な経験がある. な状況のせいで,一部の州における教育パフォーマン しかし,教室で起こっていることを改善するのはもっ スの改善に向けた努力は制約を受けたが,一部の学校 とむずかしい.教員が生徒のニーズに合わせて授業を では保護者と学校の間の強固なパートナーシップを通 調整するという努力を支援するだけでなく,教員や生 じて,局所的な進展が可能になってきている 32.局 徒の行動を変化させることとも関わりがある.改革に 所的なパートナーシップは脆弱な紛争影響地域ではと 対する伝統的なアプローチ――あらかじめ定められた りわけ重要である 33.例えば,アフガニスタンでは 介入策が導入され,実施中に適応させる余地がほとん コミュニティ・ベースの学校を建設したプログラムの どない――が,有効なことは稀である. おかげで,通学距離が削減されると同時に就学者が増  学習改革は適応の余地を伴う,より機敏なアプロー 加し,学習成果,特に女子の成果も改善した 34.し チを必要としている 40.これは試験的実施プロジェ かし,このような地方のパートナーシップは応答的な クトで多種多様な介入策を実験する,ということと同 より高等なレベルの機関によって支援される場合に, じではない.そうではなく,所与の政治的・経済的な 最もうまく機能する傾向にある.そのような機関は脆 状況下で,実施機関の既存の能力を活用して,あるア 弱な環境下ではひどく不足している. プローチを大規模にテストしてみるということを意味 する.複雑な公共管理改革――教育を含む――に関す 制度主体のインセンティブと能力を学習と整合的にする る最近のレビューでは,成功した改革の鍵を握る要素  改革の成功は官吏の能力・インセンティブ・意欲次 が強調されている 41:問題を明瞭に表現することか 第である.教育制度を有効に運営するためには有能な ら始まる改革は,一連の潜在的な解決策を当初は念頭 公共サービス指向型の人材が必要であるが,このこと に抱いているが,実施段階での実験から浮上してきた は,それに釣り合った給与と労働条件を与えることを 解決策を採用することになる .最終的な介 (図 11.2) 意味する 35.しかし,もし教育にかかわる政治的な 入策は,地元および世界全体的な証拠に依拠するハイ 経済が公的な目標と不整合ならば,あまり望ましくな ブリッドなものになる傾向がある. い性格の候補者が公共サービスに魅力を感じるかもし れない.メキシコでは,教員はしばしば能力ではなく, 地方の問題に対する解決策を探求する 政治的な恩顧に基づいて採用されていた.その結果と  どんな制度でもうまく機能している部分がある.こ して,試験ベースの制度よりも質の低い人材が採用さ のような部分を使えば,学習改善のために技術的・政 れていた 36. 治的に実現可能なアプローチを見出すことができる.  官僚の能力を構築することに向けた取り組みには落 アルゼンチンのミシオネス州では,生徒の中退率が高 胆せざるを得ない 37.個人の能力が成功裡に構築さ かった.しかし,なかにはトレンドに逆行する学校も れた場合でさえ,この能力を活用して有効な政策を策 あった.教員は保護者と非公式な学習契約の締結に同 定・実施することに対するインセンティブは往々にし 意した(保護者は生徒の成績の悪さについて教員を非 て欠如している 38.換言すれば,教育成果を改善す 難しなかった).保護者対教員関係についてより建設 るために組織的な能力を構築する努力は,教育制度に 的なアプローチを採用した学校では,中退率が大幅に おけるインセンティブが能力の構築と同じ目標に調整 低下した 42.学校は挑戦課題に対してさまざまなア されている場合に,最もうまく機能する傾向にある. プローチをしているので,肯定的な特例の分析は政策 例えば,公共財の提供に関して強いインセンティブが (ボックス 11.6) 策定にとって有益であろう . 作用している時には,より良い公共サービスを提供で  しかし,地方の革新は各国間の学習格差を埋めるに きる専門的な官僚制を構築することに向けた努力が鼓 は十分ではないかもしれない.増勢にあるグローバル 舞される 39. な知識から得られる原則を活用すれば,特定の状況下 11 低学習の罠から脱却する方法 197 図 11.2 問題主導型の反復的な適応が改革の成功を牽引する 1 問題の定義・診断 1 問題の再定義・再診断 1 問題の再定義・再診断 反復 学習の 2 2 2 改善 5 設計 再設計 再設計 オプション オプション オプション 適用 3 実践 4 評価 3 実践 4 評価 3 実践 4 評価 出所:Andrews, Pritchett, and Woolcock (2017) からの翻案. における学習を改善するために有益な発想が得られる 政策策定や実施に向けて反復的・適応的なアプローチを統 可能性がある.制度変更に対してより反復的なアプ 合する ローチをすることが,世界中の経験から示唆された介  反復的・適応的なアプローチがどのようにして教育 入策を適応させる 1 つの方法であろう. 制度を強化し,学習を改善することができるかは,以 下のような最近の実例でわかるだろう.インドでは, ある実験が示すところでは,子供たちを能力別にグ ループ分けし,レベルに相応しい教え方を使い,継続 ボックス 11.6 ヨルダン川西岸・ガザ地区にある好成績の学校は,学習について教訓を提供してくれている (UNRWA)  国連パレスチナ難民救済事業機関 はヨルダン川 いる.教員養成カリキュラムは UNRWA と公立校では類似し 西岸・ガザ地区にいる 30 万人以上の難民に対して,基礎教 ているが,UNRWA の教員は教室での授業について 2 年間の 育サービスを提供している.数回にわたる国際的評価におい 訓練プログラムを修了しており,結果として学習と整合的な授 て,NURWA の学校は現地公立学校の成績を凌駕してきている. 業アプローチを修得している. UNRWA に属する生徒は社会経済的な地位が低く,生徒 1 人当 • 評価と査定.UNRWA の学校は生徒の評価と教員の査定を, たりの支出が低いにもかかわらず,学習の水準は 1 年間相当分 公立校よりも厳格かつ頻繁に行っている. だけ高い a.このような好成績の動因には以下が含まれる: • 有効な学校指導者.UNRWA は教員を有効に支援できる有資 格の学校長の養成に投資している. • 学校活動への保護者の積極的な関与.また,学校・家計・ 難民社会の間の緊密なパートナーシップにも関与しており,こ  好成績の学校から教訓を学ぶのは常に容易とは限らない.好 のことが,目的意識の共有およびモニタリングや支援のため 成績を牽引している学校のリーダーシップなどの要因のなかに の協調的なメカニズムに貢献している. は異質で模倣がむずかしいものもある.数多くの学校の事例に • 有効な教員支援制度.教員は生徒が各学年で知っておくべき 依拠することは,より一般的な教訓を学ぶのに有益であろう. ことや,できることを明確に規定した基準を使う訓練を受けて 出所:Abdul-Hamid 他 (2016) に基づく WDR 2018 チーム. a. これはヨルダンの UNRWA 学校と公立校との比較. 198 世界開発報告 2018 ボックス 11.7 ブルンジは反復と適応によって教育サービスを改善した  ブルンジでは長引いた内戦と和平に向かう長いプロセスを経 県の教育局長や PTA 代表者も含まれた. て,新政府と新憲法は 2005 年に公共サービスの重視を新たに • 実施.政府高官がある 1 つの県で新アプローチを実施する権 することとなった.多くの学校が破壊され,運営制度は崩壊し 限をチームに付与した.実施の進展に伴って,チームは行動 ていた.新政府が発足した時点で小学校の純就学率はわずか 計画を規則的に調整した. 生徒と教室数の比率は 87 : 1 であった. 56% で, また平均すると, • 持続可能性に向けた計画.介入策のパフォーマンスを評価し 算数の教科書 1 冊を 20 人の生徒が共有していた. た上で,政府の上級高官は他の県向けにプログラムを拡大す  政府は生徒対教科書比率が高いことと配布遅延を削減するこ る方策を決定した. とを優先課題にした.それは次のような 3 段階による広範な短 期で結果を出す新たな取り組みの一環であった.  この新しい構想は目標を大幅に上回った.教科書の入手可能 性が増大する一方,その配布にかかる平均時間は 1 年強から • 具体化.この段階で,改革チームは十分な教科書がない理 60 日に減少した.この成功は,教員給与問題だけでなく,教育 由を特定した.実際的な解決策を確保するために,教育制度 以外の他の多くのサービス提供問題についても,同様の構想を 全般から利害関係者を集めてチームが構成され,チームには 採用することにつながった. 出所:Campos, Randrianarivelo, and Winning (2015) に基づく WDR 2018 チーム. 的な評価を実施したおかげで,生徒の読解力が向上し していることと相容れない.閉じられた制度では利害 た.小規模な実験が政府制度での成功を保証するもの 関係者の自律性は制限され,パフォーマンスは資源利 ではないことを認識しながら,プラタム(Pratham: 用にかかわる公式ルールの順守に基づいて判断される 独創的な評価を実施している NGO)は公立学校でレ ため,革新に向けた余地はほとんど残されていない. ベルに相応しい教え方について,さまざまなアプロー これとは対照的に,成果により明確に焦点を置くもっ チを実験した.この実験では基になったモデルの前提 と開かれた制度では,教育制度全体にわたってより大 が検証され,早期成功の背後にある要因が特定された. きな革新が生じる公算が大きいであろう (表 11.3)46. それから実施に関して大きな規模で機能する 2 つの アプローチが特定された 43.制度能力が限定的な脆 良い情報システムと幅広い基盤を持つ連合も必要である 弱国家でさえ,このような反復的アプローチは必須の  新しい革新の実施から学ぶ能力が死活問題である. 教育サービスを回復するのに成功してきている(ボッ 迅速な規則的で正確なフィードバックを提供する情報 クス 11.7). システムは,学習を改善するためのより適応的なアプ  政策当局は政策を広く導入する前にテストを行うこ ローチにとって決定的に重要である.この種の能力を とができる.制度全体の改革は評価がむずかしい.とい 教育担当機関に構築し始めている国々もなかにはあ うのは,適切な比較対象がないため,政策変更のインパ る.ペルーの教育省(MINEDU)傘下の MineduLAB クトを追跡し,学習改善のための戦略を適応させるのが は,政府の教育担当諸機関と経験豊富な研究者によ 困難だからだ.小さな実験的実施ならこのような困難を る協働組織である 47.この研究所は革新を公立学校 克服できるが,実験的実施の場合に発生し得る注目や促 に直接的に導入し,研究者は個々のデータ収集作業で 進がなければ,それが有効か否かを判断するのはむずか はなく,むしろこのシステムからの情報を使って新プ しい.中間的な方法として,中国やその他の諸国では新 ログラムを評価しなければならない.その結果は同じ 政策を特定の地域で検証してきている 44.政策当局は 学年度の内に入手可能になっていなければならない. 最初に重大な問題を特定する,それからどの解決策を MineduLAB の初年度に導入された革新には,学校 実験に移すかについて合意する.続いて,実験のため のパフォーマンスを比較するのにより適した情報の提 の提案を作成する.それは部分的には,同じような問 供や,小学生が成長指向を身に付けるよう奨励するモ 題に対処するために他の諸国で採用された解決策と多 ジュールの導入が含まれていた.プログラムはまだ新 種多様な地域で試されたそれの各種代替策を分析する しいが,そのアプローチは有望である. ことによって行われる.成功した政策は,他の地方へ  このようなアプローチが持続可能であるためには幅 拡張される.ベルギーとオランダは類似のアプローチ 広い支持が必要である.この反復的なアプローチはよ を採用してきている 45. り有効な戦略を開発する助けになり得るものの,教育  利害関係者にそのようなアプローチを採択する権限 制度内の関係者にとってはリスクを伴う.政治家は仮 と自律性を付与するのは,多くの教育政策機関が存在 に実験が失敗する,ないし資源がもっと伝統的な活動 11 低学習の罠から脱却する方法 199 表 11.3 大規模な革新を奨励するための原則と関係者が果たせる役割 学習を改善するためのアプローチにおいて革新と機敏性を奨励する さまざまな関係者が果たせる役割 ための原則 • 政策の設計や実施にもっと反復的・適応的なアプローチを採用 • 政府機関:革新とより反復的なアプローチのために,好意的な する. 環境とインセンティブを整備する. • グローバルな知識ベースだけでなく,教育制度内からも有望な • 市民社会・民間企業団体:学習を改善するためのさまざまなア 解決策を発見する. プローチを実験する. • 実施を支援するために,迅速なフィードバックを提供する情報シ ステムを確立する. • 革新を奨励するために教育担当機関の能力,好意的な環境,お よび自律性を発展させる. 出所:WDR 2018 チーム. から逸らされるならば,多額のコストをこうむること おける著しい変化の機会が提供される.1970 年代の があろう.もし新アプローチが学校教育を改善するこ フィリピンにおける戒厳令下で,教育向けの政府支出 となく,それに混乱をもたらすとすれば,生徒も損害 は対 GDP 比でみて 2%未満に落ち込んだ.1980 年 をこうむる.にもかかわらず,もし教育制度が学習を 代になって が民主主義支配を回復して,教 「民衆革命」 改善させるとすれば,ある程度のリスク・テイキング 育へのより広範なアクセスの要求にもっと応答的な新 は極めて重要である.利害関係者の支持を動員し,最 政府を迎え入れた.貿易の自由化によって熟練労働者 初から協議のスペースを提供することができれば,リ の需要が増加し,それがより良い教育に向かうインセ スクを削減できるだろう. ンティブをいっそう高めた.このような社会的シフト –  を経て,教育向けの公共投資は 1980  2000 年に対 教育制度は,決定的な瞬間をものにするためには機敏でな GDP 比でみて 2%ポイント増加した(図 11.3). ければならない  1990 年代のラテンアメリカにおける教育改革のよ  政治家や教育制度の管理者は,広範な学習基盤の改 うに,決定的な転機は多くの場合に幅広い分権化や改 善の機会を変化が生み出した際には,素早く反応する 革の努力のなから出てくる 48.教育サービスの責任 必要もある.このような状況の変化は頻繁には生じな を地方政府や学校に譲渡することは別としても,分権 いものの,状況がまさに変化する際には,教育政策に 化は教育制度の重要な要素をより整合的にする機会を 図 11.3 フィリピンにおける教育への公的支出の動向は広範な政治的・経済的な状況の変化を反映している 教育への公的支出の対 GDP 比,民主主義と貿易開放度に関する指標(1960 – 2000 年) a. 支出と統治 b. 支出と貿易開放度 10 4 4 70 5 (対GDP比%) (対GDP比%) 教育への公的支出 教育への公的支出 民主主義の水準 3 3 60 貿易開放度 0 2 2 50 −5 1 −10 1 40 1960 1970 1980 1990 2000 1960 1970 1980 1990 2000 教育への公的支出(対 GDP 比%) 教育への公的支出(対 GDP 比%) 民主主義の水準 貿易開放度 出所:Ansell (2006).Ben W. Ansell から許可を得て翻案.再利用にはさらなる許可が必要.データは http://bit.do/ WDR2018-Fig_11.3. 注:民主主義の水準は政策の得点で測定.それは選挙の競争力・開放度の評価,政治参加一般の性格,行政権限に対 するチェックの程度で構成される.高いプラスの得点は強固な民主的制度に対応し,マイナスの得点はより専制的な 制度を示唆する.貿易開放度は Hiscox Kastner 得点の逆数で測定される.それはある国が「仮説的な保護なしの環境 から輸入する際の最適なレベルからどの程度逸脱しているか」 を測定.得点が高いほど開放度が大きいことを示す. 200 世界開発報告 2018 提供する.ポーランドにおける早期の分権化改革の後, 目立つ情報を提供することができる.開発パートナー・ 政府は学校の資金調達水準を学校のニーズにより密接 教育実務家・低所得国政府の間のパートナーシップで に連動させる定式に基づく仕組みを導入した.この変 ある READ プログラムは,各国が国内評価を強化す 更はファイナンスを新しい現実と整合化させており, るのを後押ししてきている一方で,各国が国際的な評 このことは制度が非効率性を削減するのに役立ってき 価に参加するのを支援している 52. ている 49.  学習の測定に対する支援以外では,海外主体は,制  有効な革新のためには――まさに改革に向けて連合 度の弱点を診断し,学習を改善するための方法に関す を構築し情報を活用するために――,教育制度自体に るグローバルな知識の構築を支援することもできる. は強力で有能なリーダーシップが必要である.研究に この知識ベースは急拡大してきているが,有望な介入 よれば,有効な指導力として 3 つの属性が強調され 策を個別の状況にどのように適応させるかについて ている.第 1 に,問題を明確に表現し,それにどう は,さらなる研究が必要である.海外主体は研究に資 対処するかについての明瞭なビジョンを提示できる. 金供与を行い,実務家・研究者・政府機関の間で学習 第 2 に,合意された目標を巡って人的および金銭的 を改善するための有効な方法に関する能力や,地方に な資源を動員し,変化を唱道し,実施を支援するため 直接関連する知識を構築するための研究を奨励するこ の連合を構築する.第 3 に,有効なリーダーは制度 とができる. 的な状況に適合する解決策の特定に焦点を当てる 50. 柔軟性を奨励し,改革連合を支援する  海外主体は,プロジェクト開発活動,政策論議,お 海外主体は学習改善に向けたイニシアティブを よび制度の他の主体に対する支援などを通じて,包容 どのように支援できるか? 的な改革を奨励することもできる.2005 年のパリ宣 客観的で政治的に目立つ情報の創出を支援する 言で初めて合意された援助効果という課題に関しては  グローバルな教育イニシアティブは,行動に向けた 多大な進展があったものの,依然として改善の余地が 政治的インセンティブを改善することができる.ミレ ある.この課題の重要な側面は,包容的な改革の構築 ニアム開発目標(MDG)は開発の挑戦課題に関して, この分野での進展は遅々としている. である.しかし, 国際的および国内的な主体を動員することに成功し 全部門を通じて,市民社会組織と有意義な対話の制度 た.教育目標を含め MDG のグローバルな影響に関 を有している,と判断されたのはほぼ半数の諸国にす しては依然として議論があるものの,弱いないし不安 ぎなかった.加えて,官民両部門間の対話はむずかし 定な政府に対して進展が授与できる正当性が,変化に いと判断され,行動につながることは稀であった 53. 向けての強力なインセンティブになることが多かっ このような問題に取り組むことは,有効な政策の設計 た.多くの国々が MDG を達成するためのうまく進 と実施に必要な連合の出現には極めて重要である. 展した努力の中で,学校教育へのアクセスを拡大する  教育については,協議グループや市民社会組織が ための改革を導入した.持続可能な開発目標(SDG) より包容的な改革を推進することができるだろう. の指標は一連の比較可能な学習指標も含むことになっ 「市民社会教育基金」 2009 年に打ち出された (CSEF) ており,その指標は,各国が重点を学校教育から学習 は,開発途上 40 カ国以上における国家的な教育連合 にシフトするのを動機付けることによって同様の役割 を支援してきており,教育の企画と政策に関与して を果たし得るだろう. いる市民社会組織の数は急増してきている 54.例え  学習評価の改善を支援することによって,海外主体 「ガーナ国家教育キャンペーン連合」 ば,この基金は, は低学習水準とその原因に光を当てるのを手助けでき (GNECC)が,より参加型の教育の企画・政策策定・ る.1つには,途上国が地域的・国際的な評価――変 モニタリングを求めて陳情するのを支援してきてい 化に向けたスペースを切り開き,政策論議に影響を及 る.GNECC の会員は毎年の教育レビュー会合の際 ぼすのに重要なツール――に参加するのを,海外主体 に教育問題に関する新たな発見を提示し,そして変化 は後押しすることができる 51.海外主体は,テスト を唱道すべく協働してきている 55. 項目が国や時期を超えて繋がっていることが確保され るのを支援できる.このことは,さまざまな評価の結 ファイナンスを,学習につながる結果により密接に結び付 果をより比較可能なものにする.海外主体は各国の評 ける 価に向けた取り組みを支援することによっても貢献で  各国の教育投資にたいする開発援助の全体的な貢献 きる.その結果として,学習に関して政治的にもっと 度は比較的小さいものの,それが重要な低所得国もな 11 低学習の罠から脱却する方法 201 かにはある(図 11.4).2015 年の低所得国について 図 11.4 教育向けのファイナンスの源泉はほとんどが国内であ みると,教育支出のうち 14%は国際的なファイナン るが,低所得国にとっては国際的なファイナンスも重要である スによるものであった.しかし,支援がずっと高い国 教育支出の推定される源泉(所得グループ別,2015 年) –  もなかにはある.マリでは,開発援助が 2004  10 年 100 の教育への公的支出の約 25%を占めていた.さらに, 投資に関する国際的な評価は,SDG の一部として学 80 習の向上を要請しており,このことは,特に低所得国 に向けた開発支援を増加させる必要があることを意味 60 している 56. %  しかし海外主体は,制度が学習と整合性を保てるよ 40 うな形で,ファイナンスを提供しなければならない. 改革の狭い側面ないし個別の介入策を対象にしたプロ 20 ジェクトは,もし制度内の他の部分における弱点が同 時に対処されないのであれば,既存の不整合性を悪化 0 させるリスクがあろう.例えば,専門職開発活動を支 低所得国 下位 上位 援するプロジェクトは,キャリア開発に関するインセ 中所得国 中所得国 国際的ファイナンス ンティブと整合性がとれていなければ,持続可能性が 家計部門 低いかもしれない.海外主体は,制度の注目点を学習 国内公共部門 に向けてシフトさせ,そして資金を個別の投入や活動 出 所:Education Commission (2016). デ ー タ は http://bit.do/ の提供ではなく結果に結び付けることによって,整合 WDR2018-Fig_11-4. 性を下支えすることができる.  より多くの開発パートナーが教育においては結果 向けて既存制度の方向転換を成功裏に行っている国も ベースのファイナンスを利用している.このようなア ある.他方,当該国の開発水準から予想されるレベル プローチはファイナンスを結果と連動させることに をはるかに凌駕する学習成果を達成した国もある.こ よって,制度の構成要素を整合的にしようとするもの れは当該国がかつて捕らわれていた罠から脱却したこ である.またこのアプローチは,強調点を投入からパ とを示唆している.幅広いベースの学習を達成するた フォーマンスに移している.生徒の成績に直接連動し めの単一のレシピというものは無いが,このような事 ているファイナンスもなかにはある.例えば,エチオ 例は着手のためには 3 つの参入点があることを明ら ピアの教育制度を支援するイギリスのプログラムは, かにしている.第 1 に,情報や指標を使って学習レ 前期中等教育の修了時点における試験に合格した生徒 ベルの低さという表立っていない排除に光を当てる. 数の純増に対して,あらかじめ合意されている金額が 第 2 に,学習,特に最も貧しい層に属する人たちの 「教育で今こそ大き 供与される.タンザニアにおける 学習に向けてインセンティブをより適切に整合化でき な成果を」という多数のドナーが関与する資金提供プ る連合を構築する.第 3 に,継続的な改善のために ログラムは,ファイナンスを,生徒の学習や,教育の フィードバック・ループを利用しながら,革新と機敏 質の改善を支援する中間的な産出物に連動させてい 性をコミットする.これらのどれ 1 つとして容易で る.このようなアプローチが制度のパフォーマンスに はないが,歴史の示すところによれば,教育が約束す 及ぼす最終的なインパクトの評価は依然として実施中 ることを達成できるか否かは,その挑戦を受けて立つ である.というのは,それが実施されてまもないから ことに依存している. だ.しかし,初期の発見が示唆するところでは,それ は制度レベルの制約に対処して,制度のパフォーマン 注 スを改善する潜在力をもっている 57. 1. Cassen, McNally, and Vignoles (2015); * * * Stannard and Huxford (2007); Tanner 他 (2010).  国の開発水準がどうであれ,学習成果の不振に関し 2. Mullis 他 (2016). ては必然的なものは何もない.低学習の罠から脱却す 3. 数的思考力の戦略は 1999 年に導入された. るために,十分裏付けのある改革を実施して,学習に 4. 識字力や数的思考力のプログラムに関するさまざ 202 世界開発報告 2018 まな側面の評価については,例えば以下を参照― 43. Banerjee 他 (2016). Machin and McNally (2008); McNally (2015); 44. Heilmann (2008). Stannard and Huxford (2007). 45. Blanchenay (2016). 5. Khemani (2015). 46. Andrews, Pritchett, and Woolcock (2013). 6. Banerjee 他 (2011); Brender (2003). 47. J-PAL and IPA Perú (2013). 7. Dias and Ferraz (2017); Toral (2016). 48. Grindle (2004). 8. Andrabi, Das, and Khwaja (2015). 49. Alonso and Sánchez (2011). 9. Barr, Packard, and Serra (2014). 50. Lefwich (2009). 10. Snilstveit 他 (2005). 51. Devarajan Khemani (2016). 11. Carr-Hill 他 (2015); Grandvoinnet, Aslam, 52. World Bank (2015). and Raha (2015). 53. OECD and UNDP (2016). 12. Banerjee 他 (2010); World Bank (2017c). 54. UNESCO (2015). 13. Reinikka and Svensson (2011).  55. CSEF (2014).CSEF は Global Campaign for 14. Filmer and Schady (2009). Education (GCE) に よ っ て 調 整 さ れ,Global 15. Barrera-Osorio and Filmer (2016). Partnership for Education (GPE) からファイナ 16. UNDP (2011). ンスを享受している. 17. UIS (2016). 56. Education Commission (2016). 18. Rath 他 (2015). 57. Sabarwal, Joshi, and Blackmon (2017). 19. Sutcliffe and Court (2005). 20. Di Tella and Franceschelli (2011). 参照文献 21. Corrales (1999). 22. Bruns and Schneider (2016); Corrales Abdul-Hamid, Husein, Harry Anthony Patrinos, Joel Reyes, Jo Kelcey, and Andrea Diaz Varela. 2016. “Learning in the Face (1999). of Adversity: The UNRWA Education Program for Palestine 23. Bruns and Luque (2015). Refugees.” World Bank Study Series, World Bank, Washington, DC. 24. Bruns and Luque (2015); World Bank Alonso, Juan Diego, and Alonso Sánchez, eds. 2011. Reforming (2017c). Education Finance in Transition Countries: Six Case Studies in Per Capita Financing Systems. World Bank Study Series, 25. 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PASEC (教育制度分析プログラム)18 一貫性 13, 163, 164 人頭学校補助金 191 PIRLS(国際読解力調査)5, 8, 18, 91 インセンティ ブ 24, 25, 161, 163, 164, 191, 192, 「青年のエンパワメ ントおよび生計」プログ PISA(国際的な生徒学習到達度調査)7, 18, 196 ラム 147 46, 71 教育制度の主体 163 早期の中退者 113 2009 年の結果 73 教員のモチベーシ ョン改善 22, 123, 128, 運営能力 OECD 諸国と他国の差異 6, 70, 72 129, 195 学校の―― 12, 78 エンジニア希望者 対 教員希望者の成績 教員への金銭的な―― 103, 104, 124 学校長の―― 23 129 教員への非金銭的な―― 130 運営能力指数 11 社会経済的な地位の影響 74 公務員の個人的な―― 137 上海は 2012 年に トップ 24, 164 指導者層における逆方向の―― 18 政治的な―― 190, 194, 200 エイジェ ンシー 38 所得による格差 73 生徒の意欲を掻き立てる 113 エジソン, トーマス 137 男女差 71 チリにおける改善 195 直接的な金銭的―― 113 エチオピア ドイツ (2000 年)24, 89 インド 教員の不在 10, 76 ブラジルにおける改善 190 ASER(市民主導型の 「教育年次報告 教育制度を支援するイギリスのプログラム ベトナム 4 書」 ) 18, 90, 192 201 マディ ヤ・プラデシュ州における教員採用 母国語による授業の実施 126 PISA シ ョッ ク 91 184 PISA ツーリズム 13, 164 「オープン基礎プログラム」 115 「オープン基礎プログラム」 115 PISA 評価 (2015 年)72 学習の遅れ 127 親への子供たちの学業に関する情報の提供 家計による学習格差 73 113 READ プログラム 200 学校向け補助金 20, 104, 168, 175 「教育に関する子供の権利法」 183 教育の権利にかかわる訴訟 194 ■か行 SACMEQ (教育の質測定のための東南部ア 教員組合 182 ガーナ フリ カ諸国連合)68, 88, 174 教員経歴追跡の改革 184 技術系専門学校 149 SNTE (全国教育者労働組合) [メキシコ] 教員の不在 10, 76 教員の不在,77, 163 185 識字率 5 教員へのイ ンセンティ ブ提供 129 STAR 実験 40 教員への報奨金 92 成績に基づかない奨学金 149 教員向け研修 125 早期児童開発 164 Teach for America 124 県教育情報システム (DISE)162 早期児童介助開発機構 184 TIMSS (国際数学理科教育動向調査)5, 18, 校舎の改善 136 「ガーナ国家教育キャ ンペーン連合」 46 コンピュータ支援学習の介入策 22, 104, (GNECC)200 評価 (2015 年)6, 71 136, 137 海外主体 イギリスにおける評価の改善 189 小学校教育の収益率 39 学習改善に向けたイニシアティ ブの支援 メキシコ (1995 年)18 女性への求人情報提供 111 200 TVET (技術・職業の教育・訓練)145, 147 専門試験 (バイアパム) 事件 179, 180, 185 学習評価の改善を支援 200 若者の有意義な参加 147 早期における学習不足 6 介入策 農村部における学習 3, 5, 67 アメ リ カ 125 能力別再編 126, 197 インパク ト評価 102 UNRWA (国連パレスチナ難民救済事業機 ビハール州におけるカンニング 183 情報通信技術 (ITC) を組み込んだ―― 関)197 不利な状況にある生徒への追加授業 115 23, 135, 136, 138 Uwezo [タンザニア]18, 192 インドネシア 7 206 世界開発報告 2018 海外主体による―― 200, 201 ――のために情報を活用することにおける 質 139 学習成果の改善に成功 15, 20 障壁 191 学校から仕事への移行 145 学習やスキルを改善するための―― 64 ――に関する知識 104 学校給食 138 学校のコス ト を削減する―― 112 ――に向けたイニシアティ ブの海外主体に 「学校教育 (schooling) 」 42 技術的な―― 135 よる支援 200 ――が経済成長を加速化させる経路 44 キャ リア情報 150 ――のための鍵となる 3 つの原則 106 格差 55 教員評価の―― 127 外部主体にと っての含意 26 拡大 54 訓練の―― 147, 148 グローバルなコス ト 175 金融に関する行動の指標を改善 44 契約教員を採用する―― 103 学習格差 10, 11 健康との関係 45 コス ト削減 21 教室における―― 88 コス ト 110 需要サイ ドの―― 112 ジェ ンダーに基づく ―― 71 コス ト を削減する介入策 112 情報提供による―― 111, 113, 191 所得水準による―― 6 二律背反の選択 58 セカン ド・チャ ンス 115 裕福な生徒と貧しい生徒の間 73 労働力スキルとの対応関係 70 早期児童―― 108–111 学習危機 3, 4, 6, 8, 16, 67, 87 大規模な実施 (規模の拡大)160 学校人頭補助金 175 ――が労働市場に表出 145 途上国における学習成果を改善することを 学校長研修 138, 139 決定要因 73 企図した―― 102 3 つの側面 4 学校長の運営能力 23 汎用性 102, 104 学校ベースの管理 138, 139, 140 学習指標 87–90, 93 費用と便益 104 学校ベースの食事プログラム 138 改善 24 補習教育 113–116 学校ベースの評価がもつ重大な弱点 18 グローバルな―― 94 利害にと って脅威 179, 180 欠如 12, 88 学校補助金 139, 140, 173, 175 開発援助 94, 200 行動を引き起こす 3 つの経路 89 教員のイ ンセンティ ブと組み合わされた― 教育への公的支出に しめる割合 201 克服すべき課題 93 ― 140 「開発教育 (Developmental Education)」 視野を狭める 91 学校レベルの暴力 57 117 政治的圧力の影響 90 ガルパウ・アプラウズ (Galpão Aplauso)プ 格差(「学習格差」 も参照)20 選択 91 ログラム [ブラジル]147 学校教育 55 投資 91 環境的イ ンプッ ト 63 学校教育年数 46 有効な指針 89 学校修了率 9, 55 良い―― 88 韓国 iii, 4 基礎教育についての就学率 4 生産可能性フロンティ ア 19 学習成果 教育水準別の賃金―― 38 生徒中心的なカ リキュラム 164 家庭の社会経済的な地位の影響 74 教員による正当化 77 「漸進的普遍主義」 アプローチ 40 教員 75 後期中等教育達成度 114 中等学校学習の方向転換 12 生徒の家庭環境の影響 72 社会経済的グループ相互間の―― 173 テス ト を重視しすぎ 19, 92 不遇層 3 ジェ ンダーによる学校教育の―― 56, 57, 離農 155 学習評価 91 優秀な学習成果 68 112 海外主体による改善の支援 200 就学率 54 感受期 63 教員による抵抗 90 所得に関連する学習 73, 74 国際的な―― 7 カンボジア 所得に関連する修了率 58 市民主導の―― 18, 88, 191, 192 教育制度の規模拡大 23 測定 92 重要な基礎的科目 92 女子への奨学金 107 認知能力の社会経済的な―― 10, 75 地域的な―― 172 奨学金プログラム 191 「学習,あるいは学び (learning)」 42 学習不足 4, 5, 72 官僚の能力を構築することに向けた取り組み ――に関して国際的に比較可能なデータ 学校時代における―― 8 196 91 就学前 73 ――に関する情報の改善 190 早期における 6, 7 技術が仕事に及ぼすイ ンパク ト 155 ――に関する情報の欠如 190 「学習が待ち遠しい」 [スーダン]137 技術教育 148 ――に関する多種多様な指標 17 ――に焦点を当てた政策の親への影響 家計支出 (教育への)175 技術職業教育・訓練 (TVET : Technical 183 家計調査 18 and Vocational Education and ――にと っての究極の障壁 8 家計ベースの評価 18 Teaching) (「TVET」 も参照)145 ――の管理 13 加速的補習モデル 115 技術的スキル 97 ――の状況に関するデータの欠如 87 学級規模の縮小 102 技術変化 27 ――の水準と公共支出の関係 162 学校 基礎教育 ――のための連合の構築 193 ――で利用可能な教材の増加 138 ――における学習成果 67 ――のプロセスに関与する主体 103 ――における技術の変革的な性質を過大 質が低い 106 意欲を高める 112 評価 137 就学率 54 改革で必要とされる機敏なアプローチ 196 ――のパフ ォーマンスに関する情報 190 就学率格差 4 機会の損失 11 ――への投入 77 私立学校 165 教室の外での―― 111 ――への投入を通じて学習を達成するこ 普及の必要性 39 健康への影響 44 とに成功するのに鍵となる 3 つの原則 基礎教育とスキル訓練の統合 116 効果的な測定 92 135 基礎的スキルの開発 156 国際比較 90 ――への補助金交付 104 基礎的能力の欠如 67 コミ ュニティ による提供 111 効果的な管理 138 社会的流動性を促進 45 「期待をも って学ぼう」 [ジャマイカ]108 自律性 139 全国評価 91 既得権益 180, 181 統治 11 測定 16, 88 基盤的スキル 97 学校運営 促進する情報システムの特性 191 欠如 72 ――のスキル (能力)11, 77 ラテンアメ リカにおける改善 128 不足 70 学校長の能力 23 学習改善 私立学校 167 キャリア・ガイダンス政策 150 索引 207 キャリア教育プログラム 150 弱点 160 現職教員への―― 124 「教育(education) 」 36, 42 主体のイ ンセンティ ブ 163 教員採用 ――に関するシグナリ ング・モデル 38 整合化 12 インドのマディヤ・プラデシュ州 184 ――の恩恵 37, 41 成功している 13 恩顧ベース 183 ――の恩恵に関する研究 43 整合性 13 競争的―― 179 ――の権利にかかわる訴訟 194 政治的な干渉に弱い 180 教員専門能力開発 125 ――のフロンティ アで直面する トレードオフ 政治的な挑戦課題 13 教室 92 説明責任 129 ――における学習格差 88 ――への支出の構成 163 全体の改善 160 ――の外での学習 111 ――への投資に対する開発援助の全体的 相互依存関係 185 形成的評価 88 な貢献度 200 相互義務 185 粘着力 168 教職徒弟制度 128 ――向けの公共投資 199 ――向けのフ ァイナンスの国際的な源泉 パフ ォーマンスの悪い 67 201 非一貫性や不整合性 161 草の根の説明責任運動 18 エイジェ ンシーとの間の正の相関関係 38 フィリ ピン 165 具体的な授業方法を教えるプログラム 125 拡大 4 不確実性 184 グローバルな教育イニシアティブ 200 管理を担当する政府機関 175 複雑に している 3 つの特性 165 関連機関の目的 161 不健全な政治による不整合性の悪化 179 経験依存型シナプス形成 64 関連する技術に対する投資 136 分権化 138 紛争影響国における発展 183 形成的評価 17 公的支出パターン 172 紛争を悪化 57 教室 88 シグナリ ング・モデル 36 市政関与の促進 40 ポーラン ドにおける分権化改革 200 契約教員の雇用 104 収益率 42 目標 19 ゲーム形式のコンピュータ補助学習プログラム 女性における改善 39 有効な運営 196 135 政治的な意見や関与への影響 40 利害関係者 12, 180 結果ベースのフ ァイナンス 201 生殖への効果 38 利害関係者や担当機関の多様性 165 ケニア 「教育委員会」 (International 「教育で今こそ大きな成果を (BRN) [タンザ 」 介入策の規模拡大 160 Commission on Financing Global ニア]194, 201 学習にかかわる制度全体の改善 160 Education Opportunity)175 「教育に関する子供の権利法」 (2009 年法律 学習に関する情報の影響 90, 113 教育運営情報システム 162 第 35 号)183 学校中退の原因 112, 125 教育改革 193 「教育のための企業協会」 [ペルー]193 教育成果に関する保護者 (親) の認識 87 ――の政治学 176 教員 教材増加の影響 138 損失を被る可能性のある者 14 ――を通じて学習面で成功を達成するた 契約教員の雇用 23, 103, 104 有効であるための 3 つの属性 200 めの 3 つの原則 123 識字率 3, 70 ラテンアメ リカ 199 意欲 129 私立学校利用 165, 166 意欲とイ ンセンティ ブ 128 政治的な意見や関与への教育の影響 40 教育支出 172 インセンティ ブと組み合わされた学校補助 成績に基づかない奨学金 111 学習成果との関係 172 金 140 生徒対教師の比率を引き下げ 23 学習を改善するための―― 175 恩顧対象者 181 能力別グループ分け 126 国際的なフ ァイナンスの比率 201 給与 22, 76 母国語による授業 126 国民所得に対する比率 172 給与の倍増 23 「若者エンパワメ ントプログラム」 147 「教育従事者」 [イ ンドのマディ ヤ・プラデシュ 給与の引き上げ 128 原価計算 176 州]184 供給不足 75 県教育情報システム (DISE)[イ ン ド]162 教育政策 金銭的なイ ンセンティ ブにおける挑戦課題 現金給付プログラム 107, 109, 111, 191 改革の継続 184 104, 130 健康 学習フロンティ アにおける―― 19 金銭的なイ ンセンティ ブを供与するプログ ――に関連するシ ョック 107 活動家の既得権益 181 ラム 103, 124, 129 学校教育との関係 37, 45, 63, 108 私立学校 167 契約雇用 104 学校教育の女子への影響 44 担当機関の能力 161 欠勤 76, 77 環境面の良質な投入の必要性 106 分権化 181 質 10 教育政策サイクル 181 言語の発達 63 スキルやモチベーシ ョンを強化 22 教育制度 42, 162 生徒との相互作用を改善 23 言語の 「ミスマッチ」 126 ――にかかわる法律や政策 184 途上国における労働条件 130 現職教員研修 124 あらゆる部分を協働させる 161 能力向上を目指した包括的な改革プログラ 一貫性 13, 163 ム 195 公共(教育) 支出 運営 18 能力主義の採用 128 ――における不平等 174 運営が不適切 13 能力不足 76 学習との関係 162 改革における漸進的で協議しながらのアプ パフ ォーマンス測定を企図した政策 182 教育の格差を拡大 173 ローチ 193 非金銭的なイ ンセンティ ブ 129 高次スキル 97 改革における保護者や生徒 184 補完するための技術利用 137 ――を有する労働者の需要の増大 155 学習改善に向けて運営する 165 無断欠勤 128 学習指標を活用していない 89 公的資金 劣悪な労働条件 130 学校に届かない 175 学習を阻害する他の目標 165 教員組合 181 関連組織の細分化 161 使途 173, 175 学習への影響 182 私立学校への供与 167 機敏性 199 国による違い 182 規模拡大 23 増加の必要性 26 組合員数と生徒の成績との関係 182 行動経済学 168 苦闘している―― 9 教員経歴追跡の改革 184 行動バイアス 137 持続的な改革 196 社会情緒的スキルを育成 156 教員(養成) 研修 22, 123 高度な社会情緒的スキルを要する仕事 156 学校への追加的な訪問 125 208 世界開発報告 2018 公務員の個人的なイ ンセンティ ブ 137 差別的な規範 42, 184 集団行動問題 90 コー トジボワール 就学率 58, 137, 191 授業時間の損失 10, 76 徒弟制度プログラム 146 識字能力 授業戦略 64 国際数学理科教育動向調査 (TIMSS) → ――が高い労働者 114 授業テクニッ クに関連した研修 125 「TIMSS」 を参照 2 学年末における 70 授業料の廃止 110 国際的な評価 18, 46, 88, 93 普及 41 授業を改善するための改革の歴史 193 国際読解力調査 (PIRLS) →「PIRLS」 を参 「識字能力押し上げ」 プログラム 111 出生後の千日間 108 照 識字率 3, 5, 43, 67, 70, 193 生産年齢人口 70 需要サイ ドの介入策 112 国民所得 システムズ・アプローチ 161, 162 小学校就学率 40, 55, 56, 77, 198 学習との間の関係 27 紛争後諸国 56 教育への公共支出 172 持続可能な開発目標 (SDG)91, 200 南スーダン 56 小学校・中学校修了率との関係 56 ――に向けた進捗をモニターする能力にか かわる評価 17, 191 小学校修了率 56, 58 国連パレスチナ難民救済事業機関 ジェ ンダー格差 56 (UNRWA)197 シナプス刈り込み 63 状況化授業 116 5 歳未満児に対する 1 人当た り政府支出 108 シナプスの発達 64 条件付き現金給付 (CCT) プログラム 107, 国家的な試験 88 指標(「学習指標」 も参照)93, 161, 162, 164 109, 191 国家的な評価 88 ――にかかわる障壁 18 改善 24 証拠と実際の間のギャ ップ 104 「子供 1 人にラ ップ トップ 1 台を」 11, 23, 136, 基礎的スキル 44, 45 証拠の意味を理解 103 137, 156 教育指標の質の低下 183 情報 コミュニティ 持続可能な開発目標 200 ――を提供する介入策 111 ――によるモニタ リ ング 23, 135, 136, 139 少な過ぎる 16 親への提供 113 学校運営への関与 138 政治的な意見や関与 40 改善 190 学校とのパー トナーシップ 25, 196 生徒の学習 46 学習改善のために活用する際の障壁 191 教室外の時間を活用 111 政府が重視している―― 161 学習成果に関する―― 17, 161, 191 貧しい―― 108 政府の有効性に関する―― 183 学習に関する正確で信頼できる―― 161 コミュニティ ・カ レッ ジ 107 整理 16 学習の促進 24 コミュニティ教員プログラム 124 ミスリーディ ング 24 学校のパフ ォーマンスに関する―― 190 コミュニティ教員向けのプログラム 124 「市民社会教育基金」 (CSEF)200 キャ リアに関する―― 150 コミュニティ ・ベースの学校施設 137 市民主導 欠如 162, 175, 191 雇用への 3 つの道 145 学習評価 18, 88, 191, 192 最大限に利用するための原則 192 「教育年次報告書 (ASER) [イ 」 ン ド]90 包括的なシステムにと って重要な―― 164 雇用前職業訓練プログラム 150 市民的主体性 39 情報通信技術 (ITC) を組み込んだ介入策 23 コルチゾール 63, 83 社会情緒的スキル 4, 9, 74, 92, 97 職業教育 145 コンピュータ支援 (補助) 学習 22, 104, 127, 1年遅らせる 148 137 社会的投入 106 中東・北アフ リカ (MENA) における制度 コンピュータ・スキルのカ リキュラムへの組み 社会的流動性の促進 45 149 込み 155 ジャマイカ 職場訓練 145 コンピュータ利用の学習プログラム 22, 23, 学習者の準備を改善するプログラム 107 短期の―― 147 124, 127, 135, 137 学校長を改善する研修 139 部門別訓練プログラム 149 「期待をも って学ぼう」 108 参加率 145 ■さ行 私立学校の利用 166 賃金上昇 145 「サービス提供」 のアプローチ 194 男子の成績不良 43 職業訓練プログラム 145 中等レベルの教育機会の拡大 42 在宅テス ト 93 成功している―― 148, 150 認知的・社会情緒的な発達を改善するプ 最適化行動モデル 104 ログラム 20 女性教育 39 サハラ以南アフ リカ 上海 初等教育 カリキュラムへのコンピュータの導入 155 PISA(2012 年)164 義務化 78 教育予算 108 PISA ランキング 24 最終学年に関する調査 6 教員研修 22 教員 125 就学率 54 教員の能力 76 効果的な授業 164 修了率 41 市民主導の学習評価 192 難民児童 57 就学前教育 108 就学状況 54, 58, 75 無償化 59, 110, 166 就職が非公式制度に依存 43 就学前プログラム 64, 110 初等教育修了コーホー ト 117 初等前教育 108 就学率 シリア 56 私立学校 166 格差 4, 54 内戦 8, 57 非公式な徒弟制度 146 ジェ ンダーによる違い 58 支出との関連 26 私立学校 離農 155 監督 167 差別的な規範 42 授業料との関係 112 所得による差異 5, 54, 110 学習者にと っての利益 166 参加型アプローチ 90 私立学校教育 165 小学校 40, 55, 56, 77, 198 上昇 4 万人のための学習との整合性 165 シエラ レオネ 女子 111 リスク 166 教科書配布 11, 138, 175 初等教育 54 シンガポール ラジオによる緊急教育プログラム 137 身体障害のある子供たち 58 学習機会の付与 17 ジェ ンダー 中学校 54, 55 学習調整済指標 46 学習格差 69, 71 途上国 55 ふるい分け (選別) の試験 88, 127 学校修了率の差異 9, 56, 57 不平等 10 神経画像診断データ 83 教育達成度 112 習熟度が中ないし高水準 117 索引 209 神経可塑性 63 後れを取る理由 125 ゲーム形式のコンピュータ補助学習プログ 人生早期における有害なス トレス 83 「リスクのある」 117 ラム 135 身体障害のある子供たちの障壁 58 生徒 1 人当た り支出 162, 163, 172–174 都市部における教育の収益率 42 身体的な投入の不十分さ 83 生徒評価 中東・北アフ リカ(MENA) グローバルな基盤をもつ―― 18 職業教育制度 149 身体面で必須の投入 106 見返りが最大 93 中等後補習教育プログラム 115 人的資本 38 ――に基づく 成長 41 「青年女子雇用イニシアティ ブ」 [ネパール] 中途退学者向けの相当資格プログラム 115 ――を蓄積するのを支援することに焦点を 147 チリ 当てたスキル訓練 147 「青年のエンパワメ ント および生計」 プログラム Full School Day 195 収益率 42 [ウガンダ]147 SIMCE 89 成長を押し上げ 39 政府支出 学習に関する情報の親への提供 113 人的資本モデル 38 教育向け対 GDO 比 199 教育制度 195 5 歳未満児に対する 1 人当た り 108 教育制度改革 195 真の教育 27 初等・中等教育向けの生徒 1 人当た り年 教員研修機関の抵抗 90 間 163 高度成長の時期 42 数学のグローバルに比較可能な 「最低限の習 国家的なカ リキュラム改革 88 セカン ド・チャ ンスのための成人教育プログラ 熟」水準 7 コンピュータ利用 156 ム 70 スーダン 55 授業を改善するための改革の歴史 193, セカン ドチャ ンス・プログラム 113, 115 「学習が待ち遠しい」 137 195 「オープン基礎プログラム」 [イ ンド]115 小学校就学率 56 政府と教員組合の間の連続交渉による改 説明責任 90, 185 革 25 スキル 負うための枠組み 11 「全国学校業績評価システム (SNED)」 ――がスキルを生む 63, 74 学校 90 ――に関する指標 45 195 教員 25, 166, 193 読解力の得点の改善 195 学校運営―― 77 強化 190–192 離農 155 技術的―― 97 政府 194 基礎的―― 97, 155 不十分 15, 161, 184 教員 10, 22, 102, 125 低学習の罠 14, 15, 19 構築 145, 147 世話人の能力を構築するプログラム 108 ――から脱却するための 3つの参入点 仕事に関する―― 8 セン,アマルティ ア 36 201 社会情緒的 (非認知的)―― 4, 19, 44, 潜在能力アプローチ 36 低習熟度 117 64, 74, 92, 97, 115 センター・ベースのケア 109 低体重出生 83 修得 97 全米学力調査 (NAEP)18 成人の―― 9 デジタル技術 155 専門職開発研修 22 デジタル・スキル 137 生徒が健康な生産的で有意義な生活を送 るのに必要な―― 4 専門的能力開発プログラム (教員)123 テスト重視 16 相互作用 98 多次元性 97 早期介入 108 ドイツ デジタル―― 137, 156 早期児童介助開発機構 184 PISA(2000 年)24, 89 認証 147 早期児童介入策 108 ドーパ ミン 63 認知―― 97 早期児童開発プログラム 108 低い 70 途上国 早期児童教育 110 TVET プログラム 147 不足 72, 113, 145 労働市場で価値のある―― 38 早期における学習やスキルの格差 6, 74, 106 学習時間の損失 10, 76 早期における厳しい困窮 83 学校運営スキル 77 ストレス 83 早期における発達 83 学校教育拡大の過程 55 「すべては学習のため」 15 学校の質に関する親の認識 190 ソフトなスキル 9 教員不足 130 性格特性 97 5 才未満児 9, 108 正規の職場訓練 150 ■た行 識字・数的能力に関する国際評価 5 整合性 退学率 8 仕事関連の訓練への参加 145 教育関係者 3 低下 25, 59 就学率上昇 4, 55 教育制度 13 大規模に機能させる 160 小学生の学習 7 欠如 175 「大衆教育キャ ンペーン (CAMPE)」[バング 小学校修了率の貧富による格差 58 欠如の一因 161, 179 ラディ シュ]192 スキル不足 72 上海 164 幼児期に対する投入 108 第 2 次機械時代 27 私立学校教育 165 徒弟制度 147 第 4 次産業革命 27 生産可能フロンティ ア 19, 92 教職―― 128 「多角的学校評価に関する国家政策」 182 コー トジボワールにおけるプログラム 146 正式な徒弟制度 149 短期職業訓練プログラム 147 正式な―― 149 生殖への教育の影響 38 タンザニア 非公式な―― 146 成人のスキル 8 Uwezo 192 「どの子供も置き去り にされない」 政策 88–90 成績に基づかない奨学金 111 識字率 3, 70 ドミニカ共和国 成績ベースの奨学金 113 学校補助金 140, 173, 175 教育の収益率に関する情報を提供 111 成長会計分析 40 「教育で今こそ大きな成果を (BRN)」 生徒 1 人当た り支出 162 194, 201 「若者雇用プログラム」 147 生徒 市民主導の学習評価 191 ――のレベルに合わせて教える 22, 104, 能力に基づいたスキル認証 147 125, 127, 131 ■な行 ――をよ りうま く評価するよう教員を指導し 中学校就学率 54, 55 難民児童 57 た介入策 127 中国(→ 「上海」 も参照) 210 世界開発報告 2018 基礎教育を提供 197 る原則 125 紛争影響国 非認知スキル 9, 92, 97 教育制度の発展 183 ニカラグア 155 貧困 小学校就学率 56 学力(数学)5, 8 ――層向けの学校の質 175 政治が学習を脱線させる 183 条件付き現金給付プログラム 109 ――に関連するス トレス 107 未就学 8 人間行動のモデル 103, 104, 107, 123 ――に関連する厳しい環境 9 授業を改善するための行動の手引き 124 ――に関連する リスク 108 ベトナム 学校の投入や統治の有効性を改善する 学習不足 72 PISA 調査 4 136 言語や認知能力の発達の遅れ 74 学校の質の収斂 69 認知・言語・早期における識字の発達におけ 教育水準におよぼす影響 57 教育の質を維持 69 る社会経済的な格差 73 就学率上昇 59 好成績の要因 69 女子の教育達成率 58 公平性の促進 68 認知神経科学 19, 102 政府の教育支出の配分 173 初等および前期中等教育期における学習 認知スキル 97 リスク要因 83, 106 7 高次の―― 157 貧困家計 83 ベネズエラ 非―― 9, 92 子供の学習水準 7 高等教育制度 184 柔軟性 64 発達格差 74 ペリー幼稚園プログラム 40 認知能力の社会経済的な格差 10, 75 フィリピン ペルー 学校人頭補助金 175 MineduLAB 198 認知バイアス 137 教育改革 175 PISA の数学テス ト 70 教育制度 164, 165 改革に対する組合の反対 182 ネパール 54 教育への公的支出 199 学習成果改善の下支え 176 政府の教育支出 175 教育向けの公共投資 199 学習成果について最速の改善 4 「青年女子雇用イニシアティブ」 147 基礎的な数学スキル 8 学校補助金 38 子供の学習能力に関して親が抱く 主観 59 「教育のための企業協会」 193 脳 母国語教育 126 教員評価に対する組合の反対 182 画像化 102 民衆革命 199 公衆の支持を動員 25 機能の仕方 63 フィンラン ド 「子供 1 人にラ ップ ト ップ 1 台を」 23, 137, 柔軟性 63 教職は憧れの専門職 128 156 順応性 63 記録的な学習成果 164 識字率 5 発達 63, 109 公平性を伴う学習 13 職業訓練参加率 145 農業雇用 155 主要な教育改革 15 所得水準による学習格差 6 脳髄液 84 不平等 生徒 1 人当た り支出 162 学習危機が増幅させる 6 母国語教育 126 「能力に基づく スキル」のアプローチ 149 教育制度が悪化させる 161 ポーラン ド 能力別グループ分け 104, 125, 126, 197 公共教育支出 174 職業教育を遅らせる 148 インド 126 就学前教育 108 早期の分権化改革 193, 200 就学率 10 母国語授業 126, 127 ■は行 所得 39 保護者 バイアパム事件 185 富関連の―― 58 ――と学校のパー トナーシップ 25, 196 灰白質 84 不文律 184 ――への学習情報の提供 90, 190 パキスタン 部門別訓練プログラム 151 教育に関する政府の実績に対する認識 親の学校教育年数の子供の学習への影 ブラジル 87 響 39 Education Connection 135 教育の質に対する認識 89 学習の貧富間格差 73 Telecurso 137 教員との意思疎通 135 学力(数学,数的能力)5, 67 学習に関する情報の改善 190 学校活動への関与 197 貧困が教育水準に及ぼす影響 57 学校教育をうける若い女性の増加 39 学校の情報を提供 139 保護者への学習情報の提供 190 ガルパウ・アプラウズ (Galpão Aplauso) 保護者対教員関係 196 白質 84 プログラム 147 ――への建設的なアプローチ 196 「働きながら学ぶ」 149 教員経歴追跡の改革 [サンパウロ]184 「補習教育 (Remedial Education)」 106, 発育不全 28, 83, 84, 106–109 教員対親の関係 25 113, 117 脳構造と神経経路 109 国家的な評価の活用 88 ――による予防プログラム 114 発育不全率 11 「子供1人にラ ップ トップ1台を」 11, 136 介入策 113–115 東アジア 23 指標を用いた信頼できる教育目標 190 母性教育 44 15 歳に達する若者の PISA テス トの成績 ホルモン反応 63 発達障害 83 69 パリ宣言 200 情報の改善 190 バングラディ シュ 私立学校利用 166 ■ま行 MRI 診断データ 84, 109 大規模で正式な徒弟制度の修了生 149 「学びあるいは学習 (learning)」 →「学習」 を 教育部門の目的を政府予算に明示的に連 リオデジャネイ ロ市におけるテス ト 88 参照 動させる 161 プラタム (Pratham:独創的な評価を実施して マラウイ 就学年数 4 いる NGO)198, 192 親への情報提供 113 「大衆教育キャ ンペーン (CAMPE)」 192 学校への投入 77 プリンシパル = エージェ ン ト関係 137 中等前教育の非国家的提供 167 識字率 5, 67 プリンシパル = エージェ ン ト・モデル 104, 137 「万人のための学習」 15 初等教育無償化 59 ブルンジ 徒弟制度プログラム 149 反復的・適応的なアプローチ 197 教育サービスを改善 198 能力に基づく スキル認証 147 非公式徒弟制度 146 教科書の配送 25 母国語授業 126 1 人の学習者も置き去り に しないための鍵とな 索引 211 マレーシア TIMSS(1995 年)18 教育改革 199 技術系職業大学における授業 149 北アメ リ カ自由貿易協定 (NAFTA)39 5 歳未満児に対する 1 人当た り政府支出 識字率 193 基本的な数学スキル 8 108 包括的な改革 193 教員組合 182 授業時間の損失 76 「実験室 (ラボ) 」モデル 25, 195 教員採用 196 セカン ドチャ ンス・プログラム 115 未就学 教員への金銭的イ ンセンティ ブ 129, 130 貧富による学習成果の格差 69 ――率 8, 54 競争的教員採用プラン 179 分権化に向けた取り組み 181 ――を対象に した訓練プログラム 147 訓練への投資 145 民族性 57 原因 8 公立学校の学習改善 128 利害関係者 脆弱な環境 57 コミ ュニティ ・モニタ リング 140 ――の幅広い基盤の連合を構築 193 紛争影響国 56 失業の可能性 38 学習以外の目標 12 南アフリ カ (→ 「サハラ以南アフ リ カ」 も参照) 条件付き現金給付プログラム 107, 191 既得権益 179 学習 6 条件付き現金給付プログラムと統合された 教育制度 180 教育制度 (教員の自律性を高めるプログラ 育児支援プログラム 109 情報に関する失敗 107 ム) の輸入 13, 164 職場訓練への投資 145 低学習という均衡にはま り込む 179 教員組合 182 補習授業 115 連合の構築 193 私立学校 166 問題主導型の反復的な適応 197 「リスクのある」 生徒 117 「多角的学校評価に関する国家政策」 「リスボン戦略」 150 182 ■や行 離農 155 貧富による学習格差 73 有効なモニタ リングや評価にと っての障害 リベリア 母国語授業 126 183 訓練への投資 147 保護者と学校の強力なパー トナーシップ 私立学校 167 25, 196 容易に訓練可能な労働者の不足 9 生徒をよ りうまく評価するよう教員を指導し 南アフリ カ民主教職員連合 182 た介入策 127 幼児期向けの統合プログラム 111 南スーダン 労働市場 37 小学校就学率 56 幼少期 97, 106 ――で必要とされるスキル 9, 38, 70 ミレニアム開発目標 (MDG)24, 91, 200 ヨルダン川西岸・ガザ 学習危機の表出 145 国連パレスチナ難民救済事業機関 教育の収益率 42 (UNRWA)197 「無償義務教育を受ける子供の権利法」 194 無能な学校リーダーシップ 11 ■わ行 ■ら行 [ 「若者雇用プログラム」 ドミニカ共和国]147 ラーニング・コ ミュニティのアプローチ 116 メキシコ 「私には夢がある」奨学金 40 ラテンアメリ (・カ カ リブ) Oportunidades 191 OECD 諸国との PISA 平均点の乖離 70 SNTE(全国教育者労働組合)185 学習の改善 128 ■編著者 世界銀行 ■訳者 田村 勝省(たむら かつよし) 東京外国語大学および東京都立大学卒業. 旧東京銀行および関東学園大学教授を経て翻訳家. 世界開発報告 2018 教育と学び――可能性を実現するために 発 行 2018 年 12 月 25 日 編著者 世界銀行 訳 者 田村 勝省 発行者 平野 智政 発行所 株式会社 一灯舎 〒 170  –  0003 東京都豊島区駒込 3  –  –  25  1 –  Tel : 03  –  6686  –  7456 / Fax : 03  6693 –  1830 印刷所 朋栄ロジスティック 製本所 朋栄ロジスティック <検印省略>許可なしに転載,複製することを禁じます. 乱丁本,落丁本はお取り替えします. 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