世界銀行年次報告 2005 一年を振り返って 2005年度の活動概要 IBRD(単位:100万ドル)  2005年度  2004年度  2003年度  2002年度  2001年度 承認額  13,611  11,045  11,231  11,452  10,487     うち開発政策融資  4,264  4,453  4,187  7,384  3,937 プロジェクト数  118   87   99  96  91    うち開発政策融資  23   18   21  21  15 実行総額  9,722  10,109  11,921  11,256  11,784    うち開発政策融資  3,605  4,348  5,484  4,673  4,393 元本返済額(前納分を含む)  14,809  18,479  19,877  12,025  9,635 実行純額  (5,087)  (8,370)  (7,956)  (769)  2,149 融資残高  104,401  109,610  116,240  121,589  118,866 未実行額  33,744  32,128  33,031  36,353  37,934 業務活動による収益  1,320  1,696  3,021  1,924  1,144 利用可能資本および準備金  32,072  31,332  30,027  26,901  24,909 資本/貸出比率  31.4%  29.4%  26.6%  22.9%  21.5%  IDA(単位:100万ドル)  2005年度  2004年度  2003年度  2002年度  2001年度 承認額  8,696  9,035   7,282   8,068  6,764    うち開発政策融資  2,301  1,698   1,831   2,443  1,826 プロジェクト数  160   158    141    133    134    うち開発政策融資  32   23    24    23    15  実行総額  8,950   6,936  7,019   6,612  5,492    うち開発政策融資  2,666  1,685  2,795  2,172   1,280  元本返済額   1,620  1,398  1,369  1,063  997  実行純額  7,330  5,538  5,651  5,549  4,495 融資残高  120,907  115,743  106,877  96,372  86,572 未実行額(融資)  22,330  23,998   22,429  22,510  20,442 未実行額(グラント)  3,021   2,358  1,316  148    ̶  開発グラント供与額  2,035  1,697  1,016   154    ̶   本年次報告は、2004 年 7 月 1 日から 2005 年 6 月 30 日までの活動を対象に、 国際復興開発銀行 (IBRD)と国際開発協会 (IDA)の理事が、それぞれの 機関の規定に従って作成したものです。IBRD と IDA の総裁および理事会議 長を兼務するポール・ウォルフォウィッツは、本年次報告、運営予算、および 監査済み財務諸表を総務会に提出しました。 国際金融公社(IFC) 、多数国間投資保証機関 (MIGA) 、および投資紛争 解決国際センター(ICSID)の年次報告は別途刊行されます。 世界銀行年次報告 2005 目 次 CD‑ROM の内容 総裁兼理事会議長からのメッセージ  2 一年を振り返って 理事会  4 組織に関する情報 世界銀行グループ  8 地域別所得 1  世界の貧困との闘い  11 新規承認プロジェクト 2  地域別展望  27 融資データ 世界銀行の地域区分、現地事務所、および融資適格国  28 財務諸表   アフリカ地域  30   東アジア・大洋州地域  34   南アジア地域  38   ヨーロッパ・中央アジア地域  42   ラテンアメリカ・カリブ海地域  46   中東・北アフリカ地域  50 3  2005 年度の活動概要  54 注:財務諸表の全文(世銀幹部の所見と分析、および国際復興開発銀行 / 国際開発協会の監査済 み財務諸表)は本年次報告の添付 CD‑ROM に収められています。本年次報告の内容はインター ネットでも公開されています(www.worldbank.org)。 本書中のドル表記はすべて、特に断りがない限り、現在の米ドルを意味します。 世界銀行 年次報告書 2005 1 世界銀行総裁兼理事会議長からのメッセージ 本年次報告は、私のすばらしい前任者であるジェームズ・ウォ ルフェンソン前総裁の任期の最後の 1 年間に、世界銀行が成し 遂げた成果をまとめたものです。この類いまれな組織の指揮を任 されるということは、大変な重責を担うことであります。過去 10 年にわたって、世銀の強化に尽く してこられたウォルフェンソン前 総裁に心より感謝を申し上げます。 ウォルフェンソン前総裁は、その任期中に多く の業績を残されま したが、何よりも重要なのは、彼が道徳上の問題として、また世 銀の最大の使命と して、貧困削減に焦点を当て続けたことでしょう。 本年次報告には世銀の活動と財務状況がまとめられています。 各章の主な内容は次の通りです。 •  世界の貧困との闘い―持続可能な経済成長を促進し、貧困層 が必要としているサービスを提供するために世銀が展開し ている活動をご紹介します。ミレニアム開発目標に対する 世銀の取り組み、開発の有効性を高めるための組織改革や 国際的なイニシアティブ、および情報センターやウェブ サイトを通した借入国支援についても詳しくご説明して います。 •  地域別展望―世銀が途上国で展開している融資やその他の 活動を、国別プロジェクトに焦点を当てながら、世銀が定 理事会の承認を経て、総裁就任が正式に決定したポール・ウォルフォウィッツ  新総裁を歓迎する、ジェームズ・D・ウォルフェンソン前総裁。 義する 6 地域ごとにご紹介します。 2 世界銀行 年次報告書 2005 ポール・ウォルフォウィッツ世界銀行総裁 世銀総裁としての初の視察先であるアフリカで、若者たちとの会合に出席するウォルフォウィッツ総裁。 •  2005 年度の活動概要 ―世銀が 2005 年度に実施した開発 中所得国は急成長を遂げていますが、国内では今も数百万人が 知識の共有活動、低・中所得国に対する融資アプローチ、 極度の貧困にあえいでいます。世銀は国際開発金融機関として、 世銀の原資、地域別、テーマ別、およびセクター別 (環境プ 「国際共有資源」に対する国際社会の取り組み、具体的には持 ログラム、インフラプロジェクトなど)の融資の概要をご紹 続可能なエネルギーの開発や、地球規模での感染症対策といっ 介します。公共セクター、民間セクター、およびシビルソサエ た活動にも支援を提供しています。 ティ組織とのパートナーシップについても取り上げています。 こうした活動はいずれも、専門家集団である世銀職員の並は ずれた献身によって遂行されています。このような人々と共に働く •  巻末に添付されている CD‑ROM には、2005 年度の財務諸 機会を得たことを光栄に思っています。 表、組織に関する情報、地域別収入、2005 年度に承認され た新規プロジェクト、および世銀の融資に関するさまざま なデータが収められています。 世銀は開発パートナーと共に数々の成果を達成してきました。 しかし、課題はまだ山積しています。2006 年度の幕開けに、スコッ トランドのグレンイーグルスで開催された主要国首脳会議 (G‑8 サ ポール・ウォルフォウィッツ ミット)は、世界の開発、特にアフリカ諸国の開発が直面してい る課題に国際社会の注目を集めるものとなりました。サミッ ト参 加者は、これらの活動の多くで世銀が中心的な役割を果たして いることを再確認すると共に、世銀にさらなる行動を求めました。 開発活動を進展させるためには、開発優先項目のバランスに 注意を払う必要があります。何よりも重要なのは、最貧国の最も 貧しい人々のニーズに特別な注意を払うことです。 世銀はいわゆる 「中所得」国においても、引き続き重要な役割を果たしています。 世界銀行 年次報告書 2005 3 理事会 理事会は世銀業務全般の運営に責任を負っており、総務会か プの関与、人事戦略と職員の多様性、および途上国と移行国の ら委任された権限に基づいてその任務を遂行します。世銀協定 発言権と参加の拡大でした。現在は COGAM を中心に、理事 の規定により、24 名の理事のうち 5 名は 5 大出資国が任命し、 会の有効性を高めるための議論が行われています。 残りの理事はその他の加盟国から成る複数の理事選出母体 (2 理事と理事代理は定期的に加盟国を訪問し、援助の実施状況 年ごとに選出)により選任されます。 を視察しています。視察の際はプロジェク ト・マネージャー、受 理事会は総裁が提出する IBRD の融資・保証案件、および 益者、政府関係者のほか、シビルソサエティ組織、企業、開発 IDA の融資・保証案件を検討・承認するほか、世銀の業務全 パートナー、金融機関、現地事務所の世銀職員など、さまざま 般に対する方針も決定します。また、理事会は会計監査報告書、 な関係者との会談が行われます。2004 年 7 月の視察先はアンゴ 運営予算、世銀の活動や政策をまとめた年次報告 (本報告書) 、 ラ、南アフリカ、およびタンザニア 、2005 年 1 月の視察先はバン および理事会が総務会に提出する必要があると判断した諸事項 グラデシュ、ブータン、インド、ネパール、パキスタン、およびス を、年次総会の場で総務会に提出する任を負っています。理事 リランカ、2005 年 4 月の視察先はモロッコ、サウジアラビア 、お 会は世銀の業務方針や方向性を決定する上でも重要な役割を果 よびヨルダン川西岸・ガザ地区でした。 たしています。その際には世銀グループの役割に対する加盟国の 理事会は半年ごとに開催される 「世銀・IMF 合同開発委員会」 認識の変化や、世銀が業務を通して培ってきた経験が考慮され のアジェンダや課題文書の作成においても重要な役割を果たして るほか、事業評価局 (OED)が独立した立場から、世銀業務の います。 妥当性、持続可能性、効率性、および有効性に関する助言を提 2005 年度の開発委員会では、「グローバル・モニタリング・ 供します。OED は理事会に直接説明責任を負っている独立評価 レポート 2005 ― MDGs:コンセンサスから本格的実践へ(仮 部門であり、理事会が承認した政策、戦略、および業務プログ 題) 」 が議論され、昨年度に引き続き、ミレニアム開発目標 ラムに従って評価を実施します。 (MDGs)の達成状況が検証されました。2005 年度のモニタ 2005 年度、理事会はその職務を遂行するために、世銀本部 リング・レポートでは、サハラ以南のアフリカに多くのペー で定期的に会合を開きました。ここには理事会の公式会合であ ジが割かれました。また、援助の有効性と融資モダリティ、 る全体委員会だけでなく、非公式会合も含まれています。理事会 持続可能な債務水準を維持するための業務フレームワーク、 には監査委員会、予算委員会、開発効果委員会 (CODE)、統治・ 経済成長アジェンダに対する支援(投資環境や融資インフラ 管理委員会 (COGAM) 、および人事委員会の 5 つの常任委員会 の整備) 、開発促進手段としての貿易、世界経済の展望、お が設置されており、各理事は 1 つ、または複数の委員会に所属し よびブレトンウッズ機関の活動と意思決定に対する途上国と ています。理事会は常任委員会の支援を得ながら、世銀の政策 移行国の発言権と参加の強化に関する文書も検討されました と慣行を詳細に検討し、その監督責任を果たしています。2005 (添付 CD‑ROM の 「組織に関する情報」 の「開発委員会コミュ 年度の主な議題は、 サーベンス ・オクスリー法(米国の企業統治法) ニケ 2005 年度」参照) 。 への準拠、 世銀と IFC の予算改革、 採掘産業に対する世銀グルー 4 世界銀行 年次報告書 2005 左から右へ:(起立)Robert B. Holland III, Mr. Herwidayatmo, Pietro Veglio, Eckhard  Deutscher, Mathias Sinamenye, John Austin, Tom Scholar, Chander Mohan  Vasudev, Thorsteinn Ingolfsson, Sid Ahmed Dib, Yahya Abdullah M. Alyahya, Nuno  Mota Pinto, Otaviano Canuto, Pierre Duquesne, Paulo F. Gomes, Gino Alzetta,  Gobind Ganga, Alexey G. Kvasov, Luis Marti;(着席)Mahdy Ismail Aljazzaf, Zou  Jiayi, Jaime Quijandria, 大久保良夫, Ad Melkert 戦略的課題 告書も検討されました。貧困削減戦略融資は、貧困削減目標の 2005 年度に理事会が重点的に取り組んだ分野は次の通り 達成を支援するために世銀が提供している融資手段です。 です。 債務と債務の持続可能性 戦略フレームワーク 2005 年度の理事会では、低所得国が維持できる債務水準 2005 年度においても、理事会の活動は世銀の戦略フレーム を分析するためのフレームワークの基準値が話し合われたほか、 ワークの 2 つの柱である「良好な投資環境の促進」 と 「貧しい人々 このフレームワークと重債務貧困国イニシアティブの関係や、世 のエンパワーメント 」を中心としたものとなりました。この 2 つの 銀と IMF が共同で分析を実施する際のモダリティが議論されま 柱の重要性は、これまでにも多く の中期戦略文書で指摘されてき した。 ましたが、2005 年度の理事会で改めて、その重要性が確認され ました。理事会は世銀がこのフレームワークに関する努力をさら 国別プログラム に拡大すること、そのための施策として、ミレニアム開発目標に 世銀と加盟国のパートナーシップの基本となっているのは、国 明記された開発課題に対処するためのツールと手続きを強化する 別援助戦略 (CAS)と国別パートナーシップ戦略です。これらの ことを強く求めました。理事会ではドナーの業務方針、手続き、 戦略は低所得国の場合は PRSP、中所得国の場合は国家開発戦 および慣行の調和化、低所得国 (重債務貧困国や切迫した状況 略をもとに策定されており、世銀グループはこれらの戦略をベー にある低所得国を含む)のニーズへの対応、および中所得国と スに、各国で業務を展開しています。理事会は 2005 年度も引き の連携の強化に関する進捗報告書も多数検討されました。 続き、すべての CAS に結果測定のための詳細なフレームワーク を組み込むことを奨励しました。中間指標を設定し、借入国、世 貧困削減 銀、および開発パー トナーが合意した中間目標の達成状況を測定 ・ ミレニア ム開発目標 (MDGs)に関する活動は、その達成期限 モニタリングすることはそのひとつです。理事会は CAS に求める である 2015 年が近づくにつれて、ますます切迫したものとなって ものとして、 焦点を絞ること、選択的な援助を行うこと、 およびパー います。理事会は 2005 年度も引き続き、世銀の使命である貧困 トナーシップを活用することを挙げました。ドナー援助の調和化 削減の進捗状況と、MDGs に対する世銀の取り組みを慎重に監 と整合性の向上に関する取り組みを、結果重視アジェンダと連動 督しました。理事会は借入国が策定した貧困削減戦略に関する させることの重要性も指摘されました。国別プログラムを効果的 文書も議論しました。これらの戦略は借入国自身が作成する貧 に推進するためには、地域・準地域レベルの活動を平行して行う 困削減戦略文書 (PRSP)にまとめられています。2005 年度の 必要があることも確認されました。2005 年度の理事会では、36 理事会では、8 件の PRSP と 2 件の暫定 PRSP、20 件の PRSP (うち 10 件は結果重視型 CAS)が検討されました。 件の CAS 進捗状況報告書が検討され、改良の余地のある分野が特定され また、理事会は 2005 年度においても、アジアの津波被害とイラ ました。このほか、貧困削減戦略融資の有効性に関する調査報 クの暫定プログラムに対する世銀の活動をモニタリングしました。 世界銀行 年次報告書 2005 5 出向プログラム 査閲パネル 理事会は世銀と IMF の意思決定に対する途上国と移行国の 2005 年、 査閲パネルは 3 件の新しい調査請求を受理しました。 発言権と参加を拡大するために、複数のキャパシティ ・ビルディ 調査請求の対象となった世銀プロジェク トは、パキスタンの 「全 ング活動を行うことを提言しました。そのひとつが、対象国から 国排水プログラム・プロジェク ト」、ブルンジの「公共工事・雇用 世銀職員として出向させる 5 カ年プログラムです。 創出プロジェクト」 、およびカンボジアの 「森林利権管理・規制 すでに 16 名の職員が半年の任期で世銀の業務部門に出向し パイロッ ト・プロジェク ト」です。この結果、査閲パネルの設置 ています。このプログラムの目的は、 主に世銀の手続き、サービス、 からこれまでの間に提出された調査請求は 36 件となりました。 およびプロジェク トの分野で、理事とその理事が代表している国 このうちの 11 件はアフリカ地域、11 件はラテンアメリカ・カリブ 民のコミュニケーションと知識共有を促進することです。 海地域、10 件は南アジア地域、および 4 件は東アジア・大洋 州地域から提出されたものです。正式に受理された 36 件の請 監督責任と受託者責任 求のうち、査閲パネルは 18 件について調査の実施を提言しまし 理事会は世銀の株主に代わって、監督責任と受託者責任を果 た。このうちの 6 件はパネルの活動方針に修正条項が加えられ たしています。その一部は監査委員会を通じて遂行されています。 た 1999 年 4 月より前に承認されたもの、12 件はそれ以降に承 2003 年、理事会は監査に関するベスト プラクティスを取り入れる 認されたものです。現在は 4 件の調査が行われています (2005 ために、監査委員会の委任事項を変更しました。その後も組織 年 5 月現在) 。 の監視、ガバナンス、および管理に関する新しい標準を取り入れ 調査請求、請求に対する執行部の回答、パネルの提言、パ る努力が続けられています。監査委員会は財務方針や管理問題 ネルの調査報告書、および 2005 年度に調査の対象となったプ に関する理事会の意思決定を支援するために、財務管理やその ロジェクトに対する執行部の提言は世銀のウェブサイト (www. 他のガバナンス問題に関する助言を提供しています。内部監査局 worldbank.org/inspectionpanel)で公開されています。 と公正管理局は、非公開の幹部会議を通して、監査委員会にリ スクや管理に関する情報を提供しています。 新総裁の選出 2005 年 3月31日、 理事会は全会一致でポール ・ウォルフォウィッ 運営予算 ツを世銀の第 10 代総裁に選出しました。ウォルフォウィッツは 2005 年度の一般管理費は 20 億 1130 万ドル(返済金額を除 2005 年 6 月 1 日に世銀総裁に就任しました。 く)でした。このうちの 1 億 7270 万ドルは開発グラント・ファシ リティに関するものでした。一般管理費の純額は 15 億 220 万ド ル、前年度予算からの実質増加率は 2%、名目増加率は 5% で した。2005 年 6 月、理事会は 2006 年度の運営予算として、21 億 280 万ドル(返済金額を除く)を承認しました。 6 世界銀行 年次報告書 2005 理事、理事代理、および委員会委員 2005 年 6 月 30 日  理 事  理事代理  国 名 任命理事      (空席)  Robert B. Holland, III  米国 大久保 良夫 c, d, g   大矢 俊雄  日本 Eckhard Deutscher e (C)  Walter Hermannh  ドイツ Tom Scholar b (VC)    Caroline Sergeant  英国 Pierre Duquesnea (C)  Anthony Requin  フランス       選任理事      a, d (VC)  Gino Alzetta    Melih Nemli  *  ベルギー、チェコ共和国、ハンガリー、カザフスタン、 オーストリア、ベラルーシ、   ベルギー  トルコ  ルクセンブルグ、スロバキア共和国、スロベニア、トルコ Luis Martia, d  Jorge Familiarh  コスタリカ、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、メキシコ、ニカラグア、    スペイン  メキシコ  スペイン、ベネズエラ *   (・ボリバル共和国) Ad Melkertc, e, i (C)  Tamara Solyanykh   アルメニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ブルガリア、 *  クロアチア、キプロス、グルジア、   オランダ  ウクライナ  イスラエル、マケドニア(旧ユーゴスラビア共和国)   、モルドバ、オランダ、ルーマニア、*  ウクライナ Marcel Massed, e  Gobind Gangah   アンティグア・バーブーダ、 * バルバドス、ベリーズ、カナダ、ドミニカ国、グレナダ、 * バハマ、     カナダ  ガイアナ  、アイルランド、ジャマイカ、 ガイアナ    * セントクリストファー・ネーヴィス、セントルシア、          セントビンセントおよびグレナディーン諸島 Otaviano Canutoa (VC), b, i  Jeremias N. Paul, Jr.  *    ブラジル、コロンビア、ドミニカ共和国、エクアドル、ハイチ、パナマ、フィリピン、スリナム、 ブラジル  フィリピン  トリニダード・トバゴ Biagio Bossonea, b  Nuno Mota Pinto  *  ポルトガル、サンマリノ、 アルバニア、ギリシャ、イタリア、マルタ、 *  東ティモール  イタリア  ポルトガル John Austinb, e, i  Terry O’Brienh (C)  オーストラリア、カンボジア、キリバス、韓国(大韓民国)、マーシャル諸島、ミクロネシア     ニュージーランド  オーストラリア  (ミクロネシア連邦)、モンゴル、ニュージーランド、パラオ、    パプアニューギニア、サモア、          ソロモン諸島、バヌアツ Mathias Sinamenyec, d  Mulu Ketsela  アンゴラ、ボツワナ、ブルンジ、エリトリア、エチオピア、ガンビア、ケニア、レソト、リベリア、   ブルンジ  エチオピア  *  ナイジェリア、セーシェル、 マラウイ、モザンビーク、ナミビア、      *  シエラレオネ、南アフリカ、       スーダン、スワジランド、タンザニア、ウガンダ、ザンビア、ジンバブエ Chander Mohan Vasudevc (C)  Akbar Ali Khanh  バングラデシュ、ブータン、インド、スリランカ  インド  バングラデシュ Thorsteinn Ingolfssonb, e  Svein Aassh  * フィンランド、アイスランド、ラトビア、リトアニア、 デンマーク、エストニア、 *  ノルウェー、スウェーデン  アイスランド  ノルウェー Sid Ahmed Dibc, e  Shuja Shah  アフガニスタン、アルジェリア、ガーナ、イラン 、モロッコ、パキスタン、チュニジア  (・イスラム共和国) アルジェリア  パキスタン Pietro Veglioc (VC), d  Jakub Karnowski  アゼルバイジャン、キルギス共和国、ポーランド、セルビア・モンテネグロ、スイス 、  スイス  ポーランド  *  ウズベキスタン  タジキスタン、トルクメニスタン、 Mahdy Ismail Aljazzaf b (C), g  Mohamed Kamel Amr  バーレーン、*  エジプト(・アラブ共和国) 、イラク、ヨルダン、クウェート、レバノン、リビア、  クウェート  エジプト(・アラブ共和国)   モルディブ、オマーン、カタール、 *  シリア・アラブ共和国、アラブ首長国連邦、イエメン(共和国)  Zou Jiayia, b  Yang Jinlinh  中国  中国  中国 Yahya Abdullah M. Alyahya  Abdulrahman M. Almofadhi  サウジアラビア  サウジアラビア  サウジアラビア  Alexey G. Kvasovd (C)  Eugene Miagkovh  ロシア連邦  ロシア連邦  ロシア連邦 Herwidayatmoa, e  Nursiah Arshadh  *  フィジー、インドネシア、ラオス人民民主共和国、 ブルネイ・ダルサラーム、  マレーシア、     インドネシア  マレーシア  ミャンマー、ネパール、シンガポール、タイ、トンガ、ベトナム  Jaime Quijandriac, d  Alieto Guadagni  アルゼンチン、ボリビア、チリ、パラグアイ、ペルー、ウルグアイ *    ペルー  アルゼンチン Paulo F. Gomesb, e (VC), f  Louis Philippe Ong Sengh  ベナン、ブルキナファソ、カメルーン、カーボヴェルデ、中央アフリカ共和国、チャド、コモロ、     ギニアビサウ  モーリシャス  コンゴ(民主共和国)、コンゴ(共和国)、コートジボワール、ジブチ、赤道ギニア、ガボン、            ギニア、ギニアビサウ、マダガスカル、マリ、モーリタニア、モーリシャス、ニジェール、            ルワンダ、サントメ・プリンシペ、セネガル、トーゴ *IBRD のみに加盟。      委員会 a.  監査委員会 f. 年金管理委員会 C= 委員長 b.  予算委員会 g.  年金財政 VC= 副委員長 開発効果委員会(CODE) c.  h.  CODE 小委員会(2005 年 1 月 12 日発足) d.  人事委員会 i.  倫理委員会 統治管理委員会(COGAM) e.  世界銀行 年次報告書 2005 7 世界銀行グループ 現在、世界銀行グループは相互に密接な関係にある 5 つの機関で構成され ています。世銀はグループ機関と協力しながら、世界各国の開発プロジェク ト を支援しています。グループ間の協力の例としては、合同の国別援助戦略、投 資促進イニシアティブ、外国投資助言サービス (FIAS)、大規模なインフラ ・ プロジェク トに対する保証プログラム、民間セクター開発における連携、合同 の零細・中小企業開発プログラム、HIV/ エイズの啓蒙・予防活動などがあり ます (IBRD/IDA 以外の世銀グループ機関の年次報告は、 www.ifc.org、www. miga.org、および www.worldbank.org/icsid をご覧ください) 。 国際復興開発銀行(IBRD)  IBRD は中所得国および  信用力のある貧困 体質を示す指標となり、IBRD が資本市場か 1945 年設立 184 加盟国 国の貧困を削減するために、融資、保証、 ら低利で資金を調達し、借入国に緩やかな 累積融資額:4074 億ドル リスク管理サービス、および分析・助言サー 条件で融資を行うことを可能にしています。 2005 年度融資額: 37 カ国の 118 件の新規プロジェ  ビスなどの非融資業務を提供し、これらの IBRD の理事会は 184 の加盟国を代表する     クトに対して 136 億ドル 国の持続可能な開発を促進しています。過 24 名の理事で構成されています。このうち 去の融資から得られた利益は、開発活動の 5 名は任命理事、19 名は選任理事です。 原資となるだけでなく、IBRD の健全な財務 IBRD の主要財務指標 2001‒2005 年度  (単位:100 万ドル)   2001  2002  2003  2004  2005 業務活動による収益  1,144  1,924  3,021   1,696  1,320 融資残高  118,866  121,589  116,240  109,610    104,401 総資産  222,748  227,454  230,062  228,910    222,008 自己資本  29,570  32,313  37,918     35,463   38,588 国際開発協会(IDA) 世銀は IDA 加盟国からの拠出金をもとに、 では住民のほとんどが 1 日 2 ドル未満で生活 81 の最貧国(総人口 26 億人)に年間約 80‒ しています。IDA の資金は借入国が推進す 1960 年設立 165 加盟国 90 億ドルの譲許的融資を行っています。こ る貧困削減戦略の主要政策分野で用いられ 累積承認額:1610 億ドル * れらの国々は市場の条件で借入を行うこと ています(生産性の向上、責任あるガバナン 2005 年度承認額: 66 カ国の 160 件の新規プロジェ      クトに対して 87 億ドル はほとんど、もしくはまったくできないた ス、健全な民間投資環境の構築、貧困層が教 め、無利子で提供される IDA の融資がきわ 育や医療を受ける機会の拡大など) 。 * 融資、グラント、および保証の合計 めて大きな役割を果たします。多くの最貧国 IDA の主要財務指標 2001‒2005 年度  (単位:100 万ドル)   2001  2002  2003  2004  2005 業務活動による収益(損失)  866  692  108  (1,684)  (986) 開発融資残高  86,572  96,372  106,877  115,743    120,907 開発原資合計  101,134   109,495  119,454  127,930   130,378 8 世界銀行 年次報告書 2005 国際金融公社(IFC) IFC は途上国の経済発展を民間セクターの 力や助言サービスが提供されます。IFC の 1956 年設立 178 加盟国 側面から支援しています。IFC は政府保証 支援対象となるのは、資本の確保が困難な 承認済ポートフォリオ:246 億ドル  を取りつけることなく、民間パートナーと 地域・国の企業です。IFC は民間投資家が     (協調融資分の 53 億ドルを含む) 協力して、途上国の持続可能な民間企業に リスクが高いと考える市場に投資し、現地 2005 年度承認額: 67 カ国の 236 件のプロジェクト  投資を行っています。これらの企業には投 企業にコーポレート・ガバナンスや環境・     に対して 54 億ドル 融資、長期融資、ストラクチャード・ファ 社会分野の専門知識を提供することで、現 イナンス、リスク管理商品のほか、技術協 地プロジェクトの投資価値を高めています。 IFCの主要財務指標 2001‒2005年度 (単位:100   万ドル) * 一部を除く  2001  2002  2003  2004  2005 営業収益 a  241  161  528  982  1,953 純益  345  215  487  993  2,015 流動資産(関連デリバティブを除く)  13,258  14,532  12,952  13,055  13,325 融資および出資  8,696  7,963  9,377  10,279  11,489 借入金(支払済・残高)  15,457  16,581  17,315  16,254  15,359 資本合計  6,095  6,304  6,789  7,782  9,798 平均資産利益率(%)  0.6  0.6  1.8  3.1  5.4 平均自己資本利益率(%)  4.1  2.7  8.2  13.7  22.6 向こう 3 年間の予想現金需要の純額に占める  現金・流動投資の割合(%)    101  109  107  116  142 負債比率  2.6:1  2.8:1  2.6:1  2.3:1  1.8:1 株主資本比率(%)  48  49  45  48  50 実行済ポートフォリオに対する貸倒引当金の割合(%)  16.0  21.9  18.2  14.0  9.9 a. 技術協力と助言サービスの経費を控除した後の利益 注: 詳細は IFC(www.ifc.org)、MIGA(www.miga.org)、および ICSID 年次報告をご覧ください。 世界銀行 年次報告書 2005 9 多数国間投資保証機関(MIGA) 外国直接投資は、途上国の経済成長に大き クから投資家を保護しています。途上国に な役割を果たしていますが、投資家が途上 対しては、外国投資を誘致・確保するため 1988 年設立 165 加盟国 国の投資環境や政治リスクに不安を感じて の助言サービスを提供しているほか、投資 累積保証額 *:147 億ドル いる場合は、投資が十分に行われない可能 紛争を調停することで、途上国が現在の投 2005 年度保証額:12 億ドル  性があります。MIGA はこうした懸念に対 資を確保し、投資障壁となる可能性のある * 協調保険引受プログラムを通して保証した金額を含む。 処するために、投資家に政治リスク保険(保 問題を排除できるよう支援しています。諸 証)を提供し、収用、通貨の兌換停止、契 外国の企業に投資情報を提供することも 約不履行、戦争、内乱といった非商業リス MIGA の役割のひとつです。  MIGA の主要財務指標 2001‒2005 年度 (単位:100   万ドル) * 一部を除く  2001  2002  2003  2004  2005 業務活動による収益  49.3  48.4  38.1  25.6  24.1 経営資本 a  653  702  766  811  830   業務収益 / 経営資本(%) 7.5  6.9  5.0  3.2  2.9 ネット・エクスポージャ  3,157  3,202  3,204  3,259  3,138   経営資本 / ネット・エクスポージャ(%) 20.7  21.9  23.9  24.9  26.4 トップ 5 のエクスポージャ b  1,002  1,006  912  923  834   トップ 5 のエクスポージャ / ネット・エクスポージャ(%) 31.7  31.4  28.5  28.3  26.6 IDA 融資適格国におけるネット・エクスポージャ  934  1,113  1,255  1,139  1,341 IDA 融資適格国におけるネット・エクスポージャ /  ネット・エクスポージャ(%)   29.6  34.8  39.2  34.9  42.7 a. 自己資本と保険ポートフォリオの引当金の純額の合計  b. 上位5カ国のネット・エクスポージャの合計 投資紛争解決国際センター(ICSID) ICSID は国際投資紛争の調停と仲裁を行う ます。国際投資協定の多くは、ICSID を仲 場を提供することで、外国投資の促進に貢 裁機関に指定しています。ICSID は仲裁法 1966 年設立 142 加盟国 献しています。ICSID の存在は、国家と外 や外国投資法に関する研究や関連文献の出 合計申し立て案件:184 件 国投資家が信頼関係を育む一助となってい 版も行っています。 2005 年度申し立て案件:25 件 世銀グループと採掘産業  世銀、IFC、および MIGA は、独立調査「2004 年採掘産業レビュー でいます。この諮問グループは、広範な利害集団を代表する専門家 (仮題)」の結果をもとに提言され、理事会で承認されたプログラム が、採掘産業が直面している主な課題を話し合い、それぞれの経験 の実行に着手しました。これらのプログラムは、世銀グループが支 をもとに、助言を提供する場となる予定です。また、持続可能性を 援する石油、ガス、および採鉱プロジェクトのガバナンスを強化し、 実現するために、世銀グループは天然ガス、再生可能エネルギー、 地域社会の参加を促進し、収益管理を改善することを目的としたも およびエネルギー効率の改善に関するプロジェクトへの投資も拡大 のです。世銀グループは採掘産業諮問グループの設置にも取り組ん する予定です。 注: 詳細は IFC(www.ifc.org)、MIGA(www.miga.org)、および ICSID 年次報告をご覧ください。 10 世界銀行 年次報告書 2005 世界の貧困との闘い 1 開発のビジョン  開発アジェンダに対する支援を強化するために、世銀は 2 つ 世銀の使命は貧困のない世界を実現することです。各国首脳 の柱からなる貧困削減戦略を策定しました。ひとつは、投資、 と開発パートナーは今年、自らが掲げた開発ビジョンの進捗状 雇用、および持続可能な成長のための環境作り、もうひとつは、 況を検証しました。その結果、思い切った行動を起こさない以 貧しい人々への投資とエンパワーメントによる開発への参加促進 上 2000 年に国際社会が採択したミレニアム開発目標 (MDGs) です。この戦略の基礎にあるのは、長期的な成長と人的開発に を達成することはできないという結論に至りました。国際社会の は密接な関係にあるという認識です。人的開発なくして、持続 注目を世界の貧困層に集めるために、各国首脳と開発パートナー 可能な経済成長はありません。また、社会が繁栄するためには、 は 2005 年を開発年とすることを宣言しました。   健全な経済環境を構築することが不可欠です。 国際社会では、MDGs の達成が十分なスピードで進まない場 合、その影響は即座に、しかも悲劇的な形で現れることが理解 投資、雇用、持続可能な成長のための環境作り されつつあります。途上国では毎週、1 万人の女性が出産によっ 経済成長は途上国の貧困を削減し、人々の生活水準を高める て命を落とし、20 万人の子供たちが疾病によって 5 歳の誕生日 ための強力かつ不可欠の手段です。MDGs を達成するためには、 を迎える前に死亡しています。エイズ関連の疾病で死亡する人は 途上国の経済成長を加速させなければなりません。   1 日に 8000 人を超え、アフリカ地域だけでも、今年は 200 万人 力強い成長を実現するためには、投資の促進、雇用の創出、 がエイズで死亡すると見られています。途上国全体で見ると、未 および生産性の向上を促す経済環境を整備する必要があります。 就学児童の数は実に 1 億 1500 万人に上ります。   公平な成長を促す環境を構築するために、世銀は経済分析調査 何億人もの人々を貧困、疾病、そして読み書きのできない状 を実施し、途上国のさまざまなプログラムに融資と政策助言を提 態から解放できるかどうかは、開発の成否にかかっています。途 供しています(第 3 章参照)。これらのプログラムは、経済と財 上国の開発は、国際社会が長期的な安全保障と平和を手に入れ 政の安定、投資環境の改善と民間セクター開発、ガバナンスの るための条件でもあります。 改善と効果的な汚職対策、インフラの開発と維持、環境の持続 MDGs を達成するための努力をさらに強化する必要があるの 可能性の維持、および貿易の促進と世界の財市場へのアクセス はそのためです。 「第 2 回グローバル・モニタリング ・レポート」は、 を促進するものとなっています。   これが急務であることを指摘すると共に、これまでの進捗を検証 し、MDGs に向けた行動に弾みをつけるための施策を提言して 投資環境の改善と民間セクター開発 います (23 頁参照) 。世銀は借入国に専門知識と融資を提供し、 世銀の投資環境調査は、借入国に貴重な情報とツールを提供 借入国が定めた貧困削減戦略を支援することで、この活動の中 するものです。2005 年度に 2 年目を迎えた「事業環境分析」プ 心的なパートナーとなっています。   ロジェクトは、145 カ国の事業規制を客観的で数量化された指標 12 世界銀行 年次報告書 2005 を通して概観するものです。これらの指標は 30 を超える途上国 ています。たとえば、世銀は投資環境調査によって明らかになっ で利用されており、各国の政府が自国の投資環境を近隣諸国の た投資環境とインフラに関する問題をもとに、エルサルバドルの それと比較したり、自国のパフォーマンスを世界のベストプラク 成長開発政策融資を設計しました。カンボジアの衣料産業は、 ティスと比較したりするためのベンチマーク となっています。この 世銀と IMF の共同プロジェクトである「外国投資助言サービス」 プロジェク トの最新の報告書である 「ビジネス環境の現状 2005」 を利用して、社会的責任のあるブランドイメージの構築と、国際 では、事業障壁に関する指標に不動産登記と投資家の保護が追 競争力の向上に取り組んでいます。 加されました。この報告書は、改革の優先分野を特定する際に も役立っています。   グッドガバナンスの促進と汚職対策 新しい 「投資環境調査データベース」には、58 カ国の 3 万社 研究の結果、開放的で透明な政府を持つ国の方が、経済成長 のデータが収められており、改革を検討している政府にさらなる が早い速度で進む傾向のあることが分かっています。このため、 指標を提供するものとなっています。2005 年、世銀と IFC は 世銀はすべての国別援助戦略にガバナンスに関する活動を組み 10 カ国を対象に、企業ガバナンス調査を実施しました。 この結果、 込むことを義務づけています (第 3 章参照) 。 これまでに実施された分析調査は合計 48 件となりました。 「世界 2005 年度はガバナンス分野のプロジェク トに対して、合計 26 開発報告 2005:投資環境の改善」は、これらの調査結果をもと 億ドルの融資が行われました。これは新規融資承認総額の 12% に、途上国開発における投資環境改善の重要性を特に指摘して に相当します (第 3 章参照) 。これらの資金は財政管理、調達、 います。 サービスの提供、税務政策、関税、および法律・司法分野の改 多く の途上国では、分析調査の結果を具体的な行動につなげる 革に利用されています (www1.worldbank.org/publicsector/index. ために、世銀グループの助言サービスと融資が利用されています。 cfm 参照) 。 2005 年度は民間セクター開発分野のプロジェク トが 109 件(総 健全な金融システム:世銀のマネーロンダリング防止・テロ資金 額 38 億ドル超)承認され、23 カ国で投資環境調査が実施され 対策活動の焦点は、途上国における健全な金融システム構築の ました。現在は 40 を超える国々で、投資環境調査が改革の指 取り組みを支援することです。世銀は複数国の政府からなる 「金 針として、あるいは世銀プロジェク トを支援するために利用され 融活動タスクフォース」、同様の取り組みを行っている地域組織、 ミレニアム開発目標 1.  極度の貧困と飢餓の撲滅 5.  妊産婦の健康の改善   2015 年までに極度の貧困状態にある人々と飢餓に苦しむ人々   2015 年までに妊産婦の死亡率を 4 分の 3 削減する。 の割合を半減させる。 6.  HIV/ エイズ、マラリアなどの疾病の蔓延防止 2.  初等教育の完全普及   2015 年までに HIV/ エイズ、マラリアなどの深刻な疾病の拡大   2015 年までにすべての子供が初等教育を修了できるようにする。   を食い止め、減少に転じさせる。 3.  ジェンダーの平等と女性のエンパワーメント 7.  持続可能な環境作り   2005 年までに初等 ・中等教育におけるジェンダー格差を解消し、   2015 年までに安全な飲料水への安定したアクセスを持たない 2015 年までにすべての教育現場におけるジェンダー格差を解 人々の割合を半減させる。 消する。 8.  グローバルな開発パートナーシップの構築 4.  子供の死亡率の削減   ルールに基づいた、開放的で公正かつ予測可能な貿易・金融制   2015 年までに 5 歳未満の子供の死亡率を 3 分の 2 削減する。 度を構築し、後発開発途上国の特別なニーズに取り組む。 第1章:世界の貧困との闘い 13 および国連と協力して、途上国政府が金融セクターの透明性を高 要が記されています。組織風紀局は 1999 年からこれまでの間 め、汚職を摘発するために必要な政策を導入できるよう支援して に、2000 件を超える申し立てを調査しました。世銀はこれらの います。2005 年度、世銀はこの分野に対する援助を 2 倍以上に 調査結果をもとに、2005 年度末までに 300 を超える企業と個 引き上げ、規制担当者に研修の機会と、専門家による長期的な 人に対して、世銀プロジェク トへの関与を禁止する措置を講じま 助言サービスを提供しました。また、官民セクターの代表者が国 した。制裁措置に関する詳細は www.worldbank.org/procurement 境を越えて意見を交換する場を提供したほか、国際的なベスト プ で公 開されています。 世 銀は 24 時 間 対 応の緊 急電 話 番 号 ラクティスの導入度を国別に評価し、リファレンスガイドと実用 (1‑800‑831‑0463) 、E メール(investigations̲hotline@worldbank. 的なマニュアルを作成しました。   org)、および世銀職員と関係諸機関を通して、不正や汚職に関 キャパシティ・ビルディングと分析 活 動:世界銀 行研究 所 する調査の申し立てを受け付けています。 (WBI)は、借入国の政策決定者がガバナンスを強化し、汚職 を防止するための知識、技能、および能力を習得できるよう支援 しています。WBI は世銀の融資プログラムやパートナー組織と連 携して、参加型の学習プログラムを実施し、現地の政府指導者 が自国のニーズに合った改革計画を策定できるよう支援していま す。2005 年度、WBI はベナン、グアテマラ、ギニア 、シエラレ オネ、およびザンビアのシビルソサエティ組織に対して、ガバナン ス・汚職対策評価を実施するための支援を提供しました。   WBI と世銀の開発経済グループは、200 を超える国・地域の ガバナンスを主要な側面から評価した 「世界ガバナンス指標」を 発表しています。これらの指標は政策決定者、ドナー機関、お よび社会科学分野の研究者の間で広 く利用されています (第 3 章 「能力開発」参照) (www.worldbank.org/wbi/governance 参照)。 法律と司法: グッドガバナンスを促進し、汚職を撲滅するため には、裁判所やその他の司法機関を整備し、経済活動と社会活 動がルールに則って行われるようにする必要があります。1991 年 以来、世銀は 140 カ国の 1500 件を超える法律・司法活動に資 金を提供しました。このうちの 17 件は 2005 年度に実施された 独立司法プロジェク トです。 健全な組織:世銀の業務や借入国における不正・汚職対策 に対する世銀の投資は、国際機関の中でも群を抜いています。 2001 年には組織公正管理局が設置され、世銀や世銀が支援す るプロジェク トに対して提出された不正や汚職の申し立てを調査 するようになりました。同部門は 2005 年 2 月に第 1 回の 「世銀 ・ IMF プロジェク トにおける職権乱用、不正、および汚職の調査 と制裁に関する年次報告 (仮題) 」を発行しました。この報告書 には 2004 年度の活動の詳細と、1999‒2004 年度の活動の概 14 世界銀行 年次報告書 2005 インフラ支援 銀はこの計画に従って、高いインフラ需要が存在する途上国で 世銀はエネルギー、 運輸、上下水道、都市サービス、通信、石油、 国別調査活動を実施すると共に、世銀の融資手段と助言アプ ガス、および鉱業の分野で、さまざまなインフラサービスを支援 ローチの改善に努めています。インフラ分野に対する融資は、 しています。また、政策対話、制度構築、改革支援、および物 2003 年度は 54 億ドル、2004 年度は融資承認総額の約 3 分の 的投資を通して、途上国がインフラサービスを効果的に提供でき 1 に相当する 65 億ドル、2005 年度はやはり融資承認総額の 3 るよう支援しています。世銀は開発パートナーや民間セクターか 分の 1 に相当する 73 億ドルでした。   ら提供された資金やその他の援助を、途上国が効果的に利用す 2005 年度の理事会では、前年度よりも 7% 多い、77 件のイン るための触媒の役割も果たしています。   フラ・プロジェク トが承認されました。承認総額に占める割合が 2005 年度は「インフラ行動計画」が大きく進展しました。世 最も多かったのは運輸プロジェク トで、全体の約 43% を占めまし た。次いでエネルギー・鉱業、上下水道、および情報通信技術 でした。 2005 年度は地域別の経済・セクター調査 (ESW)とインフラ 分析調査が 188 件実施されました。世銀は調査手法を大幅に変 更し、インフラとその他のセクターの関連性に重点を置くように なりました。この種の調査の例としては、コロンビアとインドネシ アで実施された調査、アジア開発銀行と国際協力銀行が共同で 実施した東アジアのインフラに関する大規模調査があります。同 様の調査はアフリカ、ヨーロッパ・中央アジア 、およびラテンアメ リカ・カリブ海地域でも実施される予定です。   世銀は新しい分野にも相当額の投資を行っています。世銀と IFC は、 「地方自治体基金合同パイロッ ト・プログラム」を通し て、 借入国の地方自治体に効果的に関与する機会を探っています。 また、世銀は国際通貨基金 (IMF)と連携して、借入国のイン フラ投資予算の不足に対処する方法を検討しています (国家予算 に記された支出約束が果たされていることが条件) 。世銀と IFC は職員と借入国に、インフラ・サービスの提供で官民セクター が果たす役割についての指針を提供すると共に、官民パー トナー シップに対するアプローチを微調整しています。世銀は結果重視 型の援助アプローチにも継続的に取り組んでいます。これは政 府がサービスの提供を民間事業者に委託し、実際に提供された サービスの内容と成果に応じて、事業者に補助金を支払うという ものです。   世銀はインフラ支援の強化を通して、借入国の開発を積極的 に支援しており、今後も民間セクターやその他の開発パートナー との協力を拡大していく予定です。 第1章:世界の貧困との闘い 15 途上国のリスクと不確実性への対応  プレース」では、持続可能な住環境を実現するソリューションに 貧困国は持続可能な開発の障害となるリスクや脆弱性を抱え 重点が置かれました (囲み 1.1 参照) 。  ています。途上国の成長を左右する要因としては、 不安定な給水、 分野横断的なアプローチ :世銀はセクター横断的な問題に効 物価変動、 極度の天候不順、 自然災害などがあります。気候変動、 果的に対処するために、天然資源管理チームを設置しました。こ 生物多様性の喪失、漁業資源の枯渇、擁護できない慣行 (違法 のチームの目標は、土地、漁業、生物多様性、および森林に関 伐採等)などに起因する環境リスクは、生産活動や富の創造の するプロジェクトを協調的に管理し、相乗効果を引き出すことで 源泉となる天然資源を枯渇の危機にさらしています。社会的不均 す。同様の協調努力は、水資源戦略、農産物・貿易関連の取り 衡、脆弱な制度、および政治不安は、開発の阻害要因となる紛 組み、および (持続可能な土地管理を推進してい 「TerrAfrica」 争を引き起こす可能性があります。   るアフリカ地域のパートナーシップ)とのパートナーシップにも見 世銀は相互に関連のあるセクター、たとえば農業・農村開発、 森林、水資源、環境、および社会開発セクターに関する戦略を 組み合わせることで、こうした問題に対応しています。この戦略 は途上国が社会や環境に対する責任を果たしながら、成長を包 括的なアプローチで推進するものです。世銀は紛争の影響を受 けた国々にも多く の支援を提供しています。 農業と農村開発:世界の貧困層の 70% は農村部で暮らしてい ることを考えると、世銀が農村開発に関する取り組みを強化した ことは時宜を得たものであり、2005 年度は農業分野のプロジェ ク トに対して、28 億ドルの融資が行われました。 社会開発:2005 年度の理事会では、 「組織改革による人々の エンパワーメント:世銀プロジェクトにおける社会開発 (仮題) 」 が議論されました。この行動計画は 3 つの基本的な価値観―す なわち統合力、結合力、および社会的説明責任を柱にしたもの となっています (第 3 章「セクター戦略」参照)。 環境:2005 年度は環境・天然資源管理のプロジェク トに対し て、25 億ドルの融資が行われました。これは世銀の融資全体の 11% に相当します。2005 年の「ディベロップメント・マーケッ ト 16 世界銀行 年次報告書 2005 ることができます。   および www.complusalliance.org 参照)。 グローバル・パートナーシップ:世銀は地球環境ファシリティ 紛争の影響を受けた国々と脆弱な国家:世銀の借入国の 3 分 (GEF)や国際農業研究協議グループ (CGIAR)といった国際 の 1 以上は紛争の影響を受けています。特に貧困国は内戦の影 組織とのパートナーシップを通して、持続可能な開発アジェンダ 響を強く受ける傾向があります。一人当たり国内総生産 (GDP) を推進しています。世銀が世界自然保護基金 (WWF)と共同で が 250 ドルの国では、5 年以内に内戦が発生するリスクが平均 運営している 「森林の保全と持続可能な利用のための同盟」は、 15% に達しているのに対し、一人当たり GDP が 5000 ドルの国で 新たな森林保護目標を掲げ、両機関のパートナーシップを次の段 は、このリスクは 1% 未満です。一般に、内戦は 7 年間続き、そ 階に進めることで、世界の森林資源の枯渇防止に対する決意を の間に貧困は 30% 悪化し、乳幼児の死亡率は 13% 高まるといわ 新たなものとしました。 「国際漁業プログラム」は、漁業セクター れています。   と沿岸農村地域の住民が、生計を持続可能な形で確保できるよ 近年は、世銀プロジェク トを推進するために、途上国の紛争 うにすることで、捕獲漁業が直面している危機に対処することを 対応能力を分析するツールが用いられることが増えています。す 目指しています。 カーボン ・ファイナンス分野の官民パートナーシッ でに 15 カ国がこのフレームワークを利用して、紛争後のニーズを プは 8 億ドルを超え、安定した炭素排出権取引の国際市場の創 分析し、復興計画を策定しています。紛争後諸国に対する IDA 出を牽引しています。また、世銀は重要生態系パートナーシッ の特別援助は、2005 年までの累計で 30 億ドルを超えています。 プ・ファンドを通して、コンサベーション・インターナショナル、 世銀の 「紛争後基金」は、1998 年からこれまでの間に、38 の 地球環境ファシリティ (GEF) 、日本政府、 およびジョン ・ D& キャ 国と地域に対し、142 件のグラント (総額 7120 万ドル)を承認 サリン・T・マッカーサー財団と共に、地球上の生物多様性ホッ しました。ほとんどのグラントでは、シビルソサエティ組織と国 トスポッ トの保全に取り組んでいます。世銀は持続可能な開発 連機関が実施機関を務めています。資金の 42% はアフリカ地域 を身近なものにするための国際交流プラットフォーム 「Com + に配分されました。紛争の影響を受けた最貧国には、切迫した 持続可能な開発のためのコミュニケーション連合」の活動も支援 状況にある低所得国 (LICUS)イニシアティブからも支援が提供 しています (www.cgiar.org、www.thegef.org、www.worldbank.org、 されています (第 3 章および www.worldbank.org/licus 参照)。   囲み1.1 2005年のディベロップメント・マーケットプレース  2005 年 5 月、ワシントン DC でディベロップメント・マーケッ D& キャサリン・T・マッカーサー財団、およびコンサベーション・ トプレースの世界大会が開催されました。会場では事前に選抜さ インターナショナルでした。 れた 42 カ国 78 人の出場者が、貧困層の生活を改善し、環境保 護を促進するための革新的なアプローチを発表しました。今年は ディベロップメント・マーケットプレースは国レベルでも、有 「 持続可能な住環境のためのイノベーション」をテーマに、再生 望な開発アイディアの特定と支援に取り組んでいます。今年 可能エネルギー、生物多様性の保全、持続可能な農業、および大 は世界大会とは別に、9 カ所で国別大会が開催され、14 カ国 気・水質汚染の軽減に関するアイディアが募集され、136 カ国 が参加しました。国別大会は草の根レベルのプロジェクトに から 2600 件を超える応募がありました。最終選考に残った 31 光を当てるもので、その地域が直面している主要な開発課題 人の応募者には、一人当たり最高 15 万ドルのプロジェクト実行 を解決するためのアイディアに重点が置かれています(www. 資金が提供されました。賞金総額は約 400 万ドルでした。主な developmentmarketplace.org 参照)。 賞金スポンサーは世銀グループ、 地球環境ファシリティ、ジョン・ 第1章:世界の貧困との闘い 17 世銀は2004年12月に発生した津波によって壊滅的な被害を受けたコミュニティの再建を支援し ています。 災害援助 書「自然災害ホッ トスポット(仮題)」でも指摘されています。具体 2004 年 12 月 26 日にインド洋で発生した大津波は、この地域 的な活動と しては、災害が実際に発生する前にリスクを低減するこ の人々、特に貧困層に壊滅的な影響を与えました。世銀はこの災 と、災害に対する備えと対応能力を強化し、災害後に資源を十分 害に迅速に対応し、復興計画の策定を支援したほか、被災国政 かつ効果的に活用できるよ うにすることなどがあります。人道援助 府の要請をもとに提供された復興再建支援を調整し、財政支援 と復興支援だけで、被災地の復興に必要な資源のすべてをカバー を提供しました。   できることはまれです。被災国の側に、受容能力がほとんどない 災害発生から数日のうちに、世銀は特に被害の大きかったイン こと も多く、提供された資金援助のご く一部が、災害から何年もたっ ド、インドネシア 、モルディブ、およびスリランカの 4 カ国に対策 てから、よ うやく実行されるというケー スも珍しくありません。 チームを派遣しました。国別事務所の職員は、現地政府の担当 この問題に対処するために世銀が推進しているのが、包括的 部門やその他のパートナー、特にアジア開発銀行と協力して、損 なリスク管理フレームワークです。このフレームワークの具体的な 害と損失の規模を評価し、復興戦略の策定に取り組みました。 内容としては、その国が直面しているリスクと予想される被害規 モルディブには速やかに対策事務所が設置されました。セーシェ 模を出来る限り正確に把握すること、災害の影響を緩和する措置 ルとソマリアでは実行中の世銀プログラムはありませんが、地域 を講じること、既存の融資プログラムを活用して、事前の復興資 の世銀職員は現地の主要な援助団体を支援し、世銀融資以外の 金調達メカニズムを補完する方法を検討することなどがあります。   資金調達方法を特定しました。復興活動に対する世銀の支援は 3 つの原則―被災国政府の主導で復興活動を進めること、 コミュ 貿易の促進 ニティをニーズ・アセスメン 世銀の目標のひとつは、経済発展を促進する貿易体制を構築 トと復興計画の策定に参加させ、貧困 層にも確実に便益が提供されるようにすること、ドナー援助を効 し、途上国が貿易の恩恵に浴することができるようにすることで 率的に調整すること―に従って提供されました す。2005 年度、世銀は世界貿易機関 (www.worldbank. (WTO)の加盟国に対して、 org/tsunami 参照) 。 現在のドーハ貿易交渉ラウンドの成果を、できる限り意欲的なも 世銀の使命である貧困削減を達成するためには、災害を減ら のとすることを求めました。また、健全な世界経済を実現し、貧 すことが不可欠です。世銀は設立以来、災害復興援助の分野で 困を撲滅するためには、貿易交渉を成功させることが重要であ 中心的な役割を果たしてきました。今回の津波被害に世銀が戦 ることを強調しました。   略的かつ包括的に対処することができたのは、復興・再建に関 世銀は世界レベル、および国レベルの活動を通して、貿易の するノウハウを蓄積し、災害リスクを効率的に管理する努力を続 統合に取り組んでいる借入国を支援し、ドーハラウンド後に誕生 けてきたからです。 する新たな貿易環境に、各国が円滑に移行できるよう支援して 1998 年以来、世銀は開発プログラムを通して、災害リスクを います。主な活動としては、 投資プロジェク トと技術協力プロジェ 低減するためのトレーニングや技術支援を提供してきました。世 ク トを支援し、貿易振興改革のメリッ トを途上国が理解できるよ 銀職員と借入国の代表者を対象に災害関連のトレーニングが提 うにすること、貿易政策改革に必要な資源を提供すること、分 供されており、その際には持続可能な復興活動と、コミュニティ 析調査を実施し、多国間貿易を自由化することによって、途上国 の災害対応能力の強化に関する事例研究も活用されています が直面する可能性のある突発的な調整費用を予想、測定、およ (www.worldbank.org/hazards 参照)。 び削減することなどがあります。   災害の発生率が高い国は、そうでない国よりも、災害リスクの 2005 年度、 世 銀は 15 件( 総 額 3 億 8100 万ドル) の貿易 管理に積極的に取り組む必要があることが理解されつつあります。 関連プロジェク トを承認しました。これらのプロジェク トは、イ 災害リスク管理の重要性は、2005 年度に発行された世銀の報告 ンフラ、サービス、財政制度、および貿易と開発の進展に重 18 世界銀行 年次報告書 2005 要な役割を果たしているその他の経済セクターに重点を置いた パワーメント分野に対する投資に、最も積極的に取り組んでいる ものでした。また、世銀は世界貿易機関 (WTO)への加盟準 組織のひとつです(www.developmentgoals.org 参照)。 備を進めている国々にも支援を提供しました。世界銀行研究所 (WBI)は貿易関連の学習イベントを 60 件開催しました。   児童と若者の支援 2005 年度には、貿易関連の重要な報告書が複数刊行されま 世界人口の半数近くは 25 歳未満の若者であり、その 90% は途 した。 「世界経済の展望 2005:貿易、地域主義、および開発 上国で暮らし ています 。児童と若者の福祉に最も密接に関連し てい (仮題) 」は、地域貿易協定が貧困削減を急速に進展させる可 るセクターは 「教育」と 「保健」です 。世銀はこの 2 つのセクター 能性を認めつつも、そのためには途上国が一方貿易、多国間貿 に対する世界最大の資金提供機関であり、若者の生活に影響を与 易、および地域貿易を自由化することが条件になると結論してい えている貧困、HIV/ エイズ、栄養、社会的保護、社会開発といっ ます。その他の重要な貿易関連報告書としては、 「農業貿易と途 た問題に大き く貢献しています 。2004 年 9 月には欧州ユースフォー 上国」と 「関税近代化ハンドブック」があります。この 2 年間で、 ラムと世界スカウ ト機構と共同で、 「第 2 回若者・開発・平和会議」 世銀は 50 を超える国々で貿易政策を改善し、貿易機会を拡大 をサラエボで開催しました。欧州ユースフォーラムは 2000 万人、 するための研究を実施したほか、約 15 件の地域研究に着手しま 世界スカウ ト機構は 2800 万人を超える若者からなる国際組織です 。 した (www.worldbank.org/trade 参照)。 サラエボ会議の参加者たちは、若者にとって重要な問題に協調的 に取り組むための方法を議論し、非公式のネ ットワークを構築して、 貧しい人々への投資とエンパワーメントによる開発への参加促進 対話と定期的な交流を続けること を決定しま した。 ミレニアム開発目標を達成するためには、教育、保健、および ジェンダーの平等に投資を行うことが不可欠です。こうした投資 教育支援 は人々のエンパワーメントを促進し、貧しい人々が自分や家族の 世銀は 「万人のための教育」イニシアティブを通して、初等教 生活に影響を与える開発プロジェク トに関する意思決定に参加す 育の完全普及に取り組む途上国を支援しています。世銀は経済 ることを可能にします。また、世銀は貧しい人々が自国の教育サー 成長を促進し、競争力を強化するための条件となる高度なスキ ビスや保健・医療サービスの提供に影響を及ぼすことができるよ ルの習得も支援しています。   うに、シビルソサエティとの連携にも努めています。世銀はエン 2005 年度、IBRD は就学前教育と初等教育に 3 億 5600 万 第1章:世界の貧困との闘い 19 ドル、中等教育、職業教育、および高等教育に 4 万 9200 万ド 育プログラム開発基金」は、FTI の承認を得るためにセクタープ ルを融資しました。IDA は就学前教育と初等教育に 2 億 9700 ログラム開発とキャパシティ ・ビルディ ングを推進している途上国 万ドル、就学前教育、中等教育、および高等教育に 2 億 9400 を支援するものです。この基金に対しては、すでに 600 万ドル 万ドルを供与しました。こうした支援は、エジプト・アラブ共和 の拠出が約束されています。FTI 参加国や、数年以内に FTI に 国では幼児教育の提供範囲を拡大し、特に貧困家庭の児童や女 参加することが予定されている国々に資金を滞りなく提供するた 児の参加を促進するために、キルギス共和国では農村部の教育 めに、FTI の資金プールを大幅に拡充することが求められてい を強化するために、ネパールでは基礎教育の質を高め、貧困世 ます(www.worldbank.org/education 参照)。 帯の児童や不利な立場にある児童が教育を受ける機会を拡大す るために利用されました。   ジェンダーの平等の実現 世界的に見ると、 「万人のための教育」に関するドナー協調と 男女が対等な立場から開発に参加できるようにすること―男 支援の重要な手段となっているのは、ファースト・トラック・イニ 女が同等の発言権を持ち、平等に資源を利用できるようにする シアティブ (FTI) です。FTI の最初の対象国である 12 カ国には、 ことが、経済成長を加速させるための一助となることは、研究の 初等教育を改善するための資金として、世界各国から合計 9 億 結果からも過去の経験からも明らかです。 ドル以上の政府開発援助が提供されました (2005 年 6 月 30 日 2005 年度、世銀は経済セクター調査を実施し、ジェンダーに 現在) 。このうちの 3 億 5000 万ドルは 2005 年度に提供された 基づく障壁が開発に与える影響を分析しました。世銀は公共支 ものです。2005 年度は新たに 2 つの基金が創設されました。そ 出、年金、 土地改革などの分野で革新的な研究を行うことにより、 のひとつは、FTI プログラムを実行している途上国に移行資金を 途上国がジェンダー問題に取り組む際に利用できる実際的な知 提供する 「触媒基金」です。この基金に対しては、2007 年末ま 識を蓄積しています。 でに 2 億 9000 万ドルが拠出される予定です。もうひとつの 「教 世銀が支援するプロジェク ト、特に保健、教育、および社会 20 世界銀行 年次報告書 2005 的保護セクターのプロジェクトでは、ジェンダーに関する質的・ でした。世銀は分析活動に継続的に取り組む一方で、政策対話 量的分析が行われるようになりました。ジェンダー関連の活動は にも力を入れており、 子供の健康に高い優先順位を置く こと、サー ガバナンス、労働、司法改革、および貿易に関するプロジェク ト ビスの提供状況を改善すること、保健制度を強化すること (貧困 にも組み込まれるようになっています。オランダ政府とノルウェー 層に対する効果を最大化するために、コス ト効率の高い介入を急 政府の拠出金をもとに世銀が運営しているジェンダー主流化信 速に拡大すること) 、官民パートナーシップを強化すること、そし 託基金は、2005 年度も革新的なプロジェク トに支援を提供しま て異なる医療セクター間の連携を促進することを途上国政府に求 した。支援対象となったプロジェク トの例としては、 「国会にお めています(www.developmentgoals.org 参照)。 けるジェンダー議論」などの地域間プロジェク 「地域 トのほか、 医療を通した女性障害者の主流化」などがあります。 妊産婦の健康の改善 2005 年度、世銀はジェンダーに基づく暴力に関する初のワー 妊産婦の死亡率は女性の健康の重要な尺度であると同時に、 クショップを開催し、ジェンダーの平等の達成状況をモニタリン 医療制度の有効性を測る指標でもあります。世界全体で見ると、 グ・評価しました。世銀の報告書 「女性の生活の向上:北京会 熟練した医療スタッフの立ち会いのもとで行われた出産の割合は 議後の世界銀行の行動 (仮題) 」は、女性が資源を利用する機 ゆるやかに上昇しており、1989 年から 1999 年の間の年間上昇率 会の拡大、権利の男女平等の促進、および女性の発言権の拡 は平均 1.7% でした。しかし、妊娠関連の理由で死亡する女性の 大とエンパワーメントに対する世銀の取り組みを分析したもので 数は毎年 50 万人を超えています。特に貧困層が正規の医療を受 す。この報告書は 1995 年に採択された北京行動綱領と MDGs ける機会を持たないことが、 依然として大きな障害となっています。   の達成に対する世銀のコミ ッ ト メントを、改めて確認するものとな 妊産婦の死亡率を削減することは、世銀の優先項目のひとつ りました (www.worldbank.org/gender 参照)。 です。2005 年度、世銀は妊産婦の健康と性と生殖に関する健康 を改善するための活動に 1 億 9160 万ドルを提供しました。妊産 子供の死亡率の削減 婦の死亡の大半は南アジアと一部のアフリカ諸国で起きており、 世界では毎年、1040 万人の子供が 5 歳の誕生日を迎える前 これらの地域には合計 1 億 6000 万ドルの融資が行われました。 に死亡しています。このうち、生後 1 カ月以内に死亡した子供 世銀は財政援助を拡大するだけでなく、保健制度と資金調達の は 400 万人、死産は 300 万人を超えています。5 歳未満で死亡 改善にも取り組んでいます。こうした活動は人材の養成や、プロ する子供の 99% は最貧国の子供たちです。この 25 年間で子供 グラム管理とサービスの提供に関するキャパシティ ・ビルディング の死亡率は急速に減少しましたが、1990 年代には世界各地で を促進するものとなっています。長期的には、その他の分野 (イン 進捗にブレーキがかかり、数カ国では死亡率は上昇に転じまし フラ、女児の教育、ジェンダーの平等など)に対する世銀の支援 た。一部の国々、特にアフリカ諸国では、HIV/ エイズの蔓延 も、妊産婦の死亡率の削減を加速させるものとなる予定です。また、 が死亡率の上昇の一因となっています (第 2 章参照)。  世銀はすべての妊産婦が医療サービスを受けることができるよう 現在の状況が改善されない場合、新生児の死亡率が大幅に にするために、借入国の政府と戦略的なパートナーシップを結ん 低下することがない限り、ほとんどの国にとって、2015 年までに でいます 。 (www.developmentgoals.org 参照) 子供の死亡率を 1990 年の 3 分の 1 の水準にするというミレニア ム開発目標を達成することは不可能です。 伝染病対策 子供の健康に対する世銀の融資は増加の一途をたどっており、 HIV/ エイズ : 現 在、 世界では 4000 万人が HIV に感 染し、 2005 年度には合計 1 億 7440 万ドルとなりました。このうちの 1 エイズによって親を失った子供の数は 1500 万人を超えています。 億 2900 万ドルは南アジアとアフリカのプロジェク トに対するもの HIV/ エイズは多く の国々、特にアフリカ諸国で開発の成果を打 第1章:世界の貧困との闘い 21 ウガンダのエイズ孤児。 参加型の開発は最貧国にも定着しつつあります。写真は世銀がハイチで実施しているコミュニティ主導のプロジェクトの様子です。 ち消しています。 世銀は 67 カ国の HIV/エイズ対策活動に対して、 の何千ものコミュニティで実施した HIV/ エイズ予防活動にも参 合計 25 億ドル以上の融資を承認しました。世銀は予防、治療、 加しました。世銀の貧困削減戦略や国別援助戦略に関する協議 および助言サービスを強化する活動を支援しており、グローバル ・ に、シビルソサエティが参加するケースも増えており、こ う したプ パートナーシップを通して、また国連合同エイズ計画 (UNAIDS) ロジェク トは世銀の新規承認プロジェク トの 72% に上っています。 の共同スポンサーとして、リーダーシップを発揮しています。   世銀は公共サービスの提供状況を改善し、ガバナンスを強化 結核 : 欧州・中央アジア地域を中心に、多剤耐性結核が感 するために、シビルソサエティ組織のプログラムを研究・支援し 染を広げつつあります。多剤耐性結核は HIV 感染に伴う最も一 ました (市民による監視、地方政府予算の策定に対するシビルソ 般的な日和見感染症であるため、多くのアフリカ諸国では結核 サエティ組織の関与など) 。世銀は約 100 カ国において、コミュ 患者が増加しています。世銀は 「ストップ TB パートナーシップ」 ニティ開発、環境保護、および紛争後の復興活動に取り組んで を通して、また結核発生率の高い 22 カ国の一部に融資を行うこ いる何千ものシビルソサエティ組織を支援しています。世銀の新 とで、各国の結核抑制活動を支援しています。こうした活動は、 しい報告書 「世銀とシビルソサエティの連携:2002‒2004 年度を 特に中国とインドで高い成果を上げました。1991 年からこれまで 振り返って (仮題) 」には、この数年間の世銀とシビルソサエティ の間に、世銀は 30 を超える国々の結核抑制プロジェク トに、合 の連携の成果がまとめられています。 計 6 億ドルを超える融資を承認しました。 2005 年度の理事会では、 「世銀とシビルソサエティ組織の連 マラリア : 世界では毎年 5 億人を超える人々がマラリアに感染し、 携を強化するための課題と施策 (仮題) 」が議論されました。こ 110 万人がマラリアによって死亡しています。世銀は 「ロールバッ の論文は 4 つの主要な課題を概観すると共に、シビルソサエティ ク・マラリア・パートナーシップ」を通して、途上国、パートナー をより効果的に関与させるための 10 の行動を提案しています。 機関、およびシビルソサエティ組織と密接に連携しており、特に 2005 年 4 月には 「シビルソサエティ・グローバル ・ポリシー ・ フォー ブラジル、エリ トリア 、およびベトナムのマラリア抑制では大きな ラム」が開催され、50 カ国から約 200 人のシビルソサエティの 役割を果たしています。しかし、世界の多く の地域では、マラリ 指導者、政府関係者、ドナー機関の代表者、および世銀の幹 アは依然として大きな負担となっており、薬物耐性のあるマラリ 部職員が参加しました。参加者はグローバルな視点から、世銀 ア原虫も分布の範囲を広げています。世銀はこれまでの進捗が とシビルソサエティの連携を強化する方法を議論しました。世 あまりにも遅く、偏ったものであったことを認め、2005 年 4 月に 銀は若者、労働組合、障害者など、シビルソサエティのさまざま 新たなマラリア対策促進プログラムを立ち上げ、その日を 「アフ な構成員が参加する国際会議も開催しました (www.worldbank. リカ・マラリアの日」と定めました。新しいプログラムの目標は、 org/civilsociety 参照)。 マラリアを迅速に、かつ広範囲で抑制することです。マラリア対 策促進プログラムは、途上国のリーダーシップ、世銀の資源、お 開発の有効性 よびその他のパートナーからの協調融資を、マラリアの予防と治 世銀は開発を効果的に推進し、ミレニアム開発目標を達成す 療のための実行可能な介入プログラムに結びつけるものとなる予 るための地球規模のフレームワークの構築を支援しており、その 定です (www.developmentgoals.org 参照)。 一環として、世銀業務の効率化や、世銀プログラムの有効性の 分析に取り組んでいます。  シビルソサエティの関与 2005 年度においても、世銀はさまざまな活動を通してシビル グローバル・モニタリング・レポート ソサエティ と連携しました。シビルソサエティ組織は世銀の採掘 世銀と国際通貨基金 (IMF)は「グローバル・モニタリング・ 産業レビューに関する政策協議に参加したほか、世銀がアフリカ レポート― MDGs:コンセンサスから本格的実践へ」を発行しま 22 世界銀行 年次報告書 2005 国連の「国際小口金融年」にあたる2005年、世銀はメキシコを始めとする国々で、預金・  信用サービスのためのフレームワーク構築を支援しました。 した。これは 2 回目のグローバル・モニタリング・レポートであ ネットワークを効率化すること(戦略的な職員活用、知識共有、 り、MDGs の達成に向けた機運を高めるために、途上国と先進 職責の整理)などがあります。 国が取りうる 5 つの行動を提言しています。具体的には、途上 国主導の開発戦略をすべての開発活動の基本とすること、高い 予算改革  経済成長を民間セクター主導で推進するための環境を整備する 2005 年度、世銀は新たな予算改革イ ニシアティブに着手しまし こと、教育と保健サービスを拡大すること、途上国と先進国の た。このイニシアティブは過去数年の進捗をさらに進展させるこ 貿易障壁を撤廃すること、受領国の受容能力に配慮しつつ、援 とを目指したもので、世銀が長年にわたって追求してきた結果重 助の水準と有効性を 5 年間で 2 倍以上に引き上げること、およ 視アジェンダと も一致しています。世銀は具体的な戦略目標を設定 び援助の質を改善することです。特に、MDGs の達成が最も遅 し、望ましい成果を達成するための資源を投入することで、組織 れているアフリカ地域の進捗を加速させることが急務となってい レベル、および部門レベルの戦略的な意識決定とパフォーマンス ます(www.worldbank.org/globalmonitoring 参照)。 管理を推進しています。予算改革の主な目標は、新しい複数年予 算フレームワークを強化すること、組織を効率的に運営するため 開発成果マネジメント の柔軟性と余地を幹部に提供すること、そして幹部がパフォーマ 開発コミュニティでは、情報提供を通して途上国の意思決定 ンスに関する説明責任を負う ようにすることです。この結果、世銀 を支援し、途上国が明確に定義された目標に向かって、自国の 業務の計画やモニタリング・プロセスが簡略化され、年度末に目 開発を主体的に推進できるようにすることが重要なアジェンダの 標を達成することではなく 、中期目標を達成するために、一年を ひとつとなっています。2005 年度、世銀は結果重視型 CAS (国 通して資源管理を改善していく ことに重点が置かれるようになる予 別援助戦略)のパイロッ ト段階を終了し、その結果をまとめた報 定です。   告書が理事会で検討されました。世銀は 2005 年も途上国の統 新しいシステムの柱となっているのは 「戦略 ・パフォーマンス契約」 計能力の向上に取り組み、第 14 次 IDA 増資のための結果評価 です。ここには各ユニ ットの戦略上の方向性と、資源を配分する際 システムを開発しました (IDA に関する詳細は第 3 章参照) 。グ のト レー ドオフと選択肢がまとめられているほか、目標を達成する ローバルレベルでは、「開発成果マネジメン トのためのジョイン ト・ 過程で途上国が直面する可能性のある リスクと、結果とパフォーマ ベンチャー」と協力して、 開発成果マネジメントに関するソースブッ ンスをモニタリ ングするための主な指標が記載されています。 クを作成しました(www.worldbank.org/results 参照)。 プロセスの簡略化  世銀業務の改善  世銀は 2005 年度も引き続き、手段、プロセス、および政策 借入国のニーズが多様化し、外部環境が変化していることを受 の簡略化と近代化に取り組みました。世銀は調整融資を 「開発 けて、世銀は業務部門のパフォーマンスを評価し、世銀業務の 政策融資」と改名し、借入国の主体性を強調・反映すると同時 効率化に取り組みました。評価の対象となったのは、借入国サー に、借入国政府が自国の固有のニーズに対処できるよう支援して ビスの提供方法、テーマ別ネットワークの有効性、そして世銀業 います。世銀はプロセスを迅速化するために、文書と手続きの 務の分権化、人材活用、および職員の技能に関する問題です。  変更にも取り組み、借入国が資金を速やかに受け取り、自国の この評価の結果は、世銀の上級幹部が出席する年次戦略会 ニーズに対処できるようにしました。改革の一環として、支出の 議で議論・承認されました。評価結果をもとに、実施が検討さ 適格性も見直され、借入国がプロジェク トを実行する際に発生す れている活動としては、借入国サービスと地球規模の課題に対 る支出に、 世銀の資金を簡単に充当できるようにしました (www1. する取り組みを強化すること、分権化を推進すること、テーマ別 worldbank.org/operations/eligibility 参照)。 第1章:世界の貧困との闘い 23 中国の貴州にあるGDLNセンターの様子。 世銀は IBRD 融資と IDA 融資・グラントの契約書の簡略化・ が増え、公開手続きが簡略化されました。今回の改訂は、業務 近代化にも着手しました。これは契約書の内容を明瞭化し、加 の透明性に対する世銀のコミ ットメントを再確認するものとなりま 盟国との交渉を円滑に進めることを目的としたもので、将来的に した。主な変更点は、IBRD と IDA の国別援助戦略(CAS)に はその他の国際金融機関の契約書と内容の調和化をはかってい 共通の情報公開政策を導入すること、理事会議事録 (機密会議 く予定です。 の議事録を除く) 、職務規定、予算文書、および職員の報酬に 世銀はさまざまな分野で簡略化に取り組んでいます。現在は 関する文書を公開すること、および情報公開手続きを簡略化する 実施プロセスの簡略化に重点が置かれていますが、 借入国のニー ことです。   ズの変化に合わせて、政策、手続き、および支援手段の再調整 2005 年度は開発政策融資に関する文書と、国別政策・制度評 も随時行われる予定です。   価(CPIA)の格付の公開も進みました。CPIA の格付けは、各国 の政策・制度フレームワークの質と、そのフレームワークが貧困削 ドナー援助の調和化 減を可能にする持続可能な成長と、開発援助の効果的な利用を促 2005 年度、世銀はその他の機関と共に、 「援助効果向上のた すものとなっているかどうかを示す指標となるものです (本章「健 めのハイレベルフォーラム」をパリで開催しました。この会合に 全な組織」および第 3 章 「切迫した状況にある低所得国」参照) 。 は 90 のドナー / パートナー国、27 の援助機関、およびさまざ まなシビルソサエティ組織から 620 人が参加しました。参加者 世銀の活動の評価 は借入国の主体性、調和化、整合、開発成果マネジメント、お 事業評価局 (OED)は世銀理事会直属の独立評価部門です。 よび相互説明責任の改善を定めたパリ宣言を採択しました。ま OED 評価の目的は、説明責任を確保し、世銀の業務を評価する た、参加者は進捗をモニタリングするための 12 の指標を設定し、 ための客観的なデータを提供し、世銀職員が過去の経験から学 2005 年 9 月までに、2010 年を達成期限とする具体的な目標値 べるようにすることです。 を設定することで合意しました。   OED の報 告 書「開発効果に関する年次レビュー 2003」は、 2005 年度、世銀が他のドナーや政 府と共に、共通の資金 途上国の政策が改善されたこと、1999 年から 2003 年の間に政 提供メカニズム (プログラム・ベースのセクターワイド・アプロー 策を強化した国の多くが、そうでない国の 2 倍以上の成長率を チなど)を通して提供した資金は、9 件のプロジェク トに対して、 達したことを明らかにしました。しかし、貧困削減の条件は成長 合計 7 億 7300 万ドルとなりました。ここにはバングラデシュとネ だけではありません。 「開発効果に関する年次レビュー 2004」は、 パールの保健セクターに対する支援や、モロッコとベトナムの教 世銀の貧困削減戦略が成長だけでなく、開発の社会的側面にも 育セクターに対する支援が含まれています。また、世銀はその他 注意を払うものとなっていることを指摘しました。しかし、その のドナーと調整しながら、 エチオピア 、ガーナ、 ルワンダなどの国々 他の部分や、2 つの柱を補完するセクター (インフラ、農村・都 に 17 件(総額 14 億ドル)の貧困削減支援融資を提供しました。 市開発、環境など)には、必ずしも十分な注意は払われていま 世銀は他のドナーと共に、ケニア 、タンザニア 、および一部の中 せん。 央アメリカ諸国の貧困評価とガバナンス、および受託者責任に関 OED は開発・貧困削減問題と関連性のある広範な活動を評価 する分析報告書も作成しました (www.aidharmonisation.org およ しました。国別援助評価に関する OED 評価は、成功した国別 び www.countryanalyticwork.net 参照)。  プログラムは、その国の固有の状況を考慮したものであることを 明らかにしました。これは世銀が借入国に関する知識をさらに深 透明性の向上 め、その国の改革の進行度に合わせて、援助プログラムを調整す 透明性と情報公開に関する世銀の取り組みは、2005 年に画期 る必要があることを示しています。   的な進展を遂げました。3 月の理事会では、世銀の情報公開政 グローバル・プログラムに関する評価では、世銀の比較優位は 策に対する多数の修正が承認され、情報公開の対象となる情報 国レベルよりも、グローバル・レベルで発揮されていることが明ら 24 世界銀行 年次報告書 2005 かになりました。また、グローバル・プログラムと世銀の国別プ ログラムはほとんど連動していないことが指摘されました。 OED が IMF の独立評 価部門と共同で実施した評 価では、 貧困削減戦略プロセスは低所得国の開発関係者の関心を、 貧困、 結果、ひいては援助管理のフレームワークに集める上で役に立っ ているものの、ほとんどの途上国は貧困削減活動を改善するこ とよりも、資金調達のための事務処理作業に時間を割いている ことが明らかになりました。   OED はアフリカの公共セクターのキャパシティ ・ビルディング に対する世銀の支援の妥当性と有効性も評価しました。その結 果、こう した支援の効果は国によってはもちろん、セクターによっ ても異なることが分かりました。 評価の結果をまとめた報告書は、 キャパシティ ・ビルディング活動に対する世銀の支援の大半はプ ロジェク トごとに設計・管理されており、それがセクター横断的 な問題に取り組んだり、他のプロジェク トの教訓を学んだりする ことを困難にしていると結論づけています。 借入国へのアウトリーチ 2005 年度、世銀は多彩なイ ニシアテ ィブを通し て、借入国におけ るアウ トリーチとア クセシビリティを改善しま した。世界各地に設置 されている情報セン (PIC) ター の拡大はそのひとつです 。2005 年度、 ことができるよう支援しています (PIC によって利用可能なツール 世銀は複数の新しいウェブサイ トを公開したほか、前年度に引き続 は異なります) 。 PIC の職員は一般市民からの問い合わせに答え、 き、グローバル ・ディベロップメ ント・ラーニング ・ネ ットワーク(GDLN) 市民の懸念に耳を傾け、開発関連のセミナー、対話、ウェブキャ を通し て、多彩な活動を展開しま した(囲み 1.2 参照)。 スト、およびラジオ番組を提供しています。インターネッ トが普及 していない地域では、すべての住民がこ う した情報にアクセスで 借入国における開発情報サービス きるように、現地の教育機関と協力して、60 を超えるサテライ ト 透明性、説明責任、および情報共有はグッ ドガバナンスを促 センターを設立しました。   進するものであり、持続可能な開発の条件です。この 3 つの要 20 05 年度には、新たに 5 つの開発 情報センターが 設置さ 素を強化するために、世銀は各国に設置されている情報センター れました。開発情報センターは、世銀やその他の組織が提供 (PIC)と、そのサービス内容の強化に取り組んでいます。PIC している開発関連情報をまとめた総合情報センターです。この は世銀のプロジェクトや開発全般に関する情報を提供すること パートナーシップには世銀、国際開発金融機関、シビルソサ で、一般の人々が対話に参加し、自分たちの生活に影響を及ぼ エティ組 織、学 術機関、および政 府機関が参加しており、持 している問題について、十分な情報をもとに意思決定を下すこと 続可能な開発の条件である情報提供と情報共有を促進してい ができるよう支援しています。2004 年の PIC 利用者は 9 万人を ます(www.worldbank.org/publicinformation 参照)。 超え、その数は 2005 年には 3 倍になると予想されています。   PIC は世界各地の 75 の都市に設置されています。PIC の職 「クライアント・コネクション」 員はさまざまなツールを用いて、利用者が必要な情報を見つける 2003 年 9 月、世銀は借入国とプロジェクト実施機関が十分な 第1章:世界の貧困との闘い 25   囲み1.2 国境を越えるGDLN  •  「カリブ海地域は今、10 年前にアフリカ地域が直面してい GDLN は国際的なパートナーシップであり、60 を超える国々に た問題に直面しています」―グローバル・ディベロップメン 70 以上のラーニングセンターが設置されています。2005 年度 ト・ラーニング・ネットワーク(GDLN)のジャマイカ・ラー は 900 回を超えるビデオ会議を通して、世界各国の 3 万 5000 ニングセンターで、同国の医療従事者と、バルバドス、ガー 人を超える人々が、貧困を撲滅するために他国が行っている活動 ナ、セントルシア、タンザニア、およびウガンダの医療従事 を学びました。政府関係者はコートジボワールの人道援助活動を 者を結んで行われたビデオ会議で、ジャマイカ工科大学のナ 調整し、ボスニア・ヘルツェゴビナの行政官は貧困層に基本的な ンシー・ジョージ HIV/ エイズ運営委員会委員長はそう述べま サービスを提供する方法を学びました。8 つのラテンアメリカ諸 した。「皆さんの経験は、 われわれにとっては宝の山なのです !」 国を結んで行われた会議では、民間企業が企業の社会的責任につ いて話し合い、アラスカ、ペルー、およびフィリピンを結んで行 •  アジア経営大学院(AIM)政策センターのフェデリコ・マカ われた会議では、各国の先住民が農村部の貧困問題について意見 ラナス所長と所員たちは、同センターのあるフィリピンと、その を交換しました。 他の 4 カ国を結んだビデオ会議に出席し、他国の専門家たちと情 報収集を改善する方法を話し合いました。 「GDLN を利用するこ 2000 年 6 月に GDLN が設立されたとき、世銀のジェームズ・D・ とで、世界中のノウハウを利用できるようになりました」とマカ ウォルフェンソン前総裁は、 「地理的国境は過去のものとなった」 ラナスは述べています。GDLN は双方向の技術と学習プログラム と宣言しました。GDLN を利用すれば、 距離を気にすることなく、 を利用することで、遠く離れた場所にいる開発実践者が、まるで 各国の知識と経験を、それを必要としている国へ移転することが 同じ部屋にいるかのように交流することを可能にしました。 できます(www.gdln.org 参照)。 情報をもとに意思決定を下し、世銀プロジェク トの実施コストを 情報以外の情報も掲載されるようになりました。3 カ月後には、 削減できるように、「クライアント・コネクション」と呼ばれる、 アラビア語版とフランス語版のウェブサイトへの訪問者数は倍増 認証機能を備えたウェブ・サービスを立ち上げました。登録ユー し、スペイン語版ウェブサイ トへの訪問者数も 3 分の 1 増加しま ザーの数はすでに 4000 人を超えており、ユーザーの国籍は 130 した。世銀はロシア語版と中国語版のウェブサイトも提供してい カ国以上を超えています。ユーザーは借入国の視点に立った、分 ます(www.worldbank.org 参照)。 かりやすいインターフェースを通して、世銀の公開情報や、自国 の融資ポートフォリオに関する情報を閲覧することができます (融 若者向けのウェブサイト 資情報を閲覧するためには認証が必要です) 。調達、実行、お 「Youthink!」は学生、10 代の若者、および児童を対象とした よび返済の状況を確認することも可能です。 世銀のウェブサイトです。このウェブサイトには開発や地球規模 ユーザーから寄せられた非公式のフィードバックとアンケート の問題が若者向けの言葉でまとめられており、この年頃の人々が の結果は、このサービスに対する満足度が高いことを示していま 関心を持ち、共感できる切り口で、さまざまな開発問題を取り上 す。一日当たりの利用者数も着実に伸びています。借入国の間で げています。 「Youthink!」は利用者からの投稿を歓迎し、若者 は、このウェブサイトの透明性と、ポート フォリオ情報へのアクセ が自分の見解、意見、および経験をその他の若者と共有できる スのしやすさが高く評価されています。多く の国がこのウェブサイ ようにしています (http://youthink.worldbank.org 参照)。 トを利用することで、効率を高め、コストを下げることができた と述べています。新しいサービスの追加も予定されており、貸付 エイズ・メディアセンター 金の引き出しといった金融取引をオンラインで実行することが可 2005 年度、世銀は 「エイズ・メディアセンター」と呼ばれる革 能となる予定です 新的なウェブサイ トを立ち上げ、途上国のジャーナリストが HIV/ (http://clientconnection.worldbank.org 参照)。 エイズに関する世界の最新のニュース、情報、および分析調査 多言語ウェブサイト にアクセスできるようにしました。これはエイズやエイズ関連の問 世銀のウェブサイトへの訪問者数は月に 150 万人を超えてお 題に関する報道の正確性、質、および効果を改善することを目指 り、ウェブサイトはコミュニケーションと情報提供の中心となっ したものです。メディアセンターの大きな特長はパートナーの多 ています。 訪問者の約 3 分の 1を占めているのは非英語圏の人々 彩さにあります。主なパートナーは、BBC トラスト、国際エイズ で、その数は英語圏の人々よりも速いペースで拡大しています。 ワクチン・イニシアティブ、インターニュース、ジョンズ・ホプキン 2005 年度、世銀は非英語圏の人々に情報を効果的に提供する ス大学ブルームバーグ公衆衛生学部、カイザー家族財団、ワン ために、また世銀の新しい 「移行フレームワーク」を補完するた ワールド、 パノス研究所、プラスニュース (国連の総合地域情報ネッ めに、ウェブサイトの多言語化に着手しました。この結果、新 トワークが運営) 、UNAIDS、世界保健機関、および各地域の たにフランス語版の公式ウェブサイトが公開されたほか、既存 多数のジャーナリスト団体です (www.aidsmedia.org 参照)。 のアラビア語版とスペイン語版のウェブサイトも拡充され、地域 26 世界銀行 年次報告書 2005 地域別展望 2 世界銀行の地域区分、現地事務所、および融資適格国 現在、 世界銀行は世界 100 カ所以上に設置された現地事務所を通して活動し ています。借入国に事務所を開設することで、借入国に対する理解が深まるだ けでなく、借入国との協力関係が密になり、これまで以上に迅速にサービスを 提供することができるようになっています。世銀の貸付残高の 4 分の 3 はワシン トン DC の本部ではなく、現地の国別担当局長が管理しています。現在は職員 の 30% が現地事務所で活動しています。 ラテンアメリカ・カリブ海地域 2005 年度 新規融資承認額 IBRD:49 億 440 万ドル IDA:2 億 6130 万ドル プロ ジェクトのポー ト フォリオ:190 億ドル ��� �������������� � ����� IBRD 融資のみの適格国 IBRD と IDA 融資の適格国 ( ブレンド国 ) IDA 融資のみの適格国 融資が行われたことのない IDA 融資適格国 世銀現地事務所 国別担当局長が駐在する現地事務所 この地図には、2005 年度にチェコが借入国から卒業し、   リビアが IBRD の融資適格国になったという 2 つの変更点が 反映されています。 28 世界銀行 年次報告書 2005 ������������������������������������������������������������ 中東・北アフリカ地域 ヨーロッパ・中央アジア地域 2005 年度 新規融資承認額 2005 年度 新規融資承認額 IBRD:12 億 1210 万ドル IBRD:35 億 8860 万ドル IDA:7150 万ドル IDA:5 億 490 万ドル プロ ジェクトのポー ト フォリ オ:59 億ドル プロ ジェクトのポー トフォリ オ:158 億ドル 東アジア・大洋州地域 2005 年度 新規融資承認額 IBRD:18 億 980 万ドル IDA:10 億 7350 万ドル プロ ジェクトのポー ト フォ リオ:199 億ドル 南アジア地域 2005 年度 新規融資承認額 IBRD:20 億 9590 万ドル IDA:28 億 9740 万ドル プロ ジェクトのポー ト フォ リオ:182 億ドル アフリカ地域 2005 年度 新規融資承認額 IBRD:0 IDA:38 億 8750 万ドル プロ ジェクトのポー ト フォ リオ:165 億ドル IBRD 32613R1 2005 年 8 月 第2章:地域別展望 29 アフリカ地域 2004 年、 アフリカ経済は 4.4% の成長を記録しました。しかも、 正な貿易、一段の債務削減を目指す取り組みです。 実際にすべての国が成長を達成しています。2005 年には、前年 アフリカ開発のための新たなパートナーシップ (NEPAD)が に続き、これまでの改革や紛争の減少が経済活動の追い風にな 発足し、貧困削減戦略文書 (PRSP)に基づくプロセスが開始さ り、4.1% の成長が見込まれています。とはいえ、深刻な課題に れたのを受け、アフリカ諸国はそれまでよりずっと自主的に開発 直面している事実に変わりはありません。1 日 1ドル未満で暮ら に取り組むようになりました。NEPAD と PRSP のプロセスはい す人の数は、1981 年当時のほぼ 2 倍に当たる 3 億 1400 万人以 ずれも、ドナー国とのパートナーシップ、安定した資金の流れ、 上に上ります。また、世界の最貧国 48 カ国のうちの 34 カ国が、 測定可能な成果、貧しい人々のエンパワーメン ト、 シビルソサエティ そして人的開発のレベルが最も低いとされる 32 カ国のうちの 24 や現地コミュニティの参加、自国民に対する途上国政府の説明 カ国がアフリカにあります。HIV/ エイズの蔓延により 1 人当たり 責任を重視した取り組みです。アフリカ委員会からは経済成長の の年間経済成長率が 1% 押し下げられ、マラリアで命を失う人も 促進と、経済拡大への貧しい人々の参加を重視した報告書が提 毎日約 2800 人に上ります (www.worldbank.org/aids および www. 出され、世銀はこれを承認しました。 aidsmedia.org を参照)。 昨年は人的開発の面で若干の前進がみられたものの、残され 世銀の援助 た課題はまだきわめて大きいのが現状です。それらの課題に取 世銀はアフリカ地域に対する開発援助提供機関と しては最大の り組むため、2005 年度、世界規模でいくつかの開発イニシアティ 組織であり、その支援額は過去 5 年間に大幅に引き上げられまし ブが打ち出されました。なかでも重要なのが援助の倍増、より公 た。2005 年度の IDA 承認額は、2000 年度の 80% 増に当たる アフリカ地域の概要 総人口:    7 億人 人口増加率:   2% 2005年度の  2005年度の 平均寿命:   46 歳 新規融資承認額  融資実行額 乳幼児死亡率(出生 1000 件当たり):  101 件 IBRD:0  IBRD:2410万ドル 若い女性の識字率:   77% IDA:38億8750万ドル  IDA:39億9460万ドル 2004 年の一人当たり国民総所得(GNI) :  600 ドル エイズ感染者数:    2520 万人 2005年6月30日現在において実施中のプロジェクトのポートフォリオ: 165億ドル 注:平均寿命と乳幼児死亡率(出生 1000 件当たり)は 2003 年、若い女性の識字率は 2000‒ 、エイズ感染者数は 2004 年 6 月の国連エイズ合同計画「世界の AIDS 流行に 2002 年(最新) 、その他の指標は 2004 年の「世界開発指標」の数字です。 関する最新情報」    30 世界銀行 年次報告書 2005 世銀融資適格国 アンゴラ ガンビア サントメ・プリンシペ セネガル ニジェール 南アフリカ ウガンダ ギニア ザンビア ソマリア ブルキナファソ モーリシャス エチオピア ギニアビサウ シエラレオネ タンザニア ブルンジ モーリタニア エリトリア ケニア ジンバブエ チャド ベナン モザンビーク ガーナ コートジボワール スーダン 中央アフリカ共和国 ボツワナ リベリア カーボヴェルデ コモロ スワジランド トーゴ マダガスカル ルワンダ ガボン コンゴ共和国 セーシェル ナイジェリア マラウイ レソト カメルーン コンゴ民主共和国 赤道ギニア ナミビア マリ 39 億ドルで、融資実行額は、2000 年度の 2 倍以上に当たる 40 億 改革、分権化、説明責任明確化のメカニズム、法律・司法改革 ドルでした。アフリカはまた重債務貧困国 (HIPC)イニシアテ ィブ が対象となります。 のもとで総額 31 億ドルの債務救済を受けています (第 3 章参照)。 世銀はまた「アフリカのキャパシティ・ビルディングのためのパー 世銀のアフリカ支援戦略の概要は 「IDA のアフリカ支援戦略 トナーシップ」を促進するための資金を提供すると共に、アフリ の枠組み」に示されており、この枠組みの基盤となっているのは カ科学技術研究所の設置を支援しました。この研究所は地域レ 「アフリカは 21 世紀に生き残れるか」 と題する報告です。この枠 ベルでの働きかけを通じてアフリカの科学技術力を高めることを 組みは紛争の緩和、ガバナンスの改善、経済成長の拡大、競争 目指すものです。 力の強化と貿易の拡大、援助の効率性改善に焦点を当てたもの です。この戦略を補うものとして、アフリカの貧困削減能力に対 経済成長、競争力、貿易の促進 する 「有望なリアリズム」と呼ばれるビジョンがあり、このビジョ アフリカでは過去 10 年間に 15 カ国が年平均 5% の経済成長 ンは民間セクターの強化、地域統合の促進、キャパシティ ・ビル を記録しましたが、これだけでは世界貿易に占めるアフリカのシェ ディ ング、援助の倍増、世界貿易に占めるアフリカのシェア拡大 アの継続的縮小を相殺するには至りません。貿易を拡大するため の 5 つの分野に重点が置かれています。 世銀は 2005 年 6 月に南アフリカのケープタウンにおいて、ア フリカの膨大なインフラ・ニーズへの出資という課題について話し 合う会議を開き、これには政策立案者、財務専門家、民間部門 やシビルソサエティの代表 200 人以上が参加しました (IFC およ び MIGA の年次報告も参照) 。 紛争の緩和 紛争によりアフリカ諸国の経済成長率は推定で年間 2.2% 低 下しています。世銀は NEPAD と協力して平和と安定の実現に 努力しています。平和と安定は、アフリカ諸国が外国投資を呼び 込み、輸出を拡大するために不可欠です。 2005 年度、世銀は紛争下の国と切迫した状況にある低所得国、 合わせて 17 カ国を支援しました 。同時に透明性を (第 3 章参照) 高め、石油、ガス、ダ イヤモンド、木材、貴金属などの、紛争にか らんだ不法輸出が行われやすい環境を是正するのに努力しま した。 NEPAD は主として、有能で効果的な国づく りを支援して、国 が基礎サービスを提供し、公正と安全を促進し、投資を呼び込 み、富を創出し、また分かち合えるような環境の整備を目指して います。と くに相互評価のメカニズムを通じた実現を目標とするも のです。世銀はその支援のために、新規融資の 20% 以上を公共 セクター運営に充てています。具体的には財政管理、行政事務 第2章:地域別展望 31 図2.1 図2.2 アフリカ地域 アフリカ地域 IBRDとIDAのテーマ別融資 � 2005年度 IBRDとIDAのセクター別融資 � 2005年度 総融資額39億ドルに占める割合 総融資額39億ドルに占める割合 法規 �� ���� 金融・民間セクター開発 産業・貿易 �� ��� 教育 エネルギー・鉱業 ��� ��� 金融 公共セクター運営 ��� ��� 貿易・統合 ��� 上下水道・治水 ��� 環境・天然資源管理 運輸 ��� 経済管理 �� ��� 農業・漁業・林業 社会的保護・ ��� 都市開発 リスク管理 �� 保健・その他の ���� 農村開発 社会サービス ��� 社会開発・ジェンダー・ 参加 �� ���� 人的開発 情報・通信 �� ���� 法律・司法・行政 には、 輸出の 40% を占める農業セク アフリカの労働力の 70%、 ター は同様のプロジェク ト 11 件を対象に総額 5 億 5000 万ドルの支 を強化する必要があります。世銀は NEPAD の 「アフリカの包括 援を行ってきました。対象となったのは、貿易の促進、地域レ 的な農業開発プログラム」がその目的を達成して、2015 年までに ベルでの HIV/ エイズへのアプローチ、民間セクター開発、地域 アフリカの農業生産を年率 6% 拡大できるように支援しています。 の電力システム整備、通信、運輸、3 次医療と教育、農業研究、 NEPAD は域内貿易を自由化し、資本市場を設け、アフリカの産 移動性害虫、 食糧安全保障、 国境を越えた環境問題、 農村コミュ 品に不利に働く関税を段階的に撤廃させると共に、ドーハラウン ニティの気象に関連する脆弱性などです。 ド通商交渉を成功裏に妥結させるよう努力しています。 民間セクターの育成 民間セク ターには成長と雇用創出の原動力になる潜在力があり ますが、その実現のためにはビジネス環境を変える必要がありま す。世銀報告書 「ビジネス環境の現状 2005」は、アフリカがビジ ネスにと ってハイコス トかつハイリスクの場所であると指摘していま す。そのため、2003 年には総額 1350 億ドルに上る世界の海外直 接投資のう ち、アフリカへの配分額はわずか 90 億ドルにすぎませ んでした。アフリカを海外の投資家にとってよ り魅力のあるものに するため、世銀はアフリカの民間セク ターや各国政府との間で建設 的かつ実際的なパー トナーシップ構築を図っ ています。資金調達に あたっても、革新的なアプローチを模索し ており、その一環と して、 世銀は IFC、MIGA と共に、優先順位の高いインフラ・プロジェ クトへの民間セク ターの参加促進を支援し ています。世銀と IFC は 合同で零細・小規模・中規模事業イ ニシアテ ィブにも着手しま した。 援助の簡素化と調和 ミレニアム開発目標 (MDGs)を達成するのに必要な年間 7% の経済成長を実現し、 「万 インフラ投資に 170 億ドルを振り向け、 人のための教育」という目標を達成するのに必要な 21 億ドルを 投資するためには、アフリカ向けの援助は大幅な引き上げが必 地域統合の促進 要です。世銀は「アフリカのための戦略的パートナーシップ」の アフリカは 15 の内陸経済国を抱え、国内総生産 (GDP)もベ 議長として、アフリカに対する援助を簡素化し、調和をはかり、 ルギー 1 国分相当であるため、繁栄のためにはより効果的な地 援助コストを削減する努力をしています。世銀は世界中の開発 域統合が不可欠です。世銀は 2004 年 7 月に地域統合部門を設 パートナーに対し、2003 年にモンテレー・サミ ットで確約したと けました。2007 年度までに約 5 億ドル相当の多国間パイロット・ おり援助を年間 120 億ドル増やし、アフリカ委員会の報告のな プロジェク トに資金を提供する予定です。2001 年度以降、世銀 かで行った公約を実現することを強く求めています。 32 世界銀行 年次報告書 2005 表 2.1 アフリカ地域に対するテーマ別、セクター別融資 | 2000‒2005 年度 単位 :100 万ドル テーマ  2000  2001  2002  2003  2004  2005 経済管理  78.2  138.5  138.7  37.8  67.8  46.5 環境・天然資源管理  172.4  110.0  159.9  227.0  195.3  217.2 金融・民間セクター開発  466.7  625.8  780.7  383.6  810.9  768.2 人的開発  208.5  399.4  739.0  811.4  618.2  620.2 公共セクター運営  495.3  429.6  851.9  432.4  818.5  708.0 法規  26.7  34.0  22.5  34.5  28.3  30.9 農村開発  151.8  296.3  329.2  384.1  360.7  537.2 社会開発・ジェンダー・参加  210.5  491.8  347.4  420.0  374.3  221.8 社会的保護・リスク管理  140.5  376.4  98.3  543.7  209.2  294.3 貿易・統合  53.7  261.5  46.4  37.2  371.5  232.0 都市開発  154.9  206.1  279.6  425.5  261.2  211.4 テーマ総額 2,159.1 3,369.6 3,793.5 3,737.2 4,115.9 3,887.5 セクター 農業・漁業・林業  111.5  212.0  210.4  303.4  268.5  215.3 教育    189.8  209.5  472.6  423.6  362.9  369.0 エネルギー・鉱業  176.3  198.0  490.3  324.4  365.8  509.5 金融    118.4  200.1  192.8  67.2  165.7  68.6 保健・その他の社会サービス  183.1  889.9  616.6  775.9  723.1  590.3 産業・貿易  104.7  170.6  266.7  92.7  95.4  253.8 情報・通信  17.3  21.1  33.8  41.4  52.9  20.0 法律・司法・行政  838.2  880.8  906.9  721.8  1,004.0  1,077.5 運輸    263.9  229.8  491.1  690.5  716.6  507.2 上下水道・治水  155.9  357.8  112.2  296.3  360.8  276.2 セクター総額  2,159.1 3,369.6 3,793.5 3,737.2 4,115.7 3,887.5   うち、  IBRD 融資額  97.7  0.0  41.8  15.0  0.0  0.0     IDA 融資額  2,061.4  3,369.6  3,751.6  3,722.2  4,115.7  3,887.5 注:2005 年度は保証と保証ファシリティを含む。端数を四捨五入したため、合計額が合わないことがある。 第2章:地域別展望 33 東アジア・大洋州地域 東アジア ・大洋州地域では、急速な経済成長の下、所得貧困 結果、貧困層や弱い立場にある人々に重い負担を強いています。 が減少しつつあります。2004 年の経済成長率は 8.5% を記録し、 急激な成長を維持するには、環境保全、天然資源管理、インフ 世界貿易の拡大分のうち 3 分の 1 を占めました。1 日 2 ドル未満 ラ整備、資本市場改善にさらに注意を向ける必要があります。ま で生活する人の数も、1999 年から 2004 年の間に人口が 8000 万 た、経済の運営に当たる機関を一段と強化しなければなりませ 人増えたにもかかわらず、約 2 億 5000 万人減少しました。国や ん。2004 年 12 月の巨大地震と津波で明らかになったとおり、こ 地域によって大きなばらつきはみられるものの、貧困削減を目指 の地域は、 安定と成長の維持という課題を抱えているだけでなく、 すミレニアム開発目標(MDGs)実現に向けた歩みは順調です。 自然または外的な突然の衝撃に対して脆弱だといえます。 中国は、貿易や国境を越えた生産ネッ トワークを通じて、引き 続き大きな経済的影響を及ぼしています。中国の成長は東アジア 世銀の援助 の経済的統合強化に貢献し、同地域の世界経済への統合を促 東アジア ・大洋州地域に対する世銀の戦略は、広範な経済成 進してきました。多く の国々が、中国がもたらす機会を最大化す 長を支援し、域内と世界経済との貿易・統合のレベルをさらに高 ると同時にそれに伴うさまざまな課題に取り組むための方法を模 め、国や地域両方のレベルでガバナンス環境を強化し、社会的 索しています。 安定を高め、ミレニアム開発目標 (MDGs)を達成することを目 天然資源と くに石油の価格高騰が今後、成長を減速させるこ 指したものです。世銀はこ うした目標達成のために、2005 年度、 とになりそうです。他にもいく つかのリスクにより、成長率が低下 29 億ドルの出資を承認しました (IDA グラント・クレジッ トが 11 すると予想されます。一部の国では、腐敗が投資を妨げ、その 億ドル、IBRD 融資が 18 億ドル)。  3310 万ドルの炭素信託基金 東アジア・大洋州地域の概要 総人口:   19 億人 人口増加率:   0.8% 2005年度の  2005年度の 平均寿命:   70 歳 新規融資承認額  融資実行額 乳幼児死亡率(出生 1000 件当たり) :   32 件 IBRD:18億980万ドル  IBRD:18億3740万ドル 若い女性の識字率:   98% IDA:10億7350万ドル  IDA:6億8500万ドル 2004 年の一人当たり国民総所得 (GNI):  1280 ドル エイズ感染者数:   230 万人 2005年6月30日現在において実施中のプロジェクトのポートフォリオ: 注:平均寿命と乳幼児死亡率(出生 1000 件当たり)は 2003 年、若い女性の識字率は 2000‒ 199億ドル 、エイズ感染者数は 2004 年 6 月の国連エイズ合同計画「世界の AIDS 流行に 2002 年(最新) 関する最新情報」 、その他の指標は 2004 年の「世界開発指標」の数字です。   34 世界銀行 年次報告書 2005 世銀融資適格国 インドネシア ソロモン諸島 トンガ 東ティモール マーシャル諸島 モンゴル カンボジア タイ バヌアツ フィジー マレーシア ラオス人民共和国 キリバス 大韓民国 パプアニューギニア フィリピン ミクロネシア連邦 サモア 中国 パラオ ベトナム ミャンマー 契約が締結され、温室効果ガス排出削減のための承認額は総額 世銀は、カンボジアに対する衣類の特恵割当てが終わったの 4490 万ドルになりました。 を受けて、民間セクター開発促進に基づいた経済成長のための 世銀はインドネシアの新政権発足後数カ月の間に、財政運営 戦略立案を支援しています。中国ではモンゴルやロシア連邦との 改善と、腐敗根絶のため、3 億ドルの開発政策融資と 6000 万ド 国境を越えた結びつきを改善し、銀行業務システムを近代化する ルの財政改革プログラムを承認しました。また、カンボジア 、ラ 取り組みを支援しています。ベトナムでは通関システムの強化と、 オス人民民主共和国、大洋州の諸島国、フィリピンのための新 銀行業務システムの近代化を支援しています。大洋州の諸島国と しい援助戦略を承認しました。2004 年 12 月 26 日の津波と地震 フィリピンは、世銀の支援と助言の下、海外送金や労働者の移 による被害については、再建のために拠出された約 5 億ドルの 住システムを整備するための措置を開発中です。 資金の支出調整を支援するため、インドネシア政府の要請に基 東アジア地域においては引き続きガバナンスに大きな重点が置 づいてマルチドナーによる信託基金を設立しました。また、被災 かれています。世銀は 2005 年度、調査では現場の役人がどう 以前の融資のうちの 2000 万ドルを津波被害からの復興活動に すれば地方政府をより効果的なものにすることができるかに焦点 振り向けると共に、2500 万ドルのグラント供与を実施しました。 を絞って、分権化に関する地域調査を行いました。調査結果は 2005 年度には、やはり津波被害からの復興目的で IDA のクレ 「分権化の進む東アジア : 地方政府の取り組み」 と題して出版され ジッ ト1900 万ドルが承認されました。 ました。また一部の国において、世銀の融資によるプロジェク ト・ 世銀は個々の国のニーズに見合った形での働きかけを実行す サイクルの各段階で詐欺や腐敗を発見し、それらを最小限に抑 るため、他の機関とのパートナーシップの下での活動を拡大して える方法を模索しています。インドネシアでは地方レベルでの司 います (囲み 2.1 を参照)。今年度は英国国際開発省およびアジ 法制度の改革を、フ ィリピンでは組織面の改革を支援しています。 ア開発銀行と共に、カンボジアの合同援助戦略の立案に着手し ガバナンスは、カンボジア 、フィリピンの国別支援戦略でも重点 ました。タ イでは環境管理を強化するため、タ イ政府、日本の国 項目となっています。 際協力銀行、米国―アジア環境パー トナーシップ、国連開発計画 (UNDP)とパートナーシップを構築しました。2005 年度には、 開発への参加促進 アジア開発銀行、日本の国際協力銀行、世銀による初のインフ コミュニティ開発イニシアティブは、東アジア地域の社会的安 ラ合同調査報告書も発表されました (IFC および MIGA の年次 定を高めようとする世銀の取り組みにおいて中心的役割をになっ 報告も参照) 。 ています。インドネシアのアチェ州は平和と安定の確保と並んで津 波後の再建に取り組んでいますが、ここではコミュニティがケチャ 投資環境の構築 マタン開発プログラムの下で結束し、訓練を受けた現地ファシリ 2005 年度は 4 件の投資環境評価が完了し、他にも 4 つの評 テータの支援を得て将来に向けた計画の立案を進めています。 価を実施中です。中国では都市部の指導者たちが 23 都市の投 東アジア地域各国によるミレニアム開発目標 (MDGs)達成を 資環境調査で明らかになった問題点を検証しており、このうちハ 支援する世銀の取り組みにおいて、感染症と戦い、教育の機会 ルビン市役所では商事紛争の解決に要する裁判の日数を現在の を拡大し、環境を改善することが重点項目になっています。パプ 400 日から短縮しようとしています。インドネシア政府は、世銀 アニューギニアとベトナムでは HIV/ エイズの拡大を食い止めるた の支援を得て、投資のライセンス・承認システムを登録・投資促 めに活動しています。フィリピンでは、IFC による飲料水への投 進システムに切り替えたいとしています。起業のための手続きを、 資やマニラでの世銀の廃水処理プロジェク トを通じて、政府が上 現在の 151 日から短縮するのが目的です。 下水道へのアクセスを改善するのを支援しています。 第2章:地域別展望 35 図2.3 図2.4 東アジア・大洋州地域 東アジア・大洋州地域 IBRDとIDAのテーマ別融資 � 2005年度 IBRDとIDAのセクター別融資 � 2005年度 総融資額29億ドルに占める割合 総融資額29億ドルに占める割合 法規 �� ���� 金融・民間セクター開発 産業・貿易 �� ��� 教育 ��� 貿易・統合 ��� 金融 公共セクター運営 ��� ���� 環境・天然資源管理 エネルギー・鉱業 ��� ���� 上下水道・治水 経済管理 �� 社会的保護・ リスク管理 �� ���� 都市開発 運輸 ��� 保健・その他の 社会サービス �� ��� 農業・漁業・林業 ���� 農村開発 社会開発・ジェンダー・ 参加 �� ��� 人的開発 情報・通信 ���� ���� 法律・司法・行政 各国が京都議定書に従う中、中国をはじめフィリピン、ベト ナムその他の国々において、排出権売買の需要が高まっていま す。中国では地球環境ファシリティと合同で再生可能エネルギー 拡大プログラムを支援すると共に、中国の熱源改革と建物のエ ネルギー効率化プロジェクトを支援しており、いずれも屋内と屋 外の空気の質が改善されることになります。   囲み2.1 東アジアを結ぶ:インフラの課題に取り組む 世銀、アジア開発銀行、日本の国際協力銀行が「東アジアのイ 当者その他の関係者の間で広く協議が重ねられています。2005 ンフラ整備に向けた新たな枠組み」と題する初の合同調査報告 年度には、10 年以上にわたる調査を経て、ナムトゥン 2 水力発 書を発表し、この中でインフラ整備のための新しい枠組みを提 電プロジェクトが承認されました。このプロジェクトは、貧困削 唱しています。これは、インフラ整備によって、より多くの人 減プログラムのため切望されていた収入をラオス人民民主共和 が経済成長の恩恵を分かち合えるようにすることを目指すアプ 国にもたらすことになります。民間セクターが担当するこのプロ ローチで、説明責任を重視し、リスク、特に腐敗リスクを抑え ジェクトは世銀と MIGA が保証し、アジア開発銀行、欧州投資 ようというものです。この調査報告書は 2005 年、東京で発表 銀行、フランス開発局、北欧投資銀行が支援することになってお され、東アジア全域において政策立案者、企業、政府の財務担 り、ラオスはタイに電力を売ることができるようになります。 36 世界銀行 年次報告書 2005 表 2.2 東アジア・大洋州地域に対するテーマ別、セクター別融資 | 2000‒2005 年度 単位:100 万ドル テーマ  2000  2001  2002  2003  2004  2005 経済管理  0.0  0.0  4.8  29.7  0.0  87.0 環境・天然資源管理  880.4  399.3  102.3  232.3  432.2  446.9 金融・民間セクター開発  627.6  310.9  512.8  458.8  553.9  340.6 人的開発  81.1  52.6  226.4  152.7  164.6  184.6 公共セクター運営  556.2  65.1  127.4  341.5  299.0  344.5 法規  9.3  3.8  20.3  7.3  67.3  45.8 農村開発  430.3  341.6  360.9  411.7  400.9  484.1 社会開発・ジェンダー・参加  72.1  248.0  173.0  143.7  167.2  241.1 社会的保護・リスク管理  55.2  239.4  138.7  161.5  5.5  88.7 貿易・統合  36.2  40.0  43.3  138.0  82.9  126.5 都市開発  230.6  433.1  63.6  233.6  399.2  493.5 テーマ総額  2,979.1 2,133.8 1,773.6 2,310.8 2,572.7 2,883.3 セクター 農業・漁業・林業  118.4  109.7  151.2  106.7  290.4  207.9 教育    84.4  14.8  134.6  225.7  118.6  228.0 エネルギー・鉱業  640.5  142.2  314.5  254.3  67.2  359.1 金融    34.4  87.5  219.2  22.7  49.0  213.1 保健・その他の社会サービス  118.4  217.3  243.8  184.1  84.3  204.3 産業・貿易  28.8  151.8  9.4  32.5  78.7  159.1 情報・通信  20.0  12.5  11.1  6.6  0.0  5.0 法律・司法・行政  592.2  257.4  115.2  385.1  257.5  436.6 運輸    584.4  729.7  540.2  684.3  1,209.9  306.7 上下水道・治水  757.7  410.8  34.4  408.7  417.1  763.6 セクター総額  2,979.1 2,133.8 1,773.6 2,310.8 2,572.7 2,883.3   うち、  IBRD 融資額  2,495.3  1,136.1  982.4  1,767.1  1,665.5  1,809.8     IDA 融資額  483.8  997.7  791.2  543.7  907.2  1,073.5 注:2005 年度は保証と保証ファシリティを含む。数字は端数を四捨五入したため合計額が合わないことがある。 第2章:地域別展望 37 アッサム農村インフラ農業サービス・プロジェクトの 一環として進められている漁業セクターの開発(インド) 南アジア地域 南アジアでは、今後数十年の間に貧困を大幅に削減できる可 が発生し、政治不安が高まったのです。ネパールでも政治的に 能性があります。1995 年から 2004 年の間に国内総生産 (GDP) 不安定な状況が続きました。一方、アフガニスタンでは選挙の結 は年平均 5.6% で成長し、2005 年には 6.2% の成長が見込まれ 果、ガバナンスの改善と開発のための条件が整い、インドとスリ ています。 ランカでは選挙による政権交代の結果、農村部の貧困層に恩恵 外貨準備金の増加や安定したマクロ経済政策の下で、南アジ をもたらすような政策への転換が実現し、パキスタンでは 4 年連 アが引き続き成長する見込みはきわめて大き く、バングラデシュ、 続で大幅な経済成長がみられました。 スリランカ、南部インドの一部の州はすでに人的開発において大 南アジア地域協力連合加盟国の間で対話が進められ、経済統 きく前進しました。とはいえ、南アジアは引き続き深刻な課題を 合の新たな機会が創出される一方で、新たな課題も浮上しつつあ 抱えています。人口 14 億人のうち、世界の貧困層の約半数にあ ります。インフラを整備して国や地域を結ぶと同時に、新たな需 たる 5 億人が今も 1 日 1ドル未満で暮らしています。特に、不利 要に応えられる民間セクターの育成も急務となっています。 な立場にある人々や子どもの状態は深刻で、人間らしい生活を生 きられないでいます。非識字率は 44% と世界で最も高く、世界 世銀の援助 の妊産婦死亡件数のうち 3 分の 1 が南アジアで発生しています。 世銀は 2005 年度、南アジアに対して約 50 億ドル (IBRD か 2004 年の終わりと 2005 年の初めには大きな災害が南アジア ら 21 億ドル、IDA から 29 億ドル)の融資を承認しました。この を襲いました。スリランカ、インド南部、モルディブが津波によ 援助は都市部と農村部のインフラに対する膨大な需要を満たし、 り壊滅的被害を受け (囲み 2.2 参照)、バングラデシュでは洪水 投資環境の改善に取り組むために使われます。世銀の援助は、 南アジア地域の概要 総人口:   14 億人 人口増加率:   1.6% 2005年度の  2005年度の 平均寿命:   63 歳 新規融資承認額  融資実行額 乳幼児死亡率(出生 1000 件当たり):  66 件 IBRD:20億9590万ドル  IBRD:10億6730万ドル 若い女性の識字率:   62% IDA:28億9740万ドル  IDA:30億3460万ドル 2004 年の一人当たり国民総所得(GNI) :  590 ドル エイズ感染者数:   520 万人 2005年6月30日現在において実施中のプロジェクトのポートフォリオ: 182億ドル  注:平均寿命と乳幼児死亡率(出生 1000 件当たり)は 2003 年、若い女性の識字率は 2000‒ 、エイズ感染者数は 2004 年 6 月の国連エイズ合同計画「世界の AIDS 流行に 2002 年(最新) 関する最新情報」 、その他の指標は 2004 年の「世界開発指標」の数字です。   38 世界銀行 年次報告書 2005 世銀融資適格国 アフガニスタン  インド  スリランカ  ネパール  パキスタン  バングラデシュ  ブータン  モルディブ 公平と参加、公的説明責任、HIV/ エイズ、地域統合という 4 つ スの提供状況が改善され、民間セクターの競争力が高まり、デ の横断的な観点から、人的開発を促進することを目指しています。 ジタル・ディバイ ドが緩和されることになります。 世銀の戦略における重大なコンポーネントとして、分析・助言 活動があります (第 3 章を参照) 。インドの農村自治体への財政 の分権化についてまとめた最近の報告書は、 パンチャヤト (村会) の財政を取り上げて、システムの改善を勧告しています。アフガ ニスタンでは貧困と脆弱性に関する調査結果を検証し、インドで では持続性栄養不良についての調査を終えました。パキスタンで はジェンダーに関する評価を終え、結果についてパキスタン政府 と話し合っているところです (www.worldbank.org/sar. を参照)。 他の開発機関とのパートナーシップは、南アジアの支援にお いてますます大きな役割を果たすようになってきており、人的開 発を強力に支援しています。バングラデシュ、インド、ネパール、 パキスタンでは、保健・教育プロジェク トにおいてセク ター全体に わたるアプローチや開発政策融資が標準的になってきています。 2005 年度は、インドのための新しい国別評価戦略が策定され ました。この戦略は公平と参加を強調し、インドの最貧州である オリッサ州など、取り残された地域に焦点が移っていることを示 しています (IFC および MIGA の年次報告も参照) 。 投資環境の構築 世銀は 2005 年度、南アジアの投資環境に関するいく つかの評 価を終えました。具体的には、世銀としては初の紛争後のアフガ ニスタンについての評価、インドについての 3 度目の評価、初の 地方レベルでの評価 (インドのオリッサ州)、スリランカでの農村 ・ 都市評価などです。世銀は IFC や MIGA と共に、南アジア全域 からこの作業の関係者を集めてワークショップを開催しました。 パキスタンにおいて、税務改革に 1 億ドル、銀行セクター改革 に 3 億ドルを承認しました。また、インドの農村の道路プログラ ムに 4 億ドルを、ウッタルプラデシュ、ビハールの両州における 国道システムの一部を改善するために 6 億 2000 万ドルをそれぞ れ承認しました。このほかに、中小企業育成支援に 1 億 2000 万ドル (インド)、情報テクノロジーの強化に 5300 万ドル(スリラ ンカ)を承認しました。スリランカではこれによって、公共サービ 第2章:地域別展望 39 図2.5 図2.6 南アジア地域 南アジア地域 IBRDとIDAのテーマ別融資 � 2005年度 IBRDとIDAのセクター別融資 � 2005年度 総融資額50億ドルに占める割合 総融資額50億ドルに占める割合 法規 ���� ���� 金融・民間セクター開発 産業・貿易 ��� ��� 教育 ��� 貿易・統合 ��� 金融 エネルギー・鉱業 �� 公共セクター運営 ��� ��� 環境・天然資源管理 ��� 上下水道・治水 ��� 都市開発 運輸 ��� 経済管理 �� ���� 農業・漁業・林業 社会的保護・ ���� 農村開発 リスク管理 �� 保健・その他の 社会サービス ��� 社会開発・ジェンダー・ 参加 �� ���� 人的開発 情報・通信 �� ���� 法律・司法・行政 開発への参加促進 ルナド州の保健システム強化のために 1 億 1000 万ドルが、バン 世銀の南アジア戦略は、この地域の最大の資源は人間である グラデシュの保健の質とアクセス改善のために 3 億ドルがそれぞ という理念を柱にしています。世銀の援助は、社会のあらゆる階 れ提供されました。 層の人々の生活水準改善を支援し、人々が開発に参加してその インドではオリッサ州の開発支援のために 1 億 2500 万ドルが 恩恵を分かち合うことの妨げとなっている障壁を取り除く ことを目 承認されました。これにより、資金難や債務を削減し、貧困削 指しています。 減のための資源動因が可能になります。世銀はまた、バングラデ 2005 年度は農村開発、教育、保健の各分野での支援を拡大 シュが幅広い改革を進めて経済成長を促進し、貧困削減支援の し、社会サービス提供の改善に重点が置かれました。アフガニ ために 2 億ドルの開発支援融資を承認しました。パキスタンにつ スタンでは教育の質を高めるために 3500 万ドルの融資が、高等 いても同様のプロジェク トが承認され、貧困削減戦略支援のため 教育の資金として4000 万ドルのグラントがそれぞれ提供されまし に 3 億ドルが提供されます。 た。バングラデシュでは中等教育へのアクセスや質の改善を目的 引き続き懸念されているのは HIV/ エイズで、南アジアでは約 に 1 億ドルが提供され、ネパールでは 「万人のための教育」の目 500 万人の感染者が暮らしています。世銀は、この病気にかかり 標達成のために 5000 万ドルのクレジットが承認されました。保 やすい住民グループ、若者、一般住民の間にエイズが広がるの 健分野では、ネパールで十分な保健サービスを受けられない人々 を防ぐため、各国のプログラムに対する支援を強化しました。ま が基本的サービスを受けられるようにするため 5000 万ドルが、 た、各国間の対話を促進して、得られた教訓や有効な介入のあり パキスタンではポリオ撲滅のために 2150 万ドルが、インドのタミ 方について情報を共有しています。   囲み2.2 インド洋大津波災害への対応 2004 年 12 月のインド洋大津波は現代における最悪の自然災 モルディブは 1400 万ドル(IDA のグラント 560 万ドルとクレ 害の一つとなり、 スリランカで 3 万 1000 人以上が犠牲になり、 ジット 840 万ドル)の緊急支援を受けましたが、このプログ 約 10 万戸の家屋を破壊しました。インドでは約 2260 キロに ラムは推定で 1 億 8800 万ドルの追加資金を必要としています。 およぶ海岸線に沿って膨大な資産や生計手段が失われ、特に漁 スリランカとインドでは十分な資源が動員されて、初期の再建 業で生計を立てている人々に甚大な打撃を与えました。モル と復興を進めることができました。世銀はスリランカに対して ディブでは国土全域が深刻な影響を受け、被害総額はモルディ 1 億 5000 万ドルの緊急支援を行いました。これには、IDA の ブの年間 GDP のほぼ 3 分の 2 にも達しました。 グラント 3000 万ドルとクレジット 4500 万ドル、IDA の資金 による現行のプロジェクトから転用された 7500 万ドルが含ま 世銀はアジア開発銀行、日本の国際協力銀行、国連と協力して、 れます。インドの津波災害復興のためには 5 億 2850 万ドルの 被害状況と復興ニーズについて早急に評価するのを支援し、再 支援が承認されました(IDA の緊急クレジット 4 億 6500 万ド 建・復興プログラムの立案に分析と助言の面で実質的な支援を ルを含む) 。世銀は将来の災害被害を抑えるため、南アジアの 行いました。 災害対策やリスク軽減のためのプロジェクトに対し、引き続き 資金を提供することにしています。 40 世界銀行 年次報告書 2005 表 2.3 南アジア地域に対するテーマ別、セクター別融資  | 2000‒2005 年度 単位:100 万ドル テーマ  2000  2001  2002  2003  2004  2005 経済管理  35.2  47.4  232.5  123.5  7.7  87.5 環境・天然資源管理  80.8  587.8  295.2  94.2  94.8  433.9 金融・民間セクター開発  265.4  865.9  381.6  689.1  689.9  923.0 人的開発  276.2  124.8  30.2  546.9  760.6  1,041.6 公共セクター運営  212.7  261.0  678.0  467.3  669.8  639.5 法規  56.5  36.1  59.3  12.5  2.9  10.5 農村開発   426.1  379.5  417.2  403.7  314.1  1,132.5 社会開発・ジェンダー・参加  261.5  240.5  414.2  197.3  642.8  265.3 社会的保護・リスク管理  168.0  118.4  164.0  184.4  98.6  337.0 貿易・統合  29.4  398.3  70.0  197.3  52.7  63.7 都市開発  300.7  186.8  766.2  2.6  87.8  59.0 テーマ総額 2,112.4 3,246.6 3,508.4 2,918.7 3,421.6 4,993.3 セクター 農業・漁業・林業  65.0  116.1  328.1  212.6  251.9  940.8 教育    171.4  206.4  95.9  364.6  665.8  286.4 エネルギー・鉱業  277.8  746.2  504.8  150.6  130.8  83.6 金融    46.0  209.7  310.0  185.8  331.4  461.8 保健・その他の社会サービス  393.3  188.1  278.7  369.0  334.6  493.2 産業・貿易  85.3  34.0  443.1  144.9  46.1  485.2 情報・通信  54.6  17.7  12.4  11.5  16.9  91.9 法律・司法・行政  407.0  377.4  632.5  372.3  925.5  885.7 運輸    590.6  1,294.3  758.1  1,067.6  444.8  1,181.0 上下水道・治水  21.4  56.8  144.9  40.0  273.7  83.7 セクター総額 2,112.4 3,246.6 3,508.4 2,918.7 3,421.6 4,993.3   うち、  IBRD 融資額  934.3  2,035.0  893.0  836.0  439.5  2,095.9     IDA 融資額  1,178.1  1,211.6  2,615.4  2,082.7  2,982.1  2,897.4 注:2005 年度は保証と保証ファシリティを含む。数字は端数を四捨五入したため合計額が合わないことがある。 第2章:地域別展望 41 ロマ族の子供 ヨーロッパ・中央アジア地域 ヨーロッパ・中央アジア地域は 2004 年も引き続き順調で、い は EU のそれまでの加盟国と比べると 40 〜 60% に過ぎず、新 くつかの国の目覚しい成長に支えられて 7.2% の経済成長を記 加盟国がそれに追いつくまでには 20 年から 30 年かかるとみら 録しました。ロシア連邦は 7.2%、トルコは 8.9%、ウクライナは れています。アゼルバイジャ ン、カザフスタン、ロシアなどの中所 12.1% の成長を達成しました。ほかにもこの地域の進歩を表す 得国は、やはり豊かな資源に恵まれた他の国々が抱えているのと ものとしては、チェコ共和国が世銀の資金援助・技術協力の受 同じ政策課題に取り組んでいます。具体的には、石油収入管理 領国から卒業し、開発援助の重要なパートナーとして、援助の を改善し採油業への経済的依存を減らすことです。 提供国になる意志を表明したことが挙げられます。 各国はそれぞれ、移行のさまざまな段階にありますが、そこに 域内のほとんどの国が開かれた市場経済の基礎になる制度 はまだ中央計画経済時代の名残が見受けられます。プラス面で や枠組みを確立しました。貧困も大幅に減少し、1999 年から は教育・保健での人的開発指標が比較的良好なことが挙げられ 2003 年の間に 4000 万人もの人々が貧困から脱することができま ます。マイナス面では、多くの町が遠隔の不毛地にあること (特 した。しかし中央アジアや南コーカサスでは広い範囲でなお貧 にロシア) 、国の官僚制度が肥大化し過ぎていること、深刻な環 困が目立ち、多く の国がアフリカの貧しい国々が抱えているよう 境問題を抱えていることが挙げられます。移行初期の不況からま な開発の課題に直面しています。 だ完全に抜け出せないまま新たな課題が生じたため、この地域 この地域の中所得国も世界の他の地域の中所得国が抱えて の国々はミ レニアム開発目標(MDGs)、特に保健と環境関連の目 いるのと同じ問題、つまり豊かな国々 との乖離という問題に直面 標を達成する上で、困難な課題を抱えています。とりわけ懸念さ しています。欧州連合の 8 つの新加盟国の一人当たり国民所得 れるのが結核と HIV/ エイズの急速な蔓延で、この地域の状況 ヨーロッパ・中央アジア地域の概要 総人口:   5 億人 人口増加率:   0.1% 2005年度の  2005年度の 平均寿命:   68 歳 新規融資承認額  融資実行額 乳幼児死亡率(出生 1000 件当たり):  29 件 IBRD:35 億 8860 万ドル  IBRD:27 億 4810 万ドル 若い女性の識字率:   99% IDA:5 億 490 万ドル  IDA:6 億 1740 万ドル 2004 年の一人当たり国民総所得(GNI) :  3290 ドル エイズ感染者数:   130 万人 2005年6月30日現在において実施中のプロジェクトのポートフォリオ: 158億ドル 注:平均寿命と乳幼児死亡率(出生 1000 件当たり)は 2003 年、若い女性の識字率は 2000‒ 、エイズ感染者数は 2004 年 6 月の国連エイズ合同計画「世界の AIDS 流行に 2002 年(最新) 関する最新情報」 、その他の指標は 2004 年の「世界開発指標」の数字です。   42 世界銀行 年次報告書 2005 世銀融資適格国 この項ではコソボ、セルビア・モンテネグロについても報告する。 アゼルバイジャン エストニア スロバキア共和国 ハンガリー マケドニア旧ユーゴ ロシア連邦 スラビア共和国 アルバニア カザフスタン セルビア・  ブルガリア モンテネグロ モルドバ アルメニア キルギス共和国 ベラルーシ タジキスタン ラトビア ウクライナ グルジア ボスニア・  トルクメニスタン ヘルツェゴビナ リトアニア ウズベキスタン クロアチア チェコ共和国は 2005 年度に トルコ ポーランド ルーマニア 世銀の融資対象国を卒業した は世界でも最も深刻です。 つあります。世銀報告書「ビジネス環境の現状 2005」では、リ ト 世銀の国別援助戦略は、各小地域のニーズに合わせて策定 アニアとスロバキア共和国が世界の改革国トップ 10 にランキング され、投資環境整備による成長促進と競争力強化、社会参加 されています。一方、同じ域内でも、ビジネスの開始に必要な手 促進という 2 つの幅広いテーマを柱にしています。世銀はまた 続きが多すぎるとして、世界のワースト10 カ国に数えられた国々 HIV/ エイズ―エイズはヨーロッパ・中央アジア地域では若者の もあります。 問題に直結しています―や生物多様性、水、二酸化炭素排出、 世銀は投資環境を改善するため、政策改革や制度づく りを進 再生可能エネルギーに関わる重要な環境問題など、グローバルな めることにより、マクロ経済を安定させ、競争と貿易を促進し、 問題にも取り組んでいます。 官民両セクターの運営を改善し、腐敗を削減し、金融仲介活動 を強化し、物的インフラを改善しようとしています。アルメニアの 世銀の援助 貧困削減支援融資は、航空・鉄道サービスを自由化し、公益事 2005 年度は、36 億ドルの IBRD 融資・保 証と 5 億ドルの 業の規制枠組みを強化して、競争を促進することに焦点を合わ IDA の融資を合わせて 41 億ドルが承認されました。また、98 せたものです。ポーランドでは初の無煙炭鉱閉鎖プロジェク トが、 件の経済・セクター調査を実施し、68 件の技術協力を行いまし 非経済的な炭鉱を閉鎖し、閉鎖後の環境問題に対処することで、 た。世銀理事会にはボスニア ・ヘルツェゴビナ、クロアチア 、モ セクターの効率を高めるのに役立っています。 ルドバ、セルビア ・モンテネグロの国別援助戦略、カザフスタン 世銀は融資以外の方法でも、投資環境の改善を支援していま とポーランドの国別パートナーシップ戦略、ロシアの国別援助戦 す。キルギス共和国、リ トアニア、タジキスタン、トルコで投資環 略経過報告、アルバニア 、アルメニア 、アゼルバイジャ ン、グルジ 境評価を実施しました。セルビア ・モンテネグロは世銀の勧告で ア 、モルドバ、 ウズベキスタンのための貧困削減戦略文書 (PRSP) 裁判所以外に登録機関が設けられ、ビジネス開始のための待ち またはその更新版が提出されました。 時間や手続きが軽減されました。またルーマニアで知識経済に こうした成果物やサービスは、革新的で最新鋭の構想を数多 ついての分析作業を行い、トルコでは第 4 回知識経済フォーラム く取り入れたものになっています。革新的な融資手段の例として を共催しました。 は、ポーランドのセクター横断的な道路保守・修復プロジェク ト があり、このプロジェク トは国の信託制度に依存しています。ほ 開発へ参加促進 かにも、南東ヨーロッパの電力業界のためのアダプタブル・ロー 世銀の活動は、開発プロセスへの参加を拡大するため、公 ンや EU 新加盟 8 カ国のための包括的な技術協力ファシリティ 共サービスへのアクセスや質を高め、弱い立場にある人々の経 などの多国間プロジェク トなどがあります。ルーマニアの部分リ 済的・社会的統合を進めることを重視しています。 スク保証は電力民営化の規制上のリスクを軽減するものです。融 アゼルバイジャン再建パイロッ ト融資は、ナゴルノ・カラバフ紛 資以外のサービスとしては、カザフスタンとの合同経済調査プロ 争後の地域で運輸、エネルギー、その他のインフラを再建する グラムがあり、資金需要が銀行の資力を超える中所得国での合 のに役立ち、190 のマイ クロプロジェク トに資金を提供して 16 万 同分析作業として有望なモデルになりつつあります (IFC および 人の暮らしを改善しました。その後継プロジェク トであるアゼルバ MIGA の年次報告も参照) 。 イジャン国内避難民経済支援プロジェク トも、避難民の生活環境 を改善し、避難民の経済的機会の拡大や社会的統合を推進する 投資環境の構築 ことになります。キルギス農村教育プロジェク トは教員のパフォー 国によってばらつきはあるものの、投資環境は徐々に改善しつ マンス改善の意欲を高めると共に、教科書などの教材を提供す 第2章:地域別展望 43 図2.7 図2.8 ヨーロッパ・中央アジア地域 ヨーロッパ・中央アジア地域 IBRDとIDAのテーマ別融資 � 2005年度 IBRDとIDAのセクター別融資 � 2005年度 総融資額41億ドルに占める割合 総融資額41億ドルに占める割合 法規 �� ���� 金融・民間セクター開発 産業・貿易 �� ��� 教育 ��� 金融 公共セクター運営 エネルギー・鉱業 ��� �� ���� 貿易・統合 ��� 上下水道・治水 経済管理 ���� ���� 環境・天然資源管理 ��� 農業・漁業・林業 運輸 ��� 社会的保護・ リスク管理 ��� ��� 都市開発 保健・その他の 社会サービス ��� ��� 農村開発 社会開発・ジェンダー・ 参加 �� ���� 人的開発 情報・通信 ���� ���� 法律・司法・行政 るものです。ウズベキスタンの第 2 次保健プロジェクトは、第 1 次プロジェクトでの試験的改革を踏まえ、8 つの地区で一次医療 のアクセスや質を高めることを目指すものです。世銀はまたロマ 族の貧困と人的開発に対する意識の向上に努め、機会拡大のた めに各種の関係者から長期的な約束を取り付けました (囲み 2.3 を参照)。 ヨーロッパ・中央アジア地域では中小企業が成長の鍵になっています。   囲み2.3 「ロマ族統合のための10年」のスタート ヨーロッパのロマ族は何世紀にもわたって差別され、孤立して 成すべき詳細な目標を盛り込んだ国内行動計画を実施すること きました。この状況を解消するための画期的なイニシアティブ になっています。このイニシアティブには行動計画の実施状況 が 2005 年 2 月 2 日に開始され、ヨーロッパと中央アジアの 8 を毎年モニターするためのメカニズムも含まれています。 カ国の指導者がロマ族をヨーロッパの完全かつ平等な市民とし て迎え入れることを約束しました。 「開 「ロマ族統合のための 10 年」の開始に先立ち、 このイニシアティブでは、 世銀を含むドナー かれた社会協会」と世銀が中心的役割を務めました。 機関は「ロマ族教育基金」に 4200 万ドルを提供することを約 束しました。この基金は各国がロマ族の教育成果改善の支援に ロマ族はかつてはジプシーの名で知られた、ヨーロッパで最大 使われます。 かつ最貧の少数民族で、その数は急速に増えています。 「ロマ族 統合のための 10 年」のイニシアティブは、域内に暮らす 700 ロマ族に関する世銀の取り組みの詳細は www.worldbank.org/ 万から 900 万人のロマ族住民の教育、保健、居住、雇用機会を roma. で紹介しています。 「ロマ族統合のための 10 年」のウェ 改善して、その経済的、社会的地位を高めることを目指すもの ブサイトは www.romadecade.org. です。 です。各国政府はこのイニシアティブの下、2015 年までに達 44 世界銀行 年次報告書 2005 表 2.4 ヨーロッパ・中央アジア地域に対するテーマ別、セクター別融資 | 2000‒2005 年度 単位:100 万ドル テーマ  2000  2001  2002  2003  2004  2005 経済管理  98.6  127.4  636.1  19.5  242.0  17.4 環境・天然資源管理  301.7  161.3  157.5  122.7  309.4  394.4 金融・民間セクター開発  890.7  1,074.0  2,210.8  483.3  950.2  933.9 人的開発  278.9  51.1  138.3  550.4  297.1  539.4 公共セクター運営  227.8  95.6  1,313.7  317.7  895.1  272.3 法規  160.2  77.4  106.6  289.8  132.3  66.8 農村開発  213.4  137.6  309.9  194.9  117.4  161.5 社会開発・ジェンダー・参加  43.6  65.1  188.8  55.9  33.9  246.6 社会的保護・リスク管理  530.1  381.2  363.9  288.5  305.3  668.8 貿易・統合  143.5  138.4  32.5  130.6  182.6  424.4 都市開発  153.6  383.9  65.4  216.7  93.6  368.0 テーマ総額  3,042.2 2,693.1 5,523.6 2,670.0 3,559.1 4,093.5 セクター 農業・漁業・林業  317.8  139.0  470.4  335.4  168.6  107.0 教育    22.7  62.5  83.2  395.0  164.0  263.8 エネルギー・鉱業  398.6  336.6  218.0  262.9  352.2  657.9 金融    175.8  802.3  1,284.9  195.8  836.9  259.1 保健・その他の社会サービス  277.8  281.9  524.7  415.3  244.3  484.9 産業・貿易  604.7  296.5  552.1  269.0  126.3  253.5 情報・通信  151.9  8.7  9.6  1.0  7.0  10.9 法律・司法・行政  797.2  446.4  2,181.9  698.9  1,176.8  1,160.6 運輸    207.1  118.3  67.1  30.6  321.2  557.9 上下水道・治水  88.5  200.7  131.7  66.3  162.0  337.9 セクター総額  3,042.2 2,693.1 5,523.6 2,670.0 3,559.1 4,093.5   うち、  IBRD 融資額  2,733.1  2,154.0  4,894.7  2,089.2  3,012.9  3,588.6     IDA 融資額  309.1  539.0  628.9  580.8  546.2  504.9 注:2005 年度は保証・保証ファシリティを含む。四捨五入したため合計額が合わないことがある。 第2章:地域別展望 45 ラテンアメリカ・カリブ海地域 争力改善による雇用創出、教育の充実と革新的システムの確立 2004 年、ラテンアメリカ・カリブ海地域は 24 年ぶりとなる 6% の経済成長を記 録しました (2003 年は 2%) による人的資本強化と生産性の改善、公共セクター運営および 。この急成長 は、この地域の輸出に対する需要増、商品市況の急激な伸び、 制度の改善、社会的公平および参加の促進、包含的でありなが 世界的に高い流動性、さらには変動相場制の導入や財政・経常 ら経済的な福祉制度の設立、環境保護機関の整備と天然資源の 収支の調整など、国内政策の改善を反映したものです。ただし、 効果的な利用促進、マクロ経済と財政の安定化、財政資源のイ 2005 年の成長率は、世界の生産や貿易に歩調を合わせてやや ンフラ投資などが挙げられます。 鈍化し、約 4.3% と見込まれています。 ラテンアメリカ・カリブ海地域に対する 2005 年度の融資総額 この地域は豊かな天然資源に恵まれ、平均所得も中所得に属 は 52 億ドルでした(IBRD 融資が 49 億ドル、IDA 融資とグラン しますが、著しい格差と慢性的な貧困・排斥が目立ちます。域 トが 3 億ドル)。いずれも、専門知識と地域の状況に即したアプ 内 30 カ国は開発を進めるにあたり、投資と生産性を拡大し、景ローチを組み合わせた革新的な手法によるプロジェク トを支援す 気の変動を抑え、各種サービスや融資、土地へのアクセスを拡大 るものです。 し、インフラや制度、ガバナンスを整備する必要があります。 2005 年度、世銀はこの地域を対象とした初の開発政策融資を 実施しました。融資プロジェク トの例としては、ボリビアの社会 世銀の援助 セクター強化、ブラジルの財政改革と住宅セクター政策、エルサ この地域に対する世銀の援助は、公平かつ持続的な成長を確 ルバドルの広範な経済成長、ホンジュラスの債務削減と金融セク 保し、最も貧しく弱い立場にある人々に焦点を当てることにより、 ター開発、ウルグア イの社会プログラムなどがあります。ドミニカ 貧困削減を目指すものです。優先課題としては、投資環境と競 共和国、エルサルバドル、グアテマラ、ジャマイカ、ウルグアイ ラテンアメリカ・カリブ海地域の概要 総人口:   5 億人 人口増加率:   1.4% 2005 年度の  2005 年度の 平均寿命:   71 歳 新規融資承認額  融資実行額 乳幼児死亡率(出生 1000 件当たり):  28 件 IBRD:49 億 440 万ドル  IBRD:35 億 5760 万ドル 若い女性の識字率:   95% IDA:2 億 6130 万ドル  IDA:4 億 4030 万ドル 2004 年の一人当たり国民総所得(GNI) : 3600 ドル エイズ感染者数:   210 万人 2005年6月30日現在において実施中のプロジェクトのポートフォリオ: 注:平均寿命と乳幼児死亡率(出生 1000 件当たり)は 2003 年、若い女性の識字率は 2000‒ 190億ドル 、エイズ感染者数は 2004 年 6 月の国連エイズ合同計画「世界の AIDS 流行に 2002 年(最新) 関する最新情報」 、その他の指標は 2004 年の「世界開発指標」の数字です。   46 世界銀行 年次報告書 2005 世銀融資適格国 アルゼンチン ガイアナ スリナム チリ パナマ ペルー アンティグア・  グアテマラ セントクリスト ドミニカ共和国 パラグアイ ボリビア バーブーダ グレナダ ファー・ネーヴィス ドミニカ国 ブラジル ホンジュラス ウルグアイ コスタリカ セントビンセント  トリニダード・トバゴ ベネズエラ・  メキシコ エクアドル およびグレナディーン ボリバル共和国 コロンビア 諸島 ニカラグア エルサルバドル ジャマイカ ハイチ ベリーズ セントルシア に対し ては、新し く結果重視型となった国別援助戦略が立案しま し スを改善し、排除されている人々の参加を促進するため、保健、 た。ハイチではニーズ・アセスメントのための 「暫定協力枠組み」 教育、環境保護、社会参加、社会的保護の各プログラムに資金 の策定を支援し、移行支援戦略を承認したほか、初の IDA 融 を提供しています。メキシコやペルー北部、アルゼンチン、チリ、 資とグラン トのパッケージ (合計 7500 万ドル)を提供しました。 ウルグアイ、パラグアイでは、ディベロップメント・マーケッ トプ 分析・助言サービスの分野では、農村セクターに関する主要調 レース(DM)により、改革を促進し、若者の開発への参加を進 査(囲み 2.4 を参照)、投資環境構築と開発への参加促進に関す めています。 る分析を実施しました 。 (IFC および MIGA の年次報告も参照) 2005 年度の融資対象となったのは、ブラジルの環境持続性プ ロジェク ト(5 億 300 万ドル)と住宅改革 (5 億 300 万ドル)、メ 投資環境の構築 キシコの基礎教育プロジェク ト(3 億ドル) 、コロンビアの災害に 世銀はラテンアメリカ・カリブ海全域で、民間セクター拡大の 対する脆弱性低減プロジェク ト(2 億 6000 万ドル) 、ペルーの社 妨げとなっている煩雑な手続きを減らし、製品コストを高め、ビ ジネスの収益性を損なっている脆弱な物流システムの改善を目 指す各国の取り組みを支援しています。2005 年度の主な融資と しては、ブラジルのプログラム的財政改革および社会保障改革 に 6 億 5800 万ドル、メキシコの競争力改善のための改革に 2 億 5000 万ドル、アルゼンチンの持続的インフラ投資に 2 億ドル、 コロンビアの労働市場改革と社会構造調整に 2 億ドル、ペルー の分権化と競争力改善に融資 1 億ドルと保証ファシリティ 2 億ド ル、ドミニカ共和国の電力セクター強化に 1 億 5000 万ドルがあ ります。 世銀は 2005 年度、公共支出改革のための優先分野を特定す るため、グアテマラ、メキシコ、パラグア イ、セントルシア、セン トビンセントおよびグレナディーン諸島、ウルグア イの各国におい て、公共支出についてのレビューを実施しました。ブラジル、エ クアドル、エルサルバドル、グアテマラについては投資環境調査 を完了し、コスタリカ、ジャマイカでは調査に着手しました。エ ルサルバドルでは調査結果が初の開発政策融資の立案に反映さ れ、融資のモニタリングと評価のためのベンチマークになりまし た。このほかにも成長と競争力、貿易改革と労働市場のリスク 、 労働競争力、移住 (北米自由貿易協定との関連で)、中米自由貿 易協定、革新性などについて分析作業を実施しました。 開発への参加促進 世銀は貧困を減らし、貧困層による基本的サービスへのアクセ 第2章:地域別展望 47 図2.9 図2.10 ラテンアメリカ・カリブ海地域 ラテンアメリカ・カリブ海地域 IBRDとIDAのテーマ別融資 � 2005年度 IBRDとIDAのセクター別融資 � 2005年度 総融資額52億ドルに占める割合 総融資額52億ドルに占める割合 法規 �� ���� 金融・民間セクター開発 産業・貿易 �� ���� 教育 ���� 金融 公共セクター運営 ��� ��� 貿易・統合 エネルギー・鉱業 �� ��� 上下水道・治水 経済管理 �� ���� 環境・天然資源管理 運輸 ��� ��� 農業・漁業・林業 社会的保護・ 保健・その他の リスク管理 ��� ��� 都市開発 社会サービス �� ��� 農村開発 社会開発・ジェンダー・ 参加 �� ��� 人的開発 情報・通信 �� ���� 法律・司法・行政 会改革プロジェク ト(1 億ドル)、エルサルバドルの土地管理プロ 先住民族、貧困、人的開発についての地域調査も実施しました。 ジェクト(4000 万ドル)などです。 世銀の活動に関する情報をさらに利用しやすいものとし、開発 世銀は各国の貧困削減計画支援の一環として、ガイアナとホ 問題について知識に基づいた論議を促進するため、情報センター ンジュラスの貧困削減戦略文書 (PRSP)経過報告書を承認しま (PIC)をラテンアメリカ・カリブ海地域の 12 カ国に展開しました。 した。分析・助言サービスとしては、ボリビア 、ドミニカ共和国、 また、グローバル・ディベロップメント・ラーニング・ネッ トワーク メキシコ、ペルーで貧困評価、ブラジルで若者の発育に関する (GDLN)を通じて知識の共有とキャパシティ ・ビルディングに貢献 研究を行ったほか、中米で社会的保護、アルゼンチンで貧困・ しました。GDLN は保健、中小企業、農村開発、教育に関する 不平等・経済成長に関する調査をそれぞれ実施しました。社会 プログラムを提供しています (第 1 章参照)。 保障、サービス実施の改革、都市の貧困、保健改革、教育改革、   囲み2.4 開発にとっての農村活動の重要性 世銀の最新報告書「都市を越えて : 農村による開発への貢献(仮 の高い関税を引き下げる必要に迫られるでしょう。 題)」 によると、ラテンアメリカ・カリブ海地域の国々の農村活 動の開発に対する経済的貢献は公式に報告されている数字の 2 報告書は、各国が、関税引き下げの際に競争力の弱いセクターに 倍に達します。これは農村活動が他の経済活動に前方連関効果 おける国内小規模生産者の再編を進めるプログラムを実施する必 を及ぼし、輸出への貢献も大きいからです。報告書ではまた、 要があると結論づけています。同時に成長持続と貧困削減のため 同地域の農村人口が公式発表の 2 倍に達しており、農村が抱え に、農村向け公共支出を生産者に対する補助金にではなく保健、 る問題の規模が過小評価されていると指摘しています。このこ 社会的保護、農村教育、農村インフラ、研究開発、環境保護、対 とから、ラテンアメリカ・カリブ海地域の国々は自国の農村コ 象を明確にした貧困削減プログラムなど、公共財への投資に振り ミュニティに対する投資を量と質の両面で改善する必要のある 向けることも必要になります。 ことがわかります。 報告書はまた、農村地域の貧困が農業だけではなく、メキシコ南 貿易面では、報告書は、先進国が農家への補助金を削減すれば、 部、ブラジル北東部、コロンビアのカリブ海沿岸など特定の地域 市場アクセスが改善され、域内各国の利益になるとしています。 と関連していると指摘しています。さらにラテンアメリカ・カリ ただしその場合、恩恵を受けるのは主として農産品純輸出国、 ブ海地域では農村所得のほぼ半分が農業以外の活動によるものに 特にアルゼンチン、チリ、ウルグアイ、パラグアイとなり、域 なっています。これらの調査結果はセクター政策と地域政策の一 内でも食糧輸入国では物価上昇が見込まれます。貧しい消費者 段の統合の必要性を強く示唆しています。 が物価上昇に苦しまないよう、純輸入国は農産物に対する自国 48 世界銀行 年次報告書 2005 表 2.5 ラテンアメリカ・カリブ海地域に対するテーマ別、セクター別融資 | 2000‒2005 年度 単位:100 万ドル テーマ  2000  2001  2002  2003  2004  2005 経済管理  587.6  570.1  391.0  567.2  111.2  310.4 環境・天然資源管理  270.8  68.8  187.4  240.3  159.1  841.2 金融・民間セクター開発  1,056.1  985.4  965.4  819.8  912.4  729.6 人的開発  157.7  471.2  560.4  1,171.7  1,046.7  469.8 公共セクター運営  519.9  1,099.7  1,182.8  798.6  672.0  506.2 法規  111.7  202.2  15.5  138.8  270.9  147.9 農村開発  103.0  580.8  168.3  415.9  249.6  331.7 社会開発・ジェンダー・参加  141.5  371.7  248.9  123.1  268.9  187.9 社会的保護・リスク管理  901.2  530.0  310.4  1,050.3  926.9  950.4 貿易・統合  160.7  218.3  83.9  59.6  364.6  233.4 都市開発  53.3  202.0  251.9  435.2  337.6  457.1 テーマ総額  4,063.5 5,300.1 4,365.8 5,820.5 5,319.8 5,165.7 セクター 農業・漁業・林業  104.1  72.3  85.0  58.4  379.6  233.4 教育    62.8  529.1  560.4  785.5  218.3  680.0 エネルギー・鉱業  79.3  107.6  445.6  96.2  50.5  212.6 金融    1,191.8  946.7  593.5  973.0  405.1  530.0 保健・その他の社会サービス  360.2  904.7  660.5  1,574.1  1,558.9  443.4 産業・貿易  165.3  38.3  51.4  183.4  428.0  199.9 情報・通信  28.7  97.8  16.5  52.4  14.0  44.7 法律・司法・行政  1,791.0  1,726.7  1,440.0  1,564.9  1,521.3  1,776.0 運輸    11.6  650.3  463.1  146.4  675.7  556.4 上下水道・治水  268.7  226.6  49.8  386.2  68.4  489.5 セクター総額  4,063.5 5,300.1 4,365.8 5,820.5 5,319.8 5,165.7   うち、  IBRD 融資額  3,898.1  4,806.7  4,188.1  5,667.8  4,981.6  4,904.4     IDA 融資額  165.4  493.4  177.8  152.7  338.2  261.3 注:2005 年度は保証・保証ファシリティを含む。四捨五入したため合計額が合わないことがある。 第2章:地域別展望 49 中東・北アフリカ地域 中東・北アフリカ地域は 2002 年から 2004 年にかけて年平均 民間セクターと雇用の拡大、教育の質向上による世界経済におけ 4.7% の経済成長しを記録しました。1990 年代が平均 3.7% だっ る競争力確保、男女平等の機会提供 (囲み 2.5)、乏しい水資源 たのに比べて大きな前進です。この目覚しいパフォーマンスには の管理と節約の 5 つを優先課題としています。 雇用創出が伴い、2000 年に 15% だった失業率が 2004 年には それらの優先課題に対応するため、世銀は 2005 年度、13 億 13.4% に低下しました。 ドルの融資を行いました。その大部分 (12 億ドル)が IBRD か ただし、こ うした景気拡大にもかかわらず、中東・北アフリカ地 らの融資として中所得国に振り向けられ、1 億ドルは IDA からの 域が世界的なエネルギー価格変動の影響を受けやすいことに変わ 譲許的融資として低所得国に供与されました。 りはありません。現在の失業者に加え、将来労働市場に参入する また、2005 年度は経済・セクター調査を 60 件以上実施し、 人々に職を提供するためには、向こ う 20 年にわたって毎年 500 万 年金、教育、公共支出、労働市場など、さまざまな問題に取り 人分の雇用を新たに創出する必要があります。そのためには、こ 組みました。 「中東・北アフリカ地域の経済発展と展望  2005 年 の地域に、民間セクターの強化、市場の多様化、世界貿易の拡 (仮題) 」と題する地域報告書では、今後の成長見通しを示す 大が求められてきます。 とともに、構造改革の進捗状況について評価しています。 融資適格性を満たさない国に対しては、 「実費精算を前提とし 世銀の援助 た技術協力プログラム」の下で引き続き助言サービスを提供して 世銀の中東・北アフリカ地域戦略は、雇用創出が急務である います。2005 年度はクウェート、オマーン、カタール、サウジア との認識に基づいており、ガバナンスと公共セクター運営の強化、 ラビア 、アラブ首長国連邦が投資環境、教育、人的資源開発な 中東・北アフリカ地域の概要 総人口:   3 億人 人口増加率:   1.7% 2005 年度の  2005 年度の 平均寿命:   68 歳 新規融資承認額  融資実行額 乳幼児死亡率(出生 1000 件当たり):  45 件 IBRD:12 億 1210 万ドル  IBRD:4 億 8780 万ドル 若い女性の識字率:   80% IDA:7150 万ドル  IDA:1 億 7830 万ドル 2004 年の一人当たり国民総所得(GNI): 2000 ドル エイズ感染者数:   10 万人 2005年6月30日現在において実施中のプロジェクトのポートフォリオ: 注:平均寿命と乳幼児死亡率(出生 1000 件当たり)は 2003 年、若い女性の識字率は 2000‒ 59億ドル 、エイズ感染者数は 2004 年 6 月の国連エイズ合同計画「世界の AIDS 流行に 2002 年(最新) 関する最新情報」 、その他の指標は 2004 年の「世界開発指標」の数字です。   50 世界銀行 年次報告書 2005 世銀融資適格国 この項ではヨルダン川西岸・ガザ地区についても報告する。 アルジェリア  イラク  エジプト・アラブ共和国  ジブチ  モロッコ  レバノン イエメン共和国  イラン・イスラム共和国  シリア・アラブ共和国  チュニジア  ヨルダン どの分野で政策改革について助言を受けました。 開発への参加促進 紛争の影響下にある地域では、国際社会のドナー国に代わっ 中東・北アフリカ地域では、教育へのアクセスが目覚しく拡大 て信託基金を運営して緊急のニーズに対応し、現地の制度整備 しましたが、将来の雇用市場のニーズに応えられる質の高い教育 を促進しました。 イラクでは 9 つの信託基金による活動が始まり、 制度を築く という課題を引き続き抱えています。 基盤インフラやサービスの再建・復旧を支援したほか、幅広く訓 世銀が支援しているモロッコの教育改革プログラムは、2008 練を行ってイラクの各省庁が自らの手で再建プロジェク トを実施 年までに学齢期児童のほとんどが基礎教育を受けられるように できるようにするのを支援しました。ヨルダン川西岸・ガザ地区 し、学習の質を高め、中途退学や留年の割合を引き下げること では、経済計画の立案を支援しました。この計画は撤退プロセ を目指しています。エジプトでは、特に不利な立場にある子ども スの一環としてパレスチナ経済を再建するために、パレスチナ当 に質の高い早期教育を受けさせようという政府の取り組みに世銀 局とイスラエル政府がとるべき措置の輪郭を示したものです (IFC の融資が役立てられています。イラクではほぼ 3 分の 1 の学校 および MIGA の年次報告も参照) 。 が毎日 2 〜 3 シフトの授業をすることを余儀なくされていますが、 世銀は複数ドナーによる信託基金を通じて、100 以上の学校の 投資環境の構築 2005 年度、世銀は投資環境評価を実施して、エジプト・アラ ブ共和国、イラク、モロッコ、オマーン、シリア・アラブ共和 国、チュニジア 、アラブ首長国連邦、イエメン共和国の各国でビ ジネスを妨げている主な障壁を探りました。シリアとイエメン共和 国では貿易のための流通システムについての分析を行い、チュニ ジアでは輸出拡大プロジェク トに資金を提供しました。 投資環境を改善するためには、ビジネス・コス トを減らし、契約 が確実に実行されるよ うにするだけでは不十分です 。世銀はエジプ トにおいて優れた企業統治を促進し、イラクでは市場経済への移 行を容易にするためのキャパシテ ィ・ビルディングを支援しています。 インフラ・サービスは、サービスの提供者によりよい投資環境 を提供しなければ改善できません。世銀は各国政府が競争を通 じて公共の資源をよりよ く運用し、規制を緩和して民間の参加を 促進するのを支援しています。この分野をリードしているのはエ ジプトで、 空港開発プロジェクトが行われています。アルジェ リア、 イラク 、チュニジアでは民間投資を通じて情報インフラ・サービ スの近代化支援が行われています。 自然災害の被災国では、地域経済を復活させるために基盤イ ンフラの再建が不可欠です。2004 年のイランのバム地震被害か らの復興のため、世銀は電気通信と運輸インフラの再建を支援 しています。 第2章:地域別展望 51 図2.11 図2.12 中東・北アフリカ地域 中東・北アフリカ地域 IBRDとIDAのテーマ別融資 � 2005年度 IBRDとIDAのセクター別融資 � 2005年度 総融資額13億ドルに占める割合 総融資額13億ドルに占める割合 法規 ���� ���� 金融・民間セクター開発 産業・貿易 ��� ���� 教育 ���� 金融 ���� 環境・天然資源管理 公共セクター運営 ��� エネルギー・鉱業 ���� ���� 上下水道・治水 経済管理 �� ���� 都市開発 運輸 �� 社会的保護・ リスク管理 �� 保健・その他の 社会サービス ���� ���� 農村開発 ���� 農業・漁業・林業 社会開発・ジェンダー・ 参加 ��� ��� 人的開発 情報・通信 �� ���� 法律・司法・行政 新校舎建設や 140 の校舎の緊急補修に融資を行っています。 エジプト、レバノン、モロッコ、ヨルダン川西岸・ガザ地区、イエ 成人の識字率が 50% を割り込むイエメン共和国では、2015 メン共和国に情報センターを設立しました。 こう したセンターでは、 年までに初等教育の完全普及とジェンダーの平等というミレニア インターネットなど情報アクセスの機会を提供しています。 ム開発目標を達成しようとする政府の取り組みに世銀の資金が 世銀は実行中の中東・北アフリカ地域のシビルソサエティ との 提供されています。具体的には、女子や障害児、農村児童など、 協働の取り組みの一環として、レバノンとイエメン共和国でディベ 弱い立場に置かれている集団が恩恵を受けられるような教育制 ロップメント・マーケットプレース・コンペを開催しました。貧困 度の確立を目指した改革が実行されています。イエメン社会基金 と戦う革新的な草の根プロジェク トとして何百もの提案が集まり、 のもとでは、地域住民がコミュニティ ・ベースのプロジェクトに参 入賞者には開発に関するア イデアをプロジェク トとして実行するた 加するようになりました。教育、保健、水と衛生、道路関連の約 めの資金が贈られました。 400 のプロジェクトは、900 万人以上の住民に恩恵をもたらすと エジプトとレバノンでは、国別援助戦略についてシビルソサエ 共に、数百万人分の臨時雇用の機会を創出しました。 ティとの協議が行われ、関係者が自ら直面する開発上の課題やど 情報へのアクセスが参加促進、透明性確保、説明責任の鍵と う対応するのが最善かについて話し合いました。 なっています。世銀は大学や地域の団体と協力して、 アルジェリア、   囲み2.5 女性のビジネス・チャンスを拡大する 中東・北アフリカ地域のほとんどの国において、女性や女子の教 地、電力、法体制、経済の不確実さという点では、男女共に似 育が大きく前進しました。早ければ 2005 年中にも初等・中等教 たような制約を受けています。しかし腐敗については、女性の 育におけるジェンダー・ギャップが埋まる見込みである上、女子 方が男性よりも影響を受けやすく、またネットワーク関連でも の大学卒業者数は男子とほぼ並びました。ただし、社会規範や伝 女性の直面する障壁の方が大きいために、男性支配のビジネス 統のために、女性の仕事や政治参加は遅れています。高い失業率 サークルに女性が参入するのが難しくなっています。零細・小 や職場での差別の結果、企業家や投資家、生産者の道を選ぶ女性 企業の経営者からの聞き取り調査では、女性の方が資本、市場 もいますが、ビジネスの世界で大きな壁に突き当たっています。 知識、成功に必要な技能のいずれも入手し難いことが判明しま した。そのため女性が経営する企業は概して男性の場合に比べ 世銀は女性の仕事の機会を増やすため、もっと女性企業家のニー て本格的でなく、小規模で、収益性も低くなっています。 ズに合ったものとするよう投資環境評価の変更に取り組んでい ます。この試験的イニシアティブでは、金融、ネットワーク、 世銀は、IFC のジェンダー・企業家・市場プログラムと協力し、 市場へのアクセスの観点からジェンダー・ギャップについて検 各種調査の結果を活用して、技術協力や政策改革を通じてジェ 証が行われます。 ンダー関連のビジネス上の制約を克服する方法を模索していま す。現在エジプトとイエメン共和国でパイロット・プロジェク モロッコ、オマーン、シリアでの予備調査の結果によると、土 トが実施されています。 52 世界銀行 年次報告書 2005 表 2.6 中東・北アフリカ地域に対するテーマ別、セクター別融資 | 2000‒2005 年度 単位:100 万ドル テーマ  2000  2001  2002  2003  2004  2005 経済管理  0.0  11.9  5.0  0.0  0.0  45.8 環境・天然資源管理  123.3  27.5  21.7  186.0  113.8  160.2 金融・民間セクター開発  61.8  78.8  204.1  48.3  259.3  166.6 人的開発  187.9  35.7  61.9  140.9  192.1  95.4 公共セクター運営  130.6  102.6  93.3  106.6  19.6  166.0 法規  9.3  56.5  49.1  48.0  1.7  1.8 農村開発  89.2  86.4  14.5  100.6  65.1  155.3 社会開発・ジェンダー・参加  71.6  52.5  13.4  63.1  70.7  123.0 社会的保護・リスク管理  100.0  5.6  11.0  96.1  31.6  98.5 貿易・統合  3.0  3.4  24.8  3.6  158.3  0.0 都市開発  143.5  46.7  55.8  262.7  178.7  271.1 テーマ総額  920.0 507.5 554.5 1,056.0 1,091.0 1,283.6 セクター 農業・漁業・林業  120.6  46.5  2.9  196.7  27.2  229.2 教育    197.1  72.3  38.0  154.3  154.9  124.0 エネルギー・鉱業  0.0  0.0  1.3  0.0  0.0  0.0 金融    5.3  0.0  110.5  1.9  20.8  142.5 保健・その他の社会サービス  158.9  39.3  41.7  124.2  52.0  0.3 産業・貿易  47.9  27.0  71.7  74.3  23.4  277.9 情報・通信  1.3  59.2  69.9  2.3  0.0  18.5 法律・司法・行政  108.9  161.5  74.7  213.6  93.6  232.9 運輸    59.6  82.8  70.9  107.9  409.6  29.0 上下水道・治水  220.5  19.0  73.1  180.9  309.5  229.3 セクター総額 920.0 507.5 554.5 1,056.0 1,091.0 1,283.6   うち、  IBRD 融資額  760.2  355.2  451.8  855.6  946.0  1,212.1     IDA 融資額  159.8  152.3  102.7  200.4  145.0  71.5 注:2005 年度は保証・保証ファシリティを含む。四捨五入したため合計額が合わないことがある。 第2章:地域別展望 53 3 2005 年度の活動概要 知識の共有 2005 年度、世銀は第 5 回国別分析調査 (CAW) ワークショッ 世銀に蓄積されている豊富な開発関連知識は、世銀の援助活 プを開催しました。今年度の会合には 20 を超える開発機関・政 動において、常に重要な役割を果たしてきました。世銀は借入国 府から 40 人の代表者が参加しました。CAW ワークショップの に関する研究から、国別援助の分析・概念フレーム ワークの構築、 目的は、分析活動の重複を防ぎ、借入国の取引コストを削減し、 さらには借入国が開発に必要な能力を習得するためのキャパシ 主要セクター分析報告書の基準を確立することです。現在、国 ティ ・ビルディ ングまで、多岐にわたる知識関連活動を展開してい 別分析調査には 30 を超える ドナー機関が参加し、ウェブサイト ます。 を通して情報を共有しています (www.countryanalyticwork.net)。 2005 年度、世銀の品質保証グループは世銀が 17 カ国で実施 研究 した分析・助言サービスを評価しました。そのうちの 2 件は、国 「世界開発報告 2006:公正と開発 (仮題) (2005 年 9 月刊行予 別援助戦略で実施されるすべての融資とポート 」 フォリオの成果を 定)は、公正と開発プロセスの関係性を分析した報告書です。本 分析するパイロッ トプログラムでした。この結果、タスクごとの 書は国家が繁栄を謳歌するためには、機会均等を実現し、極度 評価では捉えることのできないタスク間の相乗効果について、新 の貧困を防ぐことが肝要であり、長い目で見れば、公正と効率は たな知見を得ることができました。2005 年度は、2002 年度と 補完関係にあると述べています (www.worldbank.org/wdr2006 お 2003 年度に実施された 9 カ国の評価に、 結果重視イニシアティブ、 よび www.econ.worldbank.org 参照)。 プログラム融資、マルチセクター ・チーム、キャパシティ ・ ビルディ 2005 年度には、1990 年代の開発活動の教訓をまとめた主要 ングといった新しい視点を加えた評価が実施されました。これま 報告書 「1990 年代の経済成長:改革の 10 年の教訓 (仮題) 」が でに実施された分析・助言サービスの国別評価の数は 36 件に 刊行されました。本書は 1990 年代に導入された主要な政策 / 制 上っています。 度改革が、各国の成長にどのような影響を与えたのかを分析する と共に、1990 年代の主な出来事、各国の状況、代表的な学術 セクター戦略 研究や論争を概観し、この時代の教訓が経済成長に対する考え 2005 年度には、2 件の重要なセクター戦略報告書が作成され 方をどう変えたのかを考察しています。 ました。 「制度改革による人々のエンパワーメント :世銀プロジェ クトにおける社会開発 (仮題) 」は、社会開発に焦点を当てた世 分析・助言サービス 銀の行動計画です (第 1 章参照) 。一方、 「MDGs の達成、視野 世銀は融資活動を補完するために、知識の創出、共有、およ の拡大と有効性の最大化 (仮題) 」は、借入国が 「万人のための び応用に取り組んでいます。こうした分析・助言サービスの中心 教育」目標とミレニアム開発目標 (MDGs)の教育関連目標を達 を占めているのが、経済・セクター調査 (ESW)と融資を伴わな 成することで、教育セクターを強化し、ダイナミックな知識経済 い技術協力です。 に備えるためにはどうすればよいのかを提案したものです。この 2005 年度は 694 件の ESW 報告書と 351 件の技術協力報告 ほか、世銀のセクター / テーマ別戦略を総合的に評価した初の 書が作成されました。テーマとして最も多かったのは、金融・民 報告書 「セクター戦略実施アップデー ト」も刊行されました。 間セクター開発および公共セクター運営でした。国別援助プログ ラムの一環として、借入国の主体性、参加型プロセス、キャパシ 能力開発 ティ・ビルディング、パートナーシップ等に関する分析調査が実施 世界銀行研究所(WBI)は、技術協力、テーマ別の学習プロ されるケースも増えています。 グラム、閣僚向けの研修などのリーダーシップ開発研修から成る   第3章:2005年度の活動概要 55 図3.1 能力開発プログラムを借入国に提供しています。WBI は経済・ IBRDとIDAの地域別融資 � 2005年度 セクター調査 (ESW)の一環として、さまざまなツールを用い、 合計223億ドルに占める割合 借入国の国家能力 (知識経済への対応度、ガバナンスなど)を 南アジア ��� ���� アフリカ 診断しています。1955 年の設立以来、WBI の活動には 50 万人 以上が参加しました。 2005 年度、WBI は 900 件を超える活動を実施しました。こ 中東・北アフリカ �� ���� 東アジア・大洋州 れらの活動には、主に遠隔学習や E ラーニングを通して、11 万 人近くが参加しました (第 1 章囲み 1.2「国境を越える GDLN」 参照) 。2002 年を境に、WBI は単なる研修機関から、36 の重 点国 (世銀が定義する 5 地域を網羅)に多彩なサービスを提 ラテンアメリカ・ 供する包括的なサービス提供機関へと姿を変えつつあります。 カリブ海 ��� ���� ヨーロッパ・中央アジア 2005 年度は、11 カ国の国別援助戦略に大き く貢献しました。 WBI は世銀の国別チームと密接に連携しながら、 「開発のた めの知識プログラム」を複数の国で実施しています。これは 「知 識評価法」と呼ばれる分析ツールを用いて、グローバル知識経 図3.2 済に対する各国・地域の対応状況を評 価するものです (www. IBRDとIDAのテーマ別融資 � 2005年度 合計223億ドルに占める割合 worldbank.org/etools/kam. 参照)。本プログラムの最新の報告書 「インドと知識経済:強みと機会の活用 (仮題) 」には、インドの 法規 �� ��� 金融・民間セクター開発 経済・制度改革に対する具体的な提言がまとめられています。 �� 貿易・統合 フランスのマルセイユにある WBI の「知識ハブ」は、中東 ・ 公共セクター運営 ��� 環境・ ��� 天然資源管理 北アフリカ地域のプログラム開発の拠点となっています。WBI 経済政策管理 �� はこの他に数カ国の現地事務所に職員を派遣しています。また、 社会的保護・ �� 都市開発 世銀南アジア地域部門の要請に応えて、まもなく ニューデリーに リスク管理 ��� も地域部門が開設される予定です (www.worldbank.org/wbi 参 ��� 農村開発 照)。WBI のその他のプログラム(ガバナンス、汚職対策)につ 社会開発・ジェンダー・ いては第 1 章をご覧ください。 参加 �� ��� 人的開発 世銀の融資 世銀は国際資本市場から資金を調達する IBRD と、富裕な 加盟国から直接拠出金を得る IDA で構成されています。IBRD 図3.3 と IDA の資金はいずれも、途上国の貧しい人々のために役立て IBRDとIDAのセクター別融資 � 2005年度 合計223億ドルに占める割合 られています。2005 年度の IBRD/IDA 融資の概要については 産業・貿易 �� �� 教育 図 3.1‒3.3 をご覧ください。 �� 金融 世銀の国別融資には、ミ レニアム開発目標(MDGs)の達成とい エネルギー・鉱業 �� う世銀の目標が反映されています 。融資は借入国の個別のニー ズに ��� 上下水道・治水 基づいて行われ、その手段はますます柔軟なものになっ ています。 運輸 ��� 国別援助戦略 (CAS)は、借入国における世銀グループの活 農業・漁業・林業 �� 動の指針となるものです。CAS は借入国が定めた開発ビジョン 保健・その他の 社会サービス ��� をもとに、政府、シビルソサエティ組織、開発パートナー、およ びその他の関係者との協議を経て策定されます。CAS は借入国 情報・通信 �� ��� 法律・司法・行政 の開発状況を分析し、その国のニーズに合った支援プログラムを 提案します。CAS は世銀グループの支援が、借入国の持続可能 56 世界銀行 年次報告書 2005 表 3.1 世界銀行によるテーマ別、セクター別の融資 | 2000‒2005 年度 単位:100 万ドル テーマ    2000  2001  2002a  2003  2004  2005 経済政策管理  799.6  895.3  1,408.0  777.8  428.6  594.6  環境・天然資源管理  1,829.4  1,354.6  924.0  1,102.6  1,304.6  2,493.8 金融・民間セクター開発  3,368.4  3,940.9  5,055.4  2,882.9  4,176.6  3,862.0 人的開発  1,190.3  1,134.7  1,756.1  3,374.0  3,079.5  2,951.0 公共セクター運営  2,142.5  2,053.7  4,247.2  2,464.1  3,373.9  2,636.4 法規    373.6  410.0  273.2  530.9  503.4  303.8 農村開発  1,413.7  1,822.3  1,600.0  1,910.9  1,507.8  2,802.2 社会開発・ジェンダー・参加  800.8  1,469.7  1,385.7  1,003.1  1,557.8  1,285.8 社会的保護・リスク管理  1,895.0  1,651.0  1,086.4  2,324.5  1,577.0  2,437.6 貿易・統合  426.4  1,059.9  300.9  566.3  1,212.7  1,079.9 都市開発  1,036.6  1,458.6  1,482.4  1,576.3  1,358.1  1,860.0 テーマ総額  15,276.2 17,250.6 19,519.4 18,513.2 20,079.9 22,307.0 セクター 農業・漁業・林業  837.5  695.5  1,247.9  1,213.2  1,386.1  1,933.6 教育    728.1  1,094.7  1,384.6  2,348.7  1,684.5  1,951.1 エネルギー・鉱業  1,572.4  1,530.7  1,974.6  1,088.4  966.5  1,822.7 金融    1,571.6  2,246.3  2,710.8  1,446.3  1,808.9  1,675.1 保健・その他の社会サービス  1,491.7  2,521.2  2,366.1  3,442.6  2,997.1  2,216.4 産業・貿易  1,036.7  718.3  1,394.5  796.7  797.9  1,629.4 情報・通信  273.8  216.9  153.2  115.3  90.9  190.9 法律・司法・行政  4,534.6  3,850.2  5,351.2  3,956.5  4,978.6  5,569.3 運輸    1,717.2  3,105.2  2,390.5  2,727.3  3,777.8  3,138.2 上下水道・治水  1,512.6  1,271.7  546.0  1,378.3  1,591.6  2,180.2 セクター総額  15,276.2 17,250.6 19,519.4 18,513.2 20,079.9 22,307.0   うち、IBRD 融資額    10,918.6  10,487.0  11,451.8  11,230.7  11,045.4  13,611.0     IDA 融資額  4,357.6  6,763.6  8,067.6  7,282.5  9,034.4  8,696.1 注:2005 年度は保証と保証ファシリティを含む。端数を四捨五入したため、合計が合わないことがある。 a. 2002 年年次報告の表 2.2 の数字と一致しないのは、ラオス人民民主共和国でのプロジェクトの扱いが異なるため。2002 年年次報告書では社会的保護・リスク管理の値が 220 万ドル少なく、 農村開発が 220 万ドル多くなっている。   第3章:2005年度の活動概要 57 な開発と貧困削減に最も効果を発揮する分野を特定することを目 IDA の役割 指しています。 IDA は最貧国に譲許的融資を行う世界最大の機関です。IDA 2005 年度、世銀は 36 件の CAS と CAS 進捗報告書を作成 融資適格国の基準となる一人当たり国民所得の上限は、2005 年 しました。このうちの 22 件は IDA 借入国とブレンド借入国に関 度は 895 ドルでした。IDA は経済規模の小さい諸島国のように、 するもの、14 件は IBRD 借入国に関するものでした。また、14 融資適格国の基準となる一人当たり国民所得は超えているが、 件は IFC と共同で作成されました。このほか、正式な CAS を IBRD 融資を受けるだけの信用力を持たない国にも支援を提供し 作成する準備が整っていない国に関して、8 件の暫定戦略ノート ています。融資額は借入国の成長促進政策や貧困削減政策の質 が作成されました。 をもとに決定され、この評価は毎年実施されます。 現在ではすべての正式な CAS に結果重視の視点が盛り込ま IDA 融資を受けている国々は、MDGs の達成に取り組んでい れています。結果重視型 CAS には、世銀の介入と借入国の長 ますが、 その前途には多く の複雑な問題が立ちはだかっています。 期的な開発目標の関連性を示すマトリクスや、開発の進捗状況 政策面の優先課題としては、成長の促進と貧困削減、公共セク を確認するための指標が記載されています。 結果重視型 CAS は、 ターのガバナンスと透明性の改善、紛争、危機、および災害から 世銀の国別援助戦略の効果を向上させるものと期待されていま の復興、インフラ整備、基礎教育の質の向上と貧困層が基礎教 す(www.worldbank.org/cas 参照)。 育を受ける機会の拡大、HIV/ エイズやその他の伝染病に対する 対策の強化、民間セクター投資の条件となる健全な投資環境の 低所得国  構築などがあります (第 1 章参照) 。 世銀の使命である貧困削減は、低所得国では特に重要な意 IDA はきわめて譲許的な融資を通して、途上国を支援してき 味を持っています。その他の国と比べると、低所得国では貧困 ました。2003 年度にはグラントの適用範囲が拡大されました。 の発生率が高く、制度面の制約も深刻で、持続可能な成長を促 2006 年度からは、IDA 国の中でも特に債務額の大きい最貧国 す投資環境は整っておらず、資金へのアクセスも限られているか のプロジェク トを支援するために、グラント資金が利用される予 らです。低所得国に対する世銀の支援の基盤となっているのは、 定です (IDA に関する詳細は www.worldbank.org を参照)。 1999 年末に導入された貧困削減戦略文書 (PRSP)です。PRSP は国内外のパートナーや関係者との広範な協議に基づいて、借 IDA の融資 入国自身が作成する結果重視型の包括的なロードマップです。 2005 年度、IDA は 160 件のプロジェクトに対して、総額 87 PRSP には借入国のマクロ経済政策、構造政策、および社会政 億ドルの支援を承認しました (融資額 67 億ドル、グラント 20 億 策が記されており、 成長を促進し、 貧困を削減するためのセクター ドル、保証 1 億ドル) 。これは、過去最高だった昨年をわずかに 横断プログラムの枠組みとして、また IDA 融資やその他の開発 下回る水準です。 援助の土台として利用されています。 融資承認額が最も多かったのはアフリカ地域で、IDA 融資承 2005 年度の世銀理事会では 8 件の正式 PRSP (大幅修正後 認総額の 45% に相当する 39 億ドルの融資が行われました。第 に再提出された PRSP 1 件を含む)と 2 件の暫定 PRSP が検討 2 位は南アジア (29 億ドル) 、第 3 位は東アジア ・大洋州(11 億 されました。 この結果、 正式 PRSPを持つ国は47カ国となりました。 ドル)でした。2005 年度は IDA 第 13 次増資の最終年に当た このほか、20 カ国が貧困削減戦略の年次進捗報告書を提出しま り、資源が限定的であったため、特にアフリカにとって打撃とな した。世銀はこれまでの成果と今後の課題を明らかにするために、 りました。国別に見ると、 特に多く の IDA 融資を承認されたのは、 国際通貨基金 (IMF)と協力して貧困削減戦略のプロセスを検証 インド、 ベトナム、 バングラデシュ、 パキスタン、 エチオピアでした。 しました。世銀と IMF は借入国、 ドナー、およびシビルソサエティ 2005 年度は IDA 融資の約 21% がグラントとして供与されま などの関係者の経験を分析し、その経験から得られた教訓をもと した。その内訳は、重債務貧困国に対するものが 8 億 9700 万 に、プロセスを改善するための提言を行いました。 ドル、紛争後諸国に対するものが 4 億 6300 万ドル、最貧国が 貧困削減支援融資 (PRSC)は、PRSP に基づいて低所得国 3 億 1600 万ドル、HIV/ エイズ関連のプロジェク トに対するもの に提供される IDA 援助の 1 つです。PRSC は借入国自身が設定 が 1 億 3300 万ドル、自然災害復興プロジェク トに対するものが し、かつ政府予算に反映されている貧困削減優先項目を支援す 4900 万ドルでした。   るもので、2005 年度の世銀理事会では 17 カ国に対し、17 件の セクター別に見ると、融資承認額が最も多かったのは法律・司 PRSC が承認されました。 法・行政で、IDA 融資全体の 26% に相当する 22 億ドルの融資 58 世界銀行 年次報告書 2005 が行われました。また、保健 ・その他の社会サービス (13 億ドル) 図3.4 と運輸 (11 億ドル)にも多額の融資が行われました。 IDAの地域別融資承認額 � 2005年度 合計87億ドルに占める割合 テーマ別に見ると、IDA 融資承認総額に占める割合が最も多 南アジア ��� ��� アフリカ かったのは人的開発 (19%)と農村開発(17%)でした。次いで 金融・民間セクター開発が 16%、公共セクター運営が 16%、社 会的保護 ・ リスク管理が 8% でした。図 3.4、3.5、および 3.6 は、 2005 年度の IDA 融資承認額を地域、テーマ、およびセクター 別で分類したものです。 中東・北アフリカ �� IDA の原資 ラテンアメリカ・ カリブ海 IDA の活動資金は自己資金と ドナー国からの拠出金でまかな �� ヨーロッパ・中央アジア �� ���� 東アジア・大洋州 われています。ドナーと借入国の代表者は 3 年ごとに会議を開 き、IDA の融資方針と優先分野を話し合い、今後の融資プログ ラムに対する新規拠出額を決定します。通常、拠出額が最も多 いのは主要先進国ですが、途上国や移行国も ドナー国に名を連 図3.5 ねています。この中には現在 IBRD から融資を受けている国や、 IDAのテーマ別融資承認額 � 2005年度 IDA から融資を受けた経験を持つ国も含まれています。 合計87億ドルに占める割合 2005 年 2 月、IDA 第 14 次増資(IDA14)に関する交渉が終 法規 �� ��� 金融・民間セクター開発 了しました。IDA14 は 2006 年度から 2008 年度に承認される �� 貿易・統合 融資の原資となるものです。拠出総額は 242 億 SDR (約 353 億 �� 環境・天然資源管理 ドル、SDR= 特別引出権)となる予定です。その内訳は、ドナー 公共セクター運営 ��� �� 都市開発 からの新たな拠出金が 141 億 SDR (約 207 億ドル)、自己資金 経済政策管理 �� が 87 億 SDR (約 127 億ドル、過去の融資に対する元本返済金 ��� 農村開発 社会的保護・ や投資収 益など) 、IBRD 純利益からの移転が 11 億 SDR (約 リスク管理 �� 15 億ドル)です (ただし、IDA 理事会の承認が必要) 。ドナー 国は IDA14 への参加を確約していますが、一部のドナー国は当 社会開発・ジェンダー・ 参加 �� ��� 人的開発 初の増資目標である 30% 増を達成するために、引き続き拠出額 の増額を検討しています (IDA の資金源については図 3.7、社会 セクターに対する IDA 援助については図 3.8 を参照) 。 図3.6 切迫した状況にある低所得国(LICUS) IDAのセクター別融資承認額 � 2005年度 長期的な開発を達成し、世界規模の安全保障を実現するため 合計87億ドルに占める割合 には、切迫した状況にある低所得国 (LICUS)に効果的に関与 産業・貿易 �� ��� 教育 することが不可欠です。世銀は 2005 年度も引き続き、援助の効 果の改善に努め、最も脆弱な 25 の国々の開発を慎重に監督しま エネルギー・鉱業 ��� �� 金融 した。プロジェクトの即応性を高め、その他のドナーと緊密に連 �� 上下水道・治水 携することにより、ハイチ、リベリア 、スーダンといった紛争後諸 運輸 ��� 国に、迅速かつ柔軟な支援を提供できるようになりました。また、 �� 農業・漁業・林業 世銀と国連開発グループは安全保障と開発のつながりを強化す 保健・その他の るために、移行結果マトリクスを開発しました。この計画立案ツー 社会サービス ��� ルを利用することで、途上国は国際ドナーから提供される政治、 情報・通信 �� ��� 法律・司法・行政 安全保障、経済、開発、および人道分野の援助に優先順位をつ   第3章:2005年度の活動概要 59 図3.7 け、ドナー援助を調整できるようになります。 IDAの資金源 世銀の研究は、脆弱な国家が近隣諸国に高いコストを課して 単位:100万ドル いること、援助の配分が公平でなく、 「援助の寵児」と「援助の ���� 孤児」が生まれていることを示しています。これを受けて、経済 協力開発機構 (OECD)の開発援助委員会は、脆弱な国家を対 ���� ���� 象に、ウォッチング・ブリーフと呼ばれる情報収集 / 調査分析活 ���� 動制度を設けることを決定しました。また、世銀はその他の機関 ��� ��� と共に 「脆弱な国家における開発効果向上」に関するハイレベル 会合を開催し、ドナーが脆弱な国家に援助を提供する際の留意 ��� ��� ��� 事項について、共通の認識を育むことができるよう支援しました。 12 次増資 13 次増資 14 次増資 また、世銀は LICUS 支援を強化するために、組織改革にも 00‒02 年度 03‒05 年度 06‒08 年度 取り組みました。国別政策・制度評価システムが見直され、細 IDA の自己資金 a IBRD の純利益からの拠出 ドナー拠出金 b かなパフォーマンスの改善も認識できるようになりました。分析 a. IDA の自己資金には元本返済金、手数料から一般経費を差し引いたもの、および投資利 活動の予算は例年の水準が維持されました。また、最も脆弱な 益が含まれている。 b. 構造的な資金調達ギャップが含まれる。 国家への再関与を支援するために、世銀予算とは別に、LICUS 信託基金から 2000 万ドルが拠出されることになりました (www. worldbank.org/licus 参照)。 債務の救済と持続可能性 図3.8 社会セクターに対するIDA援助の増大 2005 年度も、世銀は重債務貧困国の債務救済に取り組みま 実施中のプロジェクト285件(10年前は225件) した。また、ミ レニア ム開発目標(MDGs)の達成を目指す低所 得国を支援するために、債務の持続可能性の改善に努めました。 300   現 在、 重 債 務 貧 困 国 (HIPC) イニ シ ア ティ ブ(www. 250 �� �� worldbank.org/debt 参照)のもとで債務救済の適用を受けてい 200 る国は 27 カ国に上ります。最終的な債務救済額は 540 億ドル �� を超える予定です。すでに 18 カ国が 「完了時点」(債務救済が 150 ��� ��� 確定された段階)に到達しています。2005 年度、世銀と IMF �� 100 の理事会は HIPC イニシアティブの期限を 2006 年 12 月 31 日ま で延長することで合意しました。従来の延長合意と異なり、今回 50 �� �� �� は 2004 年末の時点で HIPC の所得・債務基準を満たしている 0 国のみが延長措置の対象となります。 95 年度 00 年度 05 年度 HIPC イニシアティブの結果、対象国の債務残高は大幅に減 教育 保健・栄養・人口 上下水道・治水 少し (図 3.9 参照)、政府の貧困削減支出は増大しました (図 注:IDA 融資のみ適格国とブレンド国の両方のプロジェクトを含む。実施中の社会セク ター・プロジェクトに対する IDA 融資承認額は 1995 年が 122 億ドル、2000 年が 3.10)。 142 億ドル、2005 年が 150 億ドル。 世銀と国際通貨基金 (IMF)は、低所得国が返済を続けるこ とのできる債務額を算出する方法を開発しました。この手法が 完成すれば、債務国の個別の状況や、資金需要と債務返済能 力のバランスをふまえて、適切な融資判断を下すことができるよ うになります。この手法には各国の政府担当者、多国間・ 二国間 ドナー、学術関係者、およびシビルソサエティ組織との広範な協 議の結果も反映されています。 60 世界銀行 年次報告書 2005 中所得国 図 3.9 中所得国は依然として、多数の開発課題に直面しています。主 重債務貧困国(HIPC)に対する債務救済 債務額の削減と債務返済比率の改善  な課題としては、成長の維持と生産的雇用の創出、貧困削減と (%)   (10 億ドル) 不均衡の是正、ボラティ リティの軽減(特に民間金融市場へのア 輸出に占める債務返済 25 75 の割合(左軸) クセス) 、市場経済の基盤となる制度・ガバナンス構造の整備な ��� 20 60 歳入に占める債務返済 どがあります。世銀は独自の立場を活かして、中所得国が制度改 の割合(左軸) 15 45 革を実施し、官民セクターへインフラ投資を誘致し、社会サービ 決定時点での 10 ������ 30 スの提供状況を改善し、ボラティリティに対処できるよう支援し ������ ��� 債務額(右軸) 5 ������ 15 ています。 ����� 0 0 � 2005 年度、世銀は中所得国の開発支援に向け、世銀職員の 支援前(1999 年)支援後(2004 年) 能力を向上させ、中所得国の借入ニーズに的確に対応できるよう 注:2005 年 4 月末時点で決定時点に達していた 27 カ国の加重平均。 � � にするための行動計画に着手しました。具体的なイニシアティブ 出典:重債務貧困国(HIPC)イニシアティブの実施状況(世界銀行、ワシントン DC、 2004 年 9 月); 重債務貧困国(HIPC)イニシアティブ最新統計値(世界銀行、ワシントン としては、借入国の環境・社会セーフガードや信託制度を出来る DC、2005 年 4 月) 限り取り入れること、政策条件を合理化すること、国別援助戦略 の柔軟性を活かして、中所得国の状況に合った支援を計画するこ と、新しい機会に迅速に対応すること、クライアントのニーズの 変化に合わせて、投資融資手段と実行メカニズムを再調整するこ となどがあります。この行動計画は、 世銀がその他の世銀グルー 図 3.10 プ機関や二国間・多国間ドナーと連携しながら、持てる資源と技 HIPCイニシアティブの実施前と実施後の貧困削減支出の推移 能を活かして、適切で質の高い知識サービスを、タ イミングよく提 (%) (100 万ドル) 供できるようにするものです。 10,000 ������� 10 貧困削減支出額(左軸) � 貧困削減支出の 8,000 8 対 GDP 比率(右軸) IBRD の役割 ������ 6,000 6 IBRD はトリプル A の格 付けを得ている国際金融機関です。 ����� 4,000 4 IBRD は他の金融機関にはないいくつかの特長を備えています。 2,000 ����� 2 たとえば、IBRD の株主は各国政府です。株主は IBRD の方針 0 0 に発言権を持ち、その多くは IBRD の融資適格国でもあります。 支援前(1999 年)支援後(2004 年) IBRD は中所得国と信用力のある低所得国の持続可能な経済発 注:2005 年 4 月末時点で決定時点に達していた 27 カ国の加重平均。 展を促進することで、各国の貧困を削減することを目指していま 出典:重債務貧困国(HIPC)イニシアティブ最新統計値(世界銀行、ワシントン � DC、 2005 年 4 月) す。IBRD は開発関連の技術協力にも資金 (融資、保障、およ び関連するリスク管理ツール)とノウハウを提供しています。   IBRD は償還期間の長い融資と金融リスク管理ツールを、一般 的な金融機関よりも有利な条件で、豊富に、かつ持続可能な形 で途上国に提供しています。商業銀行と異なり、IBRD の目的は 利益の最大化ではなく、開発効果の最大化に置かれています。 IBRD の融資条件 2005 年度は一人当たり国民所得が 5295 ドルに満たない国々 のうち、IDA 融資のみ適格国を除いた国々が IBRD の融資適 格国となりました。国民一人当たり所得が上記の上限を超えてい る場合でも、特定の条件下で、あるいは 「卒業」戦略の一環と して、IBRD の融資を受けることができます。融資額は各国の信   第3章:2005年度の活動概要 61 図3.11 用力によって異なります。借入資格があっても、信用力が低い場 IBRDの地域別融資 � 2005年度 合は IBRD の融資を受けることはできません。また、一人当たり 合計136億ドルに占める割合 国民所得が低いために、IDA 融資適格国となっている国でも、 南アジア ��� ����� アフリカ IBRD の融資が認められる場合があります。一国に対する IBRD 中東・北アフリカ �� の融資残高が 135 億ドルを超えることは認められていません。 ���� 東アジア・大洋州 IBRD の融資  2005 年度の IBRD の新規融資・保証額は、118 件のプロジェ クトに対し、前年度を 20 億ドル以上上回る 136 億ドルでした。 これは、過去 6 年度の IBRD 融資の中で最高水準でした。融 ラテンアメリカ・ 資全体に占める開発政策融資の割合は、前年度をやや下回りま カリブ海 ��� ���� ヨーロッパ・中央アジア した。  融資・保証承認額が最も多かったのはラテンアメリカ・カリブ 海地域で、 全体の 36% に相当する 49 億ドルでした。次いで、 ヨー ロッパ・中央アジア地域が 36 億ドル、南アジア地域が 21 億ドル 図3.12 でした。2004 年度と比べると、一部の国への融資の集中はやや IBRDのテーマ別融資 � 2005年度 合計136億ドルに占める割合 軽減されました。2004 年度は融資承認総額の約 57% を上位 5 カ国が占めていたのに対し、2005 年度はブラジル、中国、コロ 法規 �� ���� 金融・民間セクター開発 ��� 貿易・統合 ンビア 、インド、トルコの 5 カ国が 53% を占めました。   2005 年度の IBRD 融資をセクター別にみると、融資承認額が ���� 環境・天然資源管理 公共セクター運営 �� 最も多かったのは法律 ・司法・ 行政(34 億ドル)、次いで運輸 (21 億ドル) 、上下水道・治水 (16 億ドル)でした。   経済政策管理 �� テーマ別にみると、融資承認額が最も多かったのは金融・民 社会的保護・ ���� 都市開発 リスク管理 ��� 間セクター開発で、次いで環境・天然資源管理と社会的保護・リ ��� 農村開発 スク管理でした。図 3.11、3.12、および 3.13 は IBRD の融資を 社会開発・ジェンダー・ 地域、テーマ、およびセクター別で分類したものです。開発政策 参加 �� ���� 人的開発 融資の承認額の一覧は本年次報告の付属 CD‑ROM をご覧くだ さい。 IBRD の原資 図3.13 IBRD は国際資本市場で世界銀行債券 (世銀債)を発行する IBRDのセクター別融資  � 2005年度 合計136億ドルに占める割合 ことにより、必要な資金の大半を調達しています。2005 年度は 前年度実績とほぼ等しい 130 億ドルの中長期資金を調達しまし 産業・貿易 �� ��� 教育 た。2005 年度は多様な償還期間とストラクチャーを持つ世銀債 ��� 金融 エネルギー・鉱業 �� が、13 種類の通貨で発行されました。 IBRD は多額の長期資金を有利な条件で調達することができ ���� 上下水道・治水 運輸 ��� ます。IBRD の健全な財務体質を支えている堅実な財務方針と 運用は、IBRD が高い信用力を維持する上でも重要な役割を果 保健・その他の ���� 農業・漁業・林業 社会サービス �� たしています。 協同組織である IBRD は、利益の最大化よりも、健全な財務 体質を維持し、開発活動を継続するために必要な利益の確保を 情報・通信 ���� ���� 法律・司法・行政 重視しています。2005 年度の IBRD の純利益は 13 億 2000 万 62 世界銀行 年次報告書 2005 ドルでした (財務会計基準第 133 号および国際会計基準第 39 図3.14 号に基づき、売買を目的としない借り入れ関連デリバティブに対 IBRDの借入金および投資額 � 2005年6月30日現在 単位:10億ドル する正味未実現損益を除く) 。このうち 5 億 8950 万ドルは別途 積立金に、6800 万ドルは年金積立金に、5250 万ドルは余剰金 ����� ������ ����� ����� 勘定に繰り入れられ、4 億ドルは IDA に、2 億 1000 万ドルは ���� HIPC 信託基金に移転されました (詳細は付属 CD‑ROM の財務 諸表を参照) 。 IBRD は 2005 年度も流動性を適切な水準に保ち、その業務 を遂行しました。2005 年 6 月 30 日現在の流動資産は約 264 億 ���� ドルでした。   ���� ����� ���� ���� 2005 年 6 月 30 日現在、IBRD の資本市場からの借入金残高 (スワップ後)は約 915 億ドル (図 3.14 参照)、融資実行額と未   99年度  00年度  01年度  02年度  03年度 実行残高の合計は 1044 億ドルでした。借入額は世銀の自己資 現金および流動性投資� スワップ後借入金残高 本の約 3 倍に上りました。 開発機関である IBRD にとって、最大のリスクは途上国に融 資や保証を提供することによるカントリーリスクです。金利や為 替レートの変動リスクは最小限に抑えられています。世銀のリス ク負担能力の基本指標となる総資本に対する貸付残高の比率 図3.15 は、世銀の財務・リスク見通しに基づいて厳格に管理されてい 資本/貸出比率 � 2005年6月30日現在   ます。2005 年 6 月 30 日現在の資本 / 貸出比率は 31.4% でした (%) 35 ���� (図 3.15 参照) 。 ���� ���� パートナーシップ ���� グローバル化がもたらす劇的な変化に対処するためには、公共 ���� セクター、民間セクター、およびシビルソサエティが力を合わせる ことが不可欠です。世銀はその他の開発パートナーと知識を共有 しながら、国際、地域、および国レベルのプログラムの資金調 達、ガバナンス、および管理に取り組んでいます。こうしたパー 0 トナー・プログラムは、世銀の業務のひとつの柱となっています。   99年度  00年度  01年度  02年度  03年度 2005 年度は、主要なパートナーと協議しながら、開発効果の高 いプログラムを的確に選択・支援するための戦略フレームワーク の構築に取り組みました (第 1 章「世銀の活動の評価」参照)。 信託基金 世銀が管理する信託基金は、譲許的な資源を動員・配分する ことで、さまざまなセクターおよび地域の貧困を削減し、パート ナーシップの構築を促進し、国際、地域、および国レベルで開 発の効果を向上させています。信託基金の規模は拡大傾向にあ ります。これは主に、世銀に対する国際社会の期待、つまり世 界エイズ ・結核・マラリア対策基金 (GFATM)、地球環境ファ シリティ(GEF)、HIPC イニシアティブといった多国間パートナー シップを通して、世銀がさまざまな国際イニシアティブの運営を   第3章:2005年度の活動概要 63 支援することを国際社会が期待しているためです。世銀グループ 表 3.2 の開発プロジェク トやワークプログラムも、信託基金の支援を受 信託基金ドナーの上位 10 カ国・機関 単位:100 万ドル けています。各信託基金の活動内容については、世銀の 「信託 基金年次報告」をご覧ください (www.worldbank.org. にアクセス     04年度  05年度 し、Index を選択)。 英国  585  552 世銀グループ  466  462 拠出金、総資産、および実行状況 2005 年度、ドナー拠出金は前年度よりも 2% 少ない 48 億ド オランダ  400  411 ルとなりました。信託基金の総資産は 8% 増の 93 億ドルとなり 欧州共同体(EC)  880  408 ました。拠出総額の 78% は上位 10 ドナーによるものです (表 3.2 日本  508  405 参照) 。2005 年度の融資実行額は、2004 年度よりも 29% 多い 42 億ドルとなりました。   フランス  136  373 米国  594  358 主な新規プログラム カナダ  198  321 2005 年度、ドナーコミュニティは新たな開発課題に対処する ドイツ  226  251 ために、複数の信託基金プログラムを創設しました。 イタリア  187  211 インドネシア̶アチェ・北スマトラのためのマルチドナー信託基 その他のドナー  724  1,059 金 この信託基金は 2004 年 12 月に発生した地震と津波の被災 地の再建と復興を支援するものです。すでに世銀を含む 8 つのド 拠出金総額  4,904 4,811 ナーが、総額 4 億 4400 万ドルの拠出を約束しています。 注:2005 年度の各ドナー拠出額に基づいたランキング。 スーダン̶紛争後マルチドナー信託基金 スーダンの南部と北 部を対象とした 2 つのマルチドナー信託基金が創設され、スー ダン自身が特定した復興・開発ニーズに基づいて提供されます。 2005 年から 2007 年の間に、総額 5 億 800 万ドルが拠出される 予定です。 協調融資 ベトナム̶貧困削減支援融資プログラム 2004 年から 2006 年 協調融資とは、特定の融資プロジェク トまたは融資プログラム に毎年の貧困削減支援融資として使われる予定の IDA グラン ト1 に対して、世銀の資金とは別に、借入国以外の第三国が資金を 億ドルに対し、5 ドナーが総額 1 億 6900 万ドルの協調融資を拠 拠出する仕組みです。通常、協調融資のパートナーとなるのは、 出しています。この資金は、市場経済への移行、社会政策、公 二国間・多国間パートナーや、借入国に譲許性の高い資金を提 正かつ参加型のプログラム、近代的な行政制度やガバナンス・シ 供している財団などです。2005 年度は 123 件の世銀プロジェク ステムの導入など、ベトナムの改革課題への対応に使われます。 トが、  協調融資を通して 93 億ドルを調達しました。主なパート ナーは米州開発銀行 (22 億ドル) 、英国国際開発省 (6 億ドル) 新たなカーボン・ファイナンス 2005 年には 3 つの大型のカー でした。一方、協調融資の対象となった主な地域は、上位から ボン ・ ファイナンスが創設されました。 「デンマーク炭素基金」 (拠 ラテンアメリカ・カリブ海地域 (33 億ドル)、アフリカ地域 (17 億 出総額 4000 万ドル)と「スペイン炭素基金」 (拠出総額 2 億 ドル)、および南アジア地域 (17 億ドル)でした。 1300 万ドル)は、京都議定書に基づいて、途上国の炭素排出権 を買い取り、途上国が持続可能な開発に必要な資金を調達でき るようにするものです。 「炭素金融支援信託基金」 (1100 万ドル) は、 現地での技術協力を支援するマルチドナー ・ファシリティです。 64 世界銀行 年次報告書 2005 世界銀行年次報告2005 出版局 編集長 Cathy L. Gagnet 副編集長 Caroline L. Banton 寄稿編集者 Barbara S. Karni 編集製作 Cindy A. Fisher Mark Ingebretsen Mary C. Fisk Janet H. Sasser 印刷製作 Monika D. Lynde Andrés Meneses プロジェクト・アシスタント Keenan R. Williams デザイン Gensler Studio 585 CD‑ROM製作 Datapage International  Limited © 2005 年 ワ シ ン ト ン D.C. に あ る 世 界 銀 行 の イ ン フ ォ 写真提供者 The International Bank for Reconstruction and  ショップは、開発経済関連の文献を幅広く揃え 表紙  世界銀行 Development / The World Bank 1818 H Street, NW たブックストアであると同時に、世銀のプロ p9   Lianqin Wang / 世界銀行(中央) Washington, D.C., 20433 USA ジェクトに関する情報センターでもあります。 p11  Eric C. M.Fernandez / 世界銀行 電     話  :  202‑473‑1000 インフォショップにはさまざまな組織が発行す p19   Lianqin Wang / 世界銀行 ホームページ  :  www.worldbank.org る各種出版物や、世銀の情報公開政策に基づ p20   Jim Rosenberg / 世界銀行(右) E メ ー ル:    feedback@worldbank.org いて公開されている文書が揃っています。国別 p22   Patricia Davies / 世界銀行(左) すべての権利は留保されています。 情報は世界各地の現地事務所に設置された情報 p22   Gillette Hall / 世界銀行(右) センター(PIC)からも入手できます(www. p23   Gabriela Zapata Alvarez 本書中の地図に示されている国境、色、名称などの情報は、 。 worldbank.org/infoshop) p30   Patricia Davies / 世界銀行 それぞれの地域の法的地位に対する世銀グループの意見 や、こうした国境に対する支持あるいは承認を示すもの p32   Patricia Davies / 世界銀行 ではありません。 所 : 住      701 18th St., NW   p38   Prabir Joardar / 世界銀行     Washington, D.C., 20433 p42  Inq. Dusan Guzi / www.fotoagent.sk 権利およびライセンス(副次的権利を含む)に関するお問    (月〜金の午前 9 時〜午後 5 時) p54   Gillette Hall / 世界銀行 い合わせは下記へお送りください。 World Bank 話 : 電      202‑458‑4500 Office of the Publisher    (午前 9 時 30 分〜午後 3 時 30 分) 表紙も含め他の写真はすべて世界銀行のもの。 1818 H Street, NW ファックス :  202‑522‑1500 Washington, D.C., 20433 電子書店(e‑bookstore) : フ ァ ッ ク ス:    202‑522‑2422 E メ ー ル:    pubrights@worldbank.org     www.worldbankinfoshop.org E メール:   pic@worldbank.org PIC 東京 〒 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