Doing Business 世界銀行 2012 ビジネス環境における 透明性強化 183カ国における国内企業に対するビジネス規制の比較 © 2012 The International Bank for Reconstruction and Development / The World Bank 1818 H Street NW Washington, DC 20433 電話:202-473-1000 URL:www.worldbank.org All rights reserved. 1 2 3 4 08 07 06 05 世界銀行・国際金融公社共同出版 本書は、世界銀行グループ職員の製作物です。本書で表明された調査結果、解釈、結論は、必ずしも世 界銀行理事または各理事が代表する政府の見解を反映するものではありません。世界銀行では、本著作 物に掲載されたデータの正確性を保証いたしません。 権利と許可 本出版物に掲載された資料は、著作権で保護されています。本著作物の全部または一部を許可なく複 写・配布することは、準拠法に反する場合があります。世界銀行では、世界銀行の著作物の普及を積極 的に進めており、著作物の一部の複製については、通常許可しています。 本著作物の一部の複写または複製の許可については、情報を添えて、Copyright Clearance Center, Inc. (222 Rosewood Drive, Danvers, MA 01923, USA、電話:978-750-8400、ファックス:978-750-4470、 URL:www.copyright.com)までご連絡下さい。 その他、副次権等の権利やライセンスに関するお問い合わせは、Office of the Publisher宛にThe World Bank, 1818 H Street NW, Washington, DC 20433, USA(ファックス:202-522-2422、eメール: pubrights@worldbank.org)までお送りください。 このほか、 「ビジネス環境の現状2012:ビジネス環境における透明性強化」 、「ビジネス環境の現状2011 : 企業環境の改善」 、「ビジネス環境の現状 2010 :危機下の改革」 、「ビジネス環境の現状 2009 」、 「ビジネス環境の現状 2008 」、「ビジネス環境の現状 2007 :改革のあり方」、 「ビジネス環境の現状 2006:雇用創出」、 「ビジネス環境の現状2005:成長の妨げとなる障害の撤廃」、 「ビジネス環境の 現状2004:規制の理解」の入手をご希望の場合は、www.doingbusiness.orgでご購入下さい。 Doing Business 世界銀行 2012 ビジネス環境における 透明性強化 183カ国における国内企業に対するビジネス規制の比較 世界銀行・国際金融公社共同出版 2012年10月23日午前0:01(グリニッジ標準時)に「ビジネス環境の現状」最新刊が発行されます。 ii ビジネス環境の現状2012 「ビジネス環境の現状 (DOING BUSINESS)」 報告書のダウンロード ウェブサイト 「ビジネス環境の現状」報告書ならびにサブナショ 最新ニュース ナル・地域レベルの報告書、規制改革のケースス 「ビジネス環境の現状」プロジェクトに タディ、各国・地域についてまとめた概要へのア 関するニュース クセス http://www.doingbusiness.org http://www.doingbusiness.org/Reports ランキング サブナショナル・地域のプロジェクト 各国のランキング — 1位から183位まで サブナショナル(国内の地方別)・地域レベルの http://www.doingbusiness.org/Rankings 事業規制の相違 http://www.doingbusiness.org/Subnational-Reports 「ビジネス環境の現状」規制改革 DB2011における規制改革の概要、DB2008以降の 法律ライブラリ 規制改革のリスト ビジネスや性差別の問題に関する法令を収集した http://www.doingbusiness.org/Reforms サイト http://www.doingbusiness.org/Law-library 過去のデータ http://wbl.worldbank.org DB2004 以降のカスタマイズ可能なデータセット http://www.doingbusiness.org/Custom-Query ローカルパートナー 「ビジネス環境の現状」調査に参加した183カ国・ 手法および調査 9,000人を超えるスペシャリスト
 「ビジネス環境の現状」の基礎となる手法および http://www.doingbusiness.org/Local-Partners/ 調査論文 Doing-Business http://www.doingbusiness.org/Methodology http://www.doingbusiness.org/Research Business Planet ビジネス環境のインタラクティブマップ http://rru.worldbank.org/businessplanet Doing Business 世界銀行 2012 目次 V 序文 1 要旨 16 「ビジネス環境の現状」:インパクトの測定について 「ビジネス環境の現状 2012 」は、事業活動を強 「ビジネス環境の現状2012 」のデータは2011 年 化する規制と、事業活動を制約する規制につい 6 月 1 日現在のものです。 2012 年 10 月 23 日午前 て調査した第 9 回目の年次報告書シリーズにな 0 : 01 (グリニッジ標準時)に「ビジネス環境 ります。「ビジネス環境の現状」は、アフガニス の現状」最新刊が発行されます。経済効果を タンからジンバブエに至る 183 カ国について、 分析し、事業規制のどのような改革が、どこ 長期的に比較可能な、事業規制と財産権の保護 でどのような効果を挙げたか、その理由は何か に関する定量的指標を提示するものです。 を明確化するために指標が使用されています。 「ビジネス環境の現状」の 11 の分野のそれぞれ 事業設立、建設許可取得、電力事情、不動産登 について、これらの問題を調査し、世界的な傾 記、資金調達、投資家保護、納税、貿易、契約 向を示した各章は、インターネット上に発表 執行、破綻処理、労働者雇用という、企業の され、「ビジネス環境の現状」のウェブサイト ライフサイクルに基づく 11 分野に影響を及ぼす (URL : http://www.doingbusiness.org)で閲 規制が対象となっています。労働者雇用のデー 覧可能です。 タは、今年のビジネス環境ランキングには含ま れていません。 「ビジネス環境の現状 2012 」では、建設許可取 得、資金調達、納税の各指標の手法は変更され ています。詳しくは、各データの注を参照して ください。 v 序文 民間セクターの成長を実現し、貧しい人々がその恩恵を分かち合えるようにするためには、 意欲と優れたアイデアを持つ新規参入者が性別や人種・民族等にかかわらず事業を立ち上げる ことができ、企業が投資を行い、成長させ、多くの雇用を創出できる規制環境が必要です。 「ビジネス環境の現状 2012」は、ビジネス活動を増進させたり、制約したりする事業規制を ベンチマークする第 9回目の年次報告書になります。本報告書は、アフガニスタンからジン バブエに至る183カ国の事業規制および財産権の保護に関する定量的指標を提示しています。 データは2011年6月現在のものです。 この報告書は、経済活動には適切なルール、つまり、財産権を確立・明確化し、紛争解決のコ ストを軽減するルールと、経済的相互作用の予測可能性を高め、契約の当事者に確実性を与 え、悪用から保護するルールが必要であるという基本的前提に立つものです。その目的は、効 率的で、誰もがアクセスでき、実施しやすい規制を策定することです。「ビジネス環境の現 状」では、一部の分野においては、関係者取引における厳格な開示要件等、投資家の権利の保 護を強化する規制に高いスコアを与えています。 「ビジネス環境の現状」では、国内の、特に小規模な企業の観点から、企業のライフサイクル を通じて適用される規制を測定します。今年の報告書では、事業設立、建設許可取得、電力事 情、不動産登記、資金調達、投資家保護、納税、貿易、契約執行、破綻処理という10の規制分 野に基づいて各国をランク付けしています。その他、労働者雇用に関する規制についてもデー タを提示しています。 「ビジネス環境の現状」の範囲は限定されています。よって、特定の法令が社会全体にもたら すコストと利点をすべて測定しようとするものではありません。また、企業や投資家にとって 重要である、または一国の競争力に影響を及ぼすなどの事業環境のあらゆる側面を測定するも のでもありません。あくまでも、ビジネスリーダーと政策立案者に、政策立案の参考となる事 実的根拠を提供し、事業規制や制度が生産性、投資、インフォーマリティ、汚職、失業、貧困 といった経済的状況にどのような影響を及ぼすかに関する調査のための公開データを提供する ことを目的としています。 「ビジネス環境の現状」では、指標によって全世界の事業規制の変化を追跡しており、 2004年 以降、1,750を超える規制改善が行われたと記録しています。世界経済・金融危機を背景に、 全世界の政策立案者は、一部の分野ではこれまで以上に速いペースで、企業レベルの事業規制 改革を継続しています。 こうした継続的な取り組みからは世界各国の事業規制はどう変わったのか、また、それらの 変化は、企業や各国にどのような影響を与えたのか、といった疑問が生じます。本報告書で は、2005年に「ビジネス環境の現状2006」が発表されてからの6年にわたる時系列データを 土台に、各国における事業の規制環境が絶対ベースでどのように変化したかを示す指標「フロ ンティアまでの距離」を新たに導入します。各国規制環境の変化の度合いを評価する本指標 は、各国の現在の実績をその他すべての国々と比較して評価する「ビジネス活動の容易度」の 総合ランキングを補完するものです(詳しくは、ビジネス活動の容易度とフロンティアまでの 距離に関する章を参照してください)。 どのような規制が根本的な制約事項(binding constraints)となっているのか、どのような規制 改革パッケージが最も効果的なのか、ある国の状況において、これらの問題がどのように形作 vi ビジネス環境の現状2012 られているのかについての調査には、課題が残ります。「ビジネス環境の現状」では、この分 野で新たな調査を促すため、2012年秋に会議を計画しています。これは、事業規制改革と広 範な経済効果との間の関連性について、理解を深めることを目的とするものです。 「ビジネス環境の現状」の作成は、弁護士、ビジネスコンサルタント、会計士、運送業者、 政府職員他、 183の対象国において関連法令要件の日常的な運用やアドバイスに携わってい る方々を含む、各方面の 9,000人を超える専門家からなるネットワークの専門知識と、惜し みない情報提供なくしてはありえませんでした。「ビジネス環境の現状」チームは、グロー バルレベルでデータ収集に貢献したAllen & Overy LLP、Baker & McKenzie、Cleary Gottlieb Steen & Hamilton LLP、Ernst & Young、Ius Laboris、KPMG、the Law Society of England and Wales、Lex Mundi、Panalpina、PwC、Raposo Bernardo & Associados、Russell Bedford International、SDV International Logistics、Toboc Inc.に対して、特に感謝の意を表明したいと 思います。 本プロジェクトは、世界各国の政府と政策立案者からの年間を通したアドバイスと情報も活用 しています。特に、韓国、マケドニア旧ユーゴスラビア共和国、メキシコ、英国の各政府に対 して、各国のケーススタディに関する情報とフィードバックを提供いただいたことに謝意を表 明したいと思います。また、2010/11年の事業規制改革に関する詳しい情報を提供いただいた 60を超える各政府に対しても、お礼申し上げます。 本書は、世界銀行グループの職員の製作物です。当チームは、この取り組みに対する各地域の 世界銀行グループの部門およびネットワーク全員の貢献に対しても、謝意を表したいと思います。 ジャナミトラ・デバン 金融・民間セクター開発担当 副総裁兼ネットワーク責任者 世界銀行グループ 1 要旨 過去1年間、サブサハラ・アフリカ諸国では、 投資家保護、契約執行、破綻処理の各指標 「ビジネス環境の現状」では、統一基準に これまでにないほど多くの政府が、自国の に関する事項に集中しています(図表1.2)。 基づき 183 カ国を比較する指標により、国 規制環境について、国内企業の事業設立と 内の企業のライフサイクルを通じて適用さ 運営を助ける改革を行いました。わずか 全体として、「ビジネス環境の現状」の測 れる 11 の分野について測定し、変化を記録 8 年前には、規制環境にほとんど注意が払 定によれば、2010/11年には、125カ国の政 します(ボックス 1.2 )。本報告書は、透 われなかったこの地域で、2010 年 6 月から 府が、 245 の制度・規制改革を実施しまし 明性が高く、あらゆる人々にアクセス可能 2011 年 5 月までの間に、 46 カ国中 36 カ国 たが、これは前年比で 13% 増に相当します な、適切なルールが経済活動には必要であ がビジネス活動を容易にする規制改革を (ボックス 1.1 )。規制改革のペースが速く るという基本的前提に立つものです。こ 実施しました。それまでの 6 年間で規制改 うした規制は、事業環境のいくつかの重要 なっていることは、開発途上国の企業家に 革を実施したのは、毎年平均でこの地域の な面を保護しつつ、企業に不当なコスト負 とっては好ましいニュースです。事業設立 56%の国々にとどまっていたのに対し、こ 担をかけないようバランスを取り、効率 には、どんな状況であっても、信頼に基づ れは、この地域の78%の国々に相当します 的である必要があります。事業規制の負担 (図表1.1)。 く決断が必要です。貧しい人々にとって、 が重く、競争が限られている場合、成功 事業を設立したり、仕事を見つけたりする は、「何をするか」よりも、「誰を知って 世界的には、事業設立、不動産登記、建設 ことは、貧困から抜け出すための重要な手 いるか」に左右されます。ですが、ルール 許可取得といったプロセスの合理化を目指 段です1。世界のほとんどの地域において、 が比較的順守しやすく、利用する必要があ す規制改革が依然として最も多い一方、裁 る人全員がアクセス可能であるならば、才 多くの場合、中小企業が雇用創出の中心と 判所や破綻処理制度といった法制度の強 能とよいアイデアを持つ人はだれでも、 なっています2。しかし、開発途上国の企業 化や、投資家と財産権の法的保護の強化に フォーマルセクターで事業を始め、成長さ 家は、高所得国の企業家に比べて、適格な 改革努力を集中させている国もますます増 せることができるはずです。 加しています。この変化は、低所得国およ 人材発掘や、インフラ不足などの課題に直 び低中所得国において特に顕著で、 2010/ 面する傾向にあります。事業の設立や拡大 どの地域においても、開発途上国の企業家 11年には、「ビジネス環境の現状」に記録さ を妨げる、過度に負担の多い規制や不十分 は経済開発協力機構 (OECD) 加盟の高所得 れた全規制改革のうち43% が、資金調達、 な制度も、問題を悪化させます。 国(以下、 OECD 高所得国)よりも、概 図表1.1 2010/11年には、サブサハラ・アフリカの多数の国々が事業規制改革を実施 「ビジネス環境の現状」によるビジネス活動を容易にする規制改革を1回以上行った国の割合 Share of economies with at least one Doing Business reform making it easier to do business (%) 東欧・中央アジア 88% サブサハラ・アフリカで、「ビジネス環境の OECD 現状」によるビジネス活動を容易にする規制 高所得国 68% 改革を1回以上行った国の割合(%) 中東・北アフリカ 61% 63% 南アジア 「ビジネス環境の現状」報告書の年度別 78 67 63 78% 61 59 53% 52 東アジア・太平洋 58% ラテンアメリカ・カリブ海 サブサハラ・アフリカ 33 この地図は世界銀行の地図デザイン・ユニット によって作成されたものです。地図に示される 06 07 08 09 10 11 12 国境、色彩、名称、その他の情報は、世界銀行 20 20 20 20 20 20 20 グループが、地域の法的地位を確定したもので DB DB DB DB DB DB DB も、あるいは国境を承認または支持したもので もありません。 出所:「ビジネス環境の現状」データベース 2 ビジネス環境の現状2012 してビジネスのしにくい規制環境に直面し 図表1.2 2010/11年には、全世界で、法制度および財産権の保護を強化する改革の取り組みに注力する ています。これは、事業設立、建設許可取 国々が増加 得、不動産登記、貿易、納税などの手続の 「ビジネス環境の現状」によるビジネス活動の容易にする規制改革のタイプ別内訳 コストが高く、煩雑であることを意味しま す。今年の「ビジネス環境の現状」によるビ 法制度を強化する改革 規制プロセスの効率性を高める改革 改革の ジネス活動の容易度ランキングには、電力 件数 35% 65% 51 接続事情に関する指標が新たに加えられま 高所得 33% 67% 53 した。電力接続するためのコストはサブサ ハラ・アフリカでは平均で1人当たり所得の 36% 64% 63 5,400% 超と、世界の他のどの地域よりも 高中所得 24% 76% 65 高くなっています( OECD 高所得国の平均 は、1人当たり所得の93%)。東欧・中央ア 42% 58% 81 ジアの多くの国々の国内企業が通電するま 低中所得 28% 72% 57 でに取る手続は、世界の他のどの地域より も複雑です。ただし、これは複雑な手続や 46% 54% 50 行政上の事務手続に限られません。ビジネ 低所得 18% 82% 41 スのしにくい環境とは、少数株主に対する 法的保護が弱いことや、担保法や裁判所、 2010/11 2009/10 信用情報機関、担保登録機関等の制度が弱 いことも意味します。 注:法制度を強化する改革とは、資金調達、投資家保護、契約執行、破綻処理の各分野における改革。規制プロセスの効率を高める 改革とは、事業設立、建設許可取得、電力事情、不動産登記、納税、貿易の各分野における改革。 出所:「ビジネス環境の現状」データベース 世界的には、効率的な規制プロセスには、 多くの場合、法制度の強化と財産権の保護 が伴います。資金調達、投資家保護、契約 執行、破綻処理の指標に象徴される法制度 ボックス1.1 今年の報告書の主な調査結果 と財産権の保護の強さと、事業設立、建設 ••2010/11年、サブサハラ・アフリカでは、46カ国のうち、2005年以来最多となる36カ国の政府 許可取得、電力事情、不動産登記、納税、 が、国内企業を対象とする自国の規制環境を改善させた。これは、世界の他地域よりも未だに 貿易の指標に象徴される、規制プロセスの 事業の設立と運営に高い費用がかかり、複雑な手続が必要なこの地域の企業家にとってはよい 複雑さおよびコストとの間には関連性が存 ニュースである。 在します。 OECD 高所得国は、両面におい ••全世界では、2010/2011年には、前年比13%増の125カ国がビジネス活動を容易にする245件の改 て、優れたビジネス環境を有しているとい 革を実施した。低所得国と低中所得国では、それまでよりも、裁判所、破綻処理制度、投資家保 えます(図表 1.3 )。一方、「ビジネス環境 護の強化を目的とする改革の割合が増えた。規制改革のペースの上昇は、世界の多くの地域で雇 の現状」の測定によれば、サブサハラ・アフ 用創出の中心となっている中小企業には特に歓迎されるものである。 リカと南アジアの国々は、十分な法制度が整 ••2010/2011年には、世界的な金融・経済危機を背景に、破綻処理制度を強化する国が以前よりも 多かった。前年より 16 カ国、前々年よりも 18 カ国多い、 29 カ国が破綻処理制度の改革を実施し 備されておらず、かつ規制プロセスが複雑と た。その大半が、OECD高所得国もしくは東欧・中央アジアである。調査からは、効果的な破綻処 いう傾向を示しています。 理制度は負債のコスト、資金調達、国の不況からの回復能力と回復スピードの両方に影響を及ぼ し得ることが示されている。 一般的な傾向から乖離している地域もあり ••新しいデータは、規制に関する情報へのアクセスの重要性を示している。手数料の料金体系表、 ます。一つは、過去 6 年にわたり規制の簡 書類要件、商事関係訴訟および破綻処理手続に関する情報が最も入手しやすいのは OECD高所得 素化に改革努力を集中させてきた中東・北 国で、最も入手しにくいのはサブサハラ・アフリカおよび東欧・中央アジアである。全世界的な アフリカです。現在、この地域の諸国で 電子政府イニシアティブの増加は、情報へのアクセスと透明性を高めるためのチャンスとなる。 は、法制度が比較的弱い一方、規制プロセ ••新たな指標は、過去6年にわたって、「ビジネス環境の現状」の対象である 174カ国のうち94% スは比較的効率化されています。一方、東 が、規制環境をビジネスがしやすくなるように変えてきたことを示している。これらの国々は、 欧・中央アジアでは、平均して、やや強力 事業設立から破綻処理に至る事業規制の9 分野にわたって、最もビジネスのしやすい規制プラク な法制度と比較的効率の低い規制プロセス ティスに基づく合成的な測定値である「フロンティア」に近づいている。 を有しています。この地域では、過去 6 年 ••今日最もビジネス活動を容易にする規制環境が整っている20カ国と、過去6年間にわたり、「フ ロンティア」に向かって最も大きな前進を遂げた国の間では、事業規制の運用に対する広範な、 にわたる改革努力は、中東・北アフリカの 持続的なアプローチが共通している。今年の報告書では、韓国、マケドニア旧ユーゴスラビア共 国々よりも、法制度の強化と財産権の保護 和国、メキシコ、英国の経験を取り上げる。韓国は、事業参入、税務管理、契約執行の合理化を に大きな重点が置かれてきました3。 経て、ビジネス活動の容易度で上位10カ国に加わった。マケドニア旧ユーゴスラビア共和国も、 過去1年間でビジネス活動の容易度を最も改善させた国のうちの一つである。 世界各国の政策立案者は、企業家が自分た ••2010/11年に、「ビジネスの現状」が測定した規制分野を3分野以上改善し、ビジネス活動の容易 ちや他の人々のための経済的機会を生み出 度を最も向上させた国は、モロッコ、モルドバ、マケドニア旧ユーゴスラビア共和国、サントメ・ す役割を認識しており、多くが投資環境を プリンシペ民主共和国、ラトビア、カーボヴェルデ、シエラレオネ、ブルンジ、ソロモン諸島、 整備し、生産性の向上を促す対策を取って 韓国、アルメニア、コロンビアである。 います。港湾、道路、通信といったインフ 要旨 3 以上が、事業の登録から通関、裁判所への 図表1.3 法制度および財産権保護の強化と効率的な規制プロセスとの関連性 申し立てに至るまで、さまざまなサービス 「ビジネス環境の現状」指標セットによる平均ランキング Average ranking on sets of Doing Business indicators に電子システムを利用しています5。これに より、企業も政府も同様に、時間と費用を 弱い 法制度は弱いが、規制プロセスの費用は低い 法制度が弱く、規制プロセスの費用が高い 節減することができます。また、透明性を 高めるとともに、情報へのアクセスと規制 中東・北アフリカ ラテンアメリカ・ の順守を容易にする新たな機会も提供しま 137 サブサハラ・ カリブ海 アフリカ す。しかし、必ずしもあらゆる国が、新た 93 なテクノロジーによって得られる情報開示 法制度の強さ 117 95 の機会を活用するとは限りません。ときに 東アジア・ 南アジア 太平洋 87 は、最新のテクノロジーの迅速な導入が、 公共サービスの質向上を促すとしても、財 OECD 政的な制約や予算上の優先事項により妨げ 高所得国 77 東欧・中央アジア られることもあります。 30 今年、「ビジネス環境の現状」では、企業 強い が貿易に必要な書類要件や事業設立、建設 法制度が強く、規制プロセスの費用が低い 法制度は強いが、規制プロセスの費用が高い 許可取得、電力接続にかかる手数料の料金 単純で費用がかからない 複雑さと規制プロセスの費用 複雑で費用がかかる 体系表等、規制や手続を順守する上で必要 な情報にどのようにアクセスできるかを調 注:「法制度の強さ」とは、資金調達、投資家保護、契約執行、破綻処理の平均ランキングを意味する。「規制プロセスの複雑さ」 査しました。情報技術インフラが十分に発 とは、事業設立、建設許可取得、電力事情、不動産登記、納税、貿易の平均ランキングを意味する。円の大きさは各地域の国数、 数字はその地域におけるビジネス活動の容易度の平均ランキングを示す。各国の相関結果は、1人当たり所得の調整後、1%水準で 達していない国もあることから、今回の調 有意である。 査では、各国が、関連当局における手数料 出所:「ビジネス環境の現状」データベース の料金体系表の掲示や公示による通知等、 他の手段を使用してこうした情報を簡単に 入手できるようにしているかどうかについ ボックス1.2 国内企業のライフサイクルを通じた規制の測定 ても調査しました。 今年のビジネス活動の容易度の総合ランキングは、事業設立、建設許可取得、電力事情、不動産登記、 結果は著しいものでした。サブサハラ・ア 資金調達、投資家保護、納税、貿易、契約執行、破綻処理という、企業のライフサイクルに基づく10分野 に影響を及ぼす規制を測定して評価する指標セットに基づいている。「ビジネス環境の現状」では、今年 フリカと中東・北アフリカの国々の大半で の総合ランキングには含まれていない、労働者の雇用に関する規制も考察している。 は、こうした情報を入手するには、政府職 「ビジネス環境の現状」は、2 種類のデータと指標を含む。最初の指標セットでは、すでに成立してい 員との対面が必要となります。 OECD 高所 る法令に基づいて、ケースシナリオに適用される財産権と投資家の保護の強さに注目する。「ビジネス環 得国では、貿易に必要な書類要件は、政府 境の現状」は、関係者取引における厳格な開示要件等、財産権と投資家の保護が強いほど高いスコアを与 機関のインターネットや公示により知るこ える。2番目の指標セットでは、事業設立、不動産登記、建設許可取得等の規制プロセスの費用と効率性 とが可能です(図表1.4)。中東・北アフリ に注目する。これらの指標は、企業の観点から時間動作のケーススタディに基づき、すべての関連法令に カでは、これが該当する国はわずか約30% 従って取引を完了するために必要な手続、時間、費用を測定する。企業と政府機関等外部者との交流は1つ で、サブサハラ・アフリカでは50%未満で の手続と数えた。費用の推定額は、該当するものがある場合には、公式の料金表から記録した。 す。この2地域では、建築許可の書類要件を 「ビジネス環境の現状」の手法の詳しい説明については、データの注と「ビジネス環境の現状: インパクトの測定について」の章参照。 インターネットまたは公示によって知るこ とが可能な国は、約40%にすぎません。 手数料の料金体系表入手の容易度と手数料 の価格は比例する傾向にあります。料金体 ラへの投資は、民間セクター開発に不可欠 事業規制における情報へのアクセス 系表の入手が容易な国では、起業にかかる な要素と見なされています。世界経済がま 向上の可能性 費用は平均で1人当たり所得の18%である一 すます複雑化する中、教育や研修への投資 方、入手が困難な国の費用は、平均で1人当 民間セクター開発において大きな役割を果 は非常に重要です。こうした投資は通常、 たす諸制度が存在します。市場を機能させ たり所得の66%です(図表1.5)。 成果が生まれるまでに時間がかかります るためには、裁判所や登記所、税務署、信 が、開発途上から高所得へと移行した国々 規制を順守するために企業が必要とする情 用情報機関の存在が不可欠です。ビジネ 報の他に、裁判所等の制度も、市場におけ は、一般的に、自国の労働力の技術や能力 スにとっては、その効率性と透明性が非常 る透明性を向上させる情報を提供します。 を強化することによりこれを実現していま に重要となります。国民所得水準にかかわ 効率的で公平な裁判所は、企業が新たな関 す。政策立案者が企業家精神を促進する上 らず、世界中の政府が、プロセスと制度の 係を構築し、市場を拡大するために、また で重要な手段は、競争を妨げるのではなく 効率性を向上させるためにテクノロジーの 投資家が投資を行うために必要な信用を構 事業の設立と成長を促す規制環境を創出す 利用を高めています。「ビジネス環境の現 築する上で不可欠です。ただし、その重要 ることです4。 状」の対象である183カ国のうち、100カ国 性は、効率的な法の執行において果たす役 4 ビジネス環境の現状2012 割だけではありません。「ビジネス環 境の現状」では、 151 カ国のサンプル 2010/11年の全世界における事業規制改革の傾向 の75%近くにおいて、裁判所には、法 サブサハラ・アフリカの2010/11年における国内企業の規制環境を向上させるための措置として、同 により破綻処理手続の開始を公表する 地域における統一商事法の初の全面見直しがあった。アフリカ・ビジネス法調整機構( OHADA)によ る法制改革には、16の加盟国の合意を必要とした1。この第一段階により、事業参入が簡素化され、担保 ことが義務付けられていることが分かり 付取引法が強化された。 ました。 サブサハラ・アフリカ全体では、規制改革のアジェンダが拡大している。ブルンジ、リベリア、シエ ラレオネ等、紛争終結国を含む13カ国が、事業の参入から撤退に至る、「ビジネスの現状」で測定する 上位20カ国における事業規制の 分野の3分野以上において、ビジネスをしやすくする改革を実施した。南アフリカは、事業設立を合理化 する新たな会社法と、財政的に困難な状態にある企業の更生を円滑化する新たな再生手続を導入した。 運用 世界経済・金融危機を背景に、欧州やその他の地域の OECD 高所得国では、破綻処理制度の改善が 「ビジネス環境の現状」総合ランキン 続いている 2。 2010/11 年には、全世界で、それまでのどの年よりも多い 29 カ国が破綻処理制度を改善 グに反映される、ビジネス活動を容 した。これらは、オーストリア、デンマーク、フランス、イタリア、ポーランド、スロベニア、スイス、 易する規制制度が最も整う上位 20 カ ブルガリア、ラトビア、リトアニア、マケドニア旧ユーゴスラビア共和国、モルドバ、モンテネグロ、 国は、シンガポール、香港特別行政 ルーマニア、セルビア、ウクライナ等である。アイスランドは関係者取引の承認要件を厳しくした。 ギリシャ、ポルトガル、スペインは事業設立を簡素化した。 区、ニュージーランド、米国、デン マーク、ノルウェー、英国、韓国、ア 他の地域では、規制改革のペースは一様ではない。中東・北アフリカでは、61%の国々がビジネスを しやすくする規制改革を実施した。ラテンアメリカ・カリブ海では、最もビジネスのしやすい規制環境 イスランド、アイルランド、フィン を持つ、チリ、ペルー、コロンビアの3カ国がそれぞれ、「ビジネス環境の現状」で測定する3分野以上で ランド、サウジアラビア、カナダ、 さらに改革を進めた。だが、エクアドルやカリブ海諸国の大半では、このような改革は行われていない3。 スウェーデン、オーストラリア、グル 裁判所における電子届出制度を導入し、クアラルンプールに民事・商事専門の裁判所を設立し、企 ジア、タイ、マレーシア、ドイツ、 業、税金、社会保障、雇用保険の登録を事業設立のためのワンストップ・ショップ(総合窓口)として 日本です(表 1.1 )。本報告書に別途 統一したマレーシアは、東アジア・太平洋をリードする国である。また、ソロモン諸島、トンガ、バヌ 記載するとおり、ある国のビジネス活 アツ等、複数の小島嶼国(しょうとうしょこく)が 3 分野以上で規制改革を実施したが、その多くはド 動の容易度ランキングは、そのビジネ ナープログラムで支援されている。南アジアでは、過去1年間、規制改革のペースは安定していた。最も ス環境のすべてを示すものではあり 積極的だったのはスリランカとブータンである。スリランカは税制改革を実施し、利害の対立を伴う取 引の開示要件を厳しくした。ブータンは公共信用登録機関を設立し、事業設立を合理化した。 ません。ランキングの基となる指標 は、マクロ経済の状況、市場規模、 労働力の技能、治安等、ビジネスを 1. OHADA は、 16 の西・中央アフリカ諸国間の協定によって採択された、共通の商法と施行制度のための組織であ る。14の当初加盟国によって、1993年10月17日にモーリシャスのポートルイスで設立された。 行う上で重要な要素を考慮していま 2. 国際通貨基金(IMF 2009年)によれば、金融危機により企業・世帯の債務不履行と企業倒産が急増した。 せん。ただし、企業にとって重要な 3. 2010/11年には、アンティグア・バーブーダ、バハマ、ドミニカ、グレナダ、ハイチ、ジャマイカ、セントルシア、 規制・制度環境のいくつかの重要な セントビンセントおよびグレナディーン諸島、スリナム、トリニダード・トバゴでは、ビジネスをしやすくする改革 面は把握しています。これらの 20 カ は記録されていない。 国は、事業設立や建設許可取得等の規 制プロセスのための効率的かつ合理化 図表1.4 建設許可および貿易の書類要件に関する情報入手が最も容易なのはOECD高所得国 (%) 書類要件が入手しやすい国の割合  物品輸入にかかる平均時間(日数) 100 94 75 78 71 67 41 63 56 58 52 49 42 38 33 21 OECD 南アジア 東アジア・ 東欧・ ラテンアメリ サブサハラ・ 中東・ 入手しやすい国 入手しにくい国 高所得国 太平洋 中央アジア カ・カリブ海 アフリカ 北アフリカ の平均  の平均 ■ 建設許可 ■ 貿易 貿易の書類要件の入手しやすさ 注:書類要件は、職員と約束を取る必要なく、関連当局他の政府機関のウェブサイトまたは公示によって入手可能な場合に、入手しやすいと見なされる。建設許可のデータサンプルは159カ国、 貿易のデータサンプルは175カ国。2番目のパネルの時間の差は、1人当たり所得の調整後、5%水準で統計的に有意である。 出所:「ビジネス環境の現状」データベース Easiest to access fee schedules in OECD high-income economies 要旨 5 図表1.5 手数料の料金体系表の入手しやすさと手数料の安さの関連性 手数料の料金体系表が入手しやすい国の割合(%) 事業設立の平均費用 97 (1人当たり所得に対する割合) 90 88 70 66 63 58 57 55 50 50 47 38 36 35 18 OECD 南アジア 東アジア・ 東欧・ ラテンアメリ サブサハラ・ 中東・ 入手しやすい国 入手しにくい国 高所得国 太平洋 中央アジア カ・カリブ海 アフリカ 北アフリカ の平均  の平均 ■ 会社設立 ■ 電力接続 会社設立のための手数料の料金体系表 の入手しやすさ 注:手数料の料金体系表は、職員と約束を取る必要なく、関連当局他の政府機関のウェブサイトまたは公示によって入手可能な場合に、入手しやすいと見なされる。設立のデータサンプルは174カ国、 電力接続のデータサンプルは181カ国。2番目のパネルの費用の差は、1人当たり所得の調整後、5%水準で統計的に有意である。 出所:「ビジネス環境の現状」データベース された手続、ならびに、財産権の強力な法 進、法と制度の向上と並ぶ同国の競争力を その他の取り組みも、企業にとって可能な 的保護を実施しています。これらの国々で 向上させるための 4 本柱の 1 つに指定しま 限り低い費用で、事業規制を効率化する はまた、競争力を高めるための広範な取り した。同協議会では韓国の事業規制を審査 という目的は共通しています。近年、ス 組みの一環として、事業規制の定期的なレ し、1998年以降、15%が改正されていない ウェーデン政府は、同国成長政策庁に、規 ビューと更新を行っており、電子政府イニ ことを認めました。そこで、 600 を超える 則が企業セクターに及ぼす影響についての シアティブによって新たなテクノロジーを 規制と、 3,500 の行政規則にサンセット条 調査を委託しました8。カナダと英国は、社 利用しています。 項を適用しました(韓国についてのケース 会へのコスト負担が大きすぎると見なされ スタディ参照)。 る規制の導入を防ぐため、影響評価を実施 これらの 20 カ国のなかにも、わずか 20 年 しています。 前には、低所得国が現在直面しているも 今日、一部の国の政策立案者は、規制改革 のと同様の問題を抱えていた国がありま を継続的なプロセスと見なし、オランダの あらゆるレベルで、透明性の高い政策立案 した。ノルウェーの不動産登記がその一 Actalや英国のBetter Regulation Executive に注目が集まっています。各国政府は、多 つです。ノルウェーの不動産登記は、今日 等、専門的な委員会や機関を設立していま くの場合、電子政府イニシアティブを利 では、世界で最も効率的なものの一つに す。これらの機関は既存の規制を定期的に 用して、事業規制と規制プロセスをアク 数えられています。ところが、 1995 年に 評価するだけではありません。新たな規制 セス可能にしています。英国は、「 Better は、記録書類の保管のため距離にして30キ のフローの管理にもますます注目するよう Regulation Executive」のウェブサイト上で、 ロメートルに及ぶ棚が必要で、毎年 1 キロ になっています。 規制案に関する意見を求めています9。カナ メートル ず つ 増えていました 。ノルウェー ダと米国は、新たな規制の費用対効果分析 では、これを変革する措置を取りました。 英国では、 2005 ~ 10 年に「削減プログラ の基本となる評価プロセスのガイドライン まず、用地部と調査情報を統合し、権利書 ム」によって規制順守にかかる企業への負 を公表しています。 をデジタル化しました。2002年には、オン 担が25%削減されたと政府が発表していま ラインによる所有権登録が可能になるよう す6。これは、企業にとって35億ポンドに上 に、50年前に制定された土地譲渡法を改正 事業規制の各分野における実績の違い る節減に相当します。現在は「one in one しました。 2008 年からは、法によりオンラ out」制度や「Red Tape Challenge」等、 取り組みを続けている国々は、多くの場合 イン登録が義務付けられています。 新たな取り組みが行われています(英国に これを数十年継続しており、今年のビジネ スウェーデンは、1980年代にすべての規制 ついてのケーススタディ参照)。欧州連合 ス活動の容易度ランキングに含まれる事業 の系統的な見直しを行いました。正当な理 もまた、規制が企業に課す事務的な負担の 規制の全 10 分野において他国にも比肩す 由のない要件はすべて、「ギロチン・イニ 25%削減を目指しています。基本的な原則 ることが多く、また、事業規制に対する一 シアティブ」により廃止されました(メキ は、民間セクターの革新能力や成長能力を 貫した包括的なアプローチを反映し、この シコもまた、1990年代に同様のアプローチ 損なう煩雑で費用のかかる規制をなくす一 状態を長期的に実現しています。一方、他 を取りました)。韓国では、 2008 年に設 方で、公平な競争の場を促進する規制を維 の多くの国々では、規制分野によってビジ 立された大統領管轄国家競争力協議会が、 持し、「スマート」な規制を整備するとい ネス活動への容易度は大幅に異なってい 規制改革を、公共セクターの革新、投資促 うものです7。 ます10。 6 ビジネス環境の現状2012 表1.1 ビジネス活動の容易度ランキング DB2012 DB2011 DB2012 DB2012 DB2011 DB2012 DB2012 DB2011 DB2012 の順位 の順位a 国 の改革 の順位 の順位a 国 の改革 の順位 の順位a 国 の改革 1 1 シンガポール 0 62 59 ポーランド 2 123 119 ウガンダ 1 2 2 香港特別行政区 2 63 60 ガーナ 0 124 123 スワジランド 1 3 3 ニュージーランド 1 64 70 チェコ共和国 2 125 127 ボスニア・ヘルツェゴビナ 2 4 4 米国 0 65 64 ドミニカ 0 126 120 ブラジル 1 5 5 デンマーク 1 66 69 アゼルバイジャン 0 127 125 タンザニア 1 6 7 ノルウェー 0 67 71 クウェート 0 128 130 ホンジュラス 2 7 6 英国 1 68 76 トリニダード・トバゴ 0 129 126 インドネシア 1 8 15 韓国 3 69 91 ベラルーシ 3 130 131 エクアドル 0 9 13 アイスランド 2 70 67 キルギス共和国 0 131 128 ヨルダン川西岸・ガザ地区 0 10 8 アイルランド 0 71 73 トルコ 2 132 139 インド 1 11 14 フィンランド 1 72 65 ルーマニア 2 133 133 ナイジェリア 0 12 10 サウジアラビア 1 73 68 グレナダ 0 134 136 シリア・アラブ共和国 1 13 12 カナダ 1 74 81 ソロモン諸島 4 135 135 スーダン 0 14 9 スウェーデン 0 75 66 セントビンセントおよび 0 136 134 フィリピン 1 グレナディーン諸島 15 11 オーストラリア 1 76 75 バヌアツ 3 137 144 マダガスカル 2 16 17 グルジア 4 77 72 フィジー 0 138 138 カンボジア 1 17 16 タイ 1 78 74 ナミビア 1 139 132 モザンビーク 0 18 23 マレーシア 3 79 78 モルディブ 0 140 137 ミクロネシア連邦 0 19 19 ドイツ 0 80 79 クロアチア 1 141 150 シエラレオネ 4 20 20 日本 0 81 99 モルドバ 4 142 146 ブータン 2 21 31 ラトビア 4 82 77 アルバニア 1 143 142 レソト 1 22 34 マケドニア旧ユーゴスラビア 4 83 86 ブルネイ・ダルサラーム 1 144 140 イラン・イスラム共和国 0 共和国 23 21 モーリシャス 0 84 80 ザンビア 0 145 141 マラウイ 2 24 18 エストニア 0 85 82 バハマ 0 146 148 マリ 2 25 24 台湾 2 86 89 モンゴル 1 147 152 タジキスタン 1 26 22 スイス 2 87 83 イタリア 1 148 143 アルジェリア 1 27 25 リトアニア 2 88 85 ジャマイカ 0 149 145 ガンビア 3 28 27 ベルギー 2 89 98 スリランカ 2 150 151 ブルキナファソ 3 29 26 フランス 1 90 107 ウルグアイ 2 151 155 リベリア 3 30 30 ポルトガル 2 91 87 中国 0 152 149 ウクライナ 4 31 29 オランダ 0 92 88 セルビア 2 153 147 ボリビア 0 32 28 オーストリア 1 93 92 ベリーズ 1 154 157 セネガル 4 33 35 アラブ首長国連邦 2 94 115 モロッコ 3 155 161 赤道ギニア共和国 1 34 32 イスラエル 2 95 84 セントクリストファー・ネーヴィス 1 156 160 ガボン 1 35 36 南アフリカ 3 96 95 ヨルダン 2 157 156 コモロ連合 1 36 38 カタール国 2 97 93 グアテマラ 0 158 153 スリナム 0 37 37 スロベニア 3 98 90 ベトナム 1 159 162 モーリタニア 1 38 33 バーレーン 0 99 94 イエメン共和国 1 160 154 アフガニスタン 1 39 41 チリ 3 100 101 ギリシャ 2 161 165 カメルーン 2 40 49 キプロス 1 101 97 パプアニューギニア 0 162 158 トーゴ 2 41 39 ペルー 3 102 100 パラグアイ 2 163 174 サントメ・プリンシペ民主共和国 4 42 47 コロンビア 3 103 109 セーシェル 2 164 159 イラク 0 43 42 プエルトリコ(米国) 2 104 103 レバノン 1 165 163 ラオス人民民主共和国 0 44 45 スペイン 1 105 96 パキスタン 0 166 164 ウズベキスタン 1 45 50 ルワンダ 3 106 102 マーシャル諸島 0 167 170 コートジボワール 3 46 40 チュニジア 0 107 110 ネパール 1 168 169 東チモール 2 47 58 カザフスタン 1 108 105 ドミニカ共和国 1 169 177 ブルンジ 4 48 43 スロバキア共和国 1 109 106 ケニア 1 170 167 ジブチ 1 49 53 オマーン 3 110 108 エジプト・アラブ共和国 0 171 168 ジンバブエ 0 50 44 ルクセンブルク 0 111 104 エチオピア 0 172 171 アンゴラ 2 51 46 ハンガリー 0 112 112 エルサルバドル 1 173 172 ニジェール 1 52 48 セントルシア 0 113 114 アルゼンチン 0 174 166 ハイチ 0 53 54 メキシコ 3 114 113 ガイアナ 1 175 173 ベニン 2 54 52 ボツワナ 0 115 111 キリバス 0 176 181 ギニアビサウ 2 55 61 アルメニア 5 116 116 パラオ 0 177 175 ベネズエラ・ボリバル共和国 0 56 56 モンテネグロ 3 117 117 コソボ 0 178 176 コンゴ共和国 3 57 51 アンティグア・バーブーダ 0 118 122 ニカラグア 3 179 179 ギニア 1 58 62 トンガ 3 119 129 カーボヴェルデ 3 180 178 エリトリア 0 59 57 ブルガリア 2 120 124 ロシア連邦 4 181 180 コンゴ共和国 1 60 55 サモア 0 121 121 コスタリカ 2 182 183 中央アフリカ共和国 3 61 63 パナマ 1 122 118 バングラデシュ 0 183 182 チャド 2 注:各国のランキングは2011年6月を基準として、各国の表に記載している。今年のビジネス活動の容易度ランキングは、今年の総合ランキングに含まれている10の規制分野におけるその国のランキングの 平均である。 a 昨年のランキングは、10のテーマに基づき、データ修正を反映して調整している。ビジネスをしにくくする改革については、改革の数に含めていない。 出所:「ビジネス環境の現状」データベース 要旨 7 このことは、各国の「ビジネス環境の現 破綻処理制度改革の件数は、欧州や他の地 は事業の参入、運営、撤退の障壁を下げ、 状」各規制分野のランキング上位 3 位と下 域の OECD 高所得国を中心に増加していま 財産権と投資家の権利の保護を強化しまし 位3位を比較するとよくわかります(図表1.6)。 す 12 。 2010/11 年には、それまでのどの年 た。反対方向に進んだのは、ほんの少数の 例えば、マレーシアの上位3分野のランキン よりも多い、全世界の29カ国が破綻処理制 国にすぎません。ベネズエラ・ボリバル共 グ(資金調達、投資家保護、貿易)は平均 度を改正しました。そのほとんどは、存続 和国とジンバブエで、ビジネスがしにくく 11である一方、下位3分野のランキング(建 能力のある企業が事業継続できるようにす なるような事業規制への変更を最も行いま 設許可取得、電力事情、不動産登記)は平 るための更生手続の改善に注力するもので した。 均77です。 した。 一部の国では、シンガポール、ニュージー 一部の国においては、この違いは、一つ 事業規制のそれぞれの分野における違い ランド、北欧諸国等の上位国との規制シス には事業規制の一部の分野における改革 は、規制改革に関心のある政策立案者にと テムのギャップを大きく縮めました(図 ペースの速さによるものです。こうした ってはチャンスとなるものです。当然なが 表  1.9)。「ビジネス環境の現状」の測定に 分野の一つが事業参入で、 2003 年以降、 ら、事業規制の分野はそれぞれ、相互に よれば、その多くは、当初は手続の比較的 「ビジネス環境の現状」の対象となった 影響を及ぼし合っています。一部の調査で 煩雑で、かつ、財産権の保護が弱かった開 183 カ国のうち 80% 以上が、事業設立をし は、事業規制改革は、他の分野の効果的 発途上国です。これらすべての国でギャッ やすくしています。そのうちの一つが一例 な規制と組み合わされた場合の方が、効果 プを縮小するにあたり、各指標について観 として、エジプト・アラブ共和国では、効率 が大きいということが示されています。 察された最も効率的なプラクティスまたは 的なワンストップ・ショップ(総合窓口) 例えば、インドが事業参入と生産を規制す 最も高いスコアに基づく合成的な測定値で が導入されたおかげで、事業設立が比較的 る厳しいライセンス制度を撤廃したときに ある、 「フロンティア」に近づいています。 明解なプロセスとなっています。他方、建 は、労働規制が柔軟な州の方が、より大き 例えば、事業設立の場合、時間ではニュー 築許可の取得には平均約7カ月、裁判所によ な利点が得ることができました。これらの ジーランド( 1 日) 、手続の数ではカナダと る契約執行には3年近くかかります。エジプ 州では、実質生産量の増加がそれ以外の州 ニュージーランド (1)、費用ではデンマーク トの上位3分野のランキング(事業設立、資 を 17.8% 上回りました 13 。メキシコでは、 とスロベニア (0) に基準が設定されていま 金調達、貿易)は平均 54 で、下位 3 分野の 全州での自治体が交付するライセンスの す。不動産を登記するための手続の数では 改革によって新規企業の登録が 5% 、雇用 グルジア、ノルウェー、ポルトガル、ス ランキング(建設許可取得、納税、契約執 が2.2%増加したという調査結果が出ていま ウェーデン、アラブ首長国連邦 (1)、輸出に 行)は平均149です。 す14。汚職が少なく、統治が良好な州にの方 必要な書類にはフランス (2)、契約を執行す 実際、事業参入を簡素化する改革は、例 が、より大きな効果がありました15。 る時間はシンガポール( 150 日)に基準が えば、欧州連合の加盟国では事業を自由 設定されています。したがって、フロン に設立・運営できる共同市場を中心に、 こうした国別の調査の他、各国間の分析 ティアは各指標すべてのグローバルなグッ 早い時期から優先的な課題となっていま では、比較的貧しいものの統治が良好な ド・プラクティスを表します。 す。徐々に、低所得国や低中所得国もこ 国では、事業設立にかかる時間が 10 日間 フロンティアに向かって最も大きく前進 うした事業規制改革を行うことが多く 短縮されると、投資率が 0.3 ポイント上昇 している国々は、複数の規制分野を網羅 なっています。政策立案者が、世界各国の し、GDP成長率が0.36%上昇することが分 する、長期的な競争戦略に組み込まれた 政策立案者の経験から学ぶことも増えて かりました 16 。別の調査では、高品質生産 広範な規制改革プログラムによってこれ います。毎年 31 カ国の企業登録機関の責任 のコストを削減する制度改革と貿易改革と を実現しています (図表 1.10)。例えば中国 者が会合を開いて、課題や解決策について の間のシナジー効果が指摘されています。 は、 2005 年以降、事業規制の 9 分野で政 協議しています 11 。事業設立の容易度で世 多くの開発途上国では、高品質製品の生産 策変更を実施しています。これらの変更に 界 3 位のカナダの代表者が、インドネシア が、企業が輸出を開始するための必要条件 は、2005年の新会社法、2006年の新たな やペルーといったさまざまな国にアドバ となっています。したがって、高品質生産 信用登録機関、1949年以来初めて、民間企 イスを提供しています。 2010/11 年には、 のコストを上昇させる制度上の欠陥は、貿 業の破産を規制するものとなった、2007年 53 カ国が事業設立に関する規制改革を実 易の円滑化が所得に及ぼし得るプラスの効果 の破産法等があります(図表1.11)。 施しました(図表 1.7 )。 2005 年以降、事 を制限してしまうことになります17。 業設立にかかる時間が 20 日以下の国の数 このような広範なアプローチを取る国が は、41から98に増えています。 増えています。 2010/11 年には、 35 カ国が 縮まるギャップ — ビジネス環境を整備 する世界的な傾向 「ビジネス環境の現状」が測定する3分野以 ビジネスのための規制環境の改善は、特に 上、 12 カ国が 4 分野以上で、ビジネス活動 改善に大幅な制度または法の変更が伴う場 政策立案者は、各国を一定の時点で比較す を容易にする規制改革を実施しました。4年 合には、困難で時間を要することがありま る相対的ランキングに注目することがよく 前には、 3 分野以上で改革を行った国は、 す。なかには、困難な政治的なトレード あります。加えて、一国における継続的な 10カ国にすぎませんでした。 オフが必要となる場合もあります。法の改 改善の重要性を認識することも多くなって 正を成し遂げるには、外圧が必要になるこ おり、近年好ましい結果を生んでいます。 さらに、新たな潮流として、一部の開発途 ともあります。したがって、危機がチャン 過去6年間で、163カ国の政策立案者が、ビ 上国・新興国が規制改革に導入している包 スになることも多々あります。過去 3 年の ジネス活動を容易にする国内規制の改革を 括的なアプローチや、高度な協調とコミッ 間、世界的な経済・金融危機を背景に、 実施しました(図表 1.8 )。これらの国々 トメントが挙げられます。コロンビア、 8 ビジネス環境の現状2012 図表1.6 各国の規制環境:ある分野ではビジネスしやすく、別の分野ではビジネスしにくい 一国内の「ビジネス環境の現状」規制分野におけるランキングの相違 Within-economy variation in topic rankings across areas of business regulation 180 マレーシア 下位3ランキングの平均: 建設許可取得 160 電力事情 不動産登記 140 全ランキングの平均 規制分野全体の平均ランキング 120 100 上位3ランキングの平均: 資金調達 投資家保護 貿易 80 60 40 20 0 (米国) チリ デンマーク ルクセンブルク クウェート タイ オーストラリア サウジアラビア グルジア マレーシア エストニア ラトビア トアニア オーストリア スロベニア チュニジア サモア コロンビア セントルシア ブルガリア アルメニア クロアチア ルーマニア ナミビア ザンビア ボツワナ ガーナ ニュージーランド フィンランド アイスランド スウェーデン アイルランド モーリシャス スイス フランス バーレーン スペイン キプロス 南アフリカ オマーン カザフスタン メキシコ モンテネグロ ドミニカ トルコ ベラルーシ アゼルバイジャン ポーランド ダルサラーム ジャマイカ ネーヴィス ヨルダン ノルウェー ドイツ ベルギー ペルー ハンガリー フィジー バヌアツ シンガポール 香港特別行政区 米国 英国 韓国 カナダ 日本 台湾 マケドニア旧ユーゴスラビア共和国 ポルトガル オランダ アラブ首長国連邦 カタール国 ルワンダ イスラエル トンガ スロバキア共和国 バーブーダ パナマ セントビンセントおよびグレナディーン諸島 グレナダ ソロモン諸島 キルギス共和国 チェコ共和国 トバゴ モルディブ モンゴル バハマ イエメン共和国 マーシャル諸島 ・ プエルトリコ トリニダード リ ・ ・ セントクリストファー アンティグア ブルネイ・ 図表1.7 2010/11年に最も多く行われたのは事業設立をしやすくするための改革 — 徐々に成果を収めている 2010/11年における「ビジネス環境の現状」による 各国の事業設立までの時間別内訳 ビジネス活動を容易にするための改革、規制分野別 事業設立 53 98 資金調達 44 納税 33 ■ 2005 ■ 2011 破綻処理 29 不動産登記 61 20 貿易 18 45 建設許可取得 41 15 36 投資家保護 13 22 契約執行 11 13 14 12 12 電力事情 9 6 0 10 20 30 40 50 60 20 日以下 21〜40日 41〜60 日 61〜80 日 80 日超 注:2番目のパネルのデータは、「ビジネス環境の現状2006」(2005年)に含まれていた174カ国を示す。その後、他の国々が追加された。 出所:「ビジネス環境の現状」データベース 要旨 9 Economy Average of top 3 rankings Average of all rankings Average of bottom 3 rankings イタリア モルドバ 中国 モロッコ セーシェル セルビア ベリーズ アルバニア スリランカ ベトナム パラグアイ ギリシャ グアテマラ パプアニューギニア ウルグアイ レバノン エチオピア ドミニカ共和国 ネパール ガイアナ エジプト・アラブ共和国 カーボヴェルデ キリバス パキスタン パラオ エルサルバドル ケニア ロシア連邦 アルゼンチン コスタリカ コソボ ニカラグア タンザニア ヨルダン川西岸・ガザ地区 スワジランド ブラジル エクアドル ウガンダ バングラデシュ インドネシア ミクロネシア連邦 フィリピン ホンジュラス ボスニア・ヘルツェゴビナ ブータン ナイジェリア インド カンボジア マダガスカル スーダン タジキスタン シリア・アラブ共和国 マラウイ ブルキナファソ モザンビーク イラン・イスラム共和国 マリ ガンビア シエラレオネ 赤道ギニア共和国 モーリタニア レソト リベリア コモロ連合 ウクライナ 東チモール イラク スリナム ボリビア アルジェリア ガボン カメルーン アフガニスタン ラオス人民民主共和国 セネガル ウズベキスタン サントメ・プリンシペ民主共和国 トーゴ コートジボワール ハイチ ジンバブエ アンゴラ ジブチ ニジェール ブルンジ ベナン エリトリア ベネズエラ・ボリバル共和国 ギニアビサウ コンゴ共和国 コンゴ共和国 ギニア チャド 中央アフリカ共和国 注:図表は、さまざまな規制分野で、他国と比較したある国の規制環境の度合いのばらつきを示している。縦棒は、183カ国のそれぞれについて、今年の総合ランキングに含まれる10分野のうち、 上位3ランキングの平均と、下位3ランキングとの間の距離を示す。 出所:「ビジネス環境の現状」データベース マレーシア、ルワンダ等、20を超える国が 後発者であることの利点 各国が、他国で実証された規制慣行を採用 規制改革委員会を設立しており、多くの場 するにつれて、健全な競争が生まれていま 今日、多くの国々で、他国の経験から得た 合、大統領または首相の直轄の委員会と す。コロンビア、グルジア、マケドニア旧 知識を利用することが可能となっていま なっています18。そして、これらの国々は、 ユーゴスラビア共和国、ルワンダといった す。そして、多くがすでに、他国のグッ 抜本的な法制度改革も避けているわけでは 国々にとっては、他国から得た教訓が非常 ド・プラクティスを採用しています(表1.3)。 ありません。ビジネスのしやすい規制環境 今年の「ビジネス環境の現状」では、こう に貴重なものとなっています。比較的規模 したプラクティスを検証できるように、事 の大きな国では、グッド・プラクティスが を創出する上で最も大きく前進している国 業設立から撤退に至る事業規制の 11 分野に 州を越えて共有されることが多くなってい 々は、複数の分野において、規制制度や行 おいて、何が有効であったかと、その理由 ます(メキシコについてのケーススタディ 政制度を改革し、民間セクターの活動を促 の概要を示す分野別の章をウェブ上で電子 参照)。 進しています(ボックス1.3)。 出版します。これらの章には、各分野の重 他国から学びたいと思っている実務担当者 事業規制改革に真剣に取り組む開発途上国 要性についての洞察や世界のトレンドも示 向けの参考資料も増えています。今年の各 が増えていることは朗報です。このような します19。 事業分野別の章はウェブコンテンツとし 幅広い考え方は、企業家、政府にとって て、そして、全世界の事業規制改革におけ も、よいニュースといえます。 次に期待されるもの るプラクティスと経験に関する新たなオン 「ビジネス環境の現状」では、過去9年にわ ラインデータベースもウェブ上に掲載して 2010/11 年にビジネス規制環境を最も改善 います。一連のケーススタディでは、各国 たり、全世界の事業規制を測定し、追跡し させた 12 カ国のうち、 3 分の 2 が低所得国 がどのように規制改革を競争戦略の一部と てきました。この間、多くの国々が、国内 または低中所得国でした。そのすべてが、 して組み込んだか、あるいは、規制改革一 企業のビジネス活動を容易にする規制環境 今年の総合ランキングに含まれている10 分 を構築するための改革を行ってきました。 般をどのようにアプローチしたかを調べま 野のうち3分野以上で、ビジネス活動を 企業は雇用を創出する上で、政策立案者は した。今年の報告書では、韓国、マケドニ 容易にする規制改革を実施しています 企業の設立、成長、投資を促す規制環境を ア旧ユーゴスラビア共和国、メキシコ、英 (表1.2)。 生み出す上で、重要な役割を果たします。 国の事例を取り上げます。 10 パーセント・ポイント パーセント・ポイント -10 -5 0 5 10 15 20 25 30 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 グルジア シンガポール ルワンダ ニュージーランド ベラルーシ アイルランド ブルキナファソ 米国 マケドニア旧ユーゴスラビア共和国 香港特別行政区 エジプト・アラブ共和国 英国 コロンビア カナダ ビジネス環境の現状2012 キルギス共和国 ノルウェー サウジアラビア デンマーク マリ フィンランド 中国 オーストラリア シエラレオネ スウェーデン アゼルバイジャン アイスランド ギニアビサウ 日本 セネガル 韓国 クロアチア ドイツ タジキスタン オーストリア イエメン共和国 オランダ カザフスタン ベルギー マダガスカル エストニア アンゴラ スイス インド マレーシア ロシア連邦 リトアニア モロッコ 南アフリカ ニジェール イスラエル グアテマラ スペイン ガーナ ラトビア フロンティアまでの距離、2005年および2011年 コートジボワール プエルトリコ (米国) シリア・アラブ共和国 台湾 フロンティアまでの距離短縮の進展 2005~2011年 ペルー スロバキア共和国 タイ 図表1.9 フロンティアまでのギャップを最も大きく縮めた国 モザンビーク ドミニカ共和国 ポルトガル ブルンジ セントルシア メキシコ チリ フランス フィジー 赤道ギニア共和国 トンガ ナイジェリア アンティグア ・バーブーダ モーリシャス モーリシャス チェコ共和国 イタリア ソロモン諸島 ナミビア 東チモール ドミニカ アルバニア フランス カンボジア ハンガリー 図表1.8 過去6年間に規制プラクティスにおいて163カ国がフロンティアに近づいた アルメニア メキシコ スロベニア ボツワナ インドネシア ベリーズ ヨルダン グレナダ ラトビア パナマ 中央アフリカ共和国 ブルガリア サントメ・プリンシペ民主共和国 ジャマイカ ラオス人民民主共和国 オマーン モーリタニア モンゴル タイ ルーマニア セルビア ペルー トーゴ セントビンセントおよびグレナディーン諸島 ポルトガル サウジアラビア カメルーン アラブ首長国連邦 ウルグアイ スロベニア チュニジア クウェート ウクライナ チュニジア ベナン サモア アフガニスタン バヌアツ カーボヴェルデ トルコ ボスニア・ヘルツェゴビナ アルメニア 韓国 ポーランド バヌアツ チェコ共和国 ザンビア セントクリストファー ・ネーヴィス エチオピア トリニダード ・トバゴ パラグアイ パキスタン ブータン モルディブ アラブ首長国連邦 マケドニア旧ユーゴスラビア共和国 ホンジュラス ケニア マレーシア キリバス モルドバ モルドバ ウズベキスタン ガイアナ ポーランド セーシェル ニカラグア ガーナ ウガンダ ネパール ブルガリア ベトナム マラウイ コロンビア 香港特別行政区 スリランカ ベトナム パプアニューギニア ルーマニア レバノン モルディブ ザンビア 台湾 ギリシャ バングラデシュ ソロモン諸島 コンゴ共和国 エルサルバドル レバノン スワジランド チャド パラオ デンマーク ボツワナ コスタリカ オマーン ギリシャ レソト トルコ エルサルバドル ハンガリー タンザニア エクアドル ケニア イラン・イスラム共和国 南アフリカ チリ アルジェリア サモア ジブチ スロバキア共和国 出所:「ビジネス環境の現状」データベース 出所:「ビジネス環境の現状」データベース マーシャル諸島 スワジランド コモロ連合 ハイチ ギニア ジャマイカ スウェーデン スペイン スーダン アルゼンチン エリトリア ネパール ガボン 英国 クウェート パプアニューギニア ヨルダン川西岸・ガザ地区 オランダ アイスランド ベルギー セーシェル リトアニア 注:数値は、2005年および2011年の各国におけるフロンティアまでの距離の絶対差を示す。 フィンランド パキスタン ミクロネシア連邦 コンゴ共和国 スリランカ イスラエル ガンビア トンガ 「ビジネス環境の現状2006」(2005年)に含まれた174カ国を参照している。その後、他の国々も追加された。 ボリビア ガイアナ グレナダ シンガポール モンゴル ベリーズ カナダ キリバス トリニダード・トバゴ パナマ フィリピン オーストラリア セントビンセントおよびグレナディーン諸島 日本 米国 ドミニカ ブラジル プエルトリコ(米国) ニュージーランド 2005 セントルシア 2005 エストニア スリナム パラオ アンティグア・バーブーダ 2011 オーストリア 2011 ナミビア アイルランド スイス ノルウェー セントクリストファー・ネーヴィス ドイツ フィジー イタリア イラク ジンバブエ ベネズエラ・ボリバル共和国 または最も高いスコアに基づく合成的測定値である「フロンティア」までの各国の距離を示す。縦軸はフロンティアまでの距離で、0が最も効率的な規制環境(フロンティア・プラクティス)を示す。データは 注:フロンティアまでの距離指標は、「ビジネス環境の現状」の9つの指標セット(労働者雇用指標および電力事情指標を除く)のそれぞれにおいて、2005年以降ある国が達成した最も効率的なプラクティス 要旨 11 12 ビジネス環境の現状2012 図表1.10 広範かつ持続可能な事業規制改革を行っている国ほどフロンティアまでの距離を短縮させている 「ビジネス環境の現状」によるビジネス活動を容易にする改革を 「ビジネス環境の現状」によるビジネス活動を容易にする改革を 行った分野の平均数、DB2006~DB2012 行った平均年数、DB2006~DB2012 9 9 7.9 7.9 8 8 8 8 7 7 7 7 5.8 5.8 6 5.8 5.8 6 6 6 5 5 5 5 4.7 4.7 4 4 3.4 3.4 4 4 3.0 3.0 3 3 3 3 2 2 2 2 1 1 1 1 0 0 0 0 <5 <5 5〜15 5〜15 > 15 > 15 <5 <5 5〜15 5〜15 > 15 > 15 フロンティアまでの距離短縮の進展、 フロンティアまでの距離短縮の進展、2005〜 11年〜11年 2005 フロンティアまでの距離短縮の進展、 フロンティアまでの距離短縮の進展、2005〜 11年〜11年 2005 (パーセント・ポイント) (パーセント・ポイント) (パーセント・ポイント) (パーセント・ポイント) 注:データは「ビジネス環境の現状2006」(2005年)に含まれた174カ国を参照している。その後、他の国々も追加された。 出所:「ビジネス環境の現状」データベース ボックス1.3 ル  ワンダおよびグルジアの長期的な規制改革に対する広範なアプ 制手続に費やす時間の割合は、2%未満と回答しており、2002年の約10% ローチ から減少している上、東欧・中央アジア諸国のなかでは最も低い。手続を完 ルワンダの規制改革に対する広範かつ持続的なアプローチは、さまざま 了するために、官僚に非公式な支払をする必要があると考えている企業は、 な分野において、フロンティアに向かう進展という形で示されている(ルワン 地域平均の17%に対し、わずか4%である。 ダについての図表参照)。同国は、ときには何年もかけて大胆な土地改革や 2005年と2008年の両年に調査に参加したグルジアの企業は、この期間 司法改革を行っている。2001年以降、新たな会社法、破綻処理法、民事訴 に、正社員を平均23人増やした(平均数が61人から84人に増加)と報告し 訟法、担保付取引法を導入している。また、事業設立、不動産登記、貿易、 ている 1。また、税務職員の査察や職員との義務的な面会の数が、2005 年 裁判所による契約執行のための制度やプロセスも合理化・改訂している。 の8回から、2008年にはわずか0.4回へと、大幅に減少したとも報告してい る。この結果は、2005年初めに発効した、税区分を21から9に減らした新 規制をビジネスのしやすいものにするためのルワンダの広範なアプローチ たな税法に関連があると考えられる。 フロンティアまでの距離、2005年および2011年 それでもなお、全体的な事業環境の改善には課題が残る。企業調査で 0 は、グルジアの企業の間では、治安とインフラが依然として最大の懸念事項 であることが示されている。 10 20 グルジアのフロンティアまでの距離短縮の推移 30 フロンティアまでの距離、2005年および2011年 40 パーセント・ポイント 0 50 10 60 20 70 パーセント・ポイント 30 80 40 90 50 100 事業設立 建設許可 不動産 資金調達 投資家 納税 貿易 契約執行 破綻処理 60 取得 登記 保護 70 2005 2011 出所:「ビジネス環境の現状」データベース 80 90 グルジアもまた、広範に及ぶ事業規制改革を続けている(グルジアにつ 100 いての図表参照)。同国では2005年以降、新たな会社法と税関法を導入し 事業設立 建設許可 不動産 資金調達 投資家 納税 貿易 契約執行 破綻処理 取得 登記 保護 ている。複数の機関から重複して承認を得ることを必要としていた紛らわし い制度は、新たな不動産登記台帳に変更された。その後、同国初の信用情報 2005 2011 機関の設立と大規模な司法改革も行われた。 出所:「ビジネス環境の現状」データベース 2008年の企業調査によれば、グルジアの企業は、手続はそれほど煩雑で はなく、事業環境は柔軟であると評価している。企業の経営陣は、政府の規 1. 世界銀行2009c。 要旨 13 どのような規制が根本的な制約事項 図表1.11 フロンティアに向けて着実に前進する中国 (binding constraints) となっているのか、 フロンティアまでの距離、2005~11年 どのような規制改革パッケージが最も効果 的なのか、ある国の状況において、これら 40 中国 の問題がどのように形作られているのかに ロシア連邦 関する調査はまだ完了していません。「ビ パーセント・ポイント 45 ナイジェリア  50 ジネス環境の現状」では、この分野におい インド て新たな調査を促すため、2012 年秋に会議 55 ブラジル を開催する予定です。これは、事業規制改 60 革と広範な経済状況との関連性について、 理解を深めることを目的とするものです。 65 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 出所:「ビジネス環境の現状」データベース 注 事業規制に関する時系列データ等、参考資 世界銀行グループの他のイニシアティブ 1. Narayan他2000年。 料が広範なものとなることによって、異な も、「ビジネス環境の現状」の資料を補完 2. Ayyagari 、 Demirgüç-Kunt 、 Maksimovic る規制分野間のシナジーや、規制改革が地 するデータを提供しています。女性の経済 2011年。 下経済、汚職、雇用、経済成長といった経 参画に関する法令を中心とした一連のデー 3. 過去 6 年間に、中東・北アフリカの諸国につ 済的状況に及ぼす影響を明らかにする実証 タと、外国企業の国内経済への関与に関連 いて「ビジネス環境の現状」が記録したすべ する法令のデータという、2つのグローバル ての規制改革のうち、資金調達、投資家保 的な調査が可能となっており、この調査結 なデータ蓄積が、他の分析分野の調査を裏 護、契約執行、破綻処理の各分野におけるも 果は希望を与えてくれるものです。主な障 のは 27% にすぎない。東欧・中央アジアで 付けています 21 。 9 年にわたる 125 カ国を対 壁を識別できれば、ターゲットを絞った改 は、記録された全規制改革のうち38%がこの 象とした企業調査により、研究者や政策立 革が、新規企業の設立や生産性、雇用に大 分野におけるものである。 案者は、企業の規模、活動セクター、地理 きな影響を与え得るということを示してい 4. 調査では、「ビジネス環境の現状」が測定し 的な位置という点で、ある国の一定の時期 た種類の事業規制は、国内市場における新規 ます。なぜなら、規制の多くは相互に作用 における民間セクターの状況を評価するこ 企業の設立、これらの企業生産性水準、雇用 しており、複数の分野で規制改革を実施 とが可能となっています 22 。これらの調査 創出に影響を及ぼすことが示されている。各 することには、シナジー効果があるからで 国間の比較調査では、参入の容易度は、概し は、全世界の 13 万社を超える企業からの直 て、企業の参入率の高さおよびビジネス密度 す。また、規制改革が経済における変化に 接の聞き取り調査により、企業が最大の制 の高さと関連していることが示されている。 つながるまでには時間がかかることを認識 約と見なしているもの等、事業環境に関す コロンビア、インド、メキシコ、ポルトガル等、 することも重要です20。 るさまざまな問題を検討しています。 さまざまな国からの有望な証拠もまた、この 表 1.2 2010/11年に「ビジネス環境の現状」で測定する3以上の分野で改善を行った国 ビジネス活動の容易度ランキング ビジネスをしやすくする改革 DB2012 DB2011 改善 事業設立 建設許可取得 電力事情 不動産登記 資金調達 投資家保護 納税 貿易 契約執行 破綻処理 1 モロッコ 94 115 -21 √ √ √ 2 モルドバ 81 99 -18 √ √ √ √ 3 マケドニア旧 22 34 -12 √ √ √ √ ユーゴスラビア 共和国 4 サントメ・プ 163 174 -11 √ √ √ √ リンシペ民主 共和国 5 ラトビア 21 31 -10 √ √ √ √ カーボヴェルデ 119 129 -10 √ √ √ 6 シエラレオネ 141 150 -9 √ √ √ √ 7 ブルンジ 169 177 -8 √ √ √ √ 8 ソロモン諸島 74 81 -7 √ √ √ √ 韓国 8 15 -7 √ √ √ 9 アルメニア 55 61 -6 √ √ √ √ √ 10 コロンビア 42 47 -5 √ √ √ 注:規制改革の回数(ネット)およびビジネス活動の容易度ランキングにおける改善の度合いに基づく各国のランキング。「ビジネス環境の現状」ではまず、今年の総合ランキングに含まれる10テーマのうち、 3テーマ以上において、ビジネスをしやすくする改革を行った国を選ぶ(ボックス1.2参照)。ビジネスをしにくくする規制改革は、ビジネスをしやすくする規制改革の数から差し引かれる。次に、これらの 国々について、前年の同様のランキングを用い、各国の前年のビジネス活動の容易度ランキングの上昇の度合いに基づいてランク付けを行う。改善が大きければ大きいほど、大きな改善を行った国としての ランキングは高くなる。 出所:「ビジネス環境の現状」データベース 14 ビジネス環境の現状2012 表 1.3 「ビジネス環境の現状」規制分野別世界のグッド・プラクティス 分野 プラクティス 国数a 例 事業設立の 手続をオンライン化している 110 香港特別行政区、クウェート、マケドニア旧ユーゴスラビア共和国、 しやすさ ニュージーランド、ペルー、プエルトリコ(米国)、シンガポール ワンストップ・ショップ(総合窓口)がある 83 バーレーン、ブルキナファソ、グルジア、韓国、ウルグアイ、ベトナム 最低資本金要件がない 82 ケニア、マダガスカル、ポルトガル、ルワンダ、アラブ首長国連邦、英国 建設許可取得の 整備された建築規則がある 116 クロアチア、ケニア、ニュージーランド、イエメン共和国 しやすさ リスクに基づく建築認可を活用している 86 アルメニア、ドイツ、モーリシャス、シンガポール ワンストップ・ショップ(総合窓口)がある 26 バーレーン、チリ、香港特別行政区、ルワンダ 不動産登記の 抵当に関する電子データベースを利用している 108 ジャマイカ、スウェーデン、英国 しやすさ 登記に有効的な期限を設定している 54 ボツワナ、グアテマラ、インドネシア 土地台帳情報をオンラインで提供している 50 デンマーク、リトアニア、マレーシア 優先手続制度を提供している 16 アゼルバイジャン、ブルガリア、グルジア 固定の譲渡手数料を設定している 15 ニュージーランド、ロシア連邦、ルワンダ 資金調達の 示談による執行を認めている 123 オーストラリア、インド、ネパール、ペルー、ロシア連邦、セルビア、 しやすさ スリランカ、米国 1人当たり所得の1%未満のローンに関するデータを提供し 119 ブラジル、ブルガリア、ドイツ、ケニア、マレーシア、スリランカ、 ている ヨルダン川西岸・ガザ地区 肯定的な信用情報と否定的な信用情報の両方を提供している 100 中国、クロアチア、インド、イタリア、ヨルダン、パナマ、南アフリカ 担保に関する説明にジュネリックな概要を認めている 91 カンボジア、カナダ、チリ、ナイジェリア、ルーマニア、シンガポール、 バヌアツ、ベトナム 統一登記簿を管理している 68 ボスニア・ヘルツェゴビナ、グアテマラ、ホンジュラス、マーシャル諸 島、ミクロネシア連邦、モンテネグロ、ニュージーランド、ルーマニア、 ソロモン諸島 金融機関ならびに小売業者、仕入先、公益事業会社から得た 54 フィジー、リトアニア、ニカラグア、ルワンダ、サウジアラビア、 信用情報を提供している スペイン 投資家保護 不利益となる関係者取引の取消b を認めている 70 ブラジル、モーリシャス、ルワンダ、米国 関係者取引の承認を規制している 60 フランス、アイスランド、インドネシア、レバノン、英国 詳細な開示を義務付けている 52 香港特別行政区、イスラエル、ニュージーランド、シンガポール すべての企業文書について、裁判中の閲覧を認めている 45 チリ、アイルランド、モロッコ、ペルー、ポーランド 関係者取引の場合に、取締役の明確な義務を規定している 45 コロンビア、マレーシア、メキシコ、米国、ベトナム 関係者取引の外部審査を義務付けている 41 オーストラリア、ブルンジ、エジプト・アラブ共和国、ノルウェー すべての企業文書について、裁判の期間中の閲覧を認めている 31 ギリシャ、日本、南アフリカ、スウェーデン 納税のしやすさ 申告納税を認めている 145 アルゼンチン、カナダ、中国、エジプト・アラブ共和国、ルワンダ、 スリランカ、トルコ 電子申告・電子納税を認めている 66 オーストラリア、コロンビア、インド、リトアニア、モーリシャス、 シンガポール、チュニジア 税基盤ごとに一つの税を設けている 49 香港特別行政区、マケドニア旧ユーゴスラビア共和国、モロッコ、 ナミビア、パラグアイ、英国 貿易のしやすさc 電子データ交換(EDI)システムを利用している 130d ベリーズ、チリ、エストニア、パキスタン、トルコ リスクに基づく検査を行っている 97 モロッコ、ナイジェリア、パラオ、スリナム、ベトナム シングル・ウィンドウ(一元的な窓口)を整備している 49e コロンビア、ガーナ、韓国、シンガポール 契約執行のしや 判決を公開している 122f オーストラリア、オーストリア、チリ、ドミニカ共和国、ギリシャ、 すさ モザンビーク、ナイジェリア、ウルグアイ 専門の商事裁判所、部署、裁判官を設けている 87 ブルキナファソ、フランス、レソト、サウジアラビア、シエラレオネ、 シンガポール 電子的な手段による提訴を認めている 16 オーストラリア、韓国、マレーシア、ロシア連邦、英国 破綻処理のしや 決定において、債権者委員会に発言の機会を認めている 103 ブルガリア、フィリピン、南アフリカ すさ 法により、破綻処理管財人には、職業または学問的な資格を 64 カーボヴェルデ、ナミビア 義務付けている 示談解決のための法的枠組みが整備されている 45 イタリア、フィリピン 注:電力事情に関するグッド・プラクティスについては、「ビジネス環境の現状2013」に掲載する予定。 a. 別途記載のない限り、調査対象の183カ国中のもの。 b. 契約当事者が、契約の締結前と同じ状態に戻るための権利。 c. 電子データ交換(EDI)については159カ国中、リスクに基づく検査は152カ国中、シングル・ウィンドウ(一元的な窓口)については150カ国中。 d. 26カ国が完全な電子データ交換(EDI)システム、104カ国が部分的な電子データ交換(EDI)システムを整備している。 e. 20カ国に関連政府機関をすべてつなぐシングル・ウィンドウ(一元的な窓口)システムがあり、29カ国のシステムは全関連機関がつながっているわけではない。 f. 調査対象の175カ国中。 出所:「ビジネス環境の現状」データベース。事業設立については世界銀行(2009b)も含む。 要旨 15 調査結果を裏付けている。この調査およびそ アフリカ共和国、コモロ連合、コンゴ民主共 の他の関連調査の詳細は、「ビジネス環境の現 和国、ケニア、リベリア、マラウイ、マリ、 状:インパクトの測定について」の章参照。 ザンビア、ラテンアメリカでは、グアテマ 5. 公共調達は、「ビジネス環境の現状」のどの指 ラ、メキシコ、ペルーが含まれる。 標にも含まれていないが、電子プラットフォー 19. 規制分野別の章は、「ビジネス環境の現状」 ムを利用する政府の数が増えているもう一つ のウェブサイトで閲覧可能( http://www. の分野である。その目的は、公務員と受注者 doingbusiness.org)。 との関係の透明性を高めることにある。 20. 関連調査の詳細は、「ビジネス環境の現状: 6. 英国では、 19 の政府機関が、 2005 年夏の大 インパクトの測定について」の章参照。 規模な定量化への取り組みとともに開始され 21. データベースはWomen, Business and the たこのプログラムに参加した。企業のコス Law ( http://wbl.worldbank.org/ )およ トを合計で 35 億ポンド削減するという目標 びInvesting Across Borders(http://iab. は、2010 年5 月に達成された。この経験に基 worldbank.org/)。 づき、2015年までに、規制の継続的なコスト 22. 世界銀行「企業調査」参照。 をさらに65億ポンド削減するという新たな目 (http://www.enterprisesurveys.org) 標が設定された(http://www.bis.gov.uk)。 7. 欧州委員会2011年。 8. その任務は、規制負担、規制の簡素化、規制 がビジネスに及ぼす影響に関する最新の調査 結果をまとめること、また、直接・間接のコ ストが企業と経済にどのような影響を及ぼす かを調べることであった(スウェーデン成長 政策庁、2010年)。 9. http://www.businesslink.gov.uk 10. 指標セット全体で比較的差異が大きいとい うこのパターンは、「ビジネス環境の現状」 に特有のものではない。同様のパターンは、 例えば、マクロ経済安定性、公的制度の健全 性、人的資源の側面、実業界の高度化といっ た要素を捕捉する広範な指標である、世界経 済フォーラムの世界競争力指数にも表れて いる。テクノロジーのリーダーである米国と 日本は、革新の指標スコアは非常に高い。だ が、多額の財政赤字と公的債務水準の高さか ら、マクロ経済安定性の指標スコアはそれほ ど高くない。 11. Corporate Registrars Forumの加盟国は、オー ストラリア、バングラデシュ、バミューダ、 ボツワナ、英領バージン諸島、ブルキナ ファソ、カナダ、クック諸島、クロアチア、 香港特別行政区、インド、ヨルダン、マケド ニア旧ユーゴスラビア共和国、マラウイ、 マレーシア、モーリシャス、ネパール、 オランダ、ニュージーランド、ナイジェリ ア、パキスタン、ルワンダ、サモア、シンガ ポール、南アフリカ、スリランカ、チュニジ ア、アラブ首長国連邦、英国、バヌアツ等。 (http://www.corporateregistersforum.org/ member-jurisdictions) 12. 世界銀行(2009a、2010a)も参照。 13. Aghion他、2008年。 14. Bruhn 2011年。 15. Kaplan、Piedra、Seira 2007年。 16. Eifert 2009年。 17. Rauch 2010年。 18. これらには、東・南アジアではインド、マ レーシア、スリランカ、台湾、タイ、ベトナ ム、中東・北アフリカでは、エジプト、モ ロッコ、サウジアラビア、アラブ首長国連 邦、イエメン共和国、東欧・中央アジアで は、グルジア、カザフスタン、キルギス共和 国、モルドバ、タジキスタン、サブサハラ・ アフリカでは、ボツワナ、ブルンジ、中央 「ビジネス環境の現状」: インパクトの測定について 企業が投資を行い、雇用を創出し、生産性 指摘するだけでなく、具体的な規制または することの容易さ(あるいは困難さ)等、 を向上させる活気に満ちた民間セクターは 規制手続にまで到達することで、それ自体 多くの要因によって影響を受ける場合があ 成長を促進し、貧しい人々に機会を拡大し が改革に役立つことになります(表2.1)。 ります。企業家がそのアイデアを先に進め ます。活気ある民間セクターを育成するた また、事業規制の定量的指標により、具体 るか、あきらめるか、他に持ち込むかを決 め、全世界の政府が、価格の自由化やマク 的な規制が、企業の行動と経済的状況にど 定する際には、新規事業を設立したり、建 ロ経済の安定化プログラム等、広範に及ぶ のような影響を及ぼすかについて調べるこ 設許可を取得したりするための要件や、商 改革を実施しています。自国の経済的繁栄 とを可能にします。 事紛争の解決や破綻処理の仕組みの効率性 や国民の機会創出に取り組む政府が注力す に大きく左右されます。「ビジネス環境の るのは、マクロ経済状況のみではありませ 2003 年に発表された最初の「ビジネス環 現状」は、国内の中小企業に適用される、 ん。日常的な経済活動を形作る法令や制度 境の現状」報告書には、5分野の指標と 事業設立、建設許可取得、電力事情、不動 的取り決めの質にも注力するのです。 133 カ国を取り上げました。今年の報告書 産登記、資金調達、投資家保護、納税、貿 には、11分野の指標と183カ国を取り上げま 易、契約執行、破綻処理の各規制につい しかしながら、 10 年前までは、こうしたミク す。ビジネス活動の容易度の総合ランキン て、定量的指標を提示します3。また、労働 ロ経済的要素を観測し、その関連性を分析す グやその他の集計指数には、10 分野が含ま 者の雇用に関する規制についても取り上げ るために世界的に利用できる指標は存在しま れています 1 。このプロジェクトは、各国の ます。 せんでした。このギャップに対応しようとし 政府、学識経験者、評論家から得た意見を た、 1980 年代の最初の取り組みは、専門家や 参考にしています 2。ビジネスのための規制 この報告書は、経済活動には適切なルール 企業に対する意識調査のデータを利用してお が必要であるという基本的前提に立つもの 環境を理解し、改善するための客観的な根 り、企業の一度限りの経験が反映されているこ です。これらには、財産権を確立・明確化 拠を提示するという、当初の目的は変わり との多いものでした。こうした調査は、経済 し、紛争解決のコストを軽減するルール、 ません。 や政治情勢の有用な判断基準になります。しか 経済的相互作用の予測可能性を高めるルー し、意識調査からは、全世界を対象とする毎 ル、悪用に対する契約当事者の保護を与え 年更新可能な指標を得ることはほとんどでき 「ビジネス環境の現状」が対象とするもの るルールがあります。これは、あらゆる ません。 新しいアイデアを試みようとする企業家の 人々にアクセス可能な、単純かつ効率的 意欲は、事業環境を規定するルールに対応 な規制を目指すものです。したがって、 「ビジネス環境の現状」プロジェクトでは、意 識調査とは異なるアプローチを取ります。国内 の、主に中小企業に着目し、そのライフサイク 表 2.1 「ビジネス環境の現状」手法による各国の比較は客観的ではあるが限定的 ルを通じて適用される規制を測定します。標準 利点 限界 化したケーススタディに基づき、183カ国を対 透明性がある、法令についての事実情報に基づい 範囲の限界:国内企業に影響を及ぼす11の規制分野に注目 象に長期にわたって比較可能な事業規制に ている(時間の推定については一部判断も伴う) し、事業環境のあらゆる側面や規制の全分野を測定するわ 関する定量的指標を提示します。このアプ けではない ローチは、企業が規制の適用により実際に 標準的な想定による有効な比較とベンチマー 標準化されたケースに基づく:ケースシナリオに説明される キング 事務処理は、特定の問題や企業の種類しか取り上げない 経験した制約事項を調査することで、意識 調査を補完するものです。 費用がかからず、簡単に複製できる フォーマルセクター中心 実施可能:データは具体的な障害の程度を明ら 指標に関連する改革のみ追跡可能 かにし、原因を特定し、何が変更できるかを指 ルールと規制は、政策立案者の直接の統制 摘する 下にあります。そして、政策立案者は、企 誤解の可能性を明らかにするため、現地の回答者 企業は要件についてすべての情報を持ち、手続を完了する際 業の経験や行動を変えようとする場合、ま と複数回の情報交換を行う に時間を無駄にしないと想定 ずはルールと規制を変えることから始めま 全世界の国々をほぼすべて網羅している 入手するデータの一部はその国の最大のビジネス都市に関 す。「ビジネス環境の現状」は問題の存在を するもののみ 「ビジネス環境の現状」:インパクトの測定について 17 「ビジネス環境の現状」のいくつかの指標 「ビジネス環境の現状」が対象としな 境の現状」では、 11 の具体的な指標によ では、関係者取引における厳しい開示要件 いもの り、企業のライフサイクルの 11 分野を取 等、規制強化に高いスコアを与えていま り上げます。これらの指標は、対象分野 データを解釈する際の限界を理解するため す。ワンストップ・ショップ(総合窓口) の規制のあらゆる面を取り上げるもので に、「ビジネス環境の現状」が何を測定す における事業設立手続の完了等、既存の規 はありません。例えば、事業設立や投資 るかを明確にすることと同様に、何を測定 制の実施を容易にする方法に高いスコアが 家保護の指標は、商事法の全側面を対象 しないかを知ることも重要です。 与えられる場合もあります。 にするものではありません。労働者雇用 指標は、労働規制の全側面を対象にはし 範囲の限定 「ビジネス環境の現状」プロジェクトは、 ていません。現在の指標には、職場の安 2 種類のデータで構成しています。 1 つ目 「ビジネス環境の現状」では、国内企業 全や団体交渉権に対応する規制の指標な は、各国の専門家の回答と、「ビジネス環 のライフサイクルに関連のある規制を測 どは含まれません。 境の現状」の双方による法令の解釈に由来 定することを具体的な目的として、 11 の分 ••「ビジネス環境の現状」は、特定の法令 するものです。2つ目は、規制目標の達成( 野に着目します(表 2.2 )。したがって、 が社会全体にもたらすコストと便益をすべ 「ビジネス環境の現状」は、企業または投 て測定しようとするものでもありません。 企業への法人格の付与等)における効率性 資家にとって重要な事業環境のあらゆる側 例えば、納税指標では、企業にとっての を測定する時間動作のケーススタディに基 面、あるいは、競争力に影響を及ぼすあら コストである総税率を測定します。です づく指標です。時間動作の指標内のコスト ゆる要因を網羅するわけではありません。 が、税収で資金が賄われる社会・経済プ 推定額は、該当するものがある場合には、 例えば、治安、汚職、市場規模、マクロ経 ログラムは測定せず、また、測定するこ 公式の料金表から記録しています。事業設 済の安定性、金融システムの状況、国家の とを意図するものでもありません。ビジ 立や財産権の登記等の規制プロセスは、 労働力のスキル、インフラの質等の側面を ネス法令を測定することで、規制目標の 手順と手続を明確に規定して分割していま 測定するものではありません。また、対外 達成に伴う規制の負担に関する議論の参 す。各手続にかかる時間は、当該規制につ 投資に特有の規制にも注目しません。 考となるデータが得られます。これらの いて、日常的な運用やアドバイスを行って 目標は、国によって異なります。 いる専門家の回答を基に推定しています 。 4 • • 「ビジネス環境の現状」は規制の枠組み 今回、「ビジネス環境の現状」は、エル の質に注目しますが、包括的なものでは ナンド・デ・ソトの先駆者的な研究になら なく、一国のすべての規制を対象とする 標準化したケースシナリオに基づく い、T型フォードの生産を改革するためにフ ものではありません。国やテクノロジー 「ビジネス環境の現状」指標は、その国の レデリック・テイラーが最初に用いた時間 の発達につれて、経済活動において規制 最大のビジネス都市に所在する企業等、具 動作アプローチを応用しています。デ・ソ される分野も増えています。例えば、 体的な想定により標準化したケースシナリ トは、1980年代にこのアプローチを利用し 欧州連合の法の総体系(アキ・コミュノ オに基づいています。一般に、経済指標で て、リマの郊外における衣料品工場建設時 テール)は、今では 1 万 4,500 を超える はこの種の制限的な仮定を行います。例え の障害を明らかにしました5。 規則集に増大しています。「ビジネス環 ば、インフレ統計は多くの場合、少数の都 市部における一定の消費財の価格に基づい ています。 表 2.2 「ビジネス環境の現状」— 事業規制の11分野 事業設立 拡大 運営 破綻 こうした仮定により、全世界を対象とする ••事業設立 ••不動産登記 ••建設許可取得 ••破綻処理 ことが可能になり、比較することが可能 最低資本金要件 手続、時間、費用 手続、時間、費用 時間、費用、回収率 となりますが、それは普遍性を目指すこ 手続、時間、費用 とが出来ないことを意味します。「ビジ ••資金調達 ••電力事情 信用情報システム 手続、時間、費用 ネス環境の現状」では、最大のビジネス都 動産担保法 市に関するデータのみを包含することの限 ••納税 界を認識しています。事業規制とその執 ••投資家保護 支払、時間、総税率 行は、連邦国家や大規模な国では特に、同 関係者取引における 開示と責任 ••貿易 一国内でも地方、都市によって異なるこ 書類、時間、費用 とがあります。「ビジネス環境の現状」 ••契約執行 ••労働者雇用 では、こうした違いに対する政府の関心 商事紛争を解決するた めの手続、時間、費用 を認識し、さまざまな国におけるサブナ ショナル(地方レベル)の調査によって世 財産権 事務手続負担 回収率 界規模の指標を補完しました(ボックス2.1)。 参入 資金調達 雇用の柔軟性 資産の再配分 今年、「ビジネス環境の現状」では、国内 投資家保護 における違いを把握するため、大国3カ国で 18 ビジネス環境の現状2012 は、その国第2の都市でのパイロット調査も うな必要書類を提出するべきか把握するま 状」からの洞察と、世界銀行企業調査等他 行いました。 でに、多くの時間を費やす可能性がありま の情報源のデータを組み合わせることが必 す。あるいは、例えば社会保障の登録をし 要となります8。 規制が複雑かつ非常に分化している分野で ないなど、法的に義務付けられている手続 は、「ビジネス環境の現状」指標を構築す を行わないことも考えられます。 るために使用する標準的なケースを慎重に この重点の理由  規定する必要があります。標準的なケー 規制が特に煩雑な場所では、インフォー 「ビジネス環境の現状」は、国内企業の規 スとして、該当する場合には有限責任会社 マ リ ティの 度 合 い が 高くなって い ま す。 制環境について、一種のコレステロールテ またはこれと同等の法人格を仮定していま インフォーマリティには代償が伴います。 ストのような役割を果たします。コレステ す。この選択は一つには実際の状況に基づ インフォーマルセクターの企業は一般に ロール検査では、健康状態をすべて知るこ くもので、全世界の多くの国々において 成長が遅く、資金調達が難しく、雇用す とはできません。ただし、私たちの健康に は、民間の有限責任会社は、最も一般的な る労働者も少ない上、労働者は、労働 とって重要な何かは測定します。そして、 企業形態です。この選択は、起業のチャン 法 の 保 護 を 受 けられ ま せ ん 6 。 国 別 調 査 人は気を付けて行動するようになるため、 スの拡大という、「ビジネス環境の現状」 に よ れ ば 、 女 性 経 営 の 企 業 の 場 合 はこれ コレステロールの数値だけでなく、全体的 の重点の一つも反映しています。投資家の らす べ て の 可 能 性 が さらに 高 まりま す 7 。 な健康状態も改善させることになります。 損失の可能性が出資額に限定されることで インフォーマルセクターの企業は、税金も 企業への投資が促進されるからです。 支払わない傾向にあります。「ビジネス環境 「ビジネス環境の現状」が広範な事業環境 の現状」では、インフォーマリティがなぜ や競争力を代表する役割を果たすかどう フォーマルセクターへの重点 存在し、規制改革の可能性がある分野につ か、検証する一つの方法は、「ビジネス環境 「ビジネス環境の現状」では、指標の構築 いての手がかりを政策立案者に示す一部の の現状」ランキングと他の主要な経済ベン において、企業家は施行されている規制に 要因を測定します。広範な事業環境につい チマークとの相関を調べることです。測定 精通し、これを順守するものと仮定してい ての完全な理解と、政策課題に対する広い 対象において「ビジネス環境の現状」に最 ます。実際には、企業家はどこで、どのよ 視野を得るためには、「ビジネス環境の現 も近いのは、 OECD (経済協力開発機構) ボックス 2.1 各国内の規制の比較:サブナショナル(地方レベル)の「ビジネス環境の現状」指標と複数都市におけるパイロット調査 サブナショナル(地方レベル)の「ビジネス環境の現状」調査は、各国政府の要請により行われ、同じ国または地域内の都市の間における事業規制の違いを 捉える調査である。政府パートナーや現地シンクタンクと連携することで地方のキャパシティ向上にも繋がる。2005年以降、サブナショナルの「ビジネス 環境の現状」報告書により、ブラジル、中国、コロンビア、エジプト、インド、インドネシア、ケニア、メキシコ、モロッコ、ナイジェリア、パキスタン、 フィリピン等において、国内の州・都市の事業規制を比較している1。 サブナショナル調査は、一定期間にわたる推移を測定するため、あるいは、さらなる都市に地理的範囲を拡大するため、定期的に更新されることが増え ている。今年は、フィリピンにおけるサブナショナル調査、欧州南東部の地域報告書、イタリア、ケニア、アラブ首長国連邦における継続研究を行い、イン ドネシア、メキシコ、ロシア連邦の現地シンクタンクとも共同でプロジェクトを行った。 2011年、「ビジネス環境の現状」はフィリピンのサブナショナル指標と、欧州南東部の7カ国(アルバニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボ、マケド ニア旧ユーゴスラビア共和国、モルドバ、モンテネグロ、セルビア)の22都市を対象とする地域報告書を発表した。また、南スーダン共和国ジュバについ ても都市概要を発表した。 今年、「ビジネス環境の現状」では、国内における事業規制の差についてさらに調査を進めるため、ビジネス活動の容易度ランキングに含まれる全10指 標セットについて、ブラジルのリオデジャネイロ(サンパウロに加え)、中国の北京(上海に加え)、ロシア連邦のサンクトぺテルブルク(モスクワに加 え)という大国3カ国の都市を加えてデータを収集した。サブナショナル調査は通常、指標のサブセットのみを対象とする。 結果は、各国とも、民事訴訟法、企業の上場規則、会社設立法等の法令に規制される分野には違いは見られなかった。例えば、担保付取引を規制する ルールの場合、企業家は全員、ブラジルでは2002年民法、中国では2007年財産権法、ロシアでは1994年民法および1992年抵当法を参照する。 ただし、事業設立や建設許可取得等の規制プロセスや制度の効率は、各地の規制あるいは企業の需要に対応するための制度インフラの違いにより、確か に都市によって異なる。ロシアでは、モスクワでの建築許可取得手続は、サンクトペテルブルクよりも複雑である。ブラジルでは、事業設立、建設許可取 得、電力取得の手続は、規模の大きなサンパウロよりも、リオデジャネイロの方がかかる時間が短い。ただし、不動産登記は、リオデジャネイロよりもサン パウロのほうがやや効率的である。これは、サンパウロでは土地台帳がデジタル化されているためである。 この3カ国のいずれにおいても、税金や拠出金の数は都市によって異なる。中国では、いずれの都市の企業も、3種類の国税(付加価値税、法人税、事業 税)を納税する必要がある。だが、北京の企業が納付しなくてはならない地方税は6種類だが、上海では7種類である。輸出入の時間においては、港までの 距離も重要になる。リオデジャネイロ、上海、サンクトペテルブルク等、主要港のある都市では、サンパウロ(サントスまで)、北京(天津まで)、モスク ワ(サンクトペテルブルクまで)等、貨物授受のため、他都市への移動に人を雇わなくてはならない企業家と比較して、国内輸送にかかる時間と費用が少ない。 1. サブナショナル(地方レベル)の報告書は、「ビジネス環境の現状」のウェブサイト(http://www.doingbusiness.org/reports/subnational-reports)に掲載している。 「ビジネス環境の現状」:インパクトの測定について 19 が集計する製品市場規制に関する指標で 図表2.1 「ビジネス環境の現状」ランキングとOECDによる製品市場規制ランキングとの間の強い相関関係 す。この指標は、規制環境が競争を促進ま たは阻害する程度を把握しようとするもの OECDの製品市場規制指標によるランキング です。これには、価格統制の程度、ライセ 40 ンス・許可制度、ルールおよび手続の簡易 35 30 化の度合い、事務的負担、法規制の障壁、 25 差別的な手続の横行、企業に対する政府統 20 制の度合いについての指標が含まれます 9 15 10 。大規模な新興市場を含む39カ国を対象と 5 し、これらの指標に基づくランキングは、「 0 0 20 40 60 80 100 120 140 ビジネス環境の現状」によるビジネス活動 の容易度ランキングと高度に相関していま Ranking 注:相関は、1人当たり所得の調整後5% 水準で有意 on the ease of doing business 出所:「ビジネス環境の現状」データベース、OECDデータ す(ここでの相関は0.72、図表2.1)。 同様に、ビジネス活動の容易度ランキング  ビジネス環境の現状」ランキングと世界経済フォーラムによる世界競争力指数によるランキング 図表2.2 「 と、マクロ経済の安定性、人的資本面、公 の間にも同様の強い相関関係が存在 的機関の健全性、実業界の高度性等の要因 世界競争力指数によるランキング を捕捉する、より広範な指標である、世 140 界経済フォーラムの世界競争力指数による 120 ランキングとの間にも、高い相関が存在し 100 80 ます (0.82)(図表2.2)10。「ビジネス環境の 60 現状」指標でランキングの高い国々は 40 OECD 市場規制指標と世界競争力指数でも 20 ランキングが高い傾向にあり、逆もまた同 0 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 様です。 Ranking on the ease of doing business 注:相関は、1人当たり所得の調整後5%水準で有意 さらに重要なのは、「ビジネス環境の現状」 出所:「ビジネス環境の現状」データベース、WEF 2010年 が重点を置く問題点が、開発と貧困削減 にとって重要かどうかという点です。「貧 セクターで事業を運営している企業も、透 供による影響を研究するための基礎も提供 しい人々の声」と題する世界銀行の調査で 明なルールや規制に平等にアクセスするこ します。例として、「ビジネス環境の現状 は、全世界の6万人の貧しい人々に、どう とができず、競争力や革新力、成長力に影 2004 」では、迅速な契約執行は、司法の すれば貧困から脱却することができると思 響を受けていることがあります。 公平性が高いという認識と関連しているこ うか、質問しました 11 。 回答は明解なもの とが認められ、「遅れた正義は否定された正 で、男女とも同様に、何よりも、自分のビ 規制の負担が重く、競争が限られている場 義」であることが示されました14。 ジネスから所得を得たり、雇用から賃金を 所では、成功は、「何をするか」よりも、 得たりすることに望みを託していました。 「誰を知っているか」に左右される傾向に あります12。しかし、規制が透明かつ効率的 ベンチマーク演習としての 成長を実現し、貧しい人々がその恩恵を分 「ビジネス環境の現状」 かち合えるようにするためには、意欲と優 で、簡素化された方法で実施されている場 れたアイデアを持つ新規参入者が、性別や 合には、意欲的な企業家であれば、縁故の 「ビジネス環境の現状」は、規制制度のいく 種族的出身にかかわらず事業を設立するこ 有無にかかわらず、法の原則に基づいて事 つかの重要な側面を捕捉する上で、ベンチ とができ、優れた企業が投資を行い、成長 業を運営し、法が提供する機会と保護の恩 マーキングに有用であると認められてきま させ、多くの雇用を創出できる環境が必要 恵を受けることが容易になります。当然な した。このベンチマーキングは、意思決定 です。 がら、「ビジネス環境の現状」で測定する 者が政策の選択肢を熟考することを可能に 事業規制の10 分野に基づくビジネス活動の し、長期的な進歩の評価と有意義な国際比 中小企業は、開発途上国では特に、競争、 容易度ランキングの高さには、優れたガバ 較を行う能力を高め、国民的論議や説明責 成長、雇用創出の重要な促進力です。しか ナンスや知覚される汚職の度合いの低さと 任強化を促進します。 しながら、これらの国々では、経済活動の 相関性があります 。 13 最高80%がインフォーマルセクターで行わ 2006 年以降、「ビジネス環境の現状」で れています。企業は、過剰な手続や規制に このため、「ビジネス環境の現状」では、 は、収集したデータについて、2つの見解を よって、フォーマルセクターへの参入を妨 社会参加に重要なものとして、優れたルー 示してきました。取り上げる 11 の規制分野 げられている恐れがあります。フォーマル ルを高く評価します。また、規制とその提 のそれぞれについて各国の「絶対」指標を 20 ビジネス環境の現状2012 提示するとともに、10 の分野について、分 のビジネス活動の容易度ランキングを補完 事業登記コストの削減は起業を促し、企業 野別と、総合的なものとの両方の国別ラン するものです。 の生産性を高めます 。事業登記が効率的な キングを掲載します15。また、要旨で述べた 国は新規企業の参入率が高く、ビジネス密 ように、今年の報告書では、ある国の規制 「ビジネス環境の現状」で取り上げる各指 度も高くなっています19。新規企業の登記に 環境がどのように変化したのかを示す新た 標は、事業規制環境の異なる側面を測定す 比較的時間がかからない国では、世界的需 な指標である、「フロンティアまでの距離」 るものです。各国のランキングは、指標ご 要あるいはテクノロジーにおいて拡張的な 指標を導入しました16。ある国について、こ とに、ときには大幅に異なります。ある国 シフトを遂げた業界等、成長の可能性が最 れらの指標をすべて解釈し、規制改革のた の事業規制の分野による規制実績のばらつ 大の業界において登録する企業が増えてい めの賢明かつ政治的に実現可能な道を決定 きを知るには、各事業分野のランキングを ます 20 。事業設立をしやすくする改革は、 するには、判断力が必要となります。 調べれば分かります(各国の表参照)。例 輸送、通信、公益事業等、競争から守られ えば、韓国はビジネス活動の容易度の総合 ていることの多い製品市場産業への投資 「ビジネス環境の現状」ランキングを単独 ランキングでは 8 位です。契約執行のしや に重要なプラス効果を及ぼす傾向にありま で考察すると、予期せぬ結果が明らかにな すさでは 2 位、貿易のしやすさでは 4 位、 す21。効率的な事業参入規制は、企業の生産 ることがあります。国によっては、いくつ 資金調達のしやすさでは 8 位です。一方、 性とマクロ経済のパフォーマンスを向上さ かのテーマでランキングが意外にも高いこ 事業設立のしやすさでは24位、建設許可取 せるという調査結果も出ています22。 とがあります。そして、急成長を遂げてい 得のしやすさでは26位、納税のしやすさで たり、多くの投資を集めている国が、それ フォーマルセクターでは、事業登記の簡素 は38位、不動産登記のしやすさでは71位で ほど変化が大きくないように見える国より 化は雇用機会の増加につながります 。新規 す。各事業分野の指標ごとの実績の差は、 もランキングが低い場合もあります。 企業は高度なスキルを有する労働者によっ 各政府が事業規制の特定分野に与える優先 て設立されることが多いことから、新規企 順位の違い、ならびに、一部の分野では他 国は、発展するにつれて、投資家や財産権 業の起業費用の削減は、教育を受ける割合 の分野よりも速いペースで改革の実現が可 を保護する規制を強化し、追加します。 の増加、熟練労働者の雇用創出率の増加、 能であるという各国特有の状況を反映して その一方で、既存の規制を実施するための 平均生産性の上昇につながることが認めら います。 もっと効率の良い方法を見つけ、古くなっ れています 23 。参入コストの引き下げは、 た規制を廃止していきます。「ビジネス環境 法的確実性も高めます。フォーマルセクター の現状」のある調査結果によれば、活気あ 事業規制の影響についての調査結果 に参入する企業は法制度へのアクセスを得 る成長国は、事業規制やその実施方法を常 ることができ、企業と顧客や納入業者の双 9年にわたる「ビジネス環境の現状」の に改革し、更新し続ける一方、多くの貧し 方にとって利益になるからです24。 データは、他のデータとともに、事業規制 い国々は、未だに1800年代末期の規制制度 の特定の分野と、その分野の規制改革が社 を運用しています。 政策改革の影響の評価には課題も伴いま 会や経済的状況にどう関連しているかにつ す。各国間の相関は強いように見えても、 改革志向の政府にとって、他国と相対的な いて、ますます多くの調査を可能にして 他のすべての潜在的要因が国レベルで異な ビジネス活動の容易度の総合ランキングよ きました。論文審査のある学術専門誌には ることから、規制の影響のみを取り出すこ りも、国内企業家にとっての規制環境の絶 873本もの論文が発表され、Google Scholar とは困難です。通常、各国間の相関では、 対的な改善度合いの方が重要です。フロン には、約2,332のワーキングペーパーが掲載 特定の状況が特定の規制に起因するものな ティアまでの距離指標は、「フロンティア」 されています17。 のか、それとも、より好ましい経済状況 までの各国の距離を示すことによって、長 等、他の要因と一致したものなのかは分か 期的な改善を把握しようとするもので、こ 事業設立や雇用などのマクロ経済的状況と りません。それでは、ある特定の規制改革 の「フロンティア」とは、 2005 年以降のす の関連の研究に、多くの注目が集まるよう がなければ、状況がどう違っていたのか、 べての国々とすべての対象年にわたり「ビ になっています。最近の調査では、事業規制 どうすれば知ることができるのでしょう ジネス環境の現状」の各指標において観察 が、正式に登録して事業を運営し、雇用を か。研究のなかには、ある国における一定 された最も優れた実績を示すものです。あ 創出し、革新を進め、生産性を高める誘因 期間の変化を調べることによってこれを検 る国の指標を 2 つの時点で比較することに (または阻害要因)を生み出すことによっ 証しているものがあります。その他、特定 より、「ビジネス環境の現状」で測定する て企業の行動にどのような影響を及ぼすの の企業またはグループのみに影響を及ぼし その国の規制環境が、その期間にどの程度 かが注目されています18。多くの研究が、債 た政策変更を調査した研究もあります。い 変化したか、「ビジネス環境の現状」の対 権者と投資家に信用アクセスを増大させる くつかの国別の影響研究では、簡素な参入 象である分野における最も効率的なプラク インセンティブを与える上で、裁判所、信 規制は、新規企業の設立の増加を促すと結 ティスと、最も力強い規制にどの程度近づ 用情報機関、破綻処理法、担保法が果たす 論づけています。 いたか(あるいは遠のいたか)を判断する 役割についても調査しています。これらの ことができます。フロンティアまでの距離 文献には、さまざまな調査結果が示されて •• 指標は、ある時点で各国を比較する、毎年 います。 「ビジネス環境の現状」:インパクトの測定について 21 5% 、賃金雇用が 調査からは、国の契約執行能力は、世界経 後、負債調達コストは 22% 減少し、全体 2.2%増加した一方で、新規参入企業との 済における比較優位性の重要な決定要因で 的な信用水準は39%上昇しました43。 競争が生まれ、価格は 0.6% 、既存企業 あり、同等の国の間では、契約執行が整っ の収入は3.2%下がったことが分かりまし ••再建のメカニズムを合理化するように改 ている国の方が、契約執行が不十分な国よ 善した破綻処理制度の導入により、存続 た 25 。別の調査では、同じ免許制度改革 りもカスタマイズ製品を生産し、輸出する 可能性の高い企業は再建を選択するよう により新規設立企業が直接4%増加したこ 傾向にあることも示されています 。別の 35 になったことから、ベルギーでは清算件 と、また、このプログラムは、汚職が少 研究では、多くの開発途上国において、質 数が8.4%、コロンビアでは13.6% 減少しま なく、追加の登記手続のコストが低い自 の高い製品の生産が、企業が輸出業者にな した44。コロンビアでは、新たな法により 治体の方がより有効だったことが示され る前提条件であり、質の高い生産のコスト 存続可能な企業と存続不能な企業をうま ました26。 を下げる制度改革は、貿易の円滑化が所得 く区別することが可能になり、財政的に ••インドでは、「ライセンス・ラジ」の段 に及ぼすプラスの影響を高めることが示さ は困難な状態にあるものの存続可能な企 階的な排除により新規企業登録が 6% 増 れています 36 。貿易障壁の廃止には、労働 業が状況を乗り切る可能性を高めました。 加し、市場に参入した生産性の高い企業 市場の柔軟化等、生産性と成長の向上を達 は、生産性の低い企業よりも、実質生産 成するための他の改革が伴う必要があると 量を大幅に増加させました 27 。参入規制 する研究もあります37。 政府による「ビジネス環境の現状」の の簡素化と労働市場の柔軟化は、相補的 活用方法 であることが分かっています。雇用規制 裁判所、信用情報システム、担保法、債権 定量的なデータとベンチマーキングは、潜 が比較的柔軟な州では、労働規制が比較 者法、破綻処理法等、金融市場インフラの 在的な課題を明らかにするとともに、政策 的柔軟ではない州と比較してインフォー 一部を成す規制や制度は、資金調達を容易 立案者がどこに教訓やグッド・プラクティ マルセクターの企業が 25% 多く減少し、 にする上で役立ちます 。世界銀行が行った スを求めるのかを識別することによって、政 実質生産量は17.8%多く増加しました28。 企業調査では、世界中の企業にとって、資 策論議を促します。政府の場合、「ビジネ 同じライセンス制度改革により、改革の 金調達が大きな制約となっていることが示 ス環境の現状」のデータに対する最初の反 影響を受けた企業の全体的な生産性は約 されています 38 。適切な信用情報システム 応としては、データの質と関連性や、結果 22%改善しました29。 と担保法の強化は、資金調達に関する制約 の算出方法についての疑問が一般的です。 ••コロンビアでは、企業向けのワンストッ を緩和します。 12 の移行国における分析で ですが、論議は通常、データの関連性や事業 プ・ショップ(総合窓口)の設立後、新 は、担保法を強化する改革は、銀行ローン 規制改革が意味を成すと思われる分野につい 規企業登録が5.2%増加しました30。 の供給を平均 13.7% 増加させることが認め て調査する掘り下げた議論へと進みます。 ••ポルトガルでは、企業向けのワンストッ られています 39 。債権者の権利と、信用登 録機関の存在(公営、民間を問わず)は、 改革の大半は、実例を探すことから始まり プ・ショップ(総合窓口)の導入によ いずれも、民間融資の対 GDP 比の高さと ますが、「ビジネス環境の現状」はこの点 り、改革を実施しなかった国と比較して 関連しています 40。そして、信用情報機関 で有用です(ボックス 2.2 および 2.3 )。例 新規企業登録が 17% 増加し、住民 10 万人 による情報共有の多さは、銀行収益性の高 えば、サウジアラビアは、フランスの会社 当たり7件の新規雇用が生まれました31。 さおよび銀行のリスクの低さと関連してい 法を改革のモデルにしました。アフリカで 健全な規制環境は貿易の強化にもつながり ます41。 は多くの国々が、同地域において「ビジネ ます 。貿易の制度的環境を合理化するため ス環境の現状」指標で最も優れたパフォー の努力(税関の効率化等)は、貿易量に好 融資の条件を把握し、生産性の低い企業が マンスを挙げているモーリシャスを事業規 影響を及ぼすことが示されています 。あ 32 再建されているか、それとも市場から撤退 制改革のグッド・プラクティスと見なして る研究では、非効率的な貿易環境が、サブ しているかを確認するため、国別調査によ います。コロンビアの前商工観光大臣、ル サハラ・アフリカ諸国の貿易不振の主要な り、効率的な債権回収と撤退のプロセス効 イス・ギジェルモ・プラタ氏は、次のよう 要因の一つであると指摘しています 。同 33 果について評価を行いました。 に話しています。 様に、別の調査でも、民間セクター開発、 ••インドでは、専門の債権回収裁判所の設 「これは『レシピに従えばケーキが焼 通関効率、インフラの質、金融へのアクセ 立により、債権回収請求の解決を迅速化 ける』といったようなものではない。 スを促す健全な政策と規制を策定し実施す し、債権者が不履行となった債権に対し まったく違う。私たちはみな異なって る政府の能力が、貿易を向上させるため てより多くの担保を差し押さえることを いる。だが、私たちはいくつかのこ の重要な要因であるとしています 34 。同じ と、いくつかの重要な教訓を参考に 可能にしました。これによりまた、返済 し、そうした教訓を応用し、それらが 調査では、海外市場へのアクセスがより制 確率が 28% 上昇し、ローン金利が 1 ~ 2 自分たちの環境でどう役立つかを考え 約されている国は、アクセスが容易な国 パーセント・ポイント下がりました42。 ることができる。」 よりも、投資環境の改善によってもたらさ れるメリットが大きいということも認めて ••ブラジルでは、特に、債権者の保護が向 過去 9 年間、各国政府は活発に国内企業の います。 上した 2005 年の広範な破産制度改革の 規制環境の改革を行っています。「ビジネ 22 ビジネス環境の現状2012 ス環境の現状」の分野に関する改革の大半 建設許可取得、契約執行、破綻処理の指標 ボックス2.2  国の規制改革プログラムにおけ 各 は、コロンビア、ケニア、リベリアに見られ 等の時間要素および一部の費用要素(手数 る「ビジネス環境の現状」の活用 るように、経済的競争力の強化を目指す広 料の料金体系表がない場合)は、成文法で コロンビアやルワンダといった国では、 範な改革プログラムに包含されています。 はなく実際のプラクティスに基づいてい 行政機関間での取り組みの調整を確保するた め、事業環境改善のためのプログラムの参考 各国政府は、事業環境の改革プログラムを ます。これには、ある程度の判断が伴いま として「ビジネス環境の現状」指標を活用す 組成する際に、複数のデータソースや指標 す。したがって、「ビジネス環境の現状」 る、大統領直属の規制改革委員会を設立し を利用します 。そして、改革を進めよう 45 アプローチでは、当該の事務処理を常日頃 ている。その他にも、 25 カ国を超える国々 定期的に行う弁護士や専門家と協力してき とする政府は、改革の論議に重要な課題や が、政府省庁間レベルでこのような委員会を ました。「ビジネス環境の現状」では、標 設立している。これらには、東・南アジアで 懸念事項を提示する、多くのステークホル 準的な時間動作研究の方法論を用いて、適 はインド、マレーシア、スリランカ、台湾、 ダーや利益団体のすべてに対応します。投 切に時間を推定するため、事業設立や事業 タイ、ベトナム、中東・北アフリカでは、エ 資環境に関する世界銀行グループの各国 の合法的な運営等、それぞれのプロセスや ジプト、モロッコ、サウジアラビア、アラブ 政府との対話は、「ビジネス環境の現状」 首長国連邦、イエメン共和国、東欧・中央ア 事務処理を別々のステップに分けました。 ランキングの向上ばかりに注力することを ジアでは、グルジア、カザフスタン、キルギ 各ステップの推定時間は、その事務処理に 避け、投資環境を強化する広範な改革を促 ス共和国、モルドバ、タジキスタン、サブサ おいて豊富かつ日常的な経験を持つ実務専 ハラ・アフリカでは、ボツワナ、ブルンジ、 進し、データに基づいた批評を促し、判断 門家によって示されたものです。 中央アフリカ共和国、コモロ連合、コンゴ民 を明確にするように策定されています。世 主共和国、ケニア、リベリア、マラウイ、マ 界銀行グループでは、この政策対話におい 「ビジネス環境の現状」のデータ収集アプ リ、ザンビア、ラテンアメリカでは、グアテ て、世界貧困モニタリング指標、世界開発 ローチは、一般に、企業の一時的な意見や マラ、メキシコ、ペルーが含まれる。各国政 指標、物流効率性指標他、多くのさまざま 経験を捕捉する企業調査とは対照をなすも 府は、2003年以降、300を超える規制改革に おいて「ビジネス環境の現状」を参考にした な指標と分析を利用しています。オープン・ のです。毎年、 100 ~ 150 社の企業を登録 と報告している。 データ・ イ ニ シ ア テ ィ ブ に よ り 、 指 標 と する企業弁護士は、おそらく、 1 、 2 度しか データはすべて、http://data.worldbank.org 企業を登録しない企業家よりもプロセスに に公開しています。 精通しています。 1 年に何十件もの訴訟を 扱う破産専門弁護士や裁判官は、一度もこ ボックス2.3  域経済フォーラムによる 地 のプロセスを経験したことがない企業幹部 「ビジネス環境の現状」の利用 手法とデータ よりも、広い見識を有していると考えられ アジア太平洋経済協力 (APEC) 機構では、 「ビジネス環境の現状」は、他のデータセッ ます。 規制改革の可能性のある分野を特定し、他 国の改善を支援できる国を支持し、測定可 トにはデータがほとんどない、あるいは 能な目標を設定するために、「ビジネス環境 まったくない、小規模な国や最貧国を含 「ビジネス環境の現状」の回答者 の現状」を利用している。 APEC は 2009 年 め、 183 カ国を対象にしています。「ビジ 過去 9 年間にわたり、 183 カ国の 1 万 2,000 に、2015年までに同地域で事業を運営するた ネス環境の現状」のデータは、国内法令な 人を超える専門家が、「ビジネス環境の現 めの費用、時間、手続を25%削減することを 目的として、「ビジネス環境改善行動計画」 らびに行政要件に基づいています(「ビジ 状」指標の情報となるデータの提供に協力 を開始した1。この行動計画は、平均時間を1週 ネス環境の現状」の手法の詳しい説明は、 してきました。今年の報告書は、 9,000 人 間短縮することにより、事業設立にかかる時 データの注を参照してください)。 を超える専門家が提供した情報を基にして 間を25%削減する等、具体的な目標を定めた います。データ注の表 4.1 に、各指標の回 ものである。 データの情報源 答者数を掲載しています。「ビジネス環境 計画担当者たちは、企業調査に基づき、 の現状」のウェブサイトに、各国および各 事業設立、資金調達、契約執行、貿易、建 「ビジネス環境の現状」指標の大半は、法 設許可取得という5つの優先分野を指定し 指標の回答者数を記載しています。回答者 令に基づいています。また、費用に関する た。 APEC 加盟国はその後、各優先分野につ は、「ビジネス環境の現状」の各テーマが 指標の大半は、公式の料金表によって裏付 いて、ニュージーランドおよび米国(事業設 対象とする法令要件について、日常的な行 立)、日本(資金調達)、韓国(契約執行)、 けられています。「ビジネス環境の現状」 政または助言に携わっている専門家や政府 シンガポール(貿易)、香港特別行政区(建 の回答者は、質問票を記入するとともに当 職員です。回答者は、「ビジネス環境の現 設許可取得)という6の国・地域を、取り 該法令と手数料の料金体系表の参照先を提 状」が対象とする具体的な分野の専門知識 組みを主導する「チャンピオン」に選出し 供するため、これらがデータのチェックと に基づいて選ばれました。法令による規定 た。 2010 年と 2011 年には、複数のチャンピ オン国が、それぞれの専門分野についてキ 品質保証に役立っています。 また、当該法 を中心としていることから、回答者の大半 ャパシティ育成プログラムを策定するための 令の本文を収集することで回答の正確さを は弁護士や裁判官、公証人といった法律の ワークショップを開催した。 確認しているため、代表的サンプルを得る 専門家となっています。信用情報調査の回 1. APEC 2010年。 ために必要な回答数を確保することは問題 答は、信用登録機関または信用情報機関の になりません。 職員によるものです。貿易、税金、建設許 「ビジネス環境の現状」:インパクトの測定について 23 可に関する調査では、運送業者、会計士、 る人にとって障害となり得るものです。「ビ は、「ビジネス環境の現状」のウェブサイ 建築家他の専門家から回答を得ました。 ジネス環境の現状」では当初、事前に払い トに掲載しています53。 込む必要の有無にかかわらず、最低資本金 手法の策定 要件を測定していました。多くの国では、 納税の手法。 「ビジネス環境の現状」は、 最低資本金の一部のみ前もって支払うこと 納税指標の調査手段や手法について、国際 各指標の計算手法は透明かつ客観的で、容 が必要となっています。実際の潜在的な参 税務対話 (ITD) の参加者等、外部のステー 易に複製可能です。指標の策定には優れた 入障壁を反映するため、最低資本金の要件 クホルダーとの対話を活用してきました。 学識者の協力を得、学問的厳密性を確保 ではなく最低払込資本金が使用されるよう こうした協議の結果、今年の報告書では、 しました。本指標の基礎となった背景論文 になりました。 納税のしやすさランキングを算出するた のうち、 8 本が主要経済誌に発表されてい め、総税率のしきい値(threshold)を導入 ます46。 今年の報告書では、電力接続の取得に関連 しました。総税率がしきい値(毎年計算・ する手続を建設許可取得指標から除外した 調整される)を下回る国はすべて、総税率 「ビジネス環境の現状」では、構成する各 だけでなく、労働者雇用指標および資金調 指標では同じランキングを受けることにな 指標のウェートおよびランキングの計算に、 達(法的権利)指標の手法の改善も行いま りました。全体的なビジネス活動の容易度 単純平均のアプローチを使用しています。 した。また、納税のランキング手法も変更し のランキングに含まれる32の指標の1つであ 主要構成要素や観測不能構成要素の使用 ています。 る総税率が全体的なランキングに及ぼす影 等、その他のアプローチも検討しました 。 47 これらは、単純平均とほぼ同一の結果を生 響はわずかです。納税指標のランキングの 労働者雇用の手法。「ビジネス環境の現状」 むことが分かりました。したがって、「ビ 相関は、このしきい値の有無にかかわらず では、労働者の保護と、雇用創出に有利な ジネス環境の現状」では、すべての分野を 99%です。 効率的な雇用規制のバランスをより正確に 均等なウェートとし、各分野内でも、分野を 反映することを目的として、過去 4 年にわ このしきい値は、根本的な理論に基づくも 構成する各要素に均等なウェートを加える たり、労働者雇用指標の手法に一連の修正 という最も単純な方法を使用しています 。 48 のではありません。むしろ、他の国に比 を行いました。 べ、税負担が比較的重い国を明らかにする という、本指標の目標を強調するためのも 電力事情指標の包含 また、世界銀行グループでは、労働問題専 のです。総税率がしきい値を下回るすべて 門の弁護士、雇用者および被雇用者の代表 今年のビジネス活動の容易度ランキングに の国に同じランキングを与えることによ 者、市民社会、民間セクター、国際労働機 は、新しい分野として電力事情が含まれて り、スコアリングにおいて、多くの場合、 関 (ILO)、OECDの専門家を含む協議グルー います。電力事情指標は、「ビジネス環境の 企業に対する政策とは無関係な理由によ プと協力して、手法の審査と、今後の調査 現状2010」と「ビジネス環境の現状2011」 り、総税率が異常に低い国を有利に扱うこ 分野の検討に取り組んでいます 51 。協議グ の付録において、パイロット的に導入され とが回避されます。例えば、非常に小規模 ループは今年その作業を完了し、手法に複 ました。パイロット期間中に、専門家が手 な国や、天然資源が豊富な国は、広範囲な 数の変更を加える根拠となる指針を提供し 法の見直しを行い、全183カ国について、電 ました(データ注も参照)。協議グループ 税金を課す必要はありません。しきい値の 力接続を得るための時間、費用、手続につ の結論を掲載した報告書の全文は、「ビジ 計算の詳細は、データの注を参照してくだ いてのデータを収集しました。重複計上を ネス環境の現状」のウェブサイトに掲載し さい。 回避するため、電力接続の取得に関連する ています52。 手続は、建設許可取得指標から除外してい また、今年の「ビジネス環境の現状」で ます49。 は、被雇用者と雇用主が支払う労働税およ 労働規制が雇用主に与えるコストの測定を 補足するものとして、労働者保護の測定指 び社会保障拠出金についてのデータを収集 手法の改善 標の検討を継続しています。労働者保護に しました。これらのデータは、雇用主と被 手法は、継続的に改善させてきました 50 。 関するデータは、世界銀行グループとILOに 雇用者の間での分担の分析を可能にするた これらの変更は、新たな知見を示す提案に よる労働者保護に関する共同研究の土台と め、「ビジネス環境の現状」のウェブサイ 応じて加えられてきました。例えば契約執 なるでしょう。 トに掲載する予定です。 行では、1年目のデータ収集後、少額の債権 について訴訟が行われる可能性が低いこと この分野のさらなる調査が進むまで、今年 資金調達の手法。 法的権利の強度に関する が明らかになったため、ケーススタディに の報告書には労働者雇用指標のランキング 指標は、担保付取引に関する債務者および おける異議債権の金額は、1人当たり所得の を掲載せず、また、ビジネス活動の容易度 債権者の特定の権利について測定するもの 50%から200%に引き上げられました。 に関する総合ランキングにもこの分野を含 です。この指標は、担保法や破産法の10 の みません。ただし、労働者雇用指標につい 側面を測定することにより、これらの法が もう一つの変更は、事業設立に関するもの てのデータは掲載しています。 183 カ国で どのように融資を円滑化しているかを示す です。最低資本金要件は、起業を考えてい 収集した労働規制に関するその他のデータ ものです。 24 ビジネス環境の現状2012 測定される担保法の一つの側面は、債務者 と呼ばれていた。破綻処理は、再建または更 る。「ビジネス環境の現状」の手法では主要 が裁判所の監督する再建手続を開始した 生を目的とする司法手続、清算または解散を なビジネス都市に注目するが、一方、企業 目的とする司法手続、債務執行、担保権執行 調査は通常、一国全体を対象にする。「ビジ 後、担保権を有する債権者が個別の訴訟を (和解の有無を問わず)等、測定された結果 ネス環境の現状」では、狭い分野において、 継続できるか、それとも、自動停止や支払 をより正確に反映するものである。 ビジネス規制の枠組みの基本となる法令に 猶予の対象となるのかに関するものです。 ついて検討する専門家が熟考した見解を収集 4. デ ー タ を 収 集 し 、 更 新 す る た め 、 年 に 一 以前には、法的権利の強度指標のスコア 度 、 183 カ 国 の 現 地 専 門 家 を 対 象 に 調 査 を するが、企業調査は、企業経営者の見解を は、これらの状況において担保権を有する 行っている。各国の現地専門家は、「ビジ 収集するものである。企業経営者に対して、 債権者が訴訟を継続できる国にのみ与えら ネス環境の現状」のウェブサイト( http:// 「ビジネス環境の現状」への貢献者に対する www.doingbusiness.org)に掲載している。 質問と同じ質問が行われることはほとんど れていました。今回は、担保権を有する債 なく、特定の標準化したケースに関連する 権者が個別の訴訟を停止しなくてはならな 5. De Soto 2000年。 質問がなされている。世界銀行の企業調査 い代わりに、他の手段によってその権利が 6. Schneider 2005年、La Porta および Shleifer (URL:http://www.enterprisesurveys.org) 保護される国にも、スコアが与えられてい 2008年。 では、さまざまな事業環境テーマを網羅した、 ます(詳細はデータ注参照)。この変更は、 7. Amin 2011年。 125 カ国 10 万社以上のビジネスデータを収集 8. http://www.enterprisesurveys.org している。 この指標の手法を国際連合国際商取引法委 員会 (UNCITRAL) および世界銀行グループ 9. OECD 「製品市場規制指標」 http://www. 13. 相 関 係 数 は 、 ビ ジ ネ ス 活 動 の 容 易 度 ラ ン oecd.org/ 指標は大きく分けて、国による統 キングと汚職抑制指数(Control of Corruption の指針に合わせるものです。 制、起業障壁、国際貿易・投資障壁を捕捉す Index) ランキングでは0.62、ビジネス活動の る 3 つのグループに集計される。 OECD の市 容易度ランキングとトランスペアレンシー・ データの調整 場規制指標に含まれている 39 カ国は、オー インターナショナルの汚職認識指数 ストラリア、オーストリア、ベルギー、ブラ (Corruption Perceptions Index) ランキング 手法の変更はすべて、データの注と「ビジ ジル、カナダ、チリ、中国、チェコ共和国、 では 0.77 。正相関は 5% 水準で統計的に有意 ネス環境の現状」ウェブサイトに説明して である。 デンマーク、エストニア、フィンランド、フ います。ウェブサイトには、各指標別およ ランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、ア 14. 世界銀行 2003年。 び各国別に、その指標または国が報告書に イスランド、インド、アイルランド、イスラ 15. 今年の報告書には、各国の労働者雇用指標 記載された最初の年以降の時系列データも エル、イタリア、日本、韓国、ルクセンブル ランキングを掲載していない。また、この分 掲載しています。調査を時系列で比較可能 ク、メキシコ、オランダ、ニュージーラン 野はビジネス活動の容易度の総合ランキング ド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、 なものにするため、データセットを逆算し にも含めていない。 ロシア、スロバキア共和国、スロベニア、 て、手法の変更や修正によるデータの改訂 南アフリカ、スペイン、スウェーデン、スイ 16. 本指標、総合ランキング、フロンティアへの を調整しています。データセットは、1人当 ス、トルコ、英国、米国。 距離指標の構成の詳細については、データの 注およびビジネス活動の容易度とフロンティ たり所得の前年比変化については逆算して 10. 世界経済フォーラムの世界競争力レポートで アへの距離に関する章参照。 いません。ウェブサイトには、背景論文に は、「ビジネス環境の現状」の合計113指標の うち、事業設立、労働者雇用、投資家保護、 17. Google Scholar (http://scholar.google.com) 使用された本来のデータセットもすべて掲 資金調達(法的権利)に関する、 7 指標(ま およびSSCI(Social Science Citation Index) 載しています。 たは6.2%)に相当するデータセットを利用し での検索による。 ている。 Djankov他2002年、Alesina他2005年、 データ補正についての情報は、データの注 11. Narayan他2000年。 Perotti および Volpin 2005 年、 Klapper 、 およびウェブサイトに記載しています。 Laeven、Rajan 2006年、FismanおよびSarria- データに異議がある場合には、透明な異議 12. H a l l w a r d - D r i e m e i e r 、 K h u n - J u s h 、 Allende 2010年、AntunesおよびCavalcanti Pritchett(2010年)はサブサハラ・アフリカ 申立て手続により、どなたでも申立てを行 2007年、 Barseghyan 2008年、 Eifert 2009年、 に関する世界銀行の企業調査のデータを分析 うことが可能です。データ検証プロセス後 Klapper、Lewin、Quesada Delgado 2009年、 し、「ビジネス環境の現状」指標等の法律的 に誤りが確認された場合には、迅速に修正 Djankov、Freund、Pham 2010年、Klapperお な指標は、概して、事後的な企業レベルの回 よびLove 2011年、 Chari 2011、Bruhn 2011年。 します。 答とは相関していないことを示している。 「ビ ジネス環境の現状」で好成績の国は一般に、 18. Klapper、Lewin、Quesada Delgado 2009年 企業調査でも良好な結果を挙げているが、 参入率とは、総登録企業数に対する新規登録 サンプルに含まれる国の大半において、相 企業の比率をいう。ビジネス密度とは、労働 注 関はない。この論文ではさらに、法律と現実 年齢人口(18~65歳)に対する総企業数の比 1. 総合ランキングの作成方法の詳細について の間のギャップは、公式の規制負担とともに 率と定義される。 は、ビジネス活動の容易度とフロンティアま 広がることを指摘している。これは、アフリ 19. CicconeおよびPapaioannou 2007年。 での距離に関する章参照。 カではより負担の大きなプロセスによって、 2. これには、世界銀行独立評価グループによる 20. Alesina他 2005年。 取引を行う際の差がさらに広がってしまい、 レビュー( 2008 年)ならびに国際税務対話 企業にとって、順守にかかる費用は公式には 21. Loayza、Oviedo、Sérven 2005年、 からの継続的な情報提供が含まれる。 発生しないかもしれないが、これを回避する Barseghyan 2008年。 3. 破綻処理指標は、国内企業に関わる破綻処理 ため、依然として支払を行う必要があるとい 22. Dulleck、Frijters、Winter-Ebmer 2006年、 手続の時間、費用、結果を測定する。これま うことを示すものである。基本となる手法に Calderon、Chong、Leon 2007年、Miccoお での報告書では、この指標セットは事業閉鎖 おけるいくつかの違いを念頭に置く必要があ よびPagés 2006年。 「ビジネス環境の現状」:インパクトの測定について 25 23. MasatliogluおよびRigolini 2008年、Djankov エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトア 47. 集計および加重手法の違いに関する技術的な 2009年。 ニア、ポーランド、ルーマニア、スロバキア 注釈は、「ビジネス環境の現状」のウェブサ 24. Bruhn 2011年。 共和国、スロベニア、ウクライナ。 イト(http://www.doingbusiness.org)に掲 39. Djankov、McLiesh、Shleifer 2007年、 載している。 25. Kaplan、Piedra、Seira 2007年。 Houston他 2010年。 48. 前 年の建設許可取得に関するデータは、こ 26. Aghion他 2008年。 の変更を反映するために調整している。これ Djankov、McLiesh、Shleifer 2007年、 40. 27. Sharma 2009年。 らは、「ビジネス環境の現状」ウェブサイト Houston他 2010年。 28. Chari 2011年。 (http://www.doingbusiness.org)の 41. Visaria 2009年。 「Historical Data」で閲覧可能。 29. CardenasおよびRozo 2009年。 42. Funchal 2008年。 49. 手 法の変更についてはすべて、今年の報告 30. Branstetter他 2010年。 43. ベルギーについてはDewaelheynsおよびVan 書のデータ注釈と、「ビジネス環境の現状 31. Djankov、Freund、Pham 2010年。 Hulle ( 2008 年)、コロンビアについては 2007 」以降のこれまでの報告書において説 32. IwanowおよびKirkpatrick 2009年。 Giné and Love (2010年)。 明している(データの注釈と以前の報告書 33. Seker 2011年。 44. 「ビジネス環境の現状」指標を使った最近の は、http://www.doingbusiness.orgに掲載し ある調査は、非常に分散された指標を用いて ている)。 34. Nunn 2007年。 改革の優先事項を識別する難しさを説明して 50. 協 議 グ ル ー プ の 付 託 条 項 と 構 成 に つ い て 35. Rauch 2010年。 いる(KraayおよびTawara 2011年)。 は、世界銀行「「ビジネス環境の現状」労 36. Chang、Kaltani、Loayza 2009年、Cuñat 働者雇用指標協議グループ( http://www. 45. 背景論文はすべて、「ビジネス環境の現状」 およびMelitz 2007年。 doingbusiness.org)参照。 のウェブサイト(http://www. 37. http://www.enterprisesurveys.org doingbusiness.org)に掲載している。 51. http://www.doingbusiness.org/ 38. Haselmann、Pistor、Vig 2010年調査対象国 46. 詳 しくは、ビジネス活動の容易度とフロン methodology/employing-workers はブルガリア、クロアチア、チェコ共和国、 ティアまでの距離に関する章参照。 52. http://www.doingbusiness.org 26 ビジネス環境の現状2012 世界銀行 www.doingbusiness.org